JP5686830B2 - 鉄コロイド製剤 - Google Patents

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本発明は、鉄コロイド製剤に関し、より詳しくは硫酸基含量が10%以下である硫酸化多糖を含む鉄コロイド製剤及びその製造方法に関する。
病態生理下にある患者に対して、栄養状態の改善を目的として各種の栄養製剤、たとえば糖類製剤、たん白アミノ酸製剤、ビタミン製剤、無機質製剤、これら各栄養成分(栄養素)の適宜混合製剤等が投与されているが、特に鉄をはじめとする微量元素の摂取不足によりその栄養効果について期待されるに至らなかった例が見られている。そこで、鉄コロイドを含有する製剤や、鉄に加え亜鉛等の微量元素を加えた微量元素製剤(特開2000−178181号公報(上掲特許文献1)、特開2002−193816号公報(上掲特許文献2)、特開2002−255830号公報(上掲特許文献3)など)が各種提案、検討されている。
他方、近年狂牛病の発生から、牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy(BSE))の感染が問題となっている。もともと体内にあるタンパク質である正常型のプリオン(prion)が異常型になって病原体となり、感染症を引き起こすのがプリオン病で、牛の狂牛病(BSE)、羊のスクレイピー、人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などがある。そこで、牛由来の蛋白質であるプリオン(prion)を避ける、いわゆる牛由来の原材料を使用しない食品、医薬品への変更が求められている。
特開2000−178181号公報 特開2002−193816号公報 特開2002−255830号公報
前項記載の従来技術の背景下に、本発明は、鉄コロイド製剤について牛由来の成分を含まず且つ安定な鉄コロイド製剤を提供するにあたり、種々の問題点を解決したうえで、安全性、安定性及び大量生産性に優れた鉄コロイド製剤を提供することを目的とする。
鉄コロイド製剤は、鉄イオンの補給のために安定な鉄コロイドを調製する必要があるが、例えば鉄以外の亜鉛、銅、ヨウ素等を配合するに適切な液性を有した製剤であることが好ましい。鉄コロイドを含有する製剤としては、既に高カロリー輸液用の微量元素製剤(商品名「エレメンミック注」、「エレメイト注」(共に味の素ファルマ社製))が医療機関に提供されている。
鉄コロイド製剤において、鉄はpH2.0以上の水溶液では容易に水酸化鉄、さらに酸化鉄となり沈澱を生じてしまう。一方、鉄コロイドにその他の微量元素を配合する場合、銅と亜鉛またはヨウ素とはpH4.5以下で複雑な酸化還元反応を起こし、各元素複合型の沈澱を生じる。さらに亜鉛および銅はpH6.0以上では酸化物の沈澱を生じる。
このように、鉄コロイド溶液は、特に鉄以外の微量元素を水溶液中で安定化するためには、その液性を至適な範囲(pH4.5〜6.0)に保つ必要がある。特に鉄の安定化のために鉄を鉄コロイドとする必要があるが安定な鉄コロイドとする安定剤(添加剤)として、古くはデキストリン及びデキストラン、さらにコンドロイチン硫酸、酸化糖、デキストリン及びクエン酸が検討されている。
生体内での鉄の放出、分布の観点からコンドロイチン硫酸を使用したもの(商品名「ブルタール」)、酸化糖を使用したもの(商品名「フェジン」)、デキストリン及びクエン酸を使用したもの(商品名「グルフェルコン」)が提供されている。他方、高カロリー輸液(アミノ酸、電解質、高濃度のブドウ糖含有)に混合して投与される鉄コロイドを含む微量元素製剤は、高カロリー輸液中での他成分との配合変化がないことが必須となり、コンドロイチン硫酸をはじめとする硫酸化多糖が優れた安定剤として利用できることが知られている(「病院薬学」5、30−36、1979)。
本発明者は、牛や鯨を由来(原料)としない硫酸化多糖としてコンドロイチン硫酸を選択し、これを用いて、鉄コロイドの調製法、コンドロイチン硫酸の異なるタイプのコロイド化能に関わる要因を種々検討し、例えばサメや豚由来のコンドロイチン硫酸であっても、特定の条件を満たした硫酸化多糖を用いることにより、安定な鉄コロイドが調製可能なこと、またこの安定な鉄コロイドは例えば高カロリー輸液中に混合しても安定な鉄コロイドであり、延いてはこの安定な鉄コロイドを含む微量元素製剤を提供できることを見い出し、このような知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次に掲げる態様を含む。
