JP5100978B2 - シリコンの脱リン精製装置及び方法 - Google Patents

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Description

本発明は、不純物濃度の高い安価な金属シリコン原料から、太陽電池等の製造に用いる高純度シリコンに精製するための精製装置及び精製方法に関する。
太陽電池製造用のシリコン原料は、これまで半導体製造プロセスで発生するスクラップシリコンが用いられてきた。しかしながら、近年の太陽電池需要の急速な伸びにより、スクラップの供給量が追いつかず、今後太陽電池用のシリコン原料の供給不足が懸念されている。半導体製造プロセスで使用されているシリコン原料はシーメンス法を用いて製造されているが、シーメンス法で製造したシリコン原料は高価であり、太陽電池製造プロセスに直接供給されるルートではコスト的に合わない。そこで、不純物濃度は高いが安価な金属シリコン原料から、真空溶解や凝固精製を用いて高純度シリコンを製造する冶金的プロセスの開発が進められてきた。
上記の冶金的プロセスは、不純物元素とシリコン(Si)との物理的な挙動の差を利用した幾つかの冶金的なサブプロセスを組み合わせて精製するプロセスである。リン(P)を代表とするSiよりも蒸気圧の高い不純物元素を除去するサブプロセスについては、真空溶解法の適用が検討されてきた。以下、真空溶解法によるリン除去(P除去)ないし脱リン(脱P)と言う表現を用いるが、P除去に伴ってP以外のSiよりも蒸気圧の高い不純物元素も除去される。
真空溶解法に用いる装置の基本的な構成としては、真空ポンプを有した減圧可能な真空容器の中にるつぼおよびヒーター等の加熱装置が設置される。るつぼ中に数十ppm以上の高いPを含有する金属シリコン原料を充填し、減圧下ないし不活性ガス下で加熱溶解し、溶湯を減圧下かつ融点以上の温度で一定時間保持する。Siよりも蒸気圧の高いPが選択的に蒸発するので、Si中のP濃度は時間と共に低下する。
これまで、(特許文献1)、(非特許文献1)、(非特許文献2)、(非特許文献3)、(非特許文献4)等の真空溶解法によるシリコン精錬の従来技術がある。それら従来技術においては、減圧可能な容器中に設置されたるつぼ及び一般的な加熱装置の組合せであり、装置コスト的には安価な構成となっている。しかしながら、P除去速度が低い、即ち、生産性が低く実用上問題がある。また、前記文献の中には、シリコン中のP濃度を太陽電池用原料として要求される0.05ppm程度以下にできない場合も報告されており、品質上の問題もあった。
一方、(非特許文献5)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)等の従来技術では、P除去速度が高く、生産コスト的には実用性を伴っている。しかしながら、これらの従来技術は電子ビーム溶解を前提としており、設備及び設備コストが莫大なものとなり、装置コスト的に実用上問題がある。特に、(特許文献2)、(特許文献7)に開示されているように、電子ビームを用いる方法では複数のるつぼを真空容器内にセットする必要があり、さらに大きな設備コストを要するという問題があった。
米国特許第4304763号明細書 特開平7−315827号公報 特開平7−309614号公報 特開平9−309716号公報 特開平10−167716号公報 特開平10−182130号公報 特開平11−209195号公報 特開2000−247623号公報 鈴木ら、日本金属学会誌、1990年2月、第54巻、第2号、p.161−167 Ikedaら、IISJ International、1992、Vol.32、No.5、p.635−642 湯下ら、日本金属学会誌、1997年10月、第61巻、第10号、p.1086−1093 森田、金属、アグネ技術センター、1999年、第69巻、第11号、p.949 太陽電池用原料技術組合、平成10年度エネルギー・産業技術総合開発機構、太陽電池シリコン原料製造技術の実用化解析に関する調査・研究、平成11年3月、p.81
