JP5284821B2 - 金属酸化物蒸着材、その製造方法、および金属酸化物蒸着膜の製造方法 - Google Patents

金属酸化物蒸着材、その製造方法、および金属酸化物蒸着膜の製造方法 Download PDF

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本発明は、真空蒸着により基材に金属酸化物の蒸着膜を形成させるために用いられる金属酸化物蒸着材およびその製造方法、並びに該金属酸化物蒸着材を真空蒸着の蒸着材として用いる金属酸化物蒸着膜の製造方法に関する。
高屈折率層形成用の蒸着材としては、酸化タンタル(Ta)(屈折率:n=2.1)、酸化ジルコニウム(ZrO)(屈折率:n=2.2)、酸化チタン(TiO)(屈折率:n=2.4)、酸化ニオブ(Nb)(屈折率:n=2.1)などが用いられている。
中でも、蒸着材として酸化タンタルを用いて形成した蒸着膜は、屈折率が高く、硬度が高い。例えば、フィルター・ダイクロイックミラー、ブラスチックレンズ等の多層膜の高屈折物質として使用されている。通常の五酸化二タンタル蒸着材は、五酸化二タンタル粉末をプレス成形し焼結体としたペレットやターゲットが用いられる。
酸化タンタル蒸着膜は、通常、真空蒸着によって基材上に堆積される。この方法では、先ず、コーティングされるべき基材および蒸着材が入っている容器を、適切な真空蒸着装置内に設置し、次いで、装置内を排気し、真空にし、加熱および/または電子ビーム衝撃により、蒸着材を蒸発させ、薄膜の形状で基材表面に析出させる。
例えば、特開平4−325669号公報(特許文献1)、特開2006−111974号公報(特許文献2)には、酸化タンタル蒸着材が開示されている。
特開平4−325669号公報(特許請求の範囲) 特開2006−111974号公報(特許請求の範囲)
しかし、上記特許文献1、2の蒸着材には、真空蒸着の際に、スプラッシュが発生し、安定した成膜が困難であり、歩留りの低下や膜厚が不均一になるという問題があった。
従って、本発明の課題は、真空蒸着の際に、スプラッシュ量が少ない金属酸化物蒸着材およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、蒸着材として、粒径が0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下である金属酸化物蒸着材を用いることにより、真空蒸着の際に、スプラッシュ量が少なくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明(1)は、酸化タンタル粉末であり粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下であり、Ta 相とTa O相との混合相であり且つ粉末X線回折によるTa の(0012)面のピーク強度に対するTa Oの(220)面のピーク強度の比(I Ta2O /I Ta2O5 ))が0.02〜0.2であることを特徴とする金属酸化物蒸着材を提供するものである。
また、本発明(2)は、酸化ニオブ粉末であり、粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下であり、Nb 相とNbO 相との混合相であり且つ粉末X線回折によるNb の(440)面とNbO の(131)面の合計ピーク強度に対するNbO の(−231)面のピーク強度比(I NbO2(−231) /(I Nb2O5(440) +I NbO2(131) ))が0.2〜0.7であることを特徴とする金属酸化物蒸着材を提供するものである。
なお、本発明において、「粒径0.5mm未満」は、JIS規格Z8801に規定された篩い目開き0.5mm(30mesh)の篩いにて、篩い分けたときの篩い下である。
また、本発明()は、Ta を、真空雰囲気下で、電子ビーム溶解法により溶解しTa 相とTa O相との混合相であり且つ粉末X線回折によるTa の(0012)面のピーク強度に対するTa Oの(220)面のピーク強度の比(I Ta2O /I Ta2O5 ))が0.02〜0.2であるTa の溶解処理物を得、次いで、該溶解処理物を粉砕し、次いで、粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下になるように篩別することを特徴とする金属酸化物蒸着材の製造方法を提供するものである。
