JP4887597B2 - 固体高分子型燃料電池、ガス拡散層用部材およびその製造方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池、ガス拡散層用部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池、ガス拡散層用部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電解質としてイオン伝導性の固体高分子膜を用いた固体高分子型燃料電池が開発され、家庭用の定置用電源や電気自動車の電源、あるいは小型携帯機器の電源として注目されている。通常、固体高分子型燃料電池では、一対の電極(単セル)による起電力が小さいので、複数の単セルを直列に接続して高電圧を得る構造となっている。
【0003】
複数の単セルを順次接続するための構造の一つとして、単セルを厚さ方向に積み重ねた、いわゆるスタック型の燃料電池がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−78028号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなスタック型の燃料電池では、積み重ねた各単セル間にセパレータ板が設けられる。このセパレータ板には、ガス拡散層に燃料(水素)や空気(酸素)を供給するための溝が必要であり、この溝を設けるために、セパレータ板にはある程度の厚さが必要となる。このため、セパレータ板の体積、重量によって、燃料電池の小型軽量化が妨げられるという問題がある。
【0006】
さらに、ガス拡散層を構成するカーボンシートなどの多孔体が、強度が低く、変形しやすいという性質を有しているため、取り扱いにくく、燃料電池の製造に困難を伴うという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたもので、生産性に優れた小型軽量の燃料電池を実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、固体高分子型燃料電池に用いられるガス拡散層用部材を以下のようにするものである。
すなわち、本発明のガス拡散層用部材は、セパレータ板と、三次元網目構造を有する導電性多孔体からなるシート状のガス拡散電極とを有し、第1の流体を通過させるための第1流路と、第2の流体を通過させるための第2流路とが設けられており、セパレータ板の表面にガス拡散電極が配置されている。そして、セパレータ板に、ガス拡散電極に流体を通過させるための第3流路が該ガス拡散電極に対向するように形成されており、これらガス拡散電極およびセパレータ板の周囲を覆う樹脂枠が、一体に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、固体高分子型燃料電池に用いられる代表的な燃料としては水素ガスとメタノール水溶液の2種類があり、メタノール水溶液を用いる場合には導電性多孔質体を流れる燃料は液体であるが、この部分は慣用的にガス拡散層と呼ばれている。ここでは、液体燃料を用いる場合も含めて、慣用に従いガス拡散層と呼んでいるのであって、気体燃料用に限定するものではない。
また、樹脂枠をなす樹脂材料は、いわゆる合成樹脂に限らずエラストマーなどのゴム材なども含むものとする。
【0010】
本発明のガス拡散層用部材によれば、ガス拡散電極がガス拡散層と電極とを兼ねるので、部品点数を削減することができる。また、樹脂枠により一体となっているので取り扱いが容易であり、燃料電池を製造する際のガス拡散電極の破損が防止され、生産性のよい燃料電池を実現することができる。また、樹脂枠によりガス拡散電極の側面が覆われているので、側面に開口している開放気孔が封止され、燃料漏れを効果的に防止することができる。さらに、流体(燃料や空気など)の流路が、導電性多孔体のガス拡散電極中に形成されるので、薄いセパレータ板を用いることができ、燃料電池の小型軽量化を図ることができる。また、本発明のガス拡散層用部材は、第1の流体を通過させるための第1流路と、第2の流体を通過させるための第2流路とが設けられているので、この構成により、各ガス拡散電極に対して、ガス拡散層用部材の外部から、それぞれ異なる流体(燃料および空気)を通過させて電極反応を生じさせることができる。また、本発明のガス拡散層用部材は、前述したガス拡散電極中の流路のみならずセパレータ板に第3流路が形成されているので、ガス拡散電極中の流路が厚さ方向の短いものとなり、供給圧を高めなくても流体を円滑に供給することができる。また、ガス拡散電極の通気性が低く多孔体内部の連通気孔だけでは燃料あるいは酸素の供給・排出が困難である場合にも、セパレータ板の表面に形成された溝形状等の第3流路を用いて円滑に流体を流すことができ、燃料電池における発電量を安定させることができる。
