JP5448647B2 - 軽油組成物及びその製造方法 - Google Patents

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

本発明は、ディーゼルエンジン用の軽油組成物及びその製造方法、特には、ディーゼルパティキュレートフィルターを装着した大型ディーゼルエンジン車用の軽油組成物に関するものである。
自動車の緊急且つ重要な課題は「CO2と排出ガスの同時削減」であり、該課題に対し、自動車単体での改良に加えて、交通流対策も検討されている。交通流対策としては、IT技術の活用によって自動車の流れをスムーズにすることに加えて、自動車の種別による規制も大気質の改善に寄与することが知られている。すなわち、大型ディーゼルエンジン車は、原則として都市間の物流に活用し、その都市部内への進入を規制することは、大気環境が悪化している都市部の大気改善に寄与する。都市間走行では、加減速や始動、アイドリングが少なく中高負荷条件下で長離走行をするので、排出ガス温度が高く、排出ガスを浄化するための後処理触媒を効果的に利用できることとなる。そのため、大型ディーゼルエンジン車用の燃料としては、排出ガスの削減よりも出力や燃費の優れた燃料が求められる。また、小型車(乗用車など)は、都市内走行を担うため、始動、アイドリングに加えて加減速頻度の多い走行条件となるので、後処理触媒の温度も低くなる。そのため、小型ディーゼルエンジン車用の燃料としては、後処理装置への負荷が少なく、排出ガスが少なく、運転性に優れた燃料が求められる。すなわち、交通流規制の施行により、軽油の使用実態によって要求燃料品質が異なることとなる。なお、都市内の物流は、都市部に大型物流拠点を設けて、小規模な個別配送拠点を削減して、排出ガスの少ない天然ガス車などクリーンエンジンの導入で対応することも提案されている。
一方、化石燃料の有効利用や非石油系燃料の導入・拡大は、エネルギーセキュリティーの観点から極めて重要な課題であり、そのためには、セタン価が低く、芳香族が多い分解系軽油基材(石油系の接触分解軽油基材(LCO)やオイルサンド由来の軽油基材)の活用が必要であり、多方面で研究されている。しかしながら、この種の研究は、ディーゼルエンジン車の種別(小型車と大型車の区別)や走行条件(都市間と都市内)を問わずに一括で規制されている既存の交通流を前提にした軽油品質規格を満足させるためのアップグレーディングを目指しており(非特許文献1および2)、燃料品質の向上(水素化精製)による多大なCO2排出を伴うこととなる。さらに、アップグレーディングの程度(シビアリティー)を高めると、燃料の製造価格が高くなることから、経済性の観点からも、よりマイルドな条件で水素化精製した分解系軽油の基材の利用が求められている。
さらに、石油のノーブルユースや経済性の観点からは、製油所で製造される既存の軽油基材留分を余すことなく利用し、分解系軽油基材を含む望ましい軽油を生産する必要がある。すなわち、軽油基材の特定の留分や成分のみを利用した製造法では、上述の観点から実現性がなく、避けるべきである。
そこで、上述の交通流規制が施行され、従来とは異なる燃料の配送・消費形態が確立した場合において、該配送・消費形態に基づいた「軽油品質とディーゼルエンジン車の利用形態との組み合わせ」でトータルとして、「排出ガスとCO2の同時削減」を維持しつつ「エネルギーセキュリティー(すなわち、分解系軽油の利用)」を「経済性をも加味して」達成する方策を見出すことが、極めて重要な課題になっている。
石油産業活性化センター第23回技術開発研究成果発表会予稿集、「超重質油(オイルサンド油)等の分解有用化技術開発」(2009年6月3日) 石油産業活性化センター第23回技術開発研究成果発表会予稿集、「オイルサンド合成原油のわが国石油製品への適用化の技術開発」(2009年6月3日)
したがって、上記の交通流対策として、大型ディーゼルエンジン車(例えば、長距離輸送用のトラックなど)の都市内への進入が制限される状況における軽油の配送・消費形態を前提とし、且つディーゼルエンジン車に微粒子を捕捉・浄化するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)が装着されている場合においては、「都市部を走行する小型ディーゼルエンジン車には既存の軽油よりも排出ガスが少ない軽油」を、「都市間を走行する大型ディーゼルエンジン車には既存の軽油と同等の排出ガスであるが、燃費の良い軽油」を以下の両条件を満たして製造することが課題となる。
