JP5380888B2 - グルコースの定量方法ならびに定量組成物 - Google Patents

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本発明は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコースセンサにおいて、グルコースに応答して発生するシグナル強度を向上させる方法に関する。
血中グルコース濃度の測定は、糖尿病患者が適当な血糖コントロールを行うにあたって必要不可欠である。日常的に血糖値をチェックするために使われるのは簡易型自己血糖測定キットであり、グルコースオキシダーゼ(GOD)もしくはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を利用したものが知られている。GODは血糖測定用酵素として古くから用いられているが、溶存酸素が測定値に影響を与えることから、近年ではGDHを用いたものが主流となってきている。GDHを原料としたグルコースセンサは、GDHの以下の反応を利用して血液中のグルコース濃度を測定するものである。
D−グルコース + 電子受容体(酸化型) →
D−グルコノ−δ−ラクトン + 電子受容体(還元型)
すなわち、グルコースを酸化することによって生じる電子の流れを測定することにより、グルコースの定量を可能にしている。これまでに血糖測定に用いられているGDHとしては、反応に要する補酵素の違いから、ニコチンアミド依存型、ピロロキノリンキノン(PQQ)依存型、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存型の3種類が知られている。ニコチンアミド依存型としてはバチルス属由来のものが市販されているが、補酵素を含んだホロ酵素の状態で精製することができないため、センサを作製するにあたって補酵素となるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)などを加えなければならない。この煩雑さ及び補酵素となるNAD等が高価であることが問題点として挙げられる。一方、PQQ依存型GDHはホロ酵素での提供が可能であり、また比活性が高くグルコースに対する十分な応答シグナルを得られるという利点がある一方で、基質特異性の厳密さに欠け、マルトース等のグルコース以外の糖類にも反応してしまう点が問題視されている。これらの問題点をクリアしうるものとして、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存型GDHが浸透しつつある。
血糖センサの特性としてグルコース以外の糖類に反応しない高い基質特異性を持たせることは、正確な血糖値を得るために重要な事柄であるが、血糖測定の感度もまたセンサの開発にあたって重視される事柄である。グルコースセンサ上のFAD依存型GDHの単位量あたりの応答シグナルの強度を増大させることができれば、グルコースセンサにおいて検出可能な濃度範囲の下限値を高めることが可能である。また別の観点からは、応答シグナル強度の増大を実現することにより、グルコース定量におけるFAD依存型GDHの必要量を低減してセンサ作製のコストを低減するという優位さを生み出すことにもつながる。さらに別の観点からは、応答シグナルを積算してグルコース濃度の定量を行う場合にあっては、濃度の算出に必要な応答シグナル値を積算に要する時間を低減でき、それによってグルコース定量に要する時間を低減するという優位さを生み出すことにもつながる。
WO2004/58958
したがって、本発明の目的は、グルコースセンサにおいてFAD依存型GDHがグルコースと反応して生じる応答シグナルを増大させることである。
本発明者らは、センサ上のGDHおよび電子受容体を含む組成物中に促進剤を加えることでGDHがグルコースと反応して電子を電子受容体へ供与するまでの過程を促進し、結果として血糖センサにおける血糖値算出までの時間を短縮可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
[項1]
フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼを用いてグルコースを定量する過程において、少なくともグルコースデヒドロゲナーゼおよび電子受容体を含む組成物中に、N−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質を共存させてなる、応答シグナルを増大させる方法。
[項2]
少なくともグルコースデヒドロゲナーゼおよび電子受容体を含む組成物が、グルコースセンサ上の反応層中に存在することを特徴とする項1に記載の応答シグナルを増大させる方法。
[項3]
応答シグナルが電気化学シグナルであることを特徴とする項1または2に記載の方法。
[項4]
N−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼおよび電子受容体を含んでなるグルコース定量用組成物。
[項5]
項4に記載する組成物を反応層中に固定してなるグルコースセンサ。
本発明により、FAD依存型GDHを用いたグルコースセンサ上においてグルコースを酸化して電子受容体へ電子を供与する過程を促進することができ、結果としてグルコースに応答して得られるシグナル強度を高め、グルコース濃度算出に要するシグナルを短時間に得ることができる。すなわちFAD依存型GDHを用いたグルコースセンサにおける血糖値算出までの所要時間を短縮し、使用者の煩労を低減することができる。
本発明は、FAD依存型GDHを含むグルコースセンサ上の組成に添加剤を加えて反応を促進させる方法に関する。より具体的には、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼを用いてグルコースを定量する過程において、少なくともグルコースデヒドロゲナーゼおよび電子受容体を含む組成物中に、反応促進剤としてN−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質を添加することにより、グルコースに応答して発生する応答シグナル強度を増大させる方法である。
