−磁気ディスク装置−
本発明のヘッドスライダを搭載した磁気ディスク装置(記憶装置)について説明する。図1は、磁気ディスク装置の内部を示す平面図であり、図2は、磁気ディスク装置を制御する回路の概略構成を示す図である。
図1に示した磁気ディスク装置101はハードディスクドライブ(HDD)であり、外装としてハウジング102を有する。ハウジング102の内部には、回転軸103に装着されて回転する磁気ディスク104と、磁気ディスク104に対して情報記録と情報再生を行う磁気ヘッドが搭載されたスライダ105と、スライダ105を保持するサスペンション106と、サスペンション106が固定されてアーム軸107を中心に磁気ディスク4の表面に沿って移動するキャリッジアーム108と、キャリッジアーム108を駆動する電磁アクチュエータ109とが設けられている。なお、ハウジング102にはカバー(図示せず)が取り付けられて、ハウジング102とカバーで形成された内部空間に上述の構成部品が収容される。
磁気ディスク装置101は更に、図2に示すように、磁気ディスク装置101の動作を制御する制御部110を有する。制御部110は、例えばハウジング102内部に設けられたコントロールボード(不図示)に搭載される。制御部110は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)112、CPU112が処理するデータ等を一時的に記憶させておくRAM(Random Access Memory)114、制御用のプログラム等を格納するROM(Read Only Memory)115、外部に対して信号の入出力を行う入出力回路119、これらの回路間で信号を伝送するバス117等から構成される。
また、図2に示すように、スライダ105はスライダ基板105aに形成されたヘッド部105bを有する。ヘッド部105bは、磁気ディスク104に対し記録用の磁界を発生する記録用の磁極や、磁気ディスク104に記録された磁気情報を読み取るためのセンサが設けられたヘッド素子105dを備える。ヘッド素子105dは、例えば、制御部110内の入出力回路119と配線111a、111bに接続され、磁気ディスク104への情報の記録(ライト動作)及び磁気ディスク4に記憶された情報の再生(リード動作)を行う。このリード動作またはライト動作を行なう際に、電磁アクチュエータ9によってキャリッジアーム8が駆動され、ヘッド素子105dを磁気ディスク104上の所望のトラックに移動する。
リード動作及びライト動作は、具体的に次のように行なわれる。ライト動作時には、制御部110によって、電気信号(電気的な記録信号)がヘッド素子105dに入力される。ヘッド素子105dは、当該記録信号に応じた磁界を磁気ディスク104の各微小領域に印加し、記録信号に担持された情報を(各微小領域の磁化方向に置き換えて)記録する。リード動作時には、ヘッド素子105dが、各微小領域に記録された情報を、各微小領域の磁化に応じた電気信号(電気的な再生信号)として取り出す。
また、CPU112は、サスペンション106の曲げ部に設けられた圧電デバイスによって、当該曲げ部の曲げ角度を微小変位させ、スライダ105に設けられた磁気ヘッドの浮上量を高精度に制御する。
−磁気ヘッド支持体−
図3は、磁気ヘッド支持体(head gimbal assembly:HGA)を示した図である。図3(a)が磁気ヘッド支持体の斜視図であり、図3(b)が磁気ヘッド支持体を図3に示すX方向を向いて見た図である。なお、図3に示されるように、浮上面に垂直で磁気ディスクから遠ざかる方向をZ方向、X軸及びZ軸に垂直な方向をY方向とする。以後の図面におけるX軸、Y軸、Z軸は図3の方向に従うものとする。
図3に示すように、磁気ヘッド支持体120とは、一般に、サスペンション106にベースプレート122及びヘッドスライダ105等を取り付けた構造体のことをいうが、ベースプレート122及びヘッドスライダ105を取り付ける前の状態、すなわち、サスペンション106のみを磁気ヘッド支持体という場合もある。更には、サスペンション106にベースプレート122又はヘッドスライダ105のいずれか一方を取り付けた構造体のことを、磁気ヘッド支持体120という場合もある。ここで、サスペンション106は、例えば厚さ20μmのステンレス鋼からなる板状部材である。サスペンション106のキャリッジアーム108側の一端にはベースプレート122が接合され、他方の端(先端部106p)には、ヘッドスライダ105が取り付けられる。より具体的には、例えば、ヘッドスライダ105は、サスペンション106の先端部106pに設けられたジンバル(gimbal)106gに固定される。なお、ヘッドスライダ105は磁気ディスク表面104cと対向する位置に配置される。また、サスペンション106上に、浮上量の変動を検知するため圧電材料からなる加速度センサ123が設けられている。
また、図3(b)に示すように、磁気ディスクが矢印Cの方向に回転することによって、矢印Airの方向に空気流が生じ、ヘッドスライダの浮上面(磁気ディスクと対向する面)105fの下側へ空気が流入する。この空気流によるヘッドスライダの浮上面への揚力と、サスペンションのバネによりヘッドスライダをディスク方向に押し付ける力とが均衡する。ヘッド部(図示せず)において磁気ディスク104cに対し記録用の磁界を発生する記録用の磁極や、磁気ディスク104cに記録された磁気情報を読み取るためのセンサが設けられたヘッド素子105d(図示せず)の浮上面105f側の面と磁気ディスク104cとの距離(スペーシング方向Sの距離:浮上量)は一定に保たれる。
−第1実施形態のヘッドスライダ−
図4は、第1実施形態のヘッドスライダの概略構造を示す斜視図である。図4に示すように、アクチュエータ105cはスライダ基板105aの端部に配置される。また、アクチュエータ105cを挟んでスライダ基板105aの反対側には、ヘッド素子105dが設けられたヘッド部105bが配置されている。すなわち、ヘッド部105bはアクチュエータ105cを挟んでスライダ基板105aの反対側に位置している。
スライダ基板105aは、例えばアルチック(Al2O3−TiC)材などのセラミックから構成される。アルチック材はアルミナ(Al2O3)と炭化チタン(TiC)の焼成物である。
ヘッド部105bは、記憶装置内において、記憶媒体に情報を記録する又は記録媒体の情報を再生するために設けられる。ヘッド部105bは、ヘッド素子105d、及びヘッド素子105dの周りに設けられる絶縁部37を備える。ヘッド部105bの厚さは、例えば30μm程度である。