また、本発明(4)は、Nb を、不活性ガス雰囲気下で、アーク溶解法により溶解して、Nb 相とNbO 相との混合相であり且つ粉末X線回折によるNb の(440)面とNbO の(131)面の合計ピーク強度に対するNbO の(−231)面のピーク強度比(I NbO2(−231) /(I Nb2O5(440) +I NbO2(131) ))が0.2〜0.7であるNb の溶解処理物を得、次いで、該溶解処理物を粉砕し、次いで、粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下になるように篩別することを特徴とする金属酸化物蒸着材の製造方法を提供するものである。
また、本発明()は、本発明(1)又は(2)いずれかの金属酸化物蒸着材を用いて、真空蒸着を行い、金属酸化物蒸着膜を得ることを特徴とする金属酸化物蒸着膜の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、真空蒸着の際に、スプラッシュ量が少ない金属酸化物蒸着材およびその製造方法を提供することができる。
本発明の金属酸化物蒸着材は、真空蒸着により、金属酸化物の蒸着膜を基材に形成させるために用いられる蒸着材である。
本発明の金属酸化物蒸着材は、金属酸化物粉末であり、且つ、該金属酸化物粉末中、粒径が0.5mm未満である金属酸化物粉の含有量は、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%、特に好ましくは0質量%である。本発明の金属酸化物蒸着材では、該金属酸化物粉末中の粒径が0.5mm未満である金属酸化物粉の含有量が少なくなるほど、真空蒸着の際のスプラッシュ量が少なくなる。
本発明の金属酸化物蒸着材に係る該金属酸化物としては、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等が挙げられ、これらのうち、酸化タンタル、酸化ニオブ及び酸化チタンが、真空蒸着の際に、スプラッシュ量が少なくなる点で好ましい。
本発明の金属酸化物蒸着材に係る該金属酸化物粉末が酸化タンタルの場合、酸化タンタルとは、タンタルの酸化物全般を指し、具体的には、Ta、TaO、TaO、TaO、あるいは、これらの混合物、あるいは、これらのタンタルの酸化物を主成分とし、上記の酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等の酸化物との混合物、あるいは、これらのタンタルの酸化物を主成分とし、金属タンタル、金属ニオブ、金属チタン、金属ジルコニウム、金属ハフニウムとの混合物である。なお、主成分とは、これらのタンタルの酸化物が、全体量に対して50質量%以上含まれていることを指す。これらのうち、本発明の金属酸化物蒸着材に係る該金属酸化物としては、真空蒸着の際に、真空蒸着装置内の真空度が落ち難く、且つ、スプラッシュ量が少なくなり易い点、蒸着時の均一性が向上し、蒸着での歩留向上により処理時間の短縮が図れる点、スプラッシュの発生が少ないため、電子ビームガン等への損傷が少なくなる点、比較的安定した成膜レート(速度)を保持できる点で、Ta相とTaO相との混合相を主体とするものが好ましく、Ta相とTaO相との混合相が特に好ましく、Ta相とTaO相との混合相であり且つ粉末X線回折によるTa(正方晶)に対するTaO(立方晶)のXRDのピーク強度比(Taの29.6度付近の(0012)面のピーク強度に対するTaOの38度付近の(220)面のピーク強度の比(ITa2O/ITa2O5))が、0.02〜0.2であるものが更に好ましく、Ta相とTaO相との混合相であり且つ粉末X線回折によるTa(正方晶)に対するTaO(立方晶)のXRDのピーク強度比(Taの29.6度付近の(0012)面のピーク強度に対するTaOの38度付近の(220)面のピーク強度の比(ITa2O/ITa2O5))が、0.1〜0.15のものがより好ましい。
なお、本発明において、XRDのピーク強度比は、各々のピーク高さの0.5乗からバックグランドの0.5乗を引いた値を、ピーク強度として計算される(各ピークのピーク強度=各ピークのピーク高さの0.5乗−バックグラウンドの0.5乗)。
