本発明の実施の形態と実施例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態と実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本発明は、光電変換を行うシリコンに対し、レーザビームの光強度を周期的に変化させる光変調手段を介してレーザビームを照射することで、シリコン層に凹凸構造を形成するものである。以下、図面を参照して説明する。
図1(A)乃至(D)は、光変調手段の一形態である位相シフトマスク10を介してレーザビーム20を照射し、シリコン30に凹凸を形成する工程を説明するための図である。
図1(A)において、光変調手段は、レーザビームの光強度を周期的に変調させる。本形態では、光変調手段として、位相シフトマスク(Phase−Shift Mask)10を適用し、レーザビームの位相を周期的に変調させることで、周期的に変調する光強度分布を得る例を示す。ここで、位相シフトマスクとは、隣接するパターンの透過光の位相をπずらすものである。このような位相シフトマスク10は、レーザビームを透過する材料で形成すればよく、好ましくは平滑性が高く且つレーザビームを透過する基板を加工して形成するとよい。具体的には、石英ガラス基板を加工するのが好ましく、例えば石英ガラス基板に周期的な溝を形成することで凹部と凸部とを形成して位相シフトマスク10とすることができる。本形態では、光変調手段である位相シフトマスク10の凹部12を通過したレーザビーム20では位相は反転せず、凸部14を通過したレーザビーム20は位相がπ反転するものとする。そして、凹部12を通過したレーザビームに相当する位相が反転しない光と、凸部14を通過したレーザビームに相当する位相が反転する光と、が干渉することで、該干渉する光の位相差が異なることにより光強度が弱められる位置が存在して、光強度分布の強弱のコントラストが明確になる。その結果、周期的に変調する光強度分布を得ることができる。
なお、位相シフトマスク10は、凹部の面と凸部の面の高低差(段差Δt)や凹部と凸部の間隔(ピッチ)などを実施者が適宜設計することで、所望の光強度分布を得ることができる。ここで、段差Δtは、レーザビーム20の波長λ、位相シフトマスクの材料中における光の屈折率n1及び空気中における光の屈折率n0から、以下の数式(1)により求められる。
ここで、位相シフトマスクの材料として石英ガラス基板を適用し、レーザビーム20として波長308nmのXeClエキシマレーザを適用する一例を示す。この場合、屈折率n1≒1.486、屈折率n0≒1.000、波長λ=308nmであり、上述の数式1に代入すると段差Δt≒316nmとなる。したがって、段差Δt=316nmとなるように、石英ガラス基板を加工して凹凸を形成することで、所望の位相シフトマスクとすることができる。
レーザビーム20は、光変調手段を通過させることで、光変調手段に形成されたパターンなどに対応して位相が変調され、周期的に変調された光強度分布が付与される。ここで、図1(B)に、光変調手段である位相シフトマスク10を通過したレーザビーム20の位相21を模式的に示す。また、図1(C)に、位相シフトマスク10を通過したレーザビーム20の光強度分布25を模式的に示す。図1(C)の縦軸は光強度を示し、横軸はシリコン表面上の照射面の位置を示している。
例えば、位相シフトマスク10を通過したレーザビーム20は、凹部12を通過する光は位相が反転せず、凸部14を通過する光は位相が反転し、図1(B)に示すような位相21を示す。そして、位相が反転しない光と、位相が反転する光と、の干渉により、図1(C)に示すような光強度分布25が得られる。光強度分布25は、位相21のピーク22(図示しているのはピーク22a、ピーク22b、ピーク22c、ピーク22d、ピーク22e)及び底23(図示しているのは、底23a、底23b、底23c、底23d)に対応して、光強度の極大点を示す。また、光強度分布25は、位相が反転する境界で、光強度の極小点を示す。つまり、光変調手段を通過したレーザビームの光強度分布は、光変調手段に形成されたパターンを反映して、極大点と極小点を繰り返す分布をとることができる。図1(C)に示す光強度分布25は、位相シフトマスク10のパターン形状を反映しており、極大点24(図示しているのは極大点24a、極大点24b、極大点24c、極大点24d、極大点24e、極大点24f、極大点24g、極大点24h、極大点24i)と極小点26(図示しているのは極小点26a、極小点26b、極小点26c、極小点26d、極小点26e、極小点26f、極小点26g、極小点26h)が周期的に現れている。
レーザビーム20は、シリコン30が吸収する波長域の範囲内の波長を有するものを用いる。例えば、レーザビーム20の波長は、100nm以上800nm以下、好ましくは300nm以上750nm以下の範囲にあることが好ましい。また、レーザビーム20は、シリコン30の吸収波長域範囲内でも、短波長である方が好ましい。これは、短波長の方がシリコンの吸収係数が大きくなるため、シリコンを溶融させるために必要なレーザビーム20のエネルギーを小さくすることができるからである。なお、レーザビーム20としては、レーザの基本波だけでなく、高調波(代表的には第2高調波や第3高調波)を適用することができる。
レーザビーム20としては、連続発振型のレーザ又はパルス発振型のレーザから射出されるレーザビームを適用することができる。前記連続発振型のレーザとしては、連続発振型の固体レーザ又は気体レーザを用いる。また、パルス発振型のレーザとしては、パルス発振型の固体レーザ又は気体レーザを用いる。以下に、利用可能なレーザの例を挙げる。例えば、固体レーザとしてはYAGレーザ、YVO4レーザ、フォルステライト(Mg2SiO4)レーザ、GdVO4レーザ、Y2O3レーザ若しくはこれらのレーザにドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、アレキサンドライトレーザ、チタンサファイアレーザ、ルビーレーザ、又はガラスレーザなどが挙げられる。また、気体レーザとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、又は金属蒸気レーザなどが挙げられる。
シリコン30は、単結晶シリコン又は多結晶シリコンとする。また、シリコン30はバルクでも薄膜でも良いが、レーザビーム20の波長と同程度の膜厚、又はレーザビーム20の波長の3分の1以上の膜厚を有することが好ましい。シリコン30をこのような膜厚としてレーザビーム20を照射することで、シリコン30を容易に溶融させることができ、周期的に凹凸(突起)を形成しやすくなる。
位相シフトマスク10を介してレーザビーム20をシリコン30に照射することで、表面に凹凸を形成する。以下、この原理について説明する。位相シフトマスク10を介してレーザビーム20をシリコン30に照射することで、シリコン30を溶融し、再結晶化させる。レーザビーム20は、例えば光強度分布25をとるものとする。光強度分布25の極小点26(ここでは極小点26a〜極小点26h)に相当する領域は、他の領域と比較して照射されるレーザビームの光強度が低く、そのため極小点26に相当する領域のシリコン30は十分に溶融しない或いはその他の領域に比べて温度が早く下がる。よって、極小点26(ここでは極小点26a〜極小点26h)に相当する領域に結晶成長の核(結晶核ともいわれる)が形成され、ここから結晶の再成長が行われることになる。つまり、レーザビーム20の照射により溶融したシリコン30は、光強度の低い領域(光強度分布の極小点26の領域)から順次再結晶化が始まり、これが結晶核となり、結晶化の始まりが遅い領域(光強度分布の高い領域、すなわち光強度分布の極大点24の領域)へと結晶成長が進行していく。ここで、光強度分布25は周期的に極大点24と極小点26を繰り返しており、結晶核も周期的に発生する。そして、光強度分布25のような分布の勾配により結晶核から結晶成長が進行し、結晶成長の向きがお互いにぶつかり合うことで表面に突起が形成される。
ここで、隣り合う極小点26bと極小点26c、及びその間に位置する極大点24cの領域を例に挙げて説明する。上述のように極小点26bと極小点26cは光強度が低く、結晶核となる。極大点24cは光強度が高く、極小点26bと極小点26cは、それぞれ極大点24cに向かって、主に横方向に結晶成長が進行していき、ほぼ極大点24c位置の領域で結晶成長がぶつかり合い突起が形成される。同様に、他の極大点位置でも結晶成長がぶつかり合うことで突起が形成される。つまり、隣り合う極小点26に相当する領域からは、その間に位置する極大点24に向かって結晶成長が進行し、お互いにぶつかり合うことで突起が形成され凹凸が生じる。よって、光強度分布25の極大点24位置に対応して突起が形成され、シリコン30に凹凸が形成されることになる。なお、極小点26bに相当する領域からは、隣に位置する極大点24c及び極大点24bの領域に向かって結晶成長が進行する。また、極小点26cに相当する領域からは、隣に位置する極大点24c及び極大点24dの領域に向かって結晶成長が進行する。
このとき、レーザビーム20のエネルギーは、光強度分布25の極小点26においてシリコン30が溶融するように設定する。シリコン30の溶融は完全溶融でも部分溶融でも良いが、好ましくは光強度分布25の極小点26においてシリコン30が部分溶融するように設定する。光強度分布25の極小点26において、シリコン30を部分溶融とすることで、溶融せずに固相のままである領域を結晶核とすることができ、結晶成長の方向をほぼ揃えることができる。結晶成長の方向を揃えることができれば、周期的な突起を容易に形成することができ、その結果周期的な凹凸構造を形成することができる。なお、本明細書における完全溶融とは、シリコン層全体が溶融されて、液相状態になることをいう。部分溶融とは、シリコン層の一部(例えば上層部)は溶融されて液相となるが、その他(例えば下層部)は溶融せずに固相のままであることをいう。
以上により、図1(D)に示すような、突起が形成されることで表面凹凸構造を有するシリコン30を得ることができる。
なお、レーザビームに周期的に変調する光強度分布を付与する光変調手段のパターンは、光電変換装置の光入射面での反射率を考慮し、好適なパターンを実施者が適宜設計すればよい。ここでは、位相シフトマスク10のパターン形状、凹凸のピッチ間隔、凹凸の段差(高低差)は、反射率低減による光電変換効率向上を実現するのに好適な凹凸形状に合わせて決定すればよい。図2(A)、(B)には、その一例である位相シフトマスク50の断面及び平面の模式図を示している。位相シフトマスク50は、石英基板に周期的に溝を形成することで凹凸を形成したものであり、凹部52と凸部54は上面から見てチェッカーフラッグ状(市松模様状)に配置されている。
位相シフトマスク50は、図1に示す位相シフトマスク10と同様の光強度分布を付与するものとし、凹部52を通過するレーザビームの位相は反転せず、凸部54を通過したレーザビームの位相はπ反転するものとする。よって、光強度分布の極大点と極小点は、チェッカーフラッグ状のパターンを反映して格子状に位置することになる。このような位相シフトマスク50を介し、シリコン80に対してレーザビーム70を照射することで、位相シフトマスク50のパターン形状を反映し、格子状に一定のピッチ間隔で突起を形成することができる。よって、図2(C)に示す斜視図のような、表面に周期的な突起が形成された表面凹凸構造を有するシリコン80を得ることができる。
以上のように、光変調手段を介してレーザビームを照射することで、シリコン表面に周期的な凹凸構造を形成することができる。これを、光電変換装置を構成するシリコンに利用して、該光電変換装置の光入射面に凹凸構造を形成することで、入射光の反射を抑えることができる。よって、光の吸収率が向上し光電変換効率を向上させることができるため、光電変換特性の優れた光電変換装置を製造することができる。
また、本形態に係る方法では、シリコンの結晶成長を利用することで周期的な凹凸構造を形成する。よって、シリコン材料を無駄にすることなく、光電変換装置の高効率化を実現することができる。また、レーザビームによる再結晶化を行うことで、結晶欠陥がある場合は修復或いは改善することができる。そのため、光電変換を行うシリコンの結晶欠陥を低減することができ、高効率化を図ることができる。
なお、本形態では、光変調手段として位相シフトマスクを適用する例を示したが、本発明はレーザビームの光強度を周期的に変調させる手段であれば特に限定されない。例えば、位相シフトマスクに代えてスリットパターンを有するマスクを利用することもできる。この場合、周期的なスリットパターンを有するマスクを介してレーザビームを照射することで、透過部と遮光部とで櫛状となる光強度分布を付与することができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本形態では、光変調手段を用いてレーザビームを照射することで、光電変換を行うシリコン層に凹凸を形成する光電変換装置の製造方法及びそれにより製造される光電変換装置の構造について説明する。
図3(A)に、本形態に係る光電変換装置100の上面図の一例を示し、図3(B)に断面図の一例を示す。なお、図3(B)は、図3(A)中のOP切断線に対応する断面図の一例とする。
本形態で示す光電変換装置100は、支持基板110上に単結晶シリコン層を有する第1ユニットセル120が設けられている。第1ユニットセル120の支持基板110側には第1電極116が設けられ、その逆側である第1ユニットセル120の表面側には第2電極132が設けられている。第1ユニットセル120は、第1電極116と第2電極132との間に挟持されている。
支持基板110と第1ユニットセル120との間には、絶縁層112が設けられている。第1電極116は、支持基板110上の絶縁層112と、第1ユニットセル120と、の間に位置している。また、第1電極116と電気的に接続して補助電極134が設けられている。第1電極116と第2電極132は正極に相当する電極又は負極に相当する電極であり、本形態では第1電極116と第2電極132が支持基板110の同じ面側に露出する構成を採用するものとする。また、本形態に係る光電変換装置100は、第2電極132側を主な光入射側とする。
第1ユニットセル120の光入射側表面は、周期的な突起が形成され凹凸構造となっている。表面に形成された突起の高さは、最大高低差(P−V)が50nm以上、好ましくは150nm以上とする。なお、本明細書における最大高低差とは、山頂と谷底の高さの差を示す。また、ここでいう山頂と谷底とはJIS B0601で定義されている「山頂」「谷底」を三次元に拡張したものであり、山頂とは指定面の山において最も標高の高いところ、谷底とは指定面の谷において最も標高の低いところと表現される。本形態では、第2不純物シリコン層128が光入射面となり、表面に突起が形成され凹凸構造となっている。このように光入射面の凹凸構造は、光電変換装置における表面テクスチャ構造として機能し、光電変換効率の向上に寄与することができる。
第1ユニットセル120は、一導電型の第1不純物シリコン層125と、単結晶シリコン層126と、前記一導電型とは逆の導電型の第2不純物シリコン層128と、が順に積層されている。
一導電型の第1不純物シリコン層125と、当該第1不純物シリコン層125とは逆の導電型の第2不純物シリコン層128は、所定の導電型を付与する不純物元素を含むシリコン層である。第1不純物シリコン層125をp型とする場合、第2不純物シリコン層128はn型である。もちろん、第1不純物シリコン層125をn型とし、第2不純物シリコン層128をp型とすることもできる。p型を付与する不純物元素としてはホウ素、アルミニウムなどの元素周期表第13族元素が適用され、n型不純物元素としてはリン、ヒ素などの元素周期表第15族元素が適用される。不純物元素は、イオン注入、イオンドーピング、又はレーザドーピングにより添加することができる。
