JP5157246B2 - 小径細胞体捕捉チップ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は小径細胞体捕捉チップ及びその製造方法に関するものであり、特に、直径が数μm程度の幹細胞等の小径細胞体へ遺伝子、薬剤を注入するマイクロインジェクションシステムにおいて、小径細胞体にダメージを与えることなく確実に配列・固定化するための構成に特徴のある小径細胞体捕捉チップ及びその製造方法に関するものである。
近年、細胞内に遺伝子などを注入することで細胞の性質改変を行うことは遺伝的な原因による病気を治療する方法として注目され、その研究が進んでいる。
この研究の成果としては、遺伝子の役目を解明することや、個人の遺伝子特性に合わせた投薬や治療を行うテーラーメード医療が可能になることなどが挙げられる。
細胞内に遺伝子を注入する方法としては、高圧パルスを利用する電気的な方法(エレクトロポレーション法)、エンドサイトーシスや膜融合を利用する化学的な方法(リポフェクション法)、ウイルスを利用する生物的な方法(ウイルスベクター法)、微細針を使用する機械的な方法(以下、マイクロインジェクション法)、レーザー光を利用する光学的な方法(レーザーインジェクション法)などが一般的に良く知られている。
しかしながら、電気的な方法は細胞に与えるダメージが大きく、また化学的な方法では遺伝子の注入効率が悪く、更に生物的な方法では全ての注入材料が導入できない(ウイルスの制限)などの欠点がある。
一方、現時点では機械的な方法、即ち、マイクロインジェクション法が、最も安全で注入効率が高い方法として注目されている。
このマイクロインジェクション法を用いるためには、細胞を捕捉・固定する必要があり、そのために、細胞を捕捉させるための細胞径と同等もしくは細胞径より小さな口径の凹部構造を有する細胞固定板(一般にはシリコンチップ)を備え、細胞を入れた培養液(液体培地)を凹部構造の下部に設けた捕捉孔から吸引することによって、細胞固定板上の孔の表面部分に細胞を吸着し固定することが提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献5参照)。
或いは、マイクロポーラスガラス等の多孔質プレートに受精卵の形状に沿った凹部を設け、多孔質プレートに含まれている微細孔を介して吸引することによって、凹部に数100μm径の受精卵を捕捉することも提案されている(例えば、特許文献6参照)。
また、細胞を固定させるその他の手段としては、電極間に高周波を印加し、細胞に働く電場の力を利用して細胞固定板上の微小電極に細胞を固定させるものや、細胞に親和性の無い細胞固定板上に細胞親和性物質を配置し、その細胞親和性物質上に細胞を固定させるものなどが挙げられる。
この様ないずれかの手段によって細胞を捕捉・固定し、固定された細胞に微細注入針(キャピラリー)を差し込んで物質を順次注入(注入処理)することにより、大量の細胞への注入を可能としている(例えば、特許文献3参照)。
特開昭63−129980号公報 特開平01−112976号公報 特開2002−027969号公報 特開2000−023657号公報 特開平01−144970号公報 特開平10−165166号公報
しかしながら、上述の従来のマイクロインジェクション法がターゲットとしていた細胞は数100μm径の卵細胞といった比較的、径の大きな細胞であったのに対し、最近では5〜10μm径の幹細胞を用いた再生医学・再生医療の研究・治療が盛んになり、幹細胞へのマイクロインジェクションに対する要求が高くなっている。
この幹細胞は卵細胞などと比べるとサイズが非常に小さく、これら小径細胞を固定基板上に確実に整列・固定化させるためには、従来のプロセス技術を用いた上述の構造では、細胞が吸引孔内を通り抜けるといった不具合が発生しており、マイクロインジェクションが困難であるという問題がある。
また、上述の特許文献3の場合には、細胞を吸引孔内に一部引き込んで吸引トラップするために、細胞に与えるダメージが問題になる。
さらに、シリコン基板との基板にエッチングによる微細な吸引孔を形成する方法では、5〜10μm径の幹細胞のような小径細胞を吸引固定するための微細な吸引孔を現実的に作製することができないという問題がある。
