JP5585445B2 - ラウロラクタムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シクロドデカノンオキシムから、工業的に有利で簡便なプロセスによりラウロラクタムを製造する方法に関する。
工業的にアミド化合物を製造する方法としては、対応するオキシム化合物をベックマン転位する方法が一般的である。例えば、工業的に有用であるε−カプロラクタムはシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によって製造される。転位触媒には濃硫酸および発煙硫酸が用いられるが、これらの強酸は化学量論量以上に必要であり、中和の際に大量の硫酸アンモニウムが副生する。ナイロン12の原料であるラウロラクタムも同様の方法で製造されるが、中間生成物であるシクロドデカノンオキシムが高融点であるため、製造プロセスはさらに複雑である。ε−カプロラクタムの製造では、シクロヘキサノンオキシム、ε−カプロラクタムとも比較的低融点であるため、無溶媒でオキシム化、転位を行うことができるが、ラウロラクタムの製造では反応溶媒が必要となる。この反応溶媒はシクロドデカノンオキシムの溶解度が高いこと、濃硫酸、発煙硫酸と反応しないことが必須であり、その選択は非常に制約される。
シクロドデカノンとヒドロキシルアミン水溶液から、ラウロラクタムを工業的に製造する方法としては、以下の文献に記載の方法が知られている。
特許文献1に記載の方法は以下の通りである。イソプロピルシクロヘキサンを溶媒に用いてシクロドデカノンをオキシム化した後、分液して得られたシクロドデカノンオキシムのイソプロピルシクロヘキサン溶液を低温下で濃硫酸中に徐々に加えてシクロドデカノンオキシム硫酸付加体の硫酸溶液をつくり、イソプロピルシクロヘキサンを分離回収後、残存するシクロドデカノンオキシム硫酸付加体の硫酸溶液を昇温して、オキシムのベックマン転位を行う。転位反応後、水を加えて硫酸を希釈した後、生成したラウロラクタムを有機溶媒で抽出する。ここで、抽出溶媒としては、イソプロピルシクロヘキサンまたはシクロドデカノンが用いられる。得られた抽出溶液から抽出溶媒を蒸留・回収し、残渣中のラウロラクタムを蒸留精製する。
この方法では、転位反応工程での硫酸アンモニウムの副生はないが、大量の廃希硫酸の処理に膨大な設備とエネルギーが必要である。また、シクロドデカノンは濃硫酸と反応し、副生物が生成するため、シクロドデカノンが残存しないようにオキシム化反応を完結させる必要があるが、イソプロピルシクロヘキサンが疎水性のため、油/水界面での物質移動速度が遅く、オキシム化に長時間を要する。なお、プロセス全体をみても、溶媒の分離、回収、リサイクル工程が多く、多大な設備費とエネルギーが必要なプロセスである。
特許文献2に記載の方法は以下の通りである。シクロドデカノンとシクロヘキサノンの混合液とヒドロキシルアミン水溶液を混合し、オキシム化を行う。生成するシクロヘキサノンオキシムは融点が低く、シクロドデカノンオキシムの良溶媒であるため、反応は100℃以下、常圧で行うことができる。また、シクロヘキサノンオキシムは適度な親水性を有するため、オキシム化反応は速やかに進行し、シクロヘキサノン、シクロドデカノンは残存することなく、転位工程に送られる。転位触媒としては濃硫酸および発煙硫酸が用いられる。生成するラウロラクタムは高融点であるが、同時に生成する低融点のカプロラクタムへの溶解性が高いため、100℃以下の温度でも反応を行うことができる。得られた転位反応液はアンモニア水で中和し、有機溶媒で抽出する。カプロラクタムはある程度の水溶性を示すが、中和によって生じた硫酸アンモニウムの塩析効果によって、有機溶媒側に抽出される。次に、抽出されたラウロラクタムおよびカプロラクタムを含む溶液に大量の水を加え、カプロラクタムを水相側に抽出する。分離された有機相からは有機溶媒を回収し、ラウロラクタムを蒸留・精製する。一方、水相は濃縮後、不純物を除去し、カプロラクタムを精製する。
この方法はラウロラクタムとカプロラクタムを併産できる優れた方法であるが、ラウロラクタム製造プロセスとしては、次のような問題がある。(1)カプロラクタムの分離・精製に多大な設備費が必要であり、投資効率が悪い。また、カプロラクタム水溶液の濃縮等エネルギー効率も悪い。(2)ラウロラクタム/カプロラクタムの生産比率に制約がある。(3)カプロラクタムはラウロラクタムより低付加価値であり、ヒドロキシルアミンの利用効率も低い。
特許文献3には、(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含み、(2)芳香環を構成する原子として、ヘテロ原子または電子吸引基を有する炭素原子のいずれかの一方または両方を少なくとも3つ含み、(3)前記のヘテロ原子または電子吸引基を有する炭素原子のうち2つが、前記脱離基を有する炭素原子のオルトあるいはパラ位に位置する芳香環含有化合物を転位触媒として、極性溶媒中でオキシム化合物のベックマン転位を行う方法が記載されている。また、非特許文献1には、特許文献3で開示された転位触媒を用いた転位反応の詳細が記載されている。
特許文献4、5及び6は、非特許文献1において非極性溶媒を用いた場合、転位収率が低い点に着目し、これを改良して使用可能な溶媒の範囲を非極性溶媒まで拡大している。一般的に非極性溶媒は極性溶媒に比べ熱的、化学的に安定であり、沸点が低く、蒸発潜熱も小さいため、溶媒の回収・リサイクルが容易である一方、極性の高い有機物や無機物を溶かし難い。
発明者らは特許文献3で開示された触媒のうち、トリクロロトリアジンを選択し、シクロドデカノンオキシムとの反応について詳細に検討を行った。
特許文献3及び非特許文献1ではケトキシム(R1-C(-R2)=N-OH:ここでR1、R2はアルキル基を示し、連結してシクロアルカンを形成していてもよい。)のベックマン転位におけるトリクロロトリアジン(R3-Cl:ここでR3はジクロロトリアジル基を示す。)の触媒作用機構について以下のように説明されている。
まず、トリクロロトリアジンとケトキシムから塩化水素が脱離し、R1-C(-R2)=N-O-R3(エーテル体)を形成する。このエーテル体が転位反応によって、R1-N=C(-R2)-O-R3となり、これにケトキシムが付加し、マイゼンハイマーコンプレックス(R1-N=C(-R2)-O-R3 --O+-(H)-N=C(R2)-R1)を経由して、アミド(R1-NH-C(=O)-R2)が脱離生成すると共にR1-C(-R2)=N-O-R3が再生される。