そこで、本発明者らは、従来よりも簡便な手法として、不純物凝縮装置を用いたシリコン精製装置及び方法を特願2004−44255号として提案した。特願2004−44255号の発明は、真空ポンプを具備した減圧容器内に、シリコンを収容するるつぼと、該るつぼを加熱する加熱装置を少なくとも設置してなるシリコン精製装置であって、前記るつぼ内のシリコン溶湯表面又はるつぼ開口部の一方又は双方を見ることが可能な位置に不純物凝縮装置を配してなることを特徴とするシリコン精製装置を用いるものであり、簡便かつ安価な装置構成で十分なP除去速度を実現する低コストのシリコン精製装置及び精製方法を提供した。
ところが、発明の実施の過程で、真空溶解法によるP除去処理を妨げる以下のような新たな課題が明らかになった。
るつぼに保持したシリコン溶湯の形状がP除去処理速度に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。(溶湯の深さ)/(溶湯表面の直径)を溶湯のアスペクト比と定義する。従来の試験では、アスペクト比の小さな、即ち、浅型のるつぼで処理しており、その場合P除去速度は溶湯表面積に比例した。溶湯表面積を大きくする、即ち、径の大きなるつぼを使用することで、生産性を大きく取ることが可能であった。ところが、現実の処理装置ではさらにシリコン処理量を増やし、生産性を上げる必要があるため、ある程度大きなアスペクト比を持った深いるつぼ形状を選択せざるを得ない。そこで、アスペクト比の大きなるつぼでの試験を実施した結果、アスペクト比が大きくなるにしたがって、シリコン溶湯中のPの拡散が律速になることが分かった。即ち、シリコン溶湯の深さに比例して処理時間が増加するならば、単位質量当りの処理にかかる生産性に変化は無いが、それ以上に処理時間が延び、生産性が大きく悪化したのである。
そこで、本発明は、シリコン溶湯中のPの拡散を促進し、十分なP除去速度を具備したシリコンの脱P精製装置及びこれを用いたシリコンの脱P精製方法の提供を目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、
(1) 真空ポンプを具備した減圧容器内に、シリコンを収容するるつぼと、該るつぼを加熱する加熱装置、該るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置を少なくとも設置してなるシリコンの脱P精製装置であって、前記るつぼ内のシリコン溶湯表面又はるつぼ開口部の一方又は双方を見ることが可能な位置に不純物凝縮装置を配し、該不純物凝縮装置を昇降自在とする第1の昇降装置を有してなるシリコンの脱P精製装置、
(2) 前記るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置が、前記シリコン溶湯内に設置された攪拌羽根と該攪拌羽根を回転させる回転装置からなる(1)記載のシリコンの脱P精製装置、
(3) 前記るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置が、前記シリコン溶湯内に噴出口を配置した不活性ガス噴出管からなる(1)記載のシリコンの脱P精製装置、
(4) 前記るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置が、前記加熱装置の外側に配置した電磁石による誘導攪拌装置である(1)記載のシリコンの脱P精製装置、
(5) 前記不純物凝縮装置が、冷却装置を有する(1)〜(4)のいずれか一つに記載のシリコンの脱P精製装置、
(6) 前記減圧容器に、不純物凝縮装置を収容する準備室を配する(1)〜(5)のいずれか一つに記載のシリコンの脱P精製装置、