仮に、このような幹細胞をはじめとする小径細胞に適した微細な吸引孔形状を現行のプロセスを用いて実現しようとすると、高価なプロセス装置が必要であり、また吸引孔と細胞を保持する凹部構造とのアライメントが難しく歩留まりも低下してしまうため、結果として製造コストが上昇するという問題がある。
したがって、本発明は、微細な吸引孔をリソグラフィーを用いることなく形成し、微小な小径細胞体にダメージを与えることなく、確実に捕捉・固定化することを目的とする。
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記の課題を解決するために、本発明は、細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体8を捕捉固定するための凹部構造層6と、一方向に貫通した吸引孔5を有する吸引孔層4と、前記凹部構造層6と吸引孔層4を支持する支持基板1を有するとともに、前記凹部構造層6内に吸引孔5が少なくとも二つ以上配置され、且つ、前記吸引孔5の径が前記小径細胞体8の平均直径の1/100〜1/10である小径細胞体捕捉チップであって、前記吸引孔層4がアルマイトポア膜からなり、前記吸引孔5が陽極酸化により自己組織化されたポアからなることを特徴とする
このように、小径細胞体捕捉構造を、凹部構造層6と一方向に貫通した吸引孔5を有する吸引孔層4とに分離して形成することによって、吸引孔5の径が小径細胞体8の平均直径の1/100〜1/10となる吸引孔層4を形成することが容易になるとともに、凹部構造層7内に吸引孔5を少なくとも二つ以上配置することが容易になり、また、吸引孔5の径を小径細胞体8の平均直径の1/100〜1/10としているので、幹細胞等の細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体8をダメージを与えることなく、且つ、吸引孔5内に引き込むことなく確実に捕捉することが可能になる。
この場合、吸引孔層4をアルマイトポア膜とし、吸引孔5を陽極酸化により自己組織化されたポアとすることによって、エッチング工程を用いることなく、小径細胞体8の平均直径の1/100〜1/10となる吸引孔層4を簡単な工程により且つ確実に形成することが可能になる。
また、凹部構造層6及び吸引孔層4は、小径細胞体8の顕微鏡観察が可能な程度に光学的に透明であることが望ましく、それによって、小径細胞体8への薬液やウイルスの注入を顕微鏡観察しながら行うことが可能になる。
また、小径細胞体捕捉チップを製造する場合には、アルミニウム板を陽極酸化処理することによって、アルマイトポア膜を形成する工程、アルミニウム板のアルマイトポア膜を形成した面を開口部2を有する支持基板1に貼り合わせる工程、アルミニウム板を薄層化してアルマイトポア膜からなる吸引孔層4を形成する工程、及び、吸引孔層4上に吸引孔層4に設けられたポアを複数個含むように凹部7を形成した凹部構造層6を設ける工程とを有するように構成すれば良く、吸引孔5は吸引孔層4の一面に配置されているため、凹部構造層6とのアライメント精度が必要ではなく、歩留まりの低下を防ぐことが可能となる。
この場合、凹部構造層6を設ける工程の前に、アルミニウム板のアルマイトポア膜を形成した面を開口部2を有する支持基板1に貼り合わせる工程に用いた接着層の露出部を除去する工程を有することが必要になる。
或いは、支持基板1上にアルミニウム層を形成する工程、アルミニウム層を陽極酸化してアルマイトポア膜を形成して吸引孔層4とする工程、支持基板1に開口部2を形成する工程、及び、吸引孔層4上に吸引孔層4に設けられたポアを複数個含むように凹部7を形成した凹部構造層6を設ける工程とを有するように構成しても良く、それによって、半導体プロセスを用いて小径細胞体捕捉チップを製造することが可能になり、小径細胞体捕捉チップの低コスト化が可能になる。
この場合、アルミニウム層を形成する工程において、アルミニウム層を支持基板1に形成した介在層3を介して支持基板1上にアルミニウム層を成膜することが望ましく、それによって、ポアを貫通させる際に支持基板1がダメージを受けることがなく、また、支持基板1に開口部2を形成する際に、アルマイトポア膜がダメージを受けることがない。
この場合の介在層3は、支持基板1を熱酸化することによって形成することが望ましく、介在層3の形成工程が簡素化される。
