JP5128032B2 - 燃料電池の運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水素ガスと酸化剤ガスを反応ガスとして発電する燃料電池の運転方法に関し、特に、水素漏れに対する安全管理に優れた燃料電池の運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池自動車等に搭載される燃料電池には、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されたスタックからなり、燃料ガスとして水素ガスが供給される水素極と、酸化剤ガスとして酸素を含む空気が供給される空気極とを備えたものがある。この燃料電池においては、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで酸素と電気化学反応を起こして発電する。
【0003】
ところで、水素ガスは可燃性ガスであるため、大気中への漏洩には十分な注意が必要であり、一般に水素を取り扱う場所では、安全管理上、水素濃度をモニターして、検出した水素濃度の大きさに応じて必要な措置を施すようにしており、水素ガスを燃料とする燃料電池も例外ではない。その一方で、水素は透過性の高い物質であるため完全に遮断するのは極めて難しく、特に、前述した固体高分子電解質膜型の燃料電池は積層構造をなすため、燃料電池から水素が漏出するのを完全に遮断するのは難しい。
【0004】
そこで、従来は、燃料電池の近傍に水素濃度を検出する水素センサを設置し、水素センサが所定水素濃度以上を検出した場合には、警報を発したり、燃料電池の運転を停止させたりしている。
また、例えば、特開平8−31436号公報に開示されているように、燃料電池を換気可能なボックスに収納し、ボックス内に水素濃度を検出する水素センサを設置してボックス内の水素濃度を常時監視し、水素センサで検出された水素濃度が所定値を越えたときには、換気ファンを運転して強制換気し、ボックス内の水素濃度を低減するようにしたものもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のように水素センサで所定水素濃度を検知したときに警報や運転停止を行うシステムの場合には、予見性がなく緊急停止してしまうときがある。燃料電池自動車の場合に、このように燃料電池の運転が緊急停止してしまうと、修理をする場所まで移動することができなくなるという問題があった。
また、特開平8−31436号公報に開示されたように、水素センサで所定水素濃度を検知したときに換気ファンを運転してボックス内を強制換気するシステムの場合には、水素の漏洩量を抑制するわけではないので、その後も水素の漏洩量が増大し続ける虞があった。
【0006】
そこで、この発明は、燃料電池からの水素漏れ量は燃料電池の作動圧力(すなわち、反応ガスの供給圧力)と相関があり、作動圧力が高いほど水素漏れ量が多くなるという特性を利用して、燃料電池からの水素漏れ量が所定値を越えないように作動圧力を制限する燃料電池の運転方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、水素ガスと酸化剤ガスを反応ガスとして発電する燃料電池(例えば、後述する実施の形態における燃料電池11)を、酸化剤ガス圧力を基準として水素ガス圧力を調整し、燃料極と空気極との極間差圧を所定範囲内としつつ、要求発電状態に応じた水素ガス圧力と酸化剤ガス圧力とのうち少なくとも一方の作動圧力にて運転する燃料電池の運転方法において、前記燃料電池の周辺に水素濃度を検出して信号を出力する水素センサ(例えば、後述する実施の形態における水素センサ54)を設け、該水素センサの検出値から得られる現在の作動圧力(例えば、実施形態における作動圧力Pn)での水素漏れ量(例えば、実施形態における水素濃度Hn)と、前記燃料電池における作動圧力に対する水素漏れ量の変化率と、に基づいて、水素漏れ量が所定値(例えば、後述する実施の形態における許容水素漏れ量Hlim)を超えない作動圧力(例えば、後述する実施の形態における許容作動圧力Plim)を予測し、該作動圧力以下に作動圧力(例えば、後述する実施の形態における空気供給圧力)を制限することを特徴とする。
【0008】
