本発明は上記に鑑み提案されたもので、金属シリサイド膜と銅コンタクトプラグ本体との間の拡散バリア層として、タングステンや2重構造膜と、酸化マンガン膜とを併用した拡散バリア層を用いるのではなく、薄膜の酸化マンガンで構成された拡散バリア層を用いてはいるものの、金属シリサイド膜への銅原子の拡散、侵入を確実に抑止することができるようにしたコンタクトプラグ、配線、半導体装置およびコンタクトプラグ形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、拡散バリア層を形成する酸化マンガン膜を、内部を結晶学的或いは化学的な性質を相違する2つの層で構成する。
すなわち、(1)本発明の第1の発明は、半導体装置の絶縁膜に設けられたコンタクトホールに形成されたコンタクトプラグにおいて、上記コンタクトホールの底部に形成された金属シリサイド膜と、上記コンタクトホール内で金属シリサイド膜上に形成され、非晶質でシリコンを含む第1の酸化マンガン膜と、上記第1の酸化マンガン膜上に形成され、微結晶を含む非晶質の第2の酸化マンガン膜と、上記第2の酸化マンガン膜上に、コンタクトホールを埋め込むように形成された銅プラグ層と、を備えることを特徴とするコンタクトプラグである。
(2)本発明の第2の発明は、上記の(1)項に記載の発明において、上記第1の酸化マンガン膜と、上記第2の酸化マンガン膜とは、酸化数を異にするマンガン(Mn)から構成されているものである。
(3)本発明の第3の発明は、上記の(1)または(2)項に記載の発明において、上記第1の酸化マンガン膜は、マンガンの酸化数が3価のものである。
(4)本発明の第4の発明は、上記の(1)乃至(3)項の何れか1項に記載の発明において、上記第2の酸化マンガン膜は、マンガンの酸化数を2価とするものである。
(5)本発明の第5の発明は、上記の(1)乃至(4)項の何れか1項に記載の発明において、上記第1の酸化マンガン膜の内部の珪素(Si)原子の濃度は、第2の酸化マンガン膜の内部のそれよりも高いものである。
(6)本発明の第6の発明は、上記の(1)乃至(5)項の何れか1項に記載の発明において、上記第1の酸化マンガン膜の膜厚は、第2の酸化マンガン膜の膜厚以上とするものである。
(7)本発明の第7の発明は、上記の(1)乃至(6)項の何れか1項に記載の発明において、上記第1の酸化マンガン膜と上記第2の酸化マンガン膜の合計の膜厚は、7ナノメーター(nm)以下とするものである。
(8)本発明の第8の発明は、上記の(1)乃至(7)項の何れか1項に記載の発明において、上記金属シリサイド膜は、コバルト(Co)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、またはタングステン(W)の何れかからなるものである。
(9)本発明の第9の発明は、上記の(8)項に記載の発明において、上記金属シリサイド膜は、ニッケル(Ni)シリサイド膜とするものである。
(10)本発明の第10の発明は、上記の(8)項に記載の発明において、上記金属シリサイド膜は、コバルト(Co)シリサイド膜とするものである。
(11)本発明の第11の発明は、上記の(1)乃至(10)項の何れか1項に記載の発明において、上記金属シリサイド膜は表層部が酸化されているものである。
(12)本発明の第12の発明は、上記の(1)乃至(11)項の何れか1項に記載の発明において、上記金属シリサイド膜は、膜厚の増加方向に、珪素(Si)と化学結合する金属の原子濃度が減少しているものである。
(13)本発明の第13の発明は、上記の(1)乃至(12)項の何れか1項に記載の発明において、上記コンタクトホールの周壁に、非晶質の酸化マンガン膜が形成されているものである。
(14)本発明の第14の発明は、上記の(1)乃至(13)項の何れか1項に記載のコンタクトプラグと、そのコンタクトプラグに電気的に接続する配線本体と、を備えることを特徴とする配線である。
(15)本発明の第15の発明は、上記の(14)項に記載の発明において、上記配線本体が銅(Cu)から構成されているものである。
(16)本発明の第16の発明は、上記の(1)乃至(13)項の何れか1項に記載のコンタクトプラグを備えている、ことを特徴とする半導体装置である。
(17)本発明の第17の発明は、上記の(14)または(15)項に記載の配線を備えている、ことを特徴とする半導体装置である。
(18)本発明の第18の発明は、半導体装置の絶縁膜に設けられたコンタクトホールにコンタクトプラグを形成するコンタクトプラグ形成方法において、上記コンタクトホールの底面に、金属シリサイド膜を形成する金属シリサイド膜形成工程と、上記金属シリサイド膜上およびコンタクトホールの周壁に、非晶質でシリコンを含む第1の酸化マンガン膜を形成する第1の酸化マンガン膜形成工程と、上記第1の酸化マンガン膜上に、微結晶を含む非晶質の第2の酸化マンガン膜を形成する第2の酸化マンガン膜形成工程と、上記第2の酸化マンガン膜上に、コンタクトホールを埋め込むように銅を被着させて銅プラグ層を形成しコンタクトプラグ本体とする銅プラグ層形成工程と、を備えることを特徴とするコンタクトプラグ形成方法である。
(19)本発明の第19の発明は、半導体装置の絶縁膜に設けられたコンタクトホールにコンタクトプラグを形成するコンタクトプラグ形成方法において、上記コンタクトホールの底面に、金属シリサイド膜を形成する金属シリサイド膜形成工程と、上記金属シリサイド膜上およびコンタクトホール周壁に、コンタクトホールを埋め込むように銅・マンガン(Cu・Mn)合金層を被着させ銅・マンガン合金層を形成する銅・マンガン合金層形成工程と、上記銅・マンガン合金層に所定の熱処理を行う熱処理工程と、を備え、上記熱処理工程により、銅・マンガン合金層のマンガンを拡散させ当該銅・マンガン合金層を銅のみとして銅プラグ層を形成しコンタクトプラグ本体とするとともに、そのマンガン拡散により、銅プラグ層と金属シリサイド膜との間であって金属シリサイド膜側に非晶質でシリコンを含む第1の酸化マンガン膜を形成し、その第1の酸化マンガン膜上に、微結晶を含む非晶質の第2の酸化マンガン膜を形成し、銅プラグ層とコンタクトホール周壁との間に酸化マンガン膜を形成する、ことを特徴とするコンタクトプラグ形成方法である。
(20)本発明の第20の発明は、上記の(18)又は(19)項に記載の発明において、上記金属シリサイド膜の表面を酸化し、珪素の酸化物層を形成するものである。
(21)本発明の第21の発明は、上記の(20)項に記載の発明において、上記金属シリサイド膜の表面の酸化は、金属シリサイド膜の表面を酸素プラズマに曝すことにより行うものである。
本発明の第1の発明によれば、金属シリサイド膜上に、非晶質でシリコンを含む第1の酸化マンガン膜と、その第1の酸化マンガン膜上に微結晶を含む非晶質の第2の酸化マンガン膜とからなる拡散バリア層を形成した。
第1の酸化マンガン膜は、非晶質で結晶粒界が無いため、結晶粒界を経由した銅の金属シリサイド膜への加速された異常な拡散を抑止する作用を有し、金属シリサイド膜への銅原子の拡散、侵入を確実に抑止することができる。また、第2の酸化マンガン膜は、微結晶を含むことにより、内部に電気的抵抗の低い領域を備えることとなり、導電性を向上させる作用を有する。したがって、第1および第2の酸化マンガン膜は、各作用の相乗効果により、銅に対する拡散バリア層としての機能を充分に発揮しつつ、金属シリサイド膜について電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを安定して形成するのに貢献することができる。
本発明の第2の発明によれば、第1の酸化マンガン膜と、第2の酸化マンガン膜とを、酸化数を異にし化学的な性質を相違するマンガン(Mn)から構成するようにした。このため、第1の酸化マンガン膜を金属シリサイド膜との良好な密着性をもたらす化学的な形態を有するマンガンからなる酸化マンガン膜から構成でき、また、第2の酸化マンガン膜をより良い導電性をもたらす化学的な形態のマンガンからなる酸化マンガン膜から都合良く構成することができる。
本発明の第3の発明によれば、第1の酸化マンガン膜のマンガンの酸化数を3価としたので、コバルト、チタン、ニッケル、又はタングステンの何れかを含む金属シリサイド膜、特に、ニッケルシリサイド膜又はコバルトシリサイド膜との密着性に優れる第1の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を得ることができる。
本発明の第4の発明によれば、第2の酸化マンガン膜のマンガンの酸化数を2価としたので、銅コンタクトプラグに堅牢に密着する第2の酸化マンガン膜を形成することができ、また、金属シリサイド膜について電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグをもたらすことができる。
本発明の第5の発明によれば、第1の酸化マンガン膜として、内部の珪素原子の濃度を第2の酸化マンガン膜の内部のそれよりも高くする、例えば、第1の酸化マンガン膜を、珪素を含む組成式MnαSiβOγ(α≠0、β≠0、γ≠0)とし、第2の酸化マンガン膜を一酸化マンガン(組成式:MnO)としたので、金属シリサイド膜とより堅牢に密着した第1の酸化マンガン膜を備えた拡散バリア層を得ることができる。
本発明の第6の発明によれば、第1の酸化マンガン膜の膜厚を、第2の酸化マンガン膜の膜厚以上とした。すなわち金属シリサイド膜上に設ける第1の酸化マンガン膜を、第2の酸化マンガン膜より相対的に厚くしたので、コンタクトプラグをなす銅の金属シリサイド膜の内部への拡散、侵入を抑止する効果を高めることができる。