【0011】
また、本発明のガス拡散層用部材において、第1および第2の流路は、樹脂枠に形成されていることが好ましい。さらに、第1および第2流路が、ガス拡散電極に接続し樹脂枠を貫通して設けられることがより好ましい。
【0012】
これら第1および第2流路は、種々の形状で設けられるが、その形成箇所が樹脂枠であれば加工が容易であり、一般に高価である導電性多孔体に加工形成するよりもコスト面で有利であるとともに、電極の導電効率に関わる多孔体の表面を有効に利用することができる。さらに、これら第1および第2の流路を、樹脂枠を貫通させて設けることにより、ガス拡散層用部材を積層して燃料電池を構成する場合に、厚さ方向に連通する流路を容易に形成することができ、構造が単純で生産性のよい燃料電池を実現することができる。
【0013】
さらに、前記第3流路は溝形状をなして前記セパレータ板の両面にそれぞれ形成されており、前記両面のうち一方の面に形成された第3流路と他方の面に形成された第3流路とが、互いに垂直となるように延びていることが好ましい。
【0014】
本発明のガス拡散層用部材は、導電性多孔体およびセパレータ板をインサート部品として樹脂材料を射出するインサート成形により製造することができる。
インサート成形を採用することにより、導電性多孔体(ガス拡散電極)と樹脂枠とが接続される部分において、導電性多孔体の表面に開口する気孔中に溶融樹脂が入り込んで固化するので、アンカー効果により導電性多孔体と樹脂枠とが強固に接続され、強度が高いガス拡散層用部材が製造できる。
【0015】
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、請求項1から4のガス拡散層用部材が厚さ方向に複数枚重ねられ、各ガス拡散層用部材間に固体高分子電解質からなる電解質層が配置されているとともに、この電解質層と各ガス拡散層用部材のガス拡散電極との界面に設けられた触媒層を備えることを特徴とするものである。
【0016】
この構成により、本発明の固体高分子型燃料電池は、2枚のガス拡散層用部材の間に電解質層および触媒層を配置するだけの単純な部品構成で、単セルを形成することができる。また、ガス拡散層用部材を複数枚重ねて各部材間にそれぞれ電解質層を配置すれば、複数の単セルを積層したスタック型の燃料電池を容易に形成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の前提となる参考例について、図面を参照して説明する。
図1に、本参考例のガス拡散層用部材10,50,60を用いた固体高分子型の燃料電池の要部を示す。この燃料電池は、4組の単セル30が積層された、いわゆるスタック型の構造を有していて、燃料(たとえばメタノール水溶液)と酸化剤としての空気を供給されることにより電極反応を生じて電力を発生させることができる。
【0018】
ガス拡散層用部材10は、図1に示すように、厚さ方向にガス拡散電極11,11およびセパレータ板12が積層され、その面方向周囲を覆う樹脂枠13が一体に形成された構造となっている。そして、このガス拡散層用部材10には、図1および図2に示すように、第1の流体(燃料)を通過させるための第1流路10a,10bと、第2の流体(空気)を通過させるための第2流路10c,10dとが、樹脂枠13を貫通して設けられている。
なお、図2は図1におけるII−II線に沿う矢視図、図1は図2におけるI−I線に沿う断面矢視図である。
【0019】
ガス拡散電極11は、三次元網目構造を有する導電性多孔体からなる薄板であり、表面に開口する気孔が各方向に連通していることにより通気性を有し、軽量で表面積が大きいという特性を有している。このガス拡散電極11は、略長方形の電極本体11aの端部に、第1流路10a,10bおよび第2流路10c,10dのいずれかに接続するための接続部11b,11bが、タブ状に設けられた形状となっている。
【0020】
各ガス拡散電極11,11は、電極本体11aが重なるように、かつ接続部11b、11bが互いに重ならないように配置されている。そして、樹脂枠13を貫通する第1流路10a,10bおよび第2流路10c,10dのうちのいずれかと、接続部11bとが接続している。つまり、ガス拡散電極11には、電極本体11aに設けられた2カ所の接続部11bに、異なる流路がそれぞれ接続している。