(1)硫酸化多糖を含む鉄コロイド製剤であって、コンドロイチン4−硫酸とコンドロイチン6−硫酸の比率((コンドロイチン4−硫酸)/(コンドロイチン6−硫酸)比)が0.25〜1.0であり、コンドロイチン4−硫酸の含有量が18〜45%であり、且つ分子量50,000以下のコンドロイチン硫酸を含有する鉄コロイド製剤。
(2)コンドロイチン硫酸が魚類または/および豚由来であり、静脈注射可能である上記(1)記載の鉄コロイド製剤。
(3)鉄コロイドにさらに亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、クロムおよびホウ素から選ばれた少なくとも1種の微量元素を含有する上記(1)または(2)記載の鉄コロイド製剤。
(4)0.22μm以上の鉄コロイドが含まれない上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鉄コロイド製剤。
(5)コンドロイチン硫酸塩の濃度が1〜5w/v%で且つpHを7.5〜8.5に調整された水溶液中にて、鉄化合物がコロイド化された鉄コロイドを含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鉄コロイド製剤。
(6)硫酸化多糖を含む鉄コロイド製剤の製造方法であって、コンドロイチン4−硫酸とコンドロイチン6−硫酸の比率((コンドロイチン4−硫酸)/(コンドロイチン6−硫酸)比)が0.25〜1.0であり、且つ分子量50,000以下のコンドロイチン硫酸を、コンドロイチン硫酸塩の濃度として1〜5w/v%且つpHを7.5〜8.5に調整された水溶液中にて、塩化鉄をコロイド化することをする鉄コロイド製剤の製造方法。
(7)鉄コロイド溶液を100〜121℃の温度で加熱したうえで、所望の鉄イオン含有量に希釈しバリウムイオンが実質的に溶出しない容器に充填し、且つ加熱滅菌処理することを特徴とする上記(6)記載の鉄コロイド製剤の製造方法である。
本発明により、例えば病態生理下にある患者に投与可能な鉄コロイド製剤について、溶液あるいは注射剤でBSEの感染を心配することなく安全性の高い鉄コロイド製剤を供給でき、この製剤は経時的な安定性および生産性に優れている優れた製品特性を有している。
以下、本発明を詳細に説明する。
コンドロイチン硫酸は、魚や動物の粘質性分泌液から得られるムコ多糖類の一種で軟骨に比較的多く存在する。コンドロイチン硫酸は、N−アセチル−D−ガラクトサミンとD−グルクロン酸またはL−イズロン酸がβ−グルコシド結合した二糖を構成単位とする、分子量5,000〜80,000の多糖体を基本骨格とする硫酸化多糖である。コンドロイチン硫酸は、N−アセチル−D−ガラクトサミンのC4位に硫酸基が結合したコンドロイチン4−硫酸(コンドロイチン硫酸−Aタイプともいう)、またN−アセチル−D−ガラクトサミンのC6位に硫酸基が結合したコンドロイチン6−硫酸(コンドロイチン硫酸−Cタイプともいう)、D−グルクロン酸の代わりにL−イズロン酸を含みN−アセチル−D−ガラクトサミンのC4位に硫酸基が結合したデルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸−Bタイプともいう)の各タイプが知られており、これらはいずれも構成単位当たり硫黄がほぼ1原子(6.4w/w%)含まれている。コンドロイチン硫酸における硫酸基含量
は、その含量が高い場合は溶血性が懸念され、比較的低含量に調整されている。コンドロイチン硫酸の各タイプの鉄コロイドの生成やその安定化にはそれぞれ異なる挙動を示すとともに、各タイプはそれぞれ影響し合い鉄コロイドを形成すると考えられる。各タイプのなかで、コンドロイチン硫酸−Aのタイプが鉄コロイド生成に重要な役割を発揮し、分子量の違いについても複合的にコロイド形成に影響する。
コンドロイチン硫酸は、コンドロイチン4−硫酸とコンドロイチン6−硫酸の比率((コンドロイチン4−硫酸)/(コンドロイチン6−硫酸)比)は0.25〜1.0の範囲、好ましくは0.35〜1.0の範囲のものが好適である。また、コンドロイチン硫酸には、前述の各タイプをはじめとする多種のタイプが含まれるなか、鉄コロイド製剤にはコンドロイチン4−硫酸が18〜45%、好ましくは21%〜40%含有されるとの特性が前記比率とともに鉄コロイド形成には重要となる。さらに、コンドロイチン硫酸の分子量は50,000以下のもの、より好ましくは5,000〜30,000のものに調製されたものを使用することにより安定な鉄コロイドの製造が可能となる。好ましい諸特性を有するコンドロイチン硫酸を使用して鉄コロイドを調製すると、そのコロイド粒子は0.22μm以下となり経時的にコロイド粒子が凝集することなく長期間の保存に耐えられる製剤となる。また、静脈注射用製剤を製造する場合は、その製造工程において無菌ろ過の工程を組込むことが容易となり、無菌製剤の製造に適した製剤となり得る。
