以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1〜図6を用いて、本発明の第1の実施の形態について説明する。
(植物の生長サイクルについて)
本実施の形態に係る植物の栽培方法は、植物に照射する光のうち、新芽及び花芽が形成されていく時期には、意図的(すなわち人工的)に赤外光の比率を多くし、それ以外の時期には、赤外光の比率を元に戻す。本実施の形態では、太陽光と、人工光としての赤外光を併用して果樹又は花を栽培する場合について説明する。
また、赤外光の中でも、植物の生長の促進効果を効率よく得るには、遠赤色(FR)光を用いることが好ましい。このため、本実施の形態では、植物の生長の促進効果を効率よく得るために使用する赤外光について、赤外光の中でもFR光(波長が700nm〜800nm程度の近赤外もしくは遠赤色)を用いる場合について説明する。なお、植物の生長の促進効果を効率よく得るために植物に照射する赤外光は、FR光に限定されず、栽培する植物に応じて、遠赤外光等、FR光以外の波長帯の光を使用してもよい。
まず、図1を用いて、本実施の形態で栽培対象とする植物の代表的な年間の生長サイクルについて説明する。本実施の形態で栽培対象とする植物は、果実又は花を収穫する植物である。当該植物の一例として、果実を収穫する果樹について説明する。
ここで、本明細書中では、以下のように用語を定義する。
新葉の「展開」とは、芽が伸長して葉が開くまでのことを指すものとする。なお、新芽の展開と称する場合もある。
新葉の「生育」とは、開いた葉が光合成・呼吸を行いながら大きく、厚くなっていく過程のことを指すものとする。
図1は、果樹の年間生長サイクルと、遠赤色(FR)光照射時期とを表す図である。図1の(a)は果樹の年間生長サイクルの概略を表し、(b)は(a)の具体例を示している。
まず、図1を用いて、通常の、果実を収穫対象とする果樹の年間生長サイクルについて説明する。
図1の(a)に示すように、果樹は、秋期(10月)頃に新芽の形成期間S11に入り、新芽が形成されて生長していく。この新芽の形成期間S11で形成される新芽は、翌年の収穫物(果実)のための光合成を行うための新芽である。
その後、果樹は、秋期後半から翌年の春期前半(11月〜2月)頃まで休眠期間S12に入り、新芽の生長が、一旦抑制もしくは停止する。また、特に11月頃から12月頃には、葉が落ちる落葉期間となる。この休眠期間S12は、1年のうちで、果樹の新芽の伸長や新葉の生育が抑制もしくは停止される期間である。
一般的に、果樹は休眠期間に入るにつれ新葉の生育が遅くなり、それに伴って、光合成によって得られた養分は根に貯蔵される。この貯蔵養分が翌年の新芽の伸長時に使用され、新芽に移行(転流と呼ばれる)する。この休眠期間S12で貯蔵される貯蔵養分は、収穫される果樹の品質を左右する重要な要素である。
次に、休眠期間S12が終わると、果樹は、春期(3月、4月、5月上旬)頃に新芽が再び伸長し、新芽から新葉が展開していく新葉の展開期間S13に入る。
次に、果樹は、新葉の展開期間S13の後、その年の休眠期間S12が始まるまでの期間(5月中旬頃〜10月頃)は新葉の生育期間及び果実の充実期間S14となり、その年の新葉の展開期間S13で展開された新葉が生育すると共に、前年に形成された花芽が開花した後に実った果実が充実していく。
そして、新葉の生育期間及び果実の充実期間S14のうち、特に夏期(7月、8月)頃が、花芽の形成期間S15であり、この期間に、果樹には、翌年に収穫される果実を展開するための花芽が形成され、生長していく。
この花芽の形成期間S15で形成された花芽は、休眠期間S12が開けた後、翌年の春期から夏期前半(3月〜6月上旬)頃に、伸長、開花、受粉する期間である花芽の伸長・開花・受粉期間S16に入る。
そして、花芽の伸長・開花・受粉期間S16で受粉した後、新葉の生育期間及び果実の充実期間S14で果実が実り、当該果実は、秋期(9月頃)に収穫期間S17に入り収穫される。
図1の(a)に示した果樹の年間生長サイクルを、具体的に示すと、図1の(b)のように示すことができる。
図1の(b)では、(a)で示した新芽の形成期間S11、新葉の展開期間S13、及び花芽の形成期間S15を、それぞれ、新芽の形成期間A、新葉の展開期間B、花芽の形成期間Dで示している。
上述のように、新芽の形成期間Aで形成された新芽には、翌年である休眠期間S12の後、新葉の展開期間Bで新葉が展開する。そして、新葉の展開期間Bで展開された新葉は、新葉の生育期間及び果実の充実期間S14で生育していく。
この新葉の生育期間及び果実の充実期間S14のうち、特に、新葉の展開期間S13後、秋期の収穫期間S17までの間(5月中旬〜8月)は、光合成による栄養分生産期間Cであり、果樹は盛んに光合成をし、栄養分を生産していく。
また、新葉の生育期間及び果実の充実期間S14のうち、栄養分生産期間Cの後、休眠期間S12が始まるまでの間(9月、10月頃)は花芽の伸長・開花期間E1となり花芽が充実していく。なお、花が収穫される植物を栽培している場合は、この花芽の伸長・開花期間E1の後、花が収穫される。
そして、果樹は、花芽の伸長・開花期間E1の後、休眠期間S12に入り、生長が一旦抑制、もしくは停止する。そして果樹は、休眠期間S12が明けて春期(3月頃)に再び、花芽の伸長・開花期間E2となり、花芽が充実していく。
この花芽の伸長・開花期間E2の後、春期後半(4月、5月上旬頃)に受粉期間Fとなり、開花していた花が受粉する。
そして、受粉期間Fの後、秋期の収穫期間S17までの間(5月中旬〜8月頃)、果樹は果実の充実期間Gとなり、光合成により生成された栄養分を貯蔵し果実を充実させていく。そして、この果実の充実期間の後、当該期間に充実させた果実が、秋期(9月頃)の収穫期間S17に収穫される。このように果樹は、1年を1サイクルとして生長サイクルを繰り返していく。
なお、図1で示した期間は、大まかな期間であり、各期間は平行したり、重複したりする。
そして、本実施の形態では、この果樹の1年の生長サイクルのうち、新芽の形成期間S11・Aと、花芽の形成期間S15・Dにだけ、果樹にFR光を人工的に照射する。
換言すると、新芽の形成期間S11・A及び花芽の形成期間S15・Dに果樹に照射される光におけるFR光の比率を、それ以外の期間に果樹に照射する光における遠赤色光の比率より、人工的に多くする。
