JP6000730B2 - 固定砥粒式ソーワイヤ用のコアワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、固定砥粒式ソーワイヤ用のコアワイヤに関する。さらに詳しくは、表面に砥粒が固着された状態で使用されるソーワイヤの、砥粒固着処理前の芯材であるコアワイヤに関する。
図4に示されるように、例えばシリコン等の半導体用インゴット52をスライス加工するためにソーワイヤ51が用いられる。1本のソーワイヤ51が複数本のローラ53に張り渡される。ソーワイヤ51は、ローラ53の軸方向に所定ピッチで少しずつずらされて、何重にも張り渡されている。ローラ53の回転により、ワイヤ51が走行する。ワーク(半導体用インゴット)52は、この走行するワイヤ51に押圧されることによって切断される。この切断により、多数のウエハーが得られる。
上記ソーワイヤ51としては、従来、遊離砥粒式ソーワイヤ及び固定砥粒式ソーワイヤが用いられている。遊離砥粒式ソーワイヤは、鋼線からなるソーワイヤであり、砥粒を含むスラリを吹き付けながらワークを切断するものである。固定砥粒式ソーワイヤは、鋼線からなるワイヤの表面に砥粒が固着されたものである。固定砥粒式ソーワイヤは、砥粒を吹き付ける必要なく直接ワークを切断する。固定砥粒式ソーワイヤは、切断速度、切断精度等の点で、遊離砥粒式ソーワイヤに比して優位にある。近時、固定砥粒式ソーワイヤが遊離砥粒式ソーワイヤに代わって主流になりつつある。
上記固定砥粒式ソーワイヤとしては、特開2004−261889号公報、特開2007−152486号公報等に開示されたものが知られている。図5に示されるように、これらの公報に開示された固定砥粒式ソーワイヤ54は、ピアノ線等の金属線55に、下地メッキ(第1メッキ)56が施され、次いで、砥粒固定メッキ(第2メッキ)57が施されたものである。下地メッキ56が施され、砥粒固定メッキ57が未だ施されていない状態の金属線は、コアワイヤと呼ばれている。上記下地メッキ56用金属としては、ニッケル、銅、鉛、黄銅が例示されている。砥粒固定メッキ57は砥粒58を含有した金属メッキとされている。砥粒固定メッキ57としては、一般的にニッケルが用いられる。図示のごとく、砥粒固定メッキ57が施された後に、さらに、砥粒58を固着するための第3メッキ59が施されることもある。この第3メッキ59としても、一般的にニッケルが用いられる。この場合は、一般的に、初回のメッキ57が砥粒仮付けメッキとされ、二回目のメッキ59が砥粒固定メッキとされる。
一般的に、コアワイヤに用いられる鋼線は、引張強さが高くなるに従い、延性が低下する。ソーワイヤは、ローラに高張力で張り渡され、高速で走行しながらワークが押圧される。ソーワイヤには強い捻り力が加わる。その結果、ソーワイヤには、メッキの剥がれによる砥粒の脱落が生じやすくなる。メッキが剥がれると、ソーワイヤのその部分の断面積が減少するので、捻り剛性が低下してねじ切れるおそれがある。また、ソーワイヤには、捻りに起因して、デラミネーションと呼ばれる軸方向の縦割れが生じ、断線し易くなるおそれがある。
特開2004−261889号公報 特開2007−152486号公報
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、ワーク切断中のソーワイヤの捻れによる断線及びメッキ剥離の防止を可能とする、固定砥粒式ソーワイヤ用のコアワイヤを提供することを目的としている。
本発明に係るコアワイヤは、鋼線の表面に、下地メッキ層が積層されている、固定砥粒式ソーワイヤ用のコアワイヤであって、
上記下地メッキ層が、黄銅を含むメッキによって形成されており、
下地メッキ層における、外面側の表層部がZnリッチにされており、鋼線側の底層部がCuリッチにされており、表層部と底層部とに挟まれた中層部がα黄銅及びβ黄銅の少なくともいずれか一方から構成されている。