以上のコンドロイチン硫酸の諸特性を適切な範囲に特定することにより、牛や鯨を由来としないコンドロイチン硫酸であっても鉄コロイド製剤を調製することができる。
鉄コロイドにさらに亜鉛をはじめとする微量元素を加えることにより、前掲の高カロリー輸液用の微量元素製剤を調製することができる。その加える元素や至適な添加量については、前掲特許文献1〜3に記載のものを援用することができる。
なお、魚類のなかで前述のコンドロイチン硫酸の好ましい諸特性に精製しやすい原料としては、サメが好ましく、より好ましくは若いサメで、部位は胸部軟骨あるいはヒレを原料とするのがよい。特にサメのヒレを原料として調製されたコンドロイチン硫酸が好適に使用し得る。
本発明の鉄コロイドの製造方法としては、特定の範囲のコンドロイチン硫酸の濃度下において、鉄の供給源をコロイド化するのがよい。前記コンドロイチンの濃度としては、容器に充填する最終濃度より高く設定した溶液中で鉄の供給源、例えば塩化第二鉄を粉末状態で添加することがよい。
その濃度には適切な範囲が存在し、濃度範囲とともに特定のpH域にて調製されたコロイド粒子を含む鉄コロイド製剤は、コロイド粒子が小さく且つ長期保存が可能となる。
本発明の鉄コロイド製剤に使用し得る鉄化合物としては、塩化鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸鉄、グルコン酸鉄、硫酸鉄等を挙げることができるが、塩化第一鉄や塩化第二鉄等の塩化鉄を使用するのが好ましく、生体での利用性等とコロイドの安定性の見地からより好ましくは塩化第二鉄を鉄化合物として使用するのがよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1<サメ由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチン4−硫酸28.3%、分子量2.5万、A/C比=0.51)を用いたコンドロイチン硫酸鉄の調製>
下記第1表に示した原料を秤量し、コンドロイチン硫酸ナトリウムが3.91w/v%濃度溶液となるように溶解した。この溶液を30〜35℃に保ち、充分に撹拌しながら、これに23.65w/v%塩化第二鉄と5.945w/v%水酸化ナトリウムをpHが7.5〜8.5の間を維持するようにコントロールして注入し、コンドロイチン硫酸鉄液を調製した。最終pHを7.6に調整し、暗紫色のコンドロイチン硫酸鉄コロイド液を得た。この液を4倍希釈したものは0.22μmのフィルターで容易にろ過出来た。
Figure 0005686830
実施例2<サメ由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチン4−硫酸23.0%、分子量1万、A/C比=0.41)を用いたコンドロイチン硫酸鉄の調製>
コンドロイチン硫酸ナトリウムとして(コンドロイチン4−硫酸23.0%、分子量1万、A/C比=0.41)のコンドロイチン硫酸ナトリウムを使用した以外は実施例1におけると同じ調製法で、暗紫色のコンドロイチン硫酸鉄コロイド液を得た。この液を4倍希釈したものは0.22μmのフィルターで容易にろ過出来た。
実施例3<サメ由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチン4−硫酸21%、分子量2万、A/C比=0.35)を用いたコンドロイチン硫酸鉄の調製>
コンドロイチン硫酸ナトリウムとして(コンドロイチン4−硫酸21.0%、分子量2万、A/C比=0.35)のコンドロイチン硫酸ナトリウムを使用した以外は実施例1におけると同じ調製法で、暗紫色のコンドロイチン硫酸鉄コロイド液を得た。この液を4倍希釈したものは0.22μmのフィルターでろ過出来た。
比較例1<サメ由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチン4−硫酸15.5%、分子量4万、A/C比=0.22)を用いたコンドロイチン硫酸鉄の調製>
