しかしながら、重錘をバネで支持して構成した衝撃ダンパーにおいては、バネのみで重錘が支持されているため、重錘が振動した際にその軌道を拘束することができない。すなわち、重心が常に一定の軌道を通過するように重錘を振動させることができず、重錘の上下方向の振動が安定しない。このため、重錘の衝突箇所が一定にならず、安定した繰り返しの衝突を発生させることが難しく、やはり確実に制振対象物に作用した振動エネルギーを減衰させることができないという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑み、制振対象物に作用した振動エネルギーを確実に減衰させることが可能な制振装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の制振装置は、制振対象物に作用した振動エネルギーを減衰させて、前記制振対象物の揺れを抑えるための制振装置であって、回動軸を備え、前記制振対象物に固定して設けられる支持部と、先端側に重錘を備え、前記支持部の前記回動軸に後端側が繋がって前記回動軸の軸線回りの上下方向に回動自在に支持される振動体と、一端が前記制振対象物に、他端が前記回動軸と前記重錘の間の前記振動体の中間部にそれぞれ繋げられ、前記重錘を前記制振対象物と非接触状態にして前記振動体を支持するとともに、重力の影響をキャンセルし前記回動軸の軸線回りの上下方向に往復振動するように前記振動体を支持するバネと、静止した状態の前記振動体との間に隙間をあけて設けられ、前記振動体が前記回動軸の軸線回りに往復振動した際に該振動体が衝突する衝突体とを備えて構成されていることを特徴とする。
この発明においては、バネによって重錘を制振対象物と非接触状態にして振動体が支持されているため、重力の影響をキャンセルすることができる。また、振動体が回動軸によって回動自在に支持されているため、制振対象物に振動エネルギーが作用するとともに振動体を確実に安定した状態で往復振動させることができ、重錘の重心が常に一定の軌道を通るように振動体を振動させることが可能になる。これにより、衝突体に対し、確実に振動体を安定した状態で繰り返し衝突させることが可能になり、制振対象物に作用した振動エネルギーを確実に減衰させることが可能になる。
また、振動体を支持するバネが振動体の中間部に繋げられていることによって、重錘の固有周期を長周期化することが可能になり、確実に制振対象物に作用した振動エネルギーを減衰させることが可能になる。すなわち、本発明の制振装置においては、TMDのように重錘の固有周期を制振対象物の1次固有周期と同調させる必要はなく、制振対象物の1次固有周期よりも重錘の固有周期を長くすることで確実に振動エネルギーを減衰させることが可能になる。そして、振動体を支持するバネを重錘の重心位置から回動軸側に離れた位置に繋げて設置するほど、重錘の固有周期を長周期にすることができる。このため、振動体の中間部に、且つ制振対象物の1次固有周期に応じて重錘の重心位置から回動軸側に離してバネを設けることにより、確実に制振効果を発揮させることが可能になる。
さらに、TMDのように重錘の固有周期を制振対象物の1次固有周期と同調させる必要がないため、制振対象物の質量や剛性などが変動して1次固有周期が変化した場合においても、予めバネの位置を調整して、重錘の固有周期を制振対象物の1次固有周期よりも十分に長く設定しておくことで、TMDのようにその都度固有周期を再調整することなく、確実に制振効果を発揮させることが可能になる。
また、本発明の制振装置においては、前記衝突体が前記振動体の中間部に衝突するように設けられていることが望ましい。
この発明においては、従来の衝撃ダンパーのように重錘を容器(衝突体)に衝突させるものと比較し、振動体の中間部を衝突体に衝突させることによって、制振装置をコンパクトに形成することが可能になる。また、重錘を衝突体に衝突させるものよりも、確実に且つ容易に安定した衝突を発生させることが可能になる。