1)分解系軽油基材を製造時のCO2排出量を最小にし、且つ経済性も加味してマイルドな条件で水素化精製して利用する。
2)上記のエネルギーセキュリティー、石油のノーブルユースや経済性の観点で、製油所で製造される既存の軽油基材留分を有効利用する(特定の留分や成分のみが利用され、残りの留分や成分の利用法が見出せない対応は避ける)。
このような状況下、本発明の目的は、上記の条件を満たしつつ、エンジンが要求する品質を確保でき、且つ製造時のCO2排出量が少なく、さらにはエネルギーセキュリティーに貢献する、大型ディーゼルエンジン車用の軽油組成物及びその製造方法を提供することにある。なお、本願に記載した大型ディーゼルエンジン車とは、専ら荷物や多数の乗客の搬送に利用される自動車で、自動車の用途による分類では、貨客兼用車、貨物自動車、乗り合い自動車に分類されるディーゼルエンジン駆動の自動車である。また、車体による分類では、バス、トラック、トレーラートラックに分類されるディーゼル車である(新編 自動車工学便覧、自動車技術会、1984年)。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、低品質な軽油基材、特には、セタン価が30以下で、全芳香族分が50容量%以上の軽油基材を、特定の蒸留性状を有し、主としてセタン価及び全芳香族分が特定範囲の値となるよう水素化精製して得た燃料を、重質な軽油に多く混合することで得られる軽油組成物が、DPFを装着した大型ディーゼルエンジン車用の燃料として好適であり、該軽油組成物を使用することで、石油のノーブルユースとエネルギーセキュリティーに貢献でき、また、該軽油組成物は、製造時のCO2排出量や経済性が考慮されており、排出ガスは既存軽油と同等であるものの、既存軽油よりも燃費に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の軽油組成物は、軽油基材を水素分圧が3〜15MPa、温度が250〜420℃、液空間速度が0.3〜10.0hr -1 、水素/オイル比が100〜2,000L/Lの条件で水素化精製することにより得られる水添軽油に、軽油基材を250〜320℃で分留した重質留分である重質軽油を混合してなり、セタン価が45以上、全芳香族分が20〜40容量%、初留点が150〜250℃、終点が300〜370℃、硫黄分が50質量ppm以下、15℃における密度が0.840〜0.870g/cm3であることを特徴とする、ディーゼルパティキュレートフィルターを装着したディーゼルエンジン用の軽油組成物である。
また、本発明の軽油組成物の製造方法は、軽油基材を250〜320℃で分留した重質留分である、セタン価が60〜80、全芳香族分が15〜30容量%、初留点が260〜300℃、終点が320〜400℃、15℃における密度が0.830〜0.900g/cm3である重質軽油を20〜80容量%、軽油基材を水素分圧が3〜15MPa、温度が250〜420℃、液空間速度が0.3〜10.0hr -1 、水素/オイル比が100〜2,000L/Lの条件で水素化精製することにより得られる、セタン価が36以下、全芳香族分が36〜60容量%、初留点が110〜200℃、終点が300〜400℃、15℃における密度が0.840〜0.990g/cm3である水添軽油を20〜80容量%配合することを特徴とする。
本発明の軽油組成物によれば、石油系の接触分解軽油基材(LCO)やオイルサンド由来の軽油基材等の低品質な軽油基材、さらには石油系の重質な軽油基材を有効利用できる効果を奏することで石油のノーブルユースとエネルギーセキュリティーに貢献し、且つ、製造時のCO2排出量並びに製造コスト、及びNOx等の排出ガスの量を増加させることなく、燃費に優れるという格別な効果を奏する。
以下に、本発明の詳細を説明する。本発明の軽油組成物は、例えば、石油系の接触分解軽油基材(LCO)やオイルサンド由来の軽油基材等の低品質な軽油基材のような低質油を原料とし、該原料をマイルドな運転条件で水素化精製して得た基材を、重質な軽油に多く混合した軽油組成物であって、品質が以下の性状を有する燃料であり、DPFを装着したディーゼルエンジン用の燃料として用いられることを特徴とする。