ヘッド素子105dは、記憶装置内部において、記憶媒体に情報を記録する又は再生するために設けられる素子である。例えば、磁気ディスク装置に用いられる素子としては、記録媒体に情報を書き込む働きを有する記録素子、及び記録媒体に記録された磁気情報を電気信号として取り出す働きを有する、再生素子が挙げられる。記録素子は、例えば、ライトコイル、主磁極層、及び補助磁極層を含んでなる。ライトコイルは磁束を発生させる機能を有する。主磁極層は、ライトコイルにおいて発生した磁束を収容し、その磁束を磁気ディスクに向けて放出する機能を有する。補助磁極層は主磁極層から放出された磁束を磁気ディスクを経由して環流させる機能を有する。再生素子として、例えばMR素子(磁気抵抗効果素子)などが挙げられる。ヘッド素子105dは記録素子及び再生素子のうち少なくとも一方を有していればよく、その両方を有していてもよい。
ヘッド部105bには、例えば、図4に示すように、アクチュエータ105cに対して電圧を印加するための外部端子44及び47が設けられる。
絶縁部37は、アクチュエータ105cとヘッド部105bとの間、及び複数の素子間を電気的且つ磁気的に絶縁するために設けられる。絶縁部37は、絶縁材料からなる、例えば厚さ1〜50μm程度の膜である。絶縁部37に使用可能な材料としては、例えばアルミナ(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物など、非磁性且つ非導電性の材料が挙げられる。
ヘッド部105bの層構成は特に限定されるものではなく、磁気記憶装置に用いられる磁気ヘッドを用途に合わせて設けることができる。ヘッド部105bの層構成及び製造方法の詳細については本明細書では省略する。
図5は、図4のヘッドスライダにおいて、断面Aにおける模式的断面図である。アクチュエータ105cとスライダ基板105aとの間には絶縁層6zが設けられている。絶縁層6zとスライダ基板105aとの間には、更に電極33が設けられている。スライダ基板105aとアクチュエータ105cとの間には、更にスライダ基板105aとの間を電気的に絶縁するための絶縁層34が設けられている。
アクチュエータ105cは、記憶装置内部において作動させることにより、記憶媒体104とヘッド素子105dの浮上面との間の間隔を制御する働きを有する。アクチュエータ105cは、圧電体6a、6b、6c、6d(以下、圧電体6と総称する場合がある。)、第1電極9a、9b、9c、9d(以下、第1電極9と総称する場合がある。)、第2電極10a、10b、10c、10d(以下、第2電極10と総称する場合がある。)、樹脂11a、11b、11c、11d、11e(以下、樹脂11と総称する場合がある。)を含んでなる。圧電体6は、弾力性を有する第1電極9と第2電極10とからなる一対の電極に挟まれている。この一対の電極9、10と圧電体6からなる部分18a、18b、18c、18dは、本発明のヘッドスライダにおける作動部(圧電素子)に対応する。以下、この部分18a、18b、18c、18dを作動部18と総称する場合がある。
なお、記憶装置の内部において、磁気ディスクに対向する面、すなわち浮上面105fは、通常、図5における浮上面105ffの位置まで研磨される。
作動部18は、圧電体6の分極方向と垂直に電圧を印加することによりd15モード(圧電剪断効果)の変位に基づき変形する作動部18a、18cと、圧電体6の分極方向に電圧を印加することにより圧電体6のd31モード(圧電横効果)の変位を応用した変形を生じる作動部18b、18dとから構成される。図6は、作動部(圧電素子)の変形を説明するための模式的断面図である。
図6(a)、(b)はd15モードの変位を生じる圧電素子13aの模式的断面図である。圧電体6は電極19、20に挟まれている。電極19、20は、圧電体6に対して、圧電体6の分極の向きPAと交差する方向に電界EAを印加することができる。電極19、20は、圧電体6に対して、圧電体6の分極PAの方向に垂直な方向に電界EAを印加することが、圧電アクチュエータ10の変形量を大きくする点から好ましい。2つの電極19、20が電位差を与えられることにより、圧電体6はd15モードの変位(剪断変位)を生じる。分極の方向、及び電界印加方向の両方を逆にしても、剪断変位の方向は同じである。分極の方向、もしくは電界印加方向の一方を逆にすると、剪断変位の方向も逆になる。
図6(c)、(d)はd31モードの変位を生じる圧電素子13bの模式的断面図である。圧電体6は電極29、30に挟まれている。電極29は圧電体6を支えることにより圧電体6の変位方向を変える働きを有する。電極29は、電極30よりも外力に対して変形しにくい。この変形しにくさは、電極のヤング率(伸び弾性率)と、厚さとの積で定量的に表すことができる。電極29と電極30は製造が容易な点から通常同じ材料で構成される。このとき、電極29は電極30よりも厚い。電極29、30は、圧電体6に対して、圧電体6の分極の向きPBに沿った電界EBを印加することができる。電界EBによって、圧電体6に電界EBと垂直な方向に縮む力が働くが、電極29および電極30が圧電体6の変形を拘束しようとする。電極29と電極30とでは電極29の方が剛性が高いため、圧電体6の電極29に近い側は変形量が小さい。その結果、図6(d)のごとく電極29を上向きとする凸形状に変形する。分極の方向及び電界印加方向の両方を逆にしても、圧電体6は同じ方向に縮む力が働くため、変形は同様である。
圧電体6は、圧電材料からなる。この圧電体6に使用可能な圧電材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:PZT)、或いは、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3:PLZT)、Nb添加PZT、さらにはPNN−PZT{Pb(Ni,Nb)O3−PbTiO3−PbZrO3}、PMN−PZT{Pb(Mg,Nb)O3−PbTiO3−PbZrO3}等のペロブスカイト酸化物が挙げられる。また、これら材料の他に、ニオブ酸カリウム(KNbO3)や窒化アルミニウム(AlN)なども使用可能である。
電極19、20、29,30(第1電極9及び第2電極10)に使用可能な材料として、導電性の材料が挙げられる。例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、銅(Cu)等の金属が挙げられ、更に、窒化チタン(TiN)等の窒化物、炭化タングステン(WC)等の炭化物、或いは、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)等の酸化物も使用可能である。