本発明の第7の発明では、第1と第2の酸化マンガン膜の合計の膜厚を7nm以下としたので、金属シリサイド膜にオーミック接触を果たせる銅コンタクトプラグを安定してもたらすのに貢献することができる。例えば、ニッケルシリサイド膜上に、電気的接触抵抗を2×10-5Ω・cm2以下と小とする銅コンタクトプラグを安定して得ることができる。
本発明の第8の発明によれば、第1の酸化マンガン膜を設ける金属シリサイド膜を、コバルト、チタン、ニッケル、又はタングステンの何れかを含む金属シリサイド膜としたので、金属シリサイド膜との密着性に優れ、尚且つ、銅に対する拡散バリア性をより良く発揮できる2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を効率的にもたらすことができる。
本発明の第9の発明によれば、第1の酸化マンガン膜を設ける金属シリサイド膜を、特に、ニッケルシリサイド膜としたので、金属シリサイド膜との密着性に優れ、尚且つ、銅に対する拡散バリア性が殊の外より良く発揮できる2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を構成できる効果がある。
本発明の第10の発明によれば、第1の酸化マンガン膜を設ける金属シリサイド膜をコバルトシリサイド膜としたので、金属シリサイド膜をニッケルシリサイド膜とした場合と同様に、金属シリサイド膜との密着性に優れ、尚且つ、銅に対する拡散バリア性が殊の外より良く発揮できる2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を構成することができる。
本発明の第11の発明によれば、表層部が酸化された属シリサイド膜上に第1の酸化マンガン膜を設ける構成としたので、第1の酸化マンガン膜と金属シリサイド膜との密着性をより強いものとすることができる。
本発明の第12の発明によれば、金属シリサイド膜が、膜厚の増加方向に、珪素と化学結合する金属の原子濃度が減少するようにし、その金属シリサイド膜を下地として、その上に2層構造の酸化マンガン膜を設ける構成としたので、半導体シリコンからなる素子動作領域に密着し、尚且つ酸化マンガンからなる拡散バリア層とも堅牢な接合を果たせる金属シリサイド膜を提供することができる。
本発明の第13の発明では、コンタクトホールの周壁に、非晶質の酸化マンガン膜を形成したので、結晶膜における高速拡散経路である粒界が存在せず、優れた拡散バリア層とすることができる。
本発明の第14の発明によれば、本発明のコンタクトプラグを用いて配線を構成しているので、電気的抵抗の小さな配線、例えば、電気的抵抗の小さなダマシン型の多層構造の配線を構築することができる。
本発明の第15の発明によれば、コンタクトプラグに電気的に接続する配線において、アルミニウムなどより電気的抵抗の小さな銅を配線本体としたので、電気的抵抗が小さく、例えばRC遅延の低減に効果的な配線を提供することができる。
本発明の第16の発明では、本発明のコンタクトプラグを備えた半導体装置を構成することとしたので、金属シリサイド膜との電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを用いることにより、RC遅延が小さく、また、消費電力の小さな、例えば大型のTFT−LCDなどの半導体表示装置を提供することができる。
本発明の第17の発明では、金属シリサイド膜との電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを備えた配線を用いて半導体装置を構成することとしたので、RC遅延が小さく、しかも低消費電力の、例えばシリコン半導体メモリーなどの半導体記憶装置を提供することができる。また、金属シリサイド膜との電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを備え、かつ電気的抵抗の小さな銅を配線本体とする配線を用いて半導体装置を構成することとしたので、RC遅延が小さく、しかも低消費電力の、例えばシリコン大規模集積回路などの半導体論理装置を提供することができる。
本発明の第18、第19の発明によれば、半導体装置の絶縁膜に設けられたコンタクトホールにコンタクトプラグを形成するコンタクトプラグ形成方法において、金属シリサイド膜上に、非晶質でシリコンを含む第1の酸化マンガン膜を形成し、その第1の酸化マンガン膜上に微結晶を含む非晶質の第2の酸化マンガン膜を形成して、第1および第2の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を形成するようにした。第1の酸化マンガン膜は、非晶質で結晶粒界が無いため、結晶粒界を経由した銅の金属シリサイド膜への加速された異常な拡散を抑止する作用を有し、金属シリサイド膜への銅原子の拡散、侵入を確実に抑止することができる。また、第2の酸化マンガン膜は、微結晶を含むことにより、内部に電気的抵抗の低い領域を備えることとなり、導電性を向上させる作用を有する。したがって、第1および第2の酸化マンガン膜は、各作用の相乗効果により、銅に対する拡散バリア層としての機能を充分に発揮しつつ、金属シリサイド膜について電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを安定して形成するのに貢献することができる。
本発明の第20および第21の発明によれば、金属シリサイド膜の表面を酸化し、珪素の酸化物層を形成するようにしたので、第1の酸化マンガン膜と金属シリサイド膜との密着性をより強いものとすることができる。
以下にこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明のコンタクトプラグの構成を示す図である。図1において、本発明のコンタクトプラグ10は、半導体装置の絶縁膜4に設けられたコンタクトホール5に形成され、このコンタクトホール5の底部に形成された金属シリサイド膜3と、そのコンタクトホール5内で金属シリサイド膜3上に形成され、非晶質でシリコンを含む第1の酸化マンガン膜6aと、その第1の酸化マンガン膜6a上に形成され、微結晶を含む非晶質の第2の酸化マンガン膜6bと、その第2の酸化マンガン膜6b上に、コンタクトホール5を埋め込むように形成された銅プラグ層7とを備えている。
金属シリサイド膜3は、シリコン基板1に形成された、素子の機能領域2上に設けられている。金属シリサイド膜3の表層部は酸化され、珪素を主として含む非晶質の酸化物層3aとなっている。また、コンタクトホール5の周壁5aに、非晶質の酸化マンガン膜(周壁側酸化マンガン膜)6が形成されている。
第1の酸化マンガン膜6aと第2の酸化マンガン膜6bとは、拡散バリア層を構成している。第1の酸化マンガン膜6aは、非晶質で結晶粒界が無いため、結晶粒界を経由した銅の金属シリサイド膜3への加速された異常な拡散を抑止する作用を有し、金属シリサイド膜3への銅原子の拡散、侵入を確実に抑止することができる。また、第2の酸化マンガン膜6bは、微結晶を含むことにより、内部に電気的抵抗の低い領域を備えることとなり、導電性を向上させる作用を有する。したがって、第1および第2の酸化マンガン膜6a,6bは、各作用の相乗効果により、銅に対する拡散バリア層としての機能を充分に発揮しつつ、金属シリサイド膜3について電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを安定して形成するのに貢献することができる。以下に、上記コンタクトプラグ10の各部位について詳細に説明する。
金属シリサイド膜は、例えば、電気絶縁性のガラス基板上に形成されたアモルファス(amorphous:a)シリコン(a−Si)半導体からなるソース、ドレイン、或いはまたゲート機能を発揮する素子の機能領域に設ける。また、シリコンやシリコンゲルマニウム(SiGe)などの半導体材料からなる素子の機能領域に電極として設ける。金属シリサイドとは、例えばコバルト(元素記号:Co)、チタン(元素記号:Ti)、ニッケル(元素記号:Ni)、タングステン(元素記号:W)、マグネシウム(元素記号:Mg)、白金(元素記号:Pt)、ハフニウム(元素記号:Hf)、モリブデン(元素記号:Mo)、タンタル(Ta)、バナジウム(元素記号:V)、ニオブ(元素記号:Nb)、クロム(元素記号:Cr)、ジルコニウム(元素記号:Zr)、パラジウム(元素記号:Pd)、ロジウム(元素記号:Rh)、鉄(元素記号:Fe)、錫(元素記号:Sn)などの金属元素と、珪素(Si)との化合物である。
本発明では、(1)素子の機能領域を構成する半導体シリコンとの密着性に優れる、(2)半導体シリコンと良好なオーミック接触性を果たせる、及び(3)酸化マンガン膜とも良好な接合性をもたらせるとの利点から、電気的特性の観点からコバルト、チタン、ニッケル、又はタングステンの何れか1種を、または2種以上を含む金属シリサイド膜から構成するのが望ましい。本発明では、上記の利点が特に顕著であるニッケル又はコバルトのシリサイド膜を好ましく用いる。ニッケルシリサイド膜とは、例えば、組成式Ni2Si,NiSi、NiSi2やNi3Si2などである。また、本発明では、ニッケルとコバルトの双方を含むシリサイド膜にあっても、ニッケル又はコバルトの含有量の大小に応じて、便宜上、ニッケルの含有量が多ければ便宜的にニッケルシリサイド膜と呼称し、逆に、コバルトの含有量が多ければコバルトシリサイド膜と呼称することとする。
