JP5565678B2 - アクリル型共重合体 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル型共重合体に関する。
従来から、無機ガラスより加工性、光透過率、比重、安全性等に優れた有機ガラスとしてアクリル型樹脂が検討されてきた。例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)は光透過率が高く且つ強靭な材料であることから、自動車部品用材料、光学部材用材料等の用途に用いられてきた。そして、近年では、アクリル型樹脂をより幅広い用途に用いるためにPMMAよりも高度な耐熱性や弾性率等を有するアクリル型樹脂の出現が望まれおり、種々のアクリル型重合体が研究されてきた。
例えば、H.Yanaka et al.,"Conversion-Dependent Molecular Weight of the Polymer in Free Radical Polymerization of Captodative Substituted(Acyloxy)acrylates", Macromolecules, Vol.30, No.14,(1997年)p.4010〜4012(非特許文献1)においては、α位に炭素数の少ないアシロキシ基を有するアクリル酸エステルの重合体が開示されている。しかしながら、このような非特許文献1に記載のアクリル型重合体は、本発明者らが調査したところ、PMMAと同等の弾性率(通常の使用温度領域(常温:25℃)における弾性率、以下「常温弾性率」という。)等を有するものではあるものの、熱分解温度以下ではほとんど軟化しないものであり、一般的な成形方法では成形できず、成形性の点で必ずしも十分なものではなかった。
また、大石ら,"アクリル塗料代替を目指したピルビン酸由来アクリル樹脂の開発",Polymer Preprints, Japan, Vol.57, No.1,(2008年)p.2111(非特許文献2)においては、α−アセトキシアクリル酸エチル(EAA)とアクリル酸n−ブチル(BA)とを共重合して得られるアクリル型共重合体が開示されている。しかしながら、このような非特許文献2に記載のような従来のアクリル型共重合体は、本発明者らが調査したところ、耐衝撃性の観点では必ずしも十分なものではなかった。
さらに、特開2005−255991号公報(特許文献1)においては、α−アセトキシアクリル酸エチル(EAA)等の第一のアクリル型モノマーと、α−アセトキシアクリル酸ブチル等の第二のアクリル型モノマーとを重合して得られるアクリル型共重合体が開示されている。このような特許文献1に記載の従来のアクリル型共重合体はPMMAと同等又はそれ以上の貯蔵弾性率を有しつつPMMAよりも耐熱性が高く、しかも熱分解温度以下で軟化する特性を有している。しかしながら、このような特許文献1に記載のような従来のアクリル型共重合体は耐衝撃性の観点では必ずしも十分なものではなかった。
特開2005−255991号公報
H.Yanaka et al.,"Conversion-Dependent Molecular Weight of the Polymer in Free Radical Polymerization of Captodative Substituted(Acyloxy)acrylates", Macromolecules, Vol.30, No.14,(1997年)p.4010〜4012 大石ら,"アクリル塗料代替を目指したピルビン酸由来アクリル樹脂の開発",Polymer Preprints, Japan, Vol.57, No.1,(2008年)p.2111
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、PMMAと同等又はそれ以上の耐熱性及び十分に高度な常温弾性率を有し、軟化温度が熱分解温度よりも低く、十分に成形性に優れ、しかも十分に高度な耐衝撃性を有するアクリル型共重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、原料モノマーとして下記一般式(1)で表される第一のアクリル型モノマー、下記一般式(2)で表される第二のアクリル型モノマー及びメタクリル酸メチルを少なくとも用い、上記原料モノマー中の前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとの質量比([第一のアクリル型モノマー]:[第二のアクリル型モノマー])が50:50〜99:1となるようにして共重合することにより、得られるアクリル共重合体が、PMMAと同等又はそれ以上の耐熱性と十分に高度な常温弾性率とを有し、軟化温度が熱分解温度よりも低く、十分に成形性に優れ、しかも十分に高度な耐衝撃性を有するものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のアクリル型共重合体は、少なくとも、下記一般式(1):
Figure 0005565678
[式(1)中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基、及び、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい縮合数が3以下の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を示し、
、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、及び、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基からなる群から選択される基を示す。]
で表される第一のアクリル型モノマーと、下記一般式(2):
Figure 0005565678
[式(2)中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、R及びRのうちの少なくとも一方は、主鎖を構成する炭素原子の数が4〜60の脂肪族炭化水素基、及び、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基からなる群から選択される基を示し、R及びRのうちの残りは、脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基、及び、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を示し、