そして、新芽の形成期間S11・AでFR光が照射されることで翌年に形成及び展開された新芽が生育し、その年の花芽の形成期間S15・DでFR光が照射されて形成された花芽に、さらに翌年に実った果実が、その年の収穫期間S17で収穫される。
すなわち、収穫期間S17で収穫対象となる果実は、その収穫される年の前年に花芽の形成期間S15・DでFR光が照射されることで形成された花芽から開花した後に実った果実である。
このように、新芽の形成期間S11・A及び花芽の形成期間S15・Dに、FR光の比率が多い光を果樹に照射することで、新芽の形成期間S11・Aに形成される新芽、及び花芽の形成期間S15・Dに形成される花芽の形成速度や量を増加させることができる。この結果、当該新芽から展開される葉の量や、花芽の量を充実させることができるため、効率よく果実もしくは花を収穫することができる。
一方、新芽の形成期間S11・Aを過ぎ、休眠期間S12に入ると、新芽の形成期間S11・Aに人工的に多くしたFR光の比率を元に戻す。また、花芽の形成期間S15・Dを過ぎ、収穫期間S17に入ると、花芽の形成期間S15・Dに人工的に多くしたFR光の比率を元に戻す。
これにより、果樹の生育がばらついたり、また、新芽から展開される葉の量や、花芽の量が増えすぎることを抑制することができる。この結果、栄養分分散により収穫される果実の品質の低下を防止することができる。また、花を収穫対象とする場合は、花の品質の低下を防止することができる。
このように、上記構成によると、植物の生育のばらつきや品質劣化を抑制し、効率よく植物の果実又は花を収穫することができる。
以下、さらに、具体的に説明していく。
(人工光としてのFR光の照射期間について)
次に、図1〜図3を用いて、本実施の形態に係る植物の栽培方法における人工光としてのFR光の照射期間について説明する。
図1で表した果樹の生長サイクルを簡略化すると図2のように表すことができる。図2は、果樹の年間生長サイクルを簡易的に表す図である。なお、図2は、果樹の年間生長サイクルを大まかに表しており、各段階は平行して起きうる。
果樹は、(i)新芽の形成期間A→(ii)新葉の展開期間B→(iii)光合成による栄養分を生産する期間C→(iv)花芽の形成期間D→(v)花芽の伸長・開花期間E1・E2→(vi)受粉期間F→(vii)果実の充実期間Gの順に段階的に生長する。
果実を収穫する果樹の場合は、(vii)果実の充実期間Gの後に果実が収穫され、花を収穫する植物の場合は、(v)花芽の伸長・開花期間E1の後、又は花芽の伸長・開花期間E2の後に花が収穫される。
そして、本実施の形態に係る植物の栽培方法では、この果樹の生長サイクルのうち、(i)新芽の形成期間Aと、(iv)花芽の形成期間Dとにのみ、人工光であるFR光を、栽培している果樹に照射する。一方、この(i)新芽の形成期間A及び(iv)花芽の形成期間D以外の期間には、人工光であるFR光を、栽培している果樹に照射せず、通常通り太陽光だけで、当該果樹を栽培する。
なお、新芽の形成期間Aで、果樹に照射する光のうちのFR光の比率を増加させる方法は、上記のように太陽光に人工光としてのFR光を加える方法であってもよいし、太陽光をフィルターに通して得られるFR光だけを利用することでFR光の比率を増加させる方法であってもよい。
この新芽の形成期間Aは、樹体内で、葉及び枝となる組織、すなわち新芽が形成され始めてから、当該新芽が伸長を開始する直前までの期間であると表現することができる。この場合、新芽の形成期間Aは、休眠期間S12が始まるまでの期間である。
または、新芽の形成期間Aは、少なくとも、樹体内で、葉及び枝となる組織、すなわち新芽が形成され始めてから、その新芽が伸長を開始するまでの期間であると表現することもできる。この場合、新芽の形成期間Aは、休眠期間S12を含む期間である。
以下では説明の便宜上、前者の休眠期間S12が始まるまでの期間を新芽の形成期間Aとして説明する。
また、花芽の形成期間Dは、少なくとも、樹体内で、生長して花になる組織、すなわち花芽が形成され始めてから、その花芽が伸長を開始するまでの期間、すなわち分化するまでの期間を含む期間であると表現することもできる。
人工光であるFR光は、700nm〜800nmにピーク波長を有する光である。
この新芽の形成期間Aである秋期に形成される新芽は、生長して翌年の、果実充実期間に光合成する新葉となる。このため、この秋期の新芽の形成量が翌年に収穫される果実の品質及び収量を左右することになる。
また、花芽の形成期間Dである夏期に形成される花芽は、生長して翌年に収穫される果実を実らせる花となる。このため、この夏期の花芽の形成量が、翌年に収穫される果実の品質及び収量を左右することになる。
そこで、本実施の形態に係る栽培方法では、新芽の形成期間A及び花芽の形成期間Dに、果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くする。
このように、新芽の形成期間Aに果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くすることで、新芽の形成期間Aに形成される新芽の形成速度や形成量を増加させることができる。この結果、新芽の数や、新芽から展開される葉の量を充実させることができる。
そして、花芽の形成期間Dに果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くすることで、冬期の休眠期間までに花芽を充実させて、翌年の春期に伸長・開花する速度を向上させることができ、これにより、その年の秋期の果実の収量を向上させることができる。この結果、翌年に、効率よく果実を収穫することができる。
図3は、特許文献2に記載の栽培方法と、本実施の形態に係る栽培方法とで、FR光を照射する比率を増やす時期を対比する図である。
上述した特許文献2に記載の栽培方法を方法M0とし、本実施の形態に係る光照射方法を方法M1とし、両者を対比すると図3のように表すことができる。
特許文献2と、本実施の形態とでは、(i)新芽の形成期間→(ii)新葉の展開期間→(iii)光合成による栄養分生産期間→(iv)花芽の形成期間→(v)花芽の伸長・開花期間→(vi)受粉期間→(vii)果実の充実期間の順に生長していく植物を栽培対象としている。