上記機構に従えば、トリクロロトリアジンは反応初期に速やかに消費され、シクロドデシリデンアミノキシジクロルトリアジン( R1-C(-R2)=N-O-R3に相当、以下MOCTと略記する)を形成し、上記反応サイクルに沿って反応が進行するため、反応開始時に触媒量のトリクロロトリアジンを添加すれば、本反応サイクルは完成されるはずである。しかし、触媒量のトリクロロトリアジンを用いてシクロドデカノンオキシムの反応を行った場合、一定の転化率で反応が停止することがわかった。
トリクロロトリアジンは水によって加水分解されトリオキシトリアジンを生成することが知られている。トリオキシトリアジンは転位触媒能を持たない。また、トリクロロトリアジンは脱離しうる3個の塩素原子を有しており、そのうち何個が加水分解されれば、転位触媒としての活性を失うか明確にされていない。
従って、転位反応に供されるシクロドデカノンオキシム溶液中の水を完全に除去すれば、少量のトリクロロトリアジン添加においても転位反応を完結することは可能と推測される。しかし、シクロドデカノンオキシムは親水性のオキシム基を有するため水を吸着しやすく、シクロドデカノンオキシム溶液を絶乾することは容易ではない。
一方、上記反応機構に従えば、MOCTの生成とトリクロロトリアジンの加水分解は競走反応となるため、MOCTの生成速度がトリクロロトリアジンの加水分解速度と比べて速ければ、必ずしもシクロドデカノンオキシム溶液を絶乾する必要はない。
発明者らは、まず反応液を経時的に分析し、転位反応停止の機構解明を行った。その結果、シクロドデカノンオキシムの転位反応が進行すると、トリクロロトリアジンが再生され、それが、次第にトリオキシトリアジンに変化していくことが判明した。
つまり、原料であるシクロドデカノンオキシムが十分な量存在している反応初期は上記反応サイクルに沿って反応が進行するが、反応終盤ではシクロドデカノンオキシム濃度が低くなるためマイゼンハイマーコンプレックスの生成速度が遅くなり、2-アザシクロトリデカノキシジクロルトリアジン(R1-N=C(-R2)-O-R3に相当)にトリクロロトリアジンとシクロドデカノンオキシムとからMOCTが生成する際に発生した塩化水素が反応して、ラウロラクタムが生成すると共にトリクロロトリアジンが再生され、その加水分解が進行してトリオキシトリアジンが生成し、転位反応が停止したものと推定した。
また、トリクロロトリアジンの加水分解の結果生じたトリオキシトリアジン及びその前駆体の非極性溶媒中での溶解度は極めて低いため、反応器内で析出し器壁に付着する。固形物の反応器内での析出は、反応容器の熱伝導率を低下させるため、商業装置における安定した運転を困難にし、好ましくない。従来の文献等においては、斯かる触媒残渣の反応器内での析出を回避する手段を開示したものは見当たらない。
なお、本発明においては、転位工程に添加された転位触媒であるトリクロロトリアジンの化学構造が変化し、転位活性を失うと共に固体として析出するものを不活性析出物と呼び、化学構造の変化がなく、反応液中に溶解しているものを残存触媒と呼んで区別する。また、化学構造が変化するが、触媒活性を有するものを活性中間体と呼ぶ。また、触媒とは、前記3者を含む総合的な呼称として用いる。
特公昭52−033118 特開平5−4964 特開2006−219470号公報 DE102006058190 特開2007−284415号公報 特開2008−156277号公報
K.Ishihara,et.al.,Journal of American Chemical Society,pp.11240−11241(2005)
トリクロロトリアジンを転位触媒として用い、シクロドデカノンオキシムから液相転位反応によりラウロラクタムを製造する方法において、一定の転化率で反応が停止することを解決し、および/またはトリクロロトリアジンから生成する不活性析出物の反応工程内での析出を防止し、不活性析出物、活性中間体および残存触媒を除去する方法を提供する。
発明者らは、トリクロロトリアジンを触媒に用いたシクロドデカノンオキシムの転位反応について検討した結果、以下の発明に至った。
即ち本発明は以下の事項に関する。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、トリクロロトリアジンを転位触媒として用いて、シクロドデカノンオキシムの液相転位反応によりラウロラクタムを製造する方法において、シクロドデカノンオキシム溶液中の水分をトリクロロトリアジンの2倍モル以下まで脱水することを特徴とするラウロラクタムの製造方法にある。
本発明の第2の態様は、(a)トリクロロトリアジンを転位触媒として用い、非極性溶媒中でシクロドデカノンオキシムを転化率が80%以上、99%未満となるように液相転位させる転位反応工程と、(b)転位反応を完結させる後加熱工程と、(c)不活性析出物、活性中間体、残存触媒を除去する触媒除去工程とを有することを特徴とする、ラウロラクタムの製造方法にある。
本発明により、トリクロロトリアジンを転位触媒として用い、シクロドデカノンオキシムから液相転位反応によりラウロラクタムを製造する方法において、第1の態様では、一定の転化率で反応が停止することなく高選択率、高収率でラウロラクタムを製造することができ、第2の態様では、トリクロロトリアジンから生成する不活性析出物の反応工程内での析出を防止し、不活性析出物、活性中間体および残存触媒を除去し、ラウロラクタムを工業的に安定して製造することができる。
実施例28の概略図である。
本発明は、トリクロロトリアジンを転位触媒として用い、シクロドデカノンオキシムから液相転位反応によりラウロラクタムを製造する方法に関する。
以下の説明では、特に言及しないかぎり、第1及び第2の態様に共通して適用される。
原料であるシクロドデカノンオキシムは通常の方法で製造することができる。例えば、シクロドデカノンに過酸化水素水及びアンモニア水を加えて触媒存在下でアンモ酸化し製造する方法やシクロドデカンを塩化水素の共存下、光エネルギーを利用して塩化ニトロシルと反応させて、シクロドデカノンオキシムを製造する方法(光ニトロソ化)が挙げられる。最近ではN‐ヒドロキシフタルイミドを触媒に用い、シクロドデカンと亜硝酸エステルから製造する方法等が知られているが、最も工業的に確立されている製造方法はシクロドデカノンとヒドロキシルアミンとを反応させる方法である。
シクロドデカノンオキシムは融点が高いためオキシム化と転位のいずれの反応も溶媒を用いて行う必要がある。オキシム化と転位の反応の溶媒が同一の場合はオキシム化反応で用いられた溶媒を転位反応にそのまま用いる事ができるが、異なる場合には溶媒交換を行う。