好ましくは、上記表層部ではCuが重量比で50%未満であり、上記中層部ではCuが重量比で40%以上85%以下であり、底層部ではCuが重量比で60%以上である。
好ましくは、上記下地メッキ層の組成は、Cuが重量比で30%以上80%以下であり、残部がZnである。
好ましくは、上記下地メッキ層の厚さが、0.01μm以上2.0μm以下である。
好ましくは、上記表層部の厚さが、上記下地メッキ層の厚さの1%以上20%以下である。
好ましくは、上記コアワイヤの捻回値が、30/100d以上である。
好ましくは、上記コアワイヤの横断面形状が円形であり、その直径の最大値と最小値との差である偏径差が2.0μm以下である。
好ましくは、上記鋼線は、重量比で、Cが0.60%以上1.20%以下、Siが0.02%以上2.0%以下、Mnが0.10%以上1.0%以下、Crが0.5%以下であり、残部がFe及び不可避的に混入する不純物からなる。
本発明によれば、固定砥粒式ソーワイヤの捻れによるメッキの剥離を防止し、ソーワイヤの捻回値を向上しうる。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るコアワイヤが用いられた固定砥粒式ソーワイヤの横断面図であり、図1(b)は、上記ソーワイヤの縦断面図である。 図2(a)は、図1のソーワイヤを構成するコアワイヤを示す縦断面図であり、図2(b)は、図2(a)のコアワイヤのうちのII部である第1メッキ層(下地メッキ層)のCu組成割合の分布の一例を概念的に示すグラフである。 図3(a)は、伸線加工に伴って生じたコアワイヤの螺旋状の癖を示す正面図であり、図3(b)はその平面図である。 図4は、複数本のローラに張り渡されたソーワイヤが、切断対象であるワークとともに示された斜視図である。 図5は、従来のソーワイヤの一例を示す横断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1に示されたソーワイヤ10は、その内部にコアワイヤ1を有している。コアワイヤ1は、鋼線2に第1メッキ層としての下地メッキ(図中の符号3)が施されたものである。ソーワイヤ10は、このコアワイヤ1の外周面に、砥粒4を仮付けする砥粒仮付けメッキ層(第2メッキ層)5と、この砥粒4を固着する砥粒固定メッキ層(第3メッキ層)6とを備えている。上記下地メッキ層3は黄銅を含んでいる。一般的に、砥粒仮付けメッキ層5及び砥粒固定メッキ層6はいずれも、ニッケルからなる。砥粒仮付けメッキ層5及び砥粒固定メッキ層6の材質は特にニッケルに限定するものではない。砥粒4は、砥粒固定メッキ層6の表面から外方へ突出している。この砥粒4としては、一般的に、炭化珪素砥粒、ダイアモンド砥粒等が用いられるが、本実施形態ではダイアモンド砥粒が採用されている。
このソーワイヤ10は、例えば、以下の製造工程を経て完成する。まず、素材となる鋼材の乾式伸線工程がある。次いで、鋼線2の熱処理(パテンティング)工程、鋼線2に対する銅メッキ及び亜鉛メッキ(図中の符号3)の各工程、拡散熱処理工程、湿式伸線工程を経て、コアワイヤ1が完成する。このコアワイヤ1に対し、砥粒4を仮付けするためのニッケルメッキ(図中の符号5)の工程、及び、砥粒4を固定するためのニッケルメッキ(図中の符号6)の工程を経てソーワイヤ10が完成する。ここに記載された製造工程は一例である。
上記鋼線2として、高炭素鋼線、オーステナイト系ステンレス鋼線、フェライト系ステンレス鋼線、マルテンサイト系ステンレス鋼線等が用いられる。本実施形態における鋼線2としては、高炭素鋼線が用いられている。この高炭素鋼線は、重量比で、Cを0.60%以上1.20%以下、Siを0.02%以上2.0%以下、Mnを0.10%以上1.0%以下、Crを0.5%以下含有し、残部をFe及び不可避的に混入する不純物が占めている。この組成により、高強度且つ安価であって、コアワイヤとして最適な鋼線2となる。また、鋼線2の表面傷の深さは、5.0μm以下に抑えるのが望ましく、1.0μm以下とするのが好ましい。
