JP5213232B2 - 咬合堤軟化器具 - Google Patents

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本発明は、歯科治療において用いられる咬合堤軟化器具に関する。
歯科医療において、歯科医師は、有床義歯を製作する際、まず、患者の顎模型上に咬合床を製作する。更に、歯科医師は、咬合床を構成するワックス製の咬合提(ワックス咬合堤)の上面を軟化させ、患者の口腔内に挿入し、適切な高さ、位置に誘導しながら噛み込ませて、反対側の顎の歯牙、人工歯、又は、反対側の咬合床の圧痕をつける。
ワックス咬合堤の上面を軟化させる際には、歯科用ワックススパチュラが用いられる。図8は、歯科用ワックススパチュラの斜視図である。図8において、歯科用ワックススパチュラは、ヘラ部500とハンドル部502とにより構成される。歯科医師は、ハンドル部502を手で持ち、ガスバーナー510が発する炎にヘラ部500をかざし、当該へラ部500の温度が最適な状態になるように、コントロールしながら加熱させる。そして、歯科医師は、ワックス咬合堤の上面に、へラ部500の側面を、位置を変えながら押し当てて、軟化作業を行う。このようなワックス咬合堤上面の軟化作業では、ヘラ部500の温度が高すぎると、ワックス咬合堤が過度に溶融し、形が崩れて流れ落ちてしまう。一方、ヘラ部500の温度が低すぎると、ワックス咬合堤の溶融ができない。従って、ヘラ部500を加熱して適切な温度とするには、ある程度の熟練を要する。また、一般にヘラ部500は、ワックス咬合堤の上面を一度に軟化させるには熱容量が小さいため、歯科医師は、ヘラ部500の加熱と、ワックス咬合堤上面への押し当てとを繰り返すことになり、軟化作業に時間を要する。
このため、外部から供給される電力によりヘラ部が発熱してワックス咬合堤上面を軟化させる装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。このような装置では、ヘラ部の温度調整が容易であり、電力が供給されている間は、ヘラ部が継続して発熱するため、ワックス咬合堤の上面を軟化させる作業の時間を短縮することができる。
特開2000−279430号公報 特開2007−97750号公報
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、ヘラ部をワックス咬合堤の上面に押し当て、当該上面を加熱する方法が採られるため、ワックス咬合堤の内部については短時間で軟化しにくく、軟化の作業に時間を要するという問題があった。また、特許文献2に記載された装置では、扇形のフィンをワックス咬合堤の上面に垂直に押し当て、当該上面を軟化させて溝を形成する方法が採られるため、特許文献1に記載された装置よりは短時間にワックス咬合堤の内部を軟化させることは可能であるが、フィンが扇形であるため、押し当てる力が分散する、換言すれば、押し当てる際にある程度大きな力が必要となるという問題があった。
本発明は、前述したような事情に鑑みてなされたもので、咬合堤の軟化作業の短時間化及び容易化を図った咬合堤軟化器具を提供するものである。
本発明の咬合堤軟化器具は、筒状の基材と、前記基材に一端が挿入され、供給される電力により発熱するヒーター部と、一端に前記ヒーター部の他端を挿入するハンドル部と、前記基材の側面に取り付けられ、前記ヒーター部の発熱により加熱される複数のピンと、前記基材の側面における前記ピンの取り付け位置とは対向する位置に取り付けられ、前記ヒーター部の発熱により加熱される板状部材とを有する。
この構成によれば、ヒーター部の発熱によって、基材に取り付けられた複数のピンが加熱される。更に、これらピンを咬合堤に押し当てることで、当該ピンは、周囲の咬合堤を溶解しながら内部に押し込まれるため、内部まで短時間に軟化させることができる。また、ピンを咬合堤に押し当てる際には、当該ピンの先端に力が集中するため、当該押し当ての際に要する力は少なくてよい。
そして、ヒーター部の発熱によって、基材に取り付けられた板状部材が加熱され、当該板状部材を咬合堤に押し当てることで、当該咬合堤を軟化させることができる。