また、アルマイトポア膜を形成する工程において、パターンドメディアの製造分野において確立しているナノインプリント法を用いても良く、それによって、ポアを任意のピッチで且つ50nm〜1000nmの範囲において任意の径に形成することができる。
本発明によれば、従来の構造では不可能とされていた幹細胞のような細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体への大量かつ高速なインジェクションが可能になるともに、細胞変形によるダメージストレスが軽減されることで、細胞反応の正確な評価観察が可能になる。
また、製造プロセスにおいても陽極酸化により形成したアルマイトポア膜を吸引孔層としているので、高価なプロセス装置を使わないだけではなく、チップ歩留まりの向上が見込まれ、幹細胞等の小径細胞に好適な小径細胞体捕捉チップを容易に提供することが可能となる。
本発明は、幹細胞やマイクロカプセル等の直径が10μm以下の小径細胞体を捕捉固定するために、一方向に貫通した吸引孔を有する吸引孔層、特に、陽極酸化により小径細胞体の平均直径の1/100〜1/10のサイズの吸引孔を有するアルマイトポア膜と、凹部構造内に吸引孔が少なくとも二つ以上配置されるように形成した凹部構造層とを積層して、支持基板上に支持したものである。
このような小径細胞体捕捉チップを製造する場合には、アルミニウム板を陽極酸化処理することによって、アルマイトポア膜を形成し、アルミニウム板のアルマイトポア膜を形成した面を負圧吸引口となる開口部を有するシリコン基板等の支持基板に接着剤やSiO膜を用いた基板貼り合わせ技術によって貼り合わせ、アルミニウム板を薄層化してアルマイトポア膜からなる吸引孔層を形成したのち、吸引孔層上に吸引孔層に設けられたポアを複数個含むように凹部を形成した凹部構造層を設ければ良い。
或いは、シリコン基板等の支持基板上に熱酸化で形成したSiO2 膜等のバリア膜を介してアルミニウム層を形成したのち、このアルミニウム層を陽極酸化してアルマイトポア膜からなる吸引孔層を形成し、次いで、支持基板に開口部を形成したのち、バリア層の露出部除去し、次いで、吸引孔層上に吸引孔層に設けられたポアを複数個含むように凹部を形成した凹部構造層を設ければ良い。
また、アルマイトポア膜を形成する工程においては、陽極酸化に伴う通常の自己組織化によってポアを規則正しく形成しても良いし、或いは、ナノインプリント法を用いてポアを任意のピッチで且つ50nm〜1000nmの範囲において任意の径に形成するようにしても良い。
ここで、図2乃至図4を参照して、本発明の実施例1の細胞捕捉チップの製造工程を説明する。
図2参照
まず、純度が99.99%以上で、鏡面処理を施した厚さが、例えば、100μmのAl板11を用意し、例えば、0.3M/リットルの希硫酸浴からなる陽極酸化液を用いて陽極酸化処理を行うことによって多孔質アルミナ膜、即ち、アルマイトポア膜12を形成する。
なお、ここでは図示を省略しているが、Al板11の一方の面に保護膜を設けているので、陽極酸化は他方の面から進行して、保護膜側には未酸化のAl層13が残存する。
この時、アルマイトポア膜12にはポア14は自己組織化により六方最密構造状に規則正しく配列して形成されるが、そのピッチは、
ポアピッチ〔nm〕=陽極酸化時の直流電圧〔V〕×2.5
で規定されるので、直流電圧によってポアピッチ、したがって、ポア密度を制御することができる。
この場合、細胞径が大きい場合は陽極酸化のみでは所望の径を実現できないため、必要に応じて4%のリン酸を用いたポアワイドニングを施すことによって、径を拡大することも可能である。
一方、支持基板となるシリコン基板21の表面に熱酸化によりSiO2 膜22,23を形成したのち、フッ酸を用いて一方のSiO2 膜23に一辺が例えば、1.7mmの開口部24を形成する。
次いで、例えば、KOH等のエッチング液を用いてシリコン基板21の露出部をエッチングすることによって負圧吸引用の開口部25を形成し、次いで、フッ酸を用いてSiO2 膜22,23をエッチング除去する。
図3参照
次いで、接着剤(図示は省略)を用いてアルマイトポア膜12を形成したAl板11をアルマイトポア膜12とシリコン基板21とが対向するようにシリコン基板21に貼り合わせる。