第1の態様において、転位反応の溶媒として適しているものは、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロオクタン、シクロドデカン、イソプロピルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、デカリン、テトラリン等の縮合芳香族化合物の水添物等が挙げられる。これらの溶媒のうち、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロオクタン、シクロドデカン、イソプロピルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、デカリン、テトラリン等の縮合芳香族化合物の水添物はオキシム化反応の溶媒としても使用することができ、溶媒交換の必要がなく好ましい。さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の非極性溶媒はシクロドデカノンオキシムの溶解度が高く、転位装置がコンパクトになり、溶媒の回収、リサイクルのためのエネルギーも節約できるため特に好ましい。
第2の態様において、転位反応の溶媒として適しているものは、第1の態様と同様、ニトリル化合物、カルボン酸、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、縮合芳香族化合物の水添物等が挙げられる。これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、縮合芳香族化合物の水添物等の非極性溶媒は、オキシム化反応の溶媒としても使用することができるため、溶媒交換の必要が無く好ましい。また、これらは非極性溶媒であることから触媒の水洗除去の際、水相との分離が容易である。さらに、加熱安定性が高く、蒸発潜熱も小さいため、溶媒の回収、リサイクルが容易である。とりわけ、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素はシクロドデカノンオキシムの溶解度が高く、転位装置がコンパクトになるため特に好ましい。
これらの転位溶媒は、市販されている試薬であっても、大気中の水分を吸収し100〜300ppmの水分を通常含んでいる。また、最も一般的なシクロドデカノンオキシムの製法であるシクロドデカノンとヒドロキシルアミンからの製法は、油溶性のシクロドデカノンを前記溶媒に溶解させた溶液と、水溶性のヒドロキシルアミンの水溶液との油/水2相系の反応であり、親水基であるオキシム基を有するシクロドデカノンオキシムは包水しやすい。このため、水相を分離した後のシクロドデカノンオキシム溶液中には4000〜10000ppmの水が存在する。
シクロドデカノンオキシム溶液中に溶解している水分を除去する方法は特に限定されるものではないが、最も一般的な方法は、溶媒と共に留去する方法である。また、オキシム化溶媒を全量留去した後、固体となったシクロドデカノンオキシムを減圧下で加熱乾燥し水を除去し、乾燥した転位溶媒を加えて転位反応を行ってもよい。また、転位反応を阻害しないことを条件にモレキュラーシブスなどの脱水剤を添加する方法や、除湿膜を用いる方法を採用して脱水を行ってもよい。
第1の態様において、脱水後のシクロドデカノンオキシム溶液中の水分残存量は、転位触媒であるトリクロロトリアジンの2倍モル以下、好ましくは等モル以下である。第2の態様において、脱水後のシクロドデカノンオキシム溶液中の水分残存量は、好ましくはトリクロロトリアジンの2倍モル以下、より好ましくは等モル以下である。水分残存量が多すぎるとトリクロロトリアジンの加水分解によってトリオキシトリアジンが生成しやすくなる。さらには、転位反応が完結せず転位反応液中にシクロドデカノンオキシムが残存して生産性が悪化するとともに、シクロドデカノンオキシムとラウロラクタムを分離する工程が必要となり好ましくない場合もある。一方、シクロドデカノンオキシム溶液中の好適な水分残存量を濃度で示せば、第1及び第2の態様において、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。許容される水分量は使用するトリクロロトリアジンとの比によって決まるため、トリクロロトリアジンの使用量を増やせば、許容水分範囲も広がるが、シクロドデカノンオキシム溶液中の水分濃度が高すぎると大量のトリクロロトリアジンが必要となり、触媒コストが増大する。また、シクロドデカノンオキシムの加水分解も進行する。従って、水分濃度が高すぎる場合、ラウロラクタム収率が低下する。
シクロドデカノンオキシムの濃度は高いほど生産性が向上し好ましいが、シクロドデカノンの溶解度によって制約される。例えば、トルエンを溶媒に用い常圧下で反応を行う場合(沸点110℃)、シクロドデカノンオキシム濃度の上限は60重量%である。
トリクロロトリアジンの使用量は溶媒の種類、水分含有量、シクロドデカノンオキシムの濃度によって異なるが、シクロドデカノンオキシムに対して0.05モル%以上、5.0モル%以下である。特に、トルエンを溶媒に用い、シクロドデカノンオキシムの濃度を50重量%、シクロドデカノンオキシム溶液中の水分濃度を600ppmとした場合、シクロドデカノンオキシムに対して、0.3モル%以上2.0モル%以下、好ましくは0.4モル%以上1.0モル%以下である。
トリクロロトリアジン使用量が過少の場合、反応速度が遅くなり、好ましくない。一方、トリクロロトリアジン使用量が過多の場合、触媒コストが増大するだけでなく、ラウロラクタムを精製する際の触媒の除去のためのコストが増大し好ましくない。
なお、塩化水素等の酸類を助触媒として添加することによって、転位反応速度を向上させることができる。特にルイス酸はシクロドデカノンオキシムの加水分解を加速することなく、転位反応速度を向上させる事ができ好ましい。ルイス酸としては、特に制限はなく、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、四塩化スズ等が挙げられるが、塩化亜鉛、四塩化スズが好適であり、特に塩化亜鉛は反応速度を向上させる効果が顕著であり、好ましい。ルイス酸の使用量はシクロドデカノンオキシムに対して0.1モル%以上、10モル%以下、好ましくは0.2モル%以上5モル%以下である。ルイス酸使用量が過少の場合、転位反応速度の向上効果が認められず好ましくない。ルイス酸使用量が過多の場合、それ以上の転位反応速度の向上効果は認められず、過剰のルイス酸除去のため触媒除去装置が過大になり、廃水処理等の操作も煩雑になるため好ましくない。