【0021】
したがって、第1流路10aに供給された燃料は、ガス拡散電極11の連通気孔中を通過して、第1流路10bへと流出する。また、第2流路10cに供給された空気は、ガス拡散電極11の連通気孔中を通過して、第2流路10dへと流出する。
【0022】
セパレータ板12は、空気や燃料となるガスまたは液体を通過させず、導電性を有する、たとえばカーボン板や耐食性のある金属板などで、少なくとも両ガス拡散電極11,11に重なるH字状よりも大きく形成されている。そして、ガス拡散電極11,11間に配置されることにより、各電極間における流体の流通を阻止しつつ、図1に示すように、各ガス拡散電極11,11が形成する単セル30同士を直列に接続している。
なお、ガス拡散電極11とセパレータ板12とは、拡散接合により密着固定させることができる。
【0023】
樹脂枠13は、厚さ方向に積層されたガス拡散電極11、セパレータ板12、ガス拡散電極11の面方向周囲を覆って一体に設けられており、その両面が各ガス拡散電極11,11の表面に連なる同一面となっている。この樹脂枠13は、ガス拡散電極11およびセパレータ板12を埋め込まれた略直方体に形成され、その四隅に、厚さ方向に貫通するボルト挿通孔10eが設けられている。ボルト挿通孔10eには、複数枚のガス拡散層用部材10および電解質層20を多層に積層した際にこれらを固定するためのタイボルトを挿通することができる。
【0024】
また、燃料電池の両端面には、ガス拡散層用部材50,60がそれぞれ配置されている。
ガス拡散層用部材50は、図1および図3に示すように、厚さ方向にガス拡散電極51およびセパレータ板52が積層され、その面方向周囲を覆う樹脂枠53が一体に形成された構造となっている。そして、このガス拡散層用部材50には、ガス拡散電極51に第1の流体(燃料)を通過させるための第1流路50a,50bと、第2の流体(空気)を通過させるための第2流路50c,50dとが、樹脂枠53を貫通して設けられている。
【0025】
ガス拡散電極51は、ガス拡散電極11と同じく三次元網目構造を有する導電性多孔体からなる薄板であり、表面に開口する気孔が各方向に連通していることにより通気性を有し、軽量で表面積が大きいという特性を有している。このガス拡散電極51は、略長方形の電極本体51aの端部に、第1流路50a,50bのいずれかに接続するための接続部51b,51bが、タブ状に設けられた形状となっている。
したがって、流路50aに供給された燃料は、ガス拡散電極51の連通気孔中を通過して、流路50bへと流出する。
【0026】
セパレータ板52は、セパレータ板12と同じく空気や燃料となるガスまたは液体を通過させず、導電性を有する、たとえばカーボン板や耐食性のある金属板などで、少なくともガス拡散電極51の表面を覆うよりも大きく形成されている。そして、ガス拡散電極51に接して配置されることにより、ガス拡散電極51から電池外部への流体の流通を阻止している。
なお、ガス拡散電極51とセパレータ板52とは、拡散接合により密着固定させることができる。
【0027】
樹脂枠53は、厚さ方向に積層されたガス拡散電極51およびセパレータ板52の面方向周囲を覆って一体に設けられており、その一面がガス拡散電極51の表面に連なる同一面となっている。この樹脂枠53は、ガス拡散電極51およびセパレータ板52を埋め込まれた略直方体に形成され、その四隅に、厚さ方向に貫通するボルト挿通孔50eが設けられている。ボルト挿通孔50eには、複数枚のガス拡散層用部材10,50および電解質層20を多層に積層した際にこれらを固定するためのタイボルトを挿通することができる。
【0028】
また、ガス拡散層用部材60は、図1および図4に示すように、厚さ方向にガス拡散電極61およびセパレータ板62が積層され、その面方向周囲を覆う樹脂枠63が一体に形成された構造となっている。そして、このガス拡散層用部材60には、ガス拡散電極61に第1の流体(燃料)を通過させるための第1流路60a,60bと、第2の流体(空気)を通過させるための第2流路60c,60dとが、樹脂枠63を貫通して設けられている。
【0029】
ガス拡散電極61は、ガス拡散電極11,51と同じく三次元網目構造を有する導電性多孔体からなる薄板であり、表面に開口する気孔が各方向に連通していることにより通気性を有し、軽量で表面積が大きいという特性を有している。このガス拡散電極61は、略長方形の電極本体61aの端部に、第2流路60c,60dに接続するための接続部61b,61bが、タブ状に設けられた形状となっている。