素子の機能領域に、ニッケルやコバルトなどからなる金属シリサイド膜を形成するには、幾つかの技術手段を挙げられる。例えば、(a)ニッケルシリサイドやコバルトシリサイドなどからなるシリサイドターゲットを用いて、スパッタリングなどの物理的蒸着法(英略称:PVD)により形成する方法、(b)高純度のニッケルやコバルトを、蒸着源として又は金属ターゲットとして用いて、一般的な真空蒸着法や電子ビーム蒸着法などのPVD法により、シリサイド膜を構成するための金属の膜を形成した後、素子の機能領域をなす半導体シリコン材料と反応させて(シリサイド化させて)シリサイド膜を形成する方法、(c)ニッケルやコバルトを含む、例えばカルボニル化合物又はシクロペンタジエニル化合物など脂環式化合物等の原料を熱分解させて化学的気相蒸着法(英略称:CVD)により、シリサイド膜を構成するための金属の膜を形成した後、素子の機能領域をなす半導体シリコン材料と反応させて(シリサイド化させて)シリサイド膜を形成する方法などで形成できる。
上記の(c)に掲げるCVD法の一種である有機金属熱分解気相成長法によるニッケルの膜の製膜には、例えばカルボニルニッケル(分子式:Ni(CO)4)やビス(1,5シクロオクタジエン)ニッケル(分子式:(1,5−C8H12)2Ni)などを利用できる。また、コバルトの膜を形成する際に利用できる原料としては、例えばジコバルトオクタカルボニル(分子式:Co2(CO)8)やシクロペンタジエニルコバルトジカルボニル(分子式:C5H5Co(CO)2)を例示できる。これらの原料は原子層エピタキシャル成長法(英略称:ALE)でニッケル膜やコバルト膜を製膜する際のニッケルやコバルトの原料としても利用できる。
金属シリサイドターゲットを用いてスパッタリング法で形成した金属シリサイド膜では、金属原子と珪素原子の濃度分布は、膜厚の方向に略一定となる。金属原子と珪素原子が深さ方向(膜厚方向)に略一定の濃度で分布している金属シリサイド膜は、勿論、ソース電極やドレイン電極として有効に利用できる。しかし、素子の機能領域をなす半導体シリコンと堅牢に接合でき、尚且つ、その上に本発明に係る2層構造の酸化マンガン膜を密着させて形成するための金属シリサイド膜では、金属原子と珪素原子は、後述する如く、特定の分布を有している必要がある。従って、本発明では、金属シリサイド膜を、金属シリサイドをターゲットとするスパッタリング法によるのではなく、金属シリサイドを構成する金属の被膜を素材として形成する方法を好ましく採用することとする。
金属の被膜には、加熱処理を施して、半導体シリコンと化合させて金属シリサイド膜に変換する。加熱処理は、金属の被膜を、素子の機能領域に限定して残存させた後に実施するのが好ましい。金属の被膜を素子の機能領域に限定して残存させるには、例えば、素子の機能領域を形成したシリコン基板の表面の全体に一旦、金属の被膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィー技術によるパターニング技術を利用して、素子の機能領域以外の領域に在る金属の被膜を選択的にエッチングして除去するのも一手法である。この手法を実施するには、例えば、電子線描画法や紫外線を光源とする露光技術を利用できる。または、当初より、金属の被膜を素子の機能領域に、マスク(mask)材料を用いて選択的に被着させる手段もある。何れにしても、金属の被膜を素子の機能領域に限定して配置した後、加熱処理を施すのが好ましい。そうしないと、金属シリサイド膜を不要とする素子の機能領域以外の領域でも、金属とシリコンの反応に因り、金属シリサイド膜が形成され、銅コンタクトプラグから供給される素子動作電流の不用意な漏洩が生じ、低消費電力の素子並びにその素子を構成要素とする集積回路などを得るに不都合となるからである。
例えばニッケル膜をシリサイド化して、ニッケルシリサイド膜とするには、真空中或いは不活性ガス雰囲気内で、800℃以下の温度で加熱するのが望ましい。800℃を越える高温での加熱は、ニッケル膜の全体をニッケルシリサイドに変換できるものの、ニッケルの素子の機能領域への拡散も顕著となり、素子の機能を発揮するのに支障を来たす場合が有り好ましくはない。一方、加熱温度が約300℃未満の低温であると、ニッケル膜の全体をニッケルシリサイドに変換できず、ニッケル膜の表層部に未反応のニッケルが残存してしまう。このため、後述する本発明が規定するところの素子の機能領域との接合界面から表面に向けて、珪素と化学結合をなすニッケルの原子濃度が減少している好適な濃度分布を有するニッケルシリサイド膜を得るに至らない。コバルト被膜に加熱するのに適する条件も、ニッケル被膜の場合と同様である。
本発明では、特に、膜厚の増加方向に、珪素と化学結合する金属シリサイド膜を構成する金属の原子濃度が減少している、例えばコバルトの原子濃度が減少している金属シリサイド膜を、好ましい下地層として、その上に2層構造の酸化マンガン膜を設ける構成とする。層厚の増加方向とは、金属シリサイド膜の半導体シリコンからなる素子の機能領域との接合界面から、その表面に向けての方向である。この様な金属の原子濃度の分布を有する金属シリサイド膜を用いれば、半導体シリコンからなる素子動作領域との接合性に優れ、尚且つ、酸化マンガンからなる拡散バリア層とも堅牢な接着を果たせるからである。
珪素と化学結合をなす金属シリサイド膜の金属の原子濃度の大小は、例えばX線光電子分光法(英略称:XPS)などの分析手段で調査できる。シリコン基板上に被着させたニッケル被膜を加熱して形成したニッケルシリサイド膜の入射ビーム角度分散方式のXPSによる分析結果を図2に例示する。入射ビームの角度が小さい程、シリコンに近い金属シリサイド膜の深部の結合状態の情報を示している。図2の縦軸は、或る化学結合の量に対応して観測される光電子の強度を、入射ビームの角度毎に示しており、強度が大きい程、その化学結合をなすニッケルの原子濃度が高いことを示している。図2に示す様に、珪素とニッケルの化学結合に起因する強度は、入射ビームの角度が小さい程、即ち、金属シリサイド膜のより深部である程、より大きい。従って、珪素と化学結合するニッケルの原子濃度は、ニッケルシリサイド膜の膜厚の増加方向に向けて減少していることが分かる。
この様な原子濃度を有する金属シリサイド膜は、金属の被膜をシリサイド化するために好適である範囲の温度で加熱するのが勿論、必要である。更には、金属の被膜を加熱する温度を450℃以上で550℃以下の狭い範囲に限定することにより、より効果的にまたより安定に上記の原子濃度の分布を有する金属シリサイド膜を形成できる。金属の被膜を加熱する時間は1.5時間以上で3時間とするのが適する。加熱時間を1.5時間未満の短時間とすると、層厚の増加方向に、珪素と化学結合した金属原子の濃度が減少している金属シリサイド膜を安定して形成できない。一方、3時間を越える長時間の加熱処理では、素子の機能領域との接合界面近傍に存在する金属シリサイド膜を構成する金属元素が、素子の機能領域の内部へ拡散し、移動する確率が高まる。このため、素子の機能を発揮させるのが阻害される不都合が発生する場合がある。
金属シリサイド膜上に、本発明に係る2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を形成するに際して得策となるのは、金属シリサイド膜の表面を酸化して、金属シリサイド膜の表層部を構成する珪素の酸化物層を形成した後、酸化マンガン膜を形成する方法である。金属シリサイド膜の表面を例えば、酸素プラズマに曝し、その膜の表層部を構成する珪素を酸化して、珪素を含む酸化物層と化し、その後、その酸化物層上に酸化マンガン膜を形成する方法である。金属シリサイド膜を酸化して形成する酸化物層は、単結晶や多結晶よりも、非晶質から構成するのが好適である。非晶質の酸化物層は、金属シリサイド膜の表面を酸化する条件を適宜、調節することにより形成できる。金属シリサイド膜をニッケルシリサイド膜とした場合に、その表面を酸化する条件としては、100℃未満の低い温度で、圧力を40パスカル(単位:Pa)とする減圧環境内で、100ワット(単位:W)の高周波電力を印加して発生させた酸素プラズマに30分間曝す例を挙げられる。
金属シリサイド膜の表層部に形成する酸化物層は、結晶粒界の無い非晶質層であるのが好ましい。非晶質層であることにより、結晶粒界を経由して素子動作電流が漏洩する量を低減できるからである。即ち、素子動作電流の漏洩の少ない銅からなるコンタクトプラグを形成でき、しいては、低消費電力の素子及びその素子を構成要素とする集積回路を構成するのに貢献できる。一方で、非晶質の酸化物の抵抗率は、一般に結晶の形態の酸化物より高い。このため、形成する酸化物層が過大であると、電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを得るのに妨げとなる。金属シリサイド膜の表面に酸素プラズマを用いるプラズマ酸化手法で酸化物層を形成する場合、酸化物層の厚さは、プラズマ酸化の時間の平方根値に比例して増加させられるが、層厚は1.5nm以下とするのが好ましい。更には1nm以下とするのが好ましい。一方で、珪素を含む酸化マンガン膜を形成するには0.5nm以上の厚さの酸化物層が必要である。酸化物層の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡(英略称:TEM)などで測定できる。
また、拡散バリア層を構成する酸化マンガン膜を金属シリサイド膜に形成した酸化物層を介して設ける構成とすることにより、堅牢に密着した酸化マンガン膜を形成できる効用がある。併せて、表層部に在る珪素は、酸化物層の形成のための酸素(元素記号:O)との化学結合の形成に消費されるので、金属シリサイド膜の表層部において、金属シリサイド膜をなす金属の原子と化学結合する珪素原子の量を減ずることができる。これ即ち、換言すれば、珪素原子との化学結合をなす、金属シリサイド膜を構成する金属原子の量が、金属シリサイド膜の表層部に向けて減少しているのを良しとする前述の本発明に係る金属原子の濃度分布をもたらすのを促進させるにも効果を上げられる。