燃料電池の周辺の換気量が一定のときには、燃料電池からの水素漏れ量と燃料電池周辺の水素濃度との間には相関がある。したがって、水素センサの検出値に基づいて燃料電池からの水素漏れ量を推定することができる。また、燃料電池からの水素漏れ量は燃料電池の作動圧力(すなわち、反応ガスの供給圧力)に依存し、作動圧力が高いほど水素漏れ量が多くなるという特性を有している。したがって、水素センサの検出値に基づいて、前記燃料電池からの水素漏れ量が所定値を越えないように前記作動圧力を制限して燃料電池の運転を制御することが可能となる。
また、燃料電池の周辺の換気量が一定のときには燃料電池からの水素漏れ量と燃料電池周辺の水素濃度との間には相関があり、燃料電池からの水素漏れ量は燃料電池の作動圧力(すなわち、反応ガスの供給圧力)に依存するので、水素センサで検出した現在の水素濃度と現在の燃料電池の作動圧力から、水素漏れ量が前記所定値未満となる作動圧力を予測することができ、該作動圧力以下に作動圧力を制限して燃料電池の運転を制御することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記現在の作動圧力での水素漏れ量が予め設定された最大水素漏れ量(例えば、実施形態における最大水素濃度Hmax)よりも大きい場合には、前記燃料電池を停止させることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る燃料電池の運転方法の一実施の形態を図1から図7の図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は、燃料電池自動車に搭載された燃料電池に適用した態様である。
【0011】
図1は燃料電池自動車の概略構成図である。
燃料電池自動車1は、燃料電池11と、蓄電装置、例えばキャパシタ12とから構成されたハイブリッド型の電源装置を備えており、これらの電源装置から電力が供給される走行用モータ13の駆動力は、オートマチックトランスミッション或いはマニュアルトランスミッションよりなるトランスミッションT/Mを介して駆動輪Wに伝達される。
また、車両の減速時に駆動輪W側から走行用モータ13側に駆動力が伝達されると、走行用モータ13は発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0012】
燃料電池11は、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されたスタックからなり、燃料ガスとして水素ガスが供給される水素極と、酸化剤ガスとして酸素を含む空気が供給される空気極とを備えている。そして、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで酸素と電気化学反応を起こして発電するようになっている。
【0013】
燃料電池11の空気極には、酸化剤供給部をなすエアコンプレッサ21から空気が供給される空気供給口11aと、空気極内の空気等を外部に排出するための空気排出口11bが設けられている。一方、水素極には、燃料供給部をなす水素タンク31から水素ガスが供給される水素供給口11cと、水素極内の水素ガス等を外部に排出するための水素排出口11dが設けられている。
【0014】
エアコンプレッサ21は、例えば車両の外部から空気を取り込んで断熱圧縮して、この空気を、反応ガスとして燃料電池11の空気極側に供給すると共に、圧力信号として後述する燃料供給制御弁32およびエゼクタバイパス制御弁35に供給する。
エアコンプレッサ21にて圧縮昇温された空気は、冷却器22に供給可能とされており、例えば燃料電池11の運転状態に応じて、冷却器22にて所定温度まで冷却された空気は、カソード加湿器24および燃料供給制御弁32およびエゼクタバイパス制御弁35に供給される。
【0015】
また、エアコンプレッサ21と、カソード加湿器24および燃料供給制御弁32およびエゼクタバイパス制御弁35とを接続する流路には、冷却器22および、例えば冷却器22の下流側に設けられた冷却器バイパス制御弁23を迂回する冷却器バイパス流路22aが設けられている。
すなわち、燃料電池11の運転状態に応じて、冷却器バイパス制御弁23を閉弁することによって、エアコンプレッサ21にて圧縮昇温された空気を、冷却すること無しに燃料電池11および燃料供給制御弁32およびエゼクタバイパス制御弁35へ供給することができるようにされている。