また、第1不純物シリコン層125は、単結晶シリコン基板の表層部を薄片化した単結晶シリコン層により形成することができる。本形態では、単結晶シリコン基板に水素を含む原料ガスにより生成されるイオン又はクラスターイオンを照射して単結晶シリコン基板中に高濃度の水素を添加し、その後熱処理を行うことにより表層の単結晶シリコンを分離することで、単結晶シリコン層を得る。また、多孔質シリコン層上に単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させた後、多孔質シリコン層をウォータージェットで劈開して分離する方法を適用してもよい。
単結晶シリコン層126は、下層に位置する単結晶シリコン層、本形態では第1不純物シリコン層125をシード層としてエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長層である。以下、便宜上、単結晶シリコン層126を第2単結晶シリコン層126と記す。エピタキシャル成長は固相成長とすることも、気相成長とすることもできる。なお、第2単結晶シリコン層126は、シード層となった単結晶シリコン層(本形態では第1不純物シリコン層125)のエピタキシャル成長層であるため、両者は結晶面、結晶軸(結晶方位)がほぼ揃った結晶となる。また、エピタキシャル成長層である第2単結晶シリコン層126は、真性(i型と表記する)又は微弱なn型(n−型と表記する)となる。
第1ユニットセル120は、光電変換層として太陽光を吸収できる厚さとし、少なくとも厚さ1μm以上とすることが好ましい。例えば、第1ユニットセル120の厚さ1μm乃至20μm、好ましくは1μm乃至10μmとする。
なお、本明細書では、「イオンドーピング」とは原料ガスから生成されるイオンを質量分離せず対象物に照射して該イオンを構成する元素を添加する方式を指す。「イオン注入」は原料ガスから生成されるイオンを質量分離して対象物に照射して該イオンを構成する元素を添加する方式を指す。
第1電極116と第2電極132は、一方が正極、他方が負極に対応する。第1電極116は、第1ユニットセル120の第1不純物シリコン層125側に設けられている。また、第2電極132は、第1ユニットセル120の第2不純物シリコン層128側に設けられている。また、第1電極116と接して補助電極134が形成されている。補助電極134は、第2電極132と同じ面側に露出する。
本形態で示す光電変換装置100は、上面から見たときに格子状(或いは櫛状、櫛形、櫛波状)に第2電極132を形成する。このような形状とするのは、第1ユニットセル120に光が入射できる有効面積をできるだけ大きくするためである。本形態に係る光電変換装置は、第2電極132側が光入射側となるため、第1ユニットセル120表面を覆う第2電極132の面積をできるだけ小さくし、可能な限り第1ユニットセル120の表面を広く露出させることが好ましい。
また、第1ユニットセル120を固定する支持基板110は、絶縁表面を有する基板若しくは絶縁基板を適用する。例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、又はサファイヤ基板などを適用することができる。好ましくは、大面積化が可能で、安価なガラス基板を適用する。
絶縁層112は、支持基板110と第1ユニットセル120との間に設けられる。絶縁層112は、単層膜を形成してもよく、2層以上の積層膜を形成してもよいが、支持基板110(或いは支持基板110に設けられた材料層)と接合面を形成する層は、第1ユニットセル120を支持基板110に固定する層として機能する。本明細書では、このような層を便宜上「接合層」とも呼ぶ。接合面を形成する層、本形態では絶縁層112の最表面を形成する層は、成膜時の平均面粗さ(Ra)が0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。なお、本明細書における平均面粗さ(Ra)とは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう3次元に拡張したものである。接合面を形成する層の成膜時の平均面粗さがより小さいほど、接合面での接合を強固にすることができるため好ましい。なお、絶縁層112としては、不純物拡散を防止するブロッキング層や接合を強固なものにするための応力緩和層などを適宜設けることもできる。
次に、本形態に係る光電変換装置100の製造方法の一例について、図4〜図6を参照して説明する。
単結晶シリコン基板101の一表面側から所定の深さの領域に脆化層108を形成する。また、単結晶シリコン基板101の一表面側に一導電型の不純物シリコン層122、第1電極116および絶縁層112を形成する。不純物シリコン層122、第1電極116及び絶縁層112は、この順で単結晶シリコン基板101の一表面側に積層されるように形成する。
ここで、本明細書における「脆化層」とは、単結晶シリコン基板へイオンを照射することにより脆弱化された領域のことを指し、且つ後述する分割工程(本形態では熱処理により単結晶シリコン基板の分割を行う工程を示す)で単結晶シリコン層と分離単結晶シリコン基板(単結晶シリコン基板)に分割される領域及びその付近のことを指す。なお、上記イオンの照射により、単結晶シリコン基板の照射面側から脆化層までの領域も多少脆弱化される場合もあるが、本明細書の「脆化層」は後に分割される領域及びその付近を指すものとする。
脆化層108、不純物シリコン層122、第1電極116、および絶縁層112の形成順序や形成方法は一通りでなく、少なくとも以下に示す(1)〜(4)の順序が挙げられる。(1)単結晶シリコン基板の一表面上に保護層を形成し、該保護層が形成された面側からイオン又はクラスターイオンを照射して単結晶シリコン基板の所定の深さの領域に脆化層を形成した後、続けて保護層が形成された面側から一導電型を付与する不純物元素を添加して単結晶シリコン基板の一表面側に第1不純物シリコン層を形成する。保護層を除去した後、該保護層が形成されていた表面側である第1不純物シリコン層上に第1電極を形成し、該第1電極上に絶縁層を形成する。(2)単結晶シリコン基板の一表面上に保護層を形成し、該保護層が形成された面側から一導電型を付与する不純物元素を添加して単結晶シリコン基板の一表面側に第1不純物シリコン層を形成した後、続けて保護層が形成された面側からイオン又はクラスターイオンを照射して単結晶シリコン基板の所定の深さの領域に脆化層を形成する。保護層を除去した後、該保護層が形成されていた表面側である第1不純物シリコン層上に第1電極を形成し、該第1電極上に絶縁層を形成する。(3)単結晶シリコン基板の一表面上に第1電極を形成した後、該第1電極が形成された面側からイオン又はクラスターイオンを照射して単結晶シリコン基板の所定の深さの領域に脆化層を形成する。さらに、第1電極が形成された面側から一導電型を付与する不純物元素を添加して単結晶シリコン基板の一表面側に第1不純物シリコン層を形成する。第1電極上に絶縁層を形成する。(4)単結晶シリコン基板の一表面上に第1電極を形成した後、該第1電極が形成された面側から一導電型を付与する不純物元素を添加して単結晶シリコン基板の一表面側に第1不純物シリコン層を形成する。さらに、第1電極が形成された面側からイオン又はクラスターイオンを照射して単結晶シリコン基板の所定の深さの領域に脆化層を形成する。第1電極上に絶縁層を形成する。本形態では、(1)の形成順序を適用する例を説明する。
単結晶シリコン基板101の一表面上に保護層102を形成し(図4(A)参照)、該保護層102が形成された面側からイオン又はクラスターイオンを照射して、単結晶シリコン基板101の一表面側から所定の深さの領域に脆化層108を形成する(図4(B)参照)。
単結晶シリコン基板101は、平面形状は特に限定されないが、後に固定する支持基板が矩形の場合はほぼ四辺形とすることが好ましい。例えば、単結晶シリコン基板101として、p型で1Ωcm乃至40Ωcm程度の単結晶シリコン基板を用いることができる。なお、単結晶シリコン基板に代えて多結晶シリコン基板を適用してもよい。この場合、第1ユニットセル120は単結晶シリコン層でなく多結晶シリコン層を有する。
一般に流通している単結晶シリコン基板は円形状のものが多いが、そのまま用いてもよいし、円形状から所望の形状に切り出すこともできる。例えば、図7(A)に示すように円形の単結晶シリコン基板101aを適用してもよいし、図7(B)、(C)に示すようにほぼ四角形の単結晶シリコン基板101b、単結晶シリコン基板101cを切り出してもよい。図7(B)に示す場合は、円形の単結晶シリコン基板101aに内接する大きさで最大となるように矩形の単結晶シリコン基板101bを切り出す例である。単結晶シリコン基板101bの角部の頂点の角度はほぼ90°である。図7(C)に示す場合は、円形の単結晶シリコン基板101aに内接する最大の矩形領域よりも対辺の間隔が長くなるように単結晶シリコン基板101cを切り出す例である。単結晶シリコン基板101cの角部の頂点の角度は90°とはならず、単結晶シリコン基板101cは矩形ではなく多角形状となる。また、図7(D)に示すように、六角形の単結晶シリコン基板101dを切り出してもよい。図7(D)に示す場合は、円形の単結晶シリコン基板101aに内接する大きさで最大となるように六角形の単結晶シリコン基板101dを切り出す例である。六角形に切り出すことで、矩形とするよりも、切り代となり無駄になる原料を減らすことができる。また、1枚の支持基板に複数の光電変換層を形成し、太陽電池モジュールを形成する場合は、単結晶シリコン基板を六角形に切り出すことができる。1枚の支持基板に複数の光電変換層を形成するためには、まず複数の単結晶シリコン基板を支持基板に貼り合わせる。このとき、六角形の単結晶シリコン基板は、他の多角形よりも隙間なく敷き詰めることが容易であり、他の多角形よりも多数の単結晶シリコン基板を貼り合わせることができる。
図4(A)において、保護層102は、脆化層108や不純物シリコン層122を形成する際に単結晶シリコン基板101表面がエッチングされる、或いは損傷するのを防ぐための層であり、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層又は窒化酸化シリコン層などで形成する。例えば、オゾン水、過酸化水素水又はオゾン雰囲気により、単結晶シリコン基板101表面に厚さ2nm乃至5nmのケミカルオキサイドを保護層102として形成する。熱酸化法や酸素ラジカル処理により、単結晶シリコン基板101表面に厚さ2nm乃至10nmの酸化層を保護層102として形成してもよい。また、プラズマCVD法により、厚さ2nm乃至50nmの保護層102を形成してもよい。
なお、酸化窒化シリコン層とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が50原子%乃至70原子%、窒素が0.5原子%乃至15原子%、シリコンが25原子%乃至35原子%、水素が0.1原子%乃至10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン層とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が5原子%乃至30原子%、窒素が20原子%乃至55原子%、シリコンが25原子%乃至35原子%、水素が10原子%乃至30原子%の範囲で含まれるものをいう。但し、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
脆化層108は、局所的に結晶構造が乱され、脆弱化された領域である。脆化層108は、例えばイオン又はクラスターイオンを照射し、該イオン又はクラスターイオンを構成する元素を添加して形成することができる。ここでは、イオン又はクラスターイオンを照射して、単結晶シリコン基板101の所定の深さの領域に脆化層108を形成する。イオン又はクラスターイオンは、水素を含む原料ガスにより生成することが好ましい。水素を含む原料ガスにより生成したイオン又はクラスターイオンの照射により単結晶シリコン基板101に水素が添加され、脆化層108が形成される。なお、加速電圧に比例して単結晶シリコン基板101のある一定の深さに脆化層108が形成される。なお、水素ではなくフッ素やヘリウムなどを含む原料ガスを用いてイオン又はクラスターイオンを照射し、フッ素やヘリウムを添加してもよい。また、水素とフッ素、或いは水素とヘリウムのように、複数の元素を添加してもよい。水素を含む原料ガスにより生成されるイオン又はクラスターイオンとしては、H+イオン、H2 +イオン、H3 +イオンが挙げられる。好ましくは、照射する全種類のイオン(H+イオン、H2 +イオン、H3 +イオン)の総量に対してH3 +イオンの割合を50%以上、より好ましくはH3 +イオンの割合を80%以上として、脆化層108を形成するとよい。また、質量分離を行わないイオンドーピング装置を用いてイオン又はクラスターイオンを照射することが好ましい。生成される複数のイオンのうち、一種類のイオンの割合を50%以上とすることで、単結晶シリコン基板の同じ深さの領域を集中させて脆弱化させることができる。また、H3 +イオンを用いることで水素の添加効率を向上することができる。イオン又はクラスターイオンの加速電圧及びドーズ量を制御し照射することで、単結晶シリコン基板101の所定の深さの領域に局所的に高濃度のドーピング領域である脆化層108を形成することができる。例えば、脆化層108は、微小な空洞が形成されて多孔質構造となる。水素を添加して脆化層108を形成する場合、脆化層108には、水素原子換算で5×1020atoms/cm3以上の水素を含ませることが好ましい。
なお、イオン又はクラスターイオンを照射する工程は、イオン注入装置を用いて行うこともできる。イオン注入装置は、生成されるイオンを質量分離し、特定の種類のイオンを照射する質量分離型の装置である。したがって、イオン注入装置を用いる場合は、水素を含む原料ガスにより生成されるH+イオン、H2 +イオン又はH3 +イオンのうち、一種類のイオンのみを選択的に照射する。
単結晶シリコン基板101から分離される単結晶シリコン層の厚さ、つまり後に支持基板に固定される単結晶シリコン層の厚さは、脆化層108を形成する深さにより決定される。脆化層108の深さは、イオン又はクラスターイオンを照射する際の加速電圧などによって制御できる。単結晶シリコン基板101から分離される単結晶シリコン層が薄いほど、残る単結晶シリコン基板は厚くなり、その結果繰り返し利用できる回数を増やすことができる。しかし、分離する単結晶シリコン層を薄くするためには脆化層108を浅い領域に形成しなければならず、加速電圧を低くしなければならない。加速電圧を低くするとイオンの照射時間が長くなり、タクトタイムが悪化するため、生産性などを考慮した深さに脆化層108を形成する必要がある。
H3 +イオンを利用することで、H+イオンと比較して、脆化層108を単結晶シリコン基板101の浅い領域に容易に形成することができる。例えば、単結晶シリコン基板101の一表面側から深さAの領域に脆化層108を形成する。H+イオンの加速電圧をBとすると、H3 +イオンの加速電圧は約3Bとすることができる。これは、H3 +イオンが単結晶シリコン基板に照射される際に、単結晶シリコン基板或いはその上層を構成する原子と衝突してH原子やH+イオンなどに分離されるためと考えられる。加速電圧を高くすることができれば、イオンを照射する工程のタクトタイムを短縮することが可能となる。よって、H3 +イオンを利用することで分離する単結晶シリコン層を薄くする場合でも生産性の低下を防ぐことができる。また、分離する単結晶シリコン層を薄くできることで、残る単結晶シリコン基板の繰り返し利用の回数を増やすことができる。