金属シリサイド膜上の設ける拡散バリア層は、本発明では、結晶学に組織構造を相違する第1及び第2の酸化マンガン膜との2層構造から構成する。2層構造をなす第1の酸化マンガン膜とは、金属シリサイド膜或いは金属シリサイド膜に形成した酸化物層上に設ける膜である。第2の酸化マンガン膜とは、銅コンタクトプラグ側に配置する第1の酸化マンガン膜上に設ける膜である。第1又は第2の酸化マンガン膜をなす酸化マンガンとは、例えば一酸化マンガン(組成式:MnO)、二酸化マンガン(組成式:MnO2)、三酸化二マンガン(組成式:Mn2O3)、四酸化三マンガン(組成式:Mn3O4)である。または、珪素を含むそれらのマンガン酸化物である。マンガン酸化物の組成は、X線光電子分光法によるマンガンと酸素の結合エネルギーの分析などにより調査できる。また、エネルギー分散型X線マイクロアナリシス(英略称:EDX)などによる組成分析の結果から知ることができる。
第1及び第2の酸化マンガン膜は、いくつかの技術手段により形成できる。その一つは、金属シリサイド膜上にマンガン膜を形成した後、そのマンガン膜を酸化して酸化マンガン膜を形成する手段である。例えば、ビスエチルシクロペンタジエニルマンガン(分子式:(C2H5C5H5)2Mn)をマンガンの原料とし、水素ガス(分子式:H2)を雰囲気内で化学的気相蒸着法により形成したマンガン膜を酸化し、酸化マンガン膜を形成する方法である。この形成方法の利点は、大きな被覆率をもって、金属シリサイド膜やその膜の表層部に形成した酸化物層上に容易に酸化マンガン膜を形成できることにある。
化学的気相蒸着法により、例えばNi2Si,NiSi,NiSi2、Ni3Si2などの組成を有するニッケルシリサイド膜上にマンガン膜を形成する際の温度は、100℃以上で、400℃以下であるのが適する。100℃未満の低温では、金属シリサイド膜上に均一に酸化マンガン膜を形成するに至らない。一方、400℃を越える高温では、マンガン膜に、主に原料の化合物に付加している炭化水素基の熱分解に起因して炭素(元素記号:C)が多く含まれることとなる。このため、金属シリサイド膜との密着性に劣る酸化マンガン膜が帰結され不都合となる。
別の一つの手段は、物理的蒸着手段による方法である。例えば、高周波スパッタリング法により、マンガン膜を形成した後、その膜を酸化して酸化マンガン膜を形成する方法である。マンガンをスパッタリングする際のターゲットには、高純度のマンガンからなるのが望ましい。特に、酸化物の生成エンタルピーがマンガンよりも小さい元素の含有されていないか、含有量の少ない99.999%(=5N)以上の高純度のマンガンからなるのが好ましい。この様な高純度のマンガンターゲットを用いれば、素子動作電流の漏洩を誘因する金属不純物の含有量の少ない酸化マンガン膜を得ることができるからである。
また、他の一つの手段は、例えば、酸化マンガンをターゲットとして、金属シリサイド膜上に酸化マンガン膜を形成する方法である。この方法によれば、酸化マンガン膜を形成するために、マンガン膜を酸化する操作が不要であることに利点が見出せる。また、組成を相違する酸化マンガンからなるターゲットを用いれば、ターゲットをなす酸化マンガンの組成の相違に相応して、組成を異にする酸化マンガン膜を形成するのにも利便となる。例えば、先ず、二酸化マンガン(MnO2)からなるターゲットを使い、二酸化マンガン(MnO2)からなる第1のマンガン膜を形成した後、次に、一酸化マンガン(MnO)からなるターゲットを用いて、一酸化マンガンからなる第2の酸化マンガン膜を形成する方法である。
第1の酸化マンガン膜は非晶質の酸化マンガン膜から構成する。第1の酸化マンガン膜を、特に結晶粒界の無い非晶質からなる膜から構成することにより、素子動作電流が結晶粒界を経由して徒に素子の機能領域、例えばゲート領域に短絡的に漏洩するのを回避できるからである。このため、ピンチオフ特性などに優れる正常なゲートアクションを呈する集積回路などを構成するための素子を安定して提供できるからである。化学的気相蒸着法或いは物理的蒸着法などの第1の酸化マンガン膜の成膜手段に依存せず、非晶質の酸化マンガン膜を得るには、酸化マンガン膜を形成するための方法例として上述したところのマンガン膜や酸化マンガン膜を低温で成膜するのが得策である。また、本発明では、金属シリサイド膜を酸化して形成する酸化物層を非晶質層としているので、そのことも、非晶質の第1の酸化マンガン膜を形成することに寄与できる。
また、第1の酸化マンガン膜はシリコンを含んでいるが、これについての詳細は後述する。
第2の酸化マンガン膜は、微結晶を含む非晶質の酸化マンガン膜から構成する。微結晶を含む非晶質層とは、一部の領域に結晶化した領域を内在している非晶質層を云う。また、微結晶粒が位置的に不規則に混在している非晶質層である。結晶粒の垂直断面形状は必ずしも一定である必要はないが、結晶粒の占有する体積は、非晶質層の占める体積より小さく、非晶質を主体としてなる層の内部に微結晶粒が点在している層である。非晶質からなる層であるか否か、また、非晶質層内の結晶化領域の有無や結晶粒の存在は、透過電子顕微鏡(英略称:TEM)を利用する断面TEM観察によって調べることができる。
図3は第1及び第2の酸化マンガン膜からなる2層構造の拡散バリア層の一例を示す断面TEM像である。ニッケルシリサイド膜30の表層部に形成された酸化物層30a上には、第1の酸化マンガン膜60aと第2の酸化マンガン膜60bとからなる拡散バリア層が形成され、第2の酸化マンガン膜60b上には、銅からなる銅プラグ層70が形成されている。
第1の酸化マンガン膜60aには、結晶化した領域が視認されず、この第1の酸化マンガン膜60aは非晶質層であると判定できる。一方、第2の酸化マンガン膜60bは、概ね非晶質ではあるものの、その内部の一部の領域に、原子配列が規則的である部分が認められる。即ち、結晶化した領域61bの存在が認められる。これより、第2の酸化マンガン膜60bは、結晶化した領域61bを含む非晶質であると判断される。
第2の酸化マンガン膜を、微結晶を含む非晶質層から構成すれば、電気的抵抗の低い結晶化領域を有することにより、全体が非晶質より構成されるよりも、導電性のある酸化マンガン膜とすることができる。このため、銅に対する拡散バリア層としての機能を充分に発揮しつつ、金属シリサイド膜について電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを安定して形成するのに貢献できる。本発明者による実験結果から具体例を挙げれば、ニッケルシリサイド膜上の例えばタンタル膜(膜厚=10nm)を拡散バリア層とする銅膜(膜厚=100nm)を設けた場合の銅の室温での接触抵抗は1.52×10-5Ω・cm2である。これに対し、ニッケルシリサイド膜上に設ける拡散バリア層を、本発明に係る2層構造の酸化マンガン膜から構成し、その上に銅膜(膜厚=100nm)を形成した場合の銅の室温での接触抵抗は、上記のタンタル拡散バリア層の場合の約1/8の1.93×10-6Ω・cm2の低さである。
拡散バリアとしての作用を発揮しつつ、金属シリサイド膜又はその膜を酸化して形成した酸化物層との密着をもたらす作用を有するのが第1の酸化マンガン膜である。また、拡散バリアとしての作用を発揮しつつ、小さな電気的接触抵抗をもって、コンタクトプラグをなす銅との密着をもたらす作用を有するのが第2の酸化マンガン膜である。このように、本発明では、発揮されるべき作用に鑑みて、相応の化学的性質を有するマンガンを構成成分として酸化マンガン膜を形成することとした。ここで云う化学的性質とは、マンガンの酸化数である。例えば、組成式MnaOb(a≠0、b≠0)で表される酸化マンガンにおけるマンガンの酸化数は、酸素のイオン価数を2として、次の関係式(1)で与えられる。
マンガンの酸化数=(2×b)/a・・・・・(関係式1)
関係式1によれば、組成式Mn2O3(a=2、b=3)の酸化マンガンにおけるマンガンの酸化数は3価となる。また、組成式MnO2(a=1、b=2)の酸化マンガンにおけるマンガンの酸化数は2価となる。マンガンの酸化の価数は、マンガンのイオン価数と等価であるとする。
本発明では特に、第1の酸化マンガン膜を、酸化数を3価とするマンガンからなる酸化マンガン膜から構成する。例えば組成式Mn2O3で表記される酸化マンガンから構成する。これにより、コバルト、チタン、ニッケル、又はタングステンの何れかを含む金属シリサイド膜などに、特に、ニッケル又はコバルトシリサイド膜との密着性に優れる第1の酸化マンガン膜が得られる。金属シリサイド膜との密着性の向上をもたらす原因については未だ明確とはなっていないが、金属シリサイド膜と第1の酸化マンガン膜との間で発生する電界が何らかの影響を及ぼしているものと推考される。
また、本発明では、第2の酸化マンガン膜を、酸化数を2価とするマンガンからなる酸化マンガン膜から構成する。銅コンタクトプラグに良く密着する第2の酸化マンガン膜を構成できるからである。第2の酸化マンガン膜を、酸化数のより小さなマンガンから構成することにより、銅コンタクトプラグにより密着する酸化マンガン膜を得ることができる。例えば、酸化数を2とするマンガンからなる二酸化マンガン(組成式:MnO2)よりも酸化数を1のマンガンからなる一酸化マンガン(組成式:MnO)から第2の酸化マンガン膜を構成すれば、銅コンタクトプラグにより密着する酸化マンガン膜が得られる。密着性に優れる銅コンタクトプラグを形成できる原因については未だ明確とはなっていないが、第2の酸化マンガン膜と銅コンタクトプラグの間で発生する電界が何らかの影響を及ぼしているものと推考される。何れにしても、拡散バリア層を、金属シリサイド膜から銅コンタクトプラグ側に向けて、順次、酸化数をより小さくするマンガンからなる酸化マンガン膜を多層に積層させた構造から構成することにより優れた作用、効果を発揮する拡散バリア層を形成することができる。
