以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の形態で説明する液圧制御装置は、液圧を制御する液圧回路であれば適用することが可能であり、例えば、車両用の電子制御式ブレーキシステムの液圧回路に用いると好適である。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
(ブレーキ制御装置の概略)
図1は、本発明の一実施の形態に係るブレーキ制御装置10の系統図である。ブレーキ制御装置10には電子制御式ブレーキシステム(ECB)が採用されており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作に応じて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に設定する。
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動液としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。マスタシリンダ14は、その内部に2つの液圧室を備えている。これらの液圧室には、ブレーキ踏力に応じたマスタシリンダ圧PM/Cが発生する。また、ブレーキペダル12には、その踏込ストロークを検出するストロークセンサ46が設けられている。
更に、マスタシリンダ14の上部にはリザーバタンク26が接続されており、作動液としてのブレーキフルードが貯留されている。マスタシリンダ14の液圧室とリザーバタンク26とは、ブレーキペダル12の踏み込みが解除されている場合に導通状態となる。マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、電磁弁23を介して運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。
ストロークシミュレータ24は、ブレーキペダル12が踏み込まれた場合に、ブレーキペダル12に、ブレーキ踏力に応じたストロークを付与する機構である。電磁弁23は、いわゆる常閉型のリニアバルブであり、電流が供給されていない状態では閉弁し、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作が検出された場合に電流が供給され開弁する。
マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されている。ブレーキ油圧制御管16は、右前輪に制動力を付与する右前輪用ホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されている。ブレーキ油圧制御管18は左前輪に制動力を付与する左前輪用ホイールシリンダ20FLに接続されている。
ブレーキ油圧制御管16の途中には右マスタカット弁22FRが設けられており、ブレーキ油圧制御管18の途中には左マスタカット弁22FLが設けられている。右マスタカット弁22FRおよび左マスタカット弁22FLは、何れもいわゆる常開型のリニアバルブであり、電流が供給されている状態では閉弁してマスタシリンダ14と右前輪用ホイールシリンダ20FRまたは左前輪用ホイールシリンダ20FLとの連通を阻止する。一方、右マスタカット弁22FRおよび左マスタカット弁22FLは、電流の供給が減少または停止されることにより開弁してマスタシリンダ14と右前輪用ホイールシリンダ20FRまたは左前輪用ホイールシリンダ20FLとを連通させる。以下、必要に応じて右マスタカット弁22FRおよび左マスタカット弁22FLをマスタ弁22と総称する。
また、ブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧センサ48FRが設けられている。左前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を検出する左マスタ圧センサ48FLが設けられている。右マスタ圧センサ48FRは、ブレーキ油圧制御管16の内部に導かれる液圧、すなわち、第1マスタシリンダ圧PM/Cに応じた信号を出力する。左マスタ圧センサ48FLは、ブレーキ油圧制御管18の内部に導かれる液圧、すなわち、第2マスタシリンダ圧PM/Cに応じた信号を出力する。これらマスタ圧センサの出力信号pMCはECU90に供給されている。ECU90は出力信号pMCに基づいてマスタシリンダ圧PM/Cを検出する。
ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、右マスタ圧センサ48FRおよび左マスタ圧センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。電子制御ユニット(以下、「ECU」という)90は、ストロークセンサ46の故障などを考慮して、フェイルセーフの観点から右マスタ圧センサ48FRおよび左マスタ圧センサ48FLの検出結果からマスタシリンダ圧を監視する。
リザーバタンク26には油圧給排管28の一端が接続されている。この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるポンプ34の吸込口が接続されている。ポンプ34の吐出口は高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施の形態では、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプがポンプ34として採用されている。また、ブレーキフルードを高圧で蓄えるアキュムレータ50が採用されている。