本発明の金属酸化物蒸着材に係る該金属酸化物が、酸化ニオブの場合、酸化ニオブとは、ニオブの酸化物全般を指し、具体的には、Nb、NbO、NbO、Nb1229、あるいは、これらの混合物、あるいは、これらのニオブの酸化物を主成分とし、上記の酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等の酸化物との混合物、あるいは、これらのニオブの酸化物を主成分とし、金属タンタル、金属ニオブ、金属チタン、金属ジルコニウム、金属ハフニウムとの混合物である。なお、主成分とは、これらのニオブの酸化物が、全体量に対して50質量%以上含まれていることを指す。これらのうち、本発明の金属酸化物蒸着材に係る該金属酸化物としては、真空蒸着の際に、真空蒸着装置内の真空度が落ち難く、且つ、スプラッシュ量が少なくなり易い点、蒸着時の均一性が向上し、蒸着での歩留向上により処理時間の短縮が図れる点、スプラッシュの発生が少ないため、電子ビームガン等への損傷が少なくなる点、比較的安定した成膜レート(速度)を保持できる点で、Nb相とNbO相との混合相を主体とするものが好ましく、Nb相とNbO相との混合相が特に好ましく、Nb相とNbO相との混合相であり且つ粉末X線回折によるNb(正方晶)(440)面とNbO(単斜晶)(131)面の合計ピーク強度に対するNbO(単斜晶)(−231)面のピーク強度比(INbO2(−231)/(INb2O5(440)+INbO2(131)))が、0.2〜0.7であるものが更に好ましく、Nb相とNbO相との混合相であり且つ粉末X線回折によるNb(正方晶)(440)面とNbO(単斜晶)(131)面の合計ピーク強度に対するNbO(単斜晶)(−231)面のピーク強度比(INbO2(−231)/(INb2O5(440)+INbO2(131)))が、0.3〜0.5であるものがより好ましい。通常、粉末X線回折によるNb(正方晶)(440)面とNbO(単斜晶)(131)面のピークの一部は重なる。本発明では、それぞれのピークの頂点をNb(正方晶)(440)面とNbO(単斜晶)(131)面のピーク高さとして求める。
本発明の金属酸化物蒸着材は、本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法により、好適に製造される。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法は、金属酸化物を、真空雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で、電子ビーム溶解法またはアーク溶解法により溶解し、次いで、粉砕及び篩別する金属酸化物蒸着材の製造方法である。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法において、金属酸化物蒸着材の製造原料となる金属酸化物(以下、原料金属酸化物とも記載する。)としては、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等が挙げられ、これらのうち、酸化タンタル、酸化ニオブ及び酸化チタンが、真空蒸着の際に、スプラッシュ量が少なくなる点で好ましい。該原料金属酸化物は、純度が可能な限り高いものが好ましい。また、該原料金属酸化物して、市販のものを適宜使用できる。なお、該原料金属酸化物が酸化タンタルの場合、酸化タンタルとは、タンタルの酸化物全般を指し、具体的には、Ta、TaO、TaO、TaO、あるいは、これらの混合物、あるいは、これらのタンタルの酸化物を主成分とし、上記の酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等の酸化物との混合物、あるいは、これらのタンタルの酸化物を主成分とし、金属タンタル、金属ニオブ、金属チタン、金属ジルコニウム、金属ハフニウムとの混合物であり、また、該原料金属酸化物が酸化ニオブの場合、酸化ニオブとは、ニオブの酸化物全般を指し、具体的には、Nb、NbO、NbO、Nb1229、あるいは、これらの混合物、あるいは、これらのニオブの酸化物を主成分とし、上記の酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等の酸化物との混合物、あるいは、これらのニオブの酸化物を主成分とし、金属タンタル、金属ニオブ、金属チタン、金属ジルコニウム、金属ハフニウムとの混合物である。なお、主成分とは、これらの上記酸化物が、全体量に対して50質量%以上含まれていることを指す。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法では、先ず、該原料金属酸化物を、真空雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で、電子ビーム溶解法またはアーク溶解法によって溶解して、原料金属酸化物の溶解処理物を得る。
該原料金属酸化物は、粉末であっても、ペレット状等に成形されたものであってもよいが、電子ビーム溶解を行う場合は、電子ビーム溶解の際に、該原料金属酸化物が飛散するのを防ぐために、粒状、ペレット状等に成形されたものが好ましい。