(7) 前記るつぼを昇降自在とする第2の昇降装置を有する(1)〜(4)のいずれか一つに記載のシリコンの脱P精製装置、
(8) (1)〜(7)のいずれか一つに記載のシリコンの脱P精製装置を用いたシリコン精製方法であって、減圧容器内を500Pa以下とし、るつぼ内のシリコンを融点以上に加熱しつつ、さらにシリコン溶湯を攪拌装置で攪拌しながら、シリコン溶湯中から蒸発するPを主体とする不純物を除去することを特徴とするシリコンの脱P精製方法、
である。
本発明により、シリコン溶湯中のPの拡散を促進し、大きなP除去速度が得られ、安価で高純度の太陽電池用シリコン原料を供給できる。
本発明は、減圧容器中にセットしたるつぼと一般的な加熱装置から成る簡便な装置によるシリコンの脱リン精製装置及び精製方法である。但し、脱リン(脱P)と言う名称でリン(P)の除去を目的とした装置及び方法と言う表現を用いるが、P以外に、例えば、アルミニウム(Al)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、スズ(Sn)、銀(Ag)、インジウム(In)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、およびタリウム(Tl)等のシリコン(Si)より蒸気圧の高い元素の除去についても、本発明は適用可能である。
第1の発明について、精製装置の構成を図1により説明する。まず、真空ポンプ1を備えた減圧可能な容器2に、シリコン溶湯3を保持するためのるつぼ4と、シリコンを溶解し液相状態に保持するための加熱装置5がセットされている。るつぼ4の上部には、溶湯攪拌装置6が配置されている。
真空ポンプ1は500Pa以下に減圧できれば良く、油回転ポンプのみでも十分であるが、容器2の大きさに応じてメカニカルブースターポンプを装備しても良く、油拡散ポンプやターボ分子ポンプを装備すれば、真空掃引時間の短縮やP除去時間をさらに短縮することも可能である。
るつぼ4は、シリコンとの反応気体が発生しない高密度黒鉛製が最適である。石英製のるつぼは、高真空下でシリコンと反応して酸化シリコン(SiO)気体を発生するので、高真空を維持できない、あるいは、湧きあがる気体によりシリコン溶湯が突沸するといった問題があり、シリコン精製における真空溶解には適さない。
加熱装置5は、シリコンの融点以上に加熱できればどのようなものでも適用できるが、黒鉛製等の発熱体に電圧を印加し、ジュール発熱でるつぼ4とシリコン溶湯3を加熱するヒーター加熱方式が最も簡便である。黒鉛るつぼ4の外側に誘導コイルを配置し、誘導電流による黒鉛製るつぼの加熱によってシリコン溶湯3を加熱する誘導加熱方式も低コストの加熱方式である。どちらの加熱装置も、一般に広く利用されている金属溶解のための簡便な加熱方式である。
本発明のポイントである溶湯攪拌装置6について詳細に説明する。図1の溶湯攪拌装置6は、攪拌羽根7、回転軸8、真空シール9、回転用モーター(回転装置)10、および昇降装置11から構成されている。溶湯内に攪拌羽根7を挿入し、回転用モーター10により回転軸8を通じて攪拌羽根7を回転させ、溶湯を攪拌する。攪拌羽根7の大きさについては、溶湯全体を十分に攪拌するために、るつぼ4の直径の0.3倍以上が好ましく、るつぼ内側との機械的なクリアランスを確保するために、0.95倍以下の径が好ましい。即ち、0.3〜0.95倍の範囲が好ましい。また、回転数は10rpm以上が好ましいが、大き過ぎるとシリコン溶湯が飛散する不具合があり120rpmまでの範囲が好ましい。即ち、10〜120rpmの範囲が好ましい。攪拌羽根及び回転軸の材質は、耐熱性に優れ、シリコンとの反応による劣化の少ない石英、アルミナおよびマグネシア等のセラミックス、あるいは黒鉛が望ましいが、黒鉛が最も優れている。