再び図5を用いて、第1実施形態のヘッドスライダを説明する。第1実施形態のヘッドスライダは、作動部18の一方の端に基板105aが配置され、もう一方の端にはヘッド部105bが配置されている。アクチュエータ105cの浮上面側からd15モードの変位を生じる作動部とd31モードの変位を生じる作動部とが交互に配置されている。d15モードの変位を生じる作動部18a、18cに含まれる圧電体6a、6cの主面(major surface)は、d31モードの変位を生じる作動部18b、18dに含まれる圧電体6b、6dの主面、および浮上面105fと略平行である。換言すれば、d15モードの変位を生じる圧電体の主面、及びd31モードの変位を生じる圧電体の主面が、浮上面のほうを向くように配置される。
各作動部18の主面に隣接するように、第1電極9及び第2電極10が設けられている。d31モードの作動部18b、18dに含まれる電極のうち、浮上面から遠い第2電極10b、10dは第1電極9b、9dよりもそれぞれ厚い。一方、d15モードの作動部18a、18bに含まれる第1電極9a、9b、及び第2電極10a、10bの厚さの関係は特に限定されるものではなく、第1電極9a、9bの厚さと第2電極10a、10bの厚さとは同じであっても異なっていてもよい。
d15モードの変位を生じる作動部18a、18cを構成する圧電体6a、6cは、予め、セラミックス基板105aからヘッド部105bへ向かう方向に分極させておく。d31モードの変位を生じる作動部18b、18dに含まれる圧電体6b、6dは、通常、圧電体6a、6cを分極させる際に同様の方向に分極する。しかし、第1電極9bから第2電極10bに向かって抗電解以上の電界が印加されることにより、第1電極9bから第2電極10bに向かう(セラミックス基板105aからヘッド部105bへ向かう方向と交差する)方向に分極させることができる。
d15モードの変位を生じる圧電体6a、6cと、d31モードの変位を生じる圧電体6b、6dとは、ヘッド部105bに、スライダ基板105aを基準として、スライダ基板105aのアクチュエータが設けられた面内の略同一方向に向かって変位Sを生じさせる。
隣り合う作動部18の間には樹脂11が配置されている。(例えば、作動部18aと18bとの間には樹脂11bが配置されている。)樹脂11は、電気的な絶縁性を有し、圧電材料以外の材料からなり、且つ第1電極9、第2電極10及び圧電体6よりも変形しやすい(柔軟性が高い)ものが好ましい。樹脂11に使用可能な材料は、例えば、ウレタン、ポリイミド、エポキシ、アラミド系樹脂等が挙げられ、耐熱性の点から、ポリイミド系樹脂が好ましく用いられる。また、圧電体よりヤング率が低い絶縁材料であれば、樹脂以外の材料も使用できる。例えば、発泡ガラスなどの微小の気泡を多く含むセラミックスでも良い。また、樹脂11の部分が空隙であってもよい。
第1電極9及び第2電極10に電位を印加するため、第1電極9及び第2電極10とそれぞれ電気的に接続したビアなどの配線(図示せず)が設けられる。この配線が複雑にならない点から、第2電極10aと第1電極9b、第2電極10bと第1電極9c、及び第2電極10cと第1電極9dがそれぞれ接続部21a、21b、21cで電気的に接続されていることが好ましい。また、d31モードの変位を生じる圧電体6b、6dへ分極方向が変化させるのに必要な電界である抗電解以上の電界を印加しd15モードの変位を生じる圧電体6a、6cへ抗電解以上の電界を印加しないようにするため、d31モードの変位を生じる圧電体6b、6dの浮上面に垂直な方向の長さはd15モードの変位を生じる圧電体6a、6cのそれよりも小さいことが好ましく、圧電体6a、6cのそれの1/2以下であることがより好ましい。
図7は、図4、図5におけるヘッドスライダのアクチュエータ105cについて、第1電極9、第2電極10、接続部21a〜21c、電極線15、16、及び電極パッド14、17の配置のみを示した斜視図である。
電極パッド14は、図4における外部端子44(図示せず)と電気的に接続されている。電極線15は、電極パッド14と電気的に接続している。電極線15は、複数の箇所で分岐し、第1電極9a、接続部21b、及び第2電極10dと電気的に接続されている。制御部110からの電位は、サスペンション上に形成された配線、外部端子44、電極パッド14、電極線15経由して、第1電極9a、第2電極10b、第1電極9c、及び第2電極10dに供給される。
電極パッド17は、図4における外部端子44(図示せず)と電気的に接続されている。電極線16は、電極パッド17と電気的に接続している。電極線16は、複数の箇所で分岐し、接続部21a、接続部21cと電気的に接続されている。制御部110からの電位は、サスペンション上に形成された配線、外部端子44、電極パッド14、電極線15経由して、第2電極10a、第1電極9b、第2電極10c、及び第1電極9dに供給される。
電極パッド14にグランド側の電位が供給され、電極パッド17にバイアス側の電位が供給されると、図5に示される方向の電界Eが各圧電体18a〜18dに印加される。d15モードの変位を生じる作動部の主な変位方向及びd31モードの変位を生じる作動部の主な変位方向は、図3及び図5に示されるスペーシング方向Sである。
再び、図5を用いて、第1実施形態のヘッドスライダについて説明する。基板105aは、上述のとおり、硬いアルチックからなる。また、その厚さ(Y方向の長さ)は1mm程度である。一方、ヘッド部105bは種々の金属酸化物及び金属からなるが、アルチックよりも軟らかい材料を主に含む。また、その厚さ(Y方向の長さ)は通常数十μm程度と、基板105aに比べて非常に薄い。よって、図6に示すように、作動部18a〜18dがそれぞれ変形すると、その基板105a側は基板105aに固定されるためほとんど形状が変化しないのに対し、そのヘッド部105b側は浮上面105fに垂直な方向に大きく変位する。記憶装置内部において、ヘッド部105bは記録再生素子と磁気ディスク媒体間方向(スペーシング方向:図3における矢印S方向)に大きく変位する。ゆえに、ヘッド部105bのヘッド素子105dと記憶媒体104との間隔(浮上量)は、アクチュエータ105cの浮上面105f側で且つヘッド部105b側の部分Bにおける矢印S方向の変位量が制御されることによって制御されうる。