、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、及び、脂肪族炭化水素基からなる群から選択される基を示す。]
で表される第二のアクリル型モノマーと、メタクリル酸メチルとを共重合してなり前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとの質量比([第一のアクリル型モノマー]:[第二のアクリル型モノマー])が50:50〜99:1であり、且つ、前記メタクリル酸メチルの含有量がモノマーの総量を基準にして5〜55質量%であることを特徴とするものである。

上記本発明のアクリル型共重合体においては、前記メタクリル酸メチルの含有量がモノマーの総量を基準にして5〜50質量%であることが好ましい。
また、上記本発明のアクリル型共重合体においては、前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとの合計量がモノマーの総量を基準にして40〜95質量%であることが好ましい。
さらに、上記本発明のアクリル型共重合体においては、数平均分子量が10000〜500000であることが好ましい。
なお、本発明のアクリル型共重合体により上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のアクリル型共重合体において原料モノマーとして利用する第一及び第二のアクリル型モノマーは、モノマー中にエステル基をそれぞれ二つ有しており、かかるエステル基が得られる共重合体中において嵩高い置換基として振舞う。そのため、第一及び第二のアクリル型モノマーのみを共重合した場合においては、得られる共重合体中において嵩高い置換基(エステル基)同士が反発して主鎖が非常に剛直なものとなり、共重合体の分子同士の絡み合いによる相互作用を必ずしも十分に得ることができない。一方、このような分子間の絡み合いによる相互作用は共重合体の耐衝撃性を向上させる重要な要因の一つである。そのため、第一及び第二のアクリル型モノマーのみを共重合して得られる共重合体においては、分子同士の絡み合いによる相互作用を必ずしも十分に得ることができないことに起因して、耐衝撃性を必ずしも十分なものとすることができないものと本発明者らは推察する。そこで、本発明においては、原料モノマーとして第一及び第二のアクリル型モノマーとともにメタクリル酸メチルを用いている。このようなメタクリル酸メチルは一分子中に含まれるエステル基が一つだけであるため、第一及び第二のアクリル型モノマーとともにメタクリル酸メチルを共重合してなる共重合体は、第一及び第二のアクリル型モノマーのみを共重合してなる共重合体と比較して嵩高い置換基の量が少なくなる。また、このように第一及び第二のアクリル型モノマーとともにメタクリル酸メチルを共重合することにより、メタクリル酸メチルに由来するモノマー単位により、主鎖中に折れ曲がり部分(エステル基同士の反発の無い部分)を導入することができ、主鎖の剛直性を低下させることができる。そのため、本発明のアクリル型共重合体においては、分子間の絡み合いが増加し、第一及び第二のアクリル型モノマーのみを用いてなる共重合体と比較して耐衝撃性が飛躍的に向上するものと本発明者らは推察する。また、本発明のアクリル型共重合体においては、第一及び第二のアクリル型モノマーのみを共重合してなる共重合体と比較して主鎖の剛直性が低下するため、主鎖の運動性も向上し、加熱溶融時の流動性が向上する。また、このように主鎖の運動性が向上することにより、成形温度を十分に低くすることも可能となり、成形性が十分に向上するばかりか、成形時の劣化をより高いレベルで抑制できるようになるものと本発明者らは推察する。なお、第一及び第二のアクリル型モノマーとともに、メタクリル酸メチル以外の他のメタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸エチル等)を共重合した場合には、得られる共重合体の耐衝撃性は十分に向上しない。このようにメタクリル酸メチル以外の他のメタクリル酸エステルを用いた場合に耐衝撃性が向上しない理由は必ずしも定かではないが、メタクリル酸エステルのエステル基中に炭素数が1を超えた炭化水素基(エチル基、プロピル基、ブチル基等)が含まれる場合には、これを共重合した際に、かかるエステル基に起因して共重合体が軟質化し、この軟質化が耐衝撃性に影響を与えることから、耐衝撃性が十分に向上しなくなるものと推察される。また、このように共重合体が軟質化した場合には、共重合体の耐熱性も低下し、耐熱性の観点からも必ずしも十分なものとは言えなくなる。これに対して、メタクリル酸メチルを用いる本発明のアクリル共重合体においては、共重合体の軟質化が適度な範囲にあり、十分に高度な成形性を有しつつも耐熱性の低下が十分に抑制されている。そのため、本発明のアクリル共重合体においては十分に高度な成形性と十分に高度な耐熱性とが両立できるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、PMMAと同等又はそれ以上の耐熱性及び十分に高度な常温弾性率を有し、軟化温度が熱分解温度よりも低く、十分に成形性に優れ、しかも十分に高度な耐衝撃性を有するアクリル型共重合体を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のアクリル型共重合体は、少なくとも第一のアクリル型モノマーと第二のアクリル型モノマーとメタクリル酸メチルとを共重合してなり且つ前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとの質量比([第一のアクリル型モノマー]:[第二のアクリル型モノマー])が50:50〜99:1であることを特徴とするものである。 このような第一のアクリル型モノマーは、下記一般式(1):
Figure 0005565678
[式(1)中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基、及び、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい縮合数が3以下の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を示し、
、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、及び、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基からなる群から選択される基を示す。]
で表されるモノマーである。