但し、それらの材料を真空シール9と接する部分に用いると、加工精度や耐磨耗性に劣るため、リークの原因になり得る。そのため、回転軸8は分割式とし、上部はステンレス等の金属材料により構成することが望ましい。昇降装置11を具備することによって、るつぼに挿入される原料の状態やるつぼの位置に応じて、攪拌羽根7の挿入位置を調整可能である。また、攪拌羽根を回転させると同時に周期的に上下動させることによって、より大きな攪拌効果を得ることが可能である。上下動の周期は5〜30回転当り1回、ストロークはるつぼ底からメルト液面までの範囲でなるべく大きく取ることが好ましい。真空シール9は、回転軸が繰り返し回転及び上下動しても、容器2を真空状態に保持できる仕様(例えば、磁気シール)であることが望ましい。
図2は、溶湯攪拌装置6がガス導入機構によって構成されている場合である。溶湯攪拌装置6は、ガス導入用パイプ(不活性ガス噴出管)12、真空シール9、および昇降装置11から構成されている。溶湯内にガス導入用パイプ12を挿入し、溶湯内にガスを送り込んで溶湯を攪拌する。ガス導入用パイプ12の材質は、耐熱性に優れ、シリコンとの反応による劣化の少ない石英、アルミナおよびマグネシア等のセラミックス、あるいは黒鉛が望ましいが、黒鉛が最も優れている。但し、それらの材料を真空シール9と接する部分に用いると、加工精度や耐磨耗性に劣るため、リークの原因になり得る。そのため、ガス導入用パイプ12は分割式とし、上部はステンレス等の金属材料により構成することが望ましい。パイプ先端のガス噴出穴(噴出口)は単に1つ穴でも発明の効果が発現されるが、メルト中に設置できる範囲で複数個の穴を設置することで攪拌効果が大きくなる。穴径は噴出速度を大きくするためにできる限り小さな径が好ましいが、小さ過ぎると目詰まりを起こしてしまうため、0.5mm以上3mm以下の径が好ましい。また、先端部から水平方向に複数本のパイプを分岐させ、溶湯中心部だけでなく周囲部分にもガス噴出孔を設置することで攪拌の効果は大きくなる。前記複数本の分岐バイプにも複数個の噴出孔を設けることで攪拌効果はさらに大きくなるが、この場合にはパイプを回転させることで攪拌効果はより大きくなる。パイプを回転させることは、複数本のパイプを導入することも攪拌効果を大きくする上で効果的である。
昇降装置11を具備することによって、るつぼに挿入される原料の状態やるつぼの位置に応じて、ガス導入用パイプ12の挿入位置を調整可能である。真空シール9は、ガス導入用パイプ12が繰り返し上下動しても、容器2を真空状態に保持できる仕様(例えば、磁気シール)であることが望ましい。ガスの導入量は穴の径や個数に依存するが、ガス導入量が大き過ぎると容器内の真空度が下がり、P除去速度が低下する。真空容器や真空ポンプの排気能力にも依存するため、真空度が500Pa以下の圧力を維持できる量以下のガス導入量が好ましく、さらに好ましくは10Pa以下の圧力を維持できる量以下のガス導入量が好ましい。
図3は、溶湯攪拌装置6が加熱装置5の外側に配置した電磁石による電磁誘導攪拌装置によって構成されている場合である。電磁誘導攪拌装置は、攪拌力の及ぶ距離が比較的長いので、熱の影響が少ない真空容器2の外側に配置される。通常の熱対流と異なる流動を励起することで、Si中のPの拡散速度が大きく向上する。電磁コイル13のスロット数(磁極数、一般的には12程度)、ポール数(電磁界の周期が1周当りn周期の場合に2×n、一般的には2ないし4)は、一般的な仕様で良い。周波数は0.1〜10Hz程度が好ましい。周波数が小さいほど電磁界の誘起される距離が大きくなるので、装置の大型化に対し周波数は小さい方が好ましい。シリコンに与えられる攪拌力は10N/m3程度になる。
