JP5683190B2 - 表面被覆部材 - Google Patents

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本発明は基体の表面に被覆層が形成されている表面被覆部材に関する。
現在、切削工具や耐摩部材、摺動部材といった耐摩耗性や摺動性、耐欠損性を必要とする部材では、超硬合金やサーメット等の基体の表面に被覆層を成膜して、耐摩耗性、摺動性、耐欠損性を向上させる手法が使われている。
例えば、特許文献1では、超硬合金やサーメット等の基体の表面に、TiNやTiCNの下部層と、(Ti,Al)CNOの中間層と、Al2O3の上部層とを順次成膜した切削工具が開示されている。また、特許文献2では、TiNやTiCNの下部層とAl2O3の中間層とAl2O3とZrO2との混合組織からなる上部層とを成膜した切削工具において、下部層を成膜した後でAl2O3層を成膜する前に、核薄膜を形成して加熱処理を施す方法が開示されている。
さらに、非特許文献1では、TiCN膜のラマンスペクトルについて開示され、TA、LA、TOモードのスペクトルが検出されることが記載されている。
特開2007−075968号公報 特開2001−322007号公報
Ines Dreling,「Raman spectroscopy as a tool to study cubic Ti-C-N CVD coating」,Surface & Coating Technology,2009,204,p.1008-1012
しかしながら、特許文献1や特許文献2の構成の被覆層では、高速切削加工のように切刃が高温になるとAl2O3層が部分的に剥離しやすくなり、耐摩耗性が低下した。
そこで、本発明の表面被覆部材は、高速切削加工のように切刃が高温になってもAl2O3層の剥離を抑制できる切削工具等の部材を提供することを目的とする。
本発明の表面被覆部材は、基体の表面に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物および炭窒酸化物のうちの1層以上の下層と、α型結晶構造のAl2O3層とを形成してなり、該Al2O3層の表面から波長514.53nmのHe−Neレーザー
を照射して得られるラマンスペクトルにおいて、波数416〜420cm−1のAl2O3層のピークから低波数側で隣り合う波数300〜400cm-1のブロードピークのピー
ク強度I0に対して、波数1050〜1120cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI1、波数780〜850cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI2としたとき、比(I1/I0)が0.08〜0.2、かつ比(I2/I0)が0.08〜0
.2である。
ここで、波数600〜680cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI3、波
数520〜580cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI4としたとき、比(I3/I0)が0.1〜0.5、かつ比(I4/I0)が0.1〜0.8であってもよい。
また、前記Al2O3層の直下の下層には、表面に前記Al2O3層に向かって針状に伸びる平均幅が0.05〜0.12μm、平均間隔が0.05〜0.12μm、平均高さが0.1〜0.45μmの突起が形成されている結合層を備えていてもよい。
さらに、前記結合層はTiAlCNOからなり、かつ前記突起は、該突起以外の前記結合層に比べて酸素と炭素が多い組成からなっていてもよい。
本発明の表面被覆部材によれば、ラマンスペクトルにおいて、比(I1/I0)が0.08〜0.2、かつ比(I2/I0)が0.08〜0.2であることによって、Al2O
3層の密着性が向上して層剥離が抑制できて、切削工具の耐欠損性および耐摩耗性がともに向上することができる。
本発明の表面被覆部材の好適例である切削工具の一例について、(a)概略断面図、(b)(a)の要部拡大図である。 図1の切削工具について、波長514.53nmのHe−Neレーザーを照射して得られるラマンスペクトルである。
本発明の表面被覆部材の好適例である切削工具の一例について、図1の(a)概略断面図、(b)(a)の要部拡大図を基に説明する。
図1の切削工具1は、すくい面2と逃げ面3との交差稜線部が切刃4を構成しているとともに、基体6の表面に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物および炭窒酸化物のうちの1層以上の下層7と、α型結晶構造のAl2O3層(以下、単にAl2O3層と略す。)8とを備える被覆層が形成されている。
そして、図2に示すように、Al2O3層8の表面から波長514.53nmのHe−
Neレーザーを照射して得られるラマンスペクトルにおいて、波数416〜420cm−1のAl2O3層8のピークから低波数側で隣り合う波数300〜400cm-1のブロードピークのピーク強度I0に対して、波数1050〜1120cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI1、波数780〜850cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI2としたとき、比(I1/I0)が0.05〜0.5、かつ比(I2/I0)
が0.05〜0.5の(a)のほうが、(b)に比べて切削工具1のチッピングが減少して耐摩耗性が向上する。なお、上記ラマンスペクトルピークの状態で耐チッピング性が向上する理由は不明であるが、レーザー光は透明な材料は透過してその下部の状態を反映してラマンスペクトルが検出されるので、図1に示す構成の被覆層の構成の場合にはAl2O3層8の下側の界面の状態をより強く反映した情報が得られるものと思われる。しかも、この分析方法によれば、分析のための前処理加工等を施す必要もなく、Al2O3層8の下側の界面の状態が評価できていると考えられる。また、比(I1/I0)の望ましい範囲は、0.08〜0.2であり、かつ比(I2/I0)の望ましい範囲は、0.08〜