転位反応の反応温度は、第1の態様では、50℃から160℃、好ましくは80℃から110℃である。第2の態様では、50℃から160℃、好ましくは70℃から110℃である。反応温度が低すぎる場合、反応速度が遅く、反応時間が長くなるため好ましくない。また、反応温度が低すぎる場合、シクロドデカノンオキシムの転位溶媒への溶解度が低くなり、溶媒量が増加し、その回収・リサイクル量が増大するため好ましくない。一方、反応温度が高すぎる場合、転位反応の発熱によって温度が急上昇するため、反応の制御上、好ましくない。更に、反応温度が高すぎる場合、縮合反応等の副反応を生じるため転位反応の収率が低下するのみならず、着色等製品品質が低下するため好ましくない。
転位反応の反応時間は、通常、5分から10時間、好ましくは20分から4時間である。反応時間は、触媒濃度、反応温度によって異なるが、反応の制御が容易で、反応器容積が過大にならないように前記反応条件において調整する。
反応は減圧、常圧、加圧のいずれで行っても差し支えない。
クローズドプロセスの採用はトリクロロトリアジンから脱離した塩化水素の吸着・除害設備を軽減すると共に、塩化水素自身が助触媒として転位反応を促進するため、好ましいプロセスである。
なお、転位反応装置は回分式反応装置、管型連続反応装置、攪拌槽型連続反応装置等の一般に用いられる反応装置を使用することができるが、生産性と温度制御等の運転の容易性から、攪拌槽型連続反応装置が特に好適である。
第2の態様において、発明者は、シクロドデカノンオキシムの転化率が高くなるとトリオキシトリアジンが生成しやすくなる事を見出した。トリオキシトリアジンは非極性溶媒を転位溶媒として用いた場合、非極性溶媒に溶け難いため不活性析出物として沈降し、反応器の器壁に付着しやすい。沈積物の器壁付着は器壁の熱伝導率を低下させ、転位反応によって生じる大量の反応熱を熱交換により除去することが困難になるため、商業設備においては運転安定性を悪化させ好ましくない。従って、転位反応工程におけるトリオキシトリアジンの析出を防止する必要があり、そのためのシクロドデカノンオキシム転化率の上限は99%未満、好ましくは98%未満である。第2の態様で、転位反応工程から抜き出した反応液は次の後加熱工程で加熱熟成し、転位反応を完結するが、転位反応工程に用いる反応装置と、後加熱工程に用いられる反応装置は異なることが好ましい。ここで、転位工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率が低すぎる場合、後加熱工程での発熱が大きく、積極的な除熱が必要となり好ましくない。この為、転位反応工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率には下限があり、80%以上、より好ましくは90%以上である。
なお、第2の態様において、転位反応工程、後加熱工程ともにシクロドデカノンオキシムの転位反応によってラウロラクタムを製造する工程であるが、前者が積極的に除熱することによって、反応速度をコントロールし、選択的にラウロラクタムを生成させることを目的としているのに対し、後者は保温又は若干の加熱・冷却を行うのみで転位反応液を滞留させ、シクロドデカノンオキシムの転位反応を完結させることを目的にしている。従って、トリオキシトリアジン等の析出は前者にとっては深刻な悪影響を及ぼすのに対し、後者にとっては、殆ど影響を与えない。
第2の態様において、後加熱工程の温度は60℃から150℃、好ましくは70℃から110℃である。加熱温度が高すぎる場合、縮合等の副反応のためラウロラクタム収率が低下するとともに、着色等のラウロラクタム品質の悪化に繋がり好ましくない。加熱温度が低すぎる場合、ラウロラクタムが不活性析出物と共に沈降し、両者の分離のための装置が必要になり好ましくない。また、転位反応を完結させるために後加熱装置が長大になり好ましくない。後加熱工程の滞留時間はシクロドデカノンオキシムの転化率が好ましくは99.8%以上となるのに十分な時間が確保されればよく、特に制限はない。なお、後加熱工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率が低くても、蒸留精製によって、高品質のラウロラクタムの製造は可能であるが、シクロドデカノンオキシム除去回収のための蒸留設備費やユーティリティーコストを考慮すると99.8%以上であることが好ましい。
第2の態様において、後加熱装置の形状は特に制約はなく、槽型、竪型、管型等いずれの形式を選定しても差し支えないが、析出したトリオキシトリアジンの排出が容易な槽型反応装置が特に適している。攪拌装置を備えることは必須要件ではないが不活性析出物の器壁付着を防止するために有効であり、スクレイパーを取り付けて沈降した不活性析出物を掻き取ることは特に好ましい態様である。浮遊している不活性析出物は後加熱装置上部よりオーバーフローで抜き出し、後述の触媒除去工程に送液してもよいが、装置底部より沈積した不活性析出物をラウロラクタムの溶液と共に抜き出し、一部を再度、後加熱工程に循環させ、残部を後述の触媒除去工程に排出することがより好ましい。なお、触媒除去工程の負荷を軽減する目的で抜き出し液中の触媒残渣等をろ過し、除去してもよい。
第2の態様において、底部での析出物の沈積を防ぐため、抜き出し口に向けてテーパー状になっていることが好ましい。後加熱工程の発熱量は転位工程に比べて小さいため、自然放熱によって、温度制御を行うことも可能であるが、ジャケット等の簡単な加熱冷却装置を備えることがより好ましい。
第2の態様において、触媒除去工程に送られた転位反応液は加熱下で水洗される。水洗により、転位工程に添加された転位触媒であるトリクロロトリアジン由来の残存触媒、活性中間体、不活性析出物を全て加水分解してトリオキシトリアジンとして、水に溶解させることによって分離・除去される。触媒除去工程の処理温度は70℃以上、好ましくは80℃以上、洗浄水のフィード量は転位工程におけるトリクロロトリアジンのフィード量の35重量倍以上、好ましくは100重量倍以上である。処理温度が低すぎる場合、又は使用する水分量が過少の場合、残存触媒、活性中間体、不活性析出物が残存する場合があり好ましくない。残存触媒、活性中間体、不活性析出物の一部はシクロドデカノンオキシムとトリクロロトリアジンから誘導されるシクロドデシリデンアミノキシクロロトリアジン構造を有しており、これらが加水分解されずに残存した場合、ラウロラクタムの収率低下に繋がり好ましくない。また、ラウロラクタム中にトリアジン構造の不純物や塩素化合物が存在することはラウロラクタムの品質低下に繋がり好ましくない。さらに、クロロトリアジン化合物は熱分解で塩化水素を発生するため蒸留工程で装置の経年腐食の原因になるため好ましくない。より高温での水洗処理又は洗浄水の大量使用は残存触媒を除去する意味において全く問題はないが、95℃以上では処理液の共沸を防ぐため、加圧装置が必要になる。また、1000重量倍以上の洗浄水の使用は廃水が増えるのみであり好ましくない。処理装置は油水混合部分と油水分離部分を備えていれば、特に制約はなく、例えば、攪拌混合槽と槽型分離槽を連結して用いることができる。なお、助触媒として用いる酸類も水溶性であり、当工程で除去することができる。また、痕跡程度残存する可能性がある含塩素不純物を除去する目的で所望により、さらにアンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いて洗浄しても差し支えない。