【0016】
カソード加湿器24は、例えば中空糸膜等の水透過膜を備えて構成されており、燃料電池11の空気排出口11bから排出される排出空気を、反応ガスとして供給される空気に対する加湿ガスとして利用している。すなわち、水透過膜を介して空気と排出空気とを接触させると、排出空気に含まれる水分(特に、水蒸気)は水透過膜の膜穴を透過した後に水蒸気として空気に供給される。
そして、加湿された空気は燃料電池11に供給され、燃料電池11の固体高分子電解質膜のイオン導電性が所定の状態に確保されている。
なお、後述するように、燃料電池11の空気排出口11bから排出された排出空気は、順次、アノード加湿器37、カソード加湿器24へ加湿ガスとして供給され、カソード加湿器24から排出された排出空気は背圧制御弁25を介して車外に排出されるようになっている。
【0017】
背圧制御弁25は、燃料電池11の運転状態に応じて、ECU44によって開閉動作が制御されており、ECU44から入力される制御信号に応じた弁開度に設定されることで、燃料電池11内に反応ガスとして供給される空気の圧力(空気供給圧力)が所定の圧力となるように制御される。なお、空気供給圧力は、燃料電池11の発電電流が大きいほど大きくなるように制御される。
【0018】
燃料電池11に対する燃料としての水素ガスは、例えば高圧の水素タンク31から燃料供給制御弁32へ供給される。
燃料供給制御弁32は、例えば空気式の比例圧力制御弁をなし、エアコンプレッサ21から供給される空気の圧力を信号圧として、燃料供給制御弁32を通過した水素ガスが燃料供給制御弁32の出口で有する圧力が、信号圧に応じた所定範囲の圧力となるように制御する。
【0019】
燃料供給制御弁32を通過した水素ガスは熱交換器33に供給されている。この熱交換器33において、燃料電池11の運転状態に応じて、例えば冷却材との熱交換反応等によって所定の温度に設定された水素ガスは、順次、エゼクタ34あるいはエゼクタバイパス制御弁35、アノード加湿器36を介して水素供給口11cから燃料電池11の水素極に供給される。
【0020】
さらに、燃料電池11の水素排出口11dから排出された未反応の排出ガスは、貯溜タンク37を通じてエゼクタ34へと導入されており、熱交換器33から供給された水素ガスと、燃料電池11から排出された排出ガスとが混合されて燃料電池11に再び供給されている。
エゼクタ34は、内部を流通する高速の水素ガス流の近傍に発生する負圧によって、副流とされる燃料電池11からの排出ガスを吸い込み、この排出ガスを熱交換器33を介して供給される水素ガスと混合して燃料電池11へ再度供給することで、燃料電池11から排出された排出ガスを循環させている。
【0021】
また、熱交換器33とアノード加湿器36とを接続する流路には、エゼクタ34を迂回するエゼクタバイパス流路34aが設けられている。
ここで、エゼクタバイパス流路34aには、例えば空気式の比例圧力制御弁をなすエゼクタバイパス制御弁35がエゼクタ34に対して並列配置されており、エアコンプレッサ21から供給される空気の圧力を信号圧として、エゼクタバイパス制御弁35を通過した水素ガスがエゼクタバイパス制御弁35の出口で有する圧力つまり水素供給圧力が、信号圧に応じた所定範囲の圧力となるように制御される。
【0022】
すなわち、酸化剤ガスとしての空気の圧力を基準圧力として、燃料供給制御弁32およびエゼクタバイパス制御弁35での圧力流量制御によって、エゼクタ34を通過する水素ガスの圧力流量特性が所定の状態となるように制御され、燃料電池11の固体高分子電解質膜に対する酸化剤の圧力(空気供給圧力)と、燃料の圧力(水素供給圧力)との差、つまり燃料極と空気極との極間差圧が所定圧力差の範囲内になるように制御される。
つまり、燃料電池11に供給される空気供給圧力および水素供給圧力(すなわち、燃料電池11の作動圧力)は、燃料電池11の運転状態に応じて制御され、燃料電池11の発電電流が大きくなるほど燃料電池11の作動圧力が大きくなるように制御される。
【0023】
アノード加湿器36は、例えば中空糸膜等の水透過膜を備えて構成されており、燃料電池11の空気排出口11bから排出される排出空気を、水素ガスに対する加湿ガスとして利用している。すなわち、水透過膜を介して水素ガスと排出空気とを接触させると、排出空気に含まれる水分(特に、水蒸気)は水透過膜の膜穴を透過した後に水蒸気として水素ガスに供給される。
