JP4983086B2 - 過酸化物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は過酸化物の製造方法に関する。
芳香族炭化水素化合物を酸化し、過酸化物を含有する酸化生成物を得る際は芳香族炭化水素化合物を酸化する工程(酸化工程)と未反応炭化水素化合物の少なくとも一部を蒸留などにより分離する工程(濃縮工程)からなる方法があり、特に濃縮工程において蒸留にて未反応炭化水素化合物の少なくとも一部を分離する際は過酸化物に過度に熱をかけるのを防ぐため、蒸留の圧力を減圧とし、なるべく低温で実施するのが一般的である(特許文献1)。
一方、蒸留分離する際、熱供給として使用される熱交換器は、操作を安定して行うことができ且つ熱交換効率の良い装置が望まれる。この方法として、イナートガスを熱交換器の受熱流体側に注入することが知られている(特許文献2)。
ところが、過酸化物を含有する酸化生成物を得る時に濃縮工程にて蒸留分離を実施する際、熱交換器にイナートガスを注入すると、濃縮工程における減圧度を安定に保てなくなり、圧力変動を起こす。その結果、工程内の温度上昇につながり、過酸化物は過度に加熱され、最悪の場合は、自己分解・爆発に至る可能性がある。
特公昭36−20012号公報 特開2000−283694号公報
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、未反応芳香族炭化水素化合物より低い沸点をもつ物質を液状で注入することにより、系内圧力を維持しながら熱交換器を安定して運転することが可能になると共に、熱交換効率の向上につながることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、キュメンを酸化し、過酸化物を含有する酸化反応生成物を得る酸化工程、該酸化反応生成物から未反応キュメンの少なくとも一部をフラッシュ型蒸留により分離する濃縮工程を有する過酸化物の製造方法であって、濃縮工程において、フラッシュ型蒸留塔への供給物を加熱する加熱用熱交換器の上流にキュメンよりも低い沸点を有する物質を液状で供給することを特徴とする過酸化物の製造方法に存する。
本発明によれば、濃縮工程において系内圧力を維持しながら熱交換器を安定して運転することが可能になると共に、熱交換効率が向上した過酸化物の製造方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
本発明に係る過酸化物の製造方法は、芳香族炭化水素化合物を酸化し、過酸化物を含有する酸化反応生成物を得る酸化工程、該酸化反応生成物から未反応炭化水素化合物の少なくとも一部を蒸留により、分離する濃縮工程を有する。斯かる過酸化物の製造方法自体は、周知であり、各種の過酸化物の製造方法が挙げられる。
上記の酸化工程に供給される芳香族炭化水素化合物の種類は、特に限定されないが、一般的には芳香族アルキル化合物が使用される。工業的には、アルキル基を1つ有する芳香族炭化水素化合物の例として、エチルベンゼン、キュメン、sec−ブチルベンゼン等が挙げられ、これらの誘導体の代表例である、アルキル基を2つ有する芳香族炭化水素化合物の例としては、ジイソプロピルベンゼン、シメン等が挙げられる。なお、芳香族炭化水素化合物の純度は特に限定されず、これら芳香族炭化水素化合物の混合物を使用することも出来る。
芳香族炭化水素化合物を酸化する方法は、特に制限されず、例えば、各種の無機酸化剤、有機酸化剤などを使用する方法が挙げられる。特に、ガス状の酸化剤を使用し、気泡塔を使用する方法が簡便で好ましい。気泡塔を使用する場合、通常、塔内の芳香族炭化水素化合物に酸素または酸素含有ガスを流通させることにより酸化行う。酸素含有ガスの例としては、酸素と不活性ガスの混合ガス、空気、空気と酸素の混合ガス等が挙げられ、これらの中では、入手の容易さから、空気または空気と酸素の混合ガスが好適に使用される。気泡塔を使用する場合の反応温度および反応圧力は、芳香族炭化水素化合物の組成、得られる過酸化物の濃度などにより、適宜に選択が可能である。反応温度は適当な酸化反応速度が得られ、かつ、生成した過酸化物の分解を防止するという観点から、通常50〜200℃の範囲である。また、反応圧力は、通常、常圧ないし加圧の範囲である。また、酸化を行うに際し、芳香族炭化水素化合物に酸化反応を開始させ、あるいは、酸化反応を促進させる等の目的で、反応開始剤や助剤、触媒などを共存させてもよい。
上記の濃縮工程に供給される酸化反応生成物の組成は、特に限定されないが、過酸化物濃度(重量)として、通常10〜90%、好ましくは20〜80%、更に好ましくは30〜70%である。過酸化物濃度が低すぎると、芳香族炭化水素化合物の回収量が多くなりエネルギーロスが大となる。過酸化物濃度が高すぎると、濃縮するに際し、系内で過酸化物の分解反応が起こる場合がある。また、供給流量は、特に限定されず、濃縮器での蒸留が安定的に実施される範囲で適宜選択することが出来る。