ラウロラクタムをさらに精製するには、典型的には、蒸留操作(留出液として抜き出すこと、缶出液として抜き出すこと、および精留等を含む)を、好ましくは多段で組み合わせて行う。一般的に転位反応の溶媒はラウロラクタムより低沸点であるため、蒸留によって転位反応の溶媒を回収した釜残(缶出液)を抜き出し、蒸留操作を一回以上行うことで精製することができる。
溶媒回収及び精製における蒸留条件および蒸留装置は特に制約を受けないが、ラウロラクタムの開環および重合を防止するため、ボトム温度が250℃以下、好ましくは220℃以下となるよう10torr以下の真空度で減圧蒸留することが望ましい。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例は本発明の実施態様の一例を示すものであり、本発明は本実施例に限定されるものではない。
[参考例1:シクロドデカノンオキシムの製造]
内部が4室に分割され、各室毎に攪拌翼が設けられた液相部容積30Lの枕型オキシム化第1反応器に、ヒドロキシルアミン硫酸塩(和光純薬工業社製)の15重量%水溶液を1.5kg/h及びオキシム化第2反応器から送液される油相をフィードした。反応温度を95℃に設定し、各室に25重量%アンモニア水を32g/hでフィードしオキシム化反応を行った。反応液には0.5kg/hでトルエンを加えた後分液し、シクロドデカノンオキシムとトルエンからなる油相を得た。水相はオキシム化第2反応器へフィードした。オキシム化第2反応器は15Lで内部が4室に分割された枕型反応器で、前記オキシム化反応液水相と25重量%のシクロドデカノンのトルエン溶液2kg/h(第1反応器へのヒドロキシルアミン硫酸塩と等モル量)を同反応器にフィードし、反応温度を95℃に設定し、各室に25重量%アンモニア水を16g/hでフィードしオキシム化反応を行った。得られた反応液は分液し、油相はオキシム化第1反応器にフィードした。水相には325g/hでトルエンを加え、向流抽出で水中に溶解しているシクロドデカノンオキシムを回収し、第1反応器から取得した油相に合した。同油相をカールフィッシャー型水分測定器(平沼AQ−2100型微量水分測定装置)を用いて測定した結果、4000重量ppmの水分を含有していた。なお、以下の参考例、実施例、比較例においては特にことわりのない限りppmは重量ppmを示し、成分比はモル比を示す。
実施例1〜27及び比較例1〜13では、第1の態様において、転位反応に用いるシクロドデカノンオキシム溶液中の水分量とラウロラクタムの収率との関係を明らかにすることを目的とした。
また、実施例28〜30及び比較例14〜17では、第2の態様において、シクロドデカノンオキシムの転化率とラウロラクタムの収率との関係を明らかにするとともに、反応工程における析出物の発生の有無を観測することを目的とした。
<転位原料中の水分量とラウロラクタムの収率の関係>
[参考例2:シクロドデカノンオキシムの乾燥]
実施例1〜27及び比較例1〜13に用いるシクロドデカノンオキシムを以下のように調製した。
参考例1で得たシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液4kgを10Lのエバポレータに入れ、トルエンを留去し、790gのシクロドデカノンオキシムを得た。得られたシクロドデカノンオキシムを真空乾燥機に入れ、150Paの減圧下120℃で24時間乾燥して、乾燥シクロドデカノンオキシム740gを得た。カールフィッシャー型水分測定器を用いドライボックス内で水分測定を行った結果15ppmの水分を含有していた。
[実施例1]
アセトニトリル(和光純薬工業社製)50gに参考例2で得た乾燥シクロドデカノンオキシム10g、トリクロロトリアジン(和光純薬工業社製)0.467g(シクロドデカノンオキシム濃度16.6重量%、トリクロロトリアジン/シクロドデカノンオキシム(モル/モル);0.05)を溶かし反応原料液を調整した。アセトニトリル中の水分を測定した結果450ppmの水分を含有しており、反応原料液中の水分量は375ppmとなった。反応原料液中の水/トリクロロトリアジン比は0.50であった。なお、反応原料液の調整及び溶媒中の水分測定はドライボックス中で行った。密閉した反応原料液をドライボックスから取り出し、窒素雰囲気下油浴中で攪拌しながら昇温し、80℃にて2時間反応を行い、ガスクロマトグラフィー分析を行った結果(以下、実施例、比較例おいて同様に分析を行った)、シクロドデカノンオキシムの転化率は100%、ラウロラクタム収率は98.0%であった。なお、シクロドデカノンオキシムの加水分解により生成したと思われるシクロドデカノン収率は0.7%であった。反応条件及び結果を表1に示す。以下実施例2〜26、比較例1〜12の反応結果も表1に示す。
[実施例2]
反応溶媒を水250ppmを含むベンゾニトリル(和光純薬工業社製)に変え、トリクロロトリアジン添加量を0.093gに減量した以外は実施例1と同様に反応をおこなった。
[比較例1]
反応溶媒を実施例1で用いたアセトニトリル(水分含有量450ppm)に変え、反応時間を4時間に延長した以外は実施例2と同様に反応を行った。
[実施例3]
比較例1で用いたアセトニトリルに焼成した(300℃、8時間)モレキュラーシブス4A(和光純薬工業社製)を加え24時間乾燥した。水分含有量は60ppmまで低下した。この乾燥アセトニトリルを用い、反応時間を2時間として比較例1と同様に反応を行った。表1に示したとおり、シクロドデカノン収率が低下した。
[実施例4]
反応溶媒をトルエン(水分含有量310ppm)に変え、反応時間を3.5時間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。
