JP5886845B2 - 再利用可能な酸化オスミウム(viii)の回収 - Google Patents

再利用可能な酸化オスミウム(viii)の回収 Download PDF

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Description

本発明は、オスミウムを含む液(廃液など)からオゾンなど酸化ガスを製造する方法および該ガスを用いて酸化オスミウム(VIII)溶液、酸化オスミウム(VIII)含有固形物または酸化オスミウム(VIII)結晶を製造する方法に関する。
オスミウムは金や銀などと同様に、地球上に約4ppbしか含まれない希少な元素である(非特許文献1)。また、かなり偏在化している(非特許文献2)。その酸化物である酸化オスミウム(VIII)は、有機合成における酸化剤として、また電子顕微鏡試料作製時の固定・染色等に使用されているが、かなり高価である(非特許文献3)。電子顕微鏡試料作製で排出されるオスミウムを含む廃液は、含まれる酸化オスミウム(IV)が沈降しにくいこと、生体組織などの有機物が含まれていること、廃液処理の際に許容濃度が0.002mg/mと極めて低く毒性の高い酸化オスミウム(VIII)ガスが揮発する可能性があることで、処理困難としている廃棄物処理業者が多い。そのため、現在、多くの研究機関で保管されており、浜松医科大学でも約100Lの廃液が保存されている。
実験室レベルでの処理方法としてはこれまでに、例えば非特許文献4では、タンニン酸で固形化して保管する方法が、非特許文献5では、還元して金属オスミウム(0)として沈降させる方法が検討されている。
しかしながら、いずれもオスミウムの固形化のために煩雑な操作を必要とし、また、処理してもオスミウムは再利用されず固形廃棄物として保管するしかない。
オスミウムの再利用としては、非特許文献6に、廃液から四塩化炭素で抽出した酸化オスミウム(IV)をガラス壁に強く吸着させ剥ぎ取り、使用時に同酸化オスミウム(IV)を水に溶解し、過酸化水素を加えて、酸化オスミウム(IV)を酸化して酸化オスミウム(VIII)として再利用する方法が記載されている。しかしながら、同方法は、有害物質を使用する必要があり、また固形化および固形化後の使用に際し、煩雑な操作を必要とする。
非特許文献7には、オスミウム廃液を還元し、オスミウム(0)を遠心分離した後、沈殿物を過酸化水素溶液で溶解しペルオキソ二硫酸カリウムを加えて加熱酸化蒸留して、1%酸化オスミウム(VIII)溶液を作成する方法が記載されている。しかしながら、廃液450mlに対して酸化剤としてのペルオキソ二硫酸カリウムを54g加えるなど、薬品を多種多量使用し、還元から酸化蒸留と煩雑な操作を必要としている。
このように、酸化オスミウム(VIII)は、多分野にわたって極めて重要で希少な物質であるにも拘らず、使用後は固形化して保管するのが一般的であり、現在まで有効な再利用方法が確立されていない。
一方、オゾンはその強い酸化力で排水処理の滅菌や消毒、排気の脱臭などに広く使用されている。特許文献1には、ルテニウム、酸化ルテニウム、あるいはオスミウム、酸化オスミウムを含む固体の表面にオゾンなどの酸素原子供与性ガスを供給することにより、蒸気圧の高いルテニウム化合物やオスミウム化合物を生成させてエッチングする固体表面の処理方法が記載されている。しかしながら、同文献には酸化オスミウム(VIII)を回収することについては、全く記載されていない。
また、本願の優先日後に公開された特許文献2は磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の製造方法であり、反応終了後磁石を近づけることにより、回収、再利用可能な固定化酸化オスミウム触媒として有用であると記載され、酸化オスミウム(VIII)そのものを回収することについては記載されていない。
特開2001−284317 特開2011−201862
自然科学研究機構 国立天文台編、理科年表平成22年、丸善、2009年、p.632 大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀昭編、科学大辞典、東京化学同人、1989年、p.362 医学・生物学電子顕微鏡技術研究会編、よくわかる電子顕微鏡技術、朝倉書店、1992、p.4〜5 村上宅郎、実験室廃液の簡便な処理法、ミクロスコピア、1997年、14巻、3号、p.60〜62 江見清次郎、渡辺寛人、オスミウム廃液の処理とオスミウムの分析、大学等廃棄物処理施設協議会会報、1991年、8、(1)、p.86〜91 阿部一彦、関口守衛、長尾博明、岡野光夫、四酸化オスミウムの再生法、細胞、1982年、14、(4)、p.39〜43 江見清治郎、大沼英明、田中信寿、オスミウム含有廃液からのオスミウム金属のリサイクルに関する研究、一般発表(研究・業績発表)講演要旨集、資源・素材学会編、1997年、p.107
上記のとおり、酸化オスミウム(VIII)を回収し、再生するための簡便かつ安全な方法が未だ開発されていないことから、本発明の課題は、まず酸化オスミウム(VIII)を合理的に製造する方法を提供し、もって、その回収および再利用が困難な酸化オスミウム(VIII)を、簡便かつ安全に回収し、再利用する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、オスミウムを含む液をオゾンで酸化処理し、生成した酸化オスミウム(VIII)ガスを回収することにより、再び電子顕微鏡試料作製などで使用できる高価な酸化オスミウム(VIII)溶液を、試薬で販売しているものと同等の性能に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