第5の発明は、第1の発明で記載したシリコンの脱P精製装置に不純物凝縮装置を付加した脱P精製装置である。図4によって詳細に説明する。図4に記載した符号14が不純物凝縮装置の不純物凝縮部である。不純物凝縮部14は、るつぼ4の上部の溶湯表面及びるつぼ開口部を見ることが可能な位置(見込む位置)に配置されており、溶湯表面から蒸発したPは、SiおよびSiOと共に不純物凝縮部14の表面にトラップされ、不純物凝縮部14の表面にPが高濃度に濃縮されたSi−SiOの膜が付着する。図4の不純物凝縮部14は、鉄、ステンレス、および銅等の金属、黒鉛、アルミナ、あるいはそれらの複数の素材を組み合わせた円筒である。
第6の発明は、不純物凝縮部14に水等の冷媒15を導入して冷却する冷却装置を付加したものである。冷媒15を図中の矢印の向きに流すことにより不純物凝縮部14の表面を冷却する。表面を冷却することによって、P除去効果はさらに増大する。
第7の発明は、図4のように、不純物凝縮装置に昇降装置(第1の昇降装置)20を付加したシリコン精製装置である。このような構成にすると、不純物凝縮部14と溶湯表面の距離、あるいは、不純物凝縮部14とるつぼ開口部の距離を最適に保つことが可能となる。
第8の発明を図4(a)及び図4(b)によって説明するが、本発明は、連続操業において欠かせない装置構成である。不純物凝縮部14には、Pが高濃度に濃縮されたSi−SiOの膜が付着するが、一定以上の膜厚になると剥離して処理シリコン中に落下しP濃度が再上昇するため、定期的に清掃する必要がある。図4の装置では、減圧可能な容器は処理室16と予備排気室17(準備室)から成っており、処理室16と予備排気室17はゲートバルブ18によって仕切ることができる。処理室16と予備排気室17はそれぞれに真空ポンプ1,1’を装備しており、処理室16の真空を破ることなく、予備排気室17を大気圧から減圧、減圧から大気圧に自由に行き来することができる。不純物凝縮部14は、ゲートバルブ18の位置を跨いで、処理室16と予備排気室17の間を自由に移動する昇降装置20を具備している。ゲートバルブ18が開閉するため、溶湯攪拌用攪拌羽根7も昇降機構11によって処理室16と予備排気室17の間を移動可能とする機構になっている。また、予備排気室17は、不純物凝縮部14を清掃したり、溶湯攪拌装置6の部品交換をしたりするための扉19を装備している。尚、図4(a)は、不純物除去中の装置の状態であり、溶湯攪拌用攪拌羽根7及び不純物凝縮部14が処理室16にある。図4(b)は、不純物凝縮部14を清掃している場合の装置状態であり、溶湯攪拌用攪拌羽根7及び不純物凝縮部14が予備排気室17にある。
第9の発明は、るつぼ4に昇降装置(第2の昇降装置)を付加したシリコン精製装置である。第7の発明と同様、不純物凝縮部14と溶湯表面の距離、あるいは不純物凝縮部14とるつぼ開口部の距離を最適に保つことが可能となる。
第10の発明は、前記第1〜9の発明の装置を用いて、容器内を500Pa以下に減圧し、シリコンを融点以上に加熱して溶解保持するシリコン精製方法である。本方法により、PのSi溶湯中の拡散律速、ないしSi溶湯中の拡散律速とPの気相拡散律速の双方を解消し、シリコン中から高い除去速度での不純物元素の除去が可能である。500Paより高い圧力下では、不純物除去速度が低く、実用上の問題がある。また、好ましくは10Pa以下に減圧することで高い不純物除去速度が得られる。
さて、本発明が不純物除去速度を向上させている原理について、Pの除去を例に取り説明する。ここでPをSiより蒸気圧の高い元素の代表として記載するのであり、下記に記載する基本原理は、Siより蒸気圧の高い全ての元素、例えば、Al、As、Sb、Li、Mg、Zn、Na、Ca、Ni、Ge、Cu、Sn、Ag、In、Mn、Pb、およびTl等のSiより蒸気圧の高い元素の除去について適用可能である。