そして、該原料金属酸化物に対し、真空雰囲気下で、電子ビーム溶解法を行うことにより、あるいは、不活性ガス雰囲気下で、アーク溶解法を行うことにより、該原料金属酸化物を溶解する。なお、電子ビーム溶解法を行う際の真空雰囲気とは、1×10−4torr以下の真空度である。また、アーク溶解法を行う際の不活性ガス雰囲気とは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気である。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法において、電子ビーム溶解法により該原料金属酸化物の溶解を行う方法としては、特に制限されず、通常、金属の溶解に用いられている電子ビーム溶解法を用いることができる。また、本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法において、電子ビーム溶解法を行うための装置としては、特に制限されず、通常、電子ビーム溶解法に用いられる装置を用いることができる。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法において、アーク溶解法により該原料金属酸化物の溶解を行う方法としては、特に制限されず、通常、金属の溶解に用いられているアーク溶解法を用いることができる。また、本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法において、アーク溶解法を行うための装置としては、特に制限されず、通常、アーク溶解法に用いられる装置を用いることができる。
例えば、該原料金属酸化物を、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、あるいは、不活性ガスの減圧雰囲気下に保持された溶解炉に移し、炉内の水冷ハースに充填した後、プラズマアーク溶解法、非消耗アーク溶解法、エレクロトスラグ溶解法等を適宜選択して、該アーク溶解法を行う。好適な該アーク溶解法としては、炉内の雰囲気を、アルゴンガスによって大気との対流を防止し得る程度の加熱状態を保ちつつ、該原料金属酸化物の量比に応じて印加する電圧や電流を適宜の範囲に設定した非消耗アーク溶解法が挙げられる。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法では、該原料金属酸化物としてTaを用い、真空雰囲気下で電子ビーム溶解法により、該原料のTaを溶解して、原料Taの溶解処理物(1)を得ることができる。そして、該原料金属酸化物としてTaを用いて、真空雰囲気下、電子ビーム溶解法で、該原料Taを溶解することにより、得られる該原料Taの溶解処理物(1)を、Ta相(正方晶)とTaO相(立方晶)との混合相であり、且つ、粉末X線回折によるTaの(0012)面のピーク強度に対するTaOの(220)面のピーク強度の比(ITa2O/ITa2O5)を、0.02〜0.2、好ましくは0.05〜0.2とすることができ、特に好ましくは0.1〜0.15とすることができる。
また、本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法では、該原料金属酸化物としてTaを用い、不活性ガス雰囲気下で、アーク溶解法により、該原料Taを溶解して、原料Taの溶解処理物(2)を得ることができる。そして、該原料金属酸化物としてTaを用いて、不活性ガス雰囲気下、アーク溶解法により得られる該原料Taの溶解処理物(2)は、Ta相(正方晶)の単相である。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法では、該原料金属酸化物として、Nbを用い、真空雰囲気下で電子ビーム溶解法により、該原料のNbを溶解して、原料Nbの溶解処理物(3)を得ることができ、また、該原料金属酸化物として、Nbを用い、不活性ガス雰囲気下で、アーク溶解法により、該原料のNbを溶解して、原料Nbの溶解処理物(4)を得ることができる。そして、該原料金属酸化物としてNbを用いて、真空雰囲気下で、電子ビーム溶解法で、該原料のNbを溶解することにより、該Nbの溶解処理物(3)を、Nb相(正方晶)とNbO相(単斜晶)との混合相であり、且つ、粉末X線回折によるNb(正方晶)(440)面とNbO(単斜晶)(131)面の合計ピーク強度に対するNbO(単斜晶)(−231)面のピーク強度比(INbO2(−231)/(INb2O5(440)+INbO2(131)))を、0.2〜0.7とすることができ、好ましくは0.3〜0.5とすることができる。また、該原料金属酸化物としてNbを用いて、不活性ガス雰囲気下で、アーク溶解法で、該原料のNbを溶解することによっても、該Nbの溶解処理物(4)を、Nb相(正方晶)とNbO相(単斜晶)との混合相であり、且つ、粉末X線回折によるNb(正方晶)(440)面とNbO(単斜晶)(131)面の合計ピーク強度に対するNbO(単斜晶)(−231)面のピーク強度比(INbO2(−231)/(INb2O5(440)+INbO2(131)))を、0.2〜0.7とすることができ、好ましくは0.3〜0.5とすることができる。