(1)酸化オスミウム(VIII)ガスを製造する方法であって、オスミウムを含む液を、酸化ガスを用いて酸化処理する工程を含む、前記方法。
(2)酸化ガスがオゾンである、(1)に記載の方法。
(3)酸化処理の温度を、まず10℃〜30℃にし、次に70℃〜80℃にする、(1)または(2)に記載の方法。
(4)オスミウムを含む液を酸化処理する前に濃縮する工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の方法によって製造されたガスを回収液に取り込む工程をさらに含む、酸化オスミウム(VIII)溶液を製造する方法。
(6)回収液がアルカリ性であり、該回収液の液温が室温以下である、(5)に記載の方法。
(7)(5)または(6)に記載の方法で製造されたpHが7〜10である酸化オスミウム(VIII)溶液。
(8)電子顕微鏡試料作製、触媒、有機合成または指紋検出に用いられる、(7)に記載の酸化オスミウム(VIII)溶液。
(9)(1)〜(4)のいずれかに記載の方法によって製造されたガスを回収用固形物に取り込む工程をさらに含む、酸化オスミウム(VIII)含有固形物を製造する方法。
(10)(1)〜(4)のいずれかに記載の方法によって製造されたガスを結晶化させる工程をさらに含む、酸化オスミウム(VIII)結晶を製造する方法。
(11)酸化オスミウム(VIII)溶液、酸化オスミウム(VIII)含有固形物または酸化オスミウム(VIII)結晶を製造する装置であって、オスミウムを含む液を酸化処理する酸化処理部、酸化処理部に酸化ガスを供給する酸化ガス供給部、酸化処理部内で生成した酸化オスミウム(VIII)ガスを回収する回収部を含む、前記装置。
(12)電子顕微鏡試料作製で生じる液をリサイクルする方法であって、オスミウムを含む液を酸化ガスを用いて酸化処理する工程、前記工程により生成する酸化オスミウム(VIII)ガスを回収液に取り込んで酸化オスミウム(VIII)溶液を製造する工程を含む、前記方法。
(13)さらに水および/または緩衝液を加える工程を含む、(12)に記載の方法。
本発明の方法は、簡便な装置により、オスミウムを含む液、例えば電子顕微鏡試料作製などで排出されるオスミウムを含む液から、有用なVIII価の酸化オスミウムを製造または再生することができる。本発明により、製造した酸化オスミウム(VIII)溶液は、再び電子顕微鏡試料作製、触媒、有機合成、指紋検出などに、試薬で販売しているものと同等の性能で用いることができる。また、オゾンを酸化剤として用いた場合には、オゾンが自然分解するため、処理後には薬剤酸化などのような有害な廃棄物を排出せず、さらなる後処理等が不要である。また、セッティング時と終了時以外は反応の監視だけで、煩雑な操作を必要としない。
本発明の方法によれば、大学等の研究機関でのオスミウム廃液の処理、電子顕微鏡試料作製への酸化オスミウム(VIII)の再利用ができるばかりでなく、本発明の方法により製造された酸化オスミウム(VIII)溶液を、触媒、有機合成、指紋検出などに用いる試薬として販売すること、ならびに鉱石からのオスミウムの抽出・精製に応用することが可能であり、希少金属のリサイクルならびに回収技術に大きく貢献するものである。
図1は、オスミウムの状態の推測を示す図である。 図2は、本発明の好適な態様における酸化オスミウム(VIII)製造装置(再生システム)の概略図である。 図3は、本発明の一態様における酸化オスミウム(VIII)製造装置(再生システム)の概略図である。 図4は、オゾン発生器の性能を示す図である。 図5は、オスミウム廃液のオゾン処理の効果を示す図である。 図6は、廃液の温度の影響を示す図である。 図7は、廃液透明化後の温度の影響を示す図である。 図8は、廃液のpHと回収液のオスミウム濃度を示す図である。 図9は、廃液のpHと透明化までの時間を示す図である。 図10は、回収液の水酸化ナトリウム濃度の影響を示す図である。 図11は、回収液の温度の影響を示す図である。 図12は、濃縮方法の影響を示す図である。 図13は、オゾン吹き込み量の影響を示す図である。 図14は、廃液のオスミウム濃度の影響を示す図である。 図15は、実施例11の工程のフロー図である。 図16は、本発明で製造した酸化オスミウム(VIII)組成物を使用した場合および市販の酸化オスミウム(VIII)液を使用した場合の電子顕微鏡画像結果を示す図である。
本発明は、一側面において、酸化オスミウム(VIII)ガスを製造する方法であって、オスミウムを含む液を、酸化剤、とくにオゾンなどの酸化ガスを用いて酸化処理する工程を含む、前記方法に関する。
また別の一側面において、前記酸化オスミウム(VIII)ガスを回収液に取り込んで酸化オスミウム(VIII)溶液を製造する方法、または同ガスを回収用固形物に取り込んで酸化オスミウム(VIII)含有固形物を製造する方法、あるいは同ガスを結晶化させて酸化オスミウム(VIII)結晶を製造する方法に関する。