Cを上記範囲に制限することにより、鋼線2の、熱処理後の引張強さの増加、及び、伸線加工による硬化率の向上が可能となる。その結果、小さな伸線加工歪により、鋼線2の引張強さの上昇が期待できる。
Siは、パーライト中のフェライトを強化して鋼材の引張強さを向上させるとともに、脱酸作用を奏する。Siの含有量が0.02%未満であれば、これらの効果を十分には引き出せないおそれがある。一方、Siの含有量が2.0%を超えると、鋼線2が高強度化しすぎ、延性が低下する。その結果、伸線加工性が低下するおそれがある。
Mnは、脱酸、脱硫等に有効である。また、Mnによれば、鋼線2の焼入れ性が向上し、パテンティング処理後の引張強さを向上せしめる効果が得られる。Mnの含有量が0.10%未満であれば、これらの効果を十分には引き出せないおそれがある。一方、Mnの含有量が1.0%を超えると、中心偏析に伴う過冷組織が生成され、鋼線2の伸線性が低下するおそれがある。
Crは、パテンティング処理後のラメラー間隔(パーライトにおけるセメンタイト間隔)の微細化に寄与する。これにより、パテンティング処理後の鋼線2の引張強さが向上すると共に、伸線加工硬化率が向上する。Crの含有量が0.5%を超えると、パテンティングにおいて、パーライト変態を完了させるための処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
鋼線2の表面には、下地メッキ3処理の直前の熱処理等により、図示しない酸化皮膜が形成される。酸化皮膜は、将来的に鋼線2と下地メッキ層3との間に介在することになる。この酸化皮膜の量は、下地メッキ層3の鋼線2表面への付着性の向上の観点から、少ない方が好ましい。酸化皮膜の厚さは、鋼線2の表面から0.5μm以下とするのが好ましい。
図2(a)に示されるように、この鋼線2には、前述の下地メッキ3が施される。この下地メッキ3の金属としては、次工程の湿式伸線工程に対応しうるように、鋼線2より十分に柔らかく、延性に優れた金属が選択される。さらに、鋼線2の表面への付着性、及び、後のソーワイヤ製造工程における砥粒仮付けメッキ5の金属への付着性に優れた金属が選択される。本実施形態では、下地メッキ材として、Cu及びZnが採用されている。下地メッキ層3の構成金属は、層全体で、Cuが重量比で30%以上80%以下であり、残部がZnであるのが好ましい。Cuが30%未満であると、コアワイヤ1の伸線加工にとって必要な組織を得にくくなるおそれがある。一方、Cuが80%を超えると、Znが相対的に少なくなる。そのため、下地メッキ層3の耐食性が低下するとともに、下地メッキ層3の表面に凹凸が形成されにくくなるので、後工程のNiメッキの付着強さが低くなるおそれがある。
しかし、下地メッキ層3のCu及びZnが上記の構成にされたとしても、均一な組成の黄銅ではない。下地メッキ層3は、その底層部7から中層部8を経て表層部9に至るまでに、CuとZnとの組成割合が変化したものである。すなわち、CuとZnとが、それぞれのメッキ量及び拡散熱処理の各コントロールにより、下地メッキ層3の全体にわたって望ましい分布となるようにされる。
底層部7はCuリッチな層である。Cuリッチな層は、柔軟性を有しており、鋼線2に対する密着性がよい。このような下地メッキ層3を備えたコアワイヤ1は、後述する捻回値(耐捻り強度を示す数値)が高くなる。このようなコアワイヤ1から形成されたソーワイヤ10は、ワークを切断している最中に、捻られたとしても、Cuは鋼線2から離れにくい。また、Cuは導電性が高いので、Cuメッキの上に施されるZnメッキの層が均一に付着しやすい。Cuメッキ及びZnメッキの後の拡散熱処理をコントロールすることにより、表層部9の表面にもCuを存在させることができる。この表面のCuにより、後工程のNiメッキの層が均一に付着しやすくなる。
中層部8はα黄銅及びβ黄銅のうちの少なくとも一方からなる。α黄銅又はβ黄銅は柔らかいので、コアワイヤ1の伸線性が向上する。特にα黄銅は柔らかいので、伸線性が一層向上する。