コンドロイチン硫酸ナトリウムとして(コンドロイチン4−硫酸15.5%、分子量4万、A/C比=0.22)のコンドロイチン硫酸ナトリウムを使用した以外は実施例1におけると同じ調製法で、暗紫色のコンドロイチン硫酸鉄コロイド液を得た。この液を4倍希釈したものは0.22μmのフィルターでほとんどろ過出来なかった。
参考例1<牛由来のコンドロイチン硫酸ナトリウムを用いたコンドロイチン硫酸鉄の調製>
コンドロイチン硫酸ナトリウムとして牛由来のそれを用いた以外は実施例1におけると同じ調製法で、暗紫色のコンドロイチン硫酸鉄コロイド液を得た。この液を4倍希釈したものは0.22μmのフィルターを容易にろ過出来た。
<ろ過試験成績>
下記第2表に、このようにして得られた5種類のコンドロイチン硫化鉄コロイド液のろ過試験成績をまとめて示す。
Figure 0005686830
実施例4<ガラスアンプル入り微量5元素製剤>
下記第3表に示す組成のガラスアンプル入り製剤を調製した。同表に示す成分のうち、塩化第二鉄とコンドロイチン硫酸ナトリウムは実施例1で得られたコンドロイチン硫酸鉄コロイド液を用い、この液に注射用蒸留水を加えて攪拌しながら、塩化マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅およびヨウ化カリウムを加えて溶かした後、水酸化ナトリウムでpHを4.5〜6.0に調整した。このように調製した微量元素製剤をBaO含量が0.1%以下の実質的にBaOが含まれていないガラスアンプル20本に各2mL宛充填し、高圧蒸気滅菌装置にて滅菌してアンプル入りの製剤とした。
Figure 0005686830
実施例5:ガラスアンプル入り微量4元素製剤
下記第4表に示す組成のガラスアンプル入り製剤を調製した。同表に示す成分のうち、塩化第二鉄とコンドロイチン硫酸ナトリウムは実施例1で得られたコンドロイチン硫酸鉄コロイド液を用い、この液に注射用蒸留水を加えて攪拌しながら、硫酸亜鉛、硫酸銅およびヨウ化カリウムを加えて溶かした後、水酸化ナトリウムでpHを4.5〜6.0に調整した。このように調製した微量元素製剤をBaO含量が0.1%以下の実質的にBaOが含まれていないガラスアンプル20本に各2mL宛充填し、高圧蒸気滅菌装置にて滅菌してアンプル入りの製剤とした。
Figure 0005686830

Claims (5)

  1. 硫酸化多糖を含む鉄コロイド製剤であって、コンドロイチン4−硫酸とコンドロイチン6−硫酸の比率((コンドロイチン4−硫酸)/(コンドロイチン6−硫酸)比)が0.
    25〜1.0であり、コンドロイチン4−硫酸の含有量が21〜40%(但し、21.0%を除く)であり、且つ分子量50,000以下のコンドロイチン硫酸を含有し、コンドロイチン硫酸塩の濃度として1〜5w/v%に調整された水溶液中にて、鉄化合物がコロイド化されたうえで、所望の鉄イオン含有量に希釈されたことを特徴とする鉄コロイド製剤。
  2. 硫酸化多糖を含む鉄コロイド製剤であって、コンドロイチン4−硫酸とコンドロイチン6−硫酸の比率((コンドロイチン4−硫酸)/(コンドロイチン6−硫酸)比)が0.
    25〜1.0であり、コンドロイチン4−硫酸の含有量が21〜40%(但し、21.0%を除く)であり、且つ分子量50,000以下のコンドロイチン硫酸を含有し、コンドロイチン硫酸塩の濃度として1〜5w/v%、且つpHが7.5〜8.5に調整された水溶液中にて、鉄化合物がコロイド化され、得られたコロイド溶液が100〜121℃の温度で加熱されたうえで、所望の鉄イオン含有量に希釈され、バリウムイオンが実質的に溶出しない容器に充填され、且つ加熱滅菌処理されたことを特徴とする鉄コロイド製剤。
  3. コンドロイチン4−硫酸とコンドロイチン6−硫酸の比率((コンドロイチン4−硫酸)/(コンドロイチン6−硫酸)比)が0.35〜1.0であることを特徴とする請求項1または2記載の鉄コロイド製剤。
  4. 0.22μm以上の鉄コロイドが含まれないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄コロイド製剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄コロイド製剤に、更に、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、クロムおよびホウ素から選ばれた少なくとも1種の微量元素を含有することを特徴とする微量元素製剤。
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