以下、本発明の実施の形態による刺繍機として多頭式自動刺繍機を例に挙げ、添付図面の図1ないし図10に従って詳細に説明する。
図中、1は多頭式自動刺繍機の本体部分を構成する刺繍用の基台で、該基台1は、図1に示すように左,右に離間した側枠2,3により支持され、前,後方向と左,右方向とに水平に延びて配置されている。側枠2,3間には、基台1の上方に位置して左,右方向に延びるヘッド支持体4が固定して設けられている。
5はヘッド支持体4の前部側に複数個設けられた刺繍機のヘッド部で、これらのヘッド部5は、基台1上に合計6個設けられ、例えば6頭式のミシンヘッドを構成している。なお、これは1つの例を示すものであり、基台1上には、例えば2頭〜56頭に及ぶヘッド部5等が設けられる機種もある。
そして、これらのヘッド部5は、図2に示す如くヘッド本体6と、該ヘッド本体6の前面側に設けられ、ヘッド本体6に対して左,右(図2中の矢示A,B方向)に移動可能となった可動支持体としての針棒ケース7と、該針棒ケース7上に設けられ、後述の色替え機構10により針棒ケース7と一緒に左,右方向に移動される後述の糸調子台12とを含んで構成されている。
また、各ヘッド部5のヘッド本体6には、図4に示す主軸モータ8により主軸9(図2参照)を介して駆動される天秤駆動部および針棒駆動部(いずれも図示せず)等が設けられ、これらの駆動部により後述の天秤14と針棒15とがそれぞれ上,下に駆動されるものである。主軸モータ8は、例えば図1に示すヘッド支持体4の背面側等に設けられている。さらに、ヘッド本体6には、図4に示す色替え機構10が設けられている。この色替え機構10は、針棒ケース7と糸調子台12とを一体に左,右(図2中の矢示A,B方向)へと移動させることにより、後述の色替え作業を行うものである。
11は基台1の上方に位置してヘッド支持体4の上側に配設された上糸収納部としての糸立て台である。この糸立て台11には、図1に示すように複数の上糸ボビン11A(例えば、合計54個)が設けられ、これらの上糸ボビン11Aには、例えば赤、青、黄、白、黒色等の複数色の上糸(以下、上糸Sという)が巻回されている。刺繍作業時には、これらの上糸ボビン11Aから色替え機構10により選択された各上糸Sが、後述の天秤14等を用いて引出され、刺繍布等の刺繍対象物(図示せず)に対する多数色の刺繍が後述するミシン針16の運針動作に伴って行われる。
糸立て台11上に着脱可能に設けられた各上糸ボビン11Aは、後述するミシン針16と等しい個数(例えば、9個)で1組となるように配置され、6頭式のミシンヘッド(6個のヘッド部5)に対しては、合計54個の上糸ボビン11Aが糸立て台11に設置される。そして、9個で1組の各上糸ボビン11Aには、夫々の色をもった各上糸Sが巻回状態で巻き取られ、各色の順番はヘッド部5毎に同一色の順番となるように予め設定されている。即ち、各上糸Sの色は、へッド部5毎に異なった色となることがないように、刺繍機の運転準備作業が行われるものである。
12は糸立て台11と天秤14との間に位置してヘッド部5に設けられた糸道形成台としての糸調子台で、該糸調子台12には、複数(例えば、9個)の糸調子13が設けられている。これらの糸調子13は、糸立て台11の各上糸ボビン11Aから後述の各天秤14に向けて導かれる各上糸Sの張力を個別に調整するものである。
14はヘッド部5の針棒ケース7から前面側に突出して設けられた複数の天秤で、これらの天秤14は、図2に示す如く左,右方向に間隔をもって針棒ケース7内に並列状態で(例えば、合計9個)配設されている。そして、各天秤14は、天秤支持軸(図示せず)により回動可能に支持され、前記ヘッド本体6に設けられた天秤駆動部(図示せず)により主軸9の回転に従って上,下に揺動するように駆動される。
前述した色替え機構10により針棒ケース7を左,右に移動して色替え作業を行うときには、例えば合計9本の天秤14のうちいずれか1本の天秤14が色替え機構10で選択され、選択された天秤14のみが上,下に揺動される。また、選択されていない残余の天秤14は、天秤保持機構(図示せず)により予め決められた待機位置に保持され、その後に色替え機構10で選択されるまでは、この待機位置に停止し続けるものである。