このようなR、Rとして選択され得る、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基において、「主鎖」とはその脂肪族炭化水素基を構成する最も長い鎖をいう。このような主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基が挙げられ、中でも、得られる共重合体の弾性率及び耐熱性の観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基が好ましい。なお、前記一般式(1)中のR、Rのうちの少なくとも1種が主鎖を構成する炭素原子の数が4以上の脂肪族炭化水素基である場合には、得られる共重合体の弾性率が低下する。
また、R及びRが共に前記脂肪族炭化水素基の場合には、弾性率の向上という観点からは、両者がメチル基、エチル基、イソプロピル基及びt−ブチル基からなる群から選択される基であることが好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましい。R及びRが共に脂肪族炭化水素基の場合にそれらの主鎖を構成する炭素原子の数が3を超えると、得られる共重合体の弾性率が低下する傾向にある。
、Rとして選択され得る、前記脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基としては、1−メトキシプロピル基、(1−メチルチオ)エチル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルアミノメチル基等が挙げられる。なお、このような脂肪族基における酸素原子の置換量は、全炭素原子の半分以下であることが好ましい。酸素原子の置換量が全炭素原子の半分を超えると、得られる共重合体の弾性率及び耐熱性が低下する傾向にある。
また、R、Rとして選択され得る、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい縮合数が3以下の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、イソプロピルフェニル基、エチルナフチル基、メトキシアントリル基等が挙げられる。このような一般式(1)中のR、Rのうちの少なくとも1種が、縮合数が4以上の芳香族炭化水素基(前記置換基を有する場合を含む。)である場合には、得られる共重合体の高温における弾性率が高くなり過ぎて成形性が低下する。
また、一般式(1)中のR、Rとしては、これらのうちの少なくとも一方が主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、その両方が主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましい。
また、R、Rとして選択され得る、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基は、R、Rにおいて説明したものと同様のものであり、その好適なものも同様である。また、一般式(1)中のR、Rとしては、重合反応性がより向上するという観点から、これらのうちの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、その両方が水素原子であることが特に好ましい。なお、前記第一のアクリル型モノマーは、1種類のものを単独で用いてもよく、或いは2種類以上のものを混合して用いてもよい。
第二のアクリル型モノマーは、下記一般式(2):
Figure 0005565678
[式(2)中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、R及びRのうちの少なくとも一方は、主鎖を構成する炭素原子の数が4〜60の脂肪族炭化水素基、及び、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基からなる群から選択される基を示し、R及びRのうちの残りは、脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基、及び、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を示し、
、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、及び、脂肪族炭化水素基からなる群から選択される基を示す。]
で表されるモノマーである。
、Rとして選択され得る、主鎖を構成する炭素原子の数が4〜60の脂肪族炭化水素基としては、例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−デセニル基、ラウリル基、ミリスチル基、ミリストレイル基、n−ペンタデシル基、n−ペンタデセニル基、パルミチル基、パルミトレイル基、n−ヘキサデカジエニル基、n−ヘキサデカトリエニル基、n−ヘキサデカテトラエニル基、n−ヘプタデカニル基、n−ヘプタデセニル基、ステアリル基、オレイル基、リノーリル基、α−リノレニル基、γ−リノレニル基、n−オクタデカテトラエニル基、アラキジニル基、n−イコセニル基、n−イコサジエニル基、n−イコサトリエニル基、n−イコサテトラエニル基、アラキドニル基、n−イコサペンタエニル基、n−ヘンイコサペンタデセニル基、ベヘニル基、n−ドコセニル基、n−ドコサジエニル基、n−ドコサテトラデセニル基、n−ドコサペンタエニル基、n−ドコサヘキサエニル基、リグノセリニル基、テトラコセニルが挙げられ、中でも、モノマーの合成し易さ及び得られる共重合体の弾性率の観点から、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ラウリル基、n−ペンタデシル基、ステアリル等の主鎖を構成する炭素原子の数が4〜20のものが好ましい。なお、このような主鎖を構成する炭素原子の数が4〜60の脂肪族炭化水素基は、主鎖の炭素数が60を超えない範囲でアルキル基又は前記アルキル基中の炭素原子の一部が酸素で置換された基を置換基として有していてもよい。また、前記一般式(2)中のR、Rの少なくとも一方が主鎖を構成する炭素原子の数が4以上となる脂肪族炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基であって、R、Rの組合せが前記一般式(2)中に記載されているものとならない場合には、得られる共重合体の成形性が低下する。他方、前記一般式(2)中のR、Rに、主鎖を構成する炭素原子の数が60を超える脂肪族炭化水素基であって、R、Rの組合せが前記一般式(2)中に記載されているものとならない場合には、得られる共重合体の弾性率及び耐熱性が低下する。