蒸留塔の塔頂における組成および流量は、特に限定されないが、塔底において必要な過酸化物濃度になるような蒸留条件に支配される。一方、蒸留塔の塔底における組成および流量は、特に限定されないが、組成に関しては、過酸化物濃度(重量)として、通常15〜95%、好ましくは20〜90%、更に好ましくは30〜90%である。過酸化物濃度が低すぎるということは、塔頂からの芳香族炭化水素化合物の回収量が少ないことを意味し、本発明の効果が有効に発揮されないこととなる。過酸化物濃度が高すぎると、過酸化物の分解反応が起こり易くなる。
蒸留塔の形式は、棚段、充填塔、フラッシュ型などの何れでも可能であり、材質は、芳香族炭化水素化合物および過酸化物で腐食されないもの、一般にカーボンスチールやステンレス材が使用される。蒸留塔の段数は、特に限定されないが、芳香族炭化水素化合物と過酸化物の沸点差は一般的に大きいため、蒸留に必要となる段数は、理論段として、通常1〜10段、好ましくは1〜7段、更に好ましくは1〜5段である。理論段が大きすぎると設備が大きくなり、エネルギーロスに繋がる。
蒸留温度は次の様に選択される。すなわち、過酸化物を取り扱う関係上、高温では分解反応が起こる。従って、蒸留温度は、通常150℃以下、好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下とされる。なお、蒸留圧力は、設定温度、蒸留塔の塔底における過酸化物濃度により規程されるが、常圧ないしは真空までの広い範囲の圧力が適用できる。
蒸留塔に付帯される熱交換器の種類は、特に限定されないが、一般的には多管式熱交換器が使用される。そして、その設置場所は、特に限定されないが、自然循環型リボイラーの場合は、比較的低い位置(地上、架台上、架構1〜3階程度)が一般的であり、強制循環型リボイラーの場合の位置は限定されない。予熱器タイプの熱交換器の場合や送液を重力で行う場合は、比較的高い位置(架構3〜7階程度)が一般的である。送液をポンプ等で圧送する場合の位置は限定されない。
熱交換器の熱媒は、特に限定されないが、過酸化物含有プロセスとの熱交換を行うため、過度に高い温度の熱媒は好ましくない。一般的には150℃程度以下の蒸気やプロセス流体が熱媒として使用される。熱媒の温度は、好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
本発明の特徴は、濃縮工程において、蒸留に使用する加熱用熱交換器の上流に当該芳香族炭化水素化合物よりも低い沸点を有する物質を液状で供給する点にある。この低い沸点を有する化合物は、特に限定されないが、一般的には系内に存在する物質や毒性の小さい物質が使用される。好ましくは、系内に存在し、毒性が小さく、容易に分離可能な物質として、ケトン類、アルデヒド類、アルコール類、ベンゼン、エーテル等の有機溶媒や水が使用される。更に好ましくは、芳香族炭化水素化合物との分離も容易な水が使用される。
低い沸点を有する化合物を液状で供給することにより、当該化合物が加熱用熱交換器に液状で到達し、気化することになる。この時に、加熱用熱交換器の伝熱面に生成している境膜を破壊するため、熱交換効率が向上するのではないかと考えられる。この様な機構であるため、低い沸点を有する化合物の供給量は少量で十分であり、気化した後も系内の圧力変動などを起こすことなく、安定した運転が可能となる。ガス状の化合物を供給した場合は、境膜破壊の効果が十分に得られないばかりか、供給量が多くなるため、系内の圧力変動を引き起こし、安定した運転が困難となる。
低い沸点を有する化合物の組成は限定されない。純品でもよいし、ケトン類、アルデヒド類、アルコール類、ベンゼン類、エーテル類の有機溶媒や水の内、2以上の混合物でもよい。低い沸点を有する化合物の温度は、特に限定されないが、過酸化物と接触するため、その安定性を考慮し、通常150℃以下、好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
低い沸点を有する化合物は、一般的には熱交換器上流に添加されるが、好ましくは、低い沸点を有する化合物の注入そのものが送液のドライビングフォースとなるため、熱交換器の上流直近に添加される。
加熱用熱交換器が蒸留塔への供給物を加熱する予熱器型熱交換器においては、濃縮工程をヘッドで送液する場合は、通常Uシール部を設け、複数器の圧力差を保つため、注入そのものが送液のドライビングホースとなる。また、ポンプで送液する場合は、ポンプ吸入側に入れると、ポンプがキャビテーションを起こす可能性があるので、予熱器の直近に供給できる吐出側に入れることが好ましい。
加熱用熱交換器が蒸留塔の塔底物を加熱するリボイラー型熱交換器においては、リボイラー内部にて、低い沸点を有する化合物を存在させるためにはリボイラー直近に供給することとなる。濃縮器に供給すると濃縮器の出口より供給物が排出されるためリボイラー内部に低い沸点を有する化合物が供給されない。リボイラー出口に供給する場合も同様である。
加熱用熱交換器として、蒸留塔への供給物を加熱する予熱器型熱交換器を使用する方法は、低い濃度の過酸化物を加熱するため、安全性の面から好適である。