比較実施形態として、d15モードの変位を生じる作動部のみで構成されるアクチュエータが挙げられる。このアクチュエータは、圧電体に印加される単位電界あたりの変位量が大きいため、スライダ基板105aからヘッド部105bへ向かう方向の長さ(Y方向の長さ)を例えば4〜6μm程度としても十分なS方向の変位量を得られる。このアクチュエータを実装するには、圧電効果の性質上、隣接する圧電体の分極方向を交互に反転させるか、隣接する圧電体の分極方向を一方向にそろえ、各圧電体を挟む電極をパターニングによって独立させなければならない。前者は、ヘッドスライダの製造途中で生じさせた分極成分(特に図5において分極PAとは反対方向の分極成分)が徐々に低下するため、S方向の変位量は徐々に低下する。後者は、前者と同様にヘッドスライダの製造途中で生じさせた分極成分が徐々に低下する場合がある。また、後者のアクチュエータは、作動部を駆動させるため電極9と電極10とを電気的に絶縁する必要がある。電極9と電極10の絶縁性を確保する点から、製造時に接続部21aを除去するためのパターニング工程を必要とする。このパターニング工程は、圧電体の間隔(ピッチ)を狭いと実現が難しい。
また、別の比較実施形態として、d31モードの変位を生じる作動部のみで構成されるアクチュエータが挙げられる。このアクチュエータは、作動部の分極の方向と変位を生じさせるのに必要な電界の方向が同じ方向であるため、分極量の低下の恐れがなく、長期に渡るヘッドスライダの使用に適している。しかし、圧電体に印加される単位電界あたりの変位量が小さいため、例えば10〜30V程度の印加電圧でS方向に十分変位させるためには、スライダ基板105aからヘッド部105bへ向かう方向の長さ(Y方向の長さ)を例えば20〜30μm程度に大きくする必要がある。d31モードの変位を生じる圧電体の幅(浮上面に垂直な方向の長さ:Z方向の長さ)は、例えば0.5〜2μm程度である。この圧電体の幅に対してスライダ基板105aからヘッド部105bへ向かう方向の長さが大きいため、ヘッドスライダの製造プロセスにおいて、圧電体の形状をエッチングプロセスにより形成するとき、形状精度の高い圧電体を形成することが難しい。
本実施形態のヘッドスライダは、d15モードの変位を生じる作動部とd31モードの変位を生じる作動部とが図5に示されるように交互に配置されるため、製造時において、電極9と電極10の絶縁性を確保するためのパターニング工程が不要である。また、そのパターニング工程が不要であるため、圧電体の間隔(ピッチ)を狭めることができる。よって、得られるヘッドスライダは、小型で駆動力が高い。このようなヘッドスライダは長期の使用に適している。
また、本実施形態のヘッドスライダは、アクチュエータにd31モードの変位を生じる作動部が50%含まれるにもかかわらず、圧電体のスライダ基板からヘッド部へ向かう方向の長さがd15モードの変位を生じる作動部のみで構成されるアクチュエータと同程度であっても、スペーシング方向の変位量はd15モードの作動部のみから構成されるアクチュエータのそれと遜色がない。よって、ヘッドスライダの製造プロセスにおいて、圧電体の形状をエッチングプロセスにより形成するとき、形状精度の高い圧電体を形成することができる。
図8は、図5と同様のヘッドスライダの断面図である。例えば、図8に示すようなヘッド部105b、アクチュエータ105c及びアルチック基板105aからなるヘッドスライダについて、電極間に10Vの電界を印加したときの点B1におけるスペーシング方向(Z方向)の変位量をシミュレーションにより求めた。なお、ヘッドスライダの浮上面105fは、浮上面105ffの位置まで研磨されている。また、分極の方向及び電界を印加する方向は図5のヘッドスライダと同様であるが、図示されていない。
(第1シミュレーション)
d15モードの作動部25本と、d31モードの作動部24本を交互に配列した。アクチュエータ105cの高さ(図8におけるH1)は4μmとした。d15モードの作動部において、圧電体6aは幅(図8におけるW6a)2μm、高さ(図8におけるH1)4μm、長さ(図8におけるX軸方向の長さ)500μmの大きさを有する。d31モードの作動部において、圧電体6bは幅(図8におけるW6b)1μm、高さ(図8におけるH1)4μm、長さ(図8における紙面奥行き方向の長さ)500μmの大きさを有する。d31モードの作動部に設けられる第2電極10bは、幅(図8におけるW10b)1μm、高さ(図8におけるH1)4μm、長さ(図8における紙面奥行き方向の長さ)500μmの大きさを有する。d15モードの作動部に設けられる第1電極9a、第2電極10a、及びd31モードの作動部に設けられる第1電極9bは、幅(図8におけるW9a、W10a、W9b)150nm、高さ(図8におけるH1)4μm、長さ(図8における紙面奥行き方向の長さ)500μmの大きさを有する。
作動部18a以外のd15モードの変位を生じる他の作動部は、作動部18aと同じ大きさを有する。作動部18b以外のd31モードの変位を生じる他の作動部は、作動部18bと同じ大きさを有する。樹脂11は、浮上面に露出する樹脂を除き、幅(図8におけるW11b)2μm、高さ(図8におけるH1)4μm、長さ(図8における紙面奥行き方向の長さ)500μmの大きさを有する。絶縁層35とヘッド部105bを合わせた高さ(図8におけるH2)は30μmだった。
電極間に10Vの電界を印加したときの点Bにおけるスペーシング方向の変位量は3.6nmだった。
(第2シミュレーション)
樹脂11の設けられた部分を空隙としたことを除き、第1シミュレーションのヘッドスライダと同様のヘッドスライダについてシミュレーションをおこなった。電極間に10Vの電界を印加したときの点Bにおけるスペーシング方向の変位量は3.8nmだった。
(比較シミュレーション)
d15モードの作動部49本に置き換えたことを除き、第1シミュレーションのヘッドスライダと同様のヘッドスライダについてシミュレーションを行った。電極間に10Vの電界を印加したときの点Bにおけるスペーシング方向の変位量は5.4nmだった。本構造では、分極方向を一方向にそろえ、圧電体の各駆動電極をパターニングによって独立させなければならず、シミュレーションの設計値である4μmピッチの圧電体を製造することは極めて困難である。