表層部9はZnリッチ層である。コアワイヤ1のZnリッチな表層部9は、湿式伸線工程において、表面が荒れてその表面積が広くなる傾向にある。その結果、この捻回値の高いコアワイヤ1からソーワイヤ10を製造するための後工程において、砥粒仮付けメッキ5としてのNiメッキがなされたとき、アンカー効果により、Niの下地メッキ層3に対する付着強さが高くなる。これにより、ソーワイヤ10の捻回値がさらに向上する。このように、使用されるコアワイヤの捻回値が高い場合、これに固定砥粒メッキや砥粒を付着させた固定砥粒式ソーワイヤの捻回値も高くなることは知られている。
前述した下地メッキ層3の、底層部7、中層部8及び表層部9の各部分を、下記のCu組成割合とするのが好ましい。底層部7のCuの重量比は60%以上(Cuリッチ)であり、残部はZnである。中層部8のCuの重量比は40%以上85%以下であり、残部はZnである。表層部9のCuの重量比は50%未満であり、残部はZnである(Znリッチ)。底層部7の底面及びその近傍はCuの重量比が100%であってもよい。表層部9の表面及びその近傍はCuの重量比が0%であってもよい。しかし、表層部9の表面にもCuが存在するのが好ましい。前述したとおり、表面にもCuが存在すれば、後工程のNiメッキの層が均一に付着しやすくなるからである。図2(b)には、下地メッキ層3のCuとZnとの上記組成割合の分布の一例が概念的に示されている。下地メッキ層3における、底層部7、中層部8及び表層部9の各組成は、例えば、オージェ電子分光分析装置によって測定可能である。
上記下地メッキ層3の厚さは、0.01μm以上2.0μm以下とされるのが好ましい。この厚さ範囲では、鋼線2との間で、適正な付着性、伸線性及び導電性が確保できる。0.01μm未満であると、伸線性が低下するおそれがある。2.0μmを超えると、メッキ層3が必要以上に厚くなり、コストアップとなるおそれがある。下地メッキ層3の厚さのうち、特に、表層部9の厚さの占める割合は、1%以上20%以下であるのが好ましい。この割合が1%未満であると、アンカー効果が得られにくくなり、20%を超えると、伸縮性に富む中層部の占める割合が相対的に減少するからである。かかる観点からは、上記割合は、5%以上20%以下であるのがさらに好ましい。また、下地メッキ層3の厚さのうち、底層部7の厚さの占める割合は、1%以上30%以下であるのが好ましい。さらに、下地メッキ層3の厚さのうち、中層部8の厚さの占める割合は、50%以上98%以下であるのが好ましい。
上記下地メッキ層3が形成されたコアワイヤ1の横断面形状は略円形である。この横断面の直径は、0.05mm以上0.25mm以下とされるのが好ましい。これは、ソーワイヤ10を形成する上での必要な線径の範囲である。この円形横断面の偏径差は2.0μm以下とされるのが好ましい。ソーワイヤ10によるワークの切断面の性状の悪化を防止しうるからである。上記偏径差とは、横断面の直径の最大値と最小値との差をいう。コアワイヤ1の引張強さは、ソーワイヤ10としての性能要求から、3500MPa以上とされるのが好ましい。
以上説明されたコアワイヤ1では、特徴的なその下地メッキ層3の鋼線2への付着力が高い。この下地メッキ層3により、後工程で施されるNiメッキ層の付着力も高められる。これにより、ワークの切断中の、砥粒仮付けメッキ層5及び砥粒固定メッキ層6の剥離、及び、砥粒4の脱落が防止される。さらに、コアワイヤ1の捻回値が向上する。捻回値は、コアワイヤ1の捻りに対する強さを表す。捻回値の一例は、コアワイヤ1の線径dの100倍の長さの試験片が、張力及び捻り力が負荷されることによって破断する(ねじ切れる)までの捻り回数で表される。コアワイヤ1の捻回値は、0.5N以上1.0N以下の張力が負荷された状態で、捻回速度が50rpm以上100rpm以下となる捻り力が負荷されたとき、30/100d以上であるのが好ましい。これは、線径dの100倍の長さの試験片に対し、30回以上の捻りによって断線することを示している。
