本発明の目的は、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体及び加飾成形部材を提供し、もって、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を容易に実現することである。
上記課題を解決するための本発明の一の局面にかかる加飾フイルム構造体は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層と、前記表面層の裏面側に形成された金属光沢層と、前記金属光沢層のうちその表面側、又は前記表面層のうちその表面側に形成された複数の微細ドットからなる、JIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80の光吸光層と、を含み、前記微細ドットは、少なくとも一部が重なった複数の層から形成されており、前記微細ドットを形成する各層は、下位層の面積がこれに隣接する上位層の面積よりも小さくかつ前記下位層が前記上位層の外周縁よりも内側に位置するように形成されており、前記表面層の表面側の表面粗さ及び光吸光層のドットの周縁部によって前記表面層側から入射した光の一部を拡散反射させ、前記表面層の裏面側又は表面層の表面側の光吸光層のドッドによって前記表面層側から入射した光の一部を吸光し、前記表面層の裏面側の金属光沢層によって前記表面層側から入射した光の一部を正反射させることを特徴とする加飾フイルム構造体。
この構成によれば、表面層側から加飾フイルム構造体に入射した光は、表面層の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、表面層の裏面側又は表面層の表面側の光吸光層のドッドによって一部が吸光され、表面層の裏面側の金属光沢層によって一部が正反射(鏡面反射)する。また、光吸光層のドットの周縁部によっても光の一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射があいまって、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体が得られる。特に、光吸光層の各微細ドットが、少なくとも一部が重なった複数の層から形成されていることで、各層毎にその周縁部で拡散反射が生じる。そのため、金属研磨面の割合を減らすことなく、つまり正反射(鏡面反射)輝度を落とすことなく拡散反射の割合を高めることが可能となり、その結果、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。
上記加飾フイルム構造体において、前記光吸収層は、JIS−Z−8729で規定されるCIE1976色座標(a*、b*)が、0<(a*)2+(b*)2<6400の関係式を満足するものであるのが好適である。
この構成によれば、光吸収層のCIE1976色座標(a*、b*)が、0<(a*)2+(b*)2<6400の関係式を満足するものであることによって、見る角度によって著しい色調差が生じることが抑制され、金属研磨面に特有の色調を有した鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が達成される。
なお、上記のJIS−Z−8729で規定される光吸収層のCIE1976明度(L*)及びCIE1976色座標(a*、b*)は、JIS−Z−8729に従い、JIS−Z−8722に規定される幾何条件a(試料面の法線方向に対する照明光軸角度:−45±2°、受光反射光軸角度:0±2°)で測定したものである。
この構成によれば、光吸光層による吸光機能を確保する一方で、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するための拡散反射が良好に達成される。
上記加飾フイルム構造体においては、前記表面層の表面側の表面粗さがRa2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上であり、平面視での前記微細ドットの面積が10−3〜105μm2であり、平面視での単位面積当たりの前記微細ドットの面積率が1〜80%であり、前記金属光沢層のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)が10000以上であるのが好ましい。
ここで、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における金属光沢層の刺激値(Y45°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を45±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。
このように表面層の表面側の表面粗さとして、Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。また、平面視でのドットの面積を10−3μm2以上とすることにより、ドットが小さくなりすぎず、光吸光層による吸光が確実に行われる。また、平面視でのドットの面積を105μm2以下とすることにより、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を一定としたときに、ドットの数が増えるから、ドットの周縁長が長くなり、ドットの周縁部による拡散反射が確実に行われ、さらに、ドットが大きくなりすぎず、加飾フイルム構造体の見栄えの低下が抑制される。また、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を1%以上とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。また、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を80%以下とすることにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体の過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。また、金属光沢層の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより確実に得られる。