次いで、Al層13側から研磨してAl層13を完全に除去するとともに、アルマイトポア膜12の厚さが例えば5μm(或いは10μm)になるまで研磨してポア14を貫通させることによって吸引孔16を備えた吸引孔層15としたのち、開口部25に露出する接着剤(図示は省略)を除去する。
次いで、凹部層17となるレジストを塗布したのち、露光・現像することによって直径が5μm〜20μmの細胞捕捉部18となる凹部を形成し、レジストをそのまま残存させることによって、厚さが、例えば、5μmの凹部層17とすることによって、本発明の実施例1の細胞捕捉チップの基本構造が完成する。
図4参照
図4は、本発明の実施例1の細胞捕捉チップの構成説明図であり、図においては細胞20を捕捉するための細胞捕捉部18は4×4の16個であるが、実際には、チップサイズが3.5mm□である場合、例えば、約1000個程度形成する。
また、図4の下図に示すように、細胞捕捉部18には複数の吸引孔16が露出しており、陽極酸化における直流電圧によって規定されるポアピッチによるが、例えば、80個程度露出することになり、この吸引孔16から開口部25を介して負圧吸引することによって、流れてくる細胞20を細胞捕捉部18に吸引捕捉する。
このように、本発明においては、細胞捕捉構造部を細胞捕捉部18を設けた凹部層17と吸引孔16を設けた吸引孔層15とに分割しているので、それぞれの特性に応じたサイズの開口部を形成することができる。
また、吸引孔16を備えた吸引孔層15は、パターンドメディア分野において確立している陽極酸化による自己組織化を利用して形成しているので、高度なエッチング技術を要することなく微細な吸引孔16を任意のピッチで形成することができ、また、それによって、吸引孔16が吸引孔層15の表面に均一に露出しているので、細胞捕捉部18を設けた凹部層17を形成する際にアライメントが不要になる。
また、この場合の吸引孔16のサイズは、捕捉対象となる細胞20のサイズに応じて適宜決定するものであり、細胞20の平均直径の1/100〜1/10とすることができるので、細胞20を吸引捕捉する際に、細胞20が吸引孔17内に引き込まれることがなく、細胞20にダメージを与えることなく安定した捕捉が可能になる。
また、アルミナは可視光に対して透明であるので、微細な吸引孔によって乱反射が生じても、捕捉した細胞に薬液をインジェクションする際に、光学顕微鏡を用いて観察しながら薬液をインジェクションできる程度に透明である。
次に、図5及び図6を参照して、本発明の実施例2の細胞捕捉チップの製造工程を説明する。
図5参照
まず、支持基板となる厚さが、例えば、525μmのシリコン基板31の表面に熱酸化によりSiO2 膜32,33形成したのち、例えば、スパッタリング法を用いて厚さが、例えば、5μmのAl膜34を形成する。
次いで、例えば、0.3M/リットルの希硫酸浴からなる陽極酸化液を用いて陽極酸化処理を行うことによってAl層34をアルマイトポア膜35に変換する。
なお、陽極酸化後にはSiO2 膜32側にアルミナバリア膜37が形成される。
この場合、細胞径が大きい場合は陽極酸化のみでは所望の径を実現できないため、必要に応じて4%のリン酸を用いたポアワイドニングを施すことによって、径を拡大することも可能である。
次いで、シリコン基板31の裏面に形成したSiO2 膜33にフッ酸を用いて一辺が例えば、1.7mmの開口部38を形成したのち、例えば、KOH等のエッチング液を用いてシリコン基板31の露出部をエッチングすることによって負圧吸引用の開口部39を形成する。
図6参照
次いで、BHF溶液によりSiO2 膜33と開口部39に露出するSiO2 膜32をエッチング除去したのち、イオンミリング法等を用いてアルミナバリア膜37を除去してポア36を貫通させることによって吸引孔41を備えた吸引孔層40とする。
次いで、凹部層42となるレジストを塗布したのち、露光・現像することによって直径が5μm〜20μmの細胞捕捉部43となる凹部を形成し、レジストをそのまま残存させることによって、厚さが、例えば、5μmの凹部層42とすることによって、本発明の実施例2の細胞捕捉チップの基本構造が完成する。
なお、この実施例2においても、チップサイズが3.5mm□である場合、例えば、約1000個程度の細胞捕捉部43を形成するものであり、また、細胞捕捉部43には80個程度の吸引孔41が含まれることになる。