図3のうち、「○」は人工光としてのFR光を対象植物に照射する期間である。一方、「×」は人工光としてのFR光を対象植物に照射しない期間である。
上述したように、方法M0では、(iv)花芽の形成期間より以前の(i)新芽の形成期間(ii)新葉の展開期間、及び(iii)光合成による栄養分生産期間に亘って、FR光を対象植物に照射している。
一方、本実施の形態に係る方法M1では、(i)新芽の形成期間Aを過ぎると、その新芽の形成期間Aに照射していた光と比べて、果樹に照射する光におけるFR光の比率を少なくする。すなわち、人工光としてのFR光を果樹に照射することを止め、果樹に照射する光のうちのFR光の比率を(i)新芽の形成期間A以前に戻す。
そして、方法M1では、(iv)花芽の形成期間Dが来ると、再び、果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くし、(iv)花芽の形成期間Dが過ぎると、再び、その(iv)花芽の形成期間Dに照射していた光と比べて、果樹に照射する光におけるFR光の比率を少なくする。すなわち、人工光としてのFR光を果樹に照射することを止め、果樹に照射する光のうちのFR光の比率を(iv)花芽の形成期間D以前に戻す。
このように、方法M1によると、必要な時期にだけFR光の比率を多くするため、人工光としてのFR光の照射により、新芽の形成を揃え、植物の生育のばらつきを抑えることができる。
すなわち、新芽の形成期間Aに集中的にFR光を照射することで新芽の形成が促進されるため、翌年に光合成を行い栄養分を生産するための新葉の生長が揃い、収穫物である果実に十分な栄養分を供給できる。また、花芽の形成期間Dにも集中的にFR光を照射することで、その翌年に、その花芽の開花後に実る果実の充実を必要な時期に一気にそろって行わせることができる。この結果、果実の収穫時期をコントロールすることができ、収穫量も増やすことができる。
加えて、新芽から展開される葉の量や、花芽から展開される花の数が増えすぎることを抑制することができる。すなわち、新葉の生育期間及び果実の充実期間S14全体にまんべんなく葉を生育させ、また、開花させ果実を充実させるのではなく、収穫対象となる果実を実らせるために開花させる花の量及び、その量の花を開花させるに必要な葉の量を絞ることで少なくする。つまり、果樹に、養分を、収穫対象となる果実の生育に集中して使わせる。この結果、栄養分分散により収穫される果実の品質の低下(すなわち、栄養分が分散されて、果実あたりの栄養分濃度がさがること)を防止することができる。
また、この新芽の形成期間Aとして、少なくとも、果樹の新芽となる組織が果樹の樹体内に形成されて、その新芽が伸長を開始するまでの期間を含む期間に、当該果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くする。
さらに、花芽の形成期間Dとして、少なくとも、花芽となる組織が果樹の樹体内に形成されて、その花芽が伸長を開始するまでの期間を含む期間に、当該果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くする。
この新芽や花芽が伸長を開始するまでの期間は、果樹の外からは、新芽や花芽の存在はほとんど、作業者によって視認されない期間である。
しかし、この期間に、特に、果樹に照射する光におけるFR光の比率を多くして、果樹に光を照射することで、後に伸長する新芽や花芽を、効率的に、形成速度や量を増加させることができる。
また、新芽の形成期間Aとして、果樹の新芽となる組織が果樹の樹体内に形成されてから、休眠期間S12までの期間に亘って、果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くするようにしてもよい。
果樹の休眠期間S12が始まるまでは、新芽が果樹の樹体内で形成され、幾らかの新芽が生長し、果樹外から視認できるようになる。この期間に、特に、果樹に照射する光におけるFR光の比率を選択的に多くすることで、効率的に、新芽の形成速度や量を増加させることができる。
また、果樹の1年の生長サイクルを通して盛んに光合成を行い新葉が生長していく期間である光合成による栄養分を生産する期間Cのうち、花芽の形成期間Dまでの期間には、新芽の形成期間Aに照射していた光や、新芽の形成期間Dに照射する光と比べて、果樹に照射する光におけるFR光の比率を少なくする。これにより、この時期の新芽の形成が抑制され、果樹の生育のばらつきを抑えることができる。これにより、上記植物を長期に亘って周年栽培することが可能となる。
さらに、本実施の形態では、1年を通して、新芽の形成期間Aと、花芽の形成期間Dとにのみ、果樹に照射する光におけるFR光の比率を、新芽の形成期間A及び花芽の形成期間D以外の期間より多くする。これにより、新芽と花芽の形成及び伸長速度の増加効果を得る期間を短くすることができ、新葉と果実の生育のばらつき抑制効果を高めることができる。
そして、この新葉の展開期間Bに、展開される新葉の数や、花芽の形成期間Dで形成される花芽の数が制限され、展開される新葉や収穫される果実へ栄養分を集中させることができ、品質の高い果実を収穫することができる。
新芽の形成期間Aや花芽の形成期間Dに果樹に照射する人工光としてのFR光は、一日のうち、日中に、太陽光に加えて果樹に照射し、太陽が沈む夜間は、新芽の形成期間Aや花芽の形成期間Dであっても、人工光としてのFR光は果樹に照射しないことが好ましい。
これにより、果樹の日長反応に影響を与えることなく、新葉や花芽の生育を揃えて果実の品質劣化の抑制効果を高めるためである。
なお、人工光としての青色光・赤色光を併用し、日長を一定に制御してもよい。この場合は、1日におけるFR光の照射タイミングも日中に限定されるものではない。
(栽培装置10)
次に、図4を用いて、上述した本実施の形態に係る植物の栽培方法の実行が可能な栽培装置について説明する。
図4は、本実施の形態に係る栽培装置1の構成を表す図である。
栽培装置1は、被覆資材2と、光源ユニット3と、電源5と、制御部6とを備えている。
栽培装置1は、太陽光と、人工光とを用いて複数の植物10を栽培するための装置である。