また、本発明の咬合堤軟化器具は、前記基材、前記ピン及び前記板状部材が、熱伝導性部材により形成され、前記ハンドル部の外周部が、樹脂により形成されるようにしてもよい。
この構成によれば、ヒーター部によって生じる熱を、基材を介してピン及び板状部材に効率よく伝導させることができる一方、作業者が持つハンドル部の外周部が高温になることが防止される。
また、本発明の咬合堤軟化器具は、前記ハンドル部の他端に取り付けられる電源コードを有し、前記ヒーター部が、前記電源コードを介して供給される電力によって発熱するようにしてもよい。
本発明によれば、ピンを咬合堤に押し当てることで、当該咬合堤の内部まで短時間に軟化させることができ、更には、押し当ての際に要する力は少なくてよく、咬合堤の軟化作業の短時間化及び容易化が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係る咬合堤軟化器具の斜視図である。また、図3は、咬合堤軟化器具の側面図(図3(a)及び図3(b))、上面図(図3(c))及び下面図(図3(d))である。また、図4は、咬合堤軟化器具の正面図(図4(a))、及び、ピン、ブレード部及びケースの正面図(図4(b))である。また、図5は、先端部分の断面を含む咬合堤軟化器具の側面図である。
これらの図に示すように、咬合堤軟化器具100は、複数のピン102と、板状部材に対応するブレード部104と、基材に対応するケース106と、ヒーター部108と、ステンレスパイプ110と、ハンドル部112と、ハンドル取り付けリング114とを有する。これらのうち、ピン102、ブレード部104及びケース106は、熱伝導性の高い部材、例えば金属によって形成される。また、ハンドル部112の外周部は、熱伝導性の低い部材、例えば樹脂により形成される。
図1及び図2において、石膏製の患者の顎模型202上には咬合床203が配置されている。この咬合床203は、アクリルレジン等の樹脂製又はワックス製の基礎床204と、ワックス製の咬合堤(ワックス咬合堤)206とからなる。基礎床204は、顎粘膜と接触するベースの部分であり、内面が口腔内に適合するように形成される。ワックス咬合堤206は、馬蹄形であり、基礎床204の上に搭載される。
咬合堤軟化器具100は、上述したワックス咬合堤206を軟化させるものである。複数のピン102は、一端(根元)がケース106の側面に取り付けられており、他端(先端)に向かうにしたがって断面が小さくなる尖った形状を有する。ブレード部104は、板状であり、ケース106の側面における、ピン102の取り付け位置と対向する位置に屹立するように一辺が取り付けられている。
ピン102及びブレード部104が取り付けられたケース106は、筒状の形状を有している。図5に示すように、このケース106には、ピン102及びブレード部104が取り付けられた側とは反対側の開口部から棒状のヒーター部108の一端が挿入されている。
また、図5に示すように、ステンレスパイプ110には、ヒーター部108の他端が挿入されている。また、ステンレスパイプ110の一端は、ケース106の他端に挿入される。このように、ステンレスパイプ110の一端がケース106の他端に挿入されることにより、ケース106はステンレスパイプ110に固定される。
更に、ヒーター部108及びステンレスパイプ110は、歯科医師が作業時に手に持つハンドル部112に取り付けられる。ハンドル取り付けリング114は、ヒーター部108及びステンレスパイプ110を挿入し、図4(a)に示すようにネジ115によってハンドル部112に取り付けられる。これにより、ヒーター部108及びステンレスパイプ110がハンドル部112の一端に固定される。
また、ハンドル部112の他端には、電源コード116が取り付けられる。この電源コード116は、ヒーター部108を発熱させるために、外部からの電力を当該ヒーター部108に供給するものである。例えば、電源コード116における、ハンドル部112が取り付けられた側とは反対の側には、コンセントが接続されており、これにより、家庭用電源からの電力をヒーター部108に供給することができる。