本実施形態のヘッドスライダは、スライダ基板からヘッド部へ向かう方向の長さが小さいため、アクチュエータにより動かされる部分、すなわちヘッド部及びアクチュエータの部分の形状が小さく、当該部分の共振周波数が高い。したがって、作動部の駆動周波数を高く設定できる。アクチュエータにより動かされる部分の共振周波数が作動部を駆動させる駆動周波数に近い場合、そのアクチュエータにより動かされる部分の共振によって、作動部の正常な駆動が阻害される場合がある。そこで、そのような影響を受けずに制御を行なうことができるようにするため、アクチュエータにより動かされる部分の共振周波数よりも低い周波数で作動部を駆動する。よって、作動部の駆動周波数を高く設定することができると、磁気ヘッドの浮上量の制御を高速に行なうことが可能となる。
なお、本実施形態において、作動部18aと作動部18bとの間、作動部18bと作動部18cとの間、作動部18cと作動部18dとの間に樹脂が設けられているが、この樹脂の部分を第1電極及び第2電極と同様、導電性の材料で形成してもよい。このとき、第2電極10aと第1電極9bとが一体となり、第2電極10bと第1電極9cとが一体となり、第2電極10cと第1電極9dとが一体となる。このような態様のヘッドスライダは、作動部の間に樹脂を設ける上記実施形態よりもアクチュエータ105cの変形量は小さくなるものの、上記実施形態と同様、長期の使用において圧電素子の変形量の低下が少なく、その設計及び製造が容易である。
本実施形態のヘッドスライダように、アクチュエータはd15モードとd31モードの変位を生じる作動部が浮上面側から順に交互に配置されることが、動作の安定性、アクチュエータの耐久性の点から好ましいが、必ずしも交互に配置される必要はない。また、アクチュエータは、d15モードの変位を生じる作動部とd31モードの変位を生じる作動部とを少なくとも一つずつ備えていればよい。また、本実施形態のヘッドスライダのように、d15モードの作動部の占める割合は50%に限定されるものではない。長期の使用に耐え且つ設計及び製造が容易である点からd15モードの作動部の占める割合は40〜60%であることが好ましい。
以下、再び図5を用いて、第1実施形態のヘッドスライダを説明する。
アクチュエータ105cとスライダ基板105aとの間には絶縁層6zが設けられている。絶縁層6zは、アルチックなど導電性を有する材料からなるスライダ基板105aと第1電極9または第2電極10との電気的な短絡を防止する働きを有する。絶縁層6zに使用可能材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば後述の圧電体6に使用される圧電材料の他、アルミナ(Al2O3)や酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。中でも、後述するヘッドスライダの製造方法に示すように、製造工程を増やすことなく絶縁層を設けることができる点から、圧電体6に使用される圧電材料を、圧電体6a〜6dと一体化させて設けることが好ましい。
絶縁層6zとスライダ基板105aとの間には、更に電極33が設けられていてもよい。電極33は、後述する作動部がd15モードの変位を生じるのに必要な、スライダ基板105aからヘッド部105に向かう方向の分極を、圧電体に生じさせる電界を印加するために設けられる。なお、本実施形態のヘッドスライダにおいて、アクチュエータ105cを挟んで電極33の反対側に設けられる電極は、製造工程の途中で除去され、存在しない。電極33の材料として、例えば、白金(Pt)などの高融点金属、金(Au)、イリジウム(Ir)等の化学的に安定な貴金属、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、窒化チタン(TiN)等が挙げられる。
スライダ基板105aと間には、更にスライダ基板105aとアクチュエータ105cとの間を電気的に絶縁するための絶縁層34が設けられていてもよい。絶縁層34は、例えば膜厚500nmの絶縁材料からなる膜であり、図4に示すように、スライダ基板105aの端部表面に形成される。絶縁層34に使用可能な材料としては、例えばアルミナ(Al2O3)や酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。このような絶縁層34を設けることにより、スライダ基板105aをアクチュエータ105cの電極から完全に絶縁し、アクチュエータ105c側のノイズがスライダ基板105aに漏れることを防止することができる。
本実施形態のヘッドスライダにおいては、絶縁層34と電極33が設けられているが、これらを設けることなく、アルチックなどの導電性のスライダ基板105aの上に絶縁層6z及びアクチュエータ105cを設けてもよい。この場合、セラミックス基板105aは、d15モードの変位を生じるのに必要な分極を印加するための電極として用いられる。
アクチュエータ105cとヘッド素子105dとの間には、アクチュエータ105cとヘッド素子105dとの間を電気的に絶縁するための絶縁層35が設けられている。絶縁層35は、例えば膜厚500nmの絶縁材料からなる膜である。絶縁層35に使用可能な材料としては、例えばアルミナ(Al2O3)や酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。
磁気ディスク装置における浮上量の制御方法の一例を、図9及び図10を用いて説明する。図9はサスペンション106を示す図である。図9(a)はサスペンションの側面図であり、図9(b)は浮上面105f側から見たサスペンションの平面図である。
ヘッド素子105dと入出力回路119とを接続する配線111a、111bと並行して、アクチュエータ105cに供給する電圧制御用の配線111c、111dを配置する。また、サスペンション106に圧電素子からなる加速度センサ123が実装されている。加速度センサ123は、配線111e、111fを経由して入出力回路119に接続されている。
浮上量が変動した際、加速度センサ123は電圧信号を出力する。出力した電圧信号は、配線111e、111f、入出力回路119を経由して、オペアンプ(増幅回路)118で増幅される。増幅された信号を、配線111c、111dを経由してアクチュエータ105cの動作電圧として入力する。
図10は、浮上量を一定に制御するフローチャートの一例である。CPU112は、磁気ヘッド105に磁気ディスク104上を読み出し又は書き込み位置までシークさせる(S101)。シーク動作中、浮上量の変動が加速度センサ123によりセンスされる(S102)。浮上量の変動により加速度センサが電圧を出力すると(S103)、アクチュエータ105cに動作電圧が印加される(S104)。このとき、アクチュエータ105cは浮上量の変動を打ち消す動作をし、浮上量を一定に保持する。その後、読出し又は書き込み動作が行われる(S105)。読出し又は書き込み動作が終わるまで、ステップ102〜105が繰り返される。読出し又は書き込み動作が終わると、再びシーク動作に移る(S101)。