また、本発明では、上記のように、第1の酸化マンガン膜を、特に珪素を含む酸化マンガン膜から構成することとした。珪素を含む効果により、金属シリサイド膜との密着性に優れる第1の酸化マンガン膜を得ることができる。非晶質であり、尚且つ珪素を含む第1の酸化マンガン膜を得るのに適する条件で第1の酸化マンガン膜を形成し、金属シリサイド膜をなす珪素を第1の酸化マンガン膜の内部に侵入させられようにする。その条件の内でも、特に適する範囲の温度で第1の酸化マンガン膜を形成するのが重要である。たとえば、チタン(Ti)シリサイド膜上に、珪素を含む非晶質の第1の酸化マンガン膜を設けるに好適な温度の範囲は、大凡、室温から150℃以下である。これにより、金属シリサイド膜の表面の全体に平面的に密着する第1の酸化マンガン膜を形成できるため、拡散バリア層上のコンタクトプラグを経由して供給される素子動作電流の金属シリサイド膜への通流通路を広く確保できる。従って、しいては、接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを提供するのに貢献できる。
特に、第1の酸化マンガン膜は、内部の珪素原子の濃度を第2の酸化マンガン膜の内部のそれよりも高くする、例えば、第1の酸化マンガン膜を、珪素を含む組成式MnαSiβOγ(α≠0、β≠0、γ≠0)から構成する。例えば、MnαSiβOγから構成することにより、金属シリサイド膜とより堅牢に密着した第1の酸化マンガン膜を形成できる。拡散バリア層を得ることができる。第2の酸化マンガン膜は、例えば一酸化マンガン(組成式:MnO)から構成する。
珪素を含む第1の酸化マンガン膜を得るための一つの便法は、上述の如く、金属シリサイド膜の表面を酸化した後、第1の酸化マンガン膜を形成する方法である。金属シリサイド膜を例えば、酸素プラズマを利用して酸化した後、第1の酸化マンガン膜を形成する方法である。金属シリサイド膜をニッケルシリサイド膜とした場合に、その表面を酸化する条件としては、圧力を50パスカル(単位:Pa)とする減圧環境内で、50ワット(単位:W)の高周波電力を印加して発生させた酸素プラズマに、30分間曝す例を挙げられる。この例示条件下では、ニッケルシリサイド膜の表面に約1nmの非晶質の酸化膜が形成される。
更に、導電性を確保するために、第2の酸化マンガン膜の内部の珪素の原子濃度は、第1の酸化マンガン膜のそれよりも低く抑制する必要がある。第2の酸化マンガン膜は、珪素の拡散源である金属シリサイド膜或いはその膜に形成された酸化物層からより距離を隔てて配置している。このため、膜内の珪素の原子濃度を第1のマンガン膜より小とするのに有利な配置とはなっている。しかしながら、金属シリサイド膜などと第1の酸化マンガン膜と、又は第2の酸化マンガン膜と銅コンタクトプラグとの密着性、或いは第1と第2の酸化マンガン膜との相互の密着性を増すために、例えば熱処理を第1又は第2の酸化マンガン膜に施す場合、その熱処理条件が過度であると、時として、第2の酸化マンガン膜の珪素の原子濃度を徒に増加してしまう結果を招く。
特に、上記の密着性を増すための熱処理を長時間施すと、例えば、400℃で100時間に亘り熱処理を施すと、第2の酸化マンガン膜の内部に粒径を1nm〜4nmとする微結晶粒を発生させるには効果が奏される。しかし一方で、金属シリサイド膜などから第2の酸化マンガン膜への拡散も顕著に進行する。このため、微結晶粒の発生に伴い付与された第2の酸化マンガン膜の導電性が、膜内に侵入する珪素に因り、相殺され易くなり、結果として導電性を保有する第2の酸化マンガン膜を安定して得るに至らない。本発明者の2次イオン質量分析法(英略称:SIMS)による珪素の原子濃度の定量分析の結果からして、温度を450℃〜550℃として熱処理をする場合、好適な熱処理は最長で3時間である。また、第1の酸化マンガン膜との密着性を向上させるのに必要な熱処理時間は最短で1.5時間である。この様な時間の範囲で熱処理をすることにより、第2の酸化マンガン膜の内部の珪素の原子濃度を1×1019原子/cm3以下に抑えられる。
本発明では、第1の酸化マンガン膜を、第2の酸化マンガン膜以上の膜厚の薄膜とした。即ち、金属シリサイド膜上に設ける第1の酸化マンガン膜を、第2の酸化マンガン膜より相対的に厚くしたので、コンタクトプラグをなす銅の金属シリサイド膜の内部への拡散、侵入を抑止するのに効果を上げるのに好都合となる。また、第1の酸化マンガン膜を第2の酸化マンガン膜以上の膜厚とすることにより、金属シリサイド膜或いはその膜に形成した珪素を含む酸化物層から、珪素が第1の酸化マンガン膜を経由して第2の酸化マンガン膜内へ拡散し、浸透する量をより適正に低減できる。このため、珪素の浸透に因る第2の酸化マンガン膜の導電性の低下を抑制するのにも効果を上げられる。例えば、合計の膜厚を3.5nmとする酸化マンガン膜にあって、第1の酸化マンガン膜の膜厚を1.9nmとし、第2の酸化マンガン膜の膜厚を1.6nmとする。
金属シリサイド膜上に設ける第1及び第2の酸化マンガン膜の合計の膜厚は、コンタクトプラグからなる銅と金属シリサイド膜との間でオーミック(Ohmic)接触をもたらせる厚さとする。ここで、コンタクトプラグと金属シリサイド膜との間での電流と電圧の関係は、次の関係式(2)で表せる。
log(I)=log(A)+k×log(V)・・・・・(関係式2)
上記の関係式2において、Iは電流を、Vは電圧を、Aは比例定数を、また、kは累乗指数を各々、表す。関係式2にあって、kが1となるのは、コンタクトプラグが金属シリサイド膜にオーミック接触している場合である。kが1を超えて大きい場合は(k>1)、コンタクトプラグと金属シリサイド膜とでオーミック接触が果たされていない場合である。即ち、本発明では、酸化マンガン膜の厚さを、関係式2におけるkを1とする電流−電圧特性をもたらす厚さ以下とする。
膜厚を互いに異にする酸化マンガン膜を拡散バリア層として挿入した場合のコンタクトプラグをなす銅とニッケルシリサイド膜間の電流−電圧特性から求めた累乗指数(=k)値を図4に例示する。ニッケルシリサイド膜は、物理的蒸着法により、シリコン基板上に400℃で形成した。その表面は、圧力40Paの真空下で、周波数40キロヘルツ(単位:kHz)の高周波を100Wの出力で印加して発生させた酸素プラズマで酸化処理を施した。第1及び第2の酸化マンガン膜は化学的気相蒸着法により形成し、その合計の膜厚を5nm〜9nmの範囲内で変化させた。その後、酸化マンガン膜を、真空中で450℃で2時間、熱処理し、組成式MnSiO3からなる第1の酸化マンガン膜と、一酸化マンガン(組成式:MnO)膜からなる第2の酸化マンガン膜とからなる2層構造とした。熱処理を施した酸化マンガン膜上には、スパッタリング法により、銅を被着させ、コンタクトプラグとした。図4に例示する如く、酸化マンガン膜の厚さ(第1の酸化マンガン膜と第2の酸化マンガン膜の合計の厚さ)が7nm以下であれば、kの値は実験誤差の範囲内で1となり、即ち、コンタクトプラグをなす銅とニッケルシリサイド膜間でオーミック接触が果たされている。一方、7nmを超えて厚い酸化マンガン膜を用いるとk値は1を超えて大となり、ショットキー(Schottky)接触性を呈することとなり、好ましくはない。
従って、ニッケルシリサイド膜にオーミック接触するコンタクトプラグをなす銅からなるコンタクトプラグを形成する際には、酸化マンガン膜の厚さは7nm以下とする必要がある。反面、金属シリサイド膜の表面を均等に被覆するには、酸化マンガン膜の厚さを0.5nm以上とする必要がある。また、コバルトからなるシリサイド膜を用いた場合も、ニッケルシリサイド膜と同様のk値の酸化マンガン膜厚の依存性が得られる(図3参照)。コバルトシリサイド膜上に設けるのに適する酸化マンガン膜の膜厚は、ニッケルシリサイド膜と同様に0.5nm以上で7nm以下である。この最適な酸化マンガン膜の膜厚の範囲は、Co2Si、CoSi、CoSi2などのコバルトからなるシリサイド膜の組成の差異に殆ど依存せず通用する。
また、金属シリサイド膜とコンタクトプラグをなす銅とのオーミック接触性の有無は、距離(間隔)を異にして対向させて配置した平行平面電極間での電流−電圧特性をTLM(Transmission Line Mode)法で調査することにより判別される。金属シリサイド膜と銅コンタクトプラグとの間でオーミック接触が果たされていれば、印加する電圧と、それに対応して通流する電流とには、直線関係が成立する。また、TLM法で測定される抵抗と隣接して対向する電極間の距離との関係から、接触抵抗(ρC)は、対向させて配置する電極の幅(対向面の幅:Z)と電極の長さ(D)を用いて次の関係式3から算出できる。
ρC=Rc・Z・LT・tannh(D/LT)・・・・・(関係式3)
ここで、Rcは抵抗軸の切片値の1/2の値であり、また、LTは、距離軸の切片値の1/2の値である(図7参照)。
第2の酸化マンガン膜上には、コンタクトプラグをなす銅を被着させる。銅コンタクトプラグは、例えば、第2の酸化マンガン膜を底面に露出させたビアホールの内部を埋め尽くす様に設ける。コンタクトホール用のビアは、例えばシリコン基板上の絶縁膜やダマシン型多層配線構造をなすための層間絶縁膜などの電気的な絶縁膜に形成する。絶縁膜は、酸化珪素(組成式SiOX;通常X=2)、窒化珪素(SiYNZ;通常Y=3、Z=4)、窒化酸化珪素(SiNO)、弗化酸化珪素(SiFO)などの珪素(Si)を含む低誘電率の無機又は有機化合物から形成する。絶縁膜は、内部に微細な空隙を有する、所謂、ポーラス(porous)な水素化シルセスキオキサン(英略称:HSQ)やメチルシルセスオキサン(英略称:MSQ)などの珪素(Si)化合物からも形成できる。