そして、加湿された水素ガスは燃料電池11に供給され、燃料電池11の固体高分子電解質膜のイオン導電性が所定の状態に確保されている。
【0024】
貯溜タンク37は、燃料電池11の水素排出口11dから排出された排出ガスに対して気液分離を行い、排出ガス中に含まれる液体状の水分を分離して貯溜する。
排出制御弁38は、燃料電池11の運転状態に応じて、ECU44によって開閉動作が制御されており、例えば貯溜タンク37にて分離された排出ガス中の過剰な水分(主に液体水)等を車外に排出する。
【0025】
燃料電池11から取り出される発電電流は電流制御器41に入力されており、この電流制御器41には蓄電装置をなす、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサ等からなるキャパシタ12が接続されている。
そして、燃料電池11とキャパシタ12は、電流制御器41および出力制御器42を介して、電気的負荷である走行用モータ13、および、エアコンプレッサ21を駆動するモータ43等に対して並列に接続されている。
【0026】
電流制御器41は、例えばDC−DCチョッパ等を備えて構成されており、後述するように、ECU44から出力される目標発電電流IFCつまり燃料電池11に対する発電指令に基づいて、燃料電池11から取り出される発電電流の電流値を制御する。
【0027】
出力制御器42は、例えばIGBT等のスイッチング素子から構成された走行モータ用およびエアコンプレッサモータ用のPWMインバータをそれぞれ備えており、後述するように、ECU44から出力される走行用モータ13に対するトルク指令やエアコンプレッサ21に対する回転数指令等に基づき、電流制御器41を介して燃料電池11およびキャパシタ12から出力される直流電力を3相交流電力に変換して、走行用モータ13およびエアコンプレッサ21を駆動するモータ43へ供給する。
【0028】
なお、走行用モータ13およびモータ43は、例えば界磁として永久磁石を利用する永久磁石式の3相交流同期モータとされており、出力制御器42から供給される3相交流電力により駆動制御される。
ECU44は、例えば、蓄電装置をなすキャパシタ12から出力される出力電流および端子電圧および温度の信号に基づいてキャパシタ12の残容量を算出し、走行用モータ13やモータ43等の負荷への電力供給を制御する。
【0029】
さらに、ECU44は、出力制御器42に具備された前記PWMインバータの電力変換動作を制御しており、例えば走行用モータ13に対しては、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作量等に関するアクセル開度ACの信号に基づいて、要求されるモータ出力を算出する。そして、このモータ出力指令を出力制御器42に入力することで、モータ出力指令に応じたパルス幅変調信号が走行モータ用PWMインバータに入力され、要求されるモータ出力を発生させるための各相電流が走行用モータ13の各相へと出力される。
【0030】
また、ECU44は、燃料電池11を運転するために必要な補機類の電気負荷を算出し、この電気負荷と前記走行用モータ13に要求されるモータ出力に基づいて、電流制御器41にて燃料電池11から取り出す発電電流に対する目標発電電流IFCを算出し電流制御器41に入力する。
さらに、ECU44は、目標発電電流に基づいて、反応ガスの流量に関する要求値として、例えばエアコンプレッサ21の回転数Nを算出し、反応ガスの圧力に関する要求値として、例えば背圧制御弁25の弁開度θを算出する。そして、この回転数Nが出力制御器42に入力されることで、回転数Nに応じた各相電流がモータ43の各相へと出力される。また、算出された弁開度θが背圧制御弁25に入力されることで、背圧制御弁25の弁開度が制御される。
【0031】
そして、反応ガスの流量および圧力に対する各要求値と、実際に燃料電池11に供給される反応ガスの流量および圧力との各偏差がゼロとなるように、エアコンプレッサ21の回転数Nおよび背圧制御弁25の弁開度θのフィードバック制御を行う。
【0032】
