JP5209582B2 - 魚肉練製品用添加物 - Google Patents
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坐りや戻りの現象は、原料の魚種によって大きく影響され、また同じ魚種でも、鮮度、原料の処理方法、水晒し方法により影響される。例えば、同じスケトウタラでも、高鮮度で丁寧に水晒しされる洋上特級すり身は坐りが強く、戻りが弱いが、比較的低鮮度で、血液や内蔵の混入がみられる陸上すり身では、坐りが弱く戻りが強い傾向にある。水晒しを行ってすり身として多用されているスケトウダラに対して、イトヨリ、キンメダイ、マイワシ、アジ等の魚肉は、ゲル形成能は弱いが、旨味が強いことから、風味改善の点で魅力があり、練製品の原料として使用されている。
ゲル形成能が低下する原因の一つに魚肉に含まれるプロテアーゼの影響がある。上記の従来技術のうち、血漿、卵白などはプロテアーゼインヒビター活性を有することが知られている。プロテアーゼにはいくつかの種類があり、それらが含まれている比率は魚種により異なる。スケトウダラ、パシフィックホワイティングなどの魚種ではシステイン系のプロテアーゼが主体であり、アジ、タチウオなどの魚種ではセリン系プロテアーゼが主体であり、トリプシンはこのセリン系プロテアーゼに分類される。また、ホッケ、エソなどでは両方のプロテアーゼが含まれていることが知られている。魚種によって、適したプロテアーゼインヒビターを使用することにより坐りの低下を抑制することができる。
特許文献5には、トリプシンインヒビター活性を有する全脂大豆粉又は大豆ホエーをすり身や練製品に使用することが記載されている。トリプシンインヒビター活性を有する全脂大豆粉又は大豆ホエーを添加することにより魚肉練製品の製造時に戻り防止効果が発揮されると記載されている。各種大豆蛋白質もすり身、練製品の添加物として多用されているが、これら大豆蛋白質は加熱処理が施されているため、トリプシンインヒビター活性を有していない。非加熱の全脂大豆粉など限られた大豆粉のみがトリプシンインヒビター活性を有する。
(1)添加物としてリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を用いたことを特徴とする坐り工程を経て製造される魚肉練製品。
(2)坐り工程を経て製造される魚肉練製品の製造において、添加物の大豆粉としてリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を用いる方法。
(3)坐り工程を経て製造される魚肉練製品の製造において、トリプシンインヒビターとしてリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を用いる方法。
(4)リポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を含有する、トリプシンインヒビター活性が保持され、坐り阻害活性は低下あるいは除去された魚肉用添加物。
(5)(4)の魚肉用添加物が添加された魚肉すり身。
(6)魚肉がセリン系プロテアーゼを含有する魚肉である(5)の魚肉すり身。
(7)魚肉に対してリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を0.1〜5.0重量%添加したものである(5)又は(6)の魚肉すり身。
(8)(4)の魚肉用添加物が添加された魚肉練製品。
(9)セリン系プロテアーゼを含有する魚肉を原料として含有する魚肉練製品である(8)の魚肉練製品。
(10)魚肉に対してリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を0.1〜5.0重量%添加したものである(8)又は(9)の魚肉練製品。
一方、大豆由来の植物蛋白質製品は、大豆に含まれる各種の蛋白質を用途により振り分けて製造された大豆蛋白質の粉状または繊維状の製品であり、全脂大豆粉のような大豆そのものを粉にしたものと製法が基本的に異なる。これらについても高温での加熱など、トリプシンインヒビター活性を失活させる条件で加工された大豆粉は、リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆を原料としていても、本発明の大豆粉としては不適当である。
本発明は複数の種類の魚肉を混合して用いる場合に特に有用であり、混合する魚肉の種類、量比によって、大豆粉の添加量を調節する。
本発明の大豆粉を添加する時期は、すり身製造時、練製品製造時にいずれでもよく、最終製品に要求される弾力に応じて添加量を調節する。