<密度>
本発明の軽油組成物は、15℃での密度が0.840〜0.870g/cm3である。軽油組成物の密度が0.870g/cm3を超えると、燃料の霧化特性の悪化などから、エンジン出口の粒子状物質(PM)の排出量が顕著に増加して、DPF通過後のPMも増大するので環境負荷を十分に低減できない。また、密度が高過ぎると、燃焼効率の低下を引き起こす場合があるため、本発明の軽油組成物は、密度が0.870g/cm3以下、好ましくは0.865g/cm3以下、更に好ましくは0.860g/cm3以下である。一方、密度が0.840g/cm3未満では、容量基準の燃料消費率の向上効果が小さくなるので、本発明の軽油組成物は、密度が0.840g/cm3以上、好ましくは0.845g/cm3以上、更に好ましくは0.850g/cm3以上である。
<硫黄分>
本発明の軽油組成物は、硫黄分が50質量ppm以下であり、好ましくは15質量ppm以下、更に好ましくは10質量ppm以下である。本発明の軽油組成物は、硫黄分が50質量ppm以下であるため、燃焼生成物である硫黄酸化物が少なく、環境負荷の低減に寄与できる。また、硫黄分は、PMを酸化・除去するDPF触媒を被毒するので、硫黄分の低減は、PMの浄化率を維持するために極めて重要である。更に、NOx吸蔵還元触媒を装着した車輌においては、該触媒の硫黄被毒の再生に燃料を使用するので、硫黄分の低減は、燃費の向上にも寄与する。そして、これらの効果は、硫黄分が低い程顕著であるため、本発明の軽油組成物中の硫黄分は50質量ppm以下であり、好ましくは15質量ppm以下、更に好ましくは10質量ppm以下である。
<蒸留性状>
本発明の軽油組成物は、初留点(IBP)が150〜250℃であり、好ましくは170〜250℃、更に好ましくは180〜250℃である。軽油組成物の初留点が150℃を下回ると、高温条件下では燃料の噴射系に燃料蒸気が発生し、必要な燃料噴射量を確保できなくなることが懸念される。また、初留点が低過ぎると、燃料の取り扱いや燃料の供給システムでの燃料の気化に伴う危険性が増すことからも、初留点は150℃以上であることが必要であり、好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上である。また、初留点が250℃を超えると、本発明の軽油組成物に利用できる軽油基材の量(得率)が少なくなりすぎるので、経済性や必要な軽油基材量の確保の観点から、本発明の軽油組成物は、初留点が250℃以下である。また、初留点が高過ぎると、軽油組成物の低温流動性の悪化や、粘度の増大を招くことからも、本発明の軽油組成物は、初留点が250℃以下であることを要する。
また、本発明の軽油組成物は、終点(EP)が300〜370℃であり、好ましくは330〜365℃、更に好ましくは340〜360℃である。軽油組成物の終点が370℃を超えると、粒子状物質(PM)の排出量増加が顕著になり、DPF通過後のPMも増大するので環境負荷を十分に低減できない。また、終点が高過ぎると、未燃の燃料の一部がオイルパンへと流れ込み、エンジンオイルの希釈を引き起こし易くなるので、本発明の軽油組成物の終点は370℃以下であることが必要であり、好ましくは365℃以下、更に好ましくは360℃以下である。また、本発明の軽油組成物は、燃料噴射ポンプの潤滑性の維持や燃料噴射ノズルの摩耗防止の観点から、終点が300℃以上であることを要し、好ましくは330℃以上、更に好ましくは340℃以上である。
<セタン価>
本発明の軽油組成物は、セタン価が45以上、好ましくは48以上、更に好ましくは50以上である。セタン価が45未満では、特に低温始動条件下において、着火性の悪化によって着火遅れが長くなり、排出ガスの悪化が顕著になる。さらに、セタン価の低下は燃焼変動の増大を引き起こし、エンジン性能の悪化を起こすので、本発明の軽油組成物は、セタン価が45以上、好ましくは48以上、更に好ましくは50以上である。一方、セタン価がある値以上になると、セタン価の向上に伴う着火遅れの短縮が得られないので、必要以上に高くすることは、エンジン性能上からは無意味である。また、セタン価を高めると、製造時のCO2排出量が増加するばかりでなく、燃料の製造価格が高くなるので、経済性の観点からも、エンジンが要求する最低のセタン価に設定する必要があり、特に限定されるものではないが、セタン価を60以下とすることが好ましく、57以下とすることが更に好ましい。