このため、ECU44には、アクセル開度センサ14から出力される例えば運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作量等に関するアクセル開度ACの検出信号と、例えばエアコンプレッサ21から供給される空気の流量(質量流量)を検出するガス量センサ46から出力される流量検出値QNの信号と、例えば燃料電池11の空気極側に供給される空気の圧力を検出する圧力センサ47から出力される圧力検出値PNの信号とが入力される。
なお、ガス量センサ46は、エアコンプレッサ21の空気排出口21a近傍に設けられ、圧力センサ47は、燃料電池11の空気供給口11a近傍に設けられている。
【0033】
また、この燃料電池自動車1においては、図2に示すように、燃料電池11と水素供給系デバイス群50は密閉された箱(以下、FCボックスという)51に収納されている。ここで、水素供給系デバイス群50には、燃料供給制御弁32,熱交換器33,エゼクタ34,エゼクタバイパス制御弁35,アノード加湿器36,およびこれらを接続する配管類が含まれる。
【0034】
FCボックス51は、燃料電池11からの水素漏れを管理するために設けられたものであり、そのために、FCボックス51には、一定流量で換気が行われるように換気入口52と換気出口53が設けられるとともに、換気出口53の近傍に水素濃度を検出する水素センサ54が設置されていて、水素センサ54から出力される水素濃度検出値の信号はECU44に入力される。なお、水素センサ54の設置位置は換気出口53の近傍に限るものではなく、FCボックス51内に漏洩した水素ガスが流れるであろう位置に設置されていればよく、例えば燃料電池11の近傍に設置することも可能である。また、FCボックス51は容量が小さい方が水素漏れ検出精度が高くなるので好ましい。
【0035】
次に、この燃料電池自動車1において、水素漏れ管理を考慮した燃料電池11の運転制御原理について説明する。
前述したように、水素ガスを燃料とする固体高分子電解質膜型の燃料電池11においては、水素の透過性が高いことと、および積層構造という燃料電池11の構造上から、燃料電池11に供給された水素が燃料電池11の構成部材(例えば、固体高分子電解質膜やその両側に配置されるセパレータ等)を透過してきてFCボックス51内に漏れたりする。これは、固体高分子電解質膜型の燃料電池11では、欠陥が全くない新品の燃料電池11であっても避けられない現象である。
【0036】
したがって、たとえ欠陥のない新品の燃料電池11を使用している場合であっても、FCボックス51内を換気しないとFCボックス51内の水素濃度が増大していくこととなる。そのため、この実施の形態では、換気入口52からFCボックス51内に一定流量で換気を導入し、換気出口53から排出している。
このように、FCボックス51を一定流量で換気した場合、燃料電池11からの水素漏れ量とFCボックス51内の水素濃度との間には、図3に示すような一次関数的な関係が成立する。したがって、水素センサ54により検出したFCボックス51内の水素濃度に基づいて、燃料電池11からの水素漏れ量を推定することができる。
【0037】
一方、燃料電池11は、前述したように、燃料電池11の要求発電状態(アクセル開度に応じた要求発電電流等)に応じて作動圧力を変えて運転している。図4は、燃料電池11の発電電流と作動圧力との関係の一例を示したものであり、発電電流が大きいほど作動圧力が大きくなるように制御している。また、作動圧力には最大作動圧力Pmaxが設定されており、作動圧力はこの最大作動圧力Pmax以下において制御されることとなる。
【0038】
また、燃料電池11からの水素の漏れ量は作動圧力に依存することが経験的にわかっている。図5は、燃料電池11の作動圧力と水素漏れ量との関係を実験的に求めた実験結果の一例を示し、図中実線は、欠陥が全くない新品の燃料電池11の平均的な水素漏れ特性を示している。すなわち、この例の場合では、作動圧力が大きくなればなるほど、水素漏れ量が一次関数的に増大していく。また、実験によれば、同一仕様の燃料電池11ではあるが、燃料電池11の固体ばらつきあるいは経時劣化により前記新品の燃料電池11の平均的な水素漏れ特性と一致しない燃料電池11の場合にも、作動圧力の増減に対する水素漏れ量の増減の割合(換言すれば、図5における水素漏れ特性線の傾き)は同じであることが判明している。
【0039】