、Rとして選択され得る、前記脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換していている脂肪族基としては、特に制限されないが、例えば、2−エトキシエチル基、3−エトキシデシル基等が挙げられる。
また、上述のように、R、Rは少なくとも一方が、主鎖を構成する炭素原子の数が4〜60の脂肪族炭化水素基、及び、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基からなる群から選択される基であり、R及びRのうちの残りの一方は、脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基、及び、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基からなる群から選択される基である。
このようなR及びRのうちの残りの一方の基としては、モノマー合成時の精製し易さ(R及びRが共に、主鎖がより長いもの(主鎖を構成する炭素原子の数がより大きな値のもの)となると、モノマーの沸点がより高くなり、蒸留等での精製がより困難となる傾向にある。)の観点から、脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。このような脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜20のアルキル基であることがより好ましく、1〜10のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。なお、このような脂肪族炭化水素基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
、Rとして選択され得る脂肪族炭化水素基としては、重合反応性がより向上するという観点から、主鎖を構成する炭素原子の数が4以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
また、一般式(2)中のR、Rとしては、重合反応性がより向上するという観点から、これらのうちの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、その両方が水素原子であることが特に好ましい。なお、このような第二のアクリル型モノマーは、1種類のものを単独で用いてもよく、或いは2種類以上のものを混合して用いてもよい。
このような第一及び第二のアクリル型モノマーの調製方法は特に制限されるものではなく、第一及び第二のアクリル型モノマーを調製することが可能な方法を適宜採用すればよい。例えば、一般式(1)中のR及びRが共に水素原子である第一のアクリル型モノマーとしては、下記反応式(I):
Figure 0005565678
[反応式(I)中のR及びRは一般式(1)中のR及びRと同義である。]
で表される反応を利用してもよい。なお、このような反応式(I)中におけるエステル化等の反応条件は特に制限されず、用いる化合物(反応式中のROHやRCOCl)の種類等に応じて適宜変更すればよい。また、ピルビン酸エチル等(反応式(I)中の一般式(I−2)で表されるピルビン酸エステル)が市販されているため、一般式(I)で表されるピルビン酸を用いず、当初より一般式(I−2)で表されるピルビン酸エステル(市販品)を用い、それにRCOClあるいは(RCO)O等を反応させて、最終生成物(一般式(I−3)で表される化合物)を製造してもよい。
また、本発明においては、前記第一のアクリル型モノマー及び前記第二のアクリル型モノマーとともにメタクリル酸メチルを共重合する。このようなメタクリル酸メチルを第一のアクリル型モノマー及び前記第二のアクリル型モノマーとともに用いることでアクリル型共重合体の耐衝撃性を飛躍的に増加させることが可能となる。
本発明においては、前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとの質量比([第一のアクリル型モノマー]:[第二のアクリル型モノマー])は50:50〜99:1である。このような第一のアクリル型モノマーの質量比が前記下限未満では、弾性率及び耐熱性が十分なものならず、他方、前記上限を超えると、成型性が低下する。また、同様の観点から、前記質量比([第一のアクリル型モノマー]:[第二のアクリル型モノマー])としては、50:50〜90:10であることが好ましい。また、第二のアクリル型モノマー中のR、Rの少なくとも一方が主鎖を構成する炭素原子の数が6〜10の脂肪族炭化水素基である場合には、前記質量比は60:40〜99:1であることが好ましく、60:40〜90:10であることがより好ましい。更に、第二のアクリル型モノマー中のR、Rの少なくとも一方が主鎖を構成する炭素原子の数が11〜60の脂肪族炭化水素基である場合には、前記質量比は70:30〜99:1であることが好ましく、70:30〜90:10であることがより好ましい。
さらに、前記第一のアクリル型モノマー及び前記第二のアクリル型モノマーの合計量としては、本発明のアクリル型共重合体の製造に用いるモノマーの全量に対して40〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。このような第一のアクリル型モノマー及び第二のアクリル型モノマーの合計量が前記下限未満では、弾性率と耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、メタクリル酸メチルを用いることにより得られる効果(例えば耐衝撃性の向上等)が低減する傾向にある。
また、前記メタクリル酸メチルの含有量としては、本発明のアクリル型共重合体の製造に用いるモノマーの全量に対して5〜50質量%であることが好ましい。このようなメタクリル酸メチルの含有量が前記下限未満では耐衝撃性を十分に向上させることが困難になるばかりか十分に高度な成形性を得ることが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、PMMAと比較してアクリル型共重合体の弾性率及び耐熱性を十分に向上させることが困難になる傾向にある。また、十分な耐衝撃性を得つつPMMAと比較して弾性率と耐熱性をより十分に向上させるという観点からは、前記メタクリル酸メチルの含有量は15〜35質量%であることがより好ましい。