H3 +イオンに代表されるクラスターイオンのドーピングは、水素を含む原料ガスにより水素プラズマを生成し、該水素プラズマ中に生成されるクラスターイオンを質量分離せずに電圧によって加速することにより照射するイオンドーピング装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置を用いることにより、大面積な単結晶シリコン基板101に対しても均一なドーピングを行うことができる。つまり、イオンドーピング法を適用することが好ましい。
例えば、H3 +イオンを主に用いて、ドーズ量1×1016ions/cm2乃至5×1016ions/cm2でイオンドーピング法によりイオン又はクラスターイオンを照射することで水素を添加して、脆化層108を形成することができる。水素原子換算では、3×1016atoms/cm2乃至1.5×1017atoms/cm2の範囲で添加して、脆化層108を形成することができる。
ここで、脆化層108を形成する一例を示す。例えば、単結晶シリコン基板101上に膜厚50nmの保護層102を形成する。そして、原料ガスにH2ガスを用い、加速電圧25kV、RF電力100W、ドーズ量2.2×1016ions/cm2の条件でイオンドーピングを行う。このような条件で脆化層108を形成すると、後の熱処理により、単結晶シリコン基板101からおよそ120nm程度の厚さの単結晶シリコン層を分離することができる。
なお、図4(B)に示すように、イオン又はクラスターイオンを保護層102に照射し、保護層102を通過させてイオン又はクラスターイオンを構成する元素(H+イオン、H2 +イオン、H3 +イオンの場合は水素)を添加させることで、単結晶シリコン基板101表面がエッチングされるなど損傷を受けるのを防ぐことができる。
ここで、図8に、イオン源2000において生成された複数の種類のイオンを、質量分離せずに単結晶シリコン基板101に照射するイオンドーピング装置の構成を説明する概略図の一例を示す。イオン源2000にはガス供給部2004から水素等の所定の原料ガスが供給される。イオン源2000にはフィラメント2001が備えられている。フィラメント電源2002はフィラメント2001へアーク放電電圧を印加し、フィラメント2001に流れる電流を調節する。ガス供給部2004から供給された原料ガスは、排気系により排気される。
イオン源2000で生成されたイオンは、引出し電極系2005によって引き出され、イオンビーム2017を形成する。イオンビーム2017は、載置台2006に置かれた単結晶シリコン基板101に照射される。イオンビーム2017に含まれる複数の種類のイオンの割合は載置台2006の近傍に設けられた質量分析管2007によって計量される。質量分析管2007によって計量されたイオン密度は、質量分析計2008で信号変換され、その結果を電源制御部2003にフィードバックさせるようにしても良い。電源制御部2003はイオン密度の計量結果に従って、フィラメント電源2002を制御することができる。
H3 +イオンの割合を高め、脆化層108に1×1020atoms/cm3以上、好ましくは5×1020atoms/cm3の水素を含ませることができる。単結晶シリコン基板101に局所的に水素の高濃度領域を形成すると、結晶構造が失われ微小な空洞が形成されるため、単結晶シリコン基板101に形成される脆化層108は多孔質構造となっている。そのため、比較的低温(600℃以下)の熱処理によって脆化層108に形成された微小な空洞の体積変化が起こり、脆化層108に沿って単結晶シリコン基板101を分割することができる。脆化層108に含まれる水素濃度は、イオン又はクラスターイオンのドーズ量や加速電圧などによって制御される。
なお、略四辺形で形成される単結晶シリコン基板101の一辺の長さよりも長い線状イオンビームにより、単結晶シリコン基板101の表面を走査してイオン又はクラスターイオンを照射すれば、脆化層108が形成される深さを均一なものとすることができる。
次に、保護層102が形成された面側から一導電型を付与する不純物元素を添加し、単結晶シリコン基板101の一表面側に不純物シリコン層122を形成する(図4(C)参照)。不純物元素は保護層102を通過して単結晶シリコン基板101に添加され、単結晶シリコン基板101と保護層102との間に不純物シリコン層122を形成する。
不純物シリコン層122は、一導電型を付与する不純物元素をイオンドーピング法、イオン注入法、又はレーザドーピング法により添加して形成する。例えば、一導電型を付与する不純物元素としてホウ素を添加し、p型の不純物シリコン層122を形成する。ホウ素の添加は、B2H6、BF3を原料ガスとして、生成されたイオンを質量分離しないで電圧で加速して、生成されるイオン流を基板に照射するイオンドーピング装置を用いて行うことが好ましい。なお、一導電型を付与する不純物元素を添加する原料ガスには、水素や、希ガスを添加してもよく、例えばこの場合、B2H6又はBF3に水素やヘリウムを添加したものを原料ガスとしてもよい。単結晶シリコン基板101の面積が、対角300mmを超えるような大きさであってもイオンビームの照射面積を大きくすることができ、効率良く処理できる。例えば、長辺の長さが300mmを超える線状イオンビームを形成し、該線状イオンビームが、単結晶シリコン基板101の一端から他端まで照射されるように処理すれば、単結晶シリコン基板101の全面に不純物シリコン層122を均一に形成することができる。
また、不純物シリコン層122は、単結晶シリコン又は多結晶シリコンに限定されず、微結晶シリコン又は非晶質シリコンで形成してもよい。例えば、不純物シリコン層122は、プラズマCVD法によりシラン系ガスにジボランなどホウ素を含むドーピングガスを添加した原料ガスを用いて成膜することができる。不純物シリコン層122をプラズマCVD法により形成する場合は、保護層102を形成する前又は保護層102を除去した後で、単結晶シリコン基板101表面上に形成された自然酸化層などは除去してから形成する。不純物シリコン層122を微結晶シリコン又は非晶質シリコンで形成する場合は、キャリア収集効率低下を防ぐため薄く形成することが好ましい。なお、脆化層108を形成する前に不純物シリコン層122を形成する場合は、熱拡散法により形成することもできる。
次に、保護層102を除去した後、不純物シリコン層122上に第1電極116を形成する(図4(D)参照)。
第1電極116は、後に単結晶シリコン基板101を分割するための熱処理温度に耐えうる材料を用いる必要があり、高融点金属であることが好ましい。具体的には、支持基板110の歪み点温度程度の耐熱性が必要である。例えば、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、クロム又はニッケルなどの金属材料を適用する。また、前述の金属材料と、金属材料の窒化物との積層構造とすることもできる。例えば、窒化チタン層とチタン層、窒化タンタル層とタンタル層、窒化タングステン層とタングステン層などの積層構造が挙げられる。窒化物との積層構造とする場合は、不純物シリコン層122と接する面に窒化物を形成する。窒化物を形成することで、第1電極116と不純物シリコン層122との密着性を向上させることができる。また、第1電極116表面は、平均面粗さ(Ra)が0.5nm以下、好ましくは0.3nm以下であるとよい。もちろん、平均面粗さ(Ra)が小さくなるほど好ましいのはいうまでもない。第1電極116表面が平滑性に優れることで、支持基板110との貼り合わせを良好に行うことができる。もちろん、接合面を形成する層(本形態では絶縁層112の最表面を形成する層)として平滑性に優れた層を形成することで貼り合わせを行うことができるが、下層の第1電極116の平滑性が良好であれば、上層の絶縁層112の平滑性も良好としやすい。また、場合によっては、接合面に絶縁層を形成しなくとも、第1電極116と支持基板との間で直接接合を形成することも可能となる。具体的には、チタンを用いて第1電極116を形成すると表面の平滑性に優れるため好ましい。第1電極116は、蒸着法やスパッタリング法により、膜厚100nm以上で形成することができる。不純物シリコン層122上に自然酸化層などが形成されている場合は、除去してから第1電極116を形成する。
第1電極116上に絶縁層112を形成する(図4(E)参照)。絶縁層112は単層膜でも2層以上の積層膜としてもよいが、後に支持基板(或いは支持基板に設けられた材料層)と接合を形成する接合面は平滑性を有することが好ましく、平滑性且つ親水性表面を有するとより好ましい。接合面の平滑性は、具体的には平均面粗さ(Ra)が0.5nm以下、好ましくは0.3nm以下となるように形成すると支持基板との貼り合わせが良好になり好ましい。もちろん、平均面粗さ(Ra)は小さくなるほど好ましいのはいうまでもない。接合面を形成する層、本形態では絶縁層112として、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層又は窒化酸化シリコン層を形成する。絶縁層112の形成方法は、プラズマCVD法、光CVD法、又は熱CVD法(減圧CVD法又は常圧CVD法も含む)などのCVD法を適用すればよく、好ましくはプラズマCVD法を適用することで好適な平滑性を有する層を形成できる。
接合面を形成する層としては、平滑性を有し親水性表面を形成できる層を形成するのが好ましく、具体的には有機シラン系ガスを成膜用の原料ガスに用いてプラズマCVD法により形成される酸化シリコン層が好ましい。このような酸化シリコン層を用いることによって、支持基板と後に形成されるユニットセルとの接合を強固にすることができる。有機シラン系ガスとしては、テトラエトキシシラン(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
また、接合面を形成する層として、シラン、ジシラン、又はトリシラン等のシラン系ガスを成膜用の原料ガスに用いてプラズマCVD法により形成される窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコンを用いることもできる。例えば、成膜用の原料ガスにシランとアンモニアを用いてプラズマCVD法により形成する窒化シリコン層を適用することができる。前記原料ガスに水素を加えてもよい。また、シランとアンモニアに加え、亜酸化窒素を原料ガスに添加して、プラズマCVD法により窒化酸化シリコン層を形成してもよい。
例えば、絶縁層112として、膜厚50nmの酸化窒化シリコン層、膜厚50nmの窒化酸化シリコン層、及び膜厚50nmの酸化シリコン層の積層膜を形成する。これら絶縁層はプラズマCVD法により形成することができる。この場合、接合面を形成する層は酸化シリコン層であり、該酸化シリコン層は成膜後の表面の平均面粗さ(Ra)は0.5nm以下、好ましくは0.3nm以下となるようにすることが好ましい。このような酸化シリコン層は、例えば原料ガスにTEOSガスを用いてプラズマCVD法により形成することができる。また、絶縁層112に窒素を含むシリコン絶縁層、具体的には窒化シリコン層や窒化酸化シリコン層を含むことで、後に貼り合わせる支持基板110からの不純物拡散を防ぐこともできる。
いずれにしても、接合面を形成する層が平滑性を有し、具体的には平均面粗さ(Ra)0.5nm以下、好ましくは0.3nm以下の平滑性を有する絶縁層であれば、シリコンを含む絶縁層に限らず適用することができる。また、第1電極116上に形成する絶縁層112の成膜温度は単結晶シリコン基板101に形成した脆化層108から水素が脱離しない温度とする必要があり、好ましくは350℃以下の成膜温度とする。
単結晶シリコン基板101の一表面側と、支持基板110の一表面側と、を対向させ、貼り合わせる(図5(A)参照)。本形態では、単結晶シリコン基板101に形成された絶縁層112と、支持基板110の一表面側と、を接触させて接合する。接合面は、絶縁層112の一表面(第1電極116と接していない面側)と、支持基板110の一表面となる。
接合面(本形態では絶縁層112の一表面および支持基板110の一表面)は十分に清浄化しておく。これは、接合面に微小なゴミなどのパーティクルが存在すると貼り合わせ不良の要因となるからである。具体的には、接合面をそれぞれ洗浄して清浄化することが好ましい。例えば、周波数100kHz乃至2MHzの超音波と純水を用いた超音波洗浄、メガソニック洗浄、又は窒素と乾燥空気と純水を用いた2流体洗浄を行って、接合面を清浄化する。また、洗浄に用いる純水に二酸化炭素などを添加して、抵抗率を5MΩcm以下に下げ静電気の発生を防ぐようにしてもよい。
単結晶シリコン基板101側の接合面と、支持基板110側の接合面を接触させて接合する。本形態では、絶縁層112の一表面側と、支持基板110の一表面側と、を接触させて接合する。接合は、ファン・デル・ワールス力や水素結合が作用して形成される。例えば、対向させた単結晶シリコン基板101と支持基板110の一箇所を外部から押圧すると、局所的に接合面同士の距離が縮まることによって、ファン・デル・ワールス力や水素結合による接合を接合面全域に広げることができる。例えば、接合面の一方又は双方が親水表面を有する場合は、水酸基や水分子が接着材の役割を果たし、後の熱処理で水分子が拡散し、残留成分がシラノール基(Si−OH)を形成して水素結合により接合を形成する。さらに接合部は、水素が抜けることでシロキサン結合(O−Si−O)を形成して共有結合となり、強固な接合となる。接合面は、両基板(単結晶シリコン基板101と支持基板110)側のそれぞれの接合面(絶縁層112の一表面と支持基板110の一表面)の平均面粗さ(Ra)が0.5nm以下、好ましくは0.3nm以下であるとよい。また、両基板の接合面の平均面粗さ(Ra)の合計が0.7nm以下、好ましくは0.6nm以下、より好ましくは0.4nm以下であるとよい。接合面がこれらの条件を満たすと、貼り合わせを良好に行うことができ、強固な接合を形成できる。
なお、上記特許文献1には、単結晶シリコン基板を電極形成用ペーストの表面に貼り付けて熱処理を行うことにより、電極形成用ペースト中の有機溶媒を蒸発させることで下部電極層を形成するとともに単結晶シリコン板を下部電極層に接着し、電極形成用ペーストが下部電極層の材料および接着剤を兼ねていることが記載されている(特許文献1の図2とその説明参照)。つまり、特許文献1では、下部電極層を形成する電極形成用ペーストが接着剤として機能している。一方、本形態に係る構成は、絶縁層と支持基板とを接触させることで接合を形成しているものであって、接合方法が全く異なるものである。
支持基板110と単結晶シリコン基板101の貼り合わせを良好に行うために、接合面を活性化しておいてもよい。例えば、接合面の一方又は双方に原子ビーム若しくはイオンビームを照射する。原子ビーム若しくはイオンビームを利用する場合には、アルゴン等の不活性ガス中性原子ビーム若しくは不活性ガスイオンビームを用いることができる。その他に、プラズマ処理若しくはラジカル処理を行うことで接合面を活性化することもできる。このような表面処理により、400℃以下の温度であっても異種材料間の接合を形成することが容易となる。また、接合面をオゾン添加水、酸素添加水、水素添加水、又は純水等で洗浄処理してもよい。このような洗浄処理をすることで接合面を親水性にすることができ、接合面の水酸基を増大させ、接合を強固にすることが可能である。また、貼り合わせを良好に行うための表面処理として、接合面をスパッタエッチングしておいてもよい。例えば、真空状態のチャンバーに不活性ガス(例えば、Arガス)及び/又は反応性ガス(例えば、O2ガス、N2ガス)を導入し、被処理面(ここでは、支持基板110の一表面又は絶縁層112の最表面)にバイアス電圧を印加してプラズマ状態とした表面処理を行う。プラズマ中には電子とArの陽イオンが存在し、陰極方向(被処理面側)にArの陽イオンが加速される。加速されたArの陽イオンが被処理面に衝突することによって、被処理面をスパッタエッチングすることができる。このとき、被処理面の凸部から優先的にスパッタエッチングされ、当該被処理面の平滑性を向上することができる。