アキュムレータ50は、ポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
高圧管30は、右前輪用増圧弁40FR、左前輪用増圧弁40FL、右後輪用増圧弁40RR、および左後輪用増圧弁40RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「増圧弁40」という)を介して、右前輪用ホイールシリンダ20FR、左前輪用ホイールシリンダ20FL、右後輪用ホイールシリンダ20RR、および左後輪用ホイールシリンダ20RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「ホイールシリンダ20」という)にそれぞれ接続されている。増圧弁40の各々はいわゆる常閉型のリニアバルブ(電磁弁)であり、電流が供給されていない状態では閉弁してホイールシリンダ圧を増圧させず、電流が供給されることにより開弁してホイールシリンダ圧を増圧させる。
右前輪用ホイールシリンダ20FR〜右後輪用ホイールシリンダ20RRは、それぞれ右前輪用減圧弁42FR、左前輪用減圧弁42FL、右後輪用減圧弁42RR、および左後輪用減圧弁42RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「減圧弁42」という)に接続されている。
右前輪用減圧弁42FRおよび左前輪用減圧弁42FLはいわゆる常閉型のリニアバルブ(電磁弁)であり、電流が供給されていない状態では閉弁してホイールシリンダ圧を減圧させず、電流が供給されることにより開弁してホイールシリンダ圧を減圧させる。一方、左後輪用減圧弁42RLおよび右後輪用減圧弁42RRはいわゆる常開型のリニアバルブ(電磁弁)であり、電流が供給されている状態では閉弁してホイールシリンダ圧を減圧させず、電流の供給が減少または停止されることにより開弁してホイールシリンダ圧を減圧させる。
右前輪用ホイールシリンダ20FR、左前輪用ホイールシリンダ20FL、右後輪用ホイールシリンダ20RR、および左後輪用ホイールシリンダ20RL付近の油圧配管には、それぞれ対応するホイールシリンダ20の液圧を検出する右前輪用ホイールシリンダ圧センサ44FR、左前輪用ホイールシリンダ圧センサ44FL、右後輪用ホイールシリンダ圧センサ44RR、および左後輪用ホイールシリンダ圧センサ44RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「ホイールシリンダ圧センサ44」という)がそれぞれ設けられている。
上述のマスタ弁22、増圧弁40、減圧弁42、ポンプ34、アキュムレータ50、マスタ圧センサ48、ホイールシリンダ圧センサ44、アキュムレータ圧センサ51などによって油圧アクチュエータ80が構成される。油圧アクチュエータ80はECU90によってその作動が制御される。
本実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、上述の作動に加えて、システムに故障が認められた場合であっても、制動力を発生させるためにアキュムレータ50を高圧源として有効に利用することができるように構成されている。
具体的には、ブレーキ制御装置10は、システムに故障が認められた場合にアキュムレータ50の液圧を増圧弁40を介さずに直接ホイールシリンダ20へ伝達するポンプ液圧通路29が設けられている。そして、ポンプ液圧通路29とブレーキ油圧制御管16およびブレーキ油圧制御管18との合流部に設けられた機械式増圧弁56,58により、アキュムレータ50を液圧源としたホイールシリンダ圧の制御が可能となる。
ブレーキ油圧制御管16は、機械式増圧弁56およびチェック弁60に連通している。ブレーキ油圧制御管16は、途中で2つの流路に分岐されており、第1流路16aには機械式増圧弁56が、第2流路16bにはチェック弁(逆止弁)60がそれぞれ接続されている。また、ブレーキ油圧制御管18は、機械式増圧弁58およびチェック弁62に連通している。ブレーキ油圧制御管18は、途中で2つの流路に分岐されており、第1流路18aには機械式増圧弁58が、第2流路18bにはチェック弁62がそれぞれ接続されている。
機械式増圧弁56には、大気圧通路27(図1不図示、図2参照)、右フロント液圧通路64、および、ポンプ液圧通路29が分岐した一方の通路29aが連通している。大気圧通路27は、油圧給排管28を介してリザーバタンク26に連通することにより大気圧に開放されている。右フロント液圧通路64からは、機械式増圧弁56により生成された液圧が吐出される。また、ポンプ液圧通路29の一方の通路29aには、チェック弁31を介して高圧のアキュムレータ圧PACCが供給される。チェック弁31は、アキュムレータ50側から機械式増圧弁56側へ向かう流体の流れのみを許容する一方向弁である。
また、機械式増圧弁58には、大気圧通路27(図1不図示、図2参照)、左フロント液圧通路66、および、ポンプ液圧通路29が分岐した他方の通路29bが連通している。大気圧通路27は、油圧給排管28を介してリザーバタンク26に連通することにより大気圧に開放されている。左フロント液圧通路66からは、機械式増圧弁58により生成された液圧が吐出される。また、ポンプ液圧通路29の他方の通路29bには、高圧のアキュムレータ圧PACCが供給される。
(液圧制御装置)