コンタクトプラグをなすための銅膜は、物理的蒸着法、化学的気相蒸着法、電気メッキ法(英略称:EP)などの手段を用いて形成する。何れの手段にあっても、銅膜を形成するのには、高純度の銅或いは銅含有化合物を原料とするのが望ましい。また、銅と、拡散定数が銅より大きなマグネシウム(元素記号:Mg)などの金属の合金膜も使用できる。
特に、金属シリサイド膜上に、銅からなるコンタクトプラグを形成する便法に銅とマンガンの合金膜を利用する手段がある(特開2008−300567号公報参照)。銅・マンガン合金膜を用いるのが便法であるとする理由は、被着した銅・マンガン合金膜を例えば酸素(分子式:O2)を含む雰囲気内で加熱することにより、膜中のマンガンを金属シリサイド膜側へ移動させられ、金属シリサイド膜との界面に酸化マンガン膜を形成できるからである。また、併せて同時にマンガンが移動することにより合金膜の表層部はコンタクトプラグとして利用できる銅層とすることができるからである。即ち、酸化マンガン膜を形成するために、わざわざ、マンガン被膜と銅被膜とを、金属シリサイド膜上に個別に被着させる煩雑な工程を経ること無く、拡散バリア層である酸化マンガン膜とコンタクトプラグとする銅膜とを同時に形成でき、利便であるからである。
この便法では、先ず、金属シリサイド膜或いは金属シリサイド膜上に設けた酸化物層上に銅・マンガン合金膜を被着させる。被着させるのは、マンガンを原子濃度にして、0.5%から20%の範囲とする銅・マンガン合金膜であるのが望ましい。特に、マンガンの原子濃度を2%から10%の範囲とする銅・マンガン合金膜であるのが好ましい。また、銅・マンガン合金膜は、例えばシクロペンタジエニルトリエチルフォスフィン銅(分子式:(C5H5)CuP(C2H5)3)を銅の原料とし、ビスエチルシクロペンタジエニルマンガン(分子式:〔(C2H5)C5H4〕2Mn)などをマンガンの原料とする化学的気相成長法で成膜できる。また、銅・マンガン合金からなるターゲットを用いる高周波スパッタリング法やレーザーアブレーション法などの物理的蒸着法により形成できる。
銅・マンガン合金膜の加熱は真空中で行っても構わない。例えば、圧力を1×10-3Pa程度とする真空中で実施する。または、酸素を含む不活性ガス雰囲気中で行う。例えば、酸素ガスを体積濃度にして0.5%から20%の範囲で含むアルゴン(元素記号:Ar)やヘリウム(元素記号:He)やネオン(元素記号:Ne)など不活性ガスから雰囲気内で加熱する。加熱雰囲気を構成する不活性ガスは1種類又は2種類以上であっても構わない。例えばアルゴンのみの雰囲気でも良いし、例えば、アルゴンとヘリウムとの混合ガスから構成しても差し支えない。
銅・マンガン合金膜を用いる場合でも、2層構造の酸化マンガン膜を得るのに適する加熱条件、即ち、450℃以上で550℃以下の温度で、1.5時間以上で3時間以下の時間の範囲で加熱すると、第1及び第2の酸化マンガン膜からなる2層構造の拡散バリア層を得ることができる。特に金属シリサイド膜に形成した非晶質の酸化物層上に形成した銅・マンガン合金膜をこの様な条件で加熱すると、第1の酸化マンガン膜を、珪素を含む、酸化数を3価とするマンガンからなる第1の酸化マンガン膜と、第1の酸化マンガン膜よりも珪素の原子濃度が低く、酸化数を2価とするマンガンからなる第2の酸化マンガン膜との2層構造の酸化マンガン膜を安定して形成することができる。
本発明に係る銅コンタクトプラグを備えた配線は、銅コンタクトプラグと、層間絶縁膜などの絶縁膜上に設けられた配線とを電気的に接続させて形成する。回路配線をなす例えばアルミニウム(元素記号:Al)と銅コンタクトプラグとを電気的に接続させる。本発明に係る銅からなるコンタクトプラグは接触抵抗が小さいため、抵抗の小さな配線を構成するのに寄与できる。例えば銅・マンガン合金膜を素材として形成した、銅層が薄くビア内の周辺の絶縁膜の表面に在る配線と電気的に接触させられない場合は、ビアの底部の銅層をシード(種)として、その配線に接続できる様に、ビア内を銅で埋め尽くせば良い。ビア内の空間部には、無電解或いは電解鍍金法やイオンプレーティング(ion plating)法などの化学的或いは物理的手段により銅を埋め込むことができる。
銅コンタクトプラグを、アルミニウムより銅を配線本体とする銅配線に接続させれば、電気抵抗の小さな配線を構成できる(アルミニウムの比抵抗は2.7μΩ・cmであるのに対し、銅の比抵抗は1、7μΩ・cmである(上記の非特許文献2−「半導体デバイス(第2版)−基礎理論とプロセス技術−」、356頁参照)。また、コンタクトプラグと配線本体とを、同一の材料である銅から構成することにより、相互により強固に密着した配線を構成できる。例えば、銅を本体とするダマシン構造型の回路配線と銅コンタクトプラグとを電気的も機械的にも接続させて全体として銅からなる配線を構成れば、エレクトロマイグレーション耐性にも優れる配線を構成できる利点がある。
(実施例1) 本発明の内容を、金属シリサイド膜をニッケルシリサイド膜として、その上の2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を介して、銅コンタクトプラグを構成する場合を例にして詳細に説明する。
図5は、ニッケルシリサイド膜上に、2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を介して、銅コンタクトプラグを形成するための手順を説明するための模式図である。図6は、ニッケルシリサイド膜とコンタクトプラグをなす銅との間の電流−電圧特性をTLM方式で測定した結果を示す図である。図7は、本実施例1、比較例1及び比較例2に記載のプラグ構造に係る電極間距離と電極間抵抗との関係を示す図である。
先ず、高いキャリア(carrier)濃度のn形伝導性の素子の機能領域102を内在するシリコン基板101(図5(a)参照)の表面の全面に、金属シリサイド膜103を形成するためのニッケル被膜を通常の電子ビーム蒸着法により形成した。ニッケル被膜の膜厚は3nmとした。次に、公知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を利用し、素子の機能領域102に限りニッケル被膜を残存ざせた。
次に、素子の機能領域102に限り残存させたニッケル被膜を、アルゴンからなる不活性ガス雰囲気中で、460℃で2時間にわたり、ニッケルシリサイド膜を形成するために加熱し、素子の機能領域102上に限り、ニッケルシリサイド膜103を形成した(図5(a)参照)。
次に、素子の機能領域102やニッケルシリサイド膜103を、一旦、覆う様に二酸化珪素(SiO2)絶縁膜104を形成した。然る後、ニッケルシリサイド膜103の上方にあるSiO2絶縁膜104をエッチングにより除去した。これにより、図5(a)に示す様に、ニッケルシリサイド膜103を底面に露出させたビアホ−ル(コンタクトホール)105を形成した。このコンタクト用ビアホール105の開口部の幅は45nmとした。
次に、ニッケルシリサイド膜103の表面を、酸素プラズマを用いて酸化した。酸化プラズマは、周波数40kHzの高周波を100Wの出力で酸素ガスに印加して発生させた。この酸化処理により、ニッケルシリサイド膜103の表面から内部に亘る約1nmの領域に珪素を主として含む非晶質の酸化物層103aを形成した。如何せん、厚さ1nm程の極薄膜であったため、その非晶質の酸化物層103aにはニッケルの酸化物も含まれているかを確定するには至らなかった。
次に、酸化物層103aを形成したニッケルシリサイド膜103の表面上には、ビスエチルシクロペンタジエニルマンガン((C2H5C5H5)2Mn)をマンガンの原料とする化学的気相成長法(CVD)法により、200℃で非晶質の酸化マンガン膜106を形成した(図5(b)参照)。酸化マンガン膜106の膜厚は3.4nmとした。また、この酸化マンガン膜106は、特に、ビアホール105の底部に限り被着させるのではなく、ビアホール105の周壁105aの表面をも覆う様に被着させた(図5(b)参照)。
次に、酸化マンガン膜106を460℃で2時間に亘り、圧力を1×10-3Paとする真空中で加熱した。これにより、酸化マンガン膜106にあって、ニッケルシリサイド膜103の酸化物層103a側に、珪素を含む酸化数を3価とするマンガンからなる第1の酸化マンガン膜106aを形成した。併せて、酸化マンガン膜106の表層部に、酸化数を2価とするマンガンからなる一酸化マンガン(組成式:MnO)で形成された第2の酸化マンガン膜106bを形成した。第1の酸化マンガン膜106aの膜厚は1.8nmであり、第2の酸化マンガン膜106bの膜厚は1.6nmであった(図5(c)参照)。
また、酸化マンガン膜106を加熱した後に、X線光電子分光法(XPS)法により、ニッケルシリサイド膜103における、珪素と化学結合をなすニッケル原子の濃度分布を調査した。その結果、ニッケルシリサイド膜103は、膜厚の増加方向に、珪素(Si)と化学結合するニッケルの原子濃度が徐々に減少しているのが認められた。
次に、第2の酸化マンガン膜106b上には、ビアホール105を埋め込むように、銅を物理的蒸着法で被着し、膜厚を100nmとする銅プラグ層107を形成して、銅コンタクトプラグ本体107とした(図5(c)参照)。この様にして、ニッケルシリサイド膜103と、2層構造の酸化マンガン膜106a,106bからなる拡散バリア層と、銅プラグ層(コンタクトプラグ本体)107とから構成されたコンタクトプラグ100を形成した。
別途、シリコン基板上に本実施例に記載したのと同様の方法により、ニッケルシリサイド膜、2層構造の酸化マンガン膜および銅プラグ層を形成した。TLM法により、コンタクトプラグをなす銅の、2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を介しての金属シリサイド膜との接触抵抗を求めた。