本発明において、オスミウムを含む液は、オスミウムを含む液であれば特に限定されず、オスミウム使用後に生じる任意の廃液などでもよい。オスミウムを含む液としては、例えば高分子材料や生体試料の電子顕微鏡試料作製で生じる廃液、オスミウムを触媒として用いる有機合成で生じる廃液または溶液、オスミウムを含む鉱石の廃液または溶液などが挙げられる。本発明において、オスミウムを含む液はさらに水などで希釈したものも含む。
本発明において、酸化剤は、オスミウムを酸化できる任意のものであってよく、消防法に規定される第1類物質(酸化性固体)、例えば過マンガン酸塩類、クロム酸塩類、ニクロム酸塩類、塩素酸塩、過塩素酸塩、亜塩素酸塩類、硝酸塩類、消防法に規定される第6類物質(酸化性液体)、例えば硝酸、過酸化水素、その他の酸化性液体の次亜塩素酸塩などの任意の酸化試薬が挙げられる。酸化試薬を添加する場合には、別途空気または酸素を供給することが望ましい。
また酸化ガスとして、オゾン、塩素、窒素酸化物、ヒドロキシガスなどが上げられるが、この場合にはオスミウムを含む液に酸化ガスを供給するだけでよい。
酸化剤として、過マンガン酸カリウムやクロム酸カリウムなどを用いることもできるが、これらを添加して酸化する場合は、廃液に含まれる有機物の酸化処理も含めて廃液100mlに対し薬品が約1g必要である。例えば、クロム酸カリウムおよびニクロム酸カリウムを用いた場合には、有毒なクロムを含む廃液が多量に生じ、オスミウムを取り出した後に、含水率90%として約10v/v%の廃棄物の処理が必要になる。
また、ペルオキソ二硫酸カリウムを使用した場合は、廃液100mlに対して薬品が約10g必要である。硝酸や塩素を使用した場合は窒素酸化物や塩素が生成する可能性がある。
酸化剤として、オゾンを用いた場合には、オゾンを吹き込むだけですみ、またオゾンは常温では1時間程度で分解するため、後処理が不要である。したがって、操作の簡便性、環境負荷の低減などの観点から特にオゾンが好ましい。
また、オゾンは、有機物を先に分解することができるため、廃液中に含まれ得る組織、アルデヒド、エタノールなど有機物が数%含まれていてもオゾンの吹き込み時間を長くすればよく、酸化試薬を事前調整しなくてすみ、液量も増加せず、さらに酸化処理の状況でオゾン量を処理の途中で調整できるという利点を有する。
本発明において、酸素からオゾンを発生するシステム、空気からオゾンを発生するシステム、塩素その他の酸化ガスを使用するシステムなどを介して適用することができる。これらシステムのうち、空気からオゾンを発生するシステムや塩素などの酸化ガスを使用するシステムは、製造した酸化オスミウム(VIII)溶液中に硝酸や塩素が含まれる可能性があり、これを電子顕微鏡試料作製に使用した場合、影響を与える可能性がある。製造した酸化オスミウム(VIII)溶液を電子顕微鏡試料作製に用いる場合には、酸素からオゾンを発生するシステムを用いることが好ましい。
オスミウムを含む液をオゾンで酸化処理し、水で回収した場合、回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度は0.3w/v%程度である。
通常、電子顕微鏡試料を作製する場合には、典型的には使用直前に酸化オスミウム(VIII)溶液にpH緩衝液を50%入れ、pH7.4に調節された1w/v%酸化オスミウム(VIII)溶液を調製して使用する。したがって、この場合には2w/v%酸化オスミウム(VIII)溶液を製造するのが望ましい。
一般にオゾン発生装置は、原料ガスである酸素や空気を大量に流して原料ガス中にオゾンを発生させるものであり、本発明においても、典型的には、オゾン吹き込みなどのオゾンの供給は、オゾンを含むガスを供給することにより行うが、これに限定されない。
オゾンを含むガスの流量は、反応器、回収容器などの構成要素の容量、形状、容器に入れる液量などにより適宜設定することができる。オゾン吹き込み量を増加すれば、回収できる酸化オスミウム(VIII)濃度は増加する。オゾン量は好ましくは、0.1g/時間以上、より好ましくは1g/時間以上、さらに好ましくは2g/時間以上である。オゾンの発生量とオゾンを含むガスの流量は、オゾン発生装置によって異なる。しかしながら、ガスの流量をかなり多くした場合には液が著しく泡立って飛沫として流され、例えば回収液で回収する場合には、回収液を汚染するため、液の飛沫の抑制とオゾン量を考慮して、装置によって適宜設定するのが好ましい。
好ましいオゾンを含むガスの流量の例は、これに限定するものではないが、0.2〜3.0L/分(オゾン量1g/時間〜6g/時間)、より好ましくは0.5〜2.0L/分(オゾン量2g/時間〜5.5g/時間)、さらに好ましくは0.5〜1.0L/分(オゾン量2g/時間〜5g/時間)である。
本発明の一態様において、酸化オスミウム(VIII)溶液の製造は、オスミウムを含む液の酸化状態を目視で観察し、温度を適宜調節することにより、収率を向上させることができる。オスミウムを含む廃液は、図1に示すとおり、酸化オスミウム(IV)として浮遊し全体として黒色を呈している。酸化が進むと酸化オスミウム(VIII)となり、溶液が透明化する。ここで透明とは溶液の黒色が少なく、淡黄色となり、容器から背景が見える状態をいう。