[実施例5]
トリクロロトリアジンの添加量を0.28gに減量した以外は実施例4と同様に反応を行った。
[比較例2]
トリクロロトリアジンの添加量を0.065gに減量し、反応時間を6時間とした以外は実施例4と同様に反応を行った。
[実施例6]
シクロドデカノンオキシム10gとトリクロロトリアジン0.093gのほかに助触媒として塩化亜鉛0.069gを加え、実施例3の乾燥アセトニトリルと同様にして乾燥させたトルエン(水分含有量40ppm)50gを溶媒に用いて、95℃で1時間反応を行った。
[実施例7]
実施例6で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量336ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例6と同様に反応をおこなった。
[比較例3]
実施例6で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量825ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例6と同様に反応をおこなった。
[実施例8]
実施例6で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量1000ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いたこと及びトリクロロトリアジンを0.262g、塩化亜鉛を0.194gに増量したこと以外は実施例6と同様に反応をおこなった。
[実施例9]
シクロドデカノンオキシム20g、トリクロロトリアジン0.187g、塩化亜鉛0.138gを、実施例3の乾燥アセトニトリルと同様にして乾燥したトルエン(水分含有量34ppm)46.3gに加え、反応を行った。
[実施例10]
実施例9で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量390ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[実施例11]
実施例9で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量770ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[比較例4]
実施例9で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量1020ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[比較例5]
実施例9で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量1910ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[実施例12]
シクロドデカノンオキシム50g、トリクロロトリアジン0.467g、塩化亜鉛0.346gを、実施例3と同様にして乾燥したトルエン(水分含有量35ppm)51gに加え、反応を行った。
[実施例13]
実施例12で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量1600ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例12と同様に反応をおこなった。
[比較例6]
実施例12で用いた乾燥トルエンに水を添加して水分含有量2500ppmのトルエンを調整した。この調整トルエンを溶媒に用いた以外は実施例12と同様に反応をおこなった。
[実施例14]
実施例9で用いた乾燥トルエンのかわりにモレキュラーシブス4Aで乾燥したメチルシクロヘキサン(水分濃度45ppm)を溶媒に用いた以外は実施例9と同様(に反応をおこなった。
[実施例15]
実施例14で用いた乾燥メチルシクロヘキサンに水を添加して水分含有量620ppmのメチルシクロヘキサンを調整した。この調整メチルシクロヘキサンを溶媒に用いた以外は実施例14と同様に反応をおこなった。
[比較例7]
実施例14で用いた乾燥メチルシクロヘキサンに水を添加して水分含有量890ppmのメチルシクロヘキサンを調整した。この調整メチルシクロヘキサンを溶媒に用いた以外は実施例14と同様(反応原料溶液中の水分濃度622ppm、水/トリクロロトリアジン;2.27)に反応をおこなった。
[実施例16]
実施例9で用いた乾燥トルエンのかわりにモレキュラーシブス4Aで乾燥したイソプロピルシクロヘキサン(水分濃度55ppm)を溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[実施例17]
実施例16で用いた乾燥イソプロピルシクロヘキサンに水を添加して水分含有量700ppmのイソプロピルシクロヘキサンを調整した。この調整イソプロピルシクロヘキサンを溶媒に用いた以外は実施例16と同様に反応をおこなった。
[比較例8]
実施例16で用いた乾燥イソプロピルシクロヘキサンに水を添加して水分含有量1100ppmのイソプロピルシクロヘキサンを調整した。この調整イソプロピルシクロヘキサンを溶媒に用いた以外は実施例16と同様に反応をおこなった。
[実施例18]
実施例9で用いた乾燥トルエンのかわりにモレキュラーシブス4Aで乾燥したシクロオクタン(水分濃度35ppm)を溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[実施例19]
実施例18で用いた乾燥シクロオクタンに水を添加して水分含有量770ppmのシクロオクタンを調整した。この調整シクロオクタンを溶媒に用いた以外は実施例18と同様に反応をおこなった。
[比較例9]
実施例18で用いた乾燥シクロオクタンに水を添加して水分含有量920ppmのシクロオクタンを調整した。この調整シクロオクタンを溶媒に用いた以外は実施例18と同様に反応をおこなった。
[実施例20]
実施例9で用いた乾燥トルエンのかわりにモレキュラーシブス4Aで乾燥したデカリン(水分濃度30ppm)を溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[実施例21]
実施例20で用いた乾燥デカリンに水を添加して水分含有量685ppmのデカリンを調整した。この調整デカリンを溶媒に用いた以外は実施例20と同様に反応をおこなった。
[比較例10]