そして、該電子ビーム溶解法または該アーク溶解法により、該原料金属酸化物を溶解した後、不活性ガス雰囲気中で炉冷し、生成した該原料金属酸化物の溶解処理物を取り出す。
本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法では、次いで、該原料金属酸化物の溶解処理物を、粉砕し、篩別する。該粉砕により、蒸着装置への充填の作業性が向上する。該粉砕方法としては、公知の方法を用いることができ、該原料金属酸化物の溶解処理物の特性に合わせて選択する。比較的硬い酸化物、例えば、酸化タンタルの粉砕には、ジョークラッシャー等の圧縮により破砕を行う粉砕機、ロールクラッシャー、ダブルロールクラッシャー等の圧縮、せん断作用によって破砕を行う粉砕機、ハンマークラッシャー、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃型の粉砕機を好ましく用いることができる。また、軟らかい酸化物、例えば、酸化ニオブの場合は、凝集物を解砕する圧縮造粒機や、低回転のせん断式クラッシャーなどの粉砕機を用いることができる。なお、該粉砕に用いる粉砕機は、鉄成分のコンタミネーションを防止でき鉄汚染を防止する上で、ステンレス製が好ましく、特に、粉砕時に衝撃が加わる部分が、粉砕する金属酸化物と同じ材料または超合金、例えば、タングステンカーバイト、高速度鋼、ハイス、炭素鋼等で加工されたもの、更に好ましくは、粉砕時に衝撃が加わる部分が、タングステンカーバイトで肉盛加工されたものが好ましい。また、該粉砕を人手で行っても良い。
該粉砕を行った後、次いで、該篩別を行い、粒径が0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量を、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%にする。該篩別方法としては、公知の方法を用いることができ、該篩別には、篩の運動や振動により篩別する分級装置、比重差を利用する分級装置等を用いることができる。
そして、本発明の金属酸化物蒸着材の製造方法では、該原料金属酸化物の溶解処理物を、粉砕し、篩別することにより、本発明の金属酸化物蒸着材を得ることができる。
本発明の金属酸化物蒸着膜の製造方法は、蒸着材として前記本発明の金属酸化物蒸着材を用いて、真空蒸着により金属酸化物の蒸着を行い、基材に金属酸化物蒸着膜を形成させる金属酸化物蒸着膜の製造方法である。
本発明の金属酸化物蒸着材膜の製造方法において、蒸着膜が形成される該基材としては、特に制限されず、通常、金属酸化物の蒸着に用いられる基材が挙げられる。
本発明の金属酸化物蒸着材膜の製造方法において、真空蒸着を行う方法としては、特に制限されず、通常、金属酸化物蒸着膜を形成するための真空蒸着方法を用いることができ、例えば、真空雰囲気下で該蒸着材を加熱する方法、真空雰囲気下で該蒸着材に電子ビームを照射する方法、真空雰囲気下で該蒸着材を加熱しつつ該蒸着材に電子ビームを照射する方法等が挙げられる。なお、該真空蒸着を行う際の真空雰囲気とは、1×10−4torr以下の真空度である。
本発明の金属酸化物蒸着膜の製造方法において、真空蒸着を行う装置としては、特に制限されず、通常、金属酸化物の真空蒸着に用いられる装置を用いることができる。
本発明の金属酸化物蒸着膜の製造方法は、(i)蒸着材として溶製材(一旦溶解した材料)を用いるため、蒸着装置内での溶解性がよく、短時間で成膜準備を行うことができ、(ii)表面積が大きいために酸素が多く且つ不純物成分が多く含まれ易いと考えられる微粉が少ない蒸着材を用いているため、スプラッシュの発生が少なく、(iii)蒸着時の均一性が向上し、蒸着で歩留が向上し、蒸着装置内での真空劣化が生じ難いことで処理時間の短縮が図れ、(iv)スプラッシュの発生が少ないため、電子ビームガン等への損傷が少なくなり、(iv)比較的安定した成膜レート(速度)を保持できる等の特徴を有する。
そして、本発明の金属酸化物蒸着膜の製造方法を行うことにより、該基材に金属酸化物蒸着膜が形成される。このようにして得られる金属酸化物蒸着膜は、膜厚等の均一性が高く、優れた光学特性を有する蒸着膜である。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