PをSi液相中から除去するプロセスは、(a)Si液相中でのPの拡散、(b)Si液相表面から気相へのPの蒸発、(c)気相中でのPの拡散、の3つの素過程からなっている。即ち、PはSi液相中を拡散し、気液界面に到達した後、気液界面で蒸発する。Pの移動を最も律速している(a)〜(c)のいずれかの素過程がトータルのP除去速度を決めている。
まず、本発明の溶湯攪拌装置がP除去速度を向上させている原理を述べる。シリコン溶湯の深さが浅い場合には、液相中のPの拡散は十分に速く、シリコン溶湯の深さ方向でPの濃度差は殆どつかないので、(a)の液相中拡散は律速過程ではない。ところが、シリコン溶湯の深さが深くなると、液相中のPの移動速度が(浅いときと)変わらなくても、シリコン溶湯の深さ方向でPの濃度差がついてしまい、(b)の反応過程の駆動力を減らし、したがってP除去速度が低下する。具体的には、シリコン溶湯の深さがおよそ100mmまでの範囲では、シリコン溶湯深さに比例してP除去処理時間が増え、P除去速度はシリコン溶湯深さに依らない。ところが、シリコン溶湯の深さが100mmを超えると、シリコン溶湯深さに比例したP除去処理時間よりも明らかに長い時間P除去処理を行う必要が生じた。さらに、シリコン溶湯の深さがおよそ500mmを超える範囲では、P除去処理の時間はシリコン溶湯の深さのおよそ2乗に比例するようになり、P除去速度はシリコン溶湯深さにおよそ反比例したのである。本発明の溶湯攪拌装置を用いれば、液相中のPの移動速度そのものが大きくなるので、シリコン溶湯の深さが深くなってもシリコン溶湯の深さ方向でPの濃度差が小さくなり、(a)の液相中拡散が律速する度合いを弱めることができる。
次に、本発明の不純物凝縮装置がP除去速度を向上させている原理を述べる。溶湯表面から離脱したP分子は、真空ポンプまで排気されるか、減圧容器内のあらゆる表面に到達し付着する。しかしながら、Pは蒸気圧が高いことからも分るように、付着係数が低く、再蒸発の確率が高い。特に、減圧容器内は輻射や伝熱により高温になっており、再蒸発の確率はさらに高い。したがって、Pは速やかに系外に排気されず、速やかに気相中のP濃度が低減できないのである。前記の電子ビーム溶解法を用いない従来技術においては、気相中に離脱したPを単に真空ポンプに排気するだけでは気相中のP濃度が低下する速度が遅く、P蒸発の駆動力が小さいため、P除去速度が小さいのである。即ち、従来技術では、前記(c)のPの気相中拡散が律速過程となっていた。
さて、Pと比較してSiの蒸気圧は低いが、Si中のPは元々数十ppmの濃度であるため、蒸発量としてはSiの方が大きい。したがって、本発明の不純物凝縮装置の表面には、常にSi又はSiOの一方又は双方が飛来する。表面の温度はSi及びSiOの融点以下のため、Si又はSiOの一方又は双方は固化・蒸着される。但し、SiOは、Si液相中もしくは気相中の一方もしくは双方に残存するO2(酸素)、又はリークによるO2の一方又は双方と、Si蒸気が反応して生成したものである。もし、不純物凝縮装置の表面にPだけが飛来したなら、Pは再蒸発する確率が高い。しかし、Pがまさに今飛来した表面でSi又はSiOの一方又は双方が固化しているなら、PはSi及びSiOと親和性が高いため、Pはそれらの固体中に固溶固化、即ち、トラップされる。即ち、気相から速やかに除去されるのである。即ち、本発明の不純物凝縮装置は、Pの気相中の拡散速度を飛躍的に増大させ、気相拡散の過程の律速の度合いを弱めるのである。
(実施例1)
使用した装置の概要を示す。基本構造は図1に準じている。真空容器は水冷ジャケット構造で、油回転ポンプおよびメカニカルブースターポンプの2段の真空ポンプを備えている。真空容器内には、外径1000mm内径900mm深さ(内寸)700mmの高純度黒鉛製のるつぼ、るつぼの側面と底面を覆う位置に高純度黒鉛製ヒーター、それらの外側にカーボン製断熱材が設置されている。黒鉛製のヒーターは最大で300kWの電力を投入できる。