図2は、本実施の形態に係る液圧制御装置の概略を示す系統図である。なお、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、右前輪用ホイールシリンダ20FRに対して機能する機械式増圧弁56を有する第1液圧制御装置と、左前輪用ホイールシリンダ20FLに対して機能する機械式増圧弁58を有する第2液圧制御装置と、を備える。なお、第1液圧制御装置と第2制御機構は構成が同様のため、以下では、右前輪用ホイールシリンダ20FRに作用する第1液圧制御装置(以下、「液圧制御装置」という。)について説明する。
図2に示すように、液圧制御装置200は、機械式増圧弁56およびチェック弁60を備える。機械式増圧弁56は、マスタシリンダ14と右前輪用ホイールシリンダ20FRとの間の、第1流路16aに接続されている。そして、機械式増圧弁56は、マスタシリンダ14で発生するマスタシリンダ圧PM/Cに対して所定の増圧比のホイールシリンダ圧PW/Cを右前輪用ホイールシリンダ20FRに発生させる。そのために、本実施の形態に係る機械式増圧弁56は、増圧時にアキュムレータ50から右前輪用ホイールシリンダ20FR側へブレーキフルードを導入可能なように構成されている。
また、チェック弁60は、第1流路16aと並列にマスタシリンダ14とホイールシリンダ20FRとの間に設けられた第2流路16bに接続されている。そして、チェック弁60は、マスタシリンダ側がホイールシリンダ側より高圧な場合にマスタシリンダ側の圧力をホイールシリンダ側へ伝達するとともにホイールシリンダ側の作動液がマスタシリンダ側へ逆流することを抑制する。具体的には、本実施の形態に係るチェック弁60は、開弁圧が実質的にゼロである。チェック弁60は、増圧時にマスタシリンダ14の液圧の増加に応じて開弁し、右前輪用ホイールシリンダ20FR側へ作動液を供給するとともに、ホイールシリンダの液圧の増加に応じて閉弁する。以下に、機械式増圧弁56およびチェック弁60の構成について詳述する。
(機械式増圧弁)
機械式増圧弁56は、ハウジング68を備えている。ハウジング68には、第1流路16aに連通するマスタ圧導入孔70、右フロント液圧通路64に連通する液圧吐出孔72、ポンプ液圧通路29の一方の通路29aに連通する高圧導入孔74、および、大気圧通路27に連通する大気導入孔76が設けられている。
ハウジング68の内部には、段付ピストン78が配設されている。段付ピストン78には、大きな断面積Sを有する大径部82と小さな断面積sを有する小径部84とが形成されている。段付ピストン78の内部には貫通孔86が形成されている。貫通孔86の下流側端部には、ニードルバルブ88が当接可能に配設されている。貫通孔86の内部には、ニードルバルブ88の弁座として機能する弁座92が設けられている。ニードルバルブ88と段付ピストン78との間には、第1スプリング94が配設されている。第1スプリング94は、ニードルバルブ88を弁座92から離座させる方向の付勢力を発生する。
ハウジング68の内部には、ボール弁96、第2スプリング98、および、第3スプリング100が配設されている。また、ハウジング68の内部には、ボール弁96の弁座102が形成されている。第2スプリング98は、ボール弁96を弁座102に向けて付勢する。第3スプリング100は、段付ピストン78をマスタ圧導入孔70側へ向けて付勢する。弁座102の中央部には、ニードルバルブ88の貫通を許容する貫通孔104が設けられている。
ハウジング68の内部には、上述した段付ピストン78およびボール弁96によって、加圧室106、調圧室108、高圧室110およびドレン室112が形成されている。加圧室106は、マスタ圧導入孔70に連通しており、マスタシリンダ14から液圧の供給を受ける。調圧室108は、液圧吐出孔72に連通している。高圧室110は、高圧導入孔74に連通している。また、ドレン室112は、大気導入孔76に連通している。
ハウジング68の内部には、更に、ストッパ68aが形成されている。ストッパ68aは、調圧室108の内壁に、ニードルバルブ88の変位を規制するために設けられている。すなわち、ニードルバルブ88の、図2における右側変位端は、ニードルバルブ88がストッパ68aに当接する位置に規制される。
以上、本実施の形態に係る液圧制御装置200は、収容された作動液を運転者によるブレーキペダル12の操作量に応じて加圧するマスタシリンダ14と、運転者のブレーキ操作から独立した動力を用いてブレーキフルードによる蓄圧が可能なアキュムレータ50と、マスタシリンダ14およびアキュムレータ50の少なくとも一方からのブレーキフルードの供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダ20FRと、マスタシリンダ14とホイールシリンダ20FRとを接続し、マスタシリンダ14からホイールシリンダFRへのブレーキフルードの供給が可能なように構成されているブレーキ油圧制御管16および右フロント液圧通路64と、アキュムレータ50とホイールシリンダ20FRとを接続し、アキュムレータ50からホイールシリンダ20FRへのブレーキフルードの供給が可能なように構成されている高圧通路114と、ブレーキ油圧制御管16の第1流路16aに設けられ、マスタシリンダ14で発生する液圧に対して所定の増圧比の液圧をホイールシリンダ20FRに発生させるために、増圧時にアキュムレータ50からホイールシリンダ20FR側へ作動液を導入可能な機械式増圧弁56と、機械式増圧弁56を迂回するように第1流路16aと並列に設けられた第2流路16bに接続され、マスタシリンダ14側がホイールシリンダ20FR側より高圧な場合にマスタシリンダ14側の圧力をホイールシリンダ20FR側へ伝達するとともにホイールシリンダ20FR側のブレーキフルードがマスタシリンダ14側へ逆流することを抑制する、開弁圧が実質的にゼロのチェック弁60と、機械式増圧弁56およびチェック弁60の下流側に設けられており、機械式増圧弁56またはチェック弁60からホイールシリンダ20FRへのブレーキフルードの供給を制御する右マスタカット弁22FRと、右マスタカット弁22FRの開閉を制御するECU90と、を備える。