なお、本発明のアクリル型共重合体においては、本発明の効果(特に、共重合体の弾性率、耐熱性、耐衝撃性)を損なわない範囲において、前記第一のアクリル型モノマー、前記第二のアクリル型モノマー及びメタクリル酸メチル以外の他のモノマーを用いることができる。このような他のモノマーとしては、前記第一のアクリル型モノマー、前記第二のアクリル型モノマー及びメタクリル酸メチルに共重合可能なものであればよく、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸及びこれらのエステル(ただし、メタクリル酸メチルは除く)等;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;無水マレイン酸、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−クロルスチレン等;が挙げられる。また、このような他のモノマーの含有量としては、本発明のアクリル型共重合体の製造に用いるモノマーの全量に対して10質量%以下であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
また、本発明のアクリル型共重合体は、少なくとも、前記第一のアクリル型モノマーと、前記第二のアクリル型モノマーと、メタクリル酸メチルとを共重合せしめてなるものであるが、このような共重合の際に採用し得る重合方法としては特に制限されず、前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとメタクリル酸メチルとを共重合することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。このような公知の重合方法としては、例えば、エマルション重合法、ソープフリーエマルション重合法、溶液重合法、溶媒を用いないモノマーのみによる重合法、懸濁重合法、ラジカル重合法、アニオン重合法、光重合法等が挙げられ、その際に用いられる重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、n−ブチルリチウム等)、溶剤(キシレン、トルエン、イソプロパノール、水等)等としても公知のものが適宜選択して用いられる。
また、このような重合反応における諸条件は、採用する重合方法に沿って適宜設定することができるものではあり、特に制限されないが、例えば、重合開始剤の含有量をモノマーに対して0.01〜10mol%程度とし、モノマー濃度を10〜100wt%程度とし、雰囲気を窒素等の不活性ガス雰囲気とし、反応温度を−100〜150℃程度とし、反応時間を1〜48時間程度とするような条件を採用してもよい。
本発明のアクリル型共重合体は、少なくとも、第一のアクリル型モノマーと、第二のアクリル型モノマーと、メタクリル酸メチルとを共重合せしめてなるものであるため、少なくとも、下記一般式(3)〜(5):
Figure 0005565678
[式(3)〜(5)中のR〜Rは上記一般式(1)中のR〜Rと同義であり、R〜Rは上記一般式(2)中のR〜Rと同義であり、*は隣接する繰り返し単位との結合部位を示す。]
で表わされるモノマー単位を含有するものとなる。このようなアクリル型共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、各モノマーの単独重合体の特性(低常温弾性率、低耐熱性)を、アクリル型共重合体が示さないようにするという観点からランダム共重合体であることが好ましい。
また、本発明のアクリル型共重合体の分子量としては、数平均分子量が10000〜500000であることが好ましい。このような数平均分子量が10000より低いと成形体が脆くなり、実用性が低下する傾向にあり、他方、500000より高いと成形し難くなる傾向にある。また、このような数平均分子量としては、共重合体の物性と成形性をより向上させるという観点からは、40000〜300000であることがより好ましい。なお、このような数平均分子はサイズ排除クロマトグラフィーを行うことにより測定することができる。
本発明のアクリル型共重合体は、耐衝撃強さ(Izod衝撃強さ)が7.0kJ/m以上であることが好ましく、10.0kJ/m以上であることがより好ましい。このような「耐衝撃強さ」は、射出成形により製造した縦:30mm、横6mm、厚み3mmの大きさの試験片を用い、室温(25℃)の温度条件下において、アイゾット衝撃試験(ノッチなし)を行うことにより測定でき、その測定装置としては、例えば、Custom Scientific Instruments Inc.社製の商品名「MINIMAX CS−183TI−082」を使用することができる。なお、本発明のアクリル型共重合体を上述のような高度な耐衝撃性を有するものとすることが可能な理由は必ずしも定かではないが、本発明のアクリル型共重合体中のメタクリル酸メチルに由来するモノマー単位(上記一般式(5)で表されるモノマー単位)が、その構造単位中に含まれるエステル基が一つだけのものであるため、嵩高いエステル基の量を少なくでき、そのメタクリル酸メチルに由来するモノマー単位により主鎖中に折れ曲がり部分(エステル基同士の反発の無い部分)を導入できるため、分子間の絡み合いを増加させることが可能となり、これにより耐衝撃性が向上することに由来するものと本発明者らは推察する。
また、本発明のアクリル型共重合体としては、25℃における弾性率(常温弾性率)が、PMMAの弾性率よりも高度な3.5×10Pa超であるものが好ましい。このような「常温弾性率」としては、射出成形やプレス成形により製造した縦:40mm、横5mm、厚み2mmの大きさの試験片を用い、粘弾性スペクトロメーター(アイティー計測制御株式会社製の商品名「DVA−220」)を用いて室温(25℃)で測定した粘弾性の値を採用する。
さらに、本発明のアクリル型共重合体としては、PMMAよりも高度な耐熱性を有するものが好ましく、粘弾性が1.0×10Pa以下になる温度(軟化温度)が100℃超のものがより好ましい。なお、成形性の観点からは、前記軟化温度の上限は250℃以下であることが好ましい。このような軟化温度は、射出成形により製造した縦:40mm、横5mm、厚み2mmの大きさの試験片を用い、試験片を0℃から加熱しながら粘弾性スペクトロメーター(アイティー計測制御株式会社製の商品名「DVA−220」)を用いて試験片の粘弾性を測定し、その粘弾性の値が1.0×10Paとなる温度を測定することにより求めることができる。なお、本発明のアクリル型共重合体においては、共重合に用いるメタクリル酸メチルの含有量をアクリル型共重合体の共重合に用いるモノマーの全量に対して5〜50質量%とすることにより、PMMAよりも高度な耐熱性を有しつつ十分な成形性を有するアクリル型共重合体を、より効率よく製造することが可能となる。