15は天秤14の下側に位置して針棒ケース7内に設けられた複数(例えば、9個)の針棒で、該各針棒15の下端側には、それぞれミシン針16が着脱可能に装着されている。そして、これらの針棒15およびミシン針16は、ヘッド本体6に設けられた針棒駆動部(図示せず)により主軸9の回転に従って上,下に駆動される。
また、これらの針棒15、ミシン針16についても、天秤14と同様に色替え機構10により選択され、選択された針棒15のみがミシン針16と共に上,下に往復動される。そして、色替え機構10で選択されていない残余の針棒15は、ミシン針16と一緒に図2に示す如く上死点位置に留まり、色替え機構10で選択されるまでは上死点位置に保持されるものである。
17は各ヘッド部5の下側に位置して刺繍機の基台1上に配設された刺繍用枠としての移動枠である。この移動枠17は、図1に示すように長方形状の四角枠として形成され、例えば合計6個のヘッド部5の下側で前記刺繍布等を展張状態で保持する。そして、移動枠17は、枠移動モータ等からなる枠移動機構18により前記刺繍布と一緒に基台1上を左,右方向(例えば、X軸方向)と前,後方向(例えば、Y軸方向)とに水平方向に枠移動されるものである。
この場合、枠移動機構18のモータは、基台1の下面側または背面側に設けられ、前述した主軸モータ8等と共に刺繍機の駆動源を構成するものである。そして、枠移動機構18により移動枠17が枠移動されるときには、これにほぼ連動して各ヘッド部5側のミシン針16が上,下に運針されることによって、刺繍布等には刺繍データに対応した刺繍柄がヘッド部5毎に実現されるものである。
19は各ヘッド部5の下側に位置して基台1に設けられた複数の針板で、これらの針板19は、図1に示すように各ヘッド部5と上,下で対向して合計6個配置されている。移動枠17に刺繍布をセットした状態では、この刺繍布により各針板19は上側から完全に覆われる。また、各針板19には、色替え機構10により選択されたミシン針16と上,下で対向する位置に針孔19A(図2参照)が穿設されている。この針孔19A内には、各ヘッド部5側でミシン針16を運針するときに下糸側の回転釜(図示せず)に向けて当該ミシン針16が挿入される。
20は刺繍機の制御装置で、該制御装置20は、基台1上に設けられた操作制御装置21と後述の駆動制御装置30とを含んで構成されている。制御装置20は、色替えファンクションを含んだ刺繍データに従って主軸モータ8(即ち、主軸9)の回転を制御しつつ、色替え機構10、枠移動機構18および後述のジャンプ機構32等を駆動制御するものである。
ここで、操作制御装置21は、図1、図2に示すように、例えば一方の側枠3にブラケット22等を介して取付けられ操作制御装置21の外殻をなすユニットケース23と、該ユニットケース23の前面側に設けられオペレータによって手動操作される複数の操作ボタンまたはキースイッチからなる操作部24と、該操作部24の上側に位置してユニットケース23の前面側に配置された四角形の液晶ディスプレイからなる表示部としてのカラー表示器25と、電源スイッチ26と、後述の刺繍制御部27、内部メモリ部28及び入出力制御部29とを含んで構成されている。
操作制御装置21のユニットケース23は、糸立て台11上に設置された各上糸ボビン11Aのうち最も近い位置にある9個の上糸ボビン11A(即ち、1つのヘッド部5に対応して1組となった9個の上糸ボビン11A)に対して予め決められた短い距離(例えば、0.2〜1.5メートル)の範囲内となる位置に設置されている。また、後述する糸色指示書35の載置部36に対しても、操作制御装置21のユニットケース23は、予め決められた短い距離(例えば、0.2〜1.5メートル)の範囲内となる位置に設置されている。これにより、後述の色識別装置34を糸立て台11上の上糸ボビン11Aと、載置部36上の糸色指示書35とに容易に近付けて、それぞれの色の読取り作業を前記短い距離の範囲内で行うことができる。