<芳香族>
本発明の軽油組成物は、全芳香族分が40容量%以下であり、好ましくは35容量%以下、更に好ましくは30容量%以下である。軽油組成物中の芳香族の含有量が増大し過ぎると、DPF通過後でも粒子状物質(PM)の排出量が増加して、環境負荷を十分に低減できないからである。また、本発明の軽油組成物は、全芳香族分が20容量%以上であり、好ましくは25容量%以上、更に好ましくは28容量%以上である。軽油組成物中の芳香族の含有量が多いほど、製造時のCO2排出量並びに製造コストを抑えることができ、且つマイルドに水素化精製した低質油をより多く混合できるので、石油のノーブルユースとエネルギーセキュリティーに貢献するからである。さらには、軽油組成物中の芳香族の含有量が少な過ぎると、自動車の燃料系ゴム材が設計上見込まれる程には膨張しないので、燃料の滲みや漏れを引き起こす原因となる。また、特に限定されるものではないが、2環以上の芳香族が1環芳香族よりもPM排出量の増加への影響が大きいので、本発明の軽油組成物中の2環以上芳香族含有量は、好ましくは15容量%以下、より好ましくは10容量%以下、更に好ましくは7容量%以下であるなお、石油系軽油では、芳香族含有量と密度には大凡の相関性があり、密度と芳香族含有量の両者が高い燃料では排出ガス(特に、PM)の悪化が顕著であるため、高密度燃料では、全芳香族分は35.0容量%以下が望ましい。
(軽油組成物の調製)
上記の交通流対策では、軽油が「都市間走行用(大型ディーゼルエンジン車用)軽油(トラック用軽油)」と「都市内走行用(小型ディーゼルエンジン車用)軽油(乗用車用軽油)」に分けられる。前者、すなわち本発明の軽油組成物には、マイルドな条件で水素化精製された(製造時のCO2排出量が少ない)分解系軽油基材を混合することができる。また、本発明の軽油組成物は、輸送業者などが保有する大型の燃料給油所に供給して利用され、後者の軽油は一般の給油所(SS)に供給して利用されることとなるが、実態としては大型ディーゼルエンジン車でもSSを利用する場合があると想定される。また、上述と逆の場合(即ち、小型ディーゼルエンジン車が大型給油所を利用する場合)は、殆どないと予想されるが、消費者の利便性を損なわないように、ディーゼルエンジン車の種別によらずに利用しても、両軽油の品質はエンジン性能に悪影響を及ぼさない規格とすることが好ましい。具体的には、以下の製造条件を全て満たすことで、本発明の効果が得られる。
1)市販型軽油の全留分、すなわち初留点約140℃から終点370℃までの範囲の留分を全てディーゼルエンジン車用燃料の軽油として利用する。
2)マイルドな条件で水素化精製した分解系軽油基材を20容量%以上混合する。
上記の条件を全て満たし、上記の性状を満たす本発明の軽油組成物を生産するためには、製油所で生産される脱硫軽油基材を250〜320℃、特には280〜300℃で分留し、軽質留分は乗用車用軽油に、重質留分にはマイルドな条件で水素化精製した接触分解軽油基材(LCO)を混合して本発明の軽油組成物とすることで対応できる。すなわち、乗用車用軽油は軽質化で対応し、一方、大型ディーゼルエンジン車用の軽油、すなわち、本発明の軽油組成物は重質化に伴うセタン価の向上効果を低セタン価であるマイルドな条件で水素化精製したLCOの有効利用に活用し、且つ高密度である両者(重質油、水添LCO)の混合で、本発明の軽油組成物を製造できる。
一方、軽油基材を250〜320℃、特には280〜300℃で分留した軽質油は、排出ガスが少ない環境対応型軽油として、乗用車に利用できるので、軽油基材留分を全てディーゼルエンジン車に利用でき、トータルの軽油生産量を削減することとはならないので、LCOの有効利用が図られる分、エネルギーセキュリティーに寄与することとなる。