したがって、流路60cに供給された空気は、ガス拡散電極61の連通気孔中を通過して、流路60dへと流出する。
【0030】
セパレータ板62は、セパレータ板12,52と同じく空気や燃料となるガスまたは液体を通過させず、導電性を有する、たとえばカーボン板や耐食性のある金属板などで、少なくともガス拡散電極61の表面を覆うよりも大きく形成されている。そして、ガス拡散電極61に接して配置されることにより、ガス拡散電極61から電池外部への流体の流通を阻止している。
なお、ガス拡散電極61とセパレータ板62とは、拡散接合により密着固定させることができる。
【0031】
樹脂枠63は、厚さ方向に積層されたガス拡散電極61およびセパレータ板62の面方向周囲を覆って一体に設けられており、その一面がガス拡散電極61の表面に連なる同一面となっている。この樹脂枠63は、ガス拡散電極61およびセパレータ板62を埋め込まれた略直方体に形成され、その四隅に、厚さ方向に貫通するボルト挿通孔60eが設けられている。ボルト挿通孔60eには、複数枚のガス拡散層用部材10,50,60および電解質層20を多層に積層した際にこれらを固定するためのタイボルトを挿通することができる。
【0032】
図1に示す燃料電池において、ガス拡散層用部材10,50,60のガス拡散電極11,51,61に密着して配置される電解質層20は、たとえばフッ素樹脂系の高分子電解膜で形成される。電解質層20は、膜中では水素イオンが移動可能である反面、電子を通過させないという性質を有している。電解質層20には、ガス拡散層用部材10,50,60と重ね合わせたときに第1流路10a,10b,50a,50b,60a,60bおよび第2流路10c,10d,50c,50d,60c,60dに連通する貫通孔20aが形成されている。
【0033】
この電解質層20とガス拡散層用部材10,50,60のガス拡散電極11,51,61との界面(本参考例ではガス拡散電極11,51,61の表面側)に、触媒層31が設けられている。
触媒層31は、白金系触媒微粒子を担持させたカーボン粒子を含む高分子電解質溶液をガス拡散電極11,51,61の表面に塗布して形成されている。触媒層31と電解質層20とは、ホットプレスにより密着固定することができる。また、電解質層20と各ガス拡散層用部材10,50,60の樹脂部13,53,63とは、超音波接合により密着固定することができる。
なお、触媒層31は、電解質層20とガス拡散電極11,51,61との間に介在していればよく、本参考例ではガス拡散電極11,51,61の表面部分に設けることとするが、電解質層20の表面部分に形成することもできる。
【0034】
図1に示す燃料電池は、以上説明したガス拡散層用部材10,50,60と、その間に配置した電解質層20とを積層し、その両側を通気性および導電性のない遮蔽板としてガス拡散層用部材50,60に備えられたセパレータ板52,62で閉じた構成となっている。樹脂枠13,53,63により一体部品となっているガス拡散層用部材10,50,60は、取り扱いやすく破損しにくいので、破損による無駄が生じにくく、自動機によるハンドリングも容易で、生産性のよい燃料電池を実現させることができる。
【0035】
この燃料電池では、ガス拡散層用部材10,50,60および電解質層20を積層したことにより、第1流路10a,50a,60aおよび貫通孔20aが連通して形成された燃料側供給路Fと、第1流路10b,50b,60bおよび貫通孔20aが連通して形成された燃料側排出路(図示せず)と、第2流路10c,50c,60cおよび貫通孔20aが連通して形成された空気側供給路Aと、第2流路10d,50d,60dおよび貫通孔20aが連通して形成された空気側排出路(図示せず)とが形成されている。
【0036】
この燃料電池において、燃料側供給路Fから燃料(ここではメタノール水溶液)を送り込むと、第1流路10a,50a,60aを通じて各ガス拡散電極(燃料極)11,51に燃料が供給される。この燃料がガス拡散電極11,51中を通過する間に、触媒層31の界面上で触媒反応により燃料中の水素がイオン化し、残りの流体(未反応部分)は第1流路10b,50bを通じて燃料側排出路から排出される。
【0037】