また本発明は、グルコースに応答して発生する応答シグナル強度を増大させる組成を含むグルコースセンサに関し、より具体的には、少なくともフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ、および電子受容体から構成される組成物中に、さらに反応促進剤としてN−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質を含んでなるグルコースセンサである。
本発明に述べる応答シグナルとは、GDHがグルコースを酸化させることにより発生する電子の量に比例して発生する計測可能な発色・退色もしくは電流のことを示し、これらを数値化することでグルコースの定量が可能となる。すなわちシグナル強度の増大とは、これら発色・退色もしくは電流の発生する度合いが増大することを意味する。
組成中へのADA、Bis−Tris、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質の反応促進剤としての添加量は、GDHがグルコースを酸化して得られる電子を電子受容体に供与する反応を促進する効果が得られる範囲であれば特に限定しないが、液状での濃度として好ましい下限は1mM以上であり、より好ましくは5mM以上であり、さらに好ましくは10mM以上である。液状での濃度として好ましい上限は200mM以下であり、さらに好ましくは100mM以下である。本発明の反応促進剤はセンサ作製時に組成中に混合してもよく、また血糖測定時に添加してもよい。あるいは、測定対象となる血液中に添加するかもしくは血液を希釈する場合においては希釈溶液中に含有させてもよい。
本発明に用いるFAD依存型GDHとしては、FADを補酵素とし、かつグルコースを酸化してD−グルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する酵素であれば特に限定しない。このようなFAD依存型GDHの例としては、アスペルギルス・テレウス由来、アスペルギルス・オリゼ由来、ペニシリウム・リラシノエキヌラタム由来、およびペニシリウム・イタリカム由来のGDHが例示される。さらに該GDHは由来する微生物を培養して得られた酵素であってもよく、また該GDHをコードする遺伝子を宿主細胞に形質転換し、組換え発現させて得られた酵素であってもよい。さらに、該GDHをコードする遺伝子に遺伝子工学的に変異を導入した上で発現させることによって得られる変異型GDHであってもよい。
本発明に用いる電子受容体としては、GDHの補酵素であるFADから電子を受け取り、場合によっては発色物質や電極に電子を供与しうるものが挙げられ、たとえばフェリシアン化物塩、フェナジンエトサルフェート、フェナジンメトサルフェート、フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン、1−メトキシ−フェナジンメトサルフェート、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、ニトロソアニリン、フェロセン誘導体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体等が例示されるが、これらに限定されない。
上記のフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ、電子受容体、および反応促進剤としてのN−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質から構成される組成物の中には、さらに緩衝剤成分、界面活性剤、タンパク質安定化剤、親水性ポリマー等を含んでいてもよく、あるいはGDHを保持するための担体を含んでもよい。該担体にはGDHを吸着させるための官能基および該官能基と該担体とを繋ぐスペーサーを有していてもよい。
本発明においてGDHおよび電子受容体を含む組成物に緩衝能を持たせる場合においては、反応促進剤であるADA、Bis−Tris、イミダゾール自体の有する緩衝能を利用してもよく、また他のバッファー成分を使用してもよい。バッファー成分としてはリン酸塩、ホウ酸塩、酢酸や各種ジカルボン酸等の有機酸塩、アミノ酸、トリス塩酸塩、GOODのバッファー等が挙げられるがこれらに限定されない。反応促進剤を緩衝剤として用いる場合を含めて、緩衝剤の添加量は保存中及び反応の前後でpHの変動を抑えることができる範囲であれば限定しないが、好ましくは液状における濃度(GDHを含む固体のマトリクスであれば溶解後の濃度)の下限が1mM以上であり、より好ましくは5mM以上であり、さらに好ましくは10mM以上である。液状における濃度の好ましい上限は200mM以下であり、さらに好ましくは100mM以下である。
また、組成物は酵素安定化剤として糖アルコール、アミノ酸、グリセロール、ウシ血清アルブミンに代表されるタンパク質等を含んでもよい。あるいはプルラン、デキストラン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースなどに代表される親水性ポリマーを賦形剤として含んでもよく、あるいはTritonX−100、Tween20、デオキシコール酸ナトリウム等に代表される界面活性剤をさらに含んでもよい。
本発明の血糖センサは、比色式であってもよく、また電気化学式であってもよい。またセンサにはグルコースに応答して得られたシグナル強度から血糖値を算出するための演算装置並びに算出された血糖値を表示するためのディスプレイを具備していてもよい。さらに該血糖センサは、反応層上に検体となる血液もしくは血液の希釈液を滴下するタイプであってもよいが、被検者の皮膚を窄孔し血液を採取するための針及び/または血液を移送させる流路を具備するかまたは装着可能であってもよい。比色式センサの場合はさらに吸光度を測定するための光源ランプおよび光度計を具備していてもよい。電気化学式センサの場合は作用極と対極を有しているかこれら電極上にGDHおよび電子受容体を保持したチップを装着できるタイプであってもよい。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上にGDHを固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどを用いる方法があり、電子受容体とともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いてGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