0.2である。
なお、本発明において、ピーク強度I0、IA等の測定方法は、図2に示すように、100cm−1における強度(測定値)と800cm−1における強度(測定値)とを結ぶ
線分を0(ゼロ)点基準として、各ピークのピーク強度を算出する。また、100cm−1または800cm−1にピークが存在する場合には、そのピークを避けてその周辺のピークが存在しない位置で代用する。
ここで、本発明によれば、波数600〜680cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI3、波数520〜580cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI4としたとき、比(I3/I0)が0.1〜0.5、かつ比(I4/I0)が0.1〜0.8であるほうが、密着力に優れ、耐摩耗性に優れたAl2O3層となる点で望ましい。
また、図1(b)に示すように、Al2O3層8の直下の下層7には、Ti、Al、C、NおよびOを含んでAl2O3層8に向かって針状に伸びる平均幅が0.05〜0.12μm、平均間隔が0.05〜0.12μm、平均高さが0.1〜0.45μmの突起9が形成されている結合層7cを備えていてもよい。なお、本発明においては、平均高さ/平均幅=1.5以上の凸部が平均間隔0.05μm以上の間隔をあけて形成された状態の凸部を突起9と定義する。
さらに、結合層7cはTiAlCNOからなり、かつ突起9は、突起9以外の結合層7cに比べて酸素と炭素が多い組成からなっていることが、Al2O3層8の密着性を高める点で望ましい。
次に、Al2O3層8より基体6側に形成される下層7について説明する。
下層7は、TiC、TiN、TiCN、TiCNO、TiCO、TiNO、TiO2の群から選ばれる1層以上が好適に用いられ、耐摩耗性および耐欠損性が向上する。本実施態様によれば、具体的な構成として、基体6の直上には第1層としてTiN層7aが形成され、第2層としてTiCN層7bが形成されている。TiCN層7bとしては、アセトニトリル(CH3CN)ガスを原料として含み成膜温度が780〜900℃と比較的低温で成膜した柱状結晶からなる、いわゆるMT−TiCN層7bであることが望ましい。さらに、TiCN層7bの表面には結合層7cが成膜された構成であることが望ましい。これによって、Al2O3層8との密着力が高まり、被覆層の剥離やチッピングを抑えることができる。
なお、各層の厚みおよび各層を構成する結晶の性状は、切削工具1の断面における電子顕微鏡写真(走査型電子顕微鏡(SEM)写真または透過電子顕微鏡(TEM)写真)を観察することにより、測定することが可能である。
一方、切削工具1の基体6は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種と、からなる硬質相を、コバルト(Co)やニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金やTi基サーメット、またはSi3N4、Al2O3、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスのいずれかが好適に使用できる。中でも、切削工具1を切削工具として用いる場合には、基体6は、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。また、用途によっては、基体6は炭素鋼、高速度鋼、合金鋼等の金属からなるものであっても良い。
さらに、上記記載では切削工具1について説明したが、摺動部品や金型等の耐摩部品、掘削工具、刃物等の工具、耐衝撃部品等の各種の用途への応用も可能である。特に、切削工具1を高速切削条件で加工した場合に優れた切削性能を示す。つまり、本発明によれば、α型Al2O3層8が高温になっても、α型Al2O3層8がTiCN層7bと強固に結合しているので、α型Al2O3層8がチッピングしたり欠損したりすることを抑制す
ることができる。もちろん、鋼の切削加工においても、従来の工具に対して優れた耐欠損性および耐摩耗性を示すことができる。
(製造方法)
本実施形態の切削工具1の一例である上述した表面被覆切削工具の製造方法の一実施形態について説明する。
まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形する。その後、得られた成形体を真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体6を作製する。そして、上記基体6の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。
次に、得られた基体6の表面に化学気相蒸着(CVD)法によって被覆層を形成する。まず、基体6の直上に第1層としてTiN層を形成する。TiN層の成膜条件としては、混合ガス組成として四塩化チタン(TiCl4)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N2)ガスを10〜60体積%の割合で含み、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を800〜940℃(チャンバ内)、圧力を8〜50kPaにて成膜される。
次に、第2層としてTiCN層7bを形成する。MT−TiCN層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl4)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N2)ガスを10〜60体積%、アセトニトリル(CH3CN)ガスを0.1〜0.6体積%の割合で含み、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を780〜900℃、圧力を5〜25kPaであることが望ましい。