図6は、電極パッド間隔を19μmから40μmの範囲で変化した場合の、2個の電極パッド間の電流−電圧特性を示す。どの電極パッド間隔の電流−電圧特性においても直線関係となり、オーミック特性が得られていることを示す。
図7は、図6の直線関係から求めた抵抗値を電極パッド間隔に対してプロットした結果を示す。この図のX軸、Y軸の各切片の値から接触抵抗を求めた。その接触抵抗は、1.93×10-6Ω・cm2であった。図7には他の2例の結果も併せて示している。他の2例は以下に比較例1,2として説明する。
(比較例1) シリコン基板上に、本実施例1に記載した方法により、ニッケル被膜を素材としてニッケルシリサイド膜を形成した。その後、ニッケルシリサイド膜上にタングステンからなるプラグ層(層厚=100nm)を形成した。上記の実施例1と同様のTLM法により、コンタクトプラグをなすタングステンとニッケルシリサイド膜との接触抵抗を測定した。その結果、ニッケルシリサイド膜を酸化した酸化物層が無いにも拘わらず、また、2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を配置していないにも拘わらず、得られた接触抵抗は2.23×10-6Ω・cm2と、本発明に係る構成を備えたコンタクトプラグより高いものとなった。
(比較例2) シリコン基板上に、本実施例1に記載した方法により、ニッケル被膜を素材としてニッケルシリサイド膜を形成した。その後、ニッケルシリサイド膜上に単層のタンタル膜(膜厚=10nm)を拡散バリア層として形成した。次に、タンタルからなる拡散バリア層上に銅層(層厚=100nm)をプラグ層として形成した。上記の実施例1と同様のTLM法により、コンタクトプラグをなす銅とニッケルシリサイド膜との接触抵抗を測定した。その結果、拡散バリア層をタンタル膜から構成した場合に得られる接触抵抗は1.52×10-5Ω・cm2と、本発明に係る構成を備えた銅コンタクトプラグより約8倍、高いものとなった。
(実施例2) 銅・マンガン合金膜を用いて、第1及び第2の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層と銅プラグ層とを合わせて同時に形成できる便法を利用して、銅コンタクトプラグを形成する場合について、図8、図9及び図10を用いて説明する。
図8は、銅・マンガン合金膜を熱処理して第1及び第2の酸化マンガン膜と銅プラグ層とを併せて形成する手順を概略的に示す模式図である。
図8(a)において、シリコン層202は銅・マンガン合金膜を成膜するための基板を示す。シリコン層202上に高周波スパッタ法によってコバルト膜を10nmの厚さに成膜した。その後、真空中において480℃で2.5時間の熱処理を行い、コバルトシリサイド膜203とした。この試料にプラズマ酸化処理を施した。プラズマ酸化は、周波数を40kHzとする高周波の出力を100Wとし、酸素ガス圧力を40Paとし、室温で10分間、行った。この処理によって、コバルトシリサイド膜203の表面が酸化され、珪素を主体とする非晶質の酸化物層203aが表面に形成された(図8(b))。
この酸化物層203a上に、高周波スパッタ法によって銅・マンガン合金膜209を30nmの厚さに成膜した。その後、高純度の銅をターゲットとして、高周波スパッタリング法により銅層210を100nmの厚さに成膜した(図8(c))。得られた試料を、酸素を含有する10-2Paの圧力の雰囲気において、480℃で2.5時間、加熱する。この加熱によって、銅・マンガン合金膜209のマンガンは、酸化物層203aとの界面に向けて拡散してマンガンを含む第1及び第2の酸化マンガン膜206a、206bを形成する。更に、銅層210の表面側にも拡散して酸化マンガン膜(表面側酸化マンガン膜)206cを形成する(図8(d))。また、このマンガンの拡散により、銅・マンガン合金膜209は銅からなる層となるとともに、その上の銅層210と一体化して新たな銅プラグ層207となる。このように、加熱処理によって、銅・マンガン合金膜209から、第1及び第2の酸化マンガン膜206a,206bと表面側酸化マンガン膜206cと銅プラグ層207とが形成される。
図9、図10は、本実施例2に係るコンタクトプラグの形成手順を示す図であり、図9は形成手順の前半を、図10は形成手順の後半を示している。図9、図10において、図8の構成要素と略同一の構成要素には同一の符号を付すこととする。
図9、図10において、コンタクト用ビアホールに銅・マンガン合金膜を成膜して銅プラグを形成する方法を示す。図9(a)に示すように、先ずシリコン基板201上の高いキャリア濃度の領域(図中に“n+Si層”で表す。)202にコバルト膜を真空蒸着し、その後、加熱してコバルトシリサイド膜203とする。この膜上に、絶縁膜204としてシリコン酸化物を形成し、通常のフォトリソグラフィー法によってコンタクト用のビアホール205を形成する。ビアホール205底部にあるコバルトシリサイド膜203に対してプラズマ酸化法を用いてその表面を酸化し酸化物層203aを形成する(図9(a))。
その後、シリコン基板201を真空中に配置し、シリコン基板201を480℃に加熱する。次に、水素ガスをキャリアガスとして、化学気相成長法(CVD法)によって、ビアホール205の底面に露出したコバルトシリサイド膜203上およびビアホール205の周壁205aに、銅・マンガン合金膜を被着させて銅・マンガン合金膜209を形成する(図9(b))。マンガン及び銅の各原子の流量は、銅・マンガン合金膜209のマンガン濃度が原子パーセントにして例えば8%となるように調整する。その後、マンガンの原料の流入を止めて、銅の原料のみを水素キャリアガスに随伴させて流入させ、ビアホール205の内部を銅で埋め込み、銅層210を形成する(図10(c))。
得られた試料を10-3Paの圧力の酸素を含有する雰囲気において480℃で2.5時間に亘り、加熱を施す。この加熱によって、銅・マンガン合金膜209に含まれるマンガンは、ビアホール205の周壁205aをなす絶縁膜204に向けて拡散して、絶縁膜204との界面に酸化マンガン膜(周壁側酸化マンガン膜)206を形成する。またコバルトシリサイド膜に形成された酸化物層203aとの界面に拡散して、マンガンを含む酸化物膜(酸化マンガン膜)を形成する。すなわち、コバルトシリサイド膜203の酸化物層203aに接して、珪素を含む第1の酸化マンガン膜206aが形成される。また、第1の酸化マンガン膜206a上には、第1の酸化マンガン膜206aよりも酸化数の小さいマンガンからなる第2の酸化マンガン膜206bが形成される。
更に、銅・マンガン合金膜中のマンガンは、銅層210表面にも拡散してマンガンを含む酸化物(表面側酸化マンガン膜)206cを形成する。このため、銅・マンガン合金膜209は銅からなる層となるとともに、銅層210と一体化して、ほぼ純粋な銅からなる銅プラグ層207となる。このように、銅・マンガン合金膜を素材とすれば、加熱処理によって、第1及び第2の酸化マンガン膜206a、206bからなる2層構造の拡散バリアと銅プラグ層207と周壁側酸化マンガン膜206と表面側酸化マンガン膜206cとが同時に形成され得る。
銅プラグ層207表面に形成された表面側酸化マンガン膜206cと、絶縁膜204表面上に形成された余剰な銅の部分を化学機械研磨(英略称:CMP)によって除去し、表面を洗浄してコンタクトプラグ200とする(図10(d))。この様にして、コバルトシリサイド膜203と、第1及び第2の酸化マンガン膜206a、206bと、銅プラグ層(コンタクトプラグ本体)207とから構成されたコンタクトプラグ200の係る接触抵抗は1.89×10-6Ω・cm2となり、接触抵抗の低いコンタクトプラグを実現することができた。
なお、上記の実施例2では、金属シリサイド膜上およびビアホールの周壁に、銅・マンガン合金層を形成し、さらにその内方を埋め込むように銅層を改めて形成したが、銅層を形成せず、ビアホールの内部の全体を銅・マンガン合金膜で埋め尽くした後、加熱処理を施しても良い。この手法により、製造工程が簡略化され、より簡単にコンタクトプラグを作成することができる。
(実施例3) 銅・マンガン合金膜を用いて、第1及び第2の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層と銅プラグ層とを合わせて同時に形成できる便法を利用して、銅コンタクトプラグを形成する場合を例にして、本発明の内容を説明する。
本実施例3と上記の実施例2との銅・マンガン合金膜に係る異なる点は、上記の実施例2では、銅・マンガン合金膜を化学的気相成長(CVD)法で成膜したのに対し、本実施例3では、銅・マンガン合金膜を銅・マンガン合金からなるターゲット材を用いてスパッタリング法で形成していることにある。
先ず、実施例1に記載した如く、半導体シリコンからなる素子の機能領域に、シリサイド膜を形成するためのニッケル被膜を被着させた。その後、真空中において480℃で2.5時間の熱処理を行い、素子の機能領域をなすシリコンを利用してニッケルをシリサイド化し、ニッケルシリサイド膜となした。これにより、ニッケルシリサイド膜の表面に向けて、珪素と化学結合をなすニッケルの量を減少させたニッケルシリサイド膜を形成した。
次に、実施例2に記載の如く、ビアの底部に露出させたニッケルシリサイド膜の表面をプラズマ酸化処理した。プラズマ酸化は、周波数を40kHzとする高周波の出力を100Wとし、酸素ガス圧力を40Paとし、室温で10分間、行った。この処理で、ニッケルシリサイド膜の表面を酸化し、珪素を主体とする厚さ1nmの非晶質の酸化物層を、その膜の表面に形成した。X線光電子分光法(XPS)で測定したニッケルと珪素の化学結合に由来する信号の強度からして、酸化物層の表面から約1nmの深さ領域での珪素と化学結合するニッケルの量は、酸化物層の表面の1.5倍であった。