被覆資材2は、栽培中の複数の植物10に対する光量を調整したり、植物10に対して光を照射する光源4や光源ユニット3を固定したりするためのものである。被覆資材2は、複数の植物10を、ハウス状に覆っている。
被覆資材2の天井部や、周囲部には、取り外し可能な遮光部材が配されている。植物10の生育や収穫時期等に合せて、被覆資材2から遮光部材を取り外したり、取り付けたりすることで、被覆資材2を透過して植物10に照射される太陽光の量を調整する。
これは、植物10の品種によっては、光量を絞ることで、品質を向上させることができるためである。一例として、遮光部材として、合成樹脂製のネットや、藁、葦等を用いることができる。なお、遮光部材は、植物10の品種によって、適宜設ければよい。
光源ユニット3は、複数の光源4を支持したり、複数の光源4のそれぞれに電力を供給したりするユニットである。光源ユニット3は、複数の光源4を備えている。
光源ユニット3は、被覆資材2内の天井近傍に複数、互いに略平行となるように配されている。光源ユニット3は、被覆資材2の長手方向に延伸して複数並んで配されている。この長手方向に延伸する光源ユニット3に光源4が複数配されている。
光源ユニット3は、電源5と接続されており、電源5から複数の光源4へ、それぞれの光源4を発光させるための電力を受給する。
光源4は、700nm以上800nm以下に波長のピークを有するFR光を発光する光源である。光源4はLED(発光ダイオード)であることが好ましい。LEDは波長域が狭く、新芽や花芽の生長促進に必要な波長域だけを効率よく植物10に照射することができるためである。
光源4は、被覆資材2内の天井近傍に複数配されている。すなわち、複数の光源4は、被覆資材2内で栽培されている複数の植物10の上方に配されている。これにより、複数の植物10に均一に、十分な光量のFR光を供給することができる。
光源ユニット3は、光源4それぞれから出射されたFR光を効率よく、各植物10に照射するため、光ファイバー等を備えていてもよい。
電源5は、被覆資材2の外部に配されており、光源ユニット3に電力を供給するためのものである。
電源5は、制御部6から光源の点灯指示情報が送られてくると、光源ユニット3に電力を供給する。これにより、光源ユニット3はそれぞれの光源4をオン(点灯)する。一方、電源5は、制御部6から光源の消灯指示情報が送られてくると、光源4への電力の供給を停止する。これにより、光源ユニット3は光源4を非点灯、すなわちオフ(消灯)する。
制御部6は、光源ユニット3の光源4を点灯させるために点灯指示情報を電源5に出力したり、光源ユニット3の光源4を消灯させるために消灯指示情報を電源5に出力したりすることで、電源5の駆動を制御するための制御部である。制御部6と、電源5とは有線、もしくは無線で電気的に接続されている。
制御部6は、作業者に操作させることで、点灯指示情報・消灯指示情報を電源5に出力してもよいし、予め出力する時間や時期をデータとして記憶しておき、当該データに基づいて、予め設定された時間や時期になると、点灯指示情報・消灯指示情報を電源5に出力するようにしてもよい。
このように栽培装置1によると、制御部6は、新芽の形成期間Aが来ると、日中(日の出時間後)、電源5に、点灯指示情報を出力する。これにより、電源5は、日中、光源ユニット3に電力を供給し、光源4を点灯させる。光源4は、新芽の形成期間A又は花芽の形成期間Dの期間中は、日中、点灯することで植物10にFR光を照射する。
これにより、新芽の形成期間A及び花芽の形成期間Dでは、植物10に、太陽光に加え、人工光としてのFR光も照射されるため、植物10に照射する光におけるFR光の比率を多くすることができる。このため、新芽の形成期間Aに形成される新芽や、花芽の形成期間Dに形成される花芽の形成速度及び量を増加させることができる。この結果、当該新芽から展開される葉の量や花芽から展開される花の量を充実させることができるため、効率よく果実を収穫することができる。
一方、夜間(日の入り時間頃)になると、制御部6は、新芽の形成期間Aや花芽の形成期間Dであっても、電源5に、消灯指示情報を出力する。これにより、電源5は、夜間は、新芽の形成期間Aや花芽の形成期間Dであっても、光源ユニット3への電力の供給を停止し、光源4を非点灯とする。すなわち、新芽の形成期間A又は花芽の形成期間Dであっても、夜間は、人工光としてのFR光は植物10に照射しない。
また、新芽の形成期間Aもしくは花芽の形成期間Dを過ぎると、制御部6は、昼夜を問わず、電源5に、点灯指示情報を出力しない。これにより、電源5は、日中も、光源ユニット3に電力を供給せず、光源4は非点灯とされたままとなる。
これにより、新芽の形成期間A又は花芽の形成期間Dを過ぎると、新芽の形成期間A又は花芽の形成期間Dに照射していた光と比べて、植物10に照射する光におけるFR光の比率を少なくことができる。すなわち、植物10には、人工光としてのFR光は照射されず、日中に太陽光だけが照射される。
このため、植物10の新芽から展開される葉の量が増えすぎることを抑制することができる。この結果、生育のばらつきを抑制し栄養分分散により収穫される葉の品質の低下を防止することができる。
このように、栽培装置1によると、植物10の生育のばらつきや品質劣化を抑制し、効率よく植物10の新葉を収穫することができる。
また、新芽の形成期間A及び花芽の形成期間Dに照射するFR光の光量は、10μmol・m−2・s−1以上1000μmol・m−2・s−1以下程度とすることが好ましい。
これは、太陽光(南中時)の近赤外光(700nm〜800nm)の光量を、本発明者らが測定したところ、屋外では約700μmol・m−2・s−1程度であり、栽培植物の群落内では約50μmol・m−2・s−1程度であったためである。
このため、FR光の光量は、10μmol・m−2・s−1以上とすることで、FR光照射による、新芽及び花芽形成の促進、及び新芽及び花芽の増加効果を得ることができる。
また、FR光の光量を上げるには、多大に電力が必要となる。このため、FR光の光量を1000μmol・m−2・s−1以下とすることで、生産コストが多大に増加することを防止することができる。
すなわち、新芽の形成期間A及び花芽の形成期間Dに照射するFR光の光量は、10μmol・m−2・s−1以下程度とすることで、FR光照射による、新芽及び花芽形成の促進、かつ、新芽及び花芽の増加効果を得つつ、多大な生産コスト増大を防止することができる。
