JP4893196B2 - 高靭性でかつ耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管 - Google Patents
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このようなことから、熱間加工性に優れ、安価である13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼をベースとした、降伏強さが654MPa(95ksi)を超える高強度で、かつ優れた耐CO2腐食性と、高靭性とを有する油井用高強度13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が強く望まれていた。
Cr+3.2Mo+2.6W−10C ≧ 23.4 …(1)
(ここで、Cr、Mo、W、C:各元素の含有量(mass%))
を満足するように、Cr、Mo、W、C含有量を調整することにより、H2Sが存在する環境における耐SSC性が顕著に向上することを見出した。また、さらに、次(2)式
Cr+Mo+0.5W+0.3Si−43.5C−0.4Mn−0.3Cu−Ni−9N≧11.5 …(2)
(ここで、Cr、Mo、W、Si、C、Mn、Cu、Ni、N:各元素の含有量(mass%))
を満足するように、Cr、Mo、W、Si、C、Mn、Cu、Ni、N含有量を調整することにより、継目無鋼管製造のために十分な、優れた熱間加工性と、さらに所望の高強度が確保できることを見出した。
(1)mass%で、C:0.04%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.20〜1.80%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:15.5〜17.5%、Ni:2.5〜5.5%、V:0.20%以下、Mo:1.5〜3.5%、W:0.50〜3.0%、Al:0.05%以下、N:0.15%以下、O:0.006%以下を、次(1)〜(3)式
Cr+3.2Mo+2.6W−10C≧ 23.4 …(1)
Cr+Mo+0.5W+0.3Si−43.5C−0.4Mn−0.3Cu−Ni−9N≧11.5 …(2)
2.2 ≦ Mo+0.8W ≦4.5 …(3)
(ここで、Cr、Mo、W、Si、C、Mn、Cu、Ni、N:各元素の含有量(mass%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、高靱性で、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする油井用高強度ステンレス鋼管。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、マルテンサイト相をベース相とし、さらにフェライト相を体積率で、10〜50%含有する組織を有することを特徴とする油井用高強度ステンレス鋼管。
C:0.04%以下
Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼の強度に関係する重要な元素であり、所望の強度を確保するためには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.04%を超えて含有すると、Ni含有による焼戻時の鋭敏化が増大しやすくなる。このため、この焼戻時の鋭敏化を防止する目的から、Cは0.04%以下に限定した。なお、好ましくは、耐食性の観点から0.005〜0.03%の範囲である。
Siは、通常の製鋼過程において脱酸剤として作用する元素であり、この発明では、0.05%以上含有させることが望ましいが、0.50%を超えて含有すると、耐CO2腐食性が低下し、さらに熱間加工性も低下する。このために、Siは0.50%以下に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.35%である。
Mnは、強度を増加させる元素であり、この発明では油井用マルテンサイト系ステンレス鋼管として必要な強度を確保するために0.20%以上の含有を必要とするが、1.80%を超える含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.20〜1.80%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.25〜0.60%である。
Pは、耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させる元素であり、この発明では可及的に低減することが望ましいが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。工業的に比較的安価に実施可能でかつ耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させない範囲として、Pは0.03%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
Sは、パイプ製造過程において熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、可及的に少ないことが望ましいが、0.005%以下に低減すれば通常工程でのパイプ製造が可能となることから、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Cr:15.5〜17.5%
Crは、保護被膜を形成して耐食性を向上させる元素で、とくに耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性の向上に有効に寄与するとともに、耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)を向上させる作用を有する元素である。この発明では特に、高温における耐食性向上の観点から、15.5%以上の含有を必要とする。一方、17.5%を超える含有は、強度を低下させる。このため、この発明では、Crは15.5〜17.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは16.0〜17.0%である。