反応温度は、特に限定されないが、沸騰させる必要はない。オゾンを用いる場合、オゾンが60℃以上の高温では分解されやすいため、典型的な反応温度としては、10℃〜60℃が挙げられる。液が黒色から透明になるまでの反応温度は、低いほど酸化オスミウム(VIII)の収率が高い。したがって、反応温度は、好ましくは10℃〜60℃、より好ましくは10℃〜40℃、さらに好ましくは10℃〜30℃であり、常温で収率よく酸化処理することができることは、安全性、簡便性、エネルギーなどの観点からも非常に有利である。
一方、液が透明化した後もオスミウムが30〜80%程度残留しており、透明化後に生成した酸化オスミウム(VIII)を揮発させるためには、液の温度が高いほど収率が高い。したがって、透明化後は、常温でもよいが、50℃〜100℃、好ましくは60℃〜100℃、さらに好ましくは安全性などの観点から70℃〜80℃にすることが好ましい。
したがって、本発明の好ましい態様において、オスミウムを含む液の反応温度は、まず10℃〜30℃にし、オスミウムを含む液の色が、黒色から透明になった後は70℃〜80℃にする。
オゾンを酸化剤として用いた場合に、透明になるまでの温度が高いと収率が低くなる理由は、オゾンが60℃以上の高温では分解されやすく、40℃以下の低温の方が安定しているためであると推測される。一方、透明化後において、温度が高いほど収率が上がる理由は、透明になった後の液中のオスミウムは、酸化オスミウム(VIII)の状態にあり、温度が高いほど、揮発しやすいためと推測される。
また、加熱すると酸化オスミウム(IV)および酸化オスミウム(VIII)は、分解して沈殿しやすいオスミウム(0)を生成する。そのため、加熱中も酸化反応を継続させ、酸化状態を維持することが好ましい。酸化剤としてオゾンを用いた場合、透明化後の温度を60℃以上にするとオゾンは分解されやすくなるが、継続して吹き込むことにより、オスミウム(0)の生成を抑制することができる。
透明化を行う時間は、液量、オゾン流量等、反応条件に応じて適宜設定することができるが、液が透明化した後、さらに長くオゾン吹き込みを行うと、吹き込みにともなって回収されない酸化オスミウム(VIII)が多くなり、回収できる酸化オスミウム(VIII)濃度が低下する。透明化後はすみやかに70℃〜80℃に加温するとともに、オゾンを含む酸素の吹き込み量はオゾンが生成可能な最低量にするのが好ましい。
そこで、透明化に要する時間は、4〜10時間が好ましく、より好ましくは4〜7時間である。これに対し、透明化後の処理時間は、好ましくは1〜3時間、より好ましくは1〜2時間である。
オゾンによる酸化処理工程前に、オスミウムを含む液のpHを酸性に調整すると、回収率が低下する傾向があるが、透明化までの時間は早くなる。したがって、オゾン処理時間の短縮の観点からは、好ましくはpH1〜3、より好ましくは2以下であるが、収率と時間の短縮のバランスを考慮し、適宜設定することができる。
電子顕微鏡試料作製から排出されるオスミウムを含む廃液のオスミウム濃度は、一般的に0.2w/v%以下であるため、再生して2w/v%酸化オスミウム(VIII)溶液を作成するシステムでの濃縮率を3倍程度と考えると、オゾンによる酸化処理工程前に液をオスミウム濃度約0.5w/v%に濃縮することが好ましい。
濃縮方法としては、加熱しないで水分を蒸発させ濃縮する方が望ましい。
加熱濃縮したものは、オゾンによる酸化処理しても液が透明にならない。廃液の状態では、酸化オスミウム(IV)が支配的であり、黒色を呈している。この状態の液を加熱すると、酸化オスミウム(IV)が分解して沈殿しやすいオスミウム(0)が生成し、酸化オスミウム(VIII)の生成が困難になるためと推測される。
廃液中の主成分である酸化オスミウム(IV)は揮発性がないので、液を底の浅く広い皿のような容器に入れ、常温において、水分を蒸発させることができる。
また、加熱しなければ、減圧濃縮などでも対応可能である。
本発明において、酸化オスミウム(VIII)ガスの回収は、回収液に酸化オスミウム(VIII)ガスを取り込む方法、回収用固形物に酸化オスミウム(VIII)ガスを取り込む方法、または酸化オスミウム(VIII)ガスを結晶化させる方法により行うことができる。本発明における回収液は典型的には水を含む。とくに電子顕微鏡試料作製などの用途には水が好ましい。回収液には、製造する酸化オスミウム(VIII)溶液の用途により、pH調製成分、塩素など他の酸化剤、希釈液、溶剤などの任意成分を適宜加えることができる。
本発明における回収用固形物としては、これに限定されるものではないが、例えばシリカゲル、アルミナ、活性炭などの吸収剤が挙げられる。
本発明における酸化オスミウム(VIII)ガスの結晶化としては、例えばドライアイスなどで空の回収容器を約0℃程度、好ましくは0℃以下に冷却して酸化オスミウム(VIII)結晶物を容器に析出させる方法などが挙げられる。
回収液のpHは、アルカリ性が高いほど収率が高くなるため、9〜14が好ましく、特に10〜13が好ましいが、製造する酸化オスミウム(VIII)溶液の用途に応じて、適宜設定することができる。
pH調製成分としては、アルカリ成分、例えばこれに限定するものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物や、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水などが挙げられる。特に沈殿生成させないことや酸化オスミウム(VIII)と反応しないという観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましい。