また、単結晶シリコン基板101と支持基板110とを貼り合わせた後は、熱処理又は加圧処理を行うことが好ましい。熱処理又は加圧処理を行うことで接合強度を高めることができる。熱処理を行う際は、その温度範囲は支持基板110の歪み点温度以下で、且つ単結晶シリコン基板101に形成した脆化層108で体積変化が起きない温度とし、好ましくは200℃以上410℃未満とする。なお、この熱処理は単結晶シリコン基板101の一部を分離するための熱処理前に行いそのまま分離のための熱処理を連続して行ってもよい。また、貼り合わせを行った装置或いは場所で、そのまま連続して200℃以上の熱処理を行い、接合を強固にすることが好ましい。また、加圧処理する場合は、接合面に垂直な方向に圧力が加わるように行い、支持基板110及び単結晶シリコン基板101の耐圧性を考慮して行う。
なお、支持基板110側にも絶縁層を形成しておき、支持基板110上に形成した絶縁層を接合面としてもよい。つまり、支持基板側に設けた絶縁層と、単結晶シリコン基板側に設けた絶縁層と、を接合面として貼り合わせてもよい。また、支持基板110側に窒化シリコン層や窒化酸化シリコン層などの窒素を含有するシリコン絶縁層を形成しておいてもよい。窒素を含有するシリコン絶縁層は、支持基板110からの不純物汚染を防止するブロッキング層として機能できる。
熱処理を行い、単結晶シリコン基板101を分割する。単結晶シリコン基板101の分割は、脆化層108又は当該脆化層108近傍を境として行うことで、支持基板110に固定された単結晶シリコン基板101の一部を分離する。支持基板110上には単結晶シリコン基板101から分離した単結晶シリコン層124が残存し、所謂SOI構造が得られる。以下、便宜上、単結晶シリコン層124を第1単結晶シリコン層124と記す。第1単結晶シリコン層124は、単結晶シリコン基板101とほぼ同じ結晶性を有する。また、単結晶シリコン基板101から第1単結晶シリコン層124が分離された分離単結晶シリコン基板103が得られる(図5(B)参照)。
脆化層108を境として、単結晶シリコン基板101から第1単結晶シリコン層124を分離する熱処理は、410℃以上支持基板110の歪み点温度未満で行うことが好ましい。また、絶縁層112の成膜温度以上で行うことが好ましい。熱処理温度を600℃以上、好ましくは630℃以上支持基板110の歪み点温度未満とすれば、支持基板110を歪ませることなく、不純物シリコン層122に含まれる不純物元素を活性化することができる。例えば、450℃以上700℃未満の温度範囲で熱処理を行うことにより、脆化層108に形成された微小な空洞の体積変化が起こり、脆化層108に沿って単結晶シリコン基板101が分割される。絶縁層112は支持基板110と接合を形成しているので、支持基板110上に第1単結晶シリコン層124が形成される。第1単結晶シリコン層124の厚さは脆化層108の形成深さにほぼ対応する。また、支持基板110と第1単結晶シリコン層124の間には、絶縁層112、第1電極116、不純物シリコン層122が形成されている。
単結晶シリコン基板101から第1単結晶シリコン層124が分離された単結晶シリコン基板である分離単結晶シリコン基板103は、再生処理を行った後、繰り返し利用することができる。分離単結晶シリコン基板103は、光電変換装置を製造する単結晶シリコン基板として利用しても良いし、その他の用途に流用してもよい。単結晶シリコン層を分離するための単結晶シリコン基板として繰り返し利用すれば、1枚の原料基板から複数個の光電変換装置を製造できる。また、分離する第1単結晶シリコン層124の厚さを薄くするほど分離単結晶シリコン基板103を厚くすることができ、繰り返し利用する回数を増やせ、資源を有効活用できる。
第1単結晶シリコン層124に対し、光変調手段を介してレーザビーム152を照射して、周期的な突起により形成される表面凹凸構造を形成する(図5(C)、(D)参照)。表面凹凸構造を形成する方法としては、上述の実施の形態1を適用する。ここでは、光変調手段を通過させることで、レーザビーム152に周期的な強弱が現れるような光強度分布を付与する。レーザビーム152は、第1単結晶シリコン層124の照射面での光強度分布が、光変調手段のパターンを反映した光強度分布となり、周期的に強弱がある光強度分布となる。その結果、第1単結晶シリコン層124の照射面で吸収するレーザビームの光強度に差が生じ、溶融する領域と溶融しきれない領域、又は温度が早く下がる領域とそれより遅く下がる領域のように、第1単結晶シリコン層124の結晶状態に周期的に差を生じさせることができる。例えば、光強度分布の弱の領域は溶融しきれず光強度分布の強の領域は溶融する、或いは光強度分布の弱の領域は温度が早く下がり光強度分布の強の領域は温度が遅く下がるなどである。つまり、光強度分布の強弱が周期的にくるのであれば、前述の溶融しきれない領域と溶融する領域、或いは温度が早く下がる領域と温度が遅く下がる領域も、周期的に現れることになる。そして、光強度分布の弱の領域が結晶核となり、光強度分布の強の領域へと向かって結晶成長が進行する。光変調手段により光強度分布の強弱の領域を周期的に付与することができ、その結果、結晶成長の向きがぶつかり合い、表面に突起を形成して凹凸を形成することができる。
また、本形態では、レーザビーム152の照射により、第1単結晶シリコン層124に下層の不純物シリコン層122が含む不純物元素が拡散するものとし、表面凹凸構造を有する第1不純物シリコン層125が形成される例を示している。もちろん、この場合の第1不純物シリコン層125は、不純物シリコン層122と同じ導電型となる(図5(D)参照)。なお、レーザビーム152の照射条件によっては不純物シリコン層122から不純物元素が拡散することなく、表面凹凸構造を有する単結晶シリコン層を得ることもできる。
本形態では、第1単結晶シリコン層124の分離面上に位相シフトマスク150を配置し、位相シフトマスク150を通過させてレーザビーム152を照射する。位相シフトマスク150は、石英基板に周期的に溝を形成することで交互に凹凸が配置された構成とし、凹部を透過したレーザビーム152は位相が反転せず、凸部を通過したレーザビーム152は位相がπ反転するものとし、その結果、周期的に強弱(極大点と極小点)を繰り返す光強度分布が付与されるものとする。照射されたレーザビームの光強度分布が弱の領域が結晶核となり、光強度分布が強の領域に向かって結晶成長が進行し、結晶成長の向きがぶつかり合うことで突起が形成され、表面に凹凸が形成される。
レーザビーム152については、前述の実施の形態1のレーザビーム20の説明に準じる。具体的には、単結晶シリコンの吸収波長域範囲内の波長を射出できるレーザを用いてレーザビーム152を照射する。また、そのエネルギーは、好ましくは光強度の光強度分布の極小点が照射される領域で第1単結晶シリコン層124が部分溶融され、且つ第1単結晶シリコン層124が蒸発されない範囲が好ましい。例えば、レーザビーム152は、XeClエキシマレーザ又はYAGレーザにより、射出することができる。なお、第1単結晶シリコン層124の厚さをレーザビーム152の波長と同程度とすると、容易にシリコンを溶融させることができる。
ここで、レーザビーム152の照射処理の一例を示す。レーザビーム152として、波長308nm、発振周波数30HzのXeClエキシマレーザを用いて得られるビームを、光学系によってビーム幅(短軸)360μm、長さ(長軸)120mmに成形した線状レーザビームを用いる。第1単結晶シリコン層124が固定された支持基板110をステージに配置し、線状のレーザビーム152の短軸方向と平行な方向にスキャン速度1mm/secでステージを走査しながら、レーザビーム152を照射する。このときのレーザビーム152のエネルギー密度は600mJ/cm2とする。以上のような条件で処理することにより、第1単結晶シリコン層124表面に周期的な突起を形成して表面凹凸構造を形成することができる。
図5(D)には、レーザビームの照射により周期的に突起が形成されて凹凸構造となっている第1不純物シリコン層125が示されている。第1不純物シリコン層125は、図5(B)に示す単結晶シリコン基板101から分離した第1単結晶シリコン層124と比較して、表面の最大高低差(P−V)が大きくなっている。つまり、位相シフトマスク150を介したレーザビーム152の照射前と比較して、照射後のシリコン層表面の最大高低差(P−V)が大きくなっている。例えば、レーザビーム152照射後のシリコン層(本形態では、第1不純物シリコン層125)表面の凹凸構造の高低差(突起の高さ)は、最大高低差(P−V値)が50nm以上、好ましくは150nm以上とする。
なお、単結晶シリコン基板101から分離された第1単結晶シリコン層124(図5(B))は、脆化層形成工程や分割工程などのダメージにより結晶欠陥が生成されやすい。しかし、本形態では、位相シフトマスク150を介してレーザビーム152を照射することで、単結晶シリコン基板から分離した単結晶シリコン層の表面に凹凸を形成するとともに結晶欠陥の修復又は低減を図ることができる。光電変換を行う領域に存在する欠陥はキャリアをトラップするなど、キャリア収集効率を低下させ光電変換効率を低下させる要因となる。また、単結晶シリコン基板から分離した単結晶シリコン層(本形態では第1不純物シリコン層125)は、後にエピタキシャル成長を行う際のシード層となるため、シード層となる領域に結晶欠陥が存在するとうまくエピタキシャル成長が進行しない要因ともなる。本形態では、第1単結晶シリコン層124の上面からレーザビーム152を照射することで、第1単結晶シリコン層124の一部又は全部を溶融するため、溶融後の冷却過程で欠陥を修復することができる。
ここで、波長が紫外領域であるレーザビームを照射して結晶欠陥の修復を図る場合は、第1単結晶シリコン層124の膜厚が200nm以下、さらには100nm以下と薄い方が好ましい。これは、結晶欠陥の修復を図る単結晶シリコン層の厚さを薄くした方が、結晶欠陥の修復に必要なエネルギーを小さくすることができるからである。レーザビームのエネルギーを小さくできれば、その分コスト削減が可能である。
また、レーザビーム152照射のようなレーザ処理は、支持基板110を直接加熱せずに済むため、支持基板110の温度上昇を抑えることができる。そのため、支持基板110として耐熱性の低いガラス基板でも適用することができ好ましい。さらに、上記レーザ処理は第1不純物シリコン層125(又は不純物シリコン層122)の活性化を兼ねることもできる。
第1単結晶シリコン層125上に第2単結晶シリコン層126’を形成する。(図6(A)参照)。第2単結晶シリコン層126’は、単結晶シリコン基板から分離し、レーザビームを照射して表面凹凸構造を形成したシリコン層(本形態では第1不純物シリコン層125)をエピタキシャル成長させて形成する。第2単結晶シリコン層126’は、固相成長又は気相成長で形成することができる。
第2単結晶シリコン層126’を固相成長で形成する例を説明する。第1不純物シリコン層125上にシリコン層を形成する。シリコン層としては非晶質シリコン層をCVD法等により形成すればよく、その厚さは第1不純物シリコン層125の厚さに応じて適宜設定すればよい。そして、熱処理を行い、第1不純物シリコン層125上に形成されたシリコン層をエピタキシャル成長(固相成長)させる。その結果、第1不純物シリコン層125上に第2単結晶シリコン層126’が形成される。なお、熱処理としては、加熱炉、レーザ照射、RTA(Rapid Thermal Annealing)又はこれらを組み合わせて用いることができる。例えば、第1不純物シリコン層125上に非晶質シリコン層を形成した後、RTAにより500℃乃至800℃の温度範囲で5sec乃至180secの熱処理を行うことにより、非晶質シリコン層をエピタキシャル成長させる。一例としては、第1不純物シリコン層125上に厚さ1μmの非晶質シリコン層を形成する。RTA装置を用い、処理温度750℃180secの条件で熱処理を行うことにより、非晶質シリコン層を固相成長させ、第2単結晶シリコン層126’を得ることができる。
また、非晶質シリコン層をCVD法等により形成する代わりに、液体シリコン材料を用いて第1不純物シリコン層125上に非晶質シリコン層を形成することができる。具体的には、第1不純物シリコン層125上に、液体シリコン材料(代表的にはシクロペンタシラン)を用いてスピンコート法やインクジェット法などの塗布法によりポリシラン層を形成した後、該ポリシラン層を焼成して非晶質シリコン層を得る。そして、上述のように熱処理を行うことにより、第1不純物シリコン層125をシード層としてエピタキシャル成長させる。
また、第2単結晶シリコン層126’を気相成長で形成する例を説明する。第1不純物シリコン層125上にシリコン層を成膜すると同時に下層の第1不純物シリコン層125をエピタキシャル成長(気相成長)させ第2単結晶シリコン層126’を形成する。例えば、第1不純物シリコン層125上に、プラズマCVD法により所定の条件でシリコン層を成膜することによって、シリコン層を堆積と同時に第1不純物シリコン層125をシード層としてエピタキシャル成長させることができる。その結果、第1不純物シリコン層125上に第2単結晶シリコン層126’を形成することができる。プラズマCVD法の条件は、例えば微結晶シリコンを成膜する条件で行う。具体的には、シラン、水素を少なくとも含む雰囲気下で、水素ガスの流量をシランガスの流量と比較して50倍以上、好ましくは100倍以上として行う。また、プラズマCVD法の代わりに大気圧プラズマCVD法を適用することもできる。大気圧プラズマCVD法は通常のプラズマCVD法と比べ圧力が高いため、高速成膜を実現できる。
なお、第1不純物シリコン層125表面に単結晶シリコンと異なる材料層、例えば自然酸化層など形成されている場合は、除去してからエピタキシャル成長を行う。単結晶シリコン層上に異なる材料層が形成されていると、エピタキシャル成長が上手く進行しないためである。例えば、自然酸化層はフッ酸を用いて除去することができる。具体的には、フッ酸により第1不純物シリコン層125の表面が撥水性を示すまで処理する。撥水性があることで、第1不純物シリコン層125表面から酸化層が除去されたことを確認できる。また、エピタキシャル成長を行う際、シランなどシラン系ガスを添加する前に、水素と希ガスの混合ガス、例えば水素とヘリウムの混合ガス或いは水素とヘリウムとアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理することで、第1不純物シリコン層125表面の自然酸化層や大気雰囲気元素(酸素、窒素、炭素)を除去することができる。