Niは、保護被膜を強固する作用を有し、耐CO2腐食性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を高める元素である。このような効果を、この発明が対象とする苛酷な腐食環境下で確保するためには、2.5%以上のNi含有を必要とする。一方、5.5%を超える含有は、マルテンサイト組織の安定性が低下し、強度が低下する。このため、Niは2.5〜5.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは3.0〜5.0%である。
Vは、強度を上昇させるとともに、耐SSC性を改善する効果を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.20%を超えて含有すると、靱性が低下する。このため、Vは0.20 %以下に限定した。 なお、好ましくは0.05〜0.08%である。
Moは、Cl-による孔食に対する抵抗性を増加させる作用を有する元素であり、さらに耐SSC性の向上に有効に作用する。このような効果を、この発明が対象とする苛酷な腐食環境下で確保するためには、1.5%以上の含有を必要とする。一方、3.5%を超えて含有すると、強度が低下するとともに、材料コストを高騰させる。このため、Moは1.5〜3.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.8〜3.0%である。
Wは、Moと同様に、耐SSC性の向上に有効な元素であり、このような効果は、0.50%以上の含有で顕著となる。一方、3.0%を超える含有は、靱性を劣化させる。このため、Moは0.50〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.7〜2.0%である。
この発明では、Mo、W含有量は、上記した範囲内でかつ、次(3)式
2.2 ≦ Mo+0.8W ≦4.5 …(3)
(ここで、Mo、W:各元素の含有量(mass%))
を満足するように調整される。MoとWを複合して含有することにより、耐SSC性が顕著に向上する。Mo+0.8Wを2.2以上とすることにより、この発明が対象とするCO2、Cl-を含み、さらにH2Sを含む高温の苛酷な腐食環境下でも、優れた耐SSC性を確保できる。一方、Mo+0.8Wが4.5を超えると、靱性、熱間加工性の低下を引き起こす。このため、この発明では、Mo、Wが(3)式を満足する、Mo+0.8Wが2.2〜4.5の範囲となるように、Mo、W含有量を調整することとした。
Alは、強力な脱酸作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.002%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.03%以下である。
N:0.15%以下
Nは、耐孔食性を著しく向上させる元素であり、このような効果は、0.01%以上の含有で顕著となる。一方、0.15%を超える含有は、種々の窒化物を形成して靭性を低下させる。このため、Nは0.15%以下に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.08%である。
Oは、鋼中では酸化物として存在し、各種特性に悪影響を及ぼすため、できるだけ低減することが望ましい。とくにO含有量が0.006%を超えて多くなると、熱間加工性、耐CO2応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性および靭性を著しく低下させる。このため、Oは0.006%以下に限定した。
Cu:0.5〜3.5%
Cuは、保護皮膜を強固にして鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.5%以上含有することが好ましい。一方、3.5%を超える含有は、高温でのCuSの粒界析出を招き、熱間加工性が低下する。このため、含有する場合には、Cuは、0.5〜3.5%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5〜2.5%、さらに好ましくは0.8〜1.5%である。
Nb、Ti、Zr、Bはいずれも、強度を増加させる元素であり、必要に応じて選択して1種以上、含有することができる。なお、Nbは、上記した効果に加えて、さらに靭性を向上させる効果も有する。また、Ti、Zr、Bは、上記した効果に加えて、さらに耐応力腐食割れ性を改善する効果も有する。このような効果を得るためには、Nb:0.01%以上、Ti:0.01%以上、Zr:0.01%以上、B:0.0005%以上、含有することが望ましい。一方、Nb:0.20%、Ti:0.3%、Zr:0.2%、B:0.01%を超えて含有すると、靱性が低下する。このため、含有する場合には、Nb:0.20%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくはNb:0.02〜0.10%、Ti:0.02〜0.12%、Zr:0.02〜0.08%、B:0.0005〜0.003%である。
Caは、SをCaSとして固定し、硫化物系介在物を球状化する作用を有する元素である。これにより、介在物周辺のマトリックスの格子歪を小さくして、介在物の水素のトラップ能を低下させる効果を有する。このような効果は、0.0005%以上の含有で顕著となるが、0.01%を超える含有は、CaOの増加を招き、耐CO2腐食性、耐孔食性が低下する。このため、Caは含有する場合には、0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。
Cr+3.2Mo+2.6W−10C ≧ 23.4 …(1)
および、次(2)式
Cr+Mo+0.5W+0.3Si−43.5C−0.4Mn−0.3Cu−Ni−9N≧11.5 …(2)
(ここで、Cr、Mo、W、Si、C、Mn、Cu、Ni、N:各元素の含有量(mass%))
を満足するように、各成分の含有量を調整する。