このように、本発明においては、半導体テクノロジーと陽極酸化を組み合わせて細胞捕捉構造部を形成しているので、高度のエッチング技術を要することなく微細な吸引孔41を任意のピッチで形成することができ、また、それによって、吸引孔41が吸引孔層40の表面に均一に露出しているので、細胞捕捉部43を設けた凹部層42を形成する際にアライメントが不要になる。
次に、図7を参照して、本発明の実施例3の細胞捕捉チップの製造工程を説明するが、基本的な工程は上記の実施例2と同様であるので、陽極酸化工程のみを図示する。
図7参照
まず、上記の実施例2と同様に、支持基板となる厚さが、例えば、525μmのシリコン基板31の表面に熱酸化によりSiO2 膜32,33形成したのち、例えば、スパッタ法を用いて厚さが、例えば、5μmのAl膜34を形成する。
次いで、規則正しく配列した突起部51を有するSiCスタンパー50をAl膜34に押しつけて窪み44を形成したのち、例えばシュウ酸浴からなる陽極酸化液を用いて陽極酸化処理を行うことによってAl層34をアルマイトポア膜35に変換する。
この時、窪み44が深くエッチングされてポア36が形成される。
この場合も、細胞径が大きい場合は陽極酸化のみでは所望の径を実現できないため、必要に応じて4%のリン酸を用いたポアワイドニングを施すことによって、径を拡大することも可能である。
次いで、シリコン基板31に負圧吸引用の開口部39を形成したのち、SiO2 膜33と開口部39に露出するSiO2 膜32をエッチング除去し、次いで、イオンミリング法等を用いてアルミナバリア膜37を除去してポア36を貫通させることによって吸引孔41を備えた吸引孔層40とする。
次いで、凹部層42となるレジストを塗布したのち、露光・現像することによって直径が5μm〜20μmの細胞捕捉部43となる凹部を形成し、レジストをそのまま残存させることによって、厚さが、例えば、5μmの凹部層42とすることによって、本発明の実施例3の細胞捕捉チップの基本構造が完成する。
この実施例3においては、ポア36を形成する際に、ナノインプリント法を用いているので、ポアのピッチを印加電圧とは無関係に任意に且つより規則正しく配列させることができる。
次に、図8を参照して、本発明の実施例4の細胞捕捉チップの製造工程を説明するが、基本的工程は上記の実施例1と同様であるので、貼り合わせ工程のみ図示する。
図8参照
上記の実施例1と同様に、まず、純度が99.99%以上で、鏡面処理を施した厚さが、例えば、100μmのAl板11を用意し、例えば、0.3M/リットルの希硫酸浴からなる陽極酸化液を用いて陽極酸化処理を行うことによって多孔質アルミナ膜、即ち、アルマイトポア膜12を形成する。
この場合も、細胞径が大きい場合は陽極酸化のみでは所望の径を実現できないため、必要に応じて4%のリン酸を用いたポアワイドニングを施すことによって、径を拡大することも可能である。
一方、支持基板となるシリコン基板21の表面に熱酸化によりSiO2 膜22,23を形成したのち、フッ酸を用いて一方のSiO2 膜23に一辺が例えば、1.7mmの開口部24を形成し、次いで、例えば、KOH等のエッチング液を用いてシリコン基板21の露出部をエッチングすることによって負圧吸引用の開口部25を形成する。
次いで、アルマイトポア膜12の表面にCVD法を用いてSiO2 膜19を形成したのち、シリコン基板の基板貼り合わせ技術と同様に、SiO2 膜22とSiO2 膜19とを対向させ、加圧した状態で加熱することによって、Al板11とシリコン基板21に貼り合わせる。
次いで、Al層13側から研磨してAl層13を完全に除去するとともに、アルマイトポア膜12の厚さが例えば5μmになるまで研磨してポア14を貫通させることによって吸引孔16を備えた吸引孔層15とする。
次いで、ドライ・エッチングによって、SiO2 膜23と開口部24に露出するSiO2 膜22及びSiO2 膜19を除去したのち、凹部層17となるレジストを塗布し、露光・現像することによって直径が5μm〜20μmの細胞捕捉部18となる凹部を形成し、レジストをそのまま残存させることによって、厚さが、例えば、5μmの凹部層17とすることによって、本発明の実施例4の細胞捕捉チップの基本構造が完成する。