単結晶シリコン基板から分離される単結晶シリコン層が、光電変換層として太陽光を吸収するために必要とされる厚さ(例えば、1μm)を有している場合は、第2単結晶シリコン層126’を設けなくてもよい。しかし、単結晶シリコン基板から分離される単結晶シリコン層(本形態では第1不純物シリコン層125)を厚くすれば、それだけ剥離後に残る単結晶シリコン基板の厚さは薄くなり、繰り返し利用できる回数が少なくなってしまう。そこで、本形態で示すようにエピタキシャル成長を利用して単結晶シリコン層を厚膜化して太陽光を吸収できる厚さに調整することで、資源(シリコン)の消費量を抑えることができる。また、単結晶シリコン基板から分離された単結晶シリコン層(本形態では第1不純物シリコン層125)は、凹凸を形成するためレーザビームが照射されている。この際に、シード層となる単結晶シリコン基板から分離された単結晶シリコン層(本形態では第1不純物シリコン層125)の結晶欠陥の低減も図ることができる。よって、良好な単結晶シリコン層を厚膜化でき、光電変換効率の向上した光電変換装置を製造することができる。
以上により、第1不純物シリコン層125と、当該第1不純物シリコン層125がエピタキシャル成長された第2単結晶シリコン層126’を得ることができる。第2単結晶シリコン層126’表面には、第1不純物シリコン層125表面の凹凸形状が反映される。つまり、第2単結晶シリコン層126’表面も凹凸形状となる。
第2単結晶シリコン層126’の一表面側(第1不純物シリコン層125と逆側)に第1不純物シリコン層125(不純物シリコン層122)とは逆の導電型を付与する不純物元素を添加し、第2不純物シリコン層128を形成する(図6(B)参照)。本形態では、第2単結晶シリコン層126’の表層側に第2不純物シリコン層128が形成されることで、第2不純物シリコン層128が形成されない部分の第2単結晶シリコン層126’が第2単結晶シリコン層126となる。
例えば、上記図4(C)では不純物シリコン層122にホウ素を添加してp型とする例について示したので、第1不純物シリコン層125(不純物シリコン層122)とは逆の導電型を付与する不純物元素として燐又はヒ素を添加し、n型の第2不純物シリコン層128を形成する。不純物元素の添加はイオンドーピング法、イオン注入法又はレーザドーピング法により行えばよい。例えば、第2不純物シリコン層128は、厚さ50nm乃至100nmで形成する。なお、第2不純物シリコン層128形成後、RTA処理やレーザ処理を行うことにより、第2不純物シリコン層128に含まれる不純物元素の活性化を行うことが好ましい。
また、第2不純物シリコン層128は、単結晶シリコン又は多結晶シリコンに限定されず、微結晶シリコン又は非晶質シリコンで形成してもよい。例えば、第2不純物シリコン層128は、プラズマCVD法によりシラン系ガスにフォスフィンなど燐を含むドーピングガスを添加した原料ガスを用いて形成することができる。第2不純物シリコン層128をプラズマCVD法などで成膜する場合は、第2単結晶シリコン層126’上に形成された自然酸化層などは除去してから形成する。第2不純物シリコン層128を微結晶シリコン又は非晶質シリコンで形成する場合は、キャリアの再結合を防ぐため薄く形成することが好ましい。
また、第2不純物シリコン層128は、エピタキシャル成長により形成することもできる。例えばドーピングガスを混合したシラン系ガスを含む原料ガスを用い、プラズマCVD法により不純物シリコン層を成膜と同時にエピタキシャル成長させて形成することができる。
第2単結晶シリコン層126’に不純物元素を添加して第2不純物シリコン層128を形成する場合、該第2不純物シリコン層128表面は第2単結晶シリコン層126’表面の形状となり、凹凸形状となる。また、第2単結晶シリコン層126’上に第2不純物シリコン層128を成膜する場合も、該第2不純物シリコン層表面は、第2単結晶シリコン層126’表面の凹凸形状が反映されて凹凸形状となる。
以上により、一導電型の第1不純物シリコン層125、第2単結晶シリコン層126および前記一導電型と逆の導電型の第2不純物シリコン層128が順に積層された第1ユニットセル120を得ることができる。第1ユニットセル120の厚さは、例えば1μm乃至20μm、好ましくは1μm乃至10μmとすることで、太陽光を十分に吸収することができる。なお、第1ユニットセル120を構成する第1不純物シリコン層125、第2単結晶シリコン層126、及び第2不純物シリコン層128のそれぞれの厚さは、タクトタイムやコストなどの生産性、光電変換効率を考慮して決定すればよい。例えば、単結晶シリコン基板101から分離する単結晶シリコン層(本形態では第1不純物シリコン層125)の厚さを20nm乃至1000nm、好ましくは40nm乃至300nmとし、エピタキシャル成長層(本形態では第2単結晶シリコン層126’)の厚さを0.5μm乃至20μm、好ましくは1μm乃至10μnmとする。
第1ユニットセル120の表面、ここでは第2不純物シリコン層128表面は、凹凸構造となっている。本形態において、第2不純物シリコン層128表面は光入射面となるため、表面の凹凸構造により入射光の反射が低減し光閉じ込め効果が発現できる。
第1電極116上に設けられた第1不純物シリコン層125、第2単結晶シリコン層126、第2不純物シリコン層128を選択的にエッチングして、第1電極116の一部を露出させる(図6(C)参照)。そして、第2不純物シリコン層128上に第2電極132と、第1電極116に接する補助電極134を形成する(図6(D)参照)。
光電変換装置は、光電変換された電気エネルギーを取り出す必要がある。電気エネルギーは、正極と負極に対応する電極から取り出すことができる。第1電極116と第2電極132は、それぞれ正極と負極に対応する電極として機能する。しかし、本形態では、第1電極116の上層に第1不純物シリコン層125〜第2不純物シリコン層128が設けられており、下層には支持基板110が設けられており、そのままでは電気を外部に取り出しにくい。したがって、第1電極116と電気的に接続し、引き回しのできる補助電極134を形成することが好ましい。
本形態では、第1電極116上に形成されている層を選択的にエッチングして第1電極116の端部を露出させ、露出した第1電極116と接して補助電極134を形成する。具体的には、第2不純物シリコン層128上にレジストや窒化シリコン層等の絶縁層などを用いてマスクを形成し、当該マスクを用いてエッチングを行い、第1電極116の一部を露出させる。エッチングは、NF3、SF6などのフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行えばよく、第1電極116と、該第1電極116の上層に形成されている層(第1不純物シリコン層125〜第2不純物シリコン層128)とのエッチング選択比が高く取れる条件で行えばよい。エッチング後、不要となったマスクは除去する。
第2電極132は、図3(A)に示すように上面から見たときに格子状(或いは櫛状、櫛形、櫛歯状)に形成する。このようにすることで、第1ユニットセル120に光を入射させることができる。第2電極132の形状は特に限定されるものではないが、第1ユニットセル120(第2不純物シリコン層128)上を覆う面積をできるだけ小さくする方が、光入射面の有効面積が大きくなり好ましいことはいうまでもない。
補助電極134は、第2電極132と同じ工程で形成することができる。また、補助電極134は取り出し電極として機能させることができる。なお、補助電極134は必ずしも設ける必要はなく、補助電極の有無や形状、さらには光電変換装置の電極構造も、適宜設計者が選択すればよい。本形態のように補助電極134を形成することで、取り出し電極を自由に引き回すことも可能であり、電気エネルギーを外部に取り出しやすくできる。
第2電極132と補助電極134は、ニッケル、アルミニウム、銀、鉛錫(半田)などを用い、印刷法などにより形成する。例えば、ニッケルペーストや銀ペーストを用いてスクリーン印刷法で形成することができる。
以上により、光電変換装置100を製造することができる。
なお、第1ユニットセル120上には、反射防止層を兼ねたパッシベーション層131を形成することが好ましい(図9参照)。
光入射面での反射は入射する光の損失となり、光電変換効率が低下する要因となる。本発明は、表面に凹凸を形成する表面凹凸構造により、光の反射を低減させるが、さらに反射防止層を形成することで光の反射を低減することができる。例えば、第1ユニットセル120の光入射面(本形態では第2不純物シリコン層128上)に、屈折率が第1ユニットセル120の入射面の材料であるシリコンと空気の屈折率の中間に位置し、且つ光の入射を妨げない透過性を有するパッシベーション層131を形成する。パッシベーション層131としては、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又はフッ化マグネシウム層などを形成することで、光電変換装置へ入射する光の反射を防ぐことができる。
図9では、第1ユニットセル120と第2電極132、及び第1ユニットセル120と補助電極134との間にパッシベーション層131を設ける。この場合、第1ユニットセル120上にパッシベーション層131を形成した後、第2不純物シリコン層128と第1電極116の表面の一部が露出するようにエッチングし、開口部を設ける。または、リフトオフ法などを適用して、開口部が設けられたパッシベーション層131を形成することもできる。そして、パッシベーション層131に設けられた開口部を介して第2不純物シリコン層128と接する第2電極132を、印刷法により形成する。また、同一工程で、パッシベーション層131に設けられた開口部を介して第1電極116と接する補助電極134を形成する。
なお、本形態では、単結晶シリコン基板101を用いて光電変換装置を製造する例を説明したが、多結晶シリコン基板を適用して本発明に係る光電変換装置を提供することもできる。
本形態に係る光電変換装置は、光入射側に表面凹凸構造を有しており、入射光の反射を低減させることができる。よって、光電変換効率を向上させることができる。表面凹凸構造は、光変調手段を用いたレーザ処理により形成するため、エッチングなどの方法を利用する場合よりもシリコン材料を無駄にすることがない。また、レーザ処理により結晶欠陥の低減を図ることもできるため、良好な光電変換層を形成することができる。
また、本形態に係る光電変換装置は、絶縁層を介して単結晶シリコン基板と支持基板を貼り合わせ、該単結晶シリコン基板の一部を分離して薄膜シリコンである光電変換層を形成している。よって、薄膜シリコンを単結晶シリコンとすることができ、高効率化ができる。さらに、単結晶シリコン基板は、ファン・デル・ワールス力や水素結合を利用し支持基板に接合した後、熱処理により共有結合に変化させて接合を形成している。したがって、接着剤として機能する導電性ペーストなどを用いて接着する方法よりも接合力を高めることができるため長期間接合を維持でき、信頼性を向上させることができる。
また、単結晶シリコン層をエピタキシャル成長により厚膜化して所望の厚さに調整することで、原料となるシリコンの消費量を抑えることができる。さらに、単結晶シリコン基板の表層を分離して単結晶シリコン層を得ることで、分離した単結晶シリコン基板は繰り返し利用することができる。また、単結晶シリコン基板から単結晶シリコン基板を分離するためにH3 +イオンを利用すれば、生産性を低下させることなく、薄い単結晶シリコン層を分離することが可能となる。分離する単結晶シリコン層を薄くすれば、分離された単結晶シリコン基板は厚く残り、繰り返し利用する回数を増やすことも可能となる。よって、資源を有効活用することができ、原料コストの削減も図ることができる。
ここで、図10(A)に、本形態の光電変換装置の有する第1ユニットセル120の一例を示した断面模式図を示す。なお、ここで示す断面模式図では、便宜的に凹凸構造を省略している。第1ユニットセル120は、p型の第1不純物シリコン層125(p層)と、i型の第2単結晶シリコン層126(i層)と、n型の第2不純物シリコン層128(n層)が順に配置された場合を示している。第1ユニットセル120は、エネルギーギャップ(Eg)約1.1eVの単結晶シリコン層を有するものとする。なお、光はn型の第2不純物シリコン層128(n層)側から入射する。
また、図10(B)は、図10(A)の第1ユニットセル120に対応するエネルギーバンド図である。同図において、Egc1は第2単結晶シリコン層126のエネルギーギャップ約1.1eVを示す。また、Ecは伝導帯下限の準位、Evは価電子帯上限の準位、Efはフェルミ準位を示す。
光励起により生成したキャリア(電子と正孔)は、電子(図10(B)では黒丸で示す)はn層側に流れ、正孔(図10(B)では白丸で示す)はp層側に流れ、収集される。なお、単結晶シリコン基板を薄片化して第1単結晶シリコン層124を形成し、エピタキシャル成長により第2単結晶シリコン層126’を形成し、第2単結晶シリコン層126’の上部に第2不純物シリコン層128を形成することでpin接合を形成することができる。よって、内部電界によるキャリアのドリフトにより、キャリア収集効率を高め、光電変換効率を向上させることができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本形態では、上記実施の形態と異なる光電変換装置の製造方法について説明する。上記実施の形態では、単結晶シリコン基板101から分離した第1単結晶シリコン層124に光変調手段を用いたレーザ処理を行うことによって表面に凹凸構造を形成する例について示した。本形態では、単結晶シリコン基板101から分離した単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させた第2単結晶シリコン層に光変調手段を用いたレーザ処理を行うことによって表面に凹凸を形成する方法に関して説明する。なお、その他の構成は上記実施の形態に準じるものとし、説明は省略する。
上記図5(B)までの工程を行い、支持基板110上に絶縁層112、第1電極116を間に介して固定された不純物シリコン層122および第1単結晶シリコン層124を得る。次に、第1単結晶シリコン層124の分離面側からレーザビーム452を照射して結晶欠陥の修復を図った第1単結晶シリコン層124’’を得る(図11(A)、(B)参照)。レーザビーム452としては、例えば、XeClエキシマレーザや、YAGレーザの第2高調波を適用することが好ましい。第1単結晶シリコン層124の分離面側からレーザビーム452を照射し、該第1単結晶シリコン層124の一部又は全部を溶融し、再結晶化させることで、第1単結晶シリコン層124の結晶欠陥を修復する。好ましくは、レーザビーム452の照射による第1単結晶シリコン層124の溶融は部分溶融とする。第1単結晶シリコン層124の溶融は、部分溶融とすることで、溶融されていない固相部分(代表的には下層部)から結晶成長を進行させることができる。よって、結晶性を低下させることなく、結晶欠陥を修復することができる。例えば、レーザビーム452の照射により第1単結晶シリコン層124分離面側を溶融し、固相状態の下層部をシード層としてその後の冷却過程で再結晶化する。その過程で、第1単結晶シリコン層124の結晶欠陥を修復することができる。
結晶欠陥を修復した第1単結晶シリコン層124’’をエピタキシャル成長させて第2単結晶シリコン層127’’を形成する(図11(B)参照)。エピタキシャル成長は、上記実施の形態2と同様、固相成長又は気相成長で形成することができる。
第2単結晶シリコン層127’’に対し、光変調手段を介してレーザビーム454を照射して、周期的な突起を形成して表面に凹凸構造を有する第2単結晶シリコン層127’を得る(図11(C)、図12(A)参照)。