(液圧制御装置の動作)
以下、機械式増圧弁56およびチェック弁60を備える液圧制御装置200の動作について説明する。機械式増圧弁56は、マスタシリンダ圧PM/Cが発生していない場合は図2に示す状態に維持される。かかる状況下でブレーキ操作が開始されると、マスタ圧導入孔70から加圧室106へブレーキフルードが流入する。加圧室106に流入したブレーキフルードは、貫通孔86を通って調圧室108に到達する。このため、ブレーキ操作が開始された後、加圧室106の内圧、および、調圧室108の内圧は共にマスタシリンダ圧PM/Cまで上昇する。
加圧室106および調圧室108に、共にマスタシリンダ圧PM/Cが発生すると、段付ピストン78には、F=S・PM/C−s・PM/Cで表され、かつ、調圧室108側へ向かう付勢力が作用する。その結果、ブレーキ操作が開始された後、段付ピストン78は、速やかに図2に示す位置から調圧室108側へ向かって変位し始める。
段付ピストン78の調圧室108側へ向かう変位量が所定量に到達すると、ニードルバルブ88が貫通孔86を閉塞する状態が形成される。かかる状態が形成されると、以後、段付ピストン78に作用していた付勢力Fが、ニードルバルブ88を介してボール弁96に伝達され始める。このため、段付ピストン78の変位が上記の所定量に到達すると、その後、ボール弁96が弁座102から離座する状態が形成される。
ボール弁96が弁座102から離座すると、高圧室110と調圧室108とが導通状態となる。このため、ボール弁96が開弁すると、その後、調圧室108の内圧は、マスタシリンダ圧PM/Cに比して高圧となる。この際、調圧室108に生ずる液圧をPcとすると、段付ピストン78に作用する付勢力の大きさは、F=S・PM/C−s・Pcと表すことができる。段付ピストン78は、上記の付勢力Fが正の値である場合は、ボール弁96を開弁させる方向に変位し続ける。
調圧室108の液圧Pcが充分に大きな値となると、段付ピストン78に作用する付勢力Fは負の値となる。付勢力Fが負の値となると、段付ピストン78は、ボール弁96を閉弁させる方向に変位し始める。そして、ボール弁96が弁座102に着座すると、調圧室108の内圧Pcの上昇が停止される。機械式増圧弁56においては、運転者によってブレーキ操作が実行された後に上記の動作が繰り返し実行されることにより、調圧室108の内圧Pcが、Pc=(S/s)・PM/Cで表される液圧に制御される。調圧室108に発生する液圧Pcは、液圧吐出孔72から右フロント液圧通路64に吐出される。このように、機械式増圧弁56によれば、運転者によってブレーキ操作が実行された場合に、マスタシリンダ圧PM/Cに対して所定の倍力比(増圧比)S/sを有する液圧Pcを、右フロント液圧通路64に供給することができる。
上述のように、本実施の形態に係る機械式増圧弁56は、マスタシリンダ14から液圧の供給を受ける加圧室106と、加圧室106の液圧により図2の左方向に付勢される段付ピストン78と、段付ピストン78を図2の右方向に付勢する液圧を蓄える調圧室108と、段付ピストン78が図2の左方向に所定距離を超えて変位する場合にアキュムレータ50と調圧室108とを連通状態とし、かつ、段付ピストン78が図2の右方向に所定距離を超えて変位する場合にアキュムレータ50と調圧室108とを遮断状態とする連通制御機構と、を有している。また、段付ピストン78は、調圧室108側の小径部84の端面の面積sに対する加圧室106側の大径部82の端面の面積Sの比が増圧比と同じになるように構成されている。このように、段付ピストン78の調圧室108側の小径部84の面積sと加圧室側の大径部82の面積Sとの比が調整されることで、機械式増圧弁56において所望の増圧比が簡便な構成で実現される。
一方、高圧室110に適正にアキュムレータ圧PACCが導かれていない場合は、ボール弁96を弁座102に向けて付勢する力が第2スプリング98の付勢力だけとなる。また、チェック弁31によりアキュムレータ50へブレーキフルードが逆流することなく、マスタシリンダ圧PM/Cがホイールシリンダ20に伝達される。
このため、高圧室110の内圧が適正に昇圧されていない場合は、ブレーキ操作の実行中、調圧室108の内圧が常にマスタシリンダ圧PM/Cと等圧となる。したがって、機械式増圧弁56によれば、高圧室110の内圧が適正に昇圧されていない状況下でブレーキ操作が実行された場合に、右フロント液圧通路64右フロント液圧通路64からマスタシリンダ圧PM/Cと等しい液圧を吐出することができる。なお、機械式増圧弁56の調圧室108に上記のようにマスタシリンダ圧PM/Cが導かれる場合は、そのマスタシリンダ圧PM/Cが、高圧室110および高圧導入孔74を介してポンプ液圧通路29の一方の通路29aにも供給される。
上述のように、本実施の形態に係る液圧制御装置200を備えたブレーキ制御装置10では、ブレーキシステムの異常時などにおいても、アキュムレータ50などに蓄圧されているブレーキフルードを用いてマスタシリンダ14の液圧に対して所定の増圧比の液圧をホイールシリンダに発生させることができる。