なお、軽油の軽質化が排出ガスの削減に効果があることは広く知られており、北欧の一部の国では、都市型軽油として市販された実績がある。しかしながら、環境対応型軽油として提案されている軽質軽油は、種々散見されるが、残りの重質留分の活用法は提案されていない。従って、軽油の需要に変化がなければ、軽質留分の利用割合が増加するほど、残りの一般軽油が重質化することを意味しており、ディーゼルエンジン車の種別(小型、大型車)によらず、一般軽油を利用する状況下では、軽質軽油のみの導入(重質油の有効活用がない対応)は、トータルでは大気環境の改善に寄与しないこととなる。
本発明の軽油組成物は、上記の性状を満たすように、分解系軽油基材(LCO)やオイルサンド由来の軽油基材等の低品質な軽油基材、特には、セタン価が30以下で、全芳香族分が50容量%以上の軽油基材(低質油)を原料に用い、該軽油基材(低質油)をマイルドな条件で水素化精製することにより得られる水添軽油(以下、水添軽油という)に、水素化脱硫した軽油基材を250〜320℃、特には280〜300℃で分留した重質留分(以下、重質軽油という)を混合して調製することができる。水添軽油に関しては、特定の芳香族濃度を有する軽油、例えば分解系軽油留分(例えば、初留点120℃から終点400℃までの温度範囲の留分)を特定の条件で水素化精製することにより、適切なセタン価を有し、しかも残留硫黄分の低い軽油留分を得ることができる。さらに、反応塔を2基に分けて、その中間に既知の硫化水素除去装置を設けて水素化脱硫工程で生じた硫化水素を除去することも有効である。また、本発明の軽油組成物は、高圧流通式反応器に固定床式触媒を形成した通常の反応装置を使用し、かつ比較的マイルドな反応条件で軽油留分を処理して調製することもできる。よって、本発明によれば、例えば余剰の分解系軽油をディーゼル燃料等の軽油留分へ経済的に転化することができる。
(重質軽油)
上記重質軽油の性状は、セタン価が60〜80、特には65〜75、全芳香族分が15〜30容量%、特には16〜20容量%、初留点が260〜300℃、特には280〜300℃、終点が320〜400℃、特には350〜380℃、15℃における密度が0.830〜0.900g/cm3、特には0.830〜0.850g/cm3である。本発明の軽油組成物は、上記した軽油組成物の性状を満たすように、該重質軽油を基材として軽油組成物全量基準で20〜80容量%含むことが好ましい。該重質軽油の混合割合は、更に好ましくは30〜70容量%であり、より好ましくは45〜65容量%である。軽油基材の有効利用の観点で20容量%以上が好ましく、物理性状や化学性状を所望の範囲にしやすいので80容量%以下が好ましい。
上記の低質油のマイルドな水素化精製に使用する水素化精製触媒は、特に限定されるものではないが、以下に例示する担体に金属を担持した触媒が好ましい。担体としては種々のものが使用できるが、例えば、シリカ、アルミナ、ボリア、マグネシア、チタニア、ゼオライトなどの無機酸化物が挙げられる。これらの無機酸化物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記担体に6族金属、8族金属から選ばれる少なくとも1種の金属を担持した触媒が好ましい。水素化精製条件は、水素分圧が3〜15MPa、温度が250〜420℃、液空間速度が0.3〜10.0hr-1、水素/オイル比が100〜2,000L/Lの範囲で適宜選択すればよい。
(水添軽油)
上記の水素化精製条件で低質油をマイルドに水素化精製して得た水添軽油の性状は、セタン価が36以下、特には30以下、全芳香族分が36〜60容量%、特には45〜50容量%、初留点が110〜200℃、特には140〜180℃、終点が300〜400℃、特には330〜380℃、15℃における密度が0.840〜0.990g/cm3、特には0.860〜0.900g/cm3である。本発明の軽油組成物は、上記した軽油組成物の性状を満たすように、該水添軽油を基材として軽油組成物全量基準で20〜80容量%含むことが好ましい。なお、該水添軽油の混合割合は、更に好ましくは30〜70容量%であり、より好ましくは35〜55容量%である。該水添軽油の配合量が20容量%未満では、低品質な軽油基材を十分に利用できなくなり、一方、80容量%を超えると、排出ガス性状(特に、PM)の悪化が顕著であるため、好ましくは80容量%以下である。
<添加剤>
(セタン価向上剤)