上記の各加飾フイルム構造体においては、前記表面層の表面側の表面粗さが、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上であるのがより好ましい。
この構成によれば、金属研磨面調意匠を実現するためにより十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
上記の加飾フイルム構造体においては、前記金属光沢層のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)が20000以上であるのが好ましい。
この構成によれば、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
上記の各加飾フイルム構造体においては、前記光吸光層のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜50であるのがより好ましい。
この構成によれば、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するための吸光がより一層確実に達成される。
上記の加飾フイルム構造体においては、光吸光層のドットの面積率が1〜60%であることが好ましい。
この構成によれば、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体の過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
一方、本発明の一局面にかかる加飾成形部材は、上記のような加飾フイルム構造体が基材の表面側に形成されてなるものである。
この構成によれば、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材が得られる。
前記加飾成形部材においては、基材は樹脂成形部材であることが好ましい。
この構成によれば、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材の形状の自由度を高くすることができる。
以上説明したように、本発明によれば、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体及び加飾成形部材が提供されるから、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を容易に実現することができる。
本発明者等は、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を、複数の層を積層した構成の加飾フイルム構造体によって実現することを目標として検討を重ねた。その結果、金属研磨面調意匠の実現のためには、加飾フイルム構造体に入射した光の拡散反射と、吸光と、正反射(鏡面反射)とが重要な要素であることに着目した。そして、拡散反射は、加飾フイルム構造体の表面層の表面粗さによって再現が可能、吸光は、明度が相対的に低い光吸光層によって再現が可能、正反射は、刺激値が相対的に高い金属光沢層によって再現が可能であることを見出し、適切な配列で各層を形成した上で、それらの面積等により光吸光層や金属光沢層への光の入射量をバランスさせることで、光の拡散反射と吸光と正反射とが相俟った金属研磨面調意匠の外観を得ることが可能であることを見出した。
しかし、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を有するような真実性(リアル性)の高い金属研磨面意匠を実現することは容易ではなく、例えば金属光沢層の表面に微小凹凸を設けるなどするだけでは、正反射(鏡面反射)輝度が失われてしまって却って全体が塗装面のようになってしまう。
そこで、本発明者は、このような知見と創意工夫とに基づき、種々試験を繰り返すことにより、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を有する金属研磨面調意匠を提供できる加飾フイルム構造体10を完成させた。
すなわち、本実施形態に係る加飾フイルム構造体10は、図1(A)に示すように、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の裏面側に形成された複数の微細ドットからなる光吸光層2と、光吸光層2のドット間を埋めるように表面層1の裏面側に形成された金属光沢層3とを備えている。光吸光層2はJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、この光吸光層2を構成する前記微細ドットは、同図に示すように二層構造(符号2a、2bで示す)を有する。詳しくは、下位層2bの面積がこれに隣接する上位層2aの面積よりも小さくかつ下位層2bが上位層2aの外周縁よりも内側に位置するように形成されている。
ここで、表面層1は拡散反射機能を有し、光吸光層2は吸光機能及び拡散反射機能を有し、金属光沢層3は正反射機能を有する。
この加飾フイルム構造体10では、光吸光層2のドット間の間隙に金属光沢層3の一部が配置されることにより、ドット間の間隙から金属光沢層3が観察される。そのため、この加飾フイルム構造体10を、拡散反射機能を有する表面層1側から見たときには、吸光機能を有する光吸光層2が、正反射機能を有する金属光沢層3の中に細かく点在している。
このような構成によれば、表面層1側から加飾フイルム構造体10に入射した光は、表面層1の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、表面層1の裏面側の光吸光層2のドットによって一部が吸光され、また当該ドットの周縁部、詳しくはドットを形成する各層2a、2bの周縁部によって一部が拡散反射し、表面層1の裏面側の金属光沢層3によって一部が正反射(鏡面反射)する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体10が得られる。