一方、燃料極11,51に対向する各ガス拡散電極(空気極)11,61に対しては、空気側供給路Aから第2流路10c,50c,60cを通じて空気が供給される。燃料極11,51でイオン化した水素は、電解質層20を移動して空気極11,61に到達し、電極反応により空気極11,61の触媒層31の界面上で空気中の酸素と反応して水を生成する。この水は第2流路10d,60dを通じて空気側排出路から排出される。また、電極反応後の空気の残ガス(未反応部分)も、第2流路10d,60dを通じて空気側排出路から排出される。
【0038】
水素のイオン化により発生した電子は、セパレータ板12を通じて燃料極(ガス拡散電極)11から空気極(ガス拡散電極)11へと移動する。この電子の移動により、燃料電池は燃料極51を陽極、空気極61を陰極として、電気エネルギを発生させることができる。
【0039】
ところで、ガス拡散電極11,51,61は、この固体高分子型燃料電池において、3次元網目構造による通気性および導電性を備えることによりガス拡散層と集電板とを兼ねるシート状部材である。このガス拡散電極11,51,61を形成する導電性多孔体としては、カーボンペーパー、カーボンクロスといったカーボン製多孔体を用いてもよいが、ガス拡散性と導電性がともに良好な、三次元網目構造を有する金属製のもの、たとえば金属粉末を焼結したシート、金属不織布、積層メッシュ等を用いることが望ましい。なかでも、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様である金属粉末を焼結したシートは、このガス拡散層用部材の導電性多孔質体として、より好適である。
【0040】
さらにまた、金属粉末をバインダ、溶媒を加えて混練したものに発泡剤を混ぜて発泡性スラリーとし、発泡成形後に焼結して得られる発泡金属焼結シートでは、高い気孔率までも製造可能であることから、より好ましい。
本参考例では、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様である発泡金属焼結シートを採用している。
【0041】
ここで、発泡金属焼結シートの製造方法について図5を参照して説明する。
発泡金属焼結シートは、金属粉末をバインダ、溶媒を加えて混練したものに発泡剤を混ぜて発泡性スラリーSとし、発泡成形後に焼結して得られるものである。
【0042】
スラリーSは、導電性を有する金属粉末、発泡剤(ヘキサン)、有機バインダ(メチルセルロース)、溶媒(水)等を混合したものである。このスラリーSをドクターブレード法により薄く成形するグリーンシート製造装置80を図5に示す。
【0043】
グリーンシート製造装置80において、まず、スラリーSが貯蔵されたホッパー81から、キャリアシート82上にスラリーSが供給される。キャリアシート82はローラ83によって搬送されており、キャリアシート82上のスラリーSは、移動するキャリアシート82とドクターブレード84との間で延ばされ、所要の厚さに成形される。
【0044】
成形されたスラリーSは、さらにキャリアシート82によって搬送され、加熱処理を行う発泡槽85および加熱炉86を順次通過する。発泡槽85では高湿度雰囲気下にて加熱処理を行うので、スラリーSにひび割れを生じさせずに発泡剤を発泡させることができる。そして、発泡により空洞が形成されたスラリーSが加熱炉86にて乾燥されると、粒子間に空洞を形成している金属粉末が有機バインダによって接合された状態のグリーンシートGが形成される。
【0045】
このグリーンシートGを、キャリアシート82から取り外した後、図示しない真空炉にて脱脂・焼成することにより、有機バインダが取り除かれ、金属粉末同士が焼結して三次元網目構造となった発泡金属焼結シート(導電性多孔体)が得られる。
【0046】
このようにして形成された導電性多孔体を所定形状に切断したものと、セパレータ板12,52,62とをインサート部品としてインサート成形を行うことにより、導電性多孔体からなるガス拡散電極11,51,61とセパレータ板12,52,62と樹脂部13,53,63とを一体に備えたガス拡散層用部材10を製造することができる。
【0047】
ここで、ガス拡散層用部材10を製造するインサート成形について図6を参照して説明する。
まず、導電性多孔体(ガス拡散電極11,11)とセパレータ板12とを拡散接合により一体に固定してインサート部品Pとする。そして、このインサート部品Pを、図6に示す一対の型板70,71間に形成されたキャビティ72中に配置し、ランナ73からゲート74を通じて射出した溶融樹脂75をキャビティ72内に充填することにより、導電性多孔体からなるガス拡散電極11、セパレータ板12および樹脂枠13が一体となったガス拡散層用部材10が形成される。