また、酸性成分としては、例えばこれに限定するものではないが、二酸化炭素、硫酸、塩酸などの酸などが挙げられる。
回収液に電子顕微鏡試料作製時に加えるりん酸緩衝液pH7.4をそのまま使用する方法も考えられるが、用途が電子顕微鏡試料作製用である場合には、長期的には酸化オスミウム(VIII)とりん酸が反応するので、長期保存をする場合には好ましくない。
製造した酸化オスミウム(VIII)溶液を電子顕微鏡試料作製に利用することを目的とする場合には、アルカリ性は高くない方が望ましい。したがって、オゾンによる酸化処理工程終了後は反応中に発生する酸化オスミウム(VIII)ガスや二酸化炭素ガスにより回収液のpHが下がっても、pHは好ましくは4〜11、より好ましくは5〜10、さらに好ましくは7〜10である。すなわち、例えば水酸化ナトリウムの場合は、工程前に回収液が0.01N〜1N程度の濃度になるように加えることが好ましい。回収液のpHは、りん酸緩衝液pH7.4を50%添加しても、変動しないことが好ましく、工程終了後の酸化オスミウム(VIII)溶液のpHは7〜10となっていることが好ましい。このpH範囲であれば、りん酸緩衝液pH7.4を50%添加しても、pH7.4から変動せず、所望のpHを容易に得ることができる。
ただし、製造した酸化オスミウム(VIII)溶液のpHが7〜10から外れ、アルカリ性の場合は硫酸、塩酸などの無機酸の希薄水溶液で、酸性の場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリの希薄水溶液で、pHを7〜10にする。
回収液の液温は、当業者が適宜設定でき、典型的な温度として0℃〜40℃が挙げられるが、温度が低いほど、酸化オスミウム(VIII)の収率が高くなることから、好ましくは0℃〜30℃、より好ましくは0℃〜20℃、さらに好ましくは0℃〜10℃である。本発明の好ましい態様として、回収液は室温以下の10℃以下に冷却する。
本発明の酸化オスミウム(VIII)溶液の製造方法は、酸化オスミウム(VIII)溶液を製造する工程後に、用途に応じて、pH調整、濃縮や希釈する工程、任意成分を加える工程、さらに精製する工程などを含んでもよい。
例えば、用途が電子顕微鏡試料作製用の場合には、酸化オスミウム(VIII)溶液を製造後、水およびりん酸緩衝液を加えて、所望の濃度、pHを有する酸化オスミウム(VIII)組成物を製造することができる。
本発明の製造方法は、取り扱う酸化オスミウム(VIII)が揮発性で毒性があることから、排オゾン対策とともに、酸化処理自体をドラフトチャンバー内で行うことが好ましい。酸化処理終了時に各ガス洗浄びんを開放するときには注意が必要である。
本発明の前記製造方法で製造された、酸化オスミウム(VIII)溶液については、前述したとおり、酸化オスミウム(VIII)の回収率を向上させるために、回収液にpH調整剤などを添加してよいため、市販の酸化オスミウム(VIII)試薬に含まれない成分を含み得る。酸化剤としてオゾンを用い、pH調製剤として水酸化ナトリウムを回収液に添加した場合には、液中の有機物が酸化処理されたことにより発生した二酸化炭素と水酸化ナトリウムが反応し、炭酸ナトリウムが生成する。生成する炭酸ナトリウムの量は、添加した水酸化ナトリウム量に依存するため、水酸化ナトリウム約0.1N用いた場合には、炭酸ナトリウム約0.1N(約0.5w/v%)が含まれると考えられる。
電子顕微鏡試料作製に使用する場合は、このような炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩は、電子顕微鏡試料作製に何ら影響を及ぼすものではない。アルカリ金属炭酸塩としては、pH調製成分として添加したアルカリ金属の水酸化物に対応する、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウムなど、アルカリ土類金属の水酸化物に対応する、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
本発明のさらなる側面は、オスミウムを含む液を酸化処理する酸化処理部、酸化処理部に酸化ガスを供給する酸化ガス供給部、酸化処理部内で生成した酸化オスミウム(VIII)ガスを回収する回収部を含む、酸化オスミウム(VIII)溶液、酸化オスミウム(VIII)含有固形物または酸化オスミウム(VIII)結晶の製造装置に関し、また、オスミウムを含む液がオスミウムを含む廃液である、酸化オスミウム(VIII)溶液の再生システムに関する。
酸化処理部は、オスミウムを含む液を入れる反応器を有する。反応器は、特に限定されず、種々の材質の容器であってよく、一般的に用いられるガラス製や酸化オスミウム(VIII)で劣化しないプラスチック製や金属製のガス洗浄びんやトラップなどのガスと溶液が接触するものであってよい。反応器の容量、処理する液の量は、製造装置の規模に合わせて適宜設定することができる。実験室レベルで用いる場合には、好ましくは100ml〜2L、より好ましくは100ml〜1L、さらに好ましくは200ml〜1Lであり、反応器の容量は、液に合わせて適宜設定できるが、液の飛沫防止の観点から反応器の容量は液量の2倍程度が好ましく、例えば液量が100ml〜500mlの場合には、反応器の容量は、200ml〜1Lが好ましい。