さらに、本発明の制振装置においては、前記振動体に前記回動軸の軸線方向と同方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記衝突体が前記貫通孔に挿通して設けられていることがより望ましい。
この発明においては、衝突体が振動体の貫通孔に挿通して設けられていることにより、振動体を挟んで外側に対向して衝突体(一対の衝突体)を設ける場合と比較し、制振装置をより確実にコンパクトに形成することが可能になるとともに、より確実に且つ容易に安定した衝突を発生させることが可能になる。
また、本発明の制振装置においては、前記衝突体及び/又は前記振動体に、前記振動体が衝突する前記衝突体の衝突部及び/又は前記衝突体に衝突する前記振動体の衝突部の位置を変えて、前記衝突体と前記振動体の間の前記隙間の大きさを調整するための調整手段が具備されていることがさらに望ましい。
この発明においては、例えば地震動や歩行振動、交通振動等、制振対象物に作用する振動エネルギーの大きさに応じて、調整手段で衝突体と振動体の間の隙間の大きさを調整することが可能になる。これにより、制振対象物に作用する振動エネルギーの大きさに適した隙間を形成するように衝突体と振動体を配置することが可能になり、確実に振動体を衝突体に衝突させて制振効果を発揮させることが可能になる。
さらに、本発明の制振装置においては、前記振動体が衝突する前記衝突体の衝突部及び/又は前記衝突体に衝突する前記振動体の衝突部に、粘弾性部材が設けられていることが望ましい。
この発明においては、衝突体の衝突部に振動体の衝突部が衝突する衝突時に、振動エネルギー(衝撃)を粘弾性部材で吸収して効果的に消散することが可能になる。これにより、確実に振動エネルギーを減衰させて、制振対象物の揺れを抑えることが可能になる。また、このように粘弾性部材が設けられることによって、衝突時の衝撃音を緩和することも可能になる。
本発明の制振装置によれば、バネを振動体の中間部に繋げて設け、且つ振動体を回動軸によって回動自在に設けることによって、重錘の固有周期を長周期化することができ、且つ安定した状態で衝突体に振動体を繰り返し衝突させることが可能になる。これにより、制振対象物の1次固有周期と同調させることを不要にして、制振対象物に作用した振動エネルギーを確実に減衰させることが可能になり、確実に制振対象物の揺れを抑える制振効果を発揮させることが可能になる。
また、振動体を上下方向に往復振動させるように構成することで、重錘を安定した状態で上下方向に振動させることができ、安定した繰り返しの衝突を発生させて、確実に制振対象物の上下振動を抑えることが可能である。
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る制振装置について説明する。本実施形態は、例えば超スパン構造物の梁や床などの制振対象物に設置されて、地震や歩行、交通振動等による上下方向の揺れ(上下振動)を抑えるための制振装置に関するものである。
本実施形態の制振装置Aは、図1に示すように、回動軸1aを備え、制振対象物Tに固定して設けられる支持部1と、先端側に重錘2を備え、支持部1の回動軸1aに後端側が繋がって回動軸1aの軸線O1回りに回動自在に支持される振動体3と、一端が制振対象物Tに、他端が振動体3にそれぞれ繋げられ、重錘2を制振対象物Tと非接触状態にして振動体3を支持するバネ4と、振動体3が回動軸1aの軸線O1回りに往復振動した際にこの振動体3が衝突する衝突体5とを備えて構成されている。
支持部1は、例えば金属製でL字状に形成した一対の支持部材1bに、回動軸1aがその軸線O1を横方向(水平方向)に配した状態で架け渡されて構成されている。また、一対の支持部材1bはそれぞれ、制振対象物Tに固設した基板6上にボルトで下端を固定し、互いの一側面を所定の間隔をあけつつ対向させた状態で立設されている。