すなわち、トリプシン活性を、合成基質としてBoc-Gln-Ala-Arg-MACを使用して測定した。トリプシンインヒビター活性は、トリプシンを20mM Tris pH7.5/0.1M NaClにて20μg/mlに希釈したもの50μlに、被検物質(研究用試薬大豆トリプシンインヒビター(STIH)、非加熱の全脂大豆粉、又は、リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉を各濃度(10μg〜0.01μg/ml)に希釈したもの750μlを加え、37℃で3分間プレインキュベートした。その後、合成基質6.24mg/mlを200μl加え反応液とし、37℃で6分間インキュベートした。その後1mM pAPMSFを1.5ml加え反応を停止し、Ex380nm,Em460nmで蛍光強度を測定した。このときの反応液中に含まれる重量あたりのIC50を比較することで、各種大豆粉の活性を評価した。
IC50は大豆粉の各濃度の阻害率からA:50%阻害をはさむ高濃度側濃度、B:50%阻害をはさむ低濃度側濃度、C:Bでの阻害率、D:Aでの阻害率を用い、計算式
IC50=10^(Log(A/B)*(50-C)/(D-C)+Log(B))
に沿って算出し
リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉および乾燥生丸大豆粉のIC50は概ね0.6〜0.4μg/mlという値であった。トリプシンインヒビター活性が多少弱くても添加量を多くすればいいともいえるが、実用性を考えれば、添加量は少ないほどよく、トリプシンインヒビター活性をID50が0.8μg/ml以下程度に保持することが好ましい。
市販の全脂大豆粉(ソーヤフラワーNSA:日清オイリオ製)(図中では生大豆と表記)およびリポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉(LKソイ・ファインS:フードブリッジ・ジャパン製)(図中では欠損大豆と表記)について、常法により調整されたスケトウダラのすり身に対する添加試験を行った。すなわち、冷凍すり身(市販の無塩冷凍すり身、FAグレード)を解凍し、フードカッターを用いてこれを粗擂り、次いで食塩をすり身に対して1重量%添加して塩擂り、さらに2種類の大豆粉(非加熱の全脂大豆粉、リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉)のいずれかをすり身に対して0.3重量%添加し、すり身に対して40% の加水を行い、本擂りを行った(コントロールは、いずれの大豆粉も添加しないで調製した)。その練り肉を、ポリ塩化ビニリデンフィルムに充填し、30℃で60分加熱した後90℃で40分間加熱してカマボコを調製した。本条件は坐りがよく促進される条件である。
また、上記の大豆粉に替えて、2種の大豆粉を単独あるいは、比率を変えて混合して0.3重量%添加したもの、および、試薬のリポキシゲナーゼである15-Lipoxygenase(sigma社製)を添加したものも調製した。
得られたカマボコのジェリー強度を測定した。ジェリー強度は上記の各カマボコを厚さ2.5cmの輪切りにし、5mm径球状のプランジャーを用いて測定した破断強度(w値、g)と、破断までの距離(L値、cm)を掛け合わせたJ.S.(g・cm)で表した。
これらの結果より、通常の生の大豆を粉体化してすり身に添加した場合、著しくカマボコのゲル強度は低下する。このゲル強度の低下は、リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆の粉を添加した場合には認められず、試薬のリポキシゲナーゼでも同じ作用が確認されたことから、リポキシゲナーゼが関与することが確認された。
大豆粉に含まれるリポキシゲナーゼ活性を、メチレンブルーを用いた比色試験により評価した。リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉(LKソイ・ファインS:フードブリッジ・ジャパン製)および全脂大豆粉(ソーヤフラワーNSA:日清オイリオ製)のトリプシンインヒビター活性を測定した。すなわち、0.5%ホウ酸 pH9.0、0.3%リノール酸、0.05%メチレンブルーをそれぞれ5:1:1の割合で混合し、その混合液に市販の全脂大豆粉(ソーヤフラワーNSA:日清オイリオ製)およびリポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉(LKソイ・ファインS:フードブリッジ・ジャパン製)の100,50,25,12.5,5,2,5 mg/mlの溶液上清を0.5の割合で添加し25℃で20分間反応させた。その後、Final 10%となるようにオルトフェナントロリンを加え反応を停止し、比色により両者の比較を行った。
図4に示したように、全脂大豆粉(図中、生大豆と表記)には明らかにリポキシゲナーゼ活性が認められたが、リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉(図中、欠損大豆と表記)には活性は認められなかった。