また、栽培装置1内に、FR光量を検知するセンサを設けてもよい。さらに、予めFR光の光量の基準値を設定しておき、曇天などで、このセンサ測定した太陽光中のFR光の光量が、予め設定した基準値に満たない場合は、制御部6は、新芽の形成期間及び花芽の形成期間中のFR光の光量を多くするように光源ユニット3を制御するようにしてもよい。
(各品種のFR光の照射時期の一例について)
次に、図5を用いて、果実を収穫する果樹に対して、人工光としてのFR光を照射する時期について説明する。
図5は、果実を収穫対象とする植物の収穫期間と、新芽及び花芽の形成期間とを表す図である。各品種の植物に対して、上述した果実と同様に、新芽の形成期間及び花芽の形成期間だけに、人工光としてのFR光を照射する。
図5に示すように、新芽の形成期間及び花芽の形成期間や、収穫時期は、植物によって異なる。
ブドウは、約9月下旬から10月にかけて新芽の形成期間となり、この期間にFR光を重点的に照射する。これにより、当該FR光が照射されることで新芽の生長が促進され、当該新芽から新葉が展開する。さらに、5月下旬から6月にかけて花芽の形成期間となり、この期間にもFR光を重点的に照射する。これにより当該FR光が照射されることで花芽の生長が促進される。そしてこの花芽が分化し、翌年の9月から10月にかけて実る果実が収穫される。
リンゴは、約9月下旬から10月にかけて新芽の形成期間となり、この期間にFR光を重点的に照射する。これにより、当該FR光が照射されることで新芽の生長が促進され、当該新芽から新葉が展開する。さらに、7月から8月上旬にかけて花芽の形成期間となり、この期間にもFR光を重点的に照射する。これにより当該FR光が照射されることで花芽の生長が促進される。そしてこの花芽が分化し、翌年の9月から12月上旬頃にかけて実る果実が収穫される。
ナシは、約9月下旬から10月にかけて新芽の形成期間となり、この期間にFR光を重点的に照射する。これにより、当該FR光が照射されることで新芽の生長が促進され、当該新芽から新葉が展開する。さらに、6月下旬から8月上旬にかけて花芽の形成期間となり、この期間にもFR光を重点的に照射する。これにより当該FR光が照射されることで花芽の生長が促進される。そしてこの花芽が分化し、翌年の9月下旬から12月上旬頃にかけて実る果実が収穫される。
カキは、約9月下旬から10月にかけて新芽の形成期間となり、この期間にFR光を重点的に照射する。これにより、当該FR光が照射されることで新芽の生長が促進され、当該新芽から新葉が展開する。さらに、7月から8月上旬にかけて花芽の形成期間となり、この期間にもFR光を重点的に照射する。これにより当該FR光が照射されることで花芽の生長が促進される。そしてこの花芽が分化し、翌年の10月下旬から12月上旬頃にかけて実る果実が収穫される。
ウンシュウミカンは、約9月下旬から10月にかけて新芽の形成期間となり、この期間にFR光を重点的に照射する。これにより、当該FR光が照射されることで新芽の生長が促進され、当該新芽から新葉が展開する。さらに、12月下旬から翌年の3月上旬にかけて花芽の形成期間となり、この期間にもFR光を重点的に照射する。これにより当該FR光が照射されることで花芽の生長が促進される。そしてこの花芽が分化し、10月から12月にかけて実る果実が収穫される。
このように、各植物に応じて新芽や花芽の形成期間を把握しておき、この新芽や花芽の形成期間にだけに人工光としてのFR光を照射することで、各植物毎に、新芽及びその新芽から展開される新葉の生長速度や、花芽の生長速度を制御することができる。
この結果、植物の生育がばらついたり、品質劣化をさせたりすることなく、植物毎に、効率よく花もしくは果実の収穫をすることができる。
なお、図1や図5に示した、各植物の年間生長サイクルは一例である。実際には栽培する植物の種類、品種、栽培環境などによって大きく変化する。
(収穫時期からFR光照射時期を算出する方法について)
次に、図6を用いて、花もしくは果実の収穫時期から、新芽及び花芽の形成期間を逆算する方法について説明する。
図6は、ブドウにおける、果実の収穫時期からFR光の照射期間を逆算する場合を説明する図である。果実の収穫時期から、おおよその新芽や花芽の形成期間を逆算することができる。以下では、一例としてブドウの場合について説明する。
多くの植物は冬期に12〜16週間の休眠に入り、その間は新芽や花芽の伸長は停止する。休眠を16週間と仮定すると、ブドウは、9月頃の収穫期から約62週前から6週間が花芽の形成期間となり、9月頃の収穫期から約46週前から6週間が新芽の形成期間となる。すなわち、FR光を果樹に照射すべき期間となる。
また、例えば、茶樹の場合、芽がほとんど見られない状態の茶樹にFR光の照射を開始すると、約2週間程後に、新芽の伸長を確認することができる。そして、この後、新芽から新葉が展開していき、約4〜6週間程度で、新葉の収穫が可能な状態となる。
このように、収穫時期から、逆算してFR光を照射すべき時期である新芽及び花芽の形成期間を算出することができる。
上述したように、新芽の形成期間は、樹体内で新芽の組織が形成され、伸長を開始するまでの期間を少なくとも含む期間であると表現することができる。また、花芽の形成期間は、樹体内で花芽の組織が形成され、伸長を開始するまでの期間を少なくとも含む期間であると表現することができる。
すなわち、新芽の形成期間や花芽の形成期間は、新芽もしくは花芽が伸長する前の期間を含み、当該期間は、実際には、まだ、作業者の目に、新芽もしくは花芽が見えない期間である。このため、周年の中で、予め、新芽の形成期間及び花芽の形成期間が何時であるかを、植物毎に把握しておくことで、栽培している植物の新芽の形成期間及び花芽の形成期間に、有効に人工光としてのFR光を照射することができる。
〔実施の形態2〕
次に、図4、図7を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、太陽光を使用せず、完全人工光だけで果実を収穫する果樹を周年栽培する場合の栽培サイクルについて説明する。