ここで、操作制御装置21の操作部24には、図3に示す如く、数値入力が可能なテンキー24Aと、該テンキー24Aの左側に配置された4つのキーからなるジョグキー24Bと、該ジョグキー24Bの中央側に配置されたオリジンキー24Cと、ジョグキー24Bおよびテンキー24Aの上側に配置され「A」〜「G」と表記された合計7個のソフトキー24D等とが設けられている。
操作部24のジョグキー24Bは、刺繍データ(プログラム)の選択やパラメータの設定(選択)等を行う機能を有している。また、刺繍機の移動枠17を操作制御装置21からの制御信号で枠移動させるときには、オペレータがジョグキー24Bのうち左,右いずれかのキーを手動で押圧操作(ワンショット)することにより、移動枠17を基台1上でX軸方向に予め決められた移動量(例えば,0.1mm)分だけ枠移動することができる。一方、ジョグキー24Bのうち上,下いずれかのキーを手動で押圧操作したときには、移動枠17を基台1上でY軸方向に予め決められた移動量分だけ枠移動することができる。さらに、移動枠17の移動量を大きくしたいときには、前記ジョグキー24Bを長く押圧操作することにより、その操作時間に応じた移動量分だけ移動枠17は枠移動を続けるものである。
操作部24のオリジンキー24Cは、移動枠17を原点に移動させるキーである。また、移動枠17が原点にいるときに、オリジンキー24Cが押圧操作されると、準備状態の場合に移動枠17は原点に移動する前の位置に移動され、運転状態の場合には最後の刺繍位置に移動される。
操作部24のソフトキー24Dは、カラー表示器25の画面上に表示されるメニューに対応して刺繍データの読込み、書込み、データの入,出力および拡大、縮小等を行うと共に、さらに機械条件の設定、柄変更、柄選択、柄の追加、柄の組合せ、色替え変更等を行う所謂対話キーを構成している。
カラー表示器25は、例えば5〜10インチ以上のカラー液晶モニタを用いて構成され、その画面25A上に後述する刺繍柄37,39のカラー画像(図6、図10参照)と図7、図9に示す画面等とを表示する。また、カラー表示器25は、刺繍機の制御に必要な情報、刺繍機の運転状態、操作部24側での操作内容等を画面25A上に画像表示する機能を有している。
27は操作制御装置21の一部を構成する刺繍制御部で、該刺繍制御部27は、図4に示すように、後述の内部メモリ部28および入出力制御部29との間で信号(情報)の入出力を行い、刺繍機(即ち、主軸モータ8、色替え機構10、枠移動機構18等の各種アクチュエータ)の駆動制御に必要な各種の演算制御処理等を行うものである。
また、刺繍制御部27は、操作部24のキースイッチ(即ち、各キー24A〜24D等)を操作したときの指示信号を操作情報としてCPU(図示せず)に入力する機能と、カラー表示器25の画面上に表示する画像、表示内容等を前記CPUからの信号に従って制御する機能と、前記CPUから主軸モータ8及び枠移動機構18等のモータドライバ、色替え機構10及びジャンプ機構32等のソレノイドドライバ(いずれも図示せず)に向けて出力する信号の制御等を行う機能等とを有している。
ここで、刺繍制御部27は、複数の制御回路を用いて構成され、これらの制御回路のうち制御電流値が小さい制御回路は、操作制御装置21のユニットケース23内に収容して設けられている。一方、刺繍制御部27のうち電流値の高い(または、高電圧を制御する)モータドライバ、ソレノイドドライバ等の制御回路は、後述の駆動制御装置30内に設けられているものである。
28は操作制御装置21の一部を構成する内部メモリ部で、該内部メモリ部28は、操作制御装置21のユニットケース23内に収容して設けられ、例えばROM,RAM,不揮発性のフラッシュメモリ等を用いて構成されている。内部メモリ部28には、刺繍機(即ち、主軸モータ8、色替え機構10、枠移動機構18等の各種アクチュエータ)を駆動制御するために必要な制御データが更新可能に記憶されるものである。また、内部メモリ部28内には、図5に示す自動ティーチングによる色替えファンクションの変更処理用プログラム等が格納されている。