さらに、各支持部材1bには、幅方向中央の上端側に、一側面から他側面に貫通し上下方向に延びる長孔1cが形成されており、各支持部材1bの長孔1cに端部を挿通させて回動軸1aが設けられている。また、回動軸1aは、両端部側の外周にそれぞれ雄ネジが形成されており、長孔1cに挿通して外側に突出した部分の雄ネジにナットが螺着されて、一対の支持部材1bに固定して支持されている。そして、この回動軸1aは、その上下位置が長孔1cの上下方向の形成範囲内で調整可能に設けられている。
振動体3は、梁部7(本実施形態ではH形鋼)を備えて構成され、梁部7の軸線(振動体3の軸線O2)方向後端側が支持部1の一対の支持部材1bの間に配置されるとともに回動軸1aに繋げられて、回動軸1aの軸線O1回りの上下方向に回動自在に支持されている。また、振動体3の重錘2は、梁部7の軸線O2方向先端側に設けられている。本実施形態においては、この重錘2がそれぞれ所定の重量をもって矩形板状に形成した複数の錘片2aで構成されており、複数の錘片2aは、梁部7(H形鋼)のウェブ7aと上下のフランジ7b、7cにそれぞれボルトによって着脱可能に取り付けられている。
また、梁部7には、図1から図3に示すように、回動軸1aと重錘2の間の中間部7dのウェブ7aに、回動軸1aの軸線O1方向と同方向に貫通する貫通孔8が形成されている。さらに、梁部7には、それぞれ正面視矩形状で板状に形成された一対の振動体側衝突部材9、10が設けられている。
一方の振動体側衝突部材9は、梁部7の軸線O2に沿って延設されるとともに、貫通孔8の上端側に重ね合わせるように設けられ、貫通孔8を挟んで梁部7の軸線O2方向後端側と先端側のウェブ7aに両端部をそれぞれボルト9aとナット9bで固定して設けられている。他方の振動体側衝突部材10は、梁部7の軸線O2に沿って延設されるとともに、貫通孔8の下端側に重ね合わせるように設けられ、一方の振動体側衝突部材9と同様に、貫通孔8を挟んで梁部7の軸線O2方向後端側と先端側のウェブ7aに両端部をそれぞれボルト10aとナット10bで固定して設けられている。
また、図3に示すように、一対の振動体側衝突部材9、10はそれぞれ、貫通孔8に重なる一部に直角に折れ曲がって形成された衝突部9c、10cを備え、この部分の断面形状がL字状に形成されている。そして、一対の振動体側衝突部材9、10はそれぞれ、衝突部9c、10cを貫通孔8に挿通して設置されている。
さらに、一対の振動体側衝突部材9、10をそれぞれ固定するためのボルト9a、10aが挿通する各ボルト挿通孔9d、10dは、図1に示すように、ウェブ7aに貫通形成されるとともに、上下方向に延びる長孔として形成されている。これにより、一対の振動体側衝突部材9、10はそれぞれ、上下位置をボルト挿通孔(長孔)9d、10dの上下方向の形成範囲内で調整可能に設けられている。また、一対の振動体側衝突部材9、10は、図3に示すように、互いの衝突部9c、10cを上下に間隔W1をあけて配置するように設けられ、この間隔W1がボルト挿通孔9d、10dを長孔で形成することによって調整可能とされている。そして、本実施形態においては、振動体3のボルト9a、10aとナット9b、10bとボルト挿通孔9d、10dが、本発明に係る調整手段の構成要素とされている。
バネ4は、図1に示すように、その軸線O3方向両端(一端と他端)にそれぞれ保持部材11、12が一体に取り付けられている。そして、バネ4は、一方の保持部材11を基板6にボルトで固定し、他方の保持部材12を振動体3の梁部7の上フランジ7bに固定して、保持部材11、12を介して両端を制振対象物Tと振動体3にそれぞれ繋げて設置されている。また、バネ4は、梁部7のウェブ7aを挟んで一方の側と他方の側の両側にそれぞれ1つずつ対向して配置されており、それぞれのバネ4が軸線O3方向を上下方向に向け、他端(他方の保持部材12)を回動軸1aと重錘2の間の振動体3の中間部7dに繋げて設けられている。