実施例20で用いた乾燥デカリンに水を添加して水分含有量1020ppmのデカリンを調整した。この調整デカリンを溶媒に用いた以外は実施例20と同様に反応をおこなった。
[実施例22]
実施例9で用いた乾燥トルエンのかわりに溶融状態でモレキュラーシブス4Aを加えて乾燥したシクロドデカン(水分濃度55ppm)を溶媒に用いた以外は実施例9と同様に反応をおこなった。
[実施例23]
実施例22で用いた乾燥シクロドデカンを溶融し、水を添加して水分含有量650ppmのシクロドデカンを調整した。この調整シクロドデカンを溶媒に用いた以外は実施例22と同様に反応をおこなった。
[比較例11]
実施例22で用いた乾燥シクロドデカンを溶融し、水を添加して水分含有量1050ppmのシクロドデカンを調整した。この調整シクロドデカンを溶媒に用いた以外は実施例22と同様に反応をおこなった。
[実施例24]
実施例12で用いたシクロドデカノンオキシム(水分濃度15ppm)、トルエン(水分濃度35ppm)を用い、シクロドデカノンオキシム30g、トリクロロトリアジン0.072g、塩化亜鉛0.419g、トルエン57.83gを加え反応原料を調整し、100℃で1時間反応を行った。
[実施例25]
トリクロロトリアジンを0.034g、トルエンを35.25gに変えた以外は実施例24と同様に反応を行った。
[比較例12]
実施例24に用いたトルエンに水を添加し水分濃度440ppmのトルエンを調整した。シクロドデカノンオキシム30g、トリクロロトリアジン0.102g、塩化亜鉛0.635g、調整トルエン45.88gを加え反応原料を調整し、100℃で1時間反応を行った。
[実施例26]
トリクロロトリアジンを0.225gに増量した以外は比較例12と同様に反応を行った。
以上、実施例1〜26及び比較例1〜12の反応結果を表1に示した。
なお、表中、TCTはトリクロロトリアジン、Ox12はシクロドデカノンオキシム、Lc12はラウロラクタム、CDONはシクロドデカノンをそれぞれ表わす(表2においても同じ)。
Figure 0005585445
[実施例27]
参考例1で得たシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液に溶解している水をトルエンと共に留去し、脱水した。脱水後のシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液中の水分は135ppmであり、シクロドデカノンオキシムの濃度は46重量%であった。このシクロドデカノンオキシム溶液を1.5Lの攪拌翼のついた槽型反応器を3槽直列に連結した転位反応器に1.17kg/hの速度でフィードした。また、転位反応器第1槽には5重量%のトリクロロトリアジンのトルエン溶液を0.1kg/h、5重量%の塩化亜鉛のトルエン、ラウロラクタム溶液(トルエン/ラウロラクタムの重量比は1/1)0.075kg/hでフィードした。なお、トリクロロトリアジン溶液および塩化亜鉛溶液中の水分はそれぞれ80ppm、800ppmであった。従って、転位反応槽にフィードされる水/トリクロロトリアジン比は0.46であった。転位反応は95℃にコントロールして行い第3反応槽出口液についてガスクロマトグラフィー分析を行った結果、シクロドデカノンオキシムは検出されず、ラウロラクタムの収率(塩化亜鉛の溶解に用いたラウロラクタム分は補正)は96.6%、シクロドデカノン収率は0.3%であった。
[比較例13]
シクロドデカノンオキシムのトルエン溶液の脱水を行わなかった以外は実施例27と同様に転位反応を行った。転位反応槽にフィードされる水/トリクロロトリアジン比は9.70であった。反応槽出口液についてガスクロマトグラフィー分析を行った結果、シクロドデカノンオキシムの転化率は42.0%、ラウロラクタム収率は35.7%、シクロドデカノン収率は0.3%であった。また、各槽には白色の沈殿物が付着しており、マススペクトル分析の結果、トリオキシトリアジン(シアヌル酸)であった。
<シクロドデカノンオキシムの転化率とラウロラクタムの収率の関係>
[参考例3:シクロドデカノンオキシム溶液の脱水]
実施例28〜30及び比較例14〜17に用いるシクロドデカノンオキシムを下記のように調製した。
参考例1で得たシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液3.04kgを10Lのエバポレータに入れ、トルエンと共に水を留去し、1.80kgまで濃縮した。得られたシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液をカールフィッシャー型水分測定器を用いて水分測定を行った結果340ppmの水分を含有していた。また、ガスクロマトグラフィー(GLサイエンス社製TC−1、30mキャピラリーカラム使用)にて、シクロドデカノンオキシムを定量した結果、シクロドデカノンオキシム濃度は30.0重量%であった。なお、以下の実施例、比較例では、参考例1及び3の方法で製造したシクロドデカノンオキシム溶液を用いたが、水分含有量には若干のバラツキがあり、また、触媒、助触媒溶液中にも水が存在するため、実験毎に転位反応槽フィード液採取し、水分量測定を行った。
[実施例28]
プロペラ型攪拌装置の付いた0.17Lのガラス製攪拌槽型反応装置(槽内部に邪魔板及び加熱・冷却用ジャケット付)を3槽直列に連結し、参考例3で得られたシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液(以下、a液)0.256kg/h、5重量%トリクロロトリアジンのトルエン溶液(以下、b液)0.016kg/h、塩化亜鉛5重量%、ラウロラクタム47.5重量%、トルエン47.5重量%からなる塩化亜鉛溶液(以下、c液)0.011kg/hを第1槽にフィードし、オーバーフローにて順次後段の反応槽にフィードした。各槽の温度は全て80℃、攪拌機の回転数は500rpmで反応を行った。また、転位反応槽フィード液中の水分は472ppm、水分/トリクロロトリアジンのフィードモル比は1.66であった。反応が定常状態になった後、各槽出口液を採取し、ガスクロマトグラフィー分析(参考例2と同一カラム使用)を行った結果、1,2,3槽のシクロドデカノンオキシム転化率は、順に、43.2%、76.8%、97.8%であり、ラウロラクタム収率は42.8%、76.4%、96.8%であった。第3反応槽から排出された反応液は0.17Lの後加熱槽に送られた。後加熱槽には錨型攪拌翼にテフロン(登録商標)製スクレイパーを取付け30rpmの低速で回転させながら不活性析出物を掻き取ると共に、下部の排出口より反応液を排出し、フィルターを通して析出物をろ別した後、ポンプアップし、後加熱槽に循環させた。