グルコース濃度の測定は、比色式グルコースセンサの場合にあっては例えば以下のようにして行うことができる。グルコースセンサ上の反応層にはFAD依存型GDH、電子受容体、そして反応促進剤としてN−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質を含む液状もしくは固体状の組成物を保持させておく。ここで、必要に応じてpH緩衝剤、発色試薬を添加する。ここにグルコースを含む試料を加え、一定時間反応させる。この間、還元により退色する電子受容体もしくは電子受容体より電子を受け取ることで重合し生成する色素の最大吸収波長に相当する吸光度をモニタリングする。レート法であれば吸光度の時間あたりの変化率から、エンドポイント法であれば試料中のグルコースがすべて酸化された時点までの吸光度変化より、あらかじめ標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブを元に試料中のグルコース濃度を算出することができる。この方法において使用できるメディエーター及び発色試薬としては、たとえば2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)を電子受容体として添加し、600nmにおける吸光度の減少をモニタリングすることでグルコースの定量が可能である。また、電子受容体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)を、さらに発色試薬としてニトロテトラゾリウムブルー(NTB)を加え、570nm吸光度を測定することにより生成するジホルマザンの量を決定し、グルコース濃度を算出することが可能である。いうまでもなく使用する電子受容体および発色試薬はこれらに限定されない。
またグルコース濃度の測定は、電気化学式センサの場合にあっては以下のようにして行うことができる。グルコースセンサ上の電極に接続された反応層にはFAD依存型GDH、電子受容体、そして反応促進剤としてN−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質を含む液状もしくは固体状の組成物を保持させておく。この組成物にはさらにpH緩衝剤等を含んでいてもよい。ここにグルコースを含む試料を加えて反応させ、さらに電極に一定の電圧を印加する。電流をモニタリングし、電圧印加開始から一定時間に蓄積される電流を積算するかあるいは電圧印加開始から一定時間を経過したある時点での電流値を測定する。この値を元に、標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い試料中のグルコース濃度を計算することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
電気化学式センサにおける応答シグナルの増大
まず、グルコース測定用試薬として、以下の組成からなる溶液(pH=7.0)を作製した。
16mM リン酸カリウム
10mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)
5000U/ml FAD依存型GDH(アスペルギルス・オリゼ由来)
20mM or 100mM 反応促進剤
上記溶液15μLを、3電極を具備するディスポーサブルチップ(DEP−CHIP、バイオデバイステクノロジーズ社製)の作用極上に滴下することでセンサチップとし、ポテンショ/ガルバノスタットに接続した。この作用極上の組成物に30mMの標準グルコース溶液15μLを添加してグルコースの終濃度が15mMとなった状態で+0.15Vの電圧を印加し、電流値をモニタリングした。電圧印加から1秒後の電流値を応答シグナルとして測定し、反応促進剤を含まない条件での応答シグナルとの比較を行った。なお、この測定方法における反応促進剤の最終濃度は10mMもしくは50mMである。結果を表1に示す。
Figure 0005380888
なお、表中の相対値は、反応促進剤を含まない条件での応答値を100として換算した値である。N−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールのいずれも、電気化学センサにおける応答シグナルを増大させる効果があることが確認された。
本発明は、血糖値測定用試薬、血糖センサ並びにグルコース濃度定量キットとしての供給が可能であり、また血液その他の試料中のグルコースの定量において有効な方法である。

Claims (3)

  1. フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼを用いてグルコースを定量する過程において、少なくともグルコースデヒドロゲナーゼおよび電子受容体を含む組成物中に、N−(2−アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質をシグナル増強剤として共存させてなる、応答シグナルを増大させる方法。
  2. 少なくともグルコースデヒドロゲナーゼおよび電子受容体を含む組成物が、グルコースセンサ上の反応層中に存在することを特徴とする請求項1に記載の応答シグナルを増大させる方法。
  3. 応答シグナルが電気化学シグナルであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
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