なお、図1(A)は、光吸光層2のドットの裏面側にも金属光沢層3が存在し、光吸光層2のドット間の間隙に金属光沢層3の一部が配置された構成であったが、これに限らず、光吸光層2のドットの裏面側には金属光沢層3が存在せず、光吸光層2のドット間の間隙に金属光沢層3の全部が配置された構成でもよい。
また、図1(B)に示すように、本実施形態に係る別の加飾フイルム構造体10は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の表面側に形成された複数の微細ドットからなる光吸光層2と、表面層1の裏面側に形成された金属光沢層3とを備えている。光吸光層2はJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、この光吸光層2を構成する前記微細ドットは、同図に示すように二層構造(符号2a、2bで示す)を有する。ここで、表面層1は拡散反射機能を有し、光吸光層2は吸光機能及び拡散反射機能を有し、金属光沢層3は正反射機能を有する。
この加飾フイルム構造体10では、光吸光層2の下に金属光沢層3が配置されることにより、ドット間の間隙から金属光沢層3が観察される。そのため、この加飾フイルム構造体10を、拡散反射機能を有する表面層1側から見たときには、吸光機能を有する光吸光層2が、正反射機能を有する金属光沢層3の中に細かく点在している。
このような構成によれば、表面層1側から加飾フイルム構造体10に入射した光は、表面層1の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、表面層1の表面側の光吸光層2のドットによって一部が吸光され、またドットの周縁部、詳しくはドットを形成する各層2a、2bの周縁部によって一部が拡散反射し、表面層1の裏面側の金属光沢層3によって一部が正反射(鏡面反射)する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体10が得られる。
なお、本実施形態において、上記拡散反射機能とは、外部から入射角45度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を反射するとき、反射光強度の20%以上を正反射角±3度以内の方向以外の方向に反射する機能をいう。あるいは、外部から入射角90度で入射された可視光(波長:380〜780nm、広がり角:実質零度)を透過するとき、透過光強度の5%以上を正透過方向角±3度以内の方向以外の方向に変角する機能をいう。また、吸光機能とは、外部から入射角90度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)の強度の20%以上を吸収又は透過する機能をいう。好ましくは、入射された可視光を反射するとき、波長ごと(420〜670nm)の反射率の差が±10%以内である。また、正反射機能とは、外部から入射角45度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を反射するとき、反射光強度の90%以上を正反射角±3度以内の方向に反射する機能をいう。
本実施形態では、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)、光吸光層2の明度(L*)、光吸光層2のドットの面積、光吸光層2のドットの面積率、金属光沢層3の刺激値(Y45°)を調整することによって、加飾フイルム構造体10の金属研磨面調意匠における光の拡散反射の程度、光の正反射の程度、光の吸収の程度をそれぞれ独立して所望の値に調整することができる。
本実施形態では、表面層1の表面側の表面粗さは、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上である。Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分は拡散反射が確実に得られる。
表面層1の表面側の表面粗さは、より好ましくは、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
本実施形態においては、光吸光層2のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)は上記の通り0〜80である。光吸光層2の明度(L*)を80以下とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面意匠を実現するために十分な吸光が達成される。
光吸光層2の明度(L*)は、より好ましくは、0〜50である。これにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分は吸光がより一層確実に達成される。
なお、光吸光層2を形成する各微細ドットは、上述のように、下位層2bの面積がこれに隣接する上位層2aの面積よりも小さくかつ下位層2bが上位層2aの外周縁よりも内側に位置するように形成された2層構造(2a、2b)を有する。これにより光吸光層2の吸光機能が良好に発揮される一方で、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。すなわち、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を実現するには、加飾フイルム構造体に入射する光が拡散反射する割合を増やすことが有効である。この際、例えば金属光沢層の表面に微小凹凸を設けることが考えられるが、この場合には、金属光沢層の表面が荒れて当該金属光沢層の正反射(鏡面反射)輝度が失われてしまい、却って全体が塗装面のようになってしまう。これに対して、光吸光層2を構成する各微細ドットを2層構造(2a、2b)とした上記加飾フイルム構造体10の構成によれば、金属光沢層3の正反射(鏡面反射)輝度を落とすことなく拡散反射の割合を高めることが可能となり、その結果、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。