なお、燃料電池11からの水素漏れ量は、正確に言えば燃料電池11への水素供給圧力に依存するのであるが、前述したように、この燃料電池1では、水素供給圧力は空気供給圧力を基準圧力として制御されるので、燃料電池11からの水素漏れ量は燃料電池11への空気供給圧力に依存すると言うことができる。水素供給圧力も空気供給圧力も燃料電池11の作動圧力には変わりなく、燃料電池11からの水素漏れ量は作動圧力に依存する。
ただし、この実施の形態の燃料電池11では、発電電流を制御するためのパラメータとして燃料電池11への空気供給量と空気供給圧力を用いており、これらパラメータをフィードバック制御するためにガス量センサ46で空気供給量を検出し、圧力センサ47で空気供給圧力を検出しているので、この実施の形態では水素漏れ量との関係において空気供給圧力を作動圧力として用いることとした。
【0040】
以上のことから、同一仕様の燃料電池11においては、水素センサ54で検出した現在のFCボックス51内の水素濃度Hnと、圧力センサ47で検出した現在の作動圧力Pnがわかれば、図5に示す水素漏れ特性に基づいて、この燃料電池11を最大作動圧力Pmaxで運転したときの水素漏れ量Hinfを予測することができ、また、所定の水素漏れ量Hlimとなるときの作動圧力Plimを推定することができる。ここで、前記所定の水素漏れ量(以下、許容水素漏れ量という)Hlimを最大水素漏れ量Hmaxよりも小さい値に設定し、これに対応する作動圧力(以下、許容作動圧力という)Plim以下で燃料電池11を運転するように制御すれば、燃料電池11からの水素漏れ量を許容水素漏れ量Hlim以下に抑制しながら、燃料電池11を運転することが可能になる。
【0041】
なお、水素漏れ量は水素センサ54で検出される水素濃度に基づいて推定することから、図5に示す水素漏れ特性図における縦軸の水素漏れ量は、これに対応する水素濃度に置き換えることが可能である。そこで、以下の説明の都合上、図5における縦軸に水素濃度を併記した。
【0042】
また、発電電流と作動圧力は図4に示すような関係があるので、許容作動圧力Plimに対応して発電電流(以下、許容発電電流という)Ilimを決定することができる。したがって、作動圧力を許容作動圧力Plim以下に制限して燃料電池1を運転制御する代わりに、燃料電池11からの取り出し電流を許容発電電流Ilim以下に制限して燃料電池11を運転制御してもよい。
【0043】
次に、図6のフローチャートを参照して、この実施の形態における燃料電池の運転方法を説明する。
まず、圧力センサ47で検出した現在の実作動圧力Pnを読み込み(ステップS101)、水素センサ54で検出したFCボックス51内の現在の実水素濃度Hnを読み込む(ステップS102)。
【0044】
次に、この燃料電池11の水素漏れ特性(図5参照)に基づいて、最大作動圧力Pmaxで運転したときに予想されるFCボックス51内の水素濃度(予想水素濃度)Hinfを、マップ参照あるいは計算により算出する(ステップS103)。
【0045】
次に、ステップS102で読み込んだ現在の実水素濃度Hnが最大水素濃度Hmax(例えば2%)よりも高いか否か判定する(ステップS104)。
ステップS104における判定結果が「YES」(Hn>Hmax)である場合は、ワーニングランプを点灯し(ステップS105)、システム停止モードを実行して(ステップS106)、本ルーチンの実行を一旦終了する。すなわち、この場合は、FCボックス51内の現在の水素濃度(燃料電池11からの現在の水素漏れ量)が既に最大水素濃度(最大水素漏れ量)Hmaxを越えているので、燃料電池11を直ちに緊急停止する。
【0046】
一方、ステップS104における判定結果が「NO」(Hn≦Hmax)である場合は、直ちに緊急停止する必要はないので、ステップS107に進み、ステップS103で算出した予想水素濃度Hinfが最大水素濃度Hmaxよりも高いか否か判定する。
【0047】
ステップS107における判定結果が「NO」(Hinf≦Hmax)である場合は、最大作動圧力Pmaxで運転しても水素濃度は最大水素濃度Hmax以下であると推定できるのでステップS108に進み、ステップS102で読み込んだ実水素濃度Hnが水素濃度安全域の閾値である下限水素濃度Hlow(例えば0.5%)よりも高いか否か判定する。
【0048】
