JP5111701B2 - アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法に関し、より詳細にはリン酸塩浴でアルミニウムまたはアルミニウム合金を皮膜化成処理する工程を有する表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムまたはアルミニウム合金は、家庭用品、家具、電気機器、建材等の広範な分野において利用されており、さらには、例えば飲料用缶の用途においても、重量のある鋼鉄製の缶に比べて軽量であるアルミニウムまたはアルミニウム合金の缶が大量に利用されている。
【0003】
これらアルミニウムまたはアルミニウム合金は、形成される自然酸化皮膜が不均一であるために耐食性が不足し、また、表面に塗装を行うときには、この酸化皮膜が塗料の密着性を阻害するため、表面処理を行うことが必須である。
【0004】
アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理としては、鉄鋼の場合と同様に、サンドブラスト、バフ研磨などの機械的処理とともに化学的処理が施される。
【0005】
このうち、後者の化学的処理についての標準的な工程は、脱脂→水洗→皮膜化成→水洗→乾燥である。さらに、脱脂に先立ち予備的に薬液洗浄や水洗が行われ、あるいは、皮膜化成の前にエッチング、水洗等が行われることもある。
【0006】
例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いた飲料用缶の表面処理を行うとき、上記した各処理を行うための一連の浴が並べられた処理工程において、開口を下向きに配置した缶が無端のメッシュコンベア上に配置されて連続的に搬送され、順次処理が施される。
【0007】
皮膜化成処理工程では、例えばリン酸塩浴上を搬送される缶の上下からリン酸塩の液が缶に対してスプレーされ、皮膜化成が行われる。スプレー後のリン酸塩の液はリン酸塩浴に回収され循環使用される。
【0008】
上記皮膜化成処理を含む一連の表面処理は、予め各浴に所定の組成の液を準備した状態、すなわち、建浴した後、作業が開始される。無数の缶に対して表面処理が繰り返し施されるにつれて、皮膜化成処理工程ではリン酸塩の濃度が低下するため、逐次新たなリン酸塩の液の補給が行われる。
【0009】
この場合、作業開始後の所定期間、例えば1〜2日の間は、液組成が不安定になりやすく、所謂不安定浴の状態にあるが、その後は、液組成が安定化し、所謂安定浴の状態に至る。
【0010】
安定浴になると、その後は原理的には無限に安定した処理を行うことが可能である。処理対象の缶の需給条件や作業態勢等の諸事情により例えば日中のみ処理して夜間は処理を休止する場合においても、休止後処理を再開するときには、休止前の浴を用いて直ちに安定した処理を行うことができる。
【0011】
したがって、皮膜化成処理においては、建浴後、リン酸塩の液の組成が安定する安定浴に至るまでの数日間の運転管理に、より注力することになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の皮膜化成処理の場合、建浴後、リン酸塩の液の組成が安定する安定浴に至るまでの数日間の運転管理方法として、使用液の電気伝導度のオンライン測定に基づいて新しい液の自動補給管理を行い、また、これと合わせてオンラインあるいはオフラインで使用液のpH測定を所定の頻度で行ってリン酸塩の液の正確な濃度を把握して新しい液の補給条件を修正する等によって安定した皮膜化成処理を行うべく努力しているが、このような管理は煩雑であり、かつこのような煩雑な管理を行っているにも関わらず、リン酸塩の液の組成が管理範囲を外れ、これにより皮膜化成不良を生じることを完全に回避することができていないのが実情である。そして、このような皮膜化成不良より短時間のうちに缶の不良品を大量に発生することになる。
【0013】
また、リン酸塩の液として、リン酸イオンとともに六フッ化ジルコニウム酸を含む処理液を用いる場合、基本的にはリン酸ジルコニウム皮膜がアルミニウム表面に形成されることにより耐食性の向上が図られるが、リン酸塩の液中の缶から溶出したアルミニウムの濃度とフッ素の濃度とのバランスを厳密に管理する必要があるため、これらの濃度バランスが崩れたときには、皮膜化成不良の不具合がより顕在化し易い。