酸化ガス供給部は、ボンベなどで酸化ガスを直接供給するシステム、オゾンなどのように酸化ガスを発生するシステムを備えることができる。
回収部は、酸化オスミウム(VIII)ガスを回収する回収容器を有する。回収容器は、特に限定されず、種々の材質の容器であってよく、一般的に用いられるガラス製ガス洗浄びんや酸化オスミウム(VIII)で劣化しないプラスチック製や金属製のガス洗浄びんやトラップなどのガスと溶液や回収用固形物が接触するものであってよい。
図2に、本願発明の好適な態様に係る酸化オスミウム(VIII)溶液の製造装置(再生システム)の概略図を示す。
本発明の好適な態様において、製造装置は、酸素ボンベおよびオゾン発生装置を有する酸化ガス供給部、逆流防止用容器、反応器を有する酸化処理部、洗浄部A、回収部、洗浄部Bを含む。
逆流防止用容器は、特に限定されず、市販の逆流防止用びんであってよい。
洗浄部Aに用いられる容器は、特に限定されず、種々の材質の容器であってよく、一般的に用いられるガラス製ガス洗浄びんや酸化オスミウム(VIII)で劣化しないプラスチック製や金属製のガス洗浄びんやトラップなどのガスと溶液が接触するものであってよい。
酸化処理部と洗浄部Aは、加熱することができる。加熱システムとしては、酸化処理部と洗浄部Aを加熱することができれば特に限定されない。例えば、恒温槽、ウォーターバス、温度調整付ヒーターなどが挙げられる。洗浄部Aには、液から発生し得る酢酸などの酸性ガスや、液に含まれる生体試料から発生する窒素含有成分(窒素酸化物:硝酸)を除去する機能があると考えられる薬剤を入れる。薬剤は水でも、同等の効果がある吸収剤でもよい。
回収部は、温度調節システムを供し、温度調節システムとしては、特に限定されない。例えば、回収容器を氷やドライアイスで冷却したり、また低温恒温槽、冷却水循環装置やヒートポンプなどの冷却装置に回収容器を設置することができる。
回収部の後の洗浄部Bに用いられる容器は、特に限定されず、種々の材質の容器であってよく、一般的に用いられるガラス製ガス洗浄びんや酸化オスミウム(VIII)で劣化しないプラスチック製や金属製のガス洗浄びんやトラップなどのガスと溶液が接触するものであってよい。洗浄部Bには、回収部で吸収しきれない酸化オスミウム(VIII)ガスやオゾンガスを吸収する機能を有する薬剤を入れる。薬剤は水など液状の吸収剤でもよく、活性炭など固形状の吸収剤であってもよい。
それぞれの部は、独立した機器であってもよいし、一体化した装置であってもよい。したがって本発明の製造装置または再生システムは、部の組み合わせならびに一体化した装置を意味する。
本発明の製造装置および再生システムについて好適な態様に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
実施例1〜11において、オスミウムの量は共通して、非特許文献5に記載の方法で測定した。すなわち、試料を硫酸酸性のもと二クロム酸カリウムで酸化し蒸留して、硫酸酸性チオ尿素で発色させ480nmで吸光度を測定した。この硫酸酸性チオ尿素はオスミウムの中では酸化オスミウム(VIII)としか発色しないため、酸化オスミウム(VIII)のみを測定する場合は、蒸留しないで直接硫酸酸性チオ尿素で発色させた。
実施例1〜10で用いた酸化オスミウム(VIII)製造装置の概略図を図3に示す。実施例1〜10において、特記しない限り、以下の実施条件は共通している。
廃液は電子顕微鏡試料作製で排出されたオスミウム廃液をそのまま使用し、300mlの廃液を反応器に入れ、回収液として回収容器に水を70ml入れた。洗浄部Aおよび洗浄部Bには水を150ml入れた。
酸化ガス供給部は、酸素ボンベと(株)ハマネツ製高機能オゾン発生装置を使用した。オゾン発生装置は、装置自体の熱を原料ガスで冷却するため、低い流量ではオゾンは発生困難となる。実施例では、酸化オスミウム(VIII)製造装置には酸素流量0.5L/分の低い流量でもオゾン量2g/時間を発生する高機能のオゾン発生装置を用いた。オゾン発生装置の性能(図4)、製造装置の規模およびオゾン発生量と廃液の飛沫の抑制を考慮し、オゾン量5g/時間(酸素流量1L/分)とした。
実施例1 酸化剤としてのオゾンの効果
上記実施条件において、オゾン発生装置でオゾンを含んだ酸素を作成して吹き込んだ場合と(以下、「オゾン処理」という)、オゾン発生装置を用いずに、酸素のみを吹き込んだ場合を比較した。吹き込み時間の経過に対する回収液中の酸化オスミウム(VIII)濃度を図5に示した。
オゾン処理したものは廃液への吹き込み時間の経過とともに酸化オスミウム(VIII)濃度が増加しており、オゾン処理すれば酸化オスミウム(VIII)が回収されることが確認された。廃液は黒色から透明となり、オスミウムが少なくなったことがわかった。
実施例2 廃液の温度
実施例1の条件において、廃液を20℃、40℃、60℃に保ち、それぞれオゾン処理し、酸化オスミウム(VIII)を再生した。図6に、廃液へのオゾン吹き込み時間の経過に対する回収液中の酸化オスミウム(VIII)濃度を示した。