表面に周期的な凹凸構造を形成する方法は、上述の実施の形態1及び実施の形態2の図5(C)で説明した方法と同様である。第2単結晶シリコン層127’’上に、光変調手段の一形態である位相シフトマスク453を配置し、該位相シフトマスク453を介してレーザビーム454を照射する。位相シフトマスク453は、例えば、位相を反転しないパターンと位相をπ反転するパターンが交互に配置された構成とする。レーザビーム454は、位相シフトマスク453のパターンを反映した光強度分布で第2単結晶シリコン層127’’に照射される。その結果、レーザビーム454の光強度分布を反映した溶融状態となり、結晶成長が制御される。そして、結晶成長がぶつかり合うことにより、突起が形成され凹凸が形成される。以上により、第1単結晶シリコン層124’’と、当該第1単結晶シリコン層124’’をエピタキシャル成長させた層であり表面に凹凸構造を有する第2単結晶シリコン層127’の積層構造である単結晶シリコン層129’を得る。
第2単結晶シリコン層127’の一表面側(不純物シリコン層122と逆側)に不純物シリコン層122とは逆の導電型を付与する不純物元素を添加し、第2不純物シリコン層128を形成する(図12(B)参照)。本形態では、第2単結晶シリコン層127’の表層側に第2不純物シリコン層128が形成されることで、第2不純物シリコン層128が形成されない部分の第2単結晶シリコン層127’が第2単結晶シリコン層127となる。よって、第2不純物シリコン層128表面は第2単結晶シリコン層127’表面の形状となり、凹凸形状となる。なお、第2不純物シリコン層128は、実施の形態2で上述したように、微結晶シリコン又は非晶質シリコンなどを成膜して形成してもよいし、エピタキシャル成長により形成してもよい。その場合、第2不純物シリコン層表面は、下層の第2単結晶シリコン層127’表面の凹凸形状が反映される。
以上により、一導電型の不純物シリコン層122、第1単結晶シリコン層124’’および第2単結晶シリコン層127の積層構造でなる単結晶シリコン層129、並びに前記一導電型と逆の導電型の第2不純物シリコン層128が順に積層された第1ユニットセル120’’を得ることができ、以下、図6(C)以降の工程を行うことにより、図12(B)に示すような光電変換装置を製造することができる。
本形態で示す光電変換装置の製造方法は、光入射側の表面に、光変調手段を介したレーザ処理により、直接表面凹凸構造を形成する。よって、レーザ処理に形成した凹凸構造を、そのまま表面テクスチャ構造として利用することができる。
また、本形態に係る光電変換装置は、裏面電界(BSF;Back Surface Field)を形成することができる。図12(C)に、エネルギーバンド図を示す。例えば、単結晶シリコン基板101としてp型基板を適用すれば、p型の第1単結晶シリコン層124’’を得ることができる。また、単結晶シリコン基板101にp型を付与する不純物元素を添加して不純物シリコン層122を形成することで、高濃度p型領域(p+と表記する)である不純物シリコン層122と、前記不純物シリコン層122よりも低濃度であるp型領域(pと表記する)である第1単結晶シリコン層124’’の配置とすることができる。つまり、第1ユニットセル120’’は、光照射側から、n層(第2不純物シリコン層128)、i層(第2単結晶シリコン層127)、p層(第1単結晶シリコン層124’’)およびp+層(不純物シリコン層122)の配置とできる。したがって、BSFを形成することができ、光閉じこめ効果により、光励起により生成されたキャリア(電子と正孔)の再結合を防ぎキャリア収集効率を高めることができる。よって、光電変換装置の光電変換効率を向上させることができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本形態では、上記実施の形態2、3と異なる光電変換装置の製造方法について、図13乃至図15を参照して説明する。具体的には、単結晶シリコン基板101に脆化層108、第1電極116及び絶縁層112を形成する方法に関して説明する。なお、その他の構成は上記実施の形態に準じるものとし、説明は省略する。
上記実施の形態2では、脆化層108、第1電極116及び絶縁層112の形成順序について(1)の例を示したが、本形態では(2)乃至(4)の例について説明する。
例えば、図13(A)に示すように、単結晶シリコン基板101の一表面側に保護層102を形成する。保護層102が形成された表面側から単結晶シリコン基板101に一導電型を付与する不純物元素を添加して、不純物シリコン層122を形成する(図13(B)参照)。不純物シリコン層122は単結晶シリコン基板101の表面側に形成され、保護層102と単結晶シリコン基板101との間に形成される。
次に、単結晶シリコン基板101の保護層102が形成された表面側からイオン又はクラスターイオンを照射して、単結晶シリコン基板101の表面側から所定の深さの領域に脆化層108を形成する(図13(C)参照)。
次に、保護層102など不純物シリコン層122上に形成されている材料層を除去した後、第1電極116を形成する(図13(D)参照)。そして、第1電極116上に絶縁層112を形成する(図13(E)参照)。以下、上記実施の形態に準じて、光電変換装置を製造すればよい。
このような形成順序で行うことによって、脆化層108を形成する際、水素を含む原料ガスにより生成されるイオン又はクラスターイオンを照射することで、不純物シリコン層122を通過して水素が添加される。よって、不純物シリコン層122の水素化を兼ねることができる。
また、例えば図14に示すように、単結晶シリコン基板101の一表面側に第1電極116を形成する(図14(A)参照)。第1電極116は、単結晶シリコン基板101上に形成されている自然酸化層などの材料層は除去してから形成する。
次に、単結晶シリコン基板101の第1電極116が形成された表面側から一導電型を付与する不純物元素を添加して不純物シリコン層122を形成する(図14(B)参照)。不純物シリコン層122は単結晶シリコン基板101の一表面側に形成され、第1電極116と単結晶シリコン基板101との間に形成される。
次に、単結晶シリコン基板101の第1電極116が形成された表面側からイオン又はクラスターイオンを照射して、単結晶シリコン基板101の所定の深さの領域に脆化層108を形成した後(図14(C)参照)、第1電極116上に絶縁層112を形成する(図14(D)参照)。以下、上記実施の形態に準じて、光電変換装置を製造すればよい。
また、例えば図15に示すように、単結晶シリコン基板101の一表面側に第1電極116を形成した後(図15(A)参照)、第1電極116が形成された表面側からイオン又はクラスターイオンを照射して、単結晶シリコン基板101の所定の深さの領域に脆化層108を形成する(図15(B)参照)。
次に、第1電極116が形成された表面側から一導電型を付与する不純物元素を添加して、単結晶シリコン基板101の一表面側に不純物シリコン層122を形成した後(図15(C)参照)、第1電極116上に絶縁層112を形成する(図15(D)参照)。不純物シリコン層122は、単結晶シリコン基板101と第1電極116の間に形成される。以下、上記実施の形態に準じて、光電変換装置を製造すればよい。
図14、図15に示すような形成順序とすることで、第1電極116が不純物元素の添加やイオン又はクラスターイオンを照射する際の保護層として機能するため、別途保護層を設ける必要がなくなる。よって、保護層を設け除去する工程を省略することができ、工程短縮を図ることができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本形態では、単結晶シリコン基板101から第1単結晶シリコン層124を分離して残る分離単結晶シリコン基板103を再生処理する例について説明する。
上述の図5(B)で、第1単結晶シリコン層124が分離された分離単結晶シリコン基板103を得る。分離単結晶シリコン基板103は、再生処理を行うことで単結晶シリコン基板として繰り返し利用することができる。
分離単結晶シリコン基板の再生処理としては、研磨処理、エッチング処理、熱処理、レーザ処理などが適用できる。研磨処理としては、化学的機械研磨処理、機械研磨処理、液体ジェット研磨処理などが挙げられる。研磨処理を行うことで、表面の平坦性が優れた基板とすることができる。
例えば、ウェットエッチングにより分離単結晶シリコン基板103の分離面となった表面側を除去した後、その表面を研磨処理して平坦化することが好ましい。
まず、ウェットエッチングにより、分離単結晶シリコン基板103の分離面となった表面に残存する結晶欠陥や絶縁層を除去する。単結晶シリコン基板は、場合によっては端部で単結晶シリコン層の分離が行えず、分離後に端部が凸状に残る場合がある。また、凸状に残る場合、単結晶シリコン基板上に形成されていた絶縁層なども存在する場合がある。このウェットエッチングにより、そのような凸部も除去する。ウェットエッチングは、絶縁層を除去する場合はフッ酸系水溶液を用いる。また、結晶欠陥や凸部を除去する場合は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH;Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)などを用いることができる。
続けて、分離単結晶シリコン基板103のエッチング処理した表面を、CMP処理や機械研磨処理などの研磨処理を行う。分離単結晶シリコン基板103の表面を平滑にするためには、1μm乃至10μm程度研磨することが好ましい。研磨後は、分離単結晶シリコン基板103表面に研磨粒子などが残るため、フッ酸洗浄、RCA洗浄、オゾン添加水を用いた洗浄、又はアンモニア水と過酸化水素水の混合溶液を用いた洗浄(APM洗浄、SC1洗浄ともいわれる)を行うことが好ましい。
以上により、分離単結晶シリコン基板103を単結晶シリコン基板として再生することができる。再生された単結晶シリコン基板は、光電変換装置を製造する原料となる単結晶シリコン基板として繰り返し利用してもよいし、その他の用途へ流用してもよい。例えば、分離単結晶シリコン基板を再生処理し得られた単結晶シリコン基板を用い、上述の図4(A)〜図6(D)に示すような工程を繰り返して光電変換装置を製造することができる。つまり、1枚の単結晶シリコン基板から複数個の光電変換装置を製造することが可能になる。よって、資源の有効活用を実現でき、低コスト化につなげることができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本形態では、ユニットセルを複数積層した光電変換装置の例について説明する。本形態では、ユニットセルを2層積層した所謂タンデム型の光電変換装置について説明する。なお、本形態において、支持基板110〜第1ユニットセル120までの構成及び製造方法は上記実施の形態に準じるものとし、重複する部分の説明は省略する。
また、本形態で説明する光電変換装置は、エネルギーギャップの異なる光電変換層を有するユニットセルを積層する構成とし、具体的には第1ユニットセル120上に当該第1ユニットセル120よりもエネルギーギャップの広い光電変換層を有するユニットセルを設ける。本形態では、第1ユニットセル120の光電変換層は単結晶シリコンで形成し、第2ユニットセル230の光電変換層は非単結晶シリコンで形成する。以下、タンデム型の光電変換装置の製造方法及びその構造の例について説明する。
第1ユニットセル120上に、一導電型の第3不純物シリコン層222、非単結晶シリコン層224、前記一導電型とは逆の導電型の第4不純物シリコン層226を順に形成する(図16(A)参照)。
第3不純物シリコン層222は、第1ユニットセル120の第2不純物シリコン層128と逆の導電型の非単結晶シリコン層、具体的には非晶質シリコン層又は微結晶シリコン層を形成するものとし、ここではp型の非晶質シリコン層又はp型の微結晶シリコン層を形成する。また、第3不純物シリコン層222の膜厚は10nm乃至100nmで形成する。非単結晶シリコン層224は、導電型を付与する不純物元素を含まないi型の非晶質シリコン層を膜厚100nm乃至300nm、好ましくは100nm以上200nm以下で形成する。第4不純物シリコン層226は、第3不純物シリコン層222と逆の導電型の非晶質シリコン層又は微結晶シリコン層を形成するものとし、ここではn型の非晶質シリコン層又はn型の微結晶シリコン層を形成する。第4不純物シリコン層226の膜厚は10nm乃至100nmで形成する。
非単結晶シリコン層224は、シラン系ガスを原料ガスとして用い、プラズマCVD法により形成する。具体的には、シラン若しくはジシランに代表されるシリコンの水素化物の他、シリコンのフッ化物又はシリコンの塩化物などのシラン系ガスを用いることができる。前記シラン系ガス、又は前記シラン系ガスに水素、希ガスを混合して原料ガスとして用いることができる。非単結晶シリコン層224は、前記原料ガスを用い、電力周波数10MHzから200MHzの高周波電力を印加してプラズマを生成するプラズマCVD装置により形成することができる。また、高周波電力に代えて電力周波数1GHzから5GHz、代表的には2.45GHzのマイクロ波電力を印加しても良い。第3不純物シリコン層222及び第4不純物シリコン層226も同様にプラズマCVD装置で形成されるものであり、前記した原料ガスに、p型の非単結晶シリコン層を形成する場合にはドーピングガスとしてジボランを添加して成膜を行う。n型の非単結晶シリコン層を形成する場合には、ドーピングガスとしてフォスフィンを添加して成膜を行う。なお、非単結晶シリコン層224はスパッタリング法により成膜することもできる。非単結晶シリコン層224として非晶質シリコンを適用する場合、エネルギーギャップは1.75eVであり、このような材料にすることで、800nmよりも短い波長領域の光を吸収して光電変換することができる。
以上により、一導電型の第3不純物シリコン層222、非単結晶シリコン層224、前記一導電型とは逆の導電型の第4不純物シリコン層226が順に積層された第2ユニットセル230を得ることができる。
第4不純物シリコン層226上に第2電極231を形成する(図16(B)参照)。第2電極231は透明導電材料を用いて形成する。このようにすることで、第2電極231側から光を入射することができる。透明導電材料としては酸化インジウム・スズ合金(ITO)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム・酸化亜鉛合金などの酸化物金属を用いる。第2電極231の膜厚は、40nm乃至200nm、好ましくは50nm乃至100nmとする。また、第2電極231のシート抵抗は20Ω/□乃至200Ω/□程度とすれば良い。
第2電極231は、スパッタリング法又は真空蒸着法で形成する。本形態では、第2電極231は、第1ユニットセル120と第2ユニットセル230が重なる領域に選択的に形成されるように、シャドーマスクを用いて成膜することが好ましい。第2電極231を選択的に形成することで、第1電極116の一部(好ましくは端部)を露出させる際のエッチング用マスクとして用いることができる。
なお、第2電極231は前述の酸化物金属に替えて導電性高分子材料(導電性ポリマーともいう)を用いることができる。導電性高分子材料としては、π電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン及びまたはその誘導体、ポリピロール及びまたはその誘導体、ポリチオフェン及びまたはその誘導体、これらの2種以上の共重合体などがあげられる。
第2電極231をマスクとして、第4不純物シリコン層226、非単結晶シリコン層224、第3不純物シリコン層222、第2不純物シリコン層128、第2単結晶シリコン層126、第1不純物シリコン層125をエッチングして、第1電極116の一部を露出させる。そして、第1電極116に接続する第1補助電極234と、第2電極231に接続する第2補助電極232を形成する(図16(C)参照)。