そして、結合層7cは、まず、四塩化チタン(TiCl4)ガスを0.1〜5体積%、窒素(N2)ガスを0〜30体積%の割合で含み、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を930〜980℃、圧力を5〜40kPaとして成膜する。次に、成膜温度を930〜980℃、圧力を5〜40kPaとし、四塩化チタン(TiCl4)ガスを1〜5体積%、窒素(N2)ガスを10〜30体積%、一酸化炭素(CO)ガスを4〜8体積%、二酸化炭素(CO2)ガスを0.3〜1.0体積%、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に5〜20分導入して成膜し、引き続き、四塩化チタン(TiCl4)ガスを1〜5体積%、三塩化アルミニウム(AlCl3)ガス、一酸化炭素(CO)ガスを4〜8体積%、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを5〜20分間流す。その後さらに、四塩化チタン(TiCl4)ガスを1〜5体積%、一酸化炭素(CO)ガスを4〜8体積%、メタン(CH4)ガスを1〜5体積%、窒素(N2)ガスを1〜30体積%、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを5〜20分間流すことにより結合層7cが作製できる。
続いて、α型Al2O3層8を形成する。α型Al2O3層8の成膜条件としては、三塩化アルミニウム(AlCl3)ガスを0.5〜5.0体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO2)ガスを0.5〜5.0体積%、硫化水素(H2S)ガスを0〜0.5体積%、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、成膜温度を930〜980℃から成膜を始め、1〜5℃/分の昇温速度で、1000〜1050℃まで昇温し、所望の成膜温度になれば、その成膜温度で、硫化水素(H2S)ガスを添加して、圧力を5〜10kPaとして成膜することが望ましい。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMG120408)に成形した。得られた成形体について、脱バインダ処理を施し、0.5〜100Paの真空中、1400℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金に対して、ブラシ加工にてすくい面側から刃先処理(すくい面側が0.05mm/逃げ面側が0.05mmのRホーニング)を施した。
次に、上記超硬合金に対して、CVD法により各種の被覆層を表1、2に示す成膜条件、および表3に示す層構成にて形成した。そして、被覆層の表面をすくい面側から30秒間ブラシ加工して試料No.1〜8の表面被覆切削工具を作製した。
得られた工具について、波長514.53nmのHe−Neレーザーを照射してラマンスペクトルを得た。得られたスペクトルチャートについて、各ピーク強度を算出した。なお、図2(a)は試料No.3のピークを示し、図2(b)は試料No.8のピークを示す。結果は表4に示した。また、被覆層の断面について透過型電子顕微鏡観察を行い、各層を構成する結晶の形状、平均粒径(または平均結晶幅)、厚みを見積もった。結果は表3に示した。
Figure 0005683190
Figure 0005683190
Figure 0005683190
次に、このスローアウェイチップを用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表3に併せて示した。
切削方法:外径加工
被削材 :SCM440(4本溝入れ)
切削速度:300m/分
送り :0.25mm/rev
切り込み:1.5mm
切削状態:湿式
評価方法:切れ刃が欠損となる衝撃回数(表中、衝撃回数と記載。)
Figure 0005683190
表1〜4に示される結果から、所定の成膜条件でAl2O3層の直下の結合層を形成しない試料No.6〜8では、いずれも比(I1/I0)が0.05より小さいか、比(I2/I0)が0.05より小さく、上記切削試験においては少ない衝撃回数で欠損に至っ
た。
これに対し、所定の成膜条件で結合層を形成した試料No.1〜5では、いずれも比(I1/I0)が0.05〜0.5、かつ比(I2/I0)が0.05〜0.5の範囲内と
なり、上記切削試験において良好な耐欠損性を示した。
1 切削工具
2 すくい面
3 逃げ面
4 切刃
6 基体
7 下層
7a TiN層
7b TiCN層
7c 結合層
8 Al2O3層
9 突起

Claims (4)

  1. 基体の表面に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物および炭窒酸化物のうちの1層以上の下層と、α型結晶構造のAl2O3層とを形成してなり、該Al2O3層の表面から波長514.53nmのHe−Neレーザーを照射して得られるラマン
    スペクトルにおいて、波数416〜420cm−1のAl2O3層のピークから低波数側で隣り合うブロードピークのピーク強度I0に対して、波数1050〜1120cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI1、波数780〜850cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI2としたとき、比(I1/I0)が0.08〜0.2、かつ比(I2/I0)が0.08〜0.2である表面被覆部材。
  2. 波数600〜680cm−1範囲内に現れるピークのピーク強度をI3、波数520〜580cm−1の範囲内に現れるピークのピーク強度をI4としたとき、比(I3/I0)が0.1〜0.5、かつ比(I4/I0)が0.1〜0.8である請求項1記載の表面被覆部材。
  3. 前記Al2O3層の直下の下層には、表面に前記Al2O3層に向かって針状に伸びる平均幅が0.03〜0.15μm、平均間隔が0.05〜0.2μm、平均高さが0.05〜0.3μmの突起が形成されている結合層を備えている請求項1または2記載の表面被覆部材。
  4. 前記結合層はTiAlCNOからなり、かつ前記突起は、該突起以外の前記結合層に比べて酸素と炭素が多い組成からなる請求項3記載の表面被覆部材。
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