ここで、図5中に示すステップ3〜5は、刺繍データの色替えファンクションを更新する色替えファンクション更新手段の具体例であり、ステップ6は、色替えファンクションが更新された刺繍データによる柄情報をカラー表示器25に出力し該カラー表示器25でデータ更新後の多色刺繍柄を画面表示させる表示制御手段の具体例である。
29は操作制御装置21のインタフェースを構成する入出力制御部で、該入出力制御部29は、内部メモリ部28に対して外部からのデータの入,出力制御を行うものである。ここで、入出力制御部29の接続端子には、後述の外部記憶装置33、色識別装置34等が着脱可能に接続して設けられる。入出力制御部29は、後述の色識別装置34を用いて読取った色識別情報を、操作部24の操作に従って内部メモリ部28に更新可能に記憶させる制御等を行う。また、入出力制御部29には、例えば通信回線を介して外部の編集機、柄作成機(いずれも図示せず)等が必要に応じて接続される。
30は操作制御装置21に近い位置で基台1の下側等に配設された駆動制御装置で、該駆動制御装置30は、基台1上に設けられた操作制御装置21と共に制御装置20を構成している。ここで、制御装置20の入力側には、図4に示す如く、操作制御装置21の操作部24、糸切れセンサ31、後述の外部記憶装置33および色識別装置34等が接続されている。また、制御装置20の出力側には、主軸モータ8、色替え機構10、枠移動機構18、カラー表示器25およびジャンプ機構32等が接続されている。
ここで、糸切れセンサ31は、各ヘッド部5の糸調子台12にそれぞれ設けられ、各上糸Sに糸切れが発生したか否かを個別に検出するものである。また、ジャンプ機構32は、各ヘッド部5に設けられたロータリソレノイド等からなり、針棒15と一緒にミシン針16をジャンプ制御するものである。即ち、ジャンプ機構32は、制御装置20(駆動制御装置30)によってジャンプ制御される間、ミシン針16を運針停止状態に保持し、ジャンプ制御が解除されると、ミシン針16の運針動作を許すものである。
33は制御装置20(操作制御装置21)の入出力制御部29に着脱可能に接続される外部記憶装置で、この外部記憶装置33は、例えばUSBメモリ等のように不揮発性のフラッシュメモリを内蔵した持ち運び可能な記憶媒体、または小型のハードディスク装置等により構成されている。外部記憶装置33は、例えば刺繍データの作成装置(図示せず)で作成した色替えファンクションを含む刺繍データを、図4に示す内部メモリ部28に更新可能に格納させるとき等に用いるものである。
34は操作制御装置21の入出力制御部29にリード線34Aを介して着脱可能に接続された色識別装置である。この色識別装置34は、オペレータが手動で操作できるようにハンディータイプのカラーセンサとして構成され、その先端側には斜めに傾斜した読取り面34Bが設けられている。色識別装置34の背面側には、オペレータが指先等で押圧(ON,OFF操作)する背面スイッチ34Cが設けられ、該背面スイッチ34CをON操作したときに、色識別装置34は外部から通電される。
色識別装置34の内部には、発光素子として白色LEDと受光素子としてのフォトダイオード(いずれも図示せず)とが設けられている。そして、色識別装置34は、背面スイッチ34CをON操作したときに白色LEDからの白色光を読取り面34Bを介して検出対象物に照射し、その反射光をフォトダイオードで受光することにより、受光した光の波長から検出対象物の色(カラー)を検出するものである。
即ち、刺繍機のオペレータは、色識別装置34を指先等により把持した状態で糸立て台11の各上糸ボビン11Aに近付け、その読取り面34Bを上糸ボビン11Aに巻回された上糸Sに当接させる。この状態で背面スイッチ34Cを指先で押圧(ON操作)して色識別装置34を通電(作動)させることにより、1つの上糸ボビン11Aに巻回された上糸Sの色を色識別情報として読取る。また、その後は他の上糸ボビン11Aに巻回された上糸Sの色を同様に操作して読取り、このような操作を上糸ボビン11A毎に繰り返すことにより各上糸Sの色を個別に識別できるようにする。また、後述の糸色指示書35からも同様に色識別装置34を用いて、刺繍データの色見本となる色の識別情報を後述の如く読取る。