ヒーター部108の加熱方式には、様々なものが考えられる。例えば、ヒーター部108に対して常に一定の電力を供給する方式がある。また、図示しない電力量の切替スイッチを設け、作業者である歯科医師が当該スイッチを操作することで、ヒーター部108に対して低い電力と高い電力とを選択的に供給するものであって、通常は低い電力を供給し、急速加熱時には高い電力を供給する方式が考えられる。また、図示しない温度センサと温度設定スイッチとを設け、ヒーター部108の温度が、温度センサによって検出される温度が、作業者である歯科医師が当該スイッチを操作することで設定された温度となるように、ヒーター部108に対して供給される電力を制御する方式が考えられる。これらのヒーター部108の加熱方式を実現するための制御部等は、例えば、ハンドル部112の内部に構成される。
ヒーター部108が加熱により発熱すると、当該ヒーター部108を挿入したケース106が加熱され、更には、当該ケース106に取り付けられたピン102及びブレード部104が加熱される。
図1では、加熱された複数のピン102がワックス咬合堤206の上面206−1に押し当てられることにより、ワックス咬合堤206が軟化される。図6は、ワックス咬合堤206の上面206−1にピン102が押し当てられることによるワックス咬合堤206の軟化の過程を示す図である。
図6(a−1)の側方断面図、及び、図6(a−2)の上面図に示す第1の過程では、加熱された複数のピン102がワックス咬合堤206の上部に配置される。図6(b−1)の側方断面図、及び、図6(b−2)の上面図に示す第2の過程では、複数のピン102は、ワックス咬合堤206の上面206−1に押し当てられ、これら複数のピン102は、熱でワックス咬合堤206を溶融(融解)しながら、内部に押し込まれる。この際、ワックス咬合堤206のうち、ピン102の周辺部分のワックスは液体(溶解部分)208となる。一方、ワックス咬合堤206のうち、ピン102から離れた部分は、固体のままであるため、溶融部分208を取り囲む形となり、板状の器具のようにワックス咬合提206から溶解部分である液体のワックスが流れ出ることが抑制される。
図6(c−1)の側方断面図、及び、図6(c−2)の上面図に示す第3の過程では、複数のピン102は、引き上げられる。一方、ワックス咬合堤206では、溶解部分208の熱が徐々に周囲に伝導し、当該溶解部分208の周囲が半溶解状態210となる。 図6(d−1)の側方断面図、及び、図6(d−2)の上面図に示す第4の過程では、溶融部分208が徐々に減少し、熱が拡散して半溶解状態210が柔らかな可塑部分212に変化する。図6(e−1)の側方断面図、及び、図6(e−2)の上面図に示す第5の過程では、ワックス咬合堤206において、更に熱が拡散して可塑部分212が拡大し、全体の温度がほぼ均等になる。これに伴って固体部分も更に減少し、一定の厚さでワックス咬合堤206が軟化される。
また、図2では、ワックス咬合堤206の上面206−1にブレード部104が押し当てられる。これにより、ワックス咬合堤206の一部分を軟化、又は、切断することができる。
ワックス咬合堤206が軟化されると、歯科医師は、当該ワックス咬合堤206を患者の口腔内に挿入し、適切な高さ、位置に誘導しながら噛み込ませて、反対側の顎の歯牙、人工歯、又は、反対側の咬合床の圧痕をつける。更に、歯科医師は、ワックス咬合堤206を口腔外に取り出し顎模型202に戻す。口腔内で噛み込ませた圧痕と、反対側の顎模型や咬合床を合わせることによって、上下顎の位置関係が再現される。この再現された状態において、咬合床や顎模型の周囲に溶解したワックスを流して固定した上で、歯科用咬合器に装着することにより、口腔内の顎の形と噛み合わせの位置関係が口腔外に再現され、有床義歯を製作するための準備が完了する。