【0014】
また、建浴直後は、プロセスが安定化していないために、例えばトラブルにより浴中に過剰の給水が行われる等の現象が発生して浴中のフッ素の濃度の変動を生じることがあるが、このときのフッ素の濃度の変動は皮膜化成の良否に大きく影響する。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、建浴後の立ちあがり期間において安定した皮膜化成処理を行うことができるアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法は、リン酸塩浴でアルミニウムまたはアルミニウム合金を皮膜化成処理する工程を有し、建浴時に、該リン酸塩浴中に所定のアルミニウムイオン濃度になるようにアルミニウム塩を添加しておくことを特徴とする。
【0017】
ここで、アルミニウムイオンの所定濃度(重量濃度)は、一律ではなく、アルミニウムまたはアルミニウム合金の所要の化成皮膜量等の処理条件や、リン酸塩浴の条件等、具体的な皮膜化成処理プロセスごとに異なるものであり、当該プロセスごとに実験的に最適なアルミニウムイオンの濃度を把握し、設定する。このアルミニウムイオンの濃度は、皮膜化成処理プロセスが異なっても概ね数十〜数百ppmの範囲内にある。
【0018】
従来の皮膜化成処理においては、建浴後の1〜2日間の立ちあがり期間において、前記したように、循環使用中のリン酸塩液の電気伝導度のオンライン測定に基づいて新しい液の自動補給管理を行っている。但し、処理が進むに連れて浴中に缶から溶出したアルミニウムイオンが蓄積し、循環使用する液中のアルミニウムイオン濃度が次第に上昇し、この結果、液の電気伝導度の測定値が変化し、真の液の組成と対応しなくなる。すなわち、仮に真のリン酸塩液の組成が一定であっても、リン酸塩液中のアルミニウムイオン濃度の上昇に伴い、液中の水素イオンが還元されて水素ガスとなり、液中の水素イオン濃度が低下し、液の電気伝導度の測定値(指示値)が低下する。この結果、新しい液が必要量よりも過剰に注入され、浴中のリン酸塩液の実際の濃度が規定値よりも高くなる。
【0019】
この状態を看過すると、アルミニウムあるいはアルミニウム合金はフッ素によるエッチング過多となり、耐食性の低い皮膜が形成される不具合を生じる。一方、浴中のリン酸塩液の濃度が規定値よりも低くなったときには、フッ素不足により皮膜を十分に形成することができず、耐食性が不十分となる。このため、例えば立ち上がり期間中は、その後の安定時に比べて高い頻度で、例えば30分間隔で浴のリン酸塩液のpHを測定してリン酸塩液の正しい組成を把握し、この結果に基づいて、電気伝導度の設定値を漸次下方修正することにより新しい液の補給条件の修正を行っている。
【0020】
しかしながら、このような、pHの測定結果に基づくアクションは、ときとして、作業状況によりpH測定のタイミングが遅れ、あるいは、測定のタイミングを逸する事態を生じることもあり、この場合、リン酸塩液の組成が規定値を外れることになる。また、30分間隔でのpHの測定結果に基づくアクションを確実に行ったたとしても、その30分の間に生じるリン酸塩液の組成変化を避けることができない。
【0021】
これに対して、本発明によれば、事前の実験等により、対象となる皮膜化成処理系における安定浴のリン酸塩液中のアルミニウムイオン濃度を把握し、建浴時に、予め浴中にアルミニウムイオンを添加し、建浴当初から安定浴のリン酸塩液中のアルミニウムイオン濃度を保持するため、建浴後の立ちあがり期間中においても、従来と同様の態勢で電気伝導度およびpHの測定管理を行うことにより、安定した皮膜化成処理を行うことができる。
【0022】
この場合、前記リン酸塩浴が、リン酸イオンと、ジルコニウム塩とを含み、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金が、飲料用缶材料であると、好適である。
【0023】