なお、色識別装置34の読取り面34Bは、必ずしも傾斜面である必要はなく、検出対象物(例えば、上糸Sまたは糸色指示書35)に対して平坦に安定して当接させることができる読取り面であればよい。また、色識別装置34の受光素子は、前述したフォトダイオードに限らず、例えばCCDカメラ等の撮像素子によりカラーセンサを構成してもよい。
35は刺繍データの色見本となる糸色指示書で、該糸色指示書35は、例えば図8に示すように、「123456789」という刺繍柄の見本35Aが印刷により表記され、その下側には柄領域「1」、「2」、「3」、「4」、「5」…毎の色見本35Bが、柄領域の順番である柄番「C01」、「C02」、「C03」、「C04」、「C05」、…として同じく印刷により表記されている。
そこで、オペレータは、色識別装置34を把持した状態で糸色指示書35の色見本35Bに近付け、その読取り面34Bを色見本35Bの柄番「C01」、「C02」、「C03」、「C04」、「C05」、…に順次当接させ、この状態で色識別装置34を逐次通電(ON操作)して作動させる。これにより、柄番「C01」、「C02」、「C03」、「C04」、「C05」、…の色は、色識別装置34により色識別情報として読取られる。なお、1例としては、柄番「C01」がブラウン(茶褐色)であり、柄番「C02」が赤色、柄番「C03」がオレンジ色、柄番「C04」が黄色、柄番「C05」が緑色として、それぞれ異なる色で表示されている。
36は刺繍機の基台1上に設けられた糸色指示書35の載置部で、該載置部36は、図1、図2に示すように、操作制御装置21のユニットケース23の近傍位置で、ユニットケース23の前側となる基台1上の所定位置に糸色指示書35を載置するために平坦面として形成されている。糸色指示書35の載置部36は、操作制御装置21のユニットケース23から予め決められた短い距離(例えば、0.2〜1.5メートル)の範囲内となる位置に設置されている。このため、オペレータは、色識別装置34を手動操作により基台1の載置部36に近付けた状態で糸色指示書35の色情報を容易に読取ることができる。
本実施の形態による多頭式刺繍機は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、刺繍機の糸立て台11上には、例えば6個のヘッド部5毎に1組となった9個の上糸ボビン11A(合計で54個の上糸ボビン11A)をそれぞれ設置する。そして、これらの上糸ボビン11Aから個別に引き出される各上糸Sを、糸道形成台となる糸調子台12の前面側へと導きつつ、各糸調子13間で挟持させて各上糸Sの張力を調整できるようにする。次に、各糸調子13の下流側では、各上糸Sを夫々の天秤14の糸挿通孔(図示せず)に挿通しつつ、各ミシン針16へと導くようにする。
次に、この状態で主軸モータ8により主軸9を回転駆動し、ヘッド部5の前記天秤駆動部と針棒駆動部とを作動させると、色替え機構10により選択された針棒15を針棒駆動部によってミシン針16と共に上,下に駆動でき、該ミシン針16を移動枠17側の刺繍布に対して運針することができる。また、色替え機構10により選択された天秤14についても、前記天秤駆動部により主軸9の回転に従って上,下に駆動される。
そして、色替え機構10で選択された所望色の上糸Sは、天秤14の上,下動により糸立て台11上の各上糸ボビン11Aのいずれか1つから糸調子13等を介してミシン針16側に供給される。この間、下糸側の回転釜(図示せず)は、各上糸Sと下糸とを絡めるように回転され、回転釜の回転に伴って下糸の繰出しを行う。これにより、上糸Sはミシン針16の運針動作に伴って移動枠17側の刺繍布に縫付けられ、ミシン針16が刺繍布に縫い目を形成する毎に、この上糸Sがミシン針16側へと給糸され、刺繍データに基づいた刺繍柄が形成される。