廃液の温度が高いほど、回収液中の酸化オスミウム(VIII)濃度が低くなり、また、廃液の温度が20℃でも7時間を経過すると、回収液中の酸化オスミウム(VIII)が少なくなる傾向があることが認められた。
実施例3 廃液の透明化後の温度
実施例2の条件において、20℃、7時間以内でオゾン処理により透明化した後、廃液を40℃、60℃、80℃でそれぞれ30分間保った。回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度を図7に示した。
透明化後は廃液の温度が高いほど、回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度が高くなった。
実施例4 廃液のpH
実施例3の条件において、廃液を硫酸酸性にし、pHを変化させた。廃液は20℃、酸素流量1L/分(オゾン量5g/時間)、7時間以内でオゾン処理により透明化した後、酸素流量を0.5L/分(オゾン量2g/時間)に減少させ、70℃以上、1時間以上加温した。廃液のpHに対する回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度および廃液のpHに対する廃液の透明化までの時間を、それぞれ図8および図9に示した。
酸性にすると酸化オスミウム(VIII)濃度は低くなるが、透明化が早くなることが認められた。
実施例5 回収液のアルカリ濃度
実施例4の条件において、廃液はpH2にし、回収液は1N水酸化ナトリウム添加量でアルカリ濃度を変化させ、オゾン処理した。1N水酸化ナトリウム添加量に対する回収液中の酸化オスミウム濃度(VIII)を図10に示した。
図10から回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度は水酸化ナトリウム濃度の増加とともに増加していることが認められた。
実施例6 回収液のpH
実施例5の実施条件において、酸化オスミウム(VIII)を再生すると、回収液のpHは、工程終了後には7〜10となり、りん酸緩衝液pH7.4を50%添加しても、pHは7.4から変動しなかった。
実施例7 回収液の温度
回収液に0.1N水酸化ナトリウムを入れ回収液の温度を変化させ、廃液はpH2にし、20℃、酸素流量1L/分(オゾン量5g/時間)、7時間以内でオゾン処理により透明化した後、酸素流量を0.5L/分(オゾン量2g/時間)に減少させ、70℃以上、1時間以上加温した。回収液の温度を変化させた。回収液の温度に対する回収液中の酸化オスミウム濃度(VIII)を図11に示した。
回収液の液温が低いほど、回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度は高くなった。
実施例8 廃液の濃縮方法
廃液を加熱または常温で、それぞれ水分を蒸発させ3倍程度に濃縮した廃液をオゾン処理した。常温で廃液を濃縮させる方法として、底の浅く広い皿のような容器に入れ、ドラフトチャンバー内でその風力で常温において、水分を蒸発させた。10Lの廃液で5日間後には3L程度にした。上記実施条件において、常温で濃縮した廃液および加熱濃縮した廃液をそれぞれ用いた。回収液に0.1N水酸化ナトリウムを入れ、5℃以下に氷冷し、廃液はpH2にし、20℃、酸素流量1L/分(オゾン量5g/時間)、7時間以内でオゾン処理により透明化した後、酸素流量を0.5L/分(オゾン量2g/時間)に減少させ、70℃以上、1時間以上加温した。回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度を図12に示した。
加熱濃縮したものは、オゾン処理しても廃液は透明にならず、回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度が1w/v%に満たなかった。一方、常温で濃縮したものはオゾン処理しただけでも酸化オスミウム(VIII)濃度は1w/v%を超えていた。また、廃液を高分子凝集剤で沈殿させ、沈殿物を水で溶解して、オゾン処理しても加熱濃縮の場合と同様であった。
実施例9 オゾン吹き込み量
常温で濃縮した廃液を用い、回収液に0.1N水酸化ナトリウムを入れ、5℃以下に氷冷し、廃液はpH2にし、20℃、酸素流量を0.6〜1.5L/分(オゾン量3〜5.1g/時間)に変化させて、7時間以内でオゾン処理し透明化した後、酸素流量を0.5L/分(オゾン量2g/時間)に減少させ、70℃以上、1時間以上加温した。回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度を図13に示した。オゾン吹き込み量を増加すれば、回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度は増加することが確認された。
実施例10 廃液の濃度
反応容器に入れる廃液のオスミウム濃度を変化させた。回収液に0.1N水酸化ナトリウムを入れ、5℃以下に氷冷し、廃液はpH2にし、20℃、酸素流量1L/分(オゾン量5g/時間)、7時間以内でオゾン処理により透明化した後、酸素流量を毎分0.5L(オゾン量2g/時間)に減少させ、70℃以上、1時間以上加温した。廃液中のオスミウム濃度と、回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度を図14に示した。