このようにして、浮上量の変動に応じたアクチュエータ105cの微小駆動が行え、結果として浮上量を一定に保つことができる。具体的には、気圧の変化、熱膨張、ヘッドクラッシュによる衝撃や記憶装置のモータによる振動など、様々な要因による、スライダの浮上面(図3(b)における105f)と記憶媒体(図3(b)における104c)との間の距離の変化に対応して、容易に浮上量を補正することが可能である。さらに、磁気ディスクのうねりや局所的な凹凸、回転軸のブレなどによるディスクが1回転する間に生じる浮上量の変動にも高速に対応して、浮上量を安定化させることができる。
−第1実施形態のヘッドスライダの製造方法−
図11は、第1実施形態のヘッドスライダの製造方法を示す断面図である。なお以下の説明で、厚さは基板に対して膜が堆積する方向(Y方向)の長さを意味する。
AlTiC基板105a上に絶縁層34(厚さ500nm、Al2O3)、下部電極33(150nm、Pt/Ti)、圧電体6(厚さ5μm、PZT)、上部電極43(厚さ150nm、Al)をスパッタ法で形成する(図11(1)〜(4))。圧電体6は結晶化させるため高温(500〜700℃)で成膜する。下部電極33はIrなどの貴金属であればよく、圧電体6はPZT以外の圧電材料、PLZTなどでもよい。上部電極43は、ウェットエッチングでパターニング可能なAlなどが望ましい。
次に、上部電極43と下部電極33の間に電圧を印加して分極処理を行う。上部電極43がAlであれば、分極終了後、ウェットエッチングにて剥離してもよい。次に、フォトリソを用いてマスクをパターニング、ドライエッチングにて圧電体6をエッチングする(図11(5))。
次に鍍金用シード層300nm(Cu/Cr)をスパッタ法で成膜し、更に銅(Cu)鍍金を行い、エッチングによりできた溝を第1電極9、第2電極10となる銅で埋める(図11(6))。次に研磨により圧電体6表面の面だしと上面の平坦化を行う(図11(7))。さらに樹脂11を設ける部分に存在する銅をドライエッチングする(図11(8))。エッチングでできた溝49に樹脂11を埋め(図11(9))、研磨にて圧電体6表面の面出しを行う(図11(10))。表面に絶縁層35(厚さ500nm、Al2O3)を形成後、ヘッド部105bを形成する(図11(11))。
図12は、第1実施形態のヘッドスライダの製造方法の変形例を示す断面図である。図12(8)までは、図11の(8)までと同じ工程を行う。その後、Siなどの基板48を用いて圧電体6の上面と貼り合わせる(図12(9))。貼り合わせには接着剤を用いても良いが、表面活性化接合法などが望ましい。あるいは、接合面にAu/Snをスパッタし共晶接合を用いても良い。溝49はそのまま残されている。
次に研磨によって基板48の厚さを薄層化し、さらにエッチングによって10μm程度まで薄くする(図12(10))。その上に絶縁層35(500nm、Al2O3)を形成後、ヘッド部105bを形成する(図12(11))。
なお、d31モードの変位を生じさせる圧電体6に隣接する電極9と10との間に抗電界以上の電界を印加することにより、電極間方向に平行な方向に分極させてからヘッドスライダを使用する。
−第2実施形態のヘッドスライダ−
第2実施形態のヘッドスライダは、図4に示される第1形態のヘッドスライダの概略構造と同様の概略構造を備える。アクチュエータ105cの構造が、第2実施形態のヘッドスライダと第1実施形態のヘッドスライダとで異なる。以下の説明では、アクチュエータ105cの構造について主に説明し、第1実施形態と重複する部分については説明を省略する。
図13は、第2実施形態のヘッドスライダのアクチュエータ105cのみを示した斜視図である。図13に示されるヘッドスライダは、図4の斜視図と同じ方向からアクチュエータ105cを見た図である。アクチュエータ105cは第1柱202、第2柱203と、第1柱202及び第2柱203に両端を取り付けた橋架部201と、第1柱202と前記橋架部201の間に設けられた複数の第1作動部218a〜218f(以下第1作動部218と総称する場合がある。)と、第2柱203と橋架部201との間に設けられた複数の第2作動部318a〜318f(以下第2作動部318と総称する場合がある。)とを備える。なお、第1作動部218と第2作動部318は、それぞれ6つ設けられているが、それぞれ少なくとも一つ存在していればよい。第1柱202及び第2柱203は、図6において第1柱202及び第2柱203の左上方向に存在し図示されていないスライダ基板105aに隣接している。一方、第1作動部218、第2作動部318、及び橋架部201とセラミックス基板105aとの間には空隙204が設けられている。また、橋架部201は、図6において橋架部201の右下方向に存在し図示されていないヘッド部105bに隣接している。一方、第1柱202及び第1作動部218とヘッド部105bとの間には空隙205が設けられ、第2柱203及び第2作動部318とヘッド部105bとの間には空隙305が設けられている。
図14は、第2実施形態のヘッドスライダの第1作動部218の形状を示した斜視図である。図14に示される第1作動部218は、図4の斜視図と同じ方向から見た図である。第1作動部218は、圧電体206及び圧電体206に電界を印加するための一対の電極209、210を具備する。圧電体206、電極209、210の主面は、浮上面(図4における浮上面105f)のほうを向くように配置される。圧電体206、電極209、電極210は、第1実施形態の圧電体6、電極9、電極10にそれぞれ対応する。第2実施形態において、作動部218はd15モードの変位を生じさせても、d31モードの変位を生じさせてもよい。駆動モード及び変位を生じさせる方向に応じた作動部の形状、並びに圧電体の分極の方向及び圧電体への電界の印加方向は図6を用いて説明したとおりである。複数の第1作動部218の駆動モードは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、第2作動部318は第1作動部218と同様の形状とすることができる。複数の第2作動部318の駆動モードは互いに同じであっても異なっていてもよい。
橋架部201の動作を安定させるため、複数の第1作動部218と複数の第2作動部318の形状は同じであることが好ましい。