さらに、本実施形態においては、バネ4の他端を保持する他方の保持部材12に、バネ4の軸線O3と軸線を同軸上に配して外側に突出するボルトが設けられている。そして、このボルトを梁部7の上フランジ7bに形成した孔に挿通しナットを螺着することによって、バネ4の他端が振動体3に固定されている。このように設置したバネ4によって、振動体3は、重錘2を制振対象物Tと非接触状態にして支持されるとともに、回動軸1aの軸線O1回りに往復振動するように支持される。なお、本実施形態の制振装置Aにおいては、支持部1の回動軸1aの上下位置を調節したり、バネ4を保持する他方の保持部材12のボルトへのナットの螺入量を調節することによって、振動体3の静止位置を調整することができる。
衝突体5は、例えば金属製で、図1から図3に示すように、矩形平板状の一対の側板5aと、両側板5aの上端同士を繋ぐ矩形平板状の衝突板(衝突部)5bとを備えて断面コ字状に形成されている。そして、衝突体5は、衝突板5bが振動体3の一対の振動体側衝突部材9、10の衝突部9c、10cの間に挿通し、振動体3の貫通孔8に挿通して設置されている。すなわち、衝突体5は、振動体3が往復振動した際に回動軸1aと重錘2の間の振動体3の中間部7dに衝突するように設けられている。
また、衝突板(衝突部)5bの上面と下面にはそれぞれ、例えばゴムシートやウレタンゲルシートなどの粘弾性部材13が設けられている。そして、衝突体5は、図3に示すように、振動体3が静止した状態で、衝突板5bの上面側の粘弾性部材13と一方の振動体側衝突部材9の衝突部9cとの間、及び衝突板5bの下面側の粘弾性部材13と他方の振動体側衝突部材10の衝突部10cとの間にそれぞれ隙間W2をあけた状態で設置されている。
また、この衝突体5は、各側板5aにボルト挿通孔が貫通形成されており、図1及び図2に示すように、一対の側板5aをボルト14a、15aとナット14b、15bで一対の支持部材14、15にそれぞれ固定して設けられている。一対の支持部材14、15はそれぞれ、例えば金属製でL字状に形成されており、制振対象物Tに固設した基板6上にボルトで下端を固定し、振動体3を挟んで互いの一側面を対向させた状態で立設されている。また、各支持部材14、15には、幅方向中央の上端側に、一側面から他側面に貫通するボルト挿通孔14c、15cが形成されており、このボルト挿通孔14c、15cが上下方向に延びる長孔として形成されている。
そして、衝突体5は、側板5aのボルト挿通孔と支持部材14、15のボルト挿通孔14c、15cにボルト14a、15aを挿通し、このボルト14a、15aにナット14b、15bを螺着して一対の支持部材14、15ひいてはこれら支持部材14、15を介して制振対象物Tに固定して設けられている。このとき、支持部材14、15のボルト挿通孔14c、15cが長孔として形成されているため、衝突体5は、その上下位置をボルト挿通孔(長孔)14c、15cの上下方向の形成範囲内で調整可能に設けられている。これにより、図3に示した衝突板5bの上面側の粘弾性部材13と一方の振動体側衝突部材9の衝突部9cとの間、及び衝突板5bの下面側の粘弾性部材13と他方の振動体側衝突部材10の衝突部10cとの間の隙間W2の大きさが調整可能とされている。本実施形態においては、振動体3のボルト9a、10aとナット9b、10bとボルト挿通孔9d、10dに加え、ボルト14a、15aとナット14b、15bとボルト挿通孔14c、15cによって、本発明に係る調整手段が構成されている。
ついで、上記構成からなる制振装置Aの作用及び効果について説明する。ここで、図4は、図1から図3に示した本実施形態の制振装置Aを模式的に表したものであり、図1から図3に加え、この図4を参照して本実施形態の制振装置Aの作用及び効果を説明する。
本実施形態の制振装置Aにおいては、制振対象物Tに振動エネルギーが作用して制振対象物Tが上下方向に振動するとともに、回動軸1aに後端側が支持され、先端側に重錘2を設けた振動体3が、回動軸1aの軸線O1回りに回動して上下方向に振動する。このとき、バネ4によって重錘2を制振対象物Tと非接触状態にして振動体3が支持されて重力の影響がキャンセルされるため、回動軸1aによって回動自在に支持された振動体3は、制振対象物Tに振動エネルギーが作用するとともに確実に重錘2の重心が常に一定の軌道を通るように安定した状態で上下方向に往復振動することになる。