ところで、ヘッド部5の各ミシン針16に挿通される上糸Sの色は、それぞれの刺繍機毎に異なる場合がある。一方、タブレット等を用いて作成された刺繍データは、1針毎の色替えファンクションにより色指定を行っているが、ヘッド部5の9本のミシン針16のうち、いずれのミシン針16に何色の上糸Sを挿通するかまでは指定していない。このため、ヘッド部5の各ミシン針16に挿通した糸色と刺繍データの色替えファンクションにより指定された色とは、一致しないことの方が多く、このような不一致の状態で刺繍データに基づいて刺繍を実行した場合には、一の色の上糸Sで刺繍すべき刺繍箇所が他の色の上糸Sで刺繍されてしまい、刺繍柄に色違いが発生してしまう。
そこで、本実施の形態では、実際に刺繍柄の作成作業を行う前の運転準備段階において、図5に示す自動ティーチングによる色替えファンクションの変更処理を行い、刺繍柄に色違い等の問題が発生するのを容易に防ぐことができるようにしている。
即ち、操作制御装置21の電源スイッチ26を投入して図5に示すプログラムがスタートすると、ステップ1で刺繍データの読込みを行う。この場合の刺繍データは、内部メモリ部28に格納されている刺繍データでもよく、外部記憶装置33から新しく読込んだ刺繍データであってもよい。この場合、図6に示すようにカラー表示器25の画面25A上に、「123456789」という刺繍柄37が刺繍データに従って表示される場合を例に挙げて説明する。
次のステップ2では、操作制御装置21の操作部24を操作して自動ティーチングを選択し、カラー表示器25の画面25A上には、図7に示す自動ティーチング画面38を表示させる。ここで、自動ティーチング画面38のうち、刺繍柄37の色表示を行う上欄38Aは、色識別装置34を用いた色読取り前の初期画面であるために、例えば針棒15(ミシン針16)の順番に対応する針番「N01」〜「N12」は、その全ての色表示が空白な状態を示す表示となっている。また、糸色指示書35の色識別情報をカラー表示する下欄38Bについても、色識別装置34を用いた色読取り前の初期画面であるために、柄番「C01」〜「C12」は、その全ての色指定が空白な状態を示す表示となっている。
次のステップ3では、色識別装置34を用いて糸立て台11の各上糸ボビン11Aから各上糸Sの色を色識別情報として読取る。即ち、オペレータは色識別装置34を把持した状態で、糸立て台11の各上糸ボビン11Aに近付け、その読取り面34Bを上糸ボビン11Aに巻回された上糸Sに当接させるようにして上糸ボビン11A毎に上糸Sの色を読取る。
次のステップ4では、オペレータが色識別装置34を把持した状態で、基台1上の載置部36に予め載置された糸色指示書35の色見本35Bに色識別装置34を近付け、その読取り面34Bを色見本35Bの柄番「C01」、「C02」、「C03」、「C04」、「C05」、…に順次当接させる。これにより、柄番「C01」、「C02」、「C03」、「C04」、「C05」、…の色を色識別情報として読取る。
これにより、図9に示す色読取り後の自動ティーチング画面38は、その上欄38Aが各上糸ボビン11Aに巻回された上糸Sの色(即ち、色識別装置34で読取った色)に従って、針番「N01」が例えば緑色で表示され、針番「N02」が黄色で表示されている。また、針番「N03」は赤色、針番「N04」は紫色、針番「N05」はオレンジ色で表示されている。さらに、針番「N06」は茶褐色、針番「N07」は灰色、針番「N08」は黒色、針番「N09」は青色で表示されている。なお、針番「N10」〜「N12」は、それぞれに対応する上糸が存在していないので、空白な状態を示す表示となっている。