次に、酸化物層上に、高周波スパッタリング法によって銅・マンガン合金膜を5nmの厚さに成膜した。ターゲット材料には、マンガンを原子濃度にして4%含む銅・マンガン合金を用いた。成膜された銅・マンガン合金膜中のマンガンの原子濃度は約4%であった。その後、高純度の銅をターゲットとして、高周波スパッタリング法により銅層を100nmの厚さ(ほぼビアの深さである)で銅・マンガン合金膜上に成膜し、ビアの内部を銅で埋め銅層を形成した。
次に、酸素を含有する10-2Paの圧力の雰囲気において、480℃で2.5時間、加熱した。この加熱により、銅・マンガン合金膜のマンガンを、ニッケルシリサイド膜の表面をなす酸化物層側へ拡散させ、酸化物層上に酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を形成した。すなわち、珪素を含む酸化物からなる酸化物層との界面に近接する領域には、ニッケルシリサイド膜或いは酸化物層を拡散源とした珪素を含む酸化マンガン膜が形成された。微小領域のEDX(エネルギー分散型X線分光分析)から、その第1の酸化マンガン膜を構成する元素の量的比率は、Mn:Si:O=2:2:7と見積もられた。これにより、マンガンの酸化数は3価であると推察された。
酸化物層との界面に近接する領域に形成された酸化マンガン膜は、酸化数を3価とするマンガンからなり、また、珪素を含むことから、本発明に係る第1の酸化マンガン膜であると判断された。その第1の酸化マンガン膜上には、EDXによる組成分析の結果から、第1の酸化マンガン膜よりも珪素の原子濃度が低い、酸化数を2とするマンガンからなる一酸化マンガン(組成式:MnO)膜が形成されているのが認められた。即ち、本発明に係る第2の酸化マンガン膜が形成された。
形成時には、厚さが5nmであった銅・マンガン合金膜は、上記の様に第1及び第2の酸化マンガン膜からなる2層構造となった。透過電子顕微鏡(TEM)を利用した断面TEM観察によれば、第1の酸化マンガン膜の厚さは2.6nmであった。一方の第2の酸化マンガン膜の厚さは、第1の酸化マンガン膜より薄く、2.4nmであった。また、TEMを用いた電子回折分析において、第1及び第2の酸化マンガン膜からの回折パターンはハロー(halo)であったため、第1及び第2の酸化マンガン膜は、非晶質膜であると判定した。更に、高分解能TEM(英略称:HRTEM)を用いた高倍率の断面TEM観察では、第2の酸化マンガン膜内には、一部、結晶化している領域が存在しているのが認められた。
また、上記の熱処理は、銅・マンガン合金膜中のマンガンの一部を、銅層の表面に向けても拡散、移動させる作用を及ぼした。このため、銅・マンガン合金膜の上部は、銅からなる膜となる共に、銅層と一体化して、ほぼ純粋な銅からなる銅コンタクトプラグ層が形成された。また、銅・マンガン合金膜中のマンガンが銅層の表面に向けても移動することにより、銅層の表層部には、酸化マンガン膜が形成された。銅層の表層部に形成された酸化マンガン膜は、二酸化マンガン(組成式:MnO2)の組成を有していると同定された。銅層の表面に形成された酸化マンガン膜の厚さは、金属シリサイド膜側に形成される上記の第1及び第2の酸化マンガン膜のいずれよりも厚く、4.1nmであった。これは、銅層の表面が酸素を含む雰囲気に直接、曝されている状態で熱処理をしたため、酸素とマンガンとが結合する機会が増したためと推察された。
銅層の表面に形成された酸化マンガン膜内の元素のSIMS分析をしたところ、珪素の原子濃度は、第2の酸化マンガン膜より低く、従って、第1の酸化マンガン膜より殊更、低く、そのSIMS分析条件下での検出限界に近い2×1017cm-3程度であった。また、電子エネルギー損失分光法(英略称:EELS)により、銅層の表面に形成された酸化マンガン膜の内部でのマンガンの原子濃度の分布を調べた。その結果、マンガン原子は酸化マンガン膜の膜厚方向の中央で、その原子濃度を極大とする様な分布を呈していた。
加熱温度及び加熱時間を上記のニッケル被膜をシリサイド化した際と同一の条件としたことで、ニッケルシリサイド膜を構成するニッケルが遊離して、半導体シリコンからなる素子の機能領域へ侵入するのも抑制できた。伝送線路(TLM)法で測定された、銅コンタクトプラグの接触抵抗は1.80×10-6Ω・cm2となり、接触抵抗の低い銅コンタクトプラグがもたらされた。
なお、上記の実施例3では、金属シリサイド膜上およびビアホールの周壁に、銅・マンガン合金層を形成し、さらにその内方を埋め込むように銅層を改めて形成したが、上記の実施例2の場合と同様に、銅層を形成せず、ビアホールの内部の全体を銅・マンガン合金膜で埋め尽くした後、加熱処理を施しても良い。この手法により、製造工程が簡略化され、より簡単にコンタクトプラグを作成することができる。
(比較例3) 上記の実施例3と相違しているのは、銅・マンガン合金膜の熱処理温度のみである。この比較例3では、580℃で2時間、加熱した。上記の実施例3とは異なる、本発明が好適とする温度を超える高温で加熱処理をしても2層構造の酸化マンガン膜が形成され得るのは、断面TEM観察により確認できた。また、EDX法では、図11に示す様に、ニッケルシリサイド膜の内部に銅が検出されなかったことから、銅に対する拡散バリア層が形成されていることは認知された。しかしながら、上記の実施例3に記載の様に銅コンタクトプラグを形成しても、その接触抵抗は3.2×10-6Ω・cm2と高かった。一因として、好適な範囲(450℃〜550℃)を超える温度で加熱したため、2層構造の全体に珪素が拡散し、酸化マンガン膜を構成するマンガンの酸化数が層の区別無く、同一(例えば、3価)となり、銅コンタクトプラグとの密着性が損なわれることが推考された。この様な接触抵抗の急激な増加は、加熱温度を550℃より高温とする場合に多発した。
(比較例4) 上記の実施例3と相違しているのは、銅・マンガン合金膜の熱処理温度のみである。この比較例4では、450℃未満で加熱した。銅コンタクトプラグに係る接触抵抗は、加熱時間を本発明の好適な時間(1.5時間〜3時間)としながらも、450℃未満の低温で銅・マンガン合金膜を加熱した場合にも、増加した。450℃未満の低温での加熱による急激な接触抵抗の増加は、ニッケルシリサイド膜側から酸化マンガン膜側へ珪素が、ニッケルシリサイド膜と酸化マンガン膜との密着をもたらす程、充分に浸透させられないのが一因と推考された。従って、上記の比較例3に記載した結果を考慮すると、2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を形成するのに適する温度の範囲は、450℃以上で550℃以下である定められた。
(比較例5) 上記の実施例3と相違しているのは、銅・マンガン合金膜の熱処理温度・時間のみである。この比較例4では、500℃で4時間、加熱した。上記の実施例3とは異なり、本発明が好適とする範囲を超える時間に亘り加熱処理をしても2層構造の酸化マンガン膜が形成され得るのは、断面TEM観察により確認できた。加えて、EDX法により、3時間を越える加熱処理でも、ニッケルシリサイド膜の内部に銅が検出されなかったことから、銅に対する拡散バリア層としての作用は維持されていることが認知された。しかしながら、上記の実施例3に記載の様に銅コンタクトプラグを形成しても、その接触抵抗は2.9×10-6Ω・cm2と高かった。一因として、好適な範囲を超える時間に亘り加熱したため、2層構造の全体は酸化数の大きなマンガン(例えば、3価のマンガン)から構成されてしまったことが一因であると推察された。やはり、好適とする温度範囲での加熱処理であっても、3時間を越えて加熱を継続すると接触抵抗が急激に増加するのが認められた。
(比較例6) この比較例6では、銅・マンガン合金膜の熱処理時間を、1.5時間未満とした。450℃以上で550℃以下の温度範囲で、加熱時間を1.5時間未満とした場合、断面TEM観察では、金属シリサイド膜上に安定して明瞭な2層構造を有する酸化マンガン膜が形成することは認められ難かった。特に、上記の温度範囲の中でも低い温度の450℃近傍で、時間を1.5時間より短くする加熱では、2層構造の酸化マンガン膜からなる拡散バリア層を充分に安定して形成するに至らなかった。また、450℃未満の低温で、1.5時間未満の不十分な条件での加熱処理では、形成される酸化マンガン膜は非晶質ではあるものの、概ね、数的に単一な膜となった。更には、実施例3の如く形成した銅コンタクトプラグの接触抵抗も、3.0×10-6Ω・cm2を超えて急激に高いものとなった。これは、加熱が不十分なため、金属シリサイド膜側からの珪素の拡散が適度に進行せず、従って、珪素を含むことによって金属シリサイド膜との密着性を増す目的が達成されないのが一因であると考えられた。
本発明に係る第1及び第2の酸化マンガン膜からなる2層構造層を拡散バリア層として用いれば、コンタクトプラグをなす銅の素子の機能領域への拡散、侵入を抑止することができるので、素子動作電流の不必要な漏洩を防止でき、長期間に亘り正常な動作をするCMOSトランジスタなどの半導体素子を生産するのに利用できる。
また、本発明に係る第1及び第2の酸化マンガン膜からなる2層構造の拡散バリア層を用いれば、電気的接触抵抗の小さな銅コンタクトプラグを形成することができるので、動作信頼性がたかく、且つ低消費電力のフラットパネルディスプレイ(FPD)などの表示装置などを生産するのに利用できる。
また、本発明に係る2層構造の拡散バリア層を介して設けた銅コンタクトプラグを備えた配線は、なかでも、比抵抗の小さな銅を配線本体とする銅配線を利用すれば、電気的抵抗の小さな配線を構成できるため、光電変換効率に優れる太陽電池やRC遅延の小さなシリコン集積回路などの生産に利用できる。