なお、図6では触媒層31を表面部に形成されたガス拡散電極11を用いているが、この触媒層31は、必ずしもガス拡散電極11上に形成する必要はなく、電解質層20上に形成してもよく、またガス拡散電極11上に設ける場合にはインサート成形後に形成することもできる。
【0048】
また、ガス拡散層用部材50,60も前記と同様のインサート成形により製造することができる。
すなわち、導電性多孔体(ガス拡散電極51,61)とセパレータ板52,62とを拡散接合により一体に固定してインサート部品として、図6に示す一対の型板70,71間に形成されたキャビティ72中に配置し、ランナ73からゲート74を通じて射出した溶融樹脂75をキャビティ72内に充填することにより、導電性多孔体からなるガス拡散電極51,61、セパレータ板52,62および樹脂枠53,63が一体となったガス拡散層用部材50,60が形成される。
【0049】
以上のようにインサート成形で樹脂枠13,53,63が形成されることにより、ガス拡散電極11,51,61と樹脂枠13,53,63とは、ガス拡散電極11,51,61の側部に開口する気孔中、5μm〜1000μm程度の深さまで溶融樹脂が含浸して硬化し、強固に接合される。樹脂枠を貫通する各流路10a,10b,10c,10d,50a,50b,50c,50d,60a,60b,60c,60dやボルト挿通孔10e,50e,60eは、金型に設けたピン部材76により、この射出成形時に形成することができる。
【0050】
インサート成形では、たとえば樹脂枠13,53,63の材料にポリプロピレンを用いた場合、成形温度180℃、80kNで型締めし、成形圧250kg/cm2で射出成形すると、複合金属多孔体10,50,60が得られる。
【0051】
なお、インサート成形によりガス拡散層用部材10,50,60を形成する場合、型閉時のキャビティ72の厚さ(型開閉方向の大きさ)は、インサート部品Pよりも若干小さくし、型閉時に型板70,71間でガス拡散電極11,51,61が3〜90%圧縮されるようにすると、ガス拡散電極11,51,61をキャビティ72に対して固定して射出樹脂圧によるずれを防止できるとともに、ガス拡散電極11,51,61の平坦度を向上させることができる。
【0052】
また、ガス拡散電極11,51,61は、気孔径や気孔率が小さすぎると溶融樹脂が気孔中に入り込めないのでアンカー効果が不十分となり、樹脂枠13,53,63との接合強度が十分に得られず、接合部で剥離する虞がある。一方、気孔径や気孔率が大きすぎると、強度が不足し、樹脂成形圧および樹脂硬化時の圧縮に耐えられず、変形してしまう。したがって、気孔径10μm〜2mm程度、気孔率40〜98%程度であるとよい。
一方、樹脂枠13,53,63を形成する樹脂材料の材質は、熱可塑性樹脂、エラストマーなど、射出成形可能な材質であればよいので、耐熱温度や硬度等を考慮し、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0053】
なお、以上の参考例において示した各構成部材、その諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の実施形態への適用にあたっては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求に基づき種々変更可能である。前記参考例では、4組の単セルを備えた燃料電池について説明したが、本発明は4組の単セルに限定されるものではなく、必要に応じてガス拡散層用部材10および電解質層20を積層すれば、高出力の燃料電池を得ることができる。
【0054】
また、前記参考例では、燃料や空気等の流体が各流路からガス拡散電極11,51,61の気孔中のみを通過して排出される構成としたが、ガス拡散電極11,51,61の気孔率が低かったり連通気孔が少なかったりすると、流路が狭くかつ面方向に長くなるため、流体の供給が困難になるおそれがある。そこで、本発明の実施形態では、前述した参考例と同様の構成を有しつつも、それ以外の特別な構成として、図7に示すようにセパレータ板40の両面に第3流路40a,40bとして溝形状を形成し、この第3流路40a,40b内に流体を流す構成とすることにより、ガス拡散電極11中の流路が厚さ方向の短いものとなるので、供給圧を高めなくても流体を円滑に供給することができる。また、燃料の供給圧を高めるポンプなどを設けてもよい。