ところで、本実施の形態に係る機械式増圧弁56は、上述のように、段付ピストン78の調圧室108側へ向かう変位量が所定量に到達すると、ニードルバルブ88が貫通孔86を閉塞する状態が形成される。かかる状態が形成されてから、付勢力Fにより段付ピストン78が更に変位しニードルバルブ88を介してボール弁96が弁座102から離座する状態が形成されるまでの間、調圧室108にはブレーキフルードが流入しないことになる。そのため、ブレーキ油圧制御管16に機械式増圧弁56だけが接続されている場合、マスタシリンダ圧の上昇がホイールシリンダへ伝達されるまでの間にタイムラグが生じる。
しかしながら、本実施の形態に係る液圧制御装置200は、機械式増圧弁56においてアキュムレータ50とマスタシリンダ14とホイールシリンダ20FRとの間の連通が一時的に遮断するような場合であっても、マスタシリンダ14の液圧を機械式増圧弁56を介さずに第2流路16bを経由して直接ホイールシリンダ20FRへ伝達することができる。その際、第2流路16bには開弁圧が実質的にゼロのチェック弁が設けられているため、マスタシリンダ14とホイールシリンダ20FRとの間に差圧が生じさえすれば、容易にチェック弁60は開弁する。
つまり、マスタシリンダ14における液圧が直接ホイールシリンダ20FRへ伝達されている状態から、マスタシリンダ14の液圧に対して所定の増圧比の液圧がホイールシリンダ20FRで発生するまでの間に、機械式増圧弁56を介したマスタシリンダ14からホイールシリンダ20FRへの液圧の伝達が一時的に遮断されるような場合であっても、第2流路16bを経由してマスタシリンダ14の液圧をホイールシリンダ20FRへ伝達することが可能となる。その結果、マスタシリンダ14における圧力の変化に対してホイールシリンダ20FRの圧力の変化が対応しない、いわゆる不感帯の発生が抑制され、ブレーキフィーリングの向上が図られる。
その後、ブレーキペダルの操作により段付ピストン78が更に変位し、ボール弁96が弁座102から離座すると、高圧室110と調圧室108とが導通状態となり、調圧室108の内圧はマスタシリンダ圧PM/Cに比して高圧となる。そのため、調圧室108とホイールシリンダ20FRとの間の右フロント液圧通路64を経由して、ブレーキフルードが第2流路16bを逆流しようとするが、チェック弁60が差圧により閉弁することで、ホイールシリンダ20FRからマスタシリンダ14への流れが遮断される。
(ブレーキ制御装置の構成および動作)
図1に示すブレーキ制御装置10において、右フロント液圧通路64には、右マスタカット弁22FRが配設され、左フロント液圧通路66には、左マスタカット弁22FLが配設されている。右マスタカット弁22FRは、常態で開弁状態を維持し、ECU90から駆動信号が供給されることにより閉弁状態となる2位置の電磁弁である。右フロント液圧通路64には、右前輪に配設されるホイールシリンダ20FRが連通している。また、右フロント液圧通路64には、その内部に発生する液圧、すなわち、右前輪のホイールシリンダ圧PM/Cに応じた信号を出力するホイールシリンダ圧センサ44FRが連通している。ホイールシリンダ圧センサ44の出力信号pFRはECU90に供給されている。ECU90は、出力信号pFRに基づいて右前輪のホイールシリンダ圧PM/Cを検出する。
左マスタカット弁22FLは、常態で開弁状態を維持し、ECU90から駆動信号が供給されることにより閉弁状態となる2位置の電磁弁である。左フロント液圧通路66には、右前輪に配設される左前輪用ホイールシリンダ20FLが連通している。また、左フロント液圧通路66には、その内部に発生する液圧、すなわち、左前輪のホイールシリンダ圧PM/Cに応じた信号を出力するホイールシリンダ圧センサ44FLが連通している。ホイールシリンダ圧センサ44FLの出力信号pFRはECU90に供給されている。ECU90は、出力信号pFRに基づいて左前輪のホイールシリンダ圧PM/Cを検出する。
ブレーキ制御装置10は、リザーバタンク26に連通する油圧給排管28を備えている。上述した大気圧通路27は、油圧給排管28を介してリザーバタンク26に連通している。油圧給排管28は、ポンプ34の吸入側および減圧弁42の下流側と連通している。ポンプ34の吐出側は、高圧通路114と連通している。
高圧通路114には、上述したポンプ液圧通路29が連通しており、ポンプ液圧通路29の途中にはアキュムレータカット弁116とチェック弁31が配設されている。アキュムレータカット弁116は、高圧通路114側からポンプ液圧通路29側へ向かう流体の流れを適宜制御する開閉弁である。高圧通路114の内圧が適正に上昇しない場合は、機械式増圧弁56の高圧室110の内圧が適正に上昇しない。そこで、ECU90は、このような状況をアキュムレータ圧センサ51等からの信号により検出した場合、アキュムレータカット弁116に制御信号を送信し閉弁させる。その結果、上述のように、ブレーキ操作が実行されることによりポンプ液圧通路29にマスタシリンダ圧PM/Cが導かれる。このようなアキュムレータカット弁116の動作により、かかる状況下で、機械式増圧弁56を介してポンプ液圧通路29に導かれるマスタシリンダ圧PM/Cが、高圧通路114側に開放されるのを防止することができる。
高圧通路114には、アキュムレータ50が連通している。アキュムレータ50は、ポンプ34から吐出される液圧をその内部にアキュムレータ圧PACCとして蓄えることができる。高圧通路114には、アキュムレータ圧PACCに応じた電気信号を出力するアキュムレータ圧センサ51が配設されている。アキュムレータ圧センサ51の出力信号pACCはECU90に供給されている。ECU90は、出力信号pACCに基づいてアキュムレータ圧PACCを検出する。