ステップS108における判定結果が「NO」(Hn≦Hlow)である場合は、FCボックス51内の現在の水素濃度(燃料電池11からの現在の水素漏れ量)が充分に低く安全域にあるので、ステップS109に進んで、後述するステップS113で算出した出力制限値(許容発電電流Ilim)を初期化し、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0049】
ステップS108における判定結果が「YES」(Hn>Hlow)である場合は、ステップS110に進んでワーニングランプを点灯し、本ルーチンの実行を一旦終了する。これは、FCボックス51内の現在の水素濃度(燃料電池11からの現在の水素漏れ量)は最大水素濃度(最大水素漏れ量)Hmax以下ではあるが下限水素濃度(下限水素漏れ量)Hlowを越えているので、警報を発して運転者に注意を喚起するのである。
【0050】
一方、ステップS107における判定結果が「YES」(Hinf>Hmax)である場合は、現在のFCボックス51内の水素濃度(燃料電池11からの現在の水素漏れ量)は最大水素濃度(最大水素漏れ量)Hmax以下であるものの、もし最大作動圧力Pmaxで運転するとFCボックス51内の水素濃度(燃料電池11からの水素漏れ量)が最大水素濃度(最大水素漏れ量)Hmaxを越えることが予想されるので、最大作動圧力Pmaxでの運転は回避すべきである。そこで、ステップS107における判定結果が「YES」である場合は、ステップS111においてワーニングランプを点灯した後、ステップS112に進んで、許容水素濃度(許容水素漏れ量)Hlim(例えば1.9%)に対応する許容作動圧力Plimを、マップ参照あるいは計算により算出する。なお、この実施の形態では、許容水素濃度(許容水素漏れ量)Hlimは安全を見込んで最大水素濃度(最大水素漏れ量)Hmaxよりも若干低く設定するが、同数値に設定することも可能である。
【0051】
次に、許容作動圧力Plimに対応する許容発電電流Ilimをマップ参照あるいは計算により算出し(ステップS113)、この許容発電電流Ilimを出力制限値として出力制限運転モードを実行し(ステップS114)、本ルーチンの実行を一旦終了する。出力制限運転モードでは、燃料電池11からの取り出し電流を許容発電電流Ilim以下に制限して燃料電池11の運転制御を行う。
【0052】
図7は、この燃料電池自動車1における燃料電池11の運転制御方法を示すブロック図である。
燃料電池自動車1では、アクセルペダルAPの踏み込み操作量がアクセル開度としてアクセル開度センサ14で検出され、検出されたアクセル開度に基づいてECU44は走行用モータ13に要求されるモータ出力を算出する。また、ECU44は、燃料電池11を運転するために必要な補機類(例えば、エアコンプレッサ21等)の電気負荷を算出する。
【0053】
次に、走行用モータ13に要求されるモータ出力と補機類の電気負荷に基づいて、電気制御器41により燃料電池11から取り出す目標発電電流IFCを算出し、この目標発電電流IFCに基づいて目標ガス量(目標空気供給量)と目標圧力(目標空気供給圧力)を算出する。
【0054】
そして、前記目標ガス量に基づいてエアコンプレッサ21の回転数Nを算出し、該回転数となるようにエアコンプレッサ21のモータ43を制御するとともに、ガス量センサ46で検出される実際のガス量(実空気供給量)と前記目標ガス量(目標空気供給量)との偏差がゼロになるように、エアコンプレッサ21の回転数のフィードバック制御を行う。
【0055】
また、これと同時に、前記目標圧力に基づいて背圧制御弁25の弁開度θを算出し、該弁開度θになるように背圧制御弁25の開度制御を行うとともに、圧力センサ47で検出される実際の空気供給圧力(実空気供給圧力)と前記目標圧力(目標空気供給圧力)との偏差がゼロになるように、背圧制御弁25の弁開度θのフィードバック制御を行う。
【0056】
また、圧力センサ47で検出された実空気供給圧力(すなわち実作動圧力)と水素センサ54で検出されたFCボックス51内の実水素濃度に基づいて、必要に応じて作動圧力制限値(許容作動圧力)を計算し、前記目標圧力を作動圧力制限値以下に制限するとともに警報を発する。あるいは、作動圧力を制限する代わりに、作動圧力制限値に対応する発電電流制限値(許容発電電流)を計算して、前記目標発電電流を発電電流制限値以下に制限する(図中破線矢印)。このように目標発電電流を制限するようにすると、現在の発電電流から現在の作動圧力を推定可能であることから、圧力センサ47が故障した場合などにも燃料電池11の前記制限運転が可能となり、また、圧力センサ47を省略することも可能となる。