そして、このように制振対象物Tに振動エネルギーが作用して振動体3が上下方向に往復振動するとともに、振動体3の梁部7の貫通孔8に挿通した衝突体5の衝突板(衝突部)5bが、振動体3の梁部7に設けた一方の振動体側衝突部材9の衝突部9cと他方の振動体衝突部材10の衝突部10cに交互に繰り返し衝突する。
このとき、本実施形態の制振装置Aにおいては、振動体3の一対の振動体側衝突部材9、10の上下位置や、衝突体5の衝突板5b(粘弾性部材13)の上下位置が、それぞれ前記調整手段によって調整でき、衝突板5bの上面側の粘弾性部材13と一方の振動体側衝突部材9の衝突部9cとの間、及び衝突板5bの下面側の粘弾性部材13と他方の振動体側衝突部材10の衝突部10cとの間の隙間W2の大きさが調整可能とされている。
このため、制振対象物Tに作用する振動エネルギーの大きさに応じて、前記隙間W2の大きさを予め調整しておくことで、確実に且つ容易に、衝突体5の衝突板(衝突部)5bと、振動体3の一方の振動体側衝突部材9の衝突部9cと他方の振動体衝突部材10の衝突部10cとが、安定した状態で繰り返し衝突することになる。そして、このように振動体3の衝突部9c、10cが安定して繰り返し衝突体5の衝突板5bに衝突することによって、制振対象物Tに作用した振動エネルギーが吸収されて減衰し、制振対象物Tの上下方向の振動(揺れ)が確実に抑えられる。
また、このとき、衝突体5の衝突板5bの上面と下面に粘弾性部材13が設けられているため、振動体3の衝突部9c、10cがこれら粘弾性部材13に衝突することになる。そして、このように粘弾性部材13に衝突することで、衝突時の衝撃力が粘弾性部材13によって吸収される。このため、粘弾性部材13によって振動エネルギーが効果的に消散されることになり、より確実に振動エネルギーが減衰して制振対象物Tの振動が抑制されることになる。また、粘弾性部材13に振動体3の衝突部9c、10cを衝突させることで、衝突時の衝撃音が緩和される。
ここで、図4に示すように、重錘2の質量をM、バネ4の剛性をKs、回動軸1aから重錘2の重心までの距離(L)に対する回動軸1aからバネ4までの距離(nL)の比をnとすると、回動軸1aの軸線O1回りに回動して往復振動する振動体3の固有周期(Ts)は、式(1)で表される。
この式(1)から、バネ4を振動体3の重錘2の重心と同位置(n=1の位置)に設置した場合に対し、本実施形態の制振装置Aのように、バネ4を振動体3の中間部7b(0<n<1の位置)に設置した場合には、振動体3(重錘2)の固有周期が長くなる。また、バネ4の位置を重錘2の重心よりも回転軸1a側に離すほどに振動体3の固有周期が長周期化することになる。
そして、制振対象物Tの1次固有周期よりも振動体3の固有周期を長く設定することによって、効果的に振動エネルギーの減衰させることができるため、本実施形態の制振装置Aのように、バネ4を振動体3の中間部7dに繋げて設置して振動体3(重錘2)の固有周期を長周期化することで、従来のTMDのように制振対象物Tの1次固有周期と同調させる必要がなく、効果的に振動エネルギーが減衰することになる。
したがって、本実施形態の制振装置Aにおいては、バネ4によって重錘2を制振対象物Tと非接触状態にして振動体3が支持されているため、重力の影響をキャンセルすることが可能になる。また、振動体3が回動軸1aによって回動自在に支持されているため、制振対象物Tに振動エネルギーが作用するとともに振動体3を確実に安定した状態で上下方向に往復振動させることができ、重錘2の重心が常に一定の軌道を通るように振動体3を振動させることが可能になる。これにより、制振対象物Tが上下に振動する場合においても、衝突体5に対し、確実に振動体3を安定した状態で繰り返し衝突させることが可能になり、制振対象物Tに作用した振動エネルギーを確実に減衰させることができ、確実に制振対象物Tの揺れを抑える制振効果を発揮させることが可能になる。