エッチングは、NF3、SF6などのフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行えばよく、第1電極116と当該第1電極116の上層に形成されている層(第1不純物シリコン層125〜第4不純物シリコン層226)とのエッチング選択比が十分高く取れる条件で行えばよい。ここでは第2電極231をマスクとして用いることができるため、エッチング用のマスクを新たに設ける必要がない。もちろん、レジストや絶縁層を用いてマスクを形成することも可能である。
第2補助電極232は、上面から見たときに、図3に示す第2電極132のように格子状(或いは櫛状、櫛形、櫛歯状)となるように形成する。これは、本形態の光電変換装置200は第2電極231側から光を入射する構成とするためであり、第2ユニットセル230及び第1ユニットセル120に光が入射するための有効面積を広くするためである。
第1補助電極234は、先のエッチングにより露出させた第1電極116と接して形成する。第1補助電極234を形成することで、取り出し電極として機能させることができ、自由に引き回せることができる。
第1補助電極234、第2補助電極232は、ニッケル、アルミニウム、銀、鉛錫(半田)などを印刷法により形成すればよい。例えば、ニッケルペーストや銀ペーストを用いてスクリーン印刷法で形成することができる。
以上により、タンデム型の光電変換装置を製造することができる。本形態に係る光電変換装置において、少なくとも第1ユニットセル120表面(第2不純物シリコン層128表面)には周期的な突起が形成され凹凸が形成されている。したがって、第2ユニットセル230および第2電極231は、表面に凹凸が形成されている第1ユニットセル120上に形成されることで凹凸構造を反映し、第2電極231表面も凹凸が形成される。第2電極231表面が凹凸構造を有することにより、光閉じ込め効果を発現させることができる。よって、光電変換効率を向上させることができる。
また、本形態に係る光電変換装置は、支持基板110上に第1ユニットセル120と、第2ユニットセル230が積層された構造を有し、第1ユニットセル120と比較して、第2ユニットセル230の光電変換層のエネルギーギャップが広いものとする。具体的には、第2ユニットセル230の光電変換層は非単結晶シリコン層で形成され、第1ユニットセル120の光電変換層は単結晶シリコン層で形成される。エネルギーギャップの異なる光電変換層を積層することで、吸収できる光の波長が増加し、光電変換効率を向上させることができる。特に、太陽光は、その波長帯域が短波長側から長波長側まで広範囲に渡っており、本形態のような構成にすることで、効率良く広範囲の波長の光を吸収することが可能となる。また、光の入射側にエネルギーギャップの大きい光電変換層を配置することで、短波長側、長波長側の光を効率よく吸収することができる。
なお、ここでは図示しないが、タンデム型の光電変換装置に関しても、図9に示すように、反射防止層を兼ねたパッシベーション層を形成することができる。また、第1ユニットセル120に代えて、上記実施の形態3に示す第1ユニットセル120’’を適用することができる。
ここで、図17(A)に、本形態の光電変換装置の有する第1ユニットセル120と第2ユニットセル230の一例を示した断面模式図を示す。第1ユニットセル120は、p型の第1不純物シリコン層125(p層)と、i型の第2単結晶シリコン層126(i層)と、n型の第2不純物シリコン層128(n層)とが配置され、第2ユニットセル230はp型の第3不純物シリコン層222(p層)と、i型の非単結晶シリコン層224(i層)と、n型の第4不純物シリコン層226(n層)が配置された例を示している。また、第1ユニットセル120はエネルギーギャップ1.12eVの単結晶シリコン層を有し、第2ユニットセル230はエネルギーギャップ1.75eVの非単結晶シリコン層を有するものとする。光はn型の第4不純物シリコン層226(n層)側から入射する。よって、光入射側にエネルギーギャップの大きい非単結晶シリコン層を有する第2ユニットセル230が位置し、その後方にエネルギーギャップの小さい単結晶シリコン層を有する第1ユニットセル120が配置することになる。
また、図17(B)は、図17(A)の第1ユニットセル120と第2ユニットセル230に対応するエネルギーバンド図である。同図において、Egc1は第2単結晶シリコン層126のエネルギーギャップ約1.1eVを示し、Egc2は非単結晶シリコン層224のエネルギーギャップ約1.8eVを示す。また、Ecは伝導帯下限の準位、Evは価電子帯上限の準位、Efはフェルミ準位を示す。
図17(B)のバンドモデル図に示すように、光励起により生成したキャリアは、電子はn層側に流れ、正孔はp層側に流れる。第1ユニットセル120と第2ユニットセル230の接続部にはpn接合が形成されており、等価回路的には電流の流れる向きと逆方向にダイオードが挿入される形になる。この場合、第2不純物シリコン層128と第3不純物シリコン層222の接合界面に再結合中心が形成されるようにして、この接合界面で再結合電流が流れるようにする。第2不純物シリコン層128と、その上に第2不純物シリコン層128と逆の導電型の第3不純物シリコン層222を形成することで、第1ユニットセル120と第2ユニットセル230の接続部にpn接合を形成することができる。
以上のように、タンデム型の光電変換装置において、単結晶シリコン層を有する第1ユニットセル120をボトムセルとして用いることで、800nm以上の長波長の光を吸収して光電変換することが可能となり、光電変換効率の向上に寄与する。また、非単結晶シリコン層を有する第2ユニットセル230をトップセルとして用いることで、800nm未満の短波長の光を吸収して光電変換することが可能となり、光電変換効率の向上に寄与する。
本形態の光電変換装置は、光入射側に凹凸構造を有しており、光の反射を低減することができる。また、単結晶シリコン層を有するユニットセル上に非単結晶シリコン層を有するユニットセルを積層しており、エネルギーギャップの異なるユニットセルを積層した構造を有する。さらに、光入射側にエネルギーギャップの広い光電変換層(非単結晶シリコン層)を有するユニットセルを配置する構成としている。よって、光電変換装置が吸収する光の波長帯域を広くすることができ、波長帯域が広範囲に渡る太陽光は効率良く吸収することができる。したがって、光電変換効率を向上させることができ、優れた光電変換特性を有する光電変換装置を製造することができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態7)
本形態では、ユニットセルを複数積層した光電変換装置、具体的にはユニットセルを3層積層した所謂スタック型の光電変換装置について図面を参照して説明する。
図18は、ユニットセルを3層積層したスタック型の光電変換装置300の一例の断面模式図である。光電変換装置300は、支持基板110上に単結晶シリコン層を光電変換層とする第1ユニットセル120と、非単結晶シリコン層を光電変換層とする第2ユニットセル230と、非単結晶シリコン層を光電変換層とする第3ユニットセル350と、が順に積層された構造を有する。支持基板110と第1ユニットセル120の間には第1電極116が設けられ、第1電極116と支持基板110との間に絶縁層112が設けられている。また、第1電極116に接して選択的に第1補助電極334が設けられている。第3ユニットセル350上には第2電極331が設けられ、該第2電極331に接して選択的に第2補助電極332が設けられている。
また、光電変換装置300は、第3ユニットセル350側から光が入射でき、第3ユニットセル350側から光電変換層のエネルギーギャップが狭くなっていくように配置することが好ましい。例えば、第1ユニットセル120の単結晶シリコン層のエネルギーギャップを1.12eVとし、第1ユニットセル120よりも光入射側に位置する第2ユニットセル230の非単結晶シリコン層224は1.12eVよりもエネルギーギャップが広いものを配置し、さらにそれよりも光入射側に位置する第3ユニットセル350の非単結晶シリコン層344はエネルギーギャップが最も広いものを配置することが好ましい。それぞれのユニットセルのエネルギーギャップを異ならせ、光入射側からエネルギーギャップが狭くなっていくように配置することで、各ユニットセルで吸収する光の波長帯域を異ならせることができ、波長帯域の広い太陽光を効率よく吸収することができる。
支持基板110〜第2ユニットセル230までの構成及び製造方法について、上記実施の形態に準じる部分は、説明を省略或いは簡略化する。
第1ユニットセル120まで形成した後、第2ユニットセル230を構成する一導電型の第3不純物シリコン層222、非単結晶シリコン層224、前記一導電型と逆の導電型の第4不純物シリコン層226を形成する。そして、第2ユニットセル230上に一導電型の第5不純物シリコン層342、非単結晶シリコン層344、前記一導電型とは逆の導電型の第6不純物シリコン層346を形成し、第3ユニットセル350を形成する。第5不純物シリコン層342は、第2ユニットセル230の第4不純物シリコン層226と逆の導電型を有するものとする。つまり、光電変換装置300は、第1電極116上に一導電型の第1不純物シリコン層125、第2単結晶シリコン層126、前記一導電型と逆の導電型の第2不純物シリコン層128、一導電型の第3不純物シリコン層222、非単結晶シリコン層224、前記一導電型と逆の導電型の第4不純物シリコン層226、一導電型の第5不純物シリコン層342、非単結晶シリコン層344及び前記一導電型とは逆の導電型の第6不純物シリコン層346が順に積層されている。
第3ユニットセル350の第5不純物シリコン層342は、第2ユニットセル230の第3不純物シリコン層222と同様であり、第6不純物シリコン層346は第4不純物シリコン層226と同様である。つまり、第5不純物シリコン層342をp型とした場合、第6不純物シリコン層346はn型とし、その逆とすることもできる。不純物シリコン層をp型とする場合は原料ガスにジボランを添加し、これに対しn型とする場合は原料ガスにフォスフィンを添加すればよい。
本形態に係る光電変換装置は、第1ユニットセル120に形成された凹凸構造が第2ユニットセル230に反映し、さらにその上層に形成される第3ユニットセル350、第2電極331にも反映される。つまり、第2電極331表面は凹凸構造を有し、その結果、光閉じ込め効果を発現させることができる。よって、光電変換効率を向上させることができる。
なお、第1ユニットセル120に代えて、上記実施の形態3に示す第1ユニットセル120’’を適用することができる。
ここで、図19(A)に、本形態の光電変換装置の有する第1ユニットセル120と第2ユニットセル230と第3ユニットセル350の一例を示した断面模式図を示す。第1ユニットセル120は、p型の第1不純物シリコン層125(p層)と、i型の第2単結晶シリコン層126(i層)と、n型の第2不純物シリコン層128(n層)とが配置された例を示している。第2ユニットセル230はp型の第3不純物シリコン層222(p層)と、i型の非単結晶シリコン層224(i層)と、n型の第4不純物シリコン層226(n層)が配置された例を示している。第3ユニットセル350は、p型の第5不純物シリコン層342(p層)と、i型の非単結晶シリコン層344(i層)と、n型の第6不純物シリコン層346(n層)とが配置された例を示している。
また、図19(B)は、図19(A)の第1ユニットセル120と第2ユニットセル230と第3ユニットセル350に対応するエネルギーバンド図である。同図において、Egc1は第2単結晶シリコン層126のエネルギーギャップを示し、Egc2’は非単結晶シリコン層224のエネルギーギャップを示し、Egc3は非単結晶シリコン層344のエネルギーギャップを示す。また、Ecは伝導帯下限の準位、Evは価電子帯上限の準位、Efはフェルミ準位を示す。第1ユニットセル120はエネルギーギャップEgc1の単結晶シリコン層を有するものとし、第2ユニットセル230はEgc1よりも広いエネルギーギャップEgc2’の非単結晶シリコン層を有するものとし、第3ユニットセル350はEgc2’よりも広いエネルギーギャップEgc3の非単結晶シリコン層を有するものとする。なお、光はn型の第6不純物シリコン層346(n層)側から入射する。よって、光入射側からエネルギーギャップの広い光電変換層を有するユニットセル順に配置していることになる。
図19(B)のバンドモデル図に示すように、光励起により生成したキャリアは、電子はn層側に流れ、正孔はp層側に流れる。第1ユニットセル120と第2ユニットセル230の接続部にはpn接合が形成されており、等価回路的には電流の流れる向きと逆方向にダイオードが挿入される形になる。この場合、第2不純物シリコン層128と第3不純物シリコン層222の接合界面に再結合中心が形成されるようにして、この接合界面で再結合電流が流れるようにする。第2不純物シリコン層128上に、前記第2不純物シリコン層128と逆の導電型の第3不純物シリコン層222を形成することで、接合界面に再結合中心を形成することができる。また、第2ユニットセル230と第3ユニットセル350の接続部にもpn接合が形成されており、等価回路的には電流の流れる向きと逆方向にダイオードが挿入される形になる。この場合、第4不純物シリコン層226と第5不純物シリコン層342の接合界面に再結合中心が形成されるようにして、この接合界面で再結合電流が流れるようにする。
以上のように、スタック型の光電変換装置とし、さらに表面凹凸構造を有する構成とすることで、光の吸収波長帯域を広くし、且つ光の反射を低減できるため、さらなる光電変換効率の向上に寄与することができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態8)
実施形態2乃至7により得られる光電変換装置を用いて太陽光発電モジュールを製造することができる。本実施の形態では、上記実施の形態2に示す光電変換装置100を用いた太陽光発電モジュールの一例を図20に示す。もちろん、他の形態で示す光電変換装置を適用してもよい。
太陽光発電モジュール1028は、支持基板110の一面上に設けられた第1ユニットセル120により構成されている。支持基板110と第1ユニットセル120との間には、支持基板110側から絶縁層112、第1電極116が設けられている。第1電極116は補助電極134と接続している。
補助電極134と第2電極132は支持基板110の一面側(第1ユニットセル120が形成されている側)に形成され、支持基板110の端部領域でコネクタ用の第1裏面電極1026及び第2裏面電極1027とそれぞれ接続する。図20(B)は、C−D切断線に対応する断面図であり、支持基板110の貫通口を通して補助電極134が第1裏面電極1026と接続し、第2電極132が第2裏面電極1027と接続している。
このように、支持基板110に第1ユニットセル120を設けて光電変換装置100を形成することにより、太陽光発電モジュール1028の薄型化を図ることができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態9)
図21は上記実施の形態8で示した太陽光発電モジュール1028を用いた太陽光発電システムの一例を示す。一又は複数の太陽光発電モジュール1028の出力電力は、充電制御回路1029により蓄電池1030を充電する。蓄電池1030の充電量が多い場合には、負荷1031に直接出力される場合もある。