また、本発明のアクリル型共重合体は、熱分解温度よりも低い温度(例えば250℃以下程度の温度)で成形することが可能であり、成形性にも優れたものである。なお、本発明のアクリル型共重合体の成形温度としては、270℃を超える温度になると熱分解し易くなる傾向にあることから、250℃以下とすることが好ましく、150〜250℃とすることがより好ましい。また、本発明のアクリル型共重合体から成る成形体を製造する際の成形方法としては特に制限されず、公知の成形方法を適宜採用することができ、例えば、射出成形、プレス成形、押出成形、紡糸、インサート成形、二色成形等のいずれの成形方法を好適に採用することができる。
さらに、本発明のアクリル型共重合体においては、その特性を損なわない限りにおいて、充填剤、可塑剤、顔料、安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、滑剤、染料、抗菌剤、末端封止剤等の添加剤を更に添加してもよい。このような添加剤の含有量は、本発明のアクリル型共重合体中において、30質量%以下であることが好ましい。
また、本発明のアクリル型共重合体は、十分に高度な耐衝撃性を発揮することが可能であるとともに十分に高度な弾性率及び耐熱性を発揮することも可能であり、しかも透明性の高いものである。従って、透明性が必要な用途にはそのまま用いることも可能である。また、用途に応じて顔料等を添加することにより着色して用いることも可能であり、利便性の高い樹脂材料である。そのため、本発明のアクリル型共重合体は、例えば、樹脂ガラス、ランプカバー等の透明部品、インストルメントパネル、カーペット、天井用材料等の内装用部品等の自動車用部品、樹脂ガラス、飲料用容器、電化製品の筐体、光導波路用材料、光ケーブル、光通信用ケーブル、カーペット、洋服等のための繊維、樹脂ネジ、樹脂ナット、電子基盤等に好適に利用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(合成例1:α−アセトキシアクリル酸エチルの合成)
先ず、ピルビン酸エチル(315g、2.7mo1)と無水酢酸(554g、5.4mo1)の混合物に、p−トルエンスルホン酸一水和物(8g)を加えて、窒素気流下、120℃で24時間攪拌し、反応溶液を得た。次に、前記反応溶液から減圧下(40〜50mmHg)で過剰な無水酢酸と反応により生成した酢酸を取り除いた後、残渣を減圧蒸留(35〜40mmHg、90〜103℃)により精製して、α−アセトキシアクリル酸エチル(250g、収率58%)を得た。
なお、α−アセトキシアクリル酸エチルは、上記一般式(1)で表される第一のアクリル型モノマー(式(1)中のRがメチル基であり、Rがエチル基であり且つR及びRが共に水素原子である化合物)として利用できるモノマーである。以下、α−アセトキシアクリル酸エチルを場合により「EAA」と呼ぶ。
(合成例2:α−アセトキシアクリル酸ブチルの合成)
先ず、ピルビン酸(440g、5.0mo1)とn−ブタノール(371g,5.0mo1)とp−トルエンスルホン酸一水和物(2.5g)のトルエン(1L)溶液を、窒素気流下で水を除去しながら16時間加熱還流して、第一の反応溶液を得た。次に、第一の反応溶液を室温(25℃)に冷却した後、エバポレーターを用いて減圧下(40mmHg)でトルエンを取り除き、残渣を減圧蒸留(40mmHg、93〜100℃)により精製して、ピルビン酸ブチル(505g、収率70%)を得た。
次いで、得られたピルビン酸ブチル(235g,1.6mo1)と無水酢酸(333g,3.3mo1)の混合物に、p−トルエンスルホン酸一水和物(5g)を加えて、窒素気流下、120℃で25時間攪拌して、第二の反応溶液を得た。次に、第二の反応溶液から減圧下(5mmHg)で過剰な無水酢酸と反応により生成した酢酸を取り除いた後、残渣を減圧蒸留(2mmHg,56〜63℃)により精製して、α−アセトキシアクリル酸ブチル(200g、収率67%)を得た。
なお、α−アセトキシアクリル酸ブチルは、上記一般式(2)で表される第二のアクリル型モノマー(式(2)中のRがメチル基であり、Rがブチル基であり且つR及びRが共に水素原子である化合物)として利用できるモノマーである。以下、α−アセトキシアクリル酸ブチルを場合により「BAA」と呼ぶ。
(合成例3:α−アセトキシアクリル酸オクチルの合成)
ピルビン酸(440g、5.0mo1)とn−オクタノール(651g、5.0mo1)とp−トルエンスルホン酸一水和物(2.5g)のトルエン(1L)溶液を、窒素気流下で水を除去しながら16時間加熱還流して、第一の反応溶液を得た。次に、第一の反応溶液を室温(25℃)に冷却した後に、エバポレーターを用いて減圧下(40mmHg)でトルエンを取り除き、残渣を減圧蒸留(2mmHg、82〜92℃)により精製して、ピルビン酸オクチル(762g、収率76%)を得た。
次いで、得られたピルビン酸オクチル(300g、1.5mo1)と無水酢酸(306g、3.0mo1)の混合物に、p−トルエンスルホン酸一水和物(5g)を加え、窒素気流下、120℃で27時間攪拌して、第二の反応溶液を得た。次に、第二の反応溶液から減圧下(5mmHg)で過剰な無水酢酸と反応により生成した酢酸を取り除いた後、残渣を減圧蒸留(1mmHg以下、80〜102℃)により精製して、α−アセトキシアクリル酸オクチル(215g、収率59%)を得た。
なお、α−アセトキシアクリル酸オクチルは、上記一般式(2)で表される第二のアクリル型モノマー(式(2)中のRがメチル基であり、Rがオクチル基であり且つR及びRが共に水素原子である化合物)として利用できるモノマーである。以下、α−アセトキシアクリル酸ブチルを場合により「OAA」と呼ぶ。
(実施例1〜8)
合成例1で得られたEAAと、合成例2で得られたBAAと、メタクリル酸メチル(MMA)とを原料モノマーとして用い、これらの原料モノマーが表1に示す共重合比(質量比)となるようにして共重合させてアクリル型共重合体を製造した。すなわち、表1に示す質量比の原料モノマー(EAA、BAA及びMMA)と、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(原料モノマーの総量に対して0.4mol%)とを、濃度が80wt%となるようにして所定量のキシレンに溶解し、原料モノマー溶液を得た。次に、前記原料モノマー溶液に10分間窒素バブリングを行った後に、窒素気流下において、60℃で10時間攪拌して重合反応を進行せしめ、反応溶液を得た。次いで、前記反応溶液をジクロロメタン(300ml)に溶解して溶解液を得た後、かかる溶解液をメタノール(5L)中にゆっくりと滴下し、沈殿を生成せしめた。その後、沈殿物(白色の重合体)をろ過により採取し、一晩(14時間)真空乾燥することにより、アクリル型共重合体(EAAとBAAとMMAとの共重合体)を得た。なお、得られた共重合体の数平均分子量を表中に併せて示す。