また、振動体3を支持するバネ4を振動体3の中間部7dに繋げて設けることによって、TMDのように重錘2の固有周期を制振対象物Tの1次固有周期と同調させる必要はなく、制振対象物の1次固有周期よりも振動体3(重錘2)の固有周期を長くすることで確実に振動エネルギーを減衰させることが可能になる。そして、バネ4を重錘2の重心位置から回動軸1a側に離れた位置に繋げて設置するほど、重錘2の固有周期を長周期にすることができる。このため、振動体3の中間部7dに、且つ制振対象物Tの1次固有周期に応じて重錘2の重心位置から回動軸1a側に離してバネ4を設けることにより、確実に制振効果を発揮させることが可能になる。
さらに、TMDのように重錘2の固有周期を制振対象物Tの1次固有周期と同調させる必要がないため、制振対象物Tの質量や剛性などが変動して1次固有周期が変化した場合においても、予めバネ4の位置を調整して、重錘2の固有周期を制振対象物Tの1次固有周期よりも十分に長く設定しておくことで、TMDのようにその都度固有周期を再調整することなく、確実に制振効果を発揮させることが可能になる。
また、本実施形態の制振装置Aにおいては、衝突体5の衝突板(衝突部)5bが振動体3の中間部7dに衝突するように設けられ、且つこの衝突板5bが振動体3の梁部7に形成した貫通孔8に挿通して設けられていることにより、従来の衝撃ダンパーのように重錘2を容器(衝突体)に衝突させるものと比較し、さらに、振動体3を挟んで上下の外側に対向して衝突体(一対の衝突体)5を設けた場合と比較し、制振装置Aをコンパクトに形成することが可能になる。また、確実に且つ容易に安定した衝突を発生させることが可能になる。
また、衝突体5の衝突板(衝突部)5b及び振動体3の衝突部9c、10cの上下方向の位置を変えて、衝突体5と振動体3の間の隙間W2の大きさを調整するための調整手段が具備されていることにより、例えば地震動や歩行振動、交通振動等、制振対象物Tに作用する振動エネルギーの大きさに応じて、前記隙間W2の大きさを調整することが可能になる。これにより、制振対象物Tに作用する振動エネルギーの大きさに適した隙間W2を形成するように衝突体5の衝突部5bと振動体3の衝突部9c、10cを配置することが可能になり、確実に振動体3を衝突体5に衝突させて制振効果を発揮させることが可能になる。
さらに、衝突体5の衝突板5bに粘弾性部材13が設けられていることによって、衝突時に、振動エネルギー(衝撃)を粘弾性部材13で吸収して効果的に消散することが可能になる。これにより、確実に振動エネルギーを減衰させて、制振対象物Tの揺れを抑えることが可能になる。また、このように粘弾性部材13が設けられることによって、衝突時の衝撃音を緩和することも可能になる。
以上、本発明に係る制振装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、振動体3の梁部7に形成した貫通孔8に衝突体5の衝突部5bを挿通して、振動体3の衝突部9c、10cを繰り返し衝突させるものとしたが、振動体3を挟んで外側に対向して衝突体(一対の衝突体)5を設けて、振動体3を衝突させるように構成してもよい。
また、本実施形態では、衝突体5の衝突板(衝突部)5bに粘弾性部材13が設けられているものとしたが、粘弾性部材13を設けることに限定する必要はなく、さらに、粘弾性部材13を設ける場合においても、衝突体5の衝突部5bではなく振動体3の衝突部9c、10cに粘弾性部材13を設けたり、衝突体5と振動体3の両衝突部5b、9c、10cに粘弾性部材13を設けてもよい。
さらに、振動体3を横方向(水平方向)に往復振動するように構成して横方向の振動を抑える制振装置と、本実施形態に示した上下方向の振動を抑える制振装置Aとを併用して、制振対象物Tの上下方向と横方向の双方の揺れを抑える制振システムを構成してもよい。