このように、本発明の実施例4においては、基板貼り合わせ技術を用いて化学反応性の低いSiO2 により細胞捕捉構造部を支持基板に貼り合わせているので、接着剤を用いた場合に比べて、インジェクション工程に用いる薬液や培養液等の接着剤に与える影響や、逆に、接着剤の成分が細胞や薬液に与える影響を配慮する必要がなくなる。
以上、本発明の各実施例を説明したが、本発明は各実施例に示した構成、条件、数値に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、上記の各実施例において示した、チップサイズ、細胞捕捉部の数等は全く任意であり、必要に応じて適宜変更されるものである。
また、上記の各実施例においては、凹部層をレジストによって形成しているが、レジストの成分が細胞や薬液等に与える虞がある場合や、表面の親水性や疏水性が問題になる場合には、SiO2 やSiN等の化学反応性の低い他の無機物に置き換えても良いものである。
また、上記の各実施例においては、支持基板を微細加工技術が確率されたシリコン基板により形成しているが、シリコン基板に限られるものではなく、ガラス基板やサファイア基板等の他の基板を用いても良いものである。
また、上記の実施例3においては、SiCマスター基板を用いたナノインプリント技術でポアの位置を制御しているが、電子線描画法或いはX線リソグラフィー法による開口レジスト部のエッチング技術によりアルミニウム表面に窪みを形成し、その後、酸性電解液、例えばシュウ酸等の溶液中で電圧印加をする陽極酸化ことにより、窪みに対応したポアを有するアルマイトポア膜を形成しても良いものである。
ここで、再び図1を参照して、改めて、本発明の詳細な特徴を説明する。
再び、図1参照
(付記1)細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体8を捕捉固定するための凹部構造層6と、一方向に貫通した吸引孔5を有する吸引孔層4と、前記凹部構造層6と吸引孔層4を支持する支持基板1を有するとともに、前記凹部構造層6内に吸引孔5が少なくとも二つ以上配置され、且つ、前記吸引孔5の径が前記小径細胞体8の平均直径の1/100〜1/10である小径細胞体捕捉チップであって、前記吸引孔層4がアルマイトポア膜からなり、前記吸引孔5が陽極酸化により自己組織化されたポアからなることを特徴とする小径細胞体捕捉チップ。
(付記2) 前記凹部構造層6及び吸引孔層4が、前記小径細胞体8の顕微鏡観察が可能な程度に光学的に透明であることを特徴とする付記1に記載の小胞体捕捉チップ。
(付記3) アルミニウム板を陽極酸化処理することによって、アルマイトポア膜を形成する工程、前記アルミニウム板のアルマイトポア膜を形成した面を開口部2を有する支持基板1に貼り合わせる工程、前記アルミニウム板を薄層化してアルマイトポア膜からなる吸引孔層4を形成する工程、及び、前記吸引孔層4上に前記吸引孔層4に設けられたポアを複数個含むように凹部7を形成した細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体を捕捉固定するための凹部構造層6を設ける工程とを有することを特徴とする小径細胞体捕捉チップの製造方法。
(付記4) 前記凹部構造層6を設ける工程の前に、前記アルミニウム板のアルマイトポア膜を形成した面を開口部2を有する支持基板1に貼り合わせる工程に用いた接着層の露出部を除去する工程を有することを特徴とする付記3に記載の小径細胞体捕捉チップの製造方法。
(付記5) 支持基板1上にアルミニウム層を形成する工程、前記アルミニウム層を陽極酸化してアルマイトポア膜からなる吸引孔層4を形成する工程、前記支持基板1に開口部2を形成する工程、及び、前記吸引孔層4上に前記吸引孔層4に設けられたポアを複数個含むように凹部7を形成した細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体を捕捉固定するための凹部構造層6を設ける工程とを有することを特徴とする小径細胞体捕捉チップの製造方法。
(付記6) 支持基板1上にアルミニウム層を形成する工程において、前記アルミニウム層を前記支持基板1に形成した介在層3を介して支持基板1上にアルミニウム層を成膜するとともに、前記凹部構造層6を設ける工程の前に前記介在層3の露出部を除去することを特徴とする付記5に記載の小径細胞体捕捉チップの製造方法。