低い沸点を有する化合物の添加量は、加熱用熱交換器の単位伝熱面積当たりの量として、通常1.5〜150g/h・m2、好ましくは5〜120g/h・m2、更に好ましくは7〜100g/h・m2である。低い沸点を有する化合物の添加量が少なすぎると連続して安定的に添加できなくなり、多すぎると熱交換器から供給される熱が低い沸点を有する化合物に気化に使用され、熱交換量が十分でない。
本発明の製造方法により得られる過酸化物(芳香族過酸化物)を、酸触媒などを使用して分解することにより、フェノール類の製造が可能である。ェノール類の製造方法の例としては、芳香族炭化水素化合物としてクメンやsec−ブチルベンゼンを使用したフェノールの製造方法、ジイソプロピルベンゼンを使用したレゾルシノールやハイドロキノンの製造方法、シメンを使用したクレゾールの製造方法などが挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の諸例において、組成分析については、ガスクロマトグラフィー(機種:島津GC−14A、カラム:DB−WAX)および過酸化物試験法(ヨウ化ナトリウムと酢酸混合液中で過酸化物が還元される時に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定)及び密度計(振動式)による濃度換算にて実施した。なお、「%」は重量%を意味する。また、「kPa−A」における「A」は絶対圧力、「kPa−G」における「G」はゲージ圧力を示す。また、「CHP」はキュメンヒドロぺルオキシドの略号である。
実施例1:
図1に示す濃縮系において、濃縮器(A)のボトム圧力を3.8kPa−Aとした。配管(1)より、110重量部(CHP60%、キュメン35%、その他5%)を、配管(2)より熱交換器(B)の単位伝面当たり7g/h・m2(92℃、3.8kPa−Aで170m3/hのガスに相当)で水(20℃)をフィードした後、予熱器で92℃まで加熱して濃縮器(A)へ供給した。配管(3)よりフレッシュキュメンを12重量部で供給し、配管(4)よりキュメンを主とする成分(43重量部)を、配管(5)よりCHP86%ストリーム79重量部を得、酸分解系(図示せず)へ供給し、安定した運転を継続した。
比較例1:
実施例1において、配管(2)の水のフィード流量を0g/h・m2にした以外は、実施例1と同様とした。実施例1の操作を行った後、水のフィード流量を0g/h・m2に変更したところ、圧力、温度が乱れ、配管(4)からの流量は33重量部となり、運転が不安定になった。
実施例2:
比較例1の操作の後、安定した運転の継続が不可能となる前に水のフィード流量を1.5g/h・m2(92℃、3.8kPa−Aで36m3/hのガスに相当)にしたところ、再び、系内の運転条件が安定した。
実施例3:
実施例1において、配管(2)の水のフィード流量を200g/h・m2(92℃、3.8kPa−Aで4864m3/hのガスに相当する)にした以外は、実施例1と同様とした。実施例1の操作を行った後、水のフィード流量を200g/h・m2に変更したところ、安定した運転は出来たが、配管(5)より得られるストリーム中のCHP濃度が80%程度まで低下した。水のフィード流量を180g/h・m2(92℃、3.8kPa−Aで4377m3/hのガスに相当)にするとCHP濃度が83%まで回復した。これは通常運転許容レベルである。
比較例2:
実施例1において、水の代わりに窒素を5.4Nm3/h(92℃、3.8kPa−Aで173m3/hのガスに相当)を供給した。5.4Nm3/hの窒素を供給する方法としては900kPa−Gの窒素を0.52m3/hで供給した。その結果、極少量の流量を安定に供給することが出来ず、濃縮器(A)の圧力、温度変動が激しくなり、安定した運転の継続が不可能となったため、窒素の供給を水の供給へ切り替えて運転を安定させた。
濃縮系のフローチャートの一例の概念図
符号の説明
A:濃縮器
B:熱交換器
1:配管
2:配管
3:配管
4:配管
5:配管

Claims (4)

  1. キュメンを酸化し、過酸化物を含有する酸化反応生成物を得る酸化工程、該酸化反応生成物から未反応キュメンの少なくとも一部をフラッシュ型蒸留により分離する濃縮工程を有する過酸化物の製造方法であって、濃縮工程において、フラッシュ型蒸留塔への供給物を加熱する加熱用熱交換器の上流にキュメンよりも低い沸点を有する物質を液状で供給することを特徴とする過酸化物の製造方法。
  2. 低い沸点を有する物質が水である請求項1に記載の製造方法。
  3. キュメンより低い沸点を有する化合物の供給量が加熱用熱交換器の単位伝熱面積当たり1.5〜150g/h・m2である請求項2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の製造方法で得られた過酸化物を原料の少なくとも一部として使用するフェノール類の製造方法。
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