[実施例1]
(蒸着材の製造)
平均粒径10μm以下のTa粉末(純度99.9%以上)を、プレス成形装置を用い、直径φ100mm、厚さ50mmの錠剤形ペレットとした。次いで、このペレットを銅製の水冷るつぼにセットした後、炉内真空度が10−5torr台となるまで真空引きを行った。次いで、このペレットを電子ビーム溶解法により溶解し、溶解後、不活性ガス雰囲気中で炉冷し、原料金属酸化物の溶解処理物を得た。該ペレットの電子ビーム照射部分の溶融時間は約30秒であった。
次いで、得られた原料金属酸化物の溶解処理物を、ハンマークラッシャーにより粉砕し、JIS規格Z8801に規定された篩い目開きが30mesh(0.5mm)の篩により分級し、粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末a(粒径が0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量は0質量%)を、蒸着材Aとして得た。また、分級により篩を通過したものを、粒径が0.5mm未満の金属酸化物粉bとして得た。なお、ハンマークラッシャーには、粉砕時に衝撃が加わる部分がタングステンカーバイトにより肉盛加工されたものを用いた。
得られた蒸着材Aを粉末X線回折法により以下の測定条件で測定した。その結果、該蒸着材は、Ta(正方晶)とTaOとの混合相であった。Taの29.6度付近の(0012)面のピーク強度(ピークの高さの0.5乗からバックグランドの0.5乗を引いた値)に対する、TaOの38度付近の(220)面のピーク強度(ピークの高さの0.5乗からバックグランドの0.5乗を引いた値)の比(ITa2O/ITa2O5)は0.13であった。
<X線回折測定条件>
回折装置 RAD−1C(株式会社リガク製)
X線管球 Cu
管電圧・管電流 40kV、30mA
スリット DS-SS:1度、RS:0.15mm
モノクロメータ グラファイト
測定間隔 0.002度
計数方法 定時計数法
また、該蒸着材Aをフッ硝酸(フッ酸−硝酸)により溶解し、その液の鉄含有量をICP発光分光分析(高周波誘導結合プラズマを光源とした発光分析法)により測定し、該蒸着材Aの鉄含有量を求めた。その結果、該蒸着材Aの鉄含有量は、0.002質量%と、低く抑えられていた。
(蒸着膜の製造)
次いで、該蒸着材を真空蒸着装置内に設置した。次いで、水冷された銅製るつぼへ粉砕した蒸着材12gを投入後、真空度(10−5torr)まで減圧し、その後、電流(400mA)、電圧(6kV)の出力にて、電子銃(日本電子株式会社製)で、蒸着材に電子ビームを照射することにより、ライナ中で溶解してベースを作成し、石英ガラス基板上に真空蒸着して蒸着膜の成膜を行った。真空蒸着の際のスプラッシュの発生状態を評価した。結果を表1に示す。
なお、スプラッシュの発生状態を、以下のようにして評価した。焼結体(比較例3)を「2:スプラッシュ発生多い。」とし、「5:スプラッシュ発生なし。」、「4:スプラッシュ発生少ない。」、「3:スプラッシュ発生やや多い。」、「2:スプラッシュ発生多い。」、「1:スプラッシュ発生かなり多い。」のように、相対的評価を行った。
[実施例2]
(蒸着材の製造)
実施例1で得られた粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末aに、実施例1で得た0.5mm未満の金属酸化物粉bを、該0.5mm未満の金属酸化物粉bの含有量が10質量%となるように混合し、混合物を、蒸着材Bとして得た。
(蒸着膜の製造)
上記のようにして得られた蒸着材を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
(蒸着材の製造)
実施例1で得られた粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末aに、実施例1で得た0.5mm未満の金属酸化物粉bを、該0.5mm未満の金属酸化物粉bの含有量が15質量%となるように混合し、混合物を、蒸着材Cとして得た。
(蒸着膜の製造)
上記のようにして得られた蒸着材を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
(蒸着材の製造)
実施例1で得られた粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末aに、実施例1で得た0.5mm未満の金属酸化物粉bを、該0.5mm未満の金属酸化物粉bの含有量が20質量%となるように混合し、混合物を、蒸着材Dとして得た。