下地メッキ3が施された鋼線2は、次に湿式伸線加工が施されてコアワイヤ1となる。この湿式伸線加工に伴い、コアワイヤ1には塑性変形によって螺旋状(コイル状)となる癖が付く。このコイル状の癖は、以下のとおり三次元の癖である。
図3に示されるように、コイル状となったこのコアワイヤ1から約1サークル分の長さのサンプル11を切り取ると、そのサンプル11は、円形を呈している(図3(b))とともに、その中心軸CL方向にも変形している(図3(a))。図中には、この円の直径(フリーコイル径)がDで表され、中心軸CL方向の変位がHで表されている。この中心軸CL方向の変位Hは、サンプル11の一端11aと他端11bとの、中心軸CL方向の離間寸法である。この変位Hは、「はね上がり」とも呼ばれる。上記寸法D、Hの起点及び終点は、全てコアワイヤ1自体の中心線である。コアワイヤ1のフリーコイル径Dが小さい場合、及び、はね上がりHが大きい場合、次工程のNiメッキが均一に付着しにくくなるおそれがある。さらに、フリーコイル径Dが小さいコアワイヤ1から構成されたソーワイヤ10、及び、はね上がりHが大きいコアワイヤ1から構成されたソーワイヤ10には、うねりが生じるおそれがある。すなわち、ソーワイヤ10は、ローラ53(図4)に張り渡されたときに波状にうねった状態となる。ソーワイヤ10のうねりはワークの切断面の性状を悪化させる懸念がある。
上記観点から、フリーコイル径Dは大きいことが望ましく、はね上がりHは小さいことが望ましい。具体的には、完成したコアワイヤ1について、フリーコイル径Dは150mm以上が好ましく、300mm以上がさらに好ましい。はね上がりHは25mm以下が好ましい。かかるコアワイヤ1を得るためには、最終の湿式伸線工程における最終ダイスとして、アプローチ角度の大きいダイスを採用すればよい。この方法により、コアワイヤ1の中心軸方向への加工深度が小さくなり、長手方向に安定した癖を持ったコアワイヤを得ることができる。かかるコアワイヤ1から製造されたソーワイヤ10では、ワーク切断時のうねりが十分に抑制される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1−4]
実施例1から4の各例に対し、図2に示されたコアワイヤが10本ずつ用意された。これらのコアワイヤの直径は、全て0.18mmである。下地メッキ層の厚さは、全ての実施例1から4について0.2μmである。この下地メッキ層の表層部として、表面から深さ0.02μmまでの範囲について、オージェ電子分光分析装置を用いてCuの含有量を測定し、含有割合を得た。下地メッキ層の中層部として、表面からの深さが0.045μmから0.155μmまでの範囲について、上記と同様の方法により、Cuの含有量を測定し、含有割合を得た。下地メッキ層の底層部として、表面からの深さが0.16μmから0.20μmまでの範囲について、上記と同様の方法により、Cuの含有量を測定し、含有割合を得た。以上の各測定結果は表1に示されている。また、上記中層部に対して、組織分析が行われた。その結果は、実施例1から4共にα黄銅及びβ黄銅であった。上記実施例1から4の各コアワイヤに対して、捻回値が測定された。捻回値の測定方法は前述したとおりである。すなわち、線径dの100倍の長さの試験片に、0.7Nの張力が負荷された状態で、捻回速度が100rpmとなる捻り力を負荷する。そして、試験片が破断するまでの捻り回数が捻回値として測定され、記録される。各実施例の捻回値は、表1に示されている。
[比較例1−3]