Figure 0005565678
(実施例9〜15)
合成例2で得られたBAAの代わりに合成例3で得られたOAAを用い、且つ、原料モノマーの共重合比が表2に示す共重合比となるようにした以外は実施例1と同様にして、アクリル型共重合体(EAAとOAAとMMAとの共重合体)を得た。
Figure 0005565678
(比較例1〜8)
メタクリル酸メチル(MMA)の代わりに、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、アクリル酸メチル(MA)及びアクリル酸ブチル(BA)のうちのいずれか1種の比較用モノマーを用い、且つ、原料モノマーの共重合比が表3に示す共重合比となるようにした以外は、実施例1と同様にして、比較のためのアクリル型共重合体(EAAとBAAと比較用モノマーとの共重合体)を得た。
Figure 0005565678
(比較例9〜14)
メタクリル酸メチル(MMA)の代わりに、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)及びアクリル酸メチル(MA)のうちのいずれか1種の比較用モノマーを用い、且つ、原料モノマーの共重合比が表4に示す共重合比となるようにした以外は、実施例9と同様にして、比較のためのアクリル型共重合体(EAAとOAAと比較用モノマーとの共重合体)を得た。
Figure 0005565678
(比較例15〜16)
原料モノマーとしてEAAとBAAのみを用いるか或いはEAAとOAAのみを用い、原料モノマーの共重合比が表5に示す共重合比となるようにした以外は、実施例1と同様にして、比較のためのアクリル型共重合体(EAAとBAAとの共重合体(比較例15)又はEAAとOAAとの共重合体(比較例16))を得た。
Figure 0005565678
(比較例17)
PMMA(クラレ社製、商品名:パラペットG1000)を、そのまま比較のためのアクリル型共重合体として利用した。
[実施例1〜15及び比較例1〜17で得られたアクリル型共重合体の特性]
〈耐衝撃強さの測定〉
先ず、実施例1〜15及び比較例1〜17で得られたアクリル型共重合体を用いて、各共重合体を200〜240℃の温度にして溶融した後に射出成形することにより、縦:30mm、横6mm、厚み3mmの大きさの試験片をそれぞれ作成した。次に、各試験片を用い、測定装置としてCustom Scientific Instruments Inc.社製の商品名「MINIMAX CS−183TI−082」を利用して、室温(25℃)の温度条件下において、アイゾット衝撃試験(ノッチなし)を行って、各アクリル型共重合体の耐衝撃強さ(Izod衝撃強さ、単位:kJ/m)を測定した。結果を表6に示す。
〈常温弾性率及び軟化温度の測定〉
先ず、実施例1〜15及び比較例1〜17で得られたアクリル型共重合体を用いて、各共重合体を200〜240℃の温度にして溶融した後に射出成形することにより、縦:40mm、横5mm、厚み2mmの大きさの試験片をそれぞれ作成した。そして、各試験片を用い、粘弾性スペクトロメーター(アイティー計測制御株式会社製の商品名「DVA−220」)を利用して、室温(25℃)での弾性率を測定することにより常温弾性率を測定した。また、常温弾性率に測定後の各試験片を用い、各試験片の温度が0℃から2℃昇温するごとに各試験片の粘弾性を測定し、粘弾性の値が1.0×10Pa以下となった温度(軟化温度)を測定した。結果を表6に示す。
Figure 0005565678
表6に示す結果からも明らかなように、原料モノマーとして第一のアクリル型モノマー(EAA)と第二のアクリルモノマー(BAA又はOAA)とメタクリル酸メチル(MMA)とを用いた本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)においては、第一のアクリル型モノマー(EAA)と第二のアクリルモノマー(BAA又はOAA)のみからなる比較のためのアクリル共重合体(比較例15〜16:MMAを含有していない共重合体)と比較して、耐衝撃強さの値が2倍以上の大きさ(7.0kJ/m以上の大きさ)となっており、耐衝撃性が十分に向上していることが確認された。また、本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)においては、比較例15〜16で得られたアクリル共重合体と比較して、軟化温度が低く成形性がより高度なものとなっていることが確認された。一方、原料モノマーとして第一のアクリル型モノマー(EAA)と第二のアクリルモノマー(BAA又はOAA)とともに比較用モノマー(EMA、BMA、MA又はBA)を用いた比較のためのアクリル型共重合体(比較例1〜14)においては、比較例15〜16で得られたアクリル共重合体と比較して、必ずしも十分に耐衝撃性を向上させることができないことが確認された。なお、MA及びBA以外の比較用モノマーを共重合して得られたアクリル型共重合体のなかでも比較用モノマーの共重合比を30質量%としているアクリル型共重合体(比較例2、比較例4、比較例10及び比較例12)においては、衝撃強さが4.8〜5.2kJ/mとなっており、衝撃強さが若干向上しているものの、軟化温度が100℃未満の温度になっており、耐熱性が大幅に低下することが確認された。このような結果から、MA及びBA以外の比較用モノマーを用いた系のアクリル型共重合体においては、比較用モノマーの共重合比をより大きくするほど耐熱性が低下する傾向にあるものと推察される。また、比較用モノマーを用いた系のアクリル型共重合体(比較例1〜14)においては、耐熱性と常温弾性率を十分なものとしつつ、耐衝撃強さを十分に高度なものとすることができないことが分かった。