一方、後処理槽の中段にはオーバーフローによる排出口を設け、排出された反応液は0.2Lの触媒除去槽に送られ0.03L/hの水で水洗後、油水分離され、油相を取得した。これを粗ラウロラクタム溶液という。なお、後加熱槽、触媒除去槽の温度は90℃であった。粗ラウロラクタム溶液のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、シクロドデカノンオキシムの転化率は99.9%、ラウロラクタム収率は99.4%であった。また、反応槽1〜3槽及び後加熱槽には、析出物の付着、沈積は認められなかった。フィルターを熱水で洗浄し、溶解したトリオキシトリアジンを自動波長選択機能付吸光光度計(HACH社製DR890型)で定量した結果、転位工程にフィードしたトリクロロトリアジンに対し10.3mol%が検出された。同様に洗浄水中のトリオキシトリアジンを定量した結果、転位工程にフィードしたトリクロロトリアジンに対し、88.5mol%が検出された。一方、粗ラウロラクタム中のトリオキシトリアジン、トリクロロトリアジンは液体クロマトグラフィー分析で測定したが検出されなかった。
以下、実施例及び比較例の実験条件及び各反応液中のシクロドデカノンオキシム転化率とラウロラクタム収率を表2に示す。
[実施例29]
表2に示した条件で実施例28と同様に反応を行った。反応槽及び後加熱槽には、析出物の付着、沈積は認められなかった。また、フィルターで捕集されたトリオキシトリアジンは転位工程にフィードしたトリクロロトリアジンに対し1.4mol%、洗浄水に溶解したトリオキシトリアジンは転位工程にフィードしたトリクロロトリアジンに対し97.5mol%であり、粗ラウロラクタムからはトリオキシトリアジン及びトリクロロトリアジンは検出されなかった。
[比較例14]
表2に示した条件で実施例29と同様に反応を行った。転位反応第1槽、第2槽には析出物の付着、沈積は認められなかったが、第3槽には器壁に固体の付着が観測された。第3槽付着物、及びフィルター捕集物を熱水で溶解し、トリオキシトリアジンを分析した結果、フィードしたトリクロロトリアジンに対し5.6%(第3槽付着物)、4.8%(フィルター捕集物)であった。
[比較例15]
表2に示した条件で比較例14と同様に反応をおこなった。析出物の付着が認められなかったのは第1槽のみで、第2、第3槽には固体の付着が観測された。第2槽付着物、第3槽付着物、及びフィルター捕集物を熱水で溶解し、トリオキシトリアジンを分析した結果、フィードしたトリクロロトリアジンに対し4.0%(第2槽付着物)、8.9%(第3槽付着物)、1.0%(フィルター捕集物)であった。
。
[比較例16]
参考例1で得られたシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液に無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した結果、水分濃度が1200ppmまで低下した。このシクロドデカノンオキシムのトルエン溶液を用いて比較例15と同様に反応を行った。また、第3槽でトリオキシトリアジンの析出が見られた。
[実施例30]
a液から、さらにトルエンを留去し、シクロドデカノンオキシムを濃縮した。この溶液に塩化亜鉛を加え、シクロドデカノンオキシム49.8重量%、塩化亜鉛0.34重量%を含有するトルエン溶液(以下、d液)を調整し、 0.58kg/hで転位反応槽にフィードした。同時に0.039kg/hの速度でb液を転位反応槽にフィードした。各反応槽及び後加熱槽の温度を90,90,80,100℃に設定し、反応を行った。ジャケットに流通している熱媒の温度は80、81.5、76.1、100.2℃であり、1〜3反応槽は冷却することによって、設定温度に保ったが、後加熱槽は加熱・冷却の必要がなく、温度コントロールは容易であった。結果を表2に示す。反応槽及び後加熱槽には、析出物の付着、沈積は認められなかった。また、フィルターで捕集されたトリオキシトリアジンは転位工程にフィードしたトリクロロトリアジンに対し0.9mol%、洗浄水に溶解したトリオキシトリアジンは転位工程にフィードしたトリクロロトリアジンに対し98.0mol%であり、粗ラウロラクタムからはトリオキシトリアジン及びトリクロロトリアジンは検出されなかった。
[比較例17]
転位反応槽へのd液、及びb液のフィード量を0.70kg/h、0.040kg/hとした以外は実施例30と同様に反応を行った。各反応槽及び後加熱槽の設定温度が90、90、80、100℃であるのに対し、ジャケットに流通している熱媒の温度は82.7、84.7、77.4、95.1℃であり、後加熱槽でも除熱のための冷却が必要であった。
結果を表2に示す。反応槽及び後加熱槽には、析出物の付着、沈積は認められず、フィルターにもトリオキシトリアジンは捕集されなかったが、洗浄水に溶解したトリオキシトリアジンは転位工程にフィードしたトリクロロトリアジンに対し80.1mol%と低かった。
Figure 0005585445

Claims (4)

  1. 非極性溶媒中、トリクロロトリアジンを転位触媒として用いて、シクロドデカノンオキシムの液相転位反応によりラウロラクタムを製造する方法であって、
    シクロドデカノンオキシム溶液中の水分がトリクロロトリアジンの2倍モル以下となる条件で液相転位反応を行い、
    (a)シクロドデカノンオキシムを転化率が80%以上、99%未満となるように液相転位させる転位反応工程と、
    (b)シクロドデカノンオキシムの転化率が99.8%以上となるように転位反応を完結させる後加熱工程と、
    (c)不活性析出物、活性中間体、残存触媒を除去する触媒除去工程
    とを有し、
    前記転位反応工程に用いる反応装置と、前記後加熱工程に用いる反応装置が異なることを特徴とするラウロラクタムの製造方法。
  2. 液相転位に用いるシクロドデカノンオキシム溶液中の水分が2000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 液相転位に用いるシクロドデカノンオキシム溶液中の水分が600ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記触媒除去工程において、水洗工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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