(蒸着膜の製造)
上記のようにして得られた蒸着材を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
(蒸着材の製造)
実施例1で得られた粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末aに、実施例1で得た0.5mm未満の金属酸化物粉bを、該0.5mm未満の金属酸化物粉bの含有量が80質量%となるように混合し、混合物を、蒸着材Eとして得た。
(蒸着膜の製造)
上記のようにして得られた蒸着材を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
(蒸着材)
市販のTa焼結体を蒸着材Fとした。該蒸着材Fは、成形体であり、粒径が0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が0質量%である。粉末X線回折法で測定した結果、該市販のTa焼結体は、Ta(正方晶)であった。
(蒸着膜の製造)
市販のTa焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
Figure 0005284821
1)スプラッシュ量の評価:「5:スプラッシュ発生なし。」、「4:スプラッシュ発生少ない。」、「3:スプラッシュ発生やや多い。」、「2:スプラッシュ発生多い。」、「1:スプラッシュ発生かなり多い。」
なお、該蒸着材B、C、D及びEも、Ta(正方晶)とTaOとの混合相であり、Taの29.6度付近の(0012)面のピーク強度に対する、TaOの38度付近の(220)面のピーク強度の比は0.13であった。
真空蒸着の際の真空蒸着装置内の真空度の変化より、アウトガスを評価したところ、実施例1〜3並びに比較例1及び2には、差は見られなかった。しかし、比較例3は、実施例1及び2並びに比較例1及び2に比べ、真空度の低下が大きかった。
[実施例4]
(蒸着材の製造)
平均粒径10μm以下のNb粉末(純度99.9%以上)を、プレス成形装置を用い、直径φ60mm、厚さ20mmの錠剤形ペレットとした。次いで、このペレットを銅製の水冷るつぼにセットした後、炉内真空度が10−5torr台となるまで真空引きを行い、次いで、アルゴンガスにより大気圧より若干加圧状態に保持した。次いで、このペレットに電流550A、電圧55Vを印加して20分間アーク溶解を行い、溶解後、不活性ガス雰囲気中で炉冷し、原料金属酸化物の溶解処理物を得た。
次いで、得られた原料金属酸化物の溶解処理物を、乳鉢で粉砕し、JIS規格Z8801に規定された篩い目開きが30mesh(0.5mm)の篩により分級し、粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末c(粒径が0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量は0質量%)を、蒸着材Gとして得た。また、分級により篩を通過したものを、粒径が0.5mm未満の金属酸化物粉dとして得た。
得られた蒸着材Gを粉末X線回折法により実施例1で示した測定条件で測定した。その結果、該蒸着材は、Nb(正方晶)とNbO(単斜晶)との混合相であった。Nbの24.7度付近の(440)面のピーク強度とNbOの24.7度付近の(131)面のピーク強度との合計ピーク強度(ピーク高さの0.5乗からバックグランドの0.5乗を引いた値)に対するNbOの23.7度付近の(−231)面のピーク強度(ピーク高さの0.5乗からバックグランドの0.5乗を引いた値)比(INbO2(−231)/(INb2O5(440)+INbO2(131)))は、0.5であった。
また、蒸着材Gをフッ硝酸(フッ酸−硝酸)により溶解し、その液の鉄含有量をICP発光分光分析により測定し、蒸着材Gの鉄含有量を求めた。その結果、蒸着材Gの鉄含有量は、0.002質量%と、低く抑えられていた。
(蒸着膜の製造)
次いで、該蒸着材を真空蒸着装置内に設置した。次いで、水冷された銅製るつぼへ粉砕した蒸着材12gを投入後、真空度(10−5torr)まで減圧し、その後、電流(400mA)、電圧(6kV)の出力にて、電子銃(日本電子株式会社製)で、蒸着材に電子ビームを照射することにより、ライナ中で溶解してベースを作成し、石英ガラス基板上へ真空蒸着して蒸着膜の成膜を行った。真空蒸着の際のスプラッシュの発生状態を評価した。結果を表2に示す。
[実施例5]
(蒸着材の製造)