一方、図9に示す自動ティーチング画面38の下欄38Bは、糸色指示書35の色見本35Bによる柄番「C01」、「C02」、「C03」、「C04」、「C05」、…の色(即ち、色識別装置34で読取った色)に従って、色替えファンクションにより指定すべき色をカラー表示している。即ち、柄番「C01」はブラウン(茶褐色)を色指定し、柄番「C02」は赤色を色指定し、柄番「C03」はオレンジ色を色指定し、柄番「C04」は黄色を色指定し、柄番「C05」は緑色を色指定している。また、柄番「C06」は青色、柄番「C07」は紫色、柄番「C08」は黒色、柄番「C09」は灰色として、それぞれ異なる色で色指定している。なお、柄番「C010」〜「C012」は、それぞれに対応する色替えファンクションが存在していないので、空白な状態を示す表示となっている。
次に、ステップ5では、前記ステップ3で読取った各上糸Sの色とステップ4で読取った糸色指示書35による色とを比較し、下記の数1の如く両者の色を一致させるように自動ティーチングを実行する。これにより、刺繍データ中の柄番「C01」〜「C09」による色指定が、ヘッド部5毎の各ミシン針16に挿通された上糸Sの色に対応した色指定となるように、刺繍データの色替えファンクションを更新することができる。
そして、次のステップ6では、このように柄番「C01」〜「C09」の色替えファンクションが更新された刺繍データによる柄情報をカラー表示器25に出力し、カラー表示器25の画面25A上で、図10に示すように変更後の刺繍データに基づく多色刺繍柄を表示させる。即ち、図10に示す変更後の刺繍データに基づく刺繍柄39は、「123456789」という刺繍柄39のうち柄領域「1」の柄色が、色見本35Bの柄番「C01」に対応したブラウン(茶褐色)となっている。また、刺繍柄39のうち柄領域「2」の柄色が色見本35Bの柄番「C02」に対応した赤色となり、柄領域「3」の柄色が色見本35Bの柄番「C03」に対応したがオレンジ色となっている。さらに、柄領域「4」の柄色が色見本35Bの柄番「C04」に対応した黄色となり、柄領域「5」の柄色が色見本35Bの柄番「C05」に対応した緑色として表示されている。
即ち、色替えファンクションを自動ティーチングで変更することにより、刺繍柄39の柄領域「1」は、前記数1の如く柄番「C01」に関連付けされた針番「N06」(茶褐色)の上糸Sを用いて刺繍され、柄領域「2」は、柄番「C02」に関連付けされた針番「N03」(赤色)の上糸Sを用いて刺繍される。また、柄領域「3」は、柄番「C03」に関連付けされた針番「N05」(オレンジ色)の上糸Sを用いて刺繍され、柄領域「4」は、柄番「C04」に関連付けされた針番「N02」(黄色)の上糸Sを用いて刺繍され、柄領域「5」は、柄番「C05」に関連付けされた針番「N01」(緑色)の上糸Sを用いて刺繍される。さらに、柄領域「6」、「7」、「8」、「9」についても、それぞれ針番「N09」、「N04」、「N08」、「N07」の上糸Sを用いて刺繍が行われることになる。
かくして、本実施の形態によれば、制御装置20(操作制御装置21)の入出力制御部29には、複数の上糸Sの色を色識別情報として読取り、一方、糸色指示書35に表記された色も色識別情報として読取る色識別装置34を接続して設け、制御装置20の刺繍制御部27は、色識別装置34で読取った各色の上糸Sの色識別情報を糸色指示書35からの色識別情報と比較し、両者の色が一致するように刺繍データの色替えファンクションを更新する色替えファンクション更新手段(図5のステップ5参照)と、色替えファンクションが更新された刺繍データによる柄情報をカラー表示器25に出力し該カラー表示器25で多色刺繍柄を画面表示させる表示制御手段(図5のステップ6参照)とを有する構成としている。
このように、制御装置20の入出力制御部29に接続して設けた色識別装置34により、例えば糸立て台11に設置された複数の上糸ボビン11A毎に上糸Sの色を色識別情報として読取ることができる。また、同様に色識別装置34を用いて、刺繍データの色見本となる糸色指示書35の色も色識別情報として読取ることができる。そして、制御装置20の刺繍制御部27は、色識別装置34で読取った各色の上糸Sの色識別情報を糸色指示書35からの色識別情報と比較して両者の色が一致(即ち、刺繍データ中の色替えファンクションによる色指定が刺繍機の各ミシン針16に挿通された上糸Sの色に対応)した色指定となるように、刺繍データの色替えファンクションを更新することができる。