栽培装置1は、図4を用いて実施の形態1で説明したものから、被覆資材2を、完全に太陽光を遮光するように構成する。そして、光源ユニット3は、FR光を発光するLEDだけでなく、青色光を発光するLED(発光ダイオード)と、赤色光を発光するLED(発光ダイオード)とからなる光源4を備えている。本実施の形態では植物10は果樹である。なお、被覆資材2は太陽光を遮る建物で代用してもよい。
制御部6は、植物10の新芽の形成期間及び花芽の形成期間以外の期間には、日中、青色光と、赤色光とからなる混合光を、植物10に照射するように、電源5を通じて光源ユニット3を制御する。
これにより、光源ユニット3は、植物10の新芽の形成期間及び花芽の形成期間以外の期間では、日中、太陽光では無く、青色光と、赤色光とからなる混合光を、植物10に照射する。この青色光と、赤色光とは、主に、果樹に光合成をさせるための光として果樹に作用する。
そして、制御部6は、植物10の新芽の形成期間及び花芽の形成期間には、日中、青色光と、赤色光とに加えFR光とからなる混合光を、植物10に照射するように、電源5を通じて光源ユニット3を制御する。
これにより、光源ユニット3は、植物10の新芽の形成期間及び花芽の形成期間では、日中、太陽光では無く、青色光と、赤色光と、FR光とからなる混合光を、植物10に照射する。
ここで、新芽の形成期間及び花芽の形成期間の光源4の各光量の一例は以下の通りである。なお、単位は何れも[μmol・m−2・s−1]である。
青色光(波長400nm〜500nm):50
赤色光(波長600nm〜700nm):250
FR光(波長700〜800nm):100
新芽の形成期間及び花芽の形成期間以外の光源4の各光量の一例は以下の通りである。
青色光(波長400nm〜500nm):50
赤色光(波長600nm〜700nm):250
FR光(波長700〜800nm):0
なお、夜間は、新芽の形成期間及び花芽の形成期間であるか否かに関わらず、制御部6は各光源4を消灯させる。
図7は、人工光で果樹を栽培する際の、果樹の年間生長サイクルと、遠赤色(FR)光照射時期とを表す図である。上述した栽培装置1を用いることで、図7に示すような果樹の年間に次々と複数の生長サイクル(周年栽培)を実現することが可能である。
まず、植物10は、新芽が伸長し新葉が展開していく新葉の展開期間S1に入り、この後、展開した新葉が生育し、光合成を行うことで果実が充実していく新葉の生育及び果実の充実期間S2に入る。そして、この新葉の生長及び果実の充実期間S2の後、植物10は、新葉・新芽及び花芽等の生長が止まる休眠期間S3に入る。これが植物10の生長サイクルの1サイクルである。
この新葉の展開期間S1と並行して、前年に分化した花芽の伸長・開花・受粉期間S21に入る。
そして、新葉の生長期間及び果実の充実期間S2中に、植物10は、順に花芽の形成期間22、収穫期間に入り果実が収穫される。そして、休眠期間S3の直前に新芽の形成期間S23に入る。この花芽の形成期間22や、新芽の形成期間S23は、上述したように、予め、収穫期間から逆算して把握しておく。そして、この花芽の形成期間22及び新芽の形成期間S23に、重点的に人工光としてのFR光を照射する。
この収穫期間で収穫対象となる果実は、前年の花芽の展開期間S22でFR光が照射されてその花芽から開花後に実った果実である。
そして休眠期間S3の後は、再び、植物10は、順に新葉の展開期間、新葉の生長及び果実の充実期間、収穫期間、及び休眠期間を経ていき、生長サイクルを繰り返す。これにより、植物10は周年栽培される。
この新葉の展開期間S1から花芽の形成期間22の直前まで、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、赤色光と、青色光と、植物10に照射させ、FR光は植物10に照射させない。
これにより、光源ユニット3は、青色光を発光するLEDと、赤色光を発光するLEDとを点灯させ、FR光を発光するLEDは点灯しない。これにより、植物10の新葉や花芽の生長速度のばらつきを抑え、収穫される果実の品質低下を防止することができる。
そして、花芽の形成期間S22が来ると、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、日中は、赤色光及び青色光に加え、さらにFR光を、植物10に照射させる。これにより、光源ユニット3は、青色光を発光するLEDと、赤色光を発光するLEDとを点灯させると共に、FR光を発光するLEDも点灯させる。これにより、植物10に、赤色光及び青色光に、FR光も加えた混合光を照射する。この結果、この花芽の形成期間S22で形成される花芽の形成速度を向上させることができる。
そして、花芽の形成期間S22が過ぎると、収穫期間を経て、新芽の形成期間S23が来るまでの期間、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、赤色光と、青色光と、植物10に照射させ、FR光は植物10に照射させない。
これにより、光源ユニット3は、青色光を発光するLEDと、赤色光を発光するLEDとを点灯させ、FR光を発光するLEDは点灯しない。これにより、この間の植物10の新葉及び花芽の生長速度のばらつきを抑え、収穫される果実の品質低下を防止することができる。
そして、新芽の形成期間S23が来ると、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、日中は、赤色光及び青色光に加え、さらにFR光を、植物10に照射させる。これにより、光源ユニット3は、青色光を発光するLEDと、赤色光を発光するLEDとを点灯させると共に、FR光を発光するLEDも点灯させる。これにより、植物10に、赤色光及び青色光に、FR光も加えた混合光を照射する。この結果、この新芽の形成期間S23で形成される新芽の形成速度を向上させることができる。
そして、新芽の形成期間S23が過ぎ休眠期間S3が来ると、次の、新芽の形成期間が来るまでの期間、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、赤色光と、青色光と、植物10に照射させ、FR光は植物10に照射させない。