シリコン溶湯攪拌装置は、基本的に高密度黒鉛製の600mmφ2枚羽根形状の攪拌羽根であり、長さ1500mm径50mmの高密度黒鉛製回転軸に取り付け、さらに前記の回転軸をステンレス製の回転軸に連結している。真空容器の導入穴に真空シール機構を取り付け、前記ステンレス製の回転軸の部分で大気をシールしている。ステンレス軸は、さらに、回転モーター及び昇降機構に連結されており、真空シール機構は、ステンレス軸の回転と昇降においても容器内を真空に保てる仕様になっている。回転数は最大60rpm、昇降のストロークは1000mmとした。
P除去処理は、冷間でシリコン原料をるつぼに充填した後に、真空掃引する。5.0Pa以下の真空度になった後、ヒーターに通電して溶解を開始した。全てのシリコン原料が完全に溶解終了した後、真空中で加熱保持した。充填するシリコン原料は、初期P濃度が30ppmのものを用いた。処理後のシリコンのP濃度はICP発光分析法を用いて測定し、時間及びシリコン量を考慮してP除去速度を評価した。
実施例、比較例共に、150、300、600、900kgのシリコン原料を処理し、P除去速度のシリコン溶湯深さ依存性を試験した。処理時間は、溶湯質量に比例させており、150、300、600、900kgのシリコン原料に対し、溶解完了確認後にそれぞれ2、4、8、12時間の処理を施した。実施例では、溶解前には攪拌羽根をるつぼの上方に退避させておき、溶解後に攪拌羽根を溶湯内に挿入し、30rpmで回転させた。比較例では、攪拌羽根による攪拌を実施しなかった。
表1に比較例、表2に本実施例の結果を記載した。攪拌を実施しなかった場合には、P除去速度はシリコン量にほぼ反比例して小さくなった。攪拌を実施した場合には、P除去速度はシリコン量を多くするに従い若干小さくなったが、同じシリコン量で比較例と比べると、処理速度は1.15〜4.5倍大きく、攪拌の効果は非常に高い。
(実施例2)
本実施例では、実施例1に記載した装置と同一の装置を用い、同一の条件でシリコンを処理した。相違点は、実施例1で用いた黒鉛製の攪拌羽根と回転軸、ステンレス製回転軸、及びモーターを取り外し、黒鉛製の外径30mm内径20mm長さ1500mmのパイプをステンレスのパイプに繋いだガス配管に付け替えた。シリコン溶湯には、黒鉛パイプが挿入できるようになっており、ステンレスパイプが真空容器の真空シール部分を通過する構造である。ステンレスパイプはArガスボンベに接続され、シリコン溶湯にArガスを導入できるようにした。実施例1と同様に、溶解前にはパイプをるつぼの上方に退避させておき、溶解後にパイプを溶湯内に挿入し、溶湯内にArを導入した。導入したAr量は1.0mL/min、真空度は10Paで処理した。
表3に本実施例の結果を記載した。本実施例でも実施例1と同様、シリコン量を多くするに従いP除去速度は若干小さくなったが、同じシリコン量で比較例と比べると、処理速度は1.02〜4.0倍大きく、攪拌の効果は顕著であった。
(実施例3)
本実施例でも、実施例1に記載した装置と同一の装置を用い、同一の条件でシリコンを処理した。相違点は、実施例1で用いた黒鉛製の攪拌羽根と回転軸、ステンレス製回転軸、及びモーターを取り外し、真空容器の外側に誘導攪拌のための電磁コイルを取り付けた。電磁コイル全体のおおよその形状は、外径3300mm内径2500mm高さ1000mmのドーナツ形状である。スロットは12で磁極の鉄芯の形状は長さ300mmで200mm×500mmの矩形断面とし、各磁極のコイルは300ターンとした。周波数は2Hz、ポール数は4で設計した。
表4に本実施例の結果を記載した。本実施例でも実施例1と同様、シリコン量を多くするに従いP除去速度は若干小さくなったが、同じシリコン量で比較例と比べると、処理速度は1.06〜4.2倍大きく、攪拌の効果は顕著であった。
(実施例4)