また、光吸収層2のCIE1976色座標(a*、b*)が、0<(a*)2+(b*)2<6400の関係式を満足するものである。色座標(a*、b*)がこのような関係式を満たすことで、見る角度による影響を受け難い、金属研磨面に特有の色調を有した鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が達成される。すなわち、複数層からなる上記のような加飾フイルム構造体10では、その色調は、受光角度(加飾フイルム構造体10を見る角度;加飾フイルム構造体10の法線方向と受光反射光軸との成す角度)が小さい場合には、光吸収層2の色調が反映され易く、受光角度が大きくなるに伴い反射面の違いによる光干渉などの影響を受け易くなる傾向がある。これが見る角度(受光角度)によって加飾フイルム構造体10の色調に差が生じる原因の一つであるが、光吸収層2の色座標(a*、b*)が上記関係式を満たすようにすることで、受光角度の違いより色調が著しく変化することが抑制され、金属研磨面に特有の色調を有した鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が達成される。
本実施形態においては、平面視でのドットの面積は10−3〜105μm2である。ドットの面積を10−3μm2以上とすることにより、ドットが小さくなりすぎず、ドットによる吸光が確実に行われる。ドットの面積を105μm2以下とすることにより、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を一定としたときに、ドットの数が増えるから、ドットの周縁長が長くなり、ドットの周縁部による拡散反射が確実に行われる。また、ドットが大きくなりすぎず、加飾フイルム構造体10の見栄えの低下が抑制される。
本実施形態においては、平面視での単位面積当たりのドットの面積率は1〜80%である。ドットの面積率を1%以上とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。ドットの面積率を80%以下とすることにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体10の過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。
光吸光層2のドットの面積率は、より好ましくは、1〜60%である。これにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体10の過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
本実施形態においては、金属光沢層3のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)は10000以上である。金属光沢層3の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。
金属光沢層3の刺激値(Y45°)は、より好ましくは、20000以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
実施形態においては、表面層1、光吸光層2及び金属光沢層3の厚みは、特に限定されない。状況に応じて、例えば1μm〜1mmの範囲内の厚みとすることができる。
表面層1は、透明又は半透明である限り、無色でも有色でもよい。表面層1の色を調整することによって、加飾フイルム構造体10の金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
光吸光層2の材料は、特に限定されない。樹脂や金属が好ましいが、状況に応じて、例えば紙や鉱物あるいはその他の繊維質やその他の無機物等でもよい。
金属光沢層3の材料も、特に限定されない。例えば樹脂や金属が好ましい。金属光沢層3の色を調整することによっても、加飾フイルム構造体10の金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
また、光吸光層2を構成する各微細ドットの構造は、図1に示すような、二層構造に限らず、三層以上の構造であってもよい。なお、各微細ドットの構造は、図1に示すように、下位層2bの面積がこれに隣接する上位層2aの面積よりも小さくかつ下位層2bが上位層2aの外周縁よりも内側に位置するように形成されているのが好ましいが、図2に示すように、少なくとも一部が重なっていれば、隣接する層同士がずれた構造であってもよい。この図2に示すような構造の場合も、微細ドットを形成する各層2a、2bの周縁部によって光が拡散反射することで、図1に示す構造のものと同様に、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような拡散反射が達成される。
上記の加飾フイルム構造体10は、例えば転写フイルムのベース材(図示せず)に各層1〜3を印刷や塗装等することによって容易に得ることができる。あるいは、加飾フイルム構造体10の表面層1となるクリアフイルムに各層2、3を印刷や塗装等することによっても容易に得ることができる。なお、光吸光層2の各微細ドットは、例えばスクリーン印刷等によりドットを重ね塗り等することにより二層構造とすることができる。そして、得られた加飾フイルム構造体10を基材5の表面に転写や接着等することによって容易に基材5を金属研磨面調に加飾することができる。もしくは、基材5の表面に直接加飾フイルム構造体10の各層1〜3を印刷や塗装等してもよい。
このようにして、加飾フイルム構造体10が基材5の表面側に形成されてなる加飾成形部材20が得られる。この加飾成形部材20は、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈するものとなる。従って、例えばドアハンドル等の自動車内装部品、家電部品、パーソナルコンピュータ部品、携帯電話部品、事務用部品、スポーツ用具部品、計測機器部品、雑貨部品等に好適である。