本発明の軽油組成物には、必要に応じてセタン価向上剤を添加しても良く、上記セタン価向上剤としては、アルキルナイトレート系セタン価向上剤や、有機過酸化物系セタン価向上剤が挙げられる。ここで、上記アルキルナイトレート系セタン価向上剤としては、炭素数6〜12のアルキルナイトレートが好ましく、2−メチルヘキシルナイトレートが特に好ましい。また、上記有機過酸化物系セタン価向上剤としては、炭素数6〜12のジアルキルパーオキサイドが好ましく、ジ−t−ブチルパーオキサイドが特に好ましい。そして、これらセタン価向上剤の添加量は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。セタン価向上剤の添加量を増すとセタン価は高くなるが、その増加の割合は、添加量が0.5質量%を超えると極めて小さくなるので、セタン価向上剤添加の費用対効果の観点から添加量は0.5質量%以下とすることが好ましい。
(その他の添加剤)
また、本発明の軽油組成物には、任意に、軽油組成物の安定性を確保するための酸化防止剤、軽油組成物の低温流動性を確保するための低温流動性向上剤、軽油組成物の潤滑性を確保するための潤滑性向上剤、エンジンの清浄性を確保するための清浄剤等を適宜添加することができる。
ここで、上記酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤や、N,N'−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤、およびこれらの混合物が挙げられる。ここで、これら酸化防止剤の添加量は、0.001〜0.10質量%の範囲が好ましい。酸化防止剤の添加効果は大きいので、実用的には0.10質量%の添加で十分な効果が得られるからである。
上記低温流動性向上剤としては、公知のエチレン共重合体等が挙げられ、特に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の飽和脂肪酸のビニルエステルが好ましい。これら低温流動性向上剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
上記潤滑性向上剤としては、長鎖(例えば、炭素数12〜24)の脂肪酸またはその脂肪酸エステルが挙げられる。そして、軽油組成物に対し該潤滑性向上剤を10〜500質量ppm、好ましくは50〜100質量ppm添加することにより、軽油組成物の潤滑性を向上して燃料噴射器の摩耗を抑制することができる。
上記清浄剤としては、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミン等が挙げられる。これら清浄剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
<DPF付きディーゼルエンジン>
上述した本発明の軽油組成物は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)が装着されたディーゼルエンジンに用いられる。該ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は、エンジンから排出される微粒子(PM)を捕集し、一定の走行距離(例えば、150km程度)に達したら(DPFへのPM捕集量が一定値に達したと推定される距離)、DPFの温度を高めてPMを燃焼させ、PMを浄化する装置であり、PMの浄化率は80%以上に達する。したがって、極端な低質燃料を用いないならば、PMは十分に削減され、燃料性状のPMへの影響は極めて小さくなるので、DPF触媒に悪影響を及ぼす硫黄分を除けば、燃料性状への要求は小さくなる。すなわち、より広範囲な性状を有する燃料を利用できることとなる。また、DPFを装着したディーゼルエンジンであれば、低質な燃料を使用しても、DPF通過後のPMは殆ど、または、全く増大しないため、低質な燃料の使用が可能となる。そして、低質な燃料は、製油所における水素化精製条件がマイルドであるため、製造時のCO2排出量(WtT−CO2)が少なく、製造時のCO2排出量とエンジンからのCO2排出量の合計で見た場合、従来の軽油よりも、WtW−CO2(合計でのCO2排出量)を低減できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<軽油組成物の調製>