また、本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)においては、PMMA(比較例17)と比較して、いずれも高い常温弾性率を有することが確認された。また、本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)においては、PMMAと同等又はそれ以上の軟化温度を有するものであることも確認された。このような結果から、本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)は、PMMAと同等又はそれ以上の耐熱性及び十分に高度な常温弾性率を有するものとなることが確認された。また、本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)のなかでも、MMAの共重合比を20質量%以上とした場合(実施例2〜4、実施例7〜8、実施例10〜11及び実施例14〜15)においては、耐衝撃強さの値が10.0kJ/mとなっており、より高度な耐衝撃性を有するものとなることが確認された。また、MMAの共重合比を55質量%未満とした場合(実施例4以外の実施例)においては、軟化温度をPMMAよりも高い温度とすることが可能であり、より高度な耐熱性を有するものとなることが分かった。
また、試験片の製造時に各共重合体の溶融温度を測定したところ、比較例15〜16で得られたアクリル共重合体と比較して、MMAを10重量%共重合しているアクリル型共重合体(実施例1、実施例5〜6、実施例9及び実施例12〜13)においては溶融温度を約10℃低くできることが確認され、MMAを20質量%共重合したアクリル型共重合体(実施例2、実施例7〜8、実施例10及び実施例14〜15)においては溶融温度を約15℃低くできることが確認され、MMAを30質量%以上共重合したアクリル型共重合体(実施例3〜4及び実施例11)においては溶融温度を15℃以上低くできることが確認された。また、このような測定により本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)は、比較例15〜16で得られたアクリル共重合体と比較して、成形時の流動性をより高くできることも確認された。このような結果から、本発明のアクリル型共重合体(実施例1〜15)は、比較例15〜16で得られたアクリル共重合体と比較して、十分に高度な成形性を有するものとなることが確認されるとともに成形時の劣化をより高いレベルで抑制できることが分かった。
以上のような結果から、第一のアクリル型モノマー(EAA)と第二のアクリルモノマー(BAA又はOAA)を含有するアクリル共重合体の系において、十分に高度な耐衝撃性と優れた耐熱性及び常温弾性率を達成するためには、第一のアクリル型モノマー及び第二のアクリルモノマーとともにメタクリル酸メチル(MMA)を用いることが有効であることが確認されるとともに、MMAを用いることにより、成形性もより十分に向上することが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、PMMAと同等又はそれ以上の耐熱性及び十分に高度な常温弾性率を有し、軟化温度が熱分解温度よりも低く、十分に成形性に優れ、しかも十分に高度な耐衝撃性を有するアクリル型共重合体を提供することが可能となる。従って、本発明のアクリル型共重合体は、樹脂ガラス、ランプカバー等の透明部品、インストルメントパネル、カーペット、天井用材料等の内装用部品等の自動車用部品、樹脂ガラス、飲料用容器、電化製品の筐体、光導波路用材料、光ケーブル、光通信用ケーブル、カーペット、洋服等のための繊維、樹脂ネジ、樹脂ナット、電子基盤等に好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 少なくとも、下記一般式(1):
    Figure 0005565678
    [式(1)中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基、及び、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい縮合数が3以下の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を示し、
    、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、及び、主鎖を構成する炭素原子の数が3以下の脂肪族炭化水素基からなる群から選択される基を示す。]
    で表される第一のアクリル型モノマーと、下記一般式(2):
    Figure 0005565678
    [式(2)中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、R及びRのうちの少なくとも一方は、主鎖を構成する炭素原子の数が4〜60の脂肪族炭化水素基、及び、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基からなる群から選択される基を示し、R及びRのうちの残りは、脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基、及び、前記脂肪族炭化水素基又は前記脂肪族基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を示し、
    、Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、及び、脂肪族炭化水素基からなる群から選択される基を示す。]
    で表される第二のアクリル型モノマーと、メタクリル酸メチルとを共重合してなり前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとの質量比([第一のアクリル型モノマー]:[第二のアクリル型モノマー])が50:50〜99:1であり、且つ、前記メタクリル酸メチルの含有量がモノマーの総量を基準にして5〜55質量%であることを特徴とするアクリル型共重合体。
  2. 前記メタクリル酸メチルの含有量がモノマーの総量を基準にして5〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル型共重合体。
  3. 前記第一のアクリル型モノマーと前記第二のアクリル型モノマーとの合計量がモノマーの総量を基準にして40〜95質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリル型共重合体。
  4. 前記共重合体の数平均分子量が10000〜500000であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のアクリル型共重合体。
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