図15(a)、(b)はd15モード(圧電剪断効果)の変位を生じる圧電体(活性部)を持つアクチュエータを示す断面模式図である。図15を用いて、第2実施形態のアクチュエータの変形について説明する。図15(a)はヘッド素子105d側から見たアクチュエータ105cであり、図15(b)はヘッドスライダを上側(Z軸方向)から見たアクチュエータ105cである。作動部218は第1柱202から橋架部201へ向かう分極P1を持ち、作動部318は第2柱203から橋架部201へ向かう分極P2を持つ。
図16(a)、(b)は、図15のアクチュエータの作動部218及び318に電圧を印加したときの形状を示す断面模式図である。図16(a)はヘッド素子105d側から見たアクチュエータ105cであり、図16(b)はヘッドスライダを上側(Z軸方向)から見たアクチュエータ105cである。図16(a)に示されるように、作動部218に電界E1を印加し、作動部318に電界E2を印加する。すると、各作動部218、318は図6(a)(b)で説明したd15モードの変位を生じる。第1柱202と第2柱203は、図示されないスライダ基板105aに固定されている。一方、第1作動部218、第2作動部318、及び橋架部201とスライダ基板105aとの間には空隙204が設けられている。よって、第1柱202と第2柱203に対して、橋架部201が−Z方向の変位を生じる。また、電界印加方向もしくは分極方向を逆にした場合は、第1柱202と第2柱203に対して、橋架部201が+Z方向に変位を行う。
各作動部218、318の間には、空隙211、311がそれぞれ設けられている。アクチュエータ105cにヘッド部105bを支えるのに必要な強度が不足している場合、空隙211、311の部分に、アルミナ等の補強材を設けてもよい。
(第3シミュレーション)
第2実施形態のヘッドスライダについて、変位量のシミュレーションを行った。計算ツールとして有限要素シミュレーション(ANSYS 11.0)を用いた。シミュレーションで用いたアクチュエータのサイズ等の構造パラメータを図17を用いて説明する。図17(a)はヘッド素子105d側から見たアクチュエータ105cであり、図17(b)はヘッドスライダを上側(Z軸方向)から見たアクチュエータ105cである。図17(c)は、図17(a)の作動部218、318を拡大した図である。第1柱202と橋架部201の間にd15モードの第1作動部218が8本、第2柱203と橋架部201の間にd15モードの第2作動部318が8本配置されている。
アクチュエータの高さ(図17(b)におけるH1)は6μm、橋架部201の高さ(図17(b)におけるH3)、並びに第1柱202の高さ及び第2柱203の高さ(図17(b)におけるH4)は5μmとした。空隙204の高さ(図17(b)におけるH5)、並びに空隙205及び空隙305(図17(b)におけるH6)は1μmとした。作動部218、318の高さ(図17(b)におけるH7)はそれぞれ4μmとした。
アクチュエータの長さ(図17(b)におけるX方向の長さX1)は700μm、橋架部201の長さ(図17(b)における長さX3)は420μm、第1柱202及び第2柱の長さ(図17(b)における長さX4)は120μm、第1作動部218及び第2作動部318の長さ(図17(b)における長さX7)は20μmとした。
アクチュエータのZ方向の長さ(図17(a)における長さW1)は230μmとした。各作動部218及び318において、圧電体206のZ軸方向の長さ(図17(c)における長さW206)は2μm、電極209、210のZ軸方向の長さ(図17(c)における長さW209、W210)はそれぞれ4μmとした。
各作動部は、圧電体206としてチタン酸ジルコン酸ランタン鉛PZT(Zr/Ti=52/48)、電極209、210に銅を用いて構成した。橋架部201、第1柱202、及び第2柱203は前記PZT(Zr/Ti=52/48)とした。各作動部218、318の間には、空隙211、311が存在するものとした。空隙211、311のZ方向の長さは、いずれも20μmとした。
また、ヘッドスライダを支持する基板として230μm(Z方向)×700μm(X方向)×850μm(Y方向)のアルチックを材料とするスライダ基板105a(図示せず)、および、230μm(Z方向)×700μm(X方向)×35μm(Y方向)のサイズを持つヘッド素子105bを配置した。圧電体206への印加電圧は5Vとした。サスペンション106のヘッドジンバル106に拘束される部分はスライダ基板105a(図示せず)の上面(浮上面の反対側の面)とした。
その結果、ヘッド素子部は均一な突き出しを示し、ヘッド素子部の−Z方向への変位量は48.1nmだった。現状の磁気ディスク装置において、浮上量は10nm以下であることから、十分な低電圧駆動が可能となることを示唆している。
(第4シミュレーション)
空隙211、311の部分にアルミナを充填したことを除き、第3シミュレーションと同様の構造のヘッドスライダについて、変位量のシミュレーションを行った。
その結果、ヘッド素子部は均一な突き出しを示し、ヘッド素子部の−Z方向への変位量は11.8nmだった。現状の磁気ディスク装置において、浮上量は10nm以下であることから、十分な低電圧駆動が可能となることを示唆している。
図18に第2実施形態のヘッドスライダの作動部を構成する電極に電位を供給するための配線パターンの一例を示す断面図である。各作動部218において、浮上面側の電極は配線215と電気的に接続され、浮上面の反対側の電極は配線216と電気的に接続されている。各作動部318において、浮上面側の電極は配線315と電気的に接続され、浮上面の反対側の電極は配線316と電気的に接続されている。配線216と配線316は電気的に接続されているが、それぞれ独立の配線であっても良い。配線215、315にグランド電位を、配線216、316にバイアス電位を印加すると、図16に示される向きの電界E1、E2を圧電体に印加することができる。
第2実施形態のアクチュエータがd15モードの変位を生じる作動部を含んで構成されるとき、その作動部を構成する圧電体に浮上面及びアクチュエータが設けられたスライダ基板の表面に垂直な方向に予め分極を生じさせておく。d15モードの変位用の分極を発生させるための一方の電極は、作動部218について第1柱202と圧電体206との間に設けられ、他方の電極は圧電体206を挟んで一方の電極の反対側に設けられる。第2実施形態に設けられる分極用電極を構成する材料として、例えば、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、銅(Cu)等の金属が挙げられ、更に、窒化チタン(TiN)等の窒化物、炭化タングステン(WC)等の炭化物、或いは、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)等の酸化物も使用可能である。分極用電極が配置される場所の一例は、後述の第2実施形態のヘッドスライダの製造方法において述べる。