まず以下のようにして、評価試験のために用いる軽油組成物(燃料−1〜燃料−11)を調製した。これら燃料−1〜燃料−11の組成等の分析値を表1に示す。
・燃料−1:市販JIS 2号軽油
・燃料−2:石油系直留軽油基材を280℃で分留した重質留分
・燃料−3:LCOをマイルドな条件で水素化精製した燃料 [LCOを原料として、Ni、Mo系触媒の存在下で、反応温度360℃、水素分圧11MPa、水素/オイル比1002、通油量1.0h-1で水素化精製した製品の初留点156.0℃〜終点349.5℃留出分]
・燃料−4:LCOをシビアな条件で水素化精製した燃料 [LCOを原料として、Ni、Mo系触媒の存在下で、反応温度360℃、水素分圧14MPa、水素/オイル比997、通油量0.5h-1で水素化精製した製品の初留点138.0℃〜終点341.5℃留出分]
・燃料−5:LCOをマイルドな条件で水素化精製した燃料 [LCOを原料として、Ni、Mo系触媒の存在下で、反応温度380℃、水素分圧8MPa、水素/オイル比996、通油量0.5h-1で水素化精製した製品の初留点110.5℃〜終点350.0℃留出分]
・燃料−6:軽油基材を280℃で分留した重質留分(燃料−2)60容量%と、LCOをマイルドな条件で水素化精製した燃料(燃料−3)40容量%との混合物 [(60%燃料−2)+(40%燃料−3)]
・燃料−7:軽油基材を280℃で分留した重質留分(燃料−2)60容量%と、LC
Oをマイルドな条件で水素化精製した燃料(燃料−5)40容量%との混合物 [(60%燃料−2)+(40%燃料−5)]
・燃料−8:燃料−1が60容量%と、LCOをマイルドな条件で水素化精製した燃料(燃料−3)が40容量%の混合物 [(60%燃料−1)+(40%燃料−3)]
・燃料−9:燃料−1が60容量%と、LCOをシビアな条件で水素化精製した燃料(燃料−4)が40容量%の混合物 [(60%燃料−1)+(40%燃料−4)]
・燃料−10:燃料−1が90容量%と、LCOをマイルドな条件で水素化精製した燃料(燃料−3)が10容量%の混合物 [(90%燃料−1)+(10%燃料−3)]
・燃料−11:石油系直留軽油基材を280℃で分留した軽質留分にアルキルナイトレートセタン価向上剤を0.5(容量%)添加 [燃料−2の軽質留分にセタン価向上剤を添加]
<燃料の性状分析>
・密度:JIS K2249「原油及び石油製品の密度試験法」
・蒸留性状:JIS K2254「蒸留試験法」
・硫黄分:JIS K2541−6「硫黄分試験法(紫外蛍光法)」
・全芳香族分、2環以上の芳香族分:石油学会法JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」
・セタン価:JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価およびセタン価試験方法並びにセタン指数算出法」
・H分とC分:有機元素分析装置(LECO社製CHN−1000型)を用いて測定した。
<供試機関諸元と運転条件>
気筒数:1
排気量:1007(cm3
圧縮比:20
燃料噴射系:コモンレール、高圧噴射
後処理装置:Ptを担持した触媒を有するディーゼルパティキュレートトラップ
エンジン回転速度を1300(rpm)に固定し、20(%)及び80(%)負荷条件での排出ガス及び燃費を測定した。また、始動性はエンジン及び環境温度を室温に10時間以上保った後に、エンジンを始動し、燃焼挙動を解析した。
<エンジン性能評価方法>
燃焼解析:圧力センサーで燃焼室内圧力を検出して司測研製燃焼装置で、図示平均有効圧力、燃焼変動などの燃焼挙動を解析した。
排出ガス:堀場製排出ガス分析装置を用いて、排出ガス中のPM、NOx、HC、CO、CO2を分析した。
始動性:上述の燃焼解析で得た図示平均有効圧力の観察から、始動直後の燃焼変動の大きさ、燃焼が安定するまでの時間から始動性を評価した。
燃料消費率(燃費):司測研製燃料流量計で燃料消費速度(ml/分)を測定し、上述の燃焼解析で得た図示平均有効圧力(kg/cm2)から、燃費(ml/kw・h)を算出した。
<エンジン性能の評価・判定方法>