これにより、光源ユニット3は、青色光を発光するLEDと、赤色光を発光するLEDとを点灯させ、FR光を発光するLEDは点灯しない。これにより、この間の植物10の新葉の生長速度のばらつきを抑え、果実の品質低下を防止することができる。以降、同様にして、制御部6は、新芽の形成期間及び花芽の形成期間の間だけ、FR光は植物10に照射させるように光源4を制御する。
なお、夜間は、新芽の形成期間及び花芽の形成期間であっても、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、光源4を消灯させる。これにより、光源ユニット3は、夜間は、青色光・赤色光・FR光を発光するLEDを消灯する。
このように、本実施の形態に係る栽培装置1は、光源4として、FR光を発光するLEDと、青色光を発光するLEDと、赤色光を発光するLEDとを備えている。LEDは、他の光源と比べて、波長域が狭いため、植物10の栽培に必要な波長を効率よく植物10に照射することができる。また、栽培装置1は、FR光を発光するLED以外に、青色光を発光するLEDと、赤色光を発光するLEDとを備えているため、太陽光を用いず、人工光のみで植物10を栽培することができ、天候や季節に左右されず、安定して植物10を周年栽培することができる。
また、果実の収穫時期及び花芽の形成期間を見越してFR光の照射時期を決定することで、植物10の生育状態を最適化することができる。すなわち、植物10の果実の収穫時期から逆算した時期にFR光を集中的に照射することで、植物10の1回の生長サイクルが1年に限定されず人為的に制御することが可能となる。また、天候に左右されず、効率よく果実の収穫をすることができる。
特に、新葉の生長期間及び果実の充実期間S2は、植物10の生長サイクルのうち、盛んに光合成を行い新葉が生長し、また果実が充実していく期間である。このため、特に、新葉の生長期間及び果実の充実期間S2の一部期間である花芽の形成期間S22までの期間及び花芽の形成期間S22経過後、新芽の形成期間S23までの期間、花芽の形成期間S22及び新芽の形成期間S23に照射する光と比べて、果樹に照射する光におけるFR光の比率を少なくすることで、植物10の新葉や花芽の生長速度のばらつきを抑え、収穫する果実の品質低下を防止する効果を高めることができる。
なお、図7で示した各期間の長さや、休眠期間の要否は、栽培する果樹の種類によって異なる。
〔実施の形態3〕
次に、図8を用いて本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態では、太陽光を使用せず、完全人工光だけで花を収穫する花卉を周年栽培する場合の栽培サイクルについて説明する。
栽培装置1は、実施の形態2で説明したものと同様である。本実施の形態では植物10は花卉である。
図8は、花卉を周年栽培する際の、花卉の年間生長サイクルと、遠赤色(FR)光照射時期とを表す図である。
植物10は、順に、新葉の展開期間S101、新葉の生長期間S102、休眠期間S103、新葉の展開期間S104、新葉の生長期間S105、休眠期間S106・・・と生長段階が進んでいく。また、新葉の展開期間S101・S104の初期の期間が花芽の形成期間S111・S141となる。この花芽の形成期間S111・S141経過後、新葉の展開期間S101・S104後期から新葉の生長期間S102・S105の前期にかけて花芽の伸長・開花期間S112となる。そして、この花芽の伸長・開花期間S112の後、開花した花が収穫される収穫期間となる。この収穫期間の後、新葉の生長期間S102・S105の後期であって、休眠期間S103・S106の直前期が新芽の形成期間S121・S151となる。そして新芽の形成期間S121で形成された新芽に、休眠期間S103経過後、新葉の展開期間で、新葉が展開していく。そして、その新葉が新葉の生長期間で生長し、再び休眠期間に入る。以降、繰り返すことで植物10は生長サイクルを繰り返し、周年栽培される。
この生長サイクルのうち、花芽の形成期間S111・S141・・・及び新芽の形成期間S121・S151・・に、人工光としての光源4による青色光・赤色光に加え、FR光を照射する。
そして、花芽の形成期間S111・S141・・・及び、新芽の形成期間S121・S151・・・以外の期間には、植物10に、人工光としての光源4による青色光・赤色光を照射し、FR光は照射しない。
制御部6は、花芽の形成期間S111・S141が来ると、電源5を通じて、光源ユニット3に、青色光・赤色光・FR光を植物10に照射させる。これにより、光源ユニット3は、青色光・赤色光・FR光を発光するLEDを点灯させ、青色光・赤色光・FR光を植物10に照射する。
そして、花芽の形成期間S111・S141が過ぎ花芽の伸長開花期間S112・S142が来ると、新葉の形成期間S121・S151が来るまで、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、青色光と、赤色光とを植物10に照射させる。これにより、光源ユニット3は、青色光・赤色光を発光するLEDを点灯させ、青色光・赤色光を植物10に照射する。
そして、新葉の形成期間S121・S151が来ると、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、青色光・赤色光・FR光を植物10に照射させる。これにより、光源ユニット3は、青色光・赤色光・FR光を発光するLEDを点灯させ、青色光・赤色光と共にFR光を植物10に照射する。
そして、制御部6は、新葉の形成期間S121・S151が過ぎ、休眠期間S103・S106が来ると、電源5を通じて、光源ユニット3に、FR光の植物10への照射を停止させる。これにより、光源ユニット3は、FR光を発光するLEDを消灯させ、青色光・赤色光を植物10に照射する。
なお、夜間は、制御部6は、電源5を通じて、光源ユニット3に、光源4を消灯させる。これにより、光源ユニット3は、夜間は、青色光・赤色光・FR光を発光するLEDを消灯する。
このように本実施の形態に係る栽培方法によると、花芽の形成期間S111・S141・・・と、新芽の形成期間S121・S151・・・には、植物10に照射する光におけるFR光の比率を多くし、花芽の形成期間S111・S141・・・と、新芽の形成期間S121・S151・・・とを過ぎると、花芽の形成期間S111・S141・・・と、新芽の形成期間S121・S151・・・とに照射していた光と比べて、植物10に照射する光におけるFR光の比率を少なくする。