第2実施形態のヘッドスライダは、スライダ基板上の一組の柱に圧電アクチュエータを介して両端を取付けた橋架部と、該橋架部上に設けた記録ヘッドとを備える。このような構造のヘッドスライダは、ヘッド部が設けられた橋架部とスライダ基板との間に空隙が生じ、スライダ基板に対するヘッド部の拘束力が小さくなる。よって、アクチュエータを構成する作動部(圧電素子)の圧電体に印加される電圧が低くても大きな変位量を得ることができる。
−第2実施形態のヘッドスライダの製造方法−
図19〜21は、第2実施形態のヘッドスライダの製造方法を示す断面図である。図20は、図19(e)におけるB−B’間の断面図である。
スライダ基板105aの一例としてアルチック基板上に犠牲層51を1μmの厚さでスパッタ法を用いて形成する。犠牲層51に使用する材料は、スライダ基板105a、圧電体206、電極209、210は除去できないエッチング液により除去できる材料である。犠牲層を構成する材料として、例えばSiO2:シリカが挙げられる。次に犠牲層51上にレジストを塗布し、一例としてi線ステッパを用いてパターニングを施し、ICPによるドライエッチングを行い、前述の犠牲層のパターニングを行う(図19(a))。次に犠牲層51上に例えばアルミナからなる絶縁層52を2μmの厚さで形成する。その後、CMPを用いてAl2O3:絶縁層52の平坦化を行う。なお、犠牲層51の上に設けられた絶縁層52は、完成したヘッドスライダのアクチュエータ105cとともに変形する。よって、犠牲層51の上に設けられた絶縁層52の厚さはアクチュエータ105cが変形可能な程度の厚さであることが好ましく、例えば0.4μm以下が好ましい。一方、犠牲層51の上に設けられた絶縁層52の厚さは、アクチュエータ105cに強度を付与する点から、例えば0.2μm以上であることが好ましいが、犠牲層51が露出した状態であってもよいもよい。絶縁層52の平坦化後、一例として、ダマンシンプロセスによりグランド側の配線53をPtで形成する(図19(b))。ここで、ダマシンプロセスとは、露光、エッチング、鍍金およびCMPにより配線を埋め込む技術を指す。次にアクチュエータの活性部となる圧電体206となるPZTを製膜する(図19(c)、図20(a))。圧電体206の厚さは例えば5μmであり、スパッタ法を用いて形成できる。圧電体206の上にダマシンプロセスにより埋め込まれた例えばCuからなる分極用電極パターン54a〜54dを形成する(図19(d))。図19(e)に示される矢印P1、P2の方向に分極させるため、分極用電極54a〜54dにそれぞれ電位を印加する。分極用電極54aと54bとの距離及び54cと54dとの距離は例えば20μmであり、54bと54cとの幅は例えば420μmである。また、分極用電極54aから−X方向の端部までの距離、及び分極用電極54dからX方向の端部までの距離は、例えばいずれも120μmである。分極用電極54aと54bとの間及び54cと54dとの間の圧電体206に、例えば300Vの直流電圧を印加する。
分極処理後、例えば活性部となる圧電体206を誘導結合型プラズマ(ICP)によりドライエッチングし、圧電体206の間に溝207を形成する(図20(b))。形成した溝207に、電極209、210となる銅(Cu)をダマシンプロセスにより埋め込む(図20(c)、(d))。埋め込まれた銅を例えばICPによりドライエッチングし、電極209、210を形成する(図20(e))。次に、作動部間の空隙211を形成するため、犠牲層212としてSiO2:シリカをスパッタで製膜し(図20(f))、更に平坦化を行う(図20(g)、図21(a))。
なお、例えば、作動部間の空隙211をアルミナで充填する態様の場合は、シリカの代わりにアルミナをスパッタで製膜後、平坦化を行う。
次に、上面に銅(Cu)等の金属材料を形成し、更に、i線レジストのリフトオフ等により銅をパターニングし、各作動部を構成する電極209、210に電気的に接続される配線215、216、315、316を形成する(図21(b))。
その後、例えばシリカからなる層をスパッタで製膜し、更にシリカ層上にレジストを塗布し、i線ステッパを用いてパターニングを施し、ICPによるドライエッチングを行い、犠牲層56のパターニングを行う(図21(c))。次にアルミナ層57を製膜後、ダマシンプロセスにより上部ヘッド素子へ接続するためのビア58を形成する(図21(d))。
アクチュエータ層を形成後、通常のリードおよびライト素子を具備するヘッド素子を含んでなるヘッド部105b形成する(図21(e))。ここで、アクチュエータに電圧を印加するためビア58と電気的に接続している端子(図示せず)がヘッド部105の上面に形成される。この端子は予めサスペンションのジンバル側に設けた配線と金パッド等を用いて電気的に接続され、HDDに搭載されている各演算素子とドライバおよびコントローラを介して電気的に制御される。
次に、犠牲層の除去を行う(図21(f))。ヘッド素子(図示せず)は概ねアルミナにより覆われているが、磁気ディスクとやり取りを行うリードおよびライト素子は露出された状態にある。リードおよびライト素子等のヘッド素子の浮上面に出ている重要な部位は、磁性を持つ合金材料を用いており、犠牲層のエッチャントに腐食されるため、パターン化したレジストで保護する。その後、バッファードフッ酸からなるエッチャントに浸漬し、製膜時に形成した犠牲層となるシリカを選択的に除去し、空隙204、205、305が形成され、本発明の構造を持つヘッドスライダが得られる。図21(f)において、点線で囲まれた領域F1は図15における第1柱202に対応し、領域F2は図15における第2柱203に対応し、領域F3は図15における第1作動部218に対応し、領域F4は図15における第2作動部318に対応し、領域F5は橋架部201に対応する。
尚、以上述べてきた構造およびその構造実現のための作製プロセスは一例であり、任意の構造および手法、工程入替、別手段を講じることも可能である。
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。