従来の場合、浴中に溶出したアルミニウムイオンおよびフッ素の濃度のバランスを所定の条件に確実に維持できないときに皮膜化成不良を容易に生じるおそれがあり、特に建浴直後の立ち上がり期間にはアルミニウムイオン濃度が刻々と変化するためにフッ素の濃度とのバランスをとることがより難しく、かつ、溶出するアルミニウムイオンの濃度が低いためにフッ素の濃度の僅かな変化が皮膜化成不良を招くおそれがある。また、このとき、建浴直後の給水バランスの乱れによるフッ素の濃度変動の影響も無視できない。これに対し、本発明によれば、建浴当初から安定浴のリン酸塩液中のアルミニウムイオン濃度を保持するため、建浴後の立ちあがり期間中においても、従来と同様の態勢で電気伝導度およびpHの測定管理を行うことにより、安定した皮膜化成処理を行うことができる。
【0024】
また、この場合、前記リン酸塩浴中のアルミニウムおよびフッ素の重量比が略1:2(アルミニウム重量:フッ素重量≒1:2)であると好適である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に係るアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、飲料用のアルミ缶を例にとり、以下に説明する。
【0026】
アルミニウムDI(ドローイング・アンド・アイアニング)缶(以下、単にアルミニウム缶という。)は、例えば350mlのビール缶であり、毎分数千缶単位で表面処理が施される。
【0027】
アルミニウム缶は、皮膜化成処理を含め以下の工程で処理される。
【0028】
プレリンス→プレウオッシュ→ウオッシュ(脱脂処理)→第1リンス
→トリートメント(皮膜化成処理)→第2リンス→脱イオン水リンス→乾燥
なお、アルミニウム缶は乾燥後、さらに塗装工程に送られ、缶の表面に意匠が施される。
【0029】
各工程間の缶の搬送は、従来例で説明したように、開口を下向きに配置した缶を無端のメッシュコンベア上に配置することによって行われる。
【0030】
皮膜化成処理は、皮膜化成処理液としてのリン酸塩液を貯留した浴上をメッシュコンベアによって搬送される缶に対してメッシュコンベアの上下双方に設けたスプレーノズルから、例えば40℃の温度のリン酸塩液を缶の内外表面双方に、例えば20s程度スプレーすることによって行われる。スプレーノズルから吐出されるリン酸塩液は、ポンプによって浴から抜き出されたリン酸塩液であり、スプレー後の余剰のリン酸塩液は浴中に落下して、回収され、循環使用される。
【0031】
皮膜化成処理を連続して行うとき、浴は、リン酸塩液が消費されるとともに、蒸発等により水分が減少する。このため、リン酸塩液の消費、減少程度を電気伝導度のオンライン測定によって把握し、電気伝導度が所定値を維持するようにリン酸塩液を自動補給するとともに、浴中の液レベルを所定値に維持するように新水を補給する。なお、前記したように、電気伝導度の測定と平行して、リン酸塩液の真の組成を把握するためにリン酸塩液のpHを測定し、pHの測定値に応じて電気伝導度の設定値を変更することによりリン酸塩液の補給量を修正する。これらの一連の作業自体は、前記した従来例と同様の内容である。
【0032】
本実施の形態例では、作業開始時、すなわち建浴時に浴中に張り込まれる新しいリン酸塩液は、以下の組成に調製される。
【0033】
すなわち、ベース組成として、図1に示す薬剤を、予め検討し、設定された、当該皮膜化成処理プロセスにおいて望ましい図1の液組成になるように所定量の水の中に添加する。薬剤は、例えば、リン酸イオン源としてリン酸を用い、ジルコニウム塩(ジルコニウム源)として六フッ化ジルコニウム酸を用いる。なお、アンモニアを用いて液のpHを3に調製する。リン酸塩液は、運転中、リン酸イオン量、ジルコニウム換算量を維持するように濃度管理される。
【0034】
そして、さらに、建浴時の上記のリン酸塩液の中に所定のアルミニウムイオン濃度となるように、例えば水酸化アルミニウムをフッ化水素に溶解させた液を添加する。このアルミニウムイオンの所定の濃度は、皮膜化成処理プロセス条件によって異なり、例えば、図2に示すように、50〜150ppmの範囲内の特定の値とする。
【0035】
また、このとき、pH3でのアルミニウムとフッ素の重量比は1:2から大きく外れないことが皮膜形成上好ましいことが経験的にわかっているので、六フッ化ジルコニウム酸とは別にフッ素源としてフッ化水素酸を予め添加し、図2に示すように予め添加したアルミニウムの重量濃度とバランスさせる。
【0036】