(付記7) 前記介在層3を、前記支持基板1を熱酸化することによって形成することを特徴とする付記6に記載の小径細胞体捕捉チップの製造方法。
(付記8) 前記アルマイトポア膜を形成する工程において、前記アルミニウム層の表面にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜にナノインプリント法によって規則正しく配置された直径が50nm〜1000nmの開口部2を形成し、前記開口部2に露出したアルミニウム層を陽極酸化する工程を有することを特徴とする付記3乃至付記7のいずれか1に記載の小径細胞体捕捉チップの製造方法。
本発明の活用例としては、幹細胞にインジェクションを行う場合の細胞捕捉チップが典型的なものであるが、捕捉対象は幹細胞に限られるものではなく、幹細胞より大きな他の細胞でも良いものであり、さらには、捕捉対象は生体の細胞に限られるものではなく、各種の医薬反応や化学反応を実験するためのマイクロカプセルの捕捉にも適用されるものである。
本発明の原理的構成の説明図である。 本発明の実施例1の細胞捕捉チップの途中までの製造工程の説明図である。 本発明の実施例1の細胞捕捉チップの図2以降の製造工程の説明図である。 本発明の実施例1の細胞捕捉チップの構成説明図である。 本発明の実施例2の細胞捕捉チップの途中までの製造工程の説明図である。 本発明の実施例2の細胞捕捉チップの図5以降の製造工程の説明図である。 本発明の実施例3の細胞捕捉チップの製造工程の説明図である。 本発明の実施例4の細胞捕捉チップの製造工程の説明図である。
符号の説明
1 支持基板
2 開口部
3 介在層
4 吸引孔層
5 吸引孔
6 凹部構造層
7 凹部
小径細胞体
11 Al板
12 アルマイトポア膜
13 Al層
14 ポア
15 吸引孔層
16 吸引孔
17 凹部層
18 細胞捕捉部
19 SiO
20 細胞
21 シリコン基板
22,23 SiO
24 開口部
25 開口部
31 シリコン基板
32,33 SiO
34 Al膜
35 アルマイトポア膜
36 ポア
37 アルミナバリア膜
38 開口部
39 開口部
40 吸引孔層
41 吸引孔
42 凹部層
43 細胞捕捉部
44 窪み
50 SiCスタンパー
51 突起部

Claims (4)

  1. 細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体を捕捉固定するための凹部構造層と、一方向に貫通した吸引孔を有する吸引孔層と、前記凹部構造層と吸引孔層を支持する支持基板を有するとともに、前記凹部構造層内に吸引孔が少なくとも二つ以上配置され、且つ、前記吸引孔の径が前記小径細胞体の平均直径の1/100〜1/10である小径細胞体捕捉チップであって、前記吸引孔層がアルマイトポア膜からなり、前記吸引孔が陽極酸化により自己組織化されたポアからなることを特徴とする小径細胞体捕捉チップ。
  2. 前記凹部構造層及び吸引孔層が、前記小径細胞体の顕微鏡観察が可能な程度に光学的に透明であることを特徴とする請求項1に記載の小径細胞体捕捉チップ。
  3. アルミニウム板を陽極酸化処理することによって、アルマイトポア膜を形成する工程、前記アルミニウム板のアルマイトポア膜を形成した面を開口部を有する支持基板に貼り合わせる工程、前記アルミニウム板を薄層化してアルマイトポア膜からなる吸引孔層を形成する工程、及び、前記吸引孔層上に細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体を捕捉固定するための凹部構造層を設ける工程とを有することを特徴とする小径細胞体捕捉チップの製造方法。
  4. 支持基板上にアルミニウム層を形成する工程、前記アルミニウム層を陽極酸化してアルマイトポア膜からなる吸引孔層を形成する工程、前記支持基板に開口部を形成する工程、及び、前記吸引孔層上に細胞またはマイクロカプセルのいずれかからなる小径細胞体を捕捉固定するための凹部構造層を設ける工程とを有することを特徴とする小径細胞体捕捉チップの製造方法。
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