本実施例では、図4の仕様に類似した装置により900kgのシリコンを精製した(表5)。不純物凝縮装置を用いなかった場合、不純物凝縮装置を用いたがその清掃を実施しなかった場合、不純物凝縮装置を用いたが2時間おきに不純物凝縮部を清掃した場合の3ケースで比較した。不純物凝縮装置を用いなかった場合には、実施例1とほぼ同じP除去速度であった。不純物凝縮装置を用いた場合は、不純物凝縮装置を用いなかった場合と比較して、3倍程度のP除去速度となった。不純物凝縮装置を清掃した場合は、不純物凝縮装置を用いなかった場合と比較して、5倍程度のP除去速度となった。
本件発明のシリコン精製装置の概念図(攪拌羽根攪拌)である。 本件発明のシリコン精製装置の概念図(ガス攪拌)である。 本件発明のシリコン精製装置の概念図(電磁攪拌)である。 不純物凝縮装置を付加した装置の概念図であって、P除去処理時の装置状態である。 不純物凝縮装置を付加した装置の概念図であって、不純物凝縮装置を清掃する時の装置状態である。
符号の説明
1 真空ポンプ、
2 減圧可能な容器、
3 シリコン溶湯、
4 るつぼ、
5 加熱装置、
6 溶湯攪拌装置、
7 攪拌羽根、
8 回転軸、
9 真空シール、
10 モーター、
11 昇降装置、
12 ガス導入パイプ、
13 電磁コイル、
14 不純物凝縮部、
15 冷媒、
16 処理室、
17 予備室、
18 ゲートバルブ、
19 扉、
20 不純物凝縮部用の昇降装置。

Claims (8)

  1. 真空ポンプを具備した減圧容器内に、シリコンを収容するるつぼと、該るつぼを加熱する加熱装置、該るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置を少なくとも設置してなるシリコンの脱リン精製装置であって、
    前記るつぼ内のシリコン溶湯表面又はるつぼ開口部の一方又は双方を見ることが可能な位置に不純物凝縮装置を配し、該不純物凝縮装置を昇降自在とする第1の昇降装置を有してなるシリコンの脱リン精製装置。
  2. 前記るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置が、前記シリコン溶湯内に設置された攪拌羽根と該攪拌羽根を回転させる回転装置からなる請求項1記載のシリコンの脱リン精製装置。
  3. 前記るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置が、前記シリコン溶湯内に噴出口を配置した不活性ガス噴出管からなる請求項1記載のシリコンの脱リン精製装置。
  4. 前記るつぼ内に収容されたシリコン溶湯の攪拌装置が、前記加熱装置の外側に配置した電磁石による誘導攪拌装置である請求項1に記載のシリコンの脱リン精製装置。
  5. 前記不純物凝縮装置が、冷却装置を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコンの脱リン精製装置。
  6. 前記減圧容器に、不純物凝縮装置を収容する準備室を配する請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコンの脱リン精製装置。
  7. 前記るつぼを昇降自在とする第2の昇降装置を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコンの脱リン精製装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコンの脱リン精製装置を用いたシリコン精製方法であって、
    減圧容器内を500Pa以下とし、るつぼ内のシリコンを融点以上に加熱しつつ、さらにシリコン溶湯を攪拌装置で攪拌しながら、シリコン溶湯中から蒸発するリンを主体とする不純物を除去することを特徴とするシリコンの脱リン精製方法。
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