このように、本実施形態の咬合堤軟化器具100では、ヒーター部108の発熱によって、ケース106に取り付けられた複数のピン102が加熱される。更には、これらピン102をワックス咬合堤206の上面206−1に押し当てることで、当該ピン102は、周囲のワックス咬合堤206を溶解しながら内部に押し込まれるため、内部まで短時間に軟化させることができる。また、ピン102をワックス咬合堤206に押し当てる際には、当該ピン102の先端に力が集中するため、当該押し当ての際に要する力は少なくてよい。
なお、上述した実施形態では、総入れ歯である有床義歯の製作において、ワックス咬合堤206を軟化させる場合について説明したが、部分入れ歯の製作におけるワックス咬合堤の軟化にも本発明を適用することができる。この場合にも同様に、咬合堤軟化器具100では、ヒーター部108の発熱によって、ケース106に取り付けられた複数のピン102が加熱させ、図7に示すように、当該ピン102をワックス咬合堤220の上面に押し当てることで、上述と同様、当該ピン102は、周囲のワックス咬合堤206を溶解しながら内部に押し込まれるため、内部まで短時間に軟化させることができる。また、ピン102をワックス咬合堤206に押し当てる際には、当該ピン102の先端に力が集中するため、当該押し当ての際に要する力は少なくてよい。
なお、部分入れ歯の製作の場合には、ワックス咬合提220の幅が狭くなることがある。この場合には、ピン102の配列の長手方向とワックス咬合堤220の長手方向とが垂直と成るように、ピン102をワックス咬合堤220の上面に押し当てる。なお、ピン102は、先端の断面が狭く根元の断面が広い形状であるため、ワックス咬合堤220の内部に進入させる深さを変えることで、当該ワックス咬合堤220が溶解される領域の広さを変えることができる。また、ワックス咬合提220の幅が狭い場合は、ブレード部104をワックス咬合堤220に押し当てることで、当該ワックス咬合堤220を軟化させることもできる。
また、ブレード部104は、先端がヒーター部108よりも突き出した配置となっているため、部分的な溶融や人工歯の排列作業等に利用することもできる。
以上、説明したように、本発明に係る咬合堤軟化器具は、咬合堤の軟化作業の短時間化及び容易化を図るものであり、咬合堤軟化器具として有用である。
本発明の実施形態に係る咬合堤軟化器具の第1の斜視図である。 本発明の実施形態に係る咬合堤軟化器具の第2の斜視図である。 本発明の実施形態に係る咬合堤軟化器具の側面図、上面図及び下面図である。 咬合堤軟化器具の正面図と、ピン、ブレード部及びケースの正面図である。 先端部分の断面を含む咬合堤軟化器具の側面図である。 ワックス咬合堤の軟化過程を示す図である。 部分入れ歯製作におけるワックス咬合堤の軟化時の態様を示す図である。 歯科用ワックススパチュラの斜視図である。
符号の説明
100 咬合堤軟化器具
102 ピン
104 ブレード部
106 ケース
108 ヒーター部
110 ステンレスパイプ
112 ハンドル部
114 ハンドル取り付けリング
115 ネジ
116 電源コード
202 顎模型
203 咬合床
204 基礎床
206 ワックス咬合堤

Claims (3)

  1. 筒状の基材と、
    前記基材に一端が挿入され、供給される電力により発熱するヒーター部と、
    一端に前記ヒーター部の他端を挿入するハンドル部と、
    前記基材の側面に取り付けられ、前記ヒーター部の発熱により加熱される複数のピンと
    前記基材の側面における前記ピンの取り付け位置とは対向する位置に取り付けられ、前記ヒーター部の発熱により加熱される板状部材とを有する咬合堤軟化器具。
  2. 前記基材、前記ピン及び前記板状部材は、熱伝導性部材により形成され、
    前記ハンドル部の外周部は、樹脂により形成される請求項に記載の咬合堤軟化器具。
  3. 前記ハンドル部の他端に取り付けられる電源コードを有し、
    前記ヒーター部は、前記電源コードを介して供給される電力によって発熱する請求項1または2に記載の咬合堤軟化器具。
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