高圧通路114と油圧給排管28との間には、リリーフバルブ53が配設されている。リリーフバルブ53は、高圧通路114側の液圧が油圧給排管28側の液圧に比して、所定の開弁圧を超えて高圧となった場合に、高圧通路114側から油圧給排管28側へ向かう流体の流れを許容する一方向弁である。高圧通路114には、右前輪用増圧弁40FR、左前輪用増圧弁40FL、右後輪用増圧弁40RRおよび左後輪用増圧弁40RLが連通している。
右前輪用増圧弁40FRは右フロント液圧通路64にも連通している。また、左前輪用増圧弁40FLは左フロント液圧通路66にも連通している。各増圧弁40はECU90から駆動信号が供給されていない場合は閉弁状態に維持される。また、各増圧弁40は、ECU90から駆動信号が供給された場合に、高圧通路114側から右フロント液圧通路64、左フロント液圧通路66、右リア液圧通路118、左リア液圧通路120へ、駆動信号に応じたホイールシリンダ圧が発生するようにブレーキフルードを流入させる。
右フロント液圧通路64、左フロント液圧通路66、右リア液圧通路118および左リア液圧通路120には、それぞれ、右前輪用減圧弁42FR、左前輪用減圧弁42FL、右後輪用減圧弁42RRおよび左後輪用減圧弁42RLが連通している。
各減圧弁42には、リザーバタンク26に連通する油圧給排管28が連通している。右前輪用減圧弁42FRおよび左前輪用減圧弁42FLは、ECU90から駆動信号が供給されていない場合は閉弁状態に維持される。一方、右後輪用減圧弁42RRおよび左後輪用減圧弁42RLは、ECU90から駆動信号が供給されていない場合は開弁状態に維持される。また、各減圧弁42は、ECU90から駆動信号が供給された場合に、右フロント液圧通路64、左フロント液圧通路66、右リア液圧通路118、左リア液圧通路120から、すなわち、ホイールシリンダ20FR,20FL,20RR,20RLから油圧給排管28側へ、駆動信号に応じたホイールシリンダ圧が発生するようにブレーキフルードを流出させる。
次に、本実施の形態のブレーキ制御装置の動作について説明する。本実施の形態のシステムにおいて、システムが備えるすべての制御弁をオフ状態、すなわち、図1に示す状態に維持すると、各輪のホイールシリンダ20FR,20FL,20RR,20RLを、アキュムレータ50から遮断し、かつ、機械式増圧弁56、チェック弁60およびマスタシリンダ14と導通させることができる。この場合、左右前輪のホイールシリンダ20FR,20FLには、機械式増圧弁56,58で増圧された液圧Pcが導かれる。
上述のように、機械式増圧弁56,58は、マスタシリンダ14が発生するマスタシリンダ圧PM/Cをパイロット圧として、機械的な機構により液圧Pcを発生する。したがって、上記の状況下では、すべてのホイールシリンダ20FR,20FL,20RR,20RLのホイールシリンダ圧PM/Cを、何ら電気的な制御を介在させることなく、マスタシリンダ14を液圧源として制御することができる。以下、上述のように、マスタシリンダ14を液圧源として(すなわち、電気的な制御を介在させることなく)ホイールシリンダ圧PM/Cを制御する手法をマスタ加圧と称す。
本実施の形態のシステムにおいて、システムが備えるすべての開閉弁をオン状態とすると、すなわち、右マスタカット弁22FR、左マスタカット弁22FL、アキュムレータカット弁116を閉弁状態とすると、すべてのホイールシリンダ20FR,20FL,20RR,20RLを機械式増圧弁56、チェック弁60およびマスタシリンダ14から遮断し、かつ、すべての増圧弁40の上流側にアキュムレータ圧PACCを導くことができる。
上記の状況下で、各車輪に対応する出力信号pFR,pFL,pRR,pRLが目標のホイールシリンダ圧PW/Cと一致するように増圧弁40および減圧弁42を制御すると、各車輪のホイールシリンダ圧PM/Cを、アキュムレータ50を液圧源として目標のホイールシリンダ圧PM/Cに制御することができる。このように、本実施の形態のシステムによれば、すべての開閉弁をオン状態とし、かつ、増圧弁40および減圧弁42を適当に制御することで、マスタシリンダ14を液圧源として用いることなく、アキュムレータ50を液圧源として、各車輪のホイールシリンダ圧PM/Cを電気的な制御のみを用いて適正に制御することができる。以下、このような制御手法を、ブレーキバイワイヤ加圧(BBW加圧)と称す。
本実施の形態のブレーキ制御装置は、システムが正常に機能している場合は、上述したBBW加圧によって各車輪のホイールシリンダ圧PM/Cを調圧する。そして、システムに、BBW加圧の実行を妨げる故障が発生した場合は、マスタ加圧によりホイールシリンダ圧PM/Cを調圧する。上述のように、本実施の形態のブレーキ制御装置は、アキュムレータ圧PACCが正常に昇圧されている場合には、マスタ加圧の実行中においてもアキュムレータ圧PACCを利用して、左右前輪のホイールシリンダ20FR,20FLにマスタシリンダ圧PM/Cに比して高圧の液圧Pcを導くことができる。このため、本実施の形態のブレーキ制御装置によれば、システムの故障時においてもアキュムレータ圧PACCを有効利用を図ることができる。
また、本実施の形態のブレーキ制御装置は、アキュムレータ圧PACCが正常に昇圧されていない場合には、機械式増圧弁56側から高圧通路114側へ液圧が開放されるのを防止しつつ、マスタシリンダ14で発生されるマスタシリンダ圧PM/Cを、左右前輪のホイールシリンダ20FR,20FLにも導くことができる。このため、本実施の形態のブレーキ制御装置によれば、システムの故障に対して優れたフェールセーフ機能を実現することができる。