基材5は樹脂成形部材であることが好ましい。光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20の形状の自由度を高くすることができるからである。
なお、図1において、符号4は、金属光沢層3を表面層1に押え付けるための裏打ち層及び/又は加飾フイルム構造体10を基材5に接着するための接着層である。さらに、金属光沢層3が裏打ち層(接着層)4によって侵食されあるいは腐食するのを防ぐための保護層(図示せず)を金属光沢層3と裏打ち層(接着層)4との間に設けてもよい。
また、本発明の作用効果を損なわない範囲で、加飾フイルム構造体10の外表面、あるいは、加飾成形部材20の外表面に、透明又は半透明の、無色又は有色の、保護層を設けてもよい。この保護層は、例えば、表面層1の上に直接設けられる。この保護層は、加飾フイルム構造体10あるいは加飾成形部材20の表面保護のために設けられる。また、この保護層は、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)を調整するために設けられるものであってもよい。したがって、本発明でいう、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)には、この保護層で調整された表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)が包含される。
以下、実施例(表1、表2)を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。
[加飾フイルム構造体の作製]
(試験番号1〜14、19(試験番号19は比較例))
図1(A)に示した構成の加飾フイルム構造体10を表1に示す仕様により作製した。表面層1として、帝人化成社製のポリカーボネートシート「PC1151」(板厚0.5mm)を用い、この片面にスクリーン印刷にて光吸光層2(厚み3μm)を形成した。光吸光層2の形成には、セイコーアドバンス社製のUVインキ「HUG」を用いた。次に、光吸光層2の上にスクリーン印刷にて金属光沢層3(厚み2μm:光吸光層2の上の厚みとして)を形成した。金属光沢層3の形成には、帝国インキ製造社製のインキ「MIR−51000ミラーシルバー」を用いた。次に、金属光沢層3の上にスクリーン印刷にて裏打ち層4(厚み10μm)を形成した。裏打ち層4の形成には、帝国インキ製造社製のインキ「MIB−611白色」を用いた。以上により、表面層1側から観察したときにアルミニウムの研磨面調の外観を呈する加飾フイルム構造体10が得られた。
(試験番号17、18(比較例))
光吸光層2の微細ドットを単層構造とした他は、試験番号1〜14、19と同様にして加飾フイルム構造体を作成した。
(試験番号15、16(比較例))
光吸光層2を形成しなかった他は、試験番号1〜14、17〜19と同様にして加飾フイルム構造体を作成した。
[加飾フイルム構造体の外観評価]
作製した加飾フイルム構造体10の外観を光学的に評価した。すなわち、表面層1側から加飾フイルム構造体10に入射角45度で可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を照射し、正反射角の刺激値Y、つまり正反射(鏡面反射)の刺激値(Y45°)と、正反射角−5度の刺激値Y、つまり拡散反射の刺激値(Y40°)とを村上色彩技術研究所製の変角分光光度計を用いて測定した。結果を表1、2に示す。
ここで、正反射の刺激値(Y45°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を45±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。また、拡散反射の刺激値(Y40°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を40±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。
なお、本物のアルミニウムの研磨面及び低艶サテンめっきの正反射の刺激値(Y45°)及び拡散反射の刺激値(Y40°)を同様にして測定したところ、アルミニウムの研磨面の正反射の刺激値(Y45°)は35000〜55000の範囲(例えば38306)、拡散反射の刺激値(Y40°)は900〜1300の範囲(例えば925)であり、サテンめっきの正反射の刺激値(Y45°)は10000〜75000の範囲(例えば31977)、拡散反射の刺激値(Y40°)は900〜2600の範囲(例えば1784)であった。
表1、2から明らかなように、光吸光層2を形成しなかった試験番号15、16に比べて、試験番号1〜14、17〜19の加飾フイルム構造体は、正反射の刺激値(Y45°)、拡散反射の刺激値(Y40°)、及び/又は、正反射刺激値(Y45°)に対する拡散反射刺激値(Y40°)の比(拡散反射刺激値(Y40°)/正反射刺激値(Y45°);以下、刺激値比という)が、本物のアルミニウムの研磨面等のそれに比較的近い値であった。
また、光吸光層2を形成した試験番号1〜14、17〜19の加飾フイルム構造体のうちでも、光吸光層2を形成する微細ドットが二層構造の試験番号1〜14の加飾フイルム構造体は、微細ドットが単層構造の試験番号17、18の加飾フイルム構造体に比べると射刺激値比が本物のアルミニウムの研磨面等に比較的近く、正反射(鏡面反射)と拡散反射とのバランスが、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を実現するのに良好なものになっていることが考察できる。なお、光吸光層2を形成する微細ドットが二層構造でも、上下各層のサイズ(面積)が等しい試験番号19のものは刺激値比が本物のアルミニウムの研磨面途のそれに比べて低くなっているが、これは微細ドットの上位層と下位層のサイズが同じために周縁部が重なっていること、および光吸光層2自体の面積率が低いことにより、試験番号1〜14のものに比べて光吸光層2での拡散反射が少ないことが一因と考えられる。