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
本実施例は、振動台を用い、試験体(制振対象物T)に本発明に係る制振装置Aを設置した場合と、設置していない場合とでそれぞれ加振試験を行い、試験体Tの応答加速度を計測することによって本発明に係る制振装置Aの優位性を明らかにしたものである。また、本実施例では、正弦波加振、歩行加振、地震波(鉛直動)加振でそれぞれ試験を行っている。
ここで、図5及び図6に示すように、試験体Tには、長さHが3200mm、幅Bが1500mm、重量が972kg、固有振動数が6.5Hzの鉄板を用いた。そして、試験体Tは、振動台上に固定して設けた2つのH形鋼20で長さ方向両端部をそれぞれ支持して、振動台の上面との間に450mmの隙間Rをあけて設置した。
また、本実施例では、図1から図3に示した制振装置Aを用い、振動体3の重量を32kg、衝突体5の衝突部5b(粘弾性部材13)と振動体3の衝突部9c、10cの隙間W2をそれぞれ0.8mmとし、粘弾性部材13にはウレタンゲルシートを使用した。この制振装置Aは、固有振動数が1.6Hzであり、図5及び図6に示すように、試験体Tの略中央に固定して設置した。
図7は、試験体Tの1次固有振動数と同じ6.5Hzの振動数、入力加速度を30cm/sec2として正弦波加振を行った際の試験体Tの中央における応答加速度の経時変化を示している。
この結果から、本発明の制振装置Aを設置した場合には、設置していない場合よりも応答加速度が小さくなることが確認され、制振装置Aによって制振対象物(試験体)Tに作用した正弦波の振動エネルギーを確実に吸収して減衰させ、制振対象物Tの揺れを抑制できることが実証された。
また、図8は、入力加速度を30cm/sec2とし、振動数を変えて正弦波加振を行った際の応答加速度比(入力加速度/応答加速度)を示し、図9は、振動数を6.5Hzとし、入力加速度を変えて正弦波加振を行った際の最大応答加速度を示している。
そして、図8に示すように、制振装置Aを設置した場合には、設置していない場合よりも応答加速度比が小さくなり、また、図9に示すように、制振装置Aを設置することによって、広範の入力加速度において最大応答加速度が小さくなることが確認された。よって、これらの結果から、本発明の制振装置Aは、制振対象物(試験体)Tに作用する広範の振動数及び入力加速度の正弦波振動エネルギーを確実に減衰させ、制振対象物Tの揺れを抑制できることが実証された。
ついで、図10は、試験体Tを歩行加振した際の試験体Tの中央における応答加速度の経時変化を示しており、図10(a)は、制振装置Aを設置していない場合、図10(b)は、制振装置Aを設置した場合の試験結果を示している。
この結果、制振装置Aを設置した場合には、設置していない場合よりも応答加速度が小さくなることが確認され、歩行加振においても、制振装置Aによって制振対象物(試験体)Tに作用した振動エネルギーを確実に減衰させ、制振対象物Tの揺れを抑制できることが実証された。
ついで、図11は、試験体Tを地震波(鉛直動)加振した際の試験体Tの中央における応答加速度の経時変化を示しており、図11(a)はエルセントロ波による加振、図11(b)はタフト波による加振を行った試験結果を示している。
この結果、エルセントロ波で加振した場合とタフト波で加振した場合の試験結果ともに、制振装置Aを設置した場合には、設置していない場合よりも応答加速度が小さくなることが確認され、地震波(鉛直動)加振においても、制振装置Aによって制振対象物(試験体)Tに作用した振動エネルギーを確実に吸収して減衰させ、制振対象物Tの揺れを抑制できることが実証された。
したがって、本発明の制振装置は、正弦波加振、歩行加振、地震波(鉛直動)加振の全てのケースにおいて、制振対象物Tに作用した振動エネルギーを確実に吸収して減衰させることができ、制振対象物Tの揺れを確実に抑制できることが実証された。