なお、上記の実施の形態においては、マスタシリンダ14が「マニュアル液圧源」に、アキュムレータ50が「動力液圧源」に、機械式増圧弁56の段付ピストン78が「移動部材」に、ボール弁96、弁座102およびニードルバルブ88が「連通制御機構」に、それぞれ相当している。また、ECU90は、BBW加圧の実行を妨げる故障を検出した際に、マスタ加圧を実行することによりフェールセーフが実現されている。
ところで、上記の実施の形態においては、移動部材および連通制御機構を、段付ピストン78、ボール弁96、弁座102およびニードルバルブ88等を用いて実現しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、加圧室106の液圧と高圧室110の液圧とのバランスで変位し、高圧導入孔74および大気導入孔76の一方を選択的に調圧室108に導通させるスプールバルブを用いて移動部材および連通制御機構を実現してもよい。
また、上記の実施の形態において、機械式増圧弁56は、ドレン室112が大気導入孔76から大気圧通路27を介してリザーバタンク26に連通させられていたが、大気導入孔76に大気圧通路27を接続せず、単純に大気開放するようにしてもよい。つまり、ドレン室112が常に大気圧に保たれていればよい。
このように、上述のブレーキ制御装置10は、充分な制動能力と良好なブレーキフィーリングを発揮することができる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、ある条件によって、油撃が発生することがわかった。以下、そのメカニズムについて簡単に説明する。
図3は、マスタ加圧時のマスターシリンダ圧とホイールシリンダ圧との関係を示す図である。ブレーキペダル12が操作されるとブレーキ踏力に応じたマスタシリンダ圧PM/Cが発生する。それに伴いチェック弁60を通過したブレーキフルードによってホイールシリンダ圧W/Cも上昇する。その際、機械式増圧弁56では、マスタ圧導入孔70から加圧室106を経由して調圧室108へブレーキフルードが到達し、付勢力により段付ピストン78が調圧室108側へ向かって変位する。この間、ホイールシリンダ圧W/Cはマスタシリンダ圧PM/Cに比例するように上昇する。
その後、段付ピストン78の調圧室108側へ向かう変位量が所定量に達すると、ニードルバルブ88が貫通孔86を閉塞するため、調圧室108へのブレーキフルードの流入が遮断される。このときのマスタシリンダ圧PM/Cは、図3に示すPmc1となる。段付ピストン78が更に変位してボール弁96を開弁するまでは、アキュムレータ50と調圧室とは連通しないため、機械式増圧弁56による増圧機能は発揮されない。
しかしながら、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、機械式増圧弁56と並列にチェック弁60を備えている。そのため、ブレーキフルードがチェック弁60を経由して右前輪用ホイールシリンダ20FRに流入することが可能となり、マスタシリンダ圧PM/Cの上昇に伴いホイールシリンダ圧W/Cが更に上昇する。
そして、段付ピストン78が更に変位し、ボール弁96が弁座102から離座すると、高圧室110と調圧室108とが導通状態となる。このときのマスタシリンダ圧PM/Cは、図3に示すPmc2となる。ボール弁96が開弁すると、その後、調圧室108の内圧は、マスタシリンダ圧PM/Cに比して高圧となる。そのため、チェック弁60は閉弁し、機械式増圧弁56による増圧動作および減圧動作(図3に示すヒステリシスHを参照)が行われる。
上述のように、図3に示す増圧動作では、マスタシリンダ圧PM/C=Pmc2のときに、マスタシリンダ14を主とする増圧動作(静圧動作)から機械式増圧弁56を主とする増圧動作に切り替わる。その際、チェック弁60のホイールシリンダ20FR側の圧力がマスタシリンダ14側よりも大きくなるため、チェック弁60が閉弁することになる。しかしながら、チェック弁60が閉弁し始める初期には、チェック弁60の両側の差圧がほとんど生じていない。そのため、チェック弁60の閉弁動作が不安定になり、このことがチェック弁60自体の振動やチェック弁60近傍での液圧の変動を生じさせることがある。このような現象は、マニュアル液圧源側に油撃を伝達させる一因ともなり、運転者にブレーキ操作に対する違和感を生じさせることにもなる。
そこで、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、マスタ加圧時におけるブレーキ操作に対する違和感を抑制するために、より直接的にはチェック弁60の安定した閉弁を可能とするための制御が採用されている。
図4は、本実施の形態に係る液圧制御装置のマスタ加圧時のマスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧との関係を示す図である。図5は、本実施の形態に係るイニシャルチェックのフローチャートを示す図である。
以下の制御動作は、マスタ加圧に伴って機械式増圧弁が正常に機能するか否かを、車両のイグニッションスイッチがONにされた直後に判定する際に実行される。なお、このような制御動作の実行は、前述のタイミングに限られるものではなく、車両の制動に影響を与えないタイミングであれば適宜可能である。また、以下の説明では、右前輪の系統について説明し、左前輪の系統については右前輪の系統と同様なため説明を省略する。