【0057】
このように燃料電池11の運転制御を実行することにより、燃料電池11からの水素漏れ量がある程度増大してくるとワーニングランプの点灯により運転者に注意を喚起することができる。そして、燃料電池11からの水素漏れ量がさらに増大してきて、現運転状態では問題ないが現運転状態よりも作動圧力を増大させて運転すると水素漏れ量が最大水素漏れ量を越える虞があるときには、燃料電池11の出力を制限して運転することにより、水素漏れ量が最大水素漏れ量を越えないように確実に制限することができる。これにより、燃料電池11からの水素漏れ状態を予見しながら燃料電池自動車1を運転することができることとなり、燃料電池11が突然に緊急停止する確率を従来よりも格段に低くすることができる。そして、燃料電池11の出力制限運転を行いながら燃料電池自動車1を修理工場等の所定場所まで移動させることが可能になる。
【0058】
さらに、このように燃料電池11の出力制限運転を行っても燃料電池11からの水素漏れ量が最大水素漏れ量を越えてしまうときには、燃料電池11を緊急停止して安全を確保することができる。
尚、前述した実施の形態では、燃料電池11に供給される空気の圧力を制御対象である作動圧力としたが、制御対象である作動圧力を燃料電池11に供給される水素ガスの圧力とすることも可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明するように、請求項1に記載した発明によれば、水素センサの検出値に基づいて、前記燃料電池からの水素漏れ量が所定値を越えないように前記作動圧力を制限するので、水素漏れ量を所定値以下に抑制しながら燃料電池の運転を維持することができるという優れた効果が奏される。
【0060】
請求項2に記載した発明によれば、前記効果に加えて、現在の作動圧力での水素漏れ量と前記燃料電池の特性に基づいて、水素漏れ量が前記所定値を越えない作動圧力を予測しているので、水素漏れ量が所定値を越えたことを検知してから作動圧力を制限するのではなく、予め燃料電池の発電電流が小さく、作動圧力が低い状態で運転している時から制限作動圧力を予測して制限するため、確実に水素漏れ量を所定値以下に制限することができるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施の形態における燃料電池自動車の概略構成図である。
【図2】 前記実施の形態におけるFCボックスの斜視図である。
【図3】 水素漏れ量と水素濃度との関係を示す図である。
【図4】 燃料電池の作動圧力と発電電流との関係を示す図である。
【図5】 燃料電池からの水素漏れ量(水素濃度)と燃料電池の作動圧力との関係を示す図である。
【図6】 燃料電池の運転制御フローチャートの一例である。
【図7】 燃料電池自動車の運転制御ブロック図の一例である。
【符号の説明】
11 燃料電池
54 水素センサ

Claims (2)

  1. 水素ガスと酸化剤ガスを反応ガスとして発電する燃料電池を、酸化剤ガス圧力を基準として水素ガス圧力を調整し、燃料極と空気極との極間差圧を所定範囲内としつつ、要求発電状態に応じた水素ガス圧力と酸化剤ガス圧力とのうち少なくとも一方の作動圧力にて運転する燃料電池の運転方法において、
    前記燃料電池の周辺に水素濃度を検出して信号を出力する水素センサを設け、
    該水素センサの検出値から得られる現在の作動圧力での水素漏れ量と、前記燃料電池における作動圧力に対する水素漏れ量の変化率と、に基づいて、水素漏れ量が所定値を超えない作動圧力を予測し、該作動圧力以下に作動圧力を制限することを特徴とする燃料電池の運転方法。
  2. 前記現在の作動圧力での水素漏れ量が予め設定された最大水素漏れ量よりも大きい場合には、前記燃料電池を停止させることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転方法。
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