比較例1から3の各例に対し、鋼線の表面に下地メッキとして黄銅メッキが施されたコアワイヤが10本ずつ用意された。これらのコアワイヤの直径は、全て0.18mmである。下地メッキ層の厚さは、全ての比較例1から3について0.2μmである。この下地メッキ層の表層部として、表面から深さ0.02μmまでの範囲について、Cuの含有量を測定し、含有割合を得た。下地メッキ層の中層部として、表面からの深さが0.045μmから0.155μmまでの範囲について、Cuの含有量を測定し、含有割合を得た。下地メッキ層の底層部として、表面からの深さが0.16μmから0.20μmまでの範囲について、Cuの含有量を測定し、含有割合を得た。この測定方法は、実施例1から4におけると同じである。以上の各測定結果は表1に示されている。また、上記中層部に対して、組織分析が行われた。その結果は、比較例1及び2のそれぞれがα黄銅及びβ黄銅であった。比較例3はγ層であった。上記比較例1及び2の各コアワイヤに対して、捻回値が測定された。捻回値の測定方法は実施例1から4におけると同じである。比較例3は、その下地メッキ層にγ層を多く含むため、硬度が高くなっている。この比較例3のコアワイヤは、湿式伸線工程中に断線が多発し、湿式伸線自体の施工が困難となった。その結果、比較例3に対する捻回値の測定は不可能であった。
Figure 0006000730
[評価]
各例のコアワイヤの特性評価として、捻回値の測定結果が表1に示されている。下地メッキ層の表層部がZnリッチであり、底層部がCuリッチであり、中層部がα黄銅及びβ黄銅である実施例1から4は、いずれも捻回値が31以上である。一方、表層部がZnリッチでない比較例1及び2では、いずれも捻回値が22以下である。また、表層部がZnリッチではない上に底層部がCuリッチでない比較例2では、断線が多数認められた。中層部がγ層からなる比較例3では、捻回値の測定が不可能であった。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るコアワイヤは、シリコンインゴット、人工水晶、超硬合金、セラミック等を良好に切断するための固定砥粒式ソーワイヤに適している。
1・・・コアワイヤ
2・・・鋼線
3・・・下地メッキ(層)
4・・・砥粒
5・・・砥粒仮付けメッキ(層)
6・・・砥粒固定メッキ(層)
7・・・底層部
8・・・中層部
9・・・表層部
10・・・ソーワイヤ
11・・・(コアワイヤの)サンプル
CL・・・(サンプルの)中心線

Claims (6)

  1. 鋼線の表面に、下地メッキ層が積層されている、固定砥粒式ソーワイヤ用のコアワイヤであって、
    上記下地メッキ層が、黄銅を含むメッキによって形成されており、
    下地メッキ層における、外面側の表層部がZnリッチにされており、鋼線側の底層部がCuリッチにされており、表層部と底層部とに挟まれた中層部がα黄銅及びβ黄銅の少なくともいずれか一方からなり、
    上記表層部ではCuが重量比で50%未満であり、上記中層部ではCuが重量比で40%以上85%以下であり、底層部ではCuが重量比で60%以上であり、各層部における残部がZnであり、
    上記表層部の厚さが、上記下地メッキ層の厚さの1%以上20%以下であり、
    上記中層部の厚さが、上記下地メッキ層の厚さの50%以上98%以下であり、
    上記底層部の厚さが、上記下地メッキ層の厚さの1%以上30%以下であるコアワイヤ。
  2. 上記下地メッキ層の組成は、Cuが重量比で30%以上80%以下であり、残部がZnである請求項に記載のコアワイヤ。
  3. 上記下地メッキ層の厚さが、0.01μm以上2.0μm以下である請求項1又は2に記載のコアワイヤ。
  4. 捻回値が、30/100d以上である請求項1からのいずれかに記載のコアワイヤ。
  5. 横断面形状が円形であり、その直径の最大値と最小値との差である偏径差が2.0μm以下である請求項1からのいずれかに記載のコアワイヤ。
  6. 上記鋼線においては、重量比で、Cが0.60%以上1.20%以下、Siが0.02%以上2.0%以下、Mnが0.10%以上1.0%以下、Crが0.5%以下であり、残部がFe及び不可避的に混入する不純物からなる請求項1からのいずれかに記載のコアワイヤ。
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