実施例4で得られた粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末cに、実施例4で得た0.5mm未満の金属酸化物粉dを、該0.5mm未満の金属酸化物粉dの含有量が10質量%となるように混合し、混合物を、蒸着材Hとして得た。
(蒸着膜の製造)
上記のようにして得られた蒸着材を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
(蒸着材の製造)
実施例4で得られた粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末cに、実施例4で得た0.5mm未満の金属酸化物粉dを、該0.5mm未満の金属酸化物粉dの含有量が20質量%となるように混合し、混合物を、蒸着材Iとして得た。
(蒸着膜の製造)
上記のようにして得られた蒸着材を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
(蒸着材の製造)
実施例4で得られた粒径が0.5mm以上の金属酸化物粉末cに、実施例4で得た0.5mm未満の金属酸化物粉dを、該0.5mm未満の金属酸化物粉dの含有量が30質量%となるように混合し、混合物を、蒸着材Jとして得た。
(蒸着膜の製造)
上記のようにして得られた蒸着材を用いて、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
Figure 0005284821
1)スプラッシュ量の評価:「5:スプラッシュ発生なし。」、「4:スプラッシュ発生少ない。」、「3:スプラッシュ発生やや多い。」、「2:スプラッシュ発生多い。」、「1:スプラッシュ発生かなり多い。」
なお、該蒸着材H、I及びJも、Nb(正方晶)とNbO(単斜晶)との混合相であった。Nbの24.7度付近の(440)面のピーク強度と、NbOの24.7度付近の(131)面のピーク強度と、の合計ピーク強度に対するNbOの23.7度付近の(−231)面のピーク強度比(INbO2(−231)/(INb2O5(440)+INbO2(131)))は、0.5であった。
本発明によれば、真空蒸着の際に、スプラッシュ量が少なくできるので、基材に金属酸化物蒸着膜が蒸着された材料を、工業的に有利に製造できる。

Claims (5)

  1. 酸化タンタル粉末であり粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下であり、Ta 相とTa O相との混合相であり且つ粉末X線回折によるTa の(0012)面のピーク強度に対するTa Oの(220)面のピーク強度の比(I Ta2O /I Ta2O5 ))が0.02〜0.2であることを特徴とする金属酸化物蒸着材。
  2. 酸化ニオブ粉末であり、粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下であり、Nb 相とNbO 相との混合相であり且つ粉末X線回折によるNb の(440)面とNbO の(131)面の合計ピーク強度に対するNbO の(−231)面のピーク強度比(I NbO2(−231) /(I Nb2O5(440) +I NbO2(131) ))が0.2〜0.7であることを特徴とする金属酸化物蒸着材。
  3. Ta を、真空雰囲気下で、電子ビーム溶解法により溶解しTa 相とTa O相との混合相であり且つ粉末X線回折によるTa の(0012)面のピーク強度に対するTa Oの(220)面のピーク強度の比(I Ta2O /I Ta2O5 ))が0.02〜0.2であるTa の溶解処理物を得、次いで、該溶解処理物を粉砕し、次いで、粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下になるように篩別することを特徴とする金属酸化物蒸着材の製造方法。
  4. Nb を、不活性ガス雰囲気下で、アーク溶解法により溶解して、Nb 相とNbO 相との混合相であり且つ粉末X線回折によるNb の(440)面とNbO の(131)面の合計ピーク強度に対するNbO の(−231)面のピーク強度比(I NbO2(−231) /(I Nb2O5(440) +I NbO2(131) ))が0.2〜0.7であるNb の溶解処理物を得、次いで、該溶解処理物を粉砕し、次いで、粒径0.5mm未満の金属酸化物粉の含有量が15質量%以下になるように篩別することを特徴とする金属酸化物蒸着材の製造方法。
  5. 請求項1または2いずれか1項記載の金属酸化物蒸着材を用いて、真空蒸着を行い、金属酸化物蒸着膜を得ることを特徴とする金属酸化物蒸着膜の製造方法。
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