この発明になる高強度ステンレス鋼管は、上記した組成を有し、好ましくはさらにマルテンサイト相をベース相とし、さらにフェライト相を体積率で、10〜50%含有する組織を有する。この発明になる高強度ステンレス鋼管では、高強度を維持するために、組織は、マルテンサイト相をベース相とする組織とする。そして、この発明では、強度を低下させずに耐食性を向上させる目的で、体積率で、10%以上のフェライト相を含有する組織とすることが好ましい。一方、フェライト相が体積率で50%を超えると、強度の低下が著しくなる。このため、この発明鋼管においては、フェライト相分率を体積率で10〜50%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは12〜30%である。なお、フェライト相以外の第二相としては、20体積%以下のオーステナイト相を含有してもなんら問題はない。
まず、上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法等、通常の方法でビレット等の鋼管素材とすることが好ましい。ついで、これら鋼管素材を加熱し、通常のマンネスマン−プラグミル方式、あるいはマンネスマン−マンドレルミル方式の製造工程を用いて熱間加工し造管して、所望寸法の継目無鋼管とする。
なお、造管後、空冷以上の冷却速度での冷却に続いて、さらに800℃以上の温度に再加熱したのち、空冷以上の冷却速度で100℃以下好ましくは室温まで冷却する焼入れ処理を施すことが好ましい。これにより、好ましくは適正量のフェライト相を含む、微細で高靭性のマルテンサイト組織とすることができる。焼入れ加熱温度が、800℃未満では、所望の強度を確保できなくなる。このため、焼入れ処理の加熱温度は800℃以上好ましくは1100℃以下の温度とすることが好ましい。
上記した本発明範囲内の組成を有する鋼管素材を用いて、通常の製造工程にしたがい得られた継目無鋼管以外の鋼管、例えば電縫鋼管、UOE鋼管では、造管後の鋼管に、上記した焼入れ−焼戻処理である、800℃以上の温度に再加熱したのち空冷以上の冷却速度で100℃以下好ましくは室温まで冷却する焼入れ処理と、ついで650℃以下、好ましくは500℃以上の温度に加熱し空冷以上の冷却速度で冷却する焼戻処理とを施すことが好ましい。
得られた継目無鋼管について、造管後冷却のままで内外表面の割れ発生の有無を目視で調査し、熱間加工性を評価した。なお、鋼管の前後端面で1mm以上の長さの割れが存在する場合を割れ有り(×)とし、それ以外を割れ無し(○)とした。
このように、造管後冷却のまま、あるいはさらに焼入れ−焼戻処理を施された試験片素材から、組織観察用試験片を採取し、組織観察用試験片を王水で腐食して走査型電子顕微鏡(400倍)で組織を撮像し、画像解析装置を用いて、フェライト相の組織分率(体積%)を算出した。
γ(体積率)=100/(1+(IαRγ/IγRγ))
ここで、Iα:αの積分強度
Rγ:αの結晶学的理論計算値
Iγ:γの積分強度
Rγ:γの結晶学的理論計算値
を用いて換算した。なお、マルテンサイト相の分率はこれらの相以外の残部として算出した。
また、造管後冷却のまま、あるいはさらに焼入れ−焼戻処理を施された試験片素材から、JIS Z 2242の規定に準拠して、Vノッチ試験片(5mm厚)を採取し、シャルピー衝撃試験を実施し、−40℃における吸収エネルギーvE-40を求め、靭性を評価した。
腐食試験は、オートクレーブ中に保持された試験液:20%NaCl水溶液(液温:220℃、100気圧のCO2ガス雰囲気) 中に、腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を2週間として実施した。腐食試験後の試験片について、重量を測定し、腐食試験前後の重量減から計算した腐食速度を求めた。また、試験後の腐食試験片について倍率:10倍のルーペを用いて試験片表面の孔食発生の有無を観察した。なお孔食が、直径0.3mm以上の場合を孔食発生有りとし、それ以外を孔食無しとした。
耐SSC試験は、試験容器中に保持された試験液:20%NaCl水溶液(液温:25℃、H2S:0.1気圧、CO2:0.9気圧の雰囲気、液pH:3.5(0.5%CH3COOH+CH3COONaで調整)) 中に、試験片を浸漬し、浸漬期間を30日(720h)とし、該試験片に100%SMYS(Specified Minimum Yield Strength)の応力を付加して、試験片の破断の有無を調査した。破断した場合を耐SCC性に劣るとして×、破断しなかった場合を耐SCC性に優れるとして○、として評価した。
得られた結果を表3に示す。
Claims (5)
- mass%で、
C:0.04%以下、 Si:0.50%以下、
Mn:0.20〜1.80%、 P:0.03%以下、
S:0.005%以下、 Cr:15.5〜17.5%、
Ni:2.5〜5.5%、 V:0.20%以下、
Mo:1.5〜3.5%、 W:0.50〜3.0%、
Al:0.05%以下、 N:0.15%以下、
O:0.006%以下
を、下記(1)〜(3)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、高靱性で、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管。
記
Cr+3.2Mo+2.6W−10C≧ 23.4 …(1)
Cr+Mo+0.5W+0.3Si−43.5C−0.4Mn−0.3Cu−Ni−9N≧11.5 …(2)
2.2 ≦ Mo+0.8W ≦4.5 …(3)
ここで、Cr、Mo、W、Si、C、Mn、Cu、Ni、N:各元素の含有量(mass%) - 前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:0.5〜3.5%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の油井用高強度ステンレス鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の油井用高強度ステンレス鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の油井用高強度ステンレス鋼管。
- マルテンサイト相をベース相とし、さらにフェライト相を体積率で、10〜50%含有する組織を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の油井用高強度ステンレス鋼管。
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