エンジン試験で各燃料からの排出ガスは、市販軽油JIS 2号軽油(燃料−1)を基準に、これよりも排出ガスが多い燃料を(×)、同等な燃料を(△)、少ない燃料を(○)として表した。また、始動性も排出ガスと同様に、燃料−1との比較で評価し、燃料−1よりも始動性が悪い燃料を(×)、同等な燃料を(△)、良好な燃料を(○)で表した。さらに、燃費も燃料−1を基準として、各燃料の燃費向上度(%)で表した。
<LCO水素化精製時のCO2排出量>
LCOを水素化精製する条件である温度や水素消費量などから、精製に伴うCO2排出量を算出し、マイルドな水素化精製条件である燃料−3及び燃料−5と、シビアな条件である燃料−4を比較した結果、燃料−4の条件では燃料−3及び燃料−5の条件に比較して、水素消費量が極めて多いのでCO2排出量が多い。また、水素分圧が高いことなどから水素化精製に伴う経済性も燃料−4の方が悪い。したがって、LCO水素化精製時(LCO水添時)のCO2排出量は、燃料−3及び燃料−5を(○)、燃料−4を(×)とした。これらの結果を表1に示す。
Figure 0005448647
表1に示した各燃料の評価結果は次の通りである。まず、燃料−2は、エンジン性能には問題は無いが、分解系軽油基材が活用されていない。また、燃料−3と燃料−5共に、分解系軽油基材の活用の点では優れているが、満足すべきエンジン性能が得られない。また、燃料−4は、エンジン性能、分解系軽油基材の活用の点では、共に満足できるが、シビアな水素化精製条件であるため、製造時のCO2排出量や経済性の観点で問題がある。また、燃料−8は、分解系軽油基材が活用されているものの、満足すべきエンジン性能が得られない。また、燃料−9は、エンジン性能、分解系軽油基材の活用の点では、共に満足できるが、燃料−4に比較すると軽微であるものの、燃料−4を混合しているので、製造時のCO2排出量や経済性の観点で問題が残る。また、エンジン性能、製造時のCO2排出量や経済性の観点を満足するように調合した燃料−10では、分解系軽油基材の混合比率が少ないため、本発明の前提条件を満たしていない。
一方、燃料−6と燃料−7は共に、燃費が良い上、エンジン性能、分解系軽油基材の活用の点でも共に満足でき、更には、製造時のCO2排出量や経済性の観点でも問題がなく、最適である。
また、燃料−2の軽質留分は、セタン価向上剤を添加すると燃料−11となり、燃費は劣るが、環境対応型軽油として有効に利用できるので、本発明が解決しようとする課題の条件2、すなわち、上記のエネルギーセキュリティー、石油のノーブルユースや経済性の観点で、製油所で製造される既存の軽油基材留分を有効利用する(特定の留分や成分のみが利用され、残りの留分や成分の利用法が見出せない対応は避ける)点を満足している。

Claims (2)

  1. 軽油基材を水素分圧が3〜15MPa、温度が250〜420℃、液空間速度が0.3〜10.0hr -1 、水素/オイル比が100〜2,000L/Lの条件で水素化精製することにより得られる水添軽油に、軽油基材を250〜320℃で分留した重質留分である重質軽油を混合してなり、
    セタン価が45以上、全芳香族分が20〜40容量%、初留点が150〜250℃、終点が300〜370℃、硫黄分が50質量ppm以下、15℃における密度が0.840〜0.870g/cm3であることを特徴とする、ディーゼルパティキュレートフィルターを装着したディーゼルエンジン用の軽油組成物。
  2. 軽油基材を250〜320℃で分留した重質留分である、セタン価が60〜80、全芳香族分が15〜30容量%、初留点が260〜300℃、終点が320〜400℃、15℃における密度が0.830〜0.900g/cm3である重質軽油を20〜80容量%、
    軽油基材を水素分圧が3〜15MPa、温度が250〜420℃、液空間速度が0.3〜10.0hr -1 、水素/オイル比が100〜2,000L/Lの条件で水素化精製することにより得られる、セタン価が36以下、全芳香族分が36〜60容量%、初留点が110〜200℃、終点が300〜400℃、15℃における密度が0.840〜0.990g/cm3である水添軽油を20〜80容量%配合することを特徴とする、請求項1記載の軽油組成物の製造方法。
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