廃液のオスミウム濃度が高くなると、回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度も高くなるが、廃液のオスミウム濃度が0.5w/v%を超えると工程終了後に廃液に残っているオスミウムが多くなった。
実施例11 本発明の好適な一態様による酸化オスミウム(VIII)溶液の再生
図2に示す再生システムを用いた。オスミウムを含む廃液を常温で3倍程度に蒸発濃縮し、500mlガス洗浄びんに300ml入れ、硫酸でpH2にした。回収液としては125mlガス洗浄びんに約0.1N水酸化ナトリウム溶液70mlを入れ、5℃以下に氷冷した。洗浄部Aおよび洗浄部Bには水を入れた。(株)ハマネツ製高機能オゾン発生装置を用いて、酸素流量1L/分(オゾン量5g/時間)で吹き込み、常温で7時間以内で廃液が透明化したら、酸素流量を0.5L/分(オゾン量2g/時間)に減少させ、70℃以上、1時間以上加温した。工程のフロー図を図15に示した。
オゾン処理前後から算出したオスミウムとしての回収率を表1に示す。
回収液の酸化オスミウム(VIII)濃度は2w/v%を超え、オスミウムとしての回収率は90%であった。また、廃液に残留していたオスミウム濃度は0.05w/v%(500mg/L)以下になった。この濃度であれば、廃液処理に通常使用されている凝集沈殿での処理も可能であり、同処理中の酸化オスミウム(VIII)の揮発も少ないと考えられる。
実施例12 回収液の再利用
実施例11で回収した2w/v%酸化オスミウム(VIII)液にりん酸緩衝液pH7.4を50%加え、正常マウスの肝組織試料の固定・染色に使用した。透過電子顕微鏡で撮影した結果を図16に示した。画像の評価基準は、膜の画像にコントラストがあり、切断部がないことおよび器官の画像に抜け落ちた箇所がないことである。
図16に示すとおり、細胞が染色されており、市販の試薬から調製した酸化オスミウム(VIII)溶液と本願発明の酸化オスミウム(VIII)溶液を用いた結果と同等であり、コントラストも観察するのに十分であった。
101 酸化ガス供給部
102 酸化処理部
103 回収部
104 酸素ボンベ
105 オゾン発生装置
106 逆流防止用容器
107 反応器
108 洗浄部A
109 回収容器
110 洗浄部B
111 加熱システム
112 温度調節システム
113 酸素ボンベ
114 オゾン発生装置
115 逆流防止用容器
116 反応器
117 洗浄部A
118 回収容器
119 洗浄部B

Claims (12)

  1. 酸化オスミウム(VIII)ガスを製造する方法であって、オスミウムを含む液を、オゾンを用いて酸化処理する工程を含み、当該工程が(i)酸化処理の温度を10℃〜60℃にすること、および(ii)オスミウムを含む液の色の透明化後に前記温度よりも高い温度にすることを含む、前記方法。
  2. (ii)における酸化処理の温度が100℃を超えない、請求項1に記載の方法。
  3. オスミウムを含む液を酸化処理する前に濃縮する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. オスミウムを含む液が、有機物を含む廃液である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の方法によって製造されたガスを回収液に取り込む工程をさらに含む、酸化オスミウム(VIII)溶液を製造する方法。
  6. 回収液がアルカリ性であり、該回収液の液温が室温以下である、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項またはに記載の方法で製造されたpHが7〜10である酸化オスミウム(VIII)溶液。
  8. 電子顕微鏡試料作製、触媒、有機合成または指紋検出に用いられる、請求項に記載の酸化オスミウム(VIII)溶液。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の方法によって製造されたガスを回収用固形物に取り込む工程をさらに含む、酸化オスミウム(VIII)含有固形物を製造する方法。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の方法によって製造されたガスを結晶化させる工程をさらに含む、酸化オスミウム(VIII)結晶を製造する方法。
  11. 酸化オスミウム(VIII)溶液、酸化オスミウム(VIII)含有固形物または酸化オスミウム(VIII)結晶を製造する装置であって、オスミウムを含む液を酸化処理する酸化処理部、酸化処理部に酸化ガスを供給する酸化ガス供給部、酸化処理部内で生成した酸化オスミウム(VIII)ガスを回収する回収部を含み、回収部が回収液、回収用固形物または酸化オスミウム(VIII)結晶物を容器に析出させるための冷却された容器である、前記装置。
  12. 電子顕微鏡試料作製で生じるオスミウムを含む液をリサイクルする方法であって、請求項1〜4に記載の方法を用いてオスミウムを含む液から酸化オスミウム(VIII)ガスを製造する工程、前記工程により製造した酸化オスミウム(VIII)ガスを回収液に取り込んで酸化オスミウム(VIII)溶液を製造する工程を含む、前記方法。
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