ちなみに、従来の建浴時のアルミニウムの存在しないリン酸塩浴では、リン酸塩液の補給が過剰であった場合に、フッ素の濃度が、図2に示すように、例えば10〜40ppmの範囲で変動することがある。なお、このときの電気伝導度の管理値(設定値)は、例えば1(mS/cm)である。
【0037】
上記本実施の形態例の表面処理方法では、建浴当初から安定浴の中のアルミニウムイオン濃度を保持するため、建浴後の立ちあがり期間中においても、従来と同様の態勢で電気伝導度およびpHの測定管理を行うことにより、基本的には電気伝導度に基づくリン酸塩液の自動補給制御によって組成変動の少ないリン酸塩液の状態を常に維持することができ、さらにpHの測定管理によってより正確なリン酸塩液の組成に修正、維持される。これにより、建浴後の立ちあがり期間中においても、安定した皮膜化成処理を行うことができる。なお、このときの電気伝導度は、略0.7〜1.4(mS/cm)の範囲内で変動する。なお、電気伝導度の測定温度は40℃である。
【0038】
また、リン酸イオン源としてリン酸を用い、ジルコニウム塩(ジルコニウム源)として六フッ化ジルコニウム酸を用い、アンモニア、硝酸を用いて液のpHを3に調整する上記の表面処理方法において、図2に示すように、従来の場合、建浴後の立ち上がり期間中、アルミニウムイオン濃度が0から徐々に増加していくため、この間でフッ素濃度が10〜40ppmの範囲で変動するだけで皮膜形成後の缶の沸騰水耐食性は著しく低下する。これに対して、本実施の形態例では、安定浴なみの高濃度のアルミニウムイオンの存在下で高濃度のフッ素濃度レベルに維持しているため、図2に示すように、フッ素濃度が数十ppm程度変動しても皮膜形成後の缶の沸騰水耐食性は良好である。ここで、沸騰水耐食性は、缶底外面部を100℃の水道水に30min浸したときの缶底外面部の黒変度合いを評価したものであり、○は黒変なし、△は僅かに黒変、×は強く黒変したことを表す。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係るアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法によれば、リン酸イオンと、ジルコニウム塩とを含むリン酸塩浴で、アルミニウムまたはアルミニウム合金を皮膜化成処理する工程を有し、建浴時に、該リン酸塩浴中に、濃度が50〜150ppmになるようにアルミニウムイオンを添加すると共に、該アルミニウムイオンに対するフッ化物イオンの重量比が2.0〜2.2になるように前記六フッ化ジルコニウム酸とは別に該フッ化物イオンを添加するため、建浴後の立ちあがり期間中においても、従来と同様の態勢で電気伝導度およびpHの測定管理を行うことにより、安定した皮膜化成処理を行うことができる。
【0040】
また、本発明に係るアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法によれば、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金が、飲料用缶材料であるため、好適に上記の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 リン酸塩液のベース組成を示す表図である。
【図2】 建浴時に浴中に添加して保持されるアルミニウムおよびフッ素の濃度ならびにそのときの沸騰水耐食性を示す表図である。
Claims (2)
- リン酸イオンと、六フッ化ジルコニウム酸とを含むリン酸塩浴で、アルミニウムまたはアルミニウム合金を皮膜化成処理する工程を有し、
建浴時に、該リン酸塩浴中に、濃度が50〜150ppmになるようにアルミニウムイオンを添加すると共に、該アルミニウムイオンに対するフッ化物イオンの重量比が2.0〜2.2になるように前記六フッ化ジルコニウム酸とは別に該フッ化物イオンを添加することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法。 - 前記アルミニウムまたはアルミニウム合金が、飲料用缶材料であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法。
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