蓄電池1030として電気二重層キャパシタを用いると、充電に化学反応を必要とせず、急速に充電することができる。また、化学反応を利用する鉛蓄電池などに比べ、寿命を約8倍、充放電効率を1.5倍に高めることができる。負荷1031としては、蛍光灯、発光ダイオード、エレクトロルミネッセンスパネルなどの照明、小型の電子機器など、さまざまな用途に応用することができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と実施例と適宜組み合わせることができる。
以下、光変調手段として位相シフトマスクを用いたレーザビームの照射により、シリコン層表面に周期的な凹凸を形成できること、ならびに、周期的な凹凸を形成することにより入射光の反射率を低減し吸収率を向上できることについて説明する。本実施例では、測定を行ったサンプルの構造及び作製方法と、使用する位相シフトマスクのパターン形状について説明する。
まず、使用した位相シフトマスクのパターン形状について説明する。位相シフトマスクは、石英ガラス基板に溝を形成して凹部と凸部を形成することで作製した。なお、石英ガラス基板に溝を形成することでできた段差の低い領域(溝の底面)を凹部とし、段差の高い領域(そのまま残った領域)を凸部とした。なお、凹部の面と凸部の面の段差Δt=316nmとなるように石英ガラス基板に溝を形成した。
図22(A)に位相シフトマスク5000の上面図、図22(B)に位相シフトマスク5500の上面図を示す。位相シフトマスク5000は、凹部5002と凸部5004からなるチェッカーフラッグ(市松模様)状のパターンが設けられている。凹部5002および凸部5004は、上面からみて、2μm角の矩形パターンである。2μm角の凹部5002と、2μm角の凸部が交互に配置され、チェッカーフラッグ状のパターンを構成している。凹部5002は間隔2μmで配置されることになり、同様に凸部5004も間隔2μmで配置されることになる。位相シフトマスク5500は、凹部5502と凸部5504からなるストライプ(縞)状のパターンが設けられている。凹部5502および凸部5504は、上面からみて、幅2μmの線状パターンである。幅2μmの凹部5502と、幅2μmの凸部5504が交互に配置され、所謂ラインアンドスペースとよばれるパターンを構成している。凹部5502は間隔2μmで配置されることになり、同様に凸部5504も間隔2μmで配置されることになる。以下の実施例で説明する測定に用いたサンプルは、図22に示す位相シフトマスクを使用してレーザビームを照射し、作製した。
次に、測定に用いたサンプルの作製方法について説明する。図23は、測定サンプルの作製方法及び構造を説明する断面図である。以下の実施例では、図23(A−1)〜図23(E)の工程又は一部変形した工程を経て作製したサンプルを用いて、測定を行った。測定に用いたサンプルの基本構造は、図23(E)に示す構造である。具体的には、ガラス基板3010上に酸化シリコン層3005、窒化酸化シリコン層3004及び酸化窒化シリコン層3003を介して単結晶シリコン層3013が形成されている。以下、図23に示す作製工程について説明する。
単結晶シリコン基板3001と、ガラス基板3010を準備した。単結晶シリコン基板3001の一表面上には、厚さ50nmの酸化窒化シリコン層3003、厚さ50nmの窒化酸化シリコン層3004、及び厚さ50nmの酸化シリコン層3005を順に積層形成した。酸化シリコン層3005は、成膜用の原料ガスとしてTEOSガスを用い、プラズマCVD法により形成した。また、単結晶シリコン基板3001の一表面側から所定の深さの領域に脆化層3002を形成した。脆化層3002は、イオンドーピング装置を用い、水素を含む原料ガスにより生成されるイオン又はクラスターイオンを単結晶シリコン基板3001に照射して形成した。なお、脆化層3002を形成するためのイオン又はクラスターイオンの照射は、窒化酸化シリコン層3004を形成した後、該窒化酸化シリコン層3004が形成された側から行った。ガラス基板3010としては、厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(商品名 AN100)を用いた(図23(A−1)、(A−2)参照)。
なお、単結晶シリコン基板3001は、図24の斜視図に示すように、5インチ角(126.6mm角)、厚さ0.7mmの矩形の基板を用いた。単結晶シリコン基板3001は、Z方向の面方位(100)、XY方向の側面方位<110>であった。また、単結晶シリコン基板3001の導電型はp型であり、抵抗率は1Ω・cm〜40Ω・cmであった。
酸化窒化シリコン層3003〜酸化シリコン層3005が形成された単結晶シリコン基板3001と、ガラス基板3010と、を対向させ、酸化シリコン層3005とガラス基板3010とを接触させて接合させた。このようにして、ガラス基板3010と単結晶シリコン基板3001とを貼り合わせた(図23(B)参照)。そして、熱処理を行い、単結晶シリコン基板3001を脆化層3002又は当該脆化層3002近傍を境として分割することで、ガラス基板3010上に単結晶シリコン層3012を形成した。なお、単結晶シリコン基板3001から単結晶シリコン層3012が分離された分離単結晶シリコン基板3011が得られた(図23(C)参照)。
ガラス基板3010上に形成された単結晶シリコン層3012に対し、位相シフトマスク3050を介してレーザビーム3052を照射した。レーザビーム3052は、単結晶シリコン層3012の分離面となった側から照射した(図23(D)参照)。位相シフトマスク3050を介してレーザビーム3052を照射することで、分離面となった側の表面に周期的な凹凸を有する単結晶シリコン層3013が形成された(図23(E)参照)。
以下の実施例では、本実施例で説明した位相シフトマスクや作製工程を用いて作製したサンプルの測定結果及び観察結果について説明する。
本実施例では、サンプルIを作製し、位相シフトマスクを介してレーザビームを照射することでシリコン層表面に形成される周期的な凹凸構造を観察した結果について説明する。
図25にサンプルIの断面写真を示す。断面写真は、走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope;STEM)により撮影されたSTEM像である。
サンプルIは、上述の図23(A−1)〜(E)の工程を経て作製したものであり、ガラス基板3010上に、酸化シリコン層3005、窒化酸化シリコン層3004及び酸化窒化シリコン層3003を介して、単結晶シリコン層3013が形成されている。なお、図23(C)の分割工程により得られた単結晶シリコン層3012の厚さはおよそ100nmであった。また、位相シフトマスク3050として、図22(B)に示すストライプ状のパターン形状である位相シフトマスク5500をガラス基板3010上に形成された単結晶シリコン層3012直上に配置して、レーザビーム3052を照射した。位相シフトマスク3050の位置に関しては、単結晶シリコン層3012に近すぎると十分な干渉効果が得られないため、単結晶シリコン層3012表面から0.5mm離して位相シフトマスク3050を配置した。なお、本実施例で説明する被処理物直上に位相シフトマスクを配置してレーザビームを照射する方式とは別に、転送光学系を用いて位相シフトマスクによる像(パターン)を被処理物(本実施例では単結晶シリコン層3012)に転写することもできる。レーザビーム3052としては、波長308nm、パルス幅25nsec、発振周波数30Hzで発振するXeClエキシマレーザを用い、得られるビームを光学系によってビーム幅(短軸)360μm、長さ(長軸)120mmの線状に成形したレーザビームを用いた。そして、単結晶シリコン層3012が形成されたガラス基板3010を配置するステージを、線状のレーザビーム3052の短軸方向と平行な方向にスキャン速度1mm/secで走査しながら、レーザビーム3052を照射した。レーザビーム3052のエネルギー密度は600mJ/cm2であった。また、レーザビーム3052を照射する際、チャンバー内を窒素雰囲気とし、ステージを加熱してガラス基板3010を500℃に加熱した。
図25(A)に示すように、単結晶シリコン層3013表面には、周期的な突起が観察される。さらに、隣接する突起の間隔が、およそ2μmであり、位相シフトマスクのパターン形状を反映した突起が形成されていることがわかる。なお、図25(A)において、白色の層の下層に位置する黒色に観察される層が単結晶シリコン層3013であり、その上層はSTEMにより撮影するためのコーティング層である。
また、図25(A)の領域Xを拡大した断面写真を図25(B)、(C)に示す。なお、図25(B)は位相コントラスト像(TE像)であり、図25(C)はZコントラスト像(ZC像)である。領域X内にある突起の高さはおよそ163.2nmであり、分離により形成された単結晶シリコン層の厚さよりも大きくなっていることがわかる。また、突起付近に欠陥Yが見受けられることから、結晶成長同士がぶつかりあって突起が形成されていると推測される。位相シフトマスクによって変調されたレーザビームの光強度が弱い領域(位相シフトマスクの凹部と凸部の境界の位置)と比較して、位相シフトマスクによって変調されたレーザビームの光強度が強い領域(位相シフトマスクの凹部の中心の位置および位相シフトマスクの凸部の中心の位置)の方が、レーザビームの照射により、レーザビームの光強度が弱い領域よりも長く溶融する。そのため、レーザビームの光強度の弱い領域からレーザビームの光強度の強い領域に向かって結晶は成長する。つまり、位相シフトマスクの凹部と凸部の境界から、凹部の中心及び凸部の中心に向かって結晶が成長するため、凹部の中心および凸部の中心では、成長してきた結晶同士が衝突して突起が形成されると考えられる。
本実施例では、サンプルA〜サンプルDを作製し、シリコン層表面に形成される凹凸構造の観察および光学特性を評価した結果について説明する。
まず、サンプルA〜サンプルDの構造及び作製方法について説明する。
サンプルAは、上述の図23(A−1)〜(E)の工程を経て作製したものであり、ガラス基板3010上に、酸化シリコン層3005、窒化酸化シリコン層3004及び酸化窒化シリコン層3003を介して、単結晶シリコン層3013が形成されている。なお、図23(C)の分離工程により得られた単結晶シリコン層3012の厚さはおよそ120nmであった。位相シフトマスク3050としては、図22(A)に示すチェッカーフラッグ状のパターン形状である位相シフトマスク5000を用いた。レーザビーム3052としては、波長308nm、パルス幅25nsec、発振周波数30Hzで発振するXeClエキシマレーザを用い、得られるビームを光学系によってビーム幅(短軸)360μm、長さ(長軸)120mmの線状に成形したレーザビームを用いた。そして、単結晶シリコン層3012が形成されたガラス基板3010を配置するステージを、線状のレーザビーム3052の短軸方向と平行な方向にスキャン速度1mm/secで走査しながら、レーザビーム3052を照射した。レーザビーム3052のエネルギー密度は550mJ/cm2〜600mJ/cm2であった。また、レーザビーム3052を照射する際、チャンバー内は大気雰囲気とし、ステージの加熱は行わなかった。
サンプルBについては、位相シフトマスクのパターン形状以外はサンプルAと同様に作製した。サンプルBの作製において、位相シフトマスク3050としては、図22(B)に示すストライプ状のパターン形状である位相シフトマスク5500を用いた。
サンプルCは比較例として作製したものであり、上述の図23(D)の工程において、位相シフトマスク3050を用いることなくレーザビーム3052を照射した。図23(D)以外の工程は、サンプルAと同様に作製した。
サンプルDも比較例として作製したものであり、上述の図23(A−1)〜(C)の工程を経て作製した。つまり、図23(C)の分離工程により得られた単結晶シリコン層3012のままとした。図23(A−1)〜(C)の工程は、サンプルAと同様に作製した。
サンプルAおよびサンプルCについて、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)を用いて観察と測定を行った。図26に、AFMによるダイナミックフォースモード(DFM:dynamic force mode)での観察像(以下、DFM像という。)の鳥瞰図と、DFM像を解析した測定値を示す。図26(A)に、サンプルAのDFM像の鳥瞰図と該DFM像を解析した測定値を示す。また、図26(B)に、サンプルCのDFM像の鳥瞰図と該DFM像を解析した測定値を示す。なお、本実施例では、AFMの測定範囲は10μm×10μmで行った。
図26(A)に示すように、サンプルAの表面には周期的に形成された突起が観察できる。また、サンプルA表面の平均面粗さ(Ra)は17.6nm、最大高低差(P−V)は256.5nm、自乗平均面粗さ(RMS)は26.5nmであった。
これに対し、図26(B)に示すように、サンプルCの表面には、サンプルAと比較して、不規則に形成された突起が観察される。また、サンプルC表面の平均面粗さ(Ra)は6nm、最大高低差(P−V)は121.8nm、自乗平均面粗さ(RMS)は9.2nmであった。
また、サンプルAについては、単結晶シリコン層3013表面を光学顕微鏡で観察した。図27に、光学顕微鏡観察写真を示す。なお、図27に示す写真は、観察倍率1000倍の光学顕微鏡観察写真を縮小したものである。また、図27(A)は暗視野観察による写真であり、図27(B)は明視野観察による写真であり、図27(C)は透過観察による写真である。図27(A)〜(C)では突起に相当する丸い領域が観察され、ほぼ周期的に並んでいることが確認できる。図27(A)においては、丸い白い領域が突起である。
次に、サンプルA〜サンプルDについて、単結晶シリコン層の反射率及び透過率の測定結果、並びに、反射率及び透過率から求めた吸収率について説明する。吸収率は、吸収率[%]=100−(反射率+透過率)で算出した。
サンプルA〜サンプルDについて、波長範囲300nm〜2000nmでの反射率と透過率を測定した。測定は、日立製作所製U−4000型分光分析装置を使用した。図28(A)に反射スペクトル、図28(B)に透過スペクトル、図28(C)に吸収スペクトルを示す。なお、図28では、波長範囲300nm〜1000nmの各スペクトルを示している。
図28(A)、(B)に示すように、ほぼ全波長範囲に渡って、比較例であるサンプルC及びサンプルDと比べて、サンプルAとサンプルBの反射率及び透過率が低いことが確認できる。その結果、図28(C)に示すように、サンプルAとサンプルBの吸収率は、比較例(サンプルCとサンプルD)に比べて高いことも確認できる。これは、サンプルAおよびサンプルBは表面に周期的な突起が形成された表面凹凸構造を形成しており、該表面凹凸構造により光が散乱するため、光が単結晶シリコン層中を通る距離(光路長)が増加し、吸収される割合が増加したためと考察される。なお、図28(A)において、比較例(サンプルC、D)とサンプルA、Bの反射率が、一部の波長で逆転している。これは、単結晶シリコン層表面で反射する光と、単結晶シリコン層裏面で反射する光との干渉による変動である。
以上の実施例1〜実施例3により、位相シフトマスクを用いてレーザビームを照射することで周期的な突起を形成することができることが確認できた。また、分離工程により得られた単結晶シリコン層や位相シフトマスクを用いずにレーザビームを照射した単結晶シリコン層と比べ、位相シフトマスクを用いて周期的な突起を形成した単結晶シリコン層は反射率及び透過率を低減でき、吸収率を向上できることが確認できた。