従って、制御装置20の刺繍制御部27は、このように色替えファンクションが更新された刺繍データによる柄情報をカラー表示器25に出力し、該カラー表示器25で変更後の刺繍データに基づく多色刺繍柄を画面表示させることができる。このため、刺繍機(操作制御装置21)のオペレータは、色識別装置34を前述の如く操作するだけで刺繍データの色替えファンクションを簡単に変更することができ、ファンクション変更時の作業性を向上することができる。しかも、刺繍機による実際の刺繍作業時に、糸色指示書35の色見本35Bに対する色違いの発生をなくすことができる。
また、糸色指示書35は、例えば図8に示す「123456789」という刺繍柄の見本35Aのうち予め決められた色見本35Bとなる柄領域「1」、「2」、「3」、「4」、「5」…毎に異なる指示色をカラーで指定して表記する構成とし、色識別装置34はオペレータの手動操作により糸色指示書35の各指示色を、柄番「C01」、「C02」、「C03」、「C04」、「C05」、…の色識別情報として読取る構成としている。
また、刺繍機の基台1上には、操作制御装置21のユニットケース23の前側となる近傍位置に糸色指示書35を載置するための平坦な載置部36を設け、色識別装置34は、オペレータの手動操作により糸立て台11上の各上糸ボビン11Aに近付けた状態で各上糸Sの色を色識別情報として読取り、載置部36に近付けた状態で糸色指示書35からも色識別情報を読取る構成としている。
これにより、オペレータは、色識別装置34を載置部36に近付けた状態で糸色指示書35の色識別情報を容易に読取ることができる。また、色識別装置34を糸立て台11上の各上糸ボビン11Aに近付けた状態で各上糸Sの色を個別に読取ることができ、色識別装置34を用いた一連の読取り操作を操作制御装置21のユニットケース23の近傍位置で効率的に行うことができる。
従って、本実施の形態によれば、刺繍機の操作制御装置21を操作するオペレータは、色識別装置34を操作するだけで刺繍データの色替えファンクションを簡単に変更することができ、ファンクション変更時の作業性を大幅に向上することができる。また、ファンクション変更後の刺繍データをカラー表示器25の画面25A上にカラー表示できるから、カラー表示を行っているときに配色を確認しつつ、色替えファンクションによる色指定の変更を追加の操作で行うことも可能になる。
さらに、本実施の形態によれば、色替えファンクション変更後の刺繍データを、例えばUSBメモリ等の外部記憶装置33を介して外部に出力することができる。このため、複数の刺繍機等でもファンクション変更後の刺繍データを適宜に利用することができる。しかも、現行の刺繍機にも高い汎用性をもって適用することができる。
なお、前記実施の形態では、図5に示すプログラムのうち、ステップ3〜5が本発明の構成要件である色替えファンクション変更手段の具体例を示しており、ステップ6が表示制御手段の具体例を示している。
また、前記実施の形態では、糸色指示書35の載置部36を、操作制御装置21のユニットケース23の前側となる基台1上の所定位置に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばユニットケース23の後側となる基台1上の所定位置に糸色指示書の載置部を設ける構成としてもよい。この場合、操作制御装置21のユニットケース23をブラケット22上で後ろ向きに回転(例えば、約90〜200度の範囲で首振りするように回転)させて、カラー表示器25の画面表示を確認しながら、操作部24および色識別装置34等を手動で操作できる構成としてもよい。
さらに、前記実施の形態では、合計6個のヘッド部5を備えた多頭式自動刺繍機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば単一のヘッド部からなる単頭式自動刺繍機に適用してもよく、さらに、2頭以上のヘッド部を備えた刺繍機にも適用できるものである。