これにり、植物10の生育のばらつきや品質劣化を抑制し、効率よく花を収穫することができる。
特に、新葉の生長期間S102・S105は、植物10の生長サイクルのうち、盛んに光合成を行い新葉が生長していく期間である。このため、特に、新葉の生長期間S102・S105のうち新芽の形成期間S121・S151までの期間で、新芽の形成期間S121・S151に照射する光と比べて、植物10に照射する光におけるFR光の比率を少なくすることで、植物10の新葉の生長速度のばらつきを抑え、収穫する花の品質低下を防止する効果を高めることができる。
〔実施の形態4〕
次に、図9を用いて、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る栽培装置11の構成を表す図である。
栽培装置11は、栽培装置1の光源ユニット3に替えて、光源ユニット30を備えている点で、栽培装置1と相違する。栽培装置11の他の構成は栽培装置1と同様である。
栽培装置11は、被覆資材2と、光源ユニット30と、電源5と、制御部6とを備えている。
光源ユニット30は、複数の光源4と、支持柱32と、複数の導光部材31とを備えている。
支持柱32の一方の端部は電源5と接続されている。支持柱32は、被覆資材2の長手方向に延伸して被覆資材2内に配されている。複数の光源4は、この支持柱32に、支持柱32の延伸方向に並んで配されている。
複数の導光部材31は互いに略平行に、支持柱32の延伸方向に沿って並んで配されている。複数の導光部材31は、一方の端部が支持柱32に接続されており、支持柱32に配された光源4からの光を、導光可能となっている。複数の導光部材31それぞれは、一方の端部から、被覆資材2の天井に沿う形状に延伸して配されている。
導光部材31は、光を導光する材質からなり、例えば、導光棒や光ファイバー等から構成されている。
栽培装置1では、被覆資材2内の天井近傍に複数の光源4を並べて配していたため、十分な光量を供給できるものの、各光源4は発熱する。熱に弱い植物を栽培する場合は、この光源4からの発熱によって、植物の生育が阻害される場合がある。
一方、栽培装置11によると、植物10を覆って配されている複数の導光部材31を備え、光源4は、複数の導光部材31にFR光を導光させて、当該FR光を植物10に照射する。このため、熱源としての光源4を、植物から離して設置することができ、光源4による発熱の影響が、植物10に及ぶことを防止することができる。これにより、熱に弱い植物でも栽培が可能であり、栽培装置11は、光量は栽培装置1より少なくなるものの汎用性が広い。
〔実施例〕
次に、図10〜図11を用いて、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、人工光としてのFR光を照射した区の茶樹と、人工光としての茶樹を照射しなかった区の茶樹とに分け、それぞれの茶樹の生育の違いを観察した。
両区の茶樹とも、完全人工光で栽培し、人工気象器を用いて日長は明期12時間/暗期12時間とし、栽培室内の室温は明期25℃/暗期15℃で栽培を行った。栽培方法は水耕栽培で、培養液は非特許文献に記載の組成のものを用いた。
両区とも光量は、光合成有効光量子束密度(PPFD)が300〜500[μmol・m−2・s−1]の範囲内となるように制御した。
そして、新芽の形成期間(図7を用いて説明した果樹の年間生長サイクルでいうところの新芽の形成期間S22に対応する期間)に入ると、両区のうち一方の区にだけ人工光としてのFR光を照射した。
図10は、FR光を照射した茶樹へのFR光照射時の光源のスペクトルを表す図である。図10では縦軸が光量、横軸が波長を表している。
図10に示すように、FR光を照射した区では、各波長のうち、FR光領域にピーク波長を有する人工光を茶樹に照射した。
完全人工光で栽培した期間のうち、FR光を加えた期間における各波長の光量の一例は以下の通りである。何れも単位は[μmol・m−2・s−1]である。
青色光(波長400nm〜500nm):50
赤色光(波長600nm〜700nm):250
FR光(波長700〜800nm):100
また、完全人工光で栽培した期間のうち、FR光を加え無かった期間における各波長の光量の一例は以下の通りである。何れも単位は[μmol・m−2・s−1]である。なおこの光量は両区とも同様である。
青色光(波長400nm〜500nm):50
赤色光(波長600nm〜700nm):250
FR光(波長700〜800nm):0
図11は、FR光照射有無による茶樹の生育の様子を表す図である。
図11のうち、(a)〜(c)は、人工光としてのFR光を照射した区の茶樹の生育の様子を表す図である。一方、図11のうち、(d)〜(f)は、人工光としてのFR光を照射しなかった区の茶樹の生育の様子を表す図である。
図11の(a)〜(c)のうち、新芽の形成期間(図7の新芽の形成期間S22に対応する期間)に入り人工光としてのFR光の照射を開始してから、図11の(a)は18日経過後の茶樹の様子を表し、図11の(b)は25日経過後の茶樹の様子を表し、図11の(c)は36日経過後の茶樹の様子を表している。
一方、図11の(d)〜(f)のうち、新芽の形成期間(図7の新芽の形成期間S22に対応する期間。但しFR光は照射しない)に入り、図11の(d)は17日経過後の茶樹の様子を表し、図11の(e)は27日経過後の茶樹の様子を表し、図11の(e)は38日経過後の茶樹の様子を表している。
図11の(a)〜(c)に示すように、FR光を照射した区の茶樹は、上記新芽の形成期間に入ってから(すなわちFR光の照射を開始してから)2週間経過後には新芽の生育が確認された。そして、その後、新葉は順調に伸長し、FR光を照射してから(すなわち上記新芽の形成期間に入ってから)5週間経過後には収穫可能な新葉の量となった。
一方、図11の(d)〜(f)に示すように、FR光を照射しなかった区の茶樹は、上記新芽の形成期間に入ってから5週間経過しても収穫可能な新葉の量とならなかった。
このように、FR光の照射による新葉の生長促進効果を確認することができた。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。