ECU90は、イグニッションスイッチがONにされるとシステムを起動し、本実施の形態に係る制御を開始する。はじめに、ストロークセンサ46等の検出結果に基づいて、ブレーキペダル12が踏み込まれているか否かが判定される(S10)。ブレーキペダル12の踏み込みが検出されない場合(S10のNo)、今回の制御が開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する(S11)。所定時間が経過していると判定された場合(S11のYes)、処理が終了する。所定時間が経過していないと判定された場合(S11のNo)、再度ステップS10に戻る。
ブレーキペダル12の踏み込みが検出がされた場合(S10のYes)、右マスタカット弁22FRが閉弁され(S12)、機械式増圧弁56と右前輪用ホイールシリンダ20FRとの間の液圧の伝達が遮断される。この状態で、ブレーキペダル12の踏み込みが続けられると、マスタシリンダ14によってマスタシリンダ圧PM/Cは上昇するが、右マスタカット弁22FRが閉弁されているため、ホイールシリンダ圧W/Cは変化しない。
その後、マスタシリンダ圧PM/CがPmc2まで上昇すると、チェック弁60が閉弁することになる。その際、右マスタカット弁22FRは閉じているため、機械式増圧弁56の下流側の経路が実質的に剛体とみなせる状態となっており、アキュムレータ50の液圧を用いて増圧された機械式増圧弁56の下流側の液圧はよりスムーズに上昇し、それまで開弁していたチェック弁60は安定して閉弁される。そのため、チェック弁60の下流側の圧力はスムーズに上昇し、マスタシリンダ圧PM/Cより大きくなった時点で、チェック弁60は安定して閉弁する。そして、本実施の形態では、チェック弁60が一度閉弁した状態が安定して維持されるように、チェック弁60の両側の差圧がある程度大きくなってから右マスタカット弁22FRを開弁する、というような制御が行われる。
具体的には、ECU90は、右マスタ圧センサ48FRの検出結果に基づいてマスタシリンダ圧PM/CがPmc0より大きいか否かを判定する(S14)。ここで、Pmc0は、Pmc2(図4参照)より大きな値として設定されている。Pmc0は、システム全体の構成を考慮して理論的に算出された値として設定されていてもよいし、実際に実験的に求めた値として設定されていてもよい。
マスタシリンダ圧PM/CがPmc0以下の場合(S14のNo)、再度ステップS10に戻る。マスタシリンダ圧PM/CがPmc0より大きい場合(S14のYes)、ECU90は、チェック弁60の両側に充分な差圧が生じたものとして、右マスタカット弁22FRを開弁する(S16)。これにより、チェック弁60の閉じ方が不安定になることも、振動が発生してマスタシリンダ14側に油撃が伝達されることもなくなる。
その後、マスタシリンダ圧PM/Cおよびホイールシリンダ圧W/Cが各センサに基づいて検出され(S18)、その検出結果に基づいてECU90はブレーキ制御装置10の動作に異常がないか判別する(S20)。異常が検出された場合(S20のYes)、ウォーニングランプの点灯や警告音などの警告動作が行われ(S22)、処理が終了する。異常が検出されない場合(S20のNo)、その他のイニシャルチェックや動作確認などの正常動作が行われ(S24)、処理が終了する。
上述の動作をまとめると、ECU90は、閉弁している右マスタカット弁22FRをチェック弁60が閉弁してすぐに開弁するのではなく、マスタシリンダ14で発生している液圧がある程度上昇してから右マスタカット弁22FRを開弁する。つまり、マスタシリンダ14の液圧が、チェック弁60が閉弁する際のマスタシリンダ14の液圧Pmc2よりも高く設定された目標液圧Pmc0に達した場合に右マスタカット弁22FRは開弁される。これにより、右マスタカット弁22FRが開弁された際には、チェック弁60の上流側と下流側にはある程度の差圧ΔP(図4参照)が生じていることになる。そのため、機械式増圧弁56によって増圧されていたブレーキフルードがホイールシリンダ20FR側へ流出することによる圧力の変動によって、チェック弁60の閉じ方が不安定になることも抑制される。
図6は、他の実施の形態に係る液圧制御装置の概略を示す系統図である。液圧制御装置210は、アキュムレータ50とアキュムレータカット弁116との間にオリフィス202が設けられている点がブレーキ制御装置10と異なる。これにより、アキュムレータ50から機械式増圧弁56,58への急激な液圧の伝達が抑制され、ひいては、機械式増圧弁56,58のホイールシリンダ側に発生する液圧の急激な変動が抑制される。
オリフィスのサイズや形状は、油撃の発生を抑えつつ、応答性や制動力など要求される仕様やコスト等によって適宜設計されることになる。図7は、オリフィスに求められる要求特性を模式的に示した図である。
図7に示す直線L1は、圧力の急激な上昇に伴う油撃の発生を防止できる最大の勾配を示したものである。また、折れ線L2は、制動時の応答要求として低圧時と高圧時とで増圧勾配が変化している応答要求線を示したものである。図7に示すように、オリフィスの特性としては、ブレーキペダルを踏み込んだ際の液圧の時間変化を示す曲線Cが、直線L1と折れ線L2との間の領域に存在すればよい。
一般的に圧力が上昇するとホイールシリンダの液圧と各液圧源との差圧が小さくなるため、圧力の時間変化は小さくなる傾向がある。そのため、応答要求線の傾きを折れ線L2のように高圧側で小さくすることで、液圧の時間変化が曲線Cのようであっても、油撃と応答性の観点からの要求を満たすことができる。そのため、オリフィス径を小さくすることが可能となり、油撃の防止が容易となる。
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。