大豆粉に含まれるトリプシンインヒビターの活性を合成基質を用いて評価した。リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉(LKソイ・ファインS:フードブリッジ・ジャパン製)および全脂大豆粉(ソーヤフラワーNSA:日清オイリオ製)のトリプシンインヒビター活性を測定した。コントロールとしてトリプシンインヒビター試薬(Trypsin Inhibitor:nacalai tesque)を用いた。
トリプシンの阻害活性をIC50で評価した。プロテアーゼとしてトリプシン(30USPunit/mg 和光純薬)を、基質としてBoc-Gln-Ala-Arg-MAC(ペプチド研究所)を用い、分解に伴う蛍光の変化を求め、阻害活性を求めた。IC50は全脂大豆粉の各濃度の阻害率からA:50%阻害をはさむ高濃度側濃度、B:50%阻害をはさむ低濃度側濃度、C:Bでの阻害率、D:Aでの阻害率を用い、
IC50=10^(Log(A/B)*(50-C)/(D-C)+Log(B))
に沿って算出した。
結果を図5および表1に示した。全脂大豆粉、リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉のいずれもトリプシンインヒビター活性が認められた。
本発明のリポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆を原料とする大豆粉の作用を確認するため、セリン系プロテアーゼが多く含まれるタチウオすり身と上級スケトウダラすり身を混合した単品試験を行った。タチウオすり身はセリン系のプロテアーゼが混入しており、セリン系プロテアーゼインヒビターを添加しない状態では単品のジェリー強度の測定が困難なすり身である。一方、上級スケトウダラすり身は良好なジェリー強度が得られ、プロテアーゼの混入が少ないすり身である。この両者をタチウオ4:スケトウダラ6の比率で混合し試験に供した。
常法により調整されたすり身に対する添加試験を行った。すなわち、冷凍すり身(市販の無塩冷凍すり身)を解凍し、フードカッターを用いてこれを粗擂り、次いで食塩をすり身に対して1重量%添加して塩擂り、さらに2種の大豆粉(リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉および全脂大豆粉)のいずれかをすり身に対して0.3重量%添加し、本擂りを行った。その後ポリ塩化ビニリデンフィルムに充填し、90℃で40分間加熱し、カマボコを調整した。コントロールは大豆粉を添加しないで調製した。得られたこれら3種類のカマボコのジェリー強度を実施例1と同様の方法で測定した。
本発明の大豆粉のトリプシンインヒビター活性を確認するため、タチウオ4:スケトウダラ6の比率で混合したすり身の内在のプロテアーゼによる蛋白質の分解の指標として遊離アミノ酸量を測定した。すなわち、冷凍すり身(市販の無塩冷凍すり身)を解凍し、5倍量の緩衝液(20mM Tris pH7.5/100mM NaCl)とともにホモジナイズした。リポキシゲナーゼ遺伝子欠損大豆粉および全脂大豆粉を0.3重量%添加し、無添加のホモジナイズ液とともにカマボコの戻りを引き起こす60℃で30分間加熱した。その後、一部を回収し、等量の15%トリクロロ酢酸を加え、蛋白質画分を除去し、等量の0.5M Na2CO3でpHを調整し遊離アミノ酸量をlowry法で求めた。コントロールは大豆粉を添加しないで調製した。
Claims (10)
- 添加物としてリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を用いたことを特徴とする坐り工程を経て製造される魚肉練製品。
- 坐り工程を経て製造される魚肉練製品の製造において、添加物の大豆粉としてリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を用いる方法。
- 坐り工程を経て製造される魚肉練製品の製造において、トリプシンインヒビターとしてリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を用いる方法。
- リポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を含有する、トリプシンインヒビター活性が保持され、坐り阻害活性は低下あるいは除去された魚肉用添加物。
- 請求項4の魚肉用添加物が添加された魚肉すり身。
- 魚肉がセリン系プロテアーゼを含有する魚肉である請求項5の魚肉すり身。
- 魚肉に対してリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を0.1〜5.0重量%添加したものである請求項5又は6の魚肉すり身。
- 請求項4の魚肉用添加物が添加された魚肉練製品。
- セリン系プロテアーゼを含有する魚肉を原料として含有する魚肉練製品である請求項8の魚肉練製品。
- 魚肉に対してリポキシゲナーゼ遺伝子を欠損させた大豆を原料とする大豆粉を0.1〜5.0重量%添加したものである請求項8又は9の魚肉練製品。
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