【0055】
また、前記実施形態及び参考例では、セパレータの両面にガス拡散電極を設けたガス拡散層用部材10で複数の単セル30を形成したが、一方にのみガス拡散電極を設けたガス拡散層用部材50,60を、セパレータを背に貼り合わせて利用することもできる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、強度の高いガス拡散層用部材の実現による部品点数の削減、取り扱い性の向上により、燃料漏れのおそれが小さく、構成が単純で、小型軽量かつ生産性のよい高性能な燃料電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の前提となる参考例に係る燃料電池の要部を示す断面図である。
【図2】 図1におけるII−II線に沿う矢視図であり、本発明の参考例に係るガス拡散層用部材を示す平面図である。
【図3】 図1におけるIII−III線に沿う矢視図であり、本発明の参考例に係るガス拡散層用部材を示す平面図である。
【図4】 図1におけるIV−IV線に沿う矢視図であり、本発明の参考例に係るガス拡散層用部材を示す平面図である。
【図5】 図2から図4に示すガス拡散層用部材に用いられる導電性多孔体を製造に用いる装置の一例を示す模式図である。
【図6】 図2から図4に示すガス拡散層用部材を製造するインサート成形を示す模式断面図である。
【図7】 本発明の実施形態に係るガス拡散層用部材に用いるセパレータ板を示す平面図である。
【符号の説明】
10,50,60 ガス拡散層用部材
10a,10b,50a,50b,60a,60b 第1流路
10c,10d,50c,50d,60c,60d 第2流路
11,51,61 ガス拡散電極(導電性多孔体)
12,40,52,62 セパレータ板
13,53,63 樹脂枠
40a,40b 第3流路
20 電解質層
30 単セル
31 触媒層

Claims (6)

  1. セパレータ板と、該セパレータ板の表面に接する、三次元網目構造を有する導電性多孔体からなるシート状のガス拡散電極とを有するガス拡散層用部材であって、
    前記ガス拡散層用部材に、第1の流体を通過させるための第1流路と、第2の流体を通過させるための第2流路とが設けられており、
    前記セパレータ板の少なくとも一方の面に前記ガス拡散電極が配置され、
    前記セパレータ板に、前記ガス拡散電極に流体を通過させるための第3流路が該ガス拡散電極に対向するように形成されており、
    これらガス拡散電極およびセパレータ板の周囲を覆う樹脂枠が一体に設けられていることを特徴とする固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材。
  2. 前記第1および第2流路が、前記樹脂枠に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材。
  3. 前記第1および第2流路が、前記ガス拡散電極に接続し前記樹脂枠を貫通していることを特徴とする請求項2に記載の固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材。
  4. 前記第3流路は溝形状をなして前記セパレータ板の両面にそれぞれ形成されており、
    前記両面のうち一方の面に形成された第3流路と他方の面に形成された第3流路とが、互いに垂直となるように延びていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガス拡散層用部材。
  5. 前記導電性多孔体および前記セパレータ板をインサート部品として樹脂材料を射出するインサート成形により、請求項1から4のいずれかに記載の前記ガス拡散層用部材を製造することを特徴とする固体高分子型燃料電池用のガス拡散層用部材の製造方法。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載のガス拡散層用部材が厚さ方向に複数枚重ねられ、各ガス拡散層用部材間に固体高分子電解質からなる電解質層が配置されているとともに、該電解質層と各ガス拡散層用部材の前記ガス拡散電極との界面に設けられた触媒層を備えることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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