図1はこの発明にかかる剥離装置の一実施形態を示す斜視図である。各図における方向を統一的に示すために、図1右下に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面、Z軸が鉛直軸を表す。より詳しくは、(+Z)方向が鉛直上向き方向を表している。
この剥離装置1は、主面同士が互いに密着した状態で搬入される2枚の板状体を剥離させるための装置である。例えばガラス基板や半導体基板等の基板の表面に所定のパターンを形成するパターン形成プロセスの一部において用いられる。より具体的には、このパターン形成プロセスでは、被転写体である基板に転写すべきパターンを一時的に担持する担持体としてのブランケット表面にパターン形成材料を均一に塗布し(塗布工程)、パターン形状に応じて表面加工された版をブランケット上の塗布層に押し当てることによって塗布層をパターニングし(パターニング工程)、こうしてパターンが形成されたブランケットを基板に密着させることで(転写工程)、パターンをブランケットから基板に最終転写する。
このとき、パターニング工程において密着された版とブランケットとの間、または転写工程において密着された基板とブランケットとの間を離間させる目的のために、本装置を好適に適用することが可能である。もちろんこれらの両方に用いられてもよく、これ以外の用途で用いられても構わない。例えば担持体に担持された薄膜を基板に転写する際の剥離プロセスにも適用することができる。
この剥離装置1は、筺体に取り付けられたメインフレーム11の上にステージブロック3および上部吸着ブロック5がそれぞれ固定された構造を有している。図1では装置の内部構造を示すために筐体の図示を省略している。また、これらの各ブロックの他に、この剥離装置1は後述する制御ユニット70(図10)を備えている。
ステージブロック3は、版または基板とブランケットとが密着されてなる密着体(以下、「ワーク」という)を載置するためのステージ30を有しており、ステージ30は、上面が略水平の平面となった水平ステージ部31と、上面が水平面に対して数度(例えば2度程度)の傾きを有する平面となったテーパーステージ部32とを備えている。ステージ30のテーパーステージ部32側、すなわち(−Y)側の端部近傍には初期剥離ユニット33が設けられている。また、水平ステージ部31を跨ぐようにローラユニット34が設けられる。
一方、上部吸着ブロック5は、メインフレーム11から立設されるとともにステージブロック3の上部を覆うように設けられた支持フレーム50と、該支持フレーム50に取り付けられた第1吸着ユニット51、第2吸着ユニット52、第3吸着ユニット53および第4吸着ユニット54とを備えている。これらの吸着ユニット51〜54は(+Y)方向に順番に並べられている。
図2はこの剥離装置の主要構成を示す斜視図である。より具体的には、図2は、剥離装置1の各構成のうちステージ30、ローラユニット34および第2吸着ユニット52の構造を示している。ステージ30は、上面310が略水平面となった水平ステージ部31と上面320がテーパー面となったテーパーステージ部32とを備えている。水平ステージ部31の上面310は載置されるワークの平面サイズより少し大きい平面サイズを有している。
テーパーステージ部32は水平ステージ部31の(−Y)側端部に密着して設けられており、その上面320は、水平ステージ部31と接する部分では水平ステージ部31の上面310と同じ高さ(Z方向位置)に位置する一方、水平ステージ部31から(−Y)方向に離れるにつれて下方、つまり(−Z)方向へ後退している。したがって、ステージ30全体では、水平ステージ部31の上面310の水平面とテーパーステージ部32の上面320のテーパー面とが連続しており、それらが接続する稜線部EはX方向に延びる直線状となっている。
また、水平ステージ部31の上面310には格子状の溝が刻設されている。より具体的には、水平ステージ部31の上面310の中央部に格子状の溝311が設けられるとともに、該溝311が形成された領域を取り囲むように、矩形のうちテーパーステージ部32側の1辺を除いた概略コの字型となるように、溝312が水平ステージ部31の上面310周縁部に設けられている。これらの溝311,312は制御バルブを介して後述する負圧供給部704(図10)に接続されており、負圧が供給されることで、ステージ30に載置されるワークを吸着保持する吸着溝としての機能を有する。2種類の溝311,312はステージ上では繋がっておらず、また互いに独立した制御バルブを介して負圧供給部704に接続されているので、両方の溝を使用した吸着の他に、一方の溝のみ使用した吸着も可能となっている。
このように構成されたステージ30を跨ぐように、ローラユニット34が設けられる。具体的には、水平ステージ部31のX方向両端部に沿って、1対のガイドレール351,352がY方向に延設されており、これらのガイドレール351,352はメインフレーム11に固定されている。そして、ガイドレール351,352に対し摺動自在にローラユニット34が取り付けられている。
ローラユニット34は、ガイドレール351,352とそれぞれ摺動自在に係合するスライダ341,342を備えており、これらのスライダ341,342を繋ぐように、ステージ30上部を跨いでX方向に延設された下部アングル343が設けられている。下部アングル343には適宜の昇降機構344を介して上部アングル345が昇降自在に取り付けられている。そして、上部アングル345に対して、X方向に延設された円柱状の剥離ローラ340が回転自在に取り付けられる。
上部アングル345が昇降機構344により下方、つまり(−Z)方向に下降されると、ステージ30に載置されたワークの上面に剥離ローラ340の下面が当接する。一方、上部アングル345が昇降機構344により上方、つまり(+Z)方向の位置に位置決めされた状態では、剥離ローラ340はワークの上面から上方に離間した状態となる。上部アングル345には、剥離ローラ340の撓みを抑制するためのバックアップローラ346が回転自在に取り付けられるとともに、上部アングル345自体の撓みを防止するためのリブが適宜設けられる。剥離ローラ340およびバックアップローラ346は駆動源を有しておらず、これらは自由回転する。
ローラユニット34は、メインフレーム11に取り付けられたモータ353によりY方向に移動可能となっている。より具体的には、下部アングル343が、モータ353の回転運動を直線運動に変換する変換機構としての例えばボールねじ機構354に連結されており、モータ353が回転すると下部アングル343がガイドレール351,352に沿ってY方向に移動し、これによりローラユニット34がY方向に移動する。ローラユニット34の移動に伴う剥離ローラ340の可動範囲は、(−Y)方向には水平ステージ部31の(−Y)側端部の近傍まで、(+Y)方向には水平ステージ部31の(+Y)側端部よりも外側、つまりさらに(+Y)側へ進んだ位置までとされる。
次に第2吸着ユニット52の構成について説明する。なお、第1ないし第4吸着ユニット51〜54はいずれも同一構造を有しており、ここでは代表的に第2吸着ユニット52の構造について説明する。第2吸着ユニット52は、X方向に延設されて支持フレーム50に固定される梁部材521を有しており、該梁部材521には鉛直下向き、つまり(−Z)方向に延びる1対の柱部材522,523がX方向に互いに位置を異ならせて取り付けられている。柱部材522,523には図では隠れているガイドレールを介してプレート部材524が昇降自在に取り付けられており、プレート部材524はモータおよび変換機構(例えばボールねじ機構)からなる昇降機構525により昇降駆動される。
プレート部材524の下部にはX方向に延びる棒状のパッド支持部材526が取り付けられており、該パッド支持部材526の下面に複数の吸着パッド527がX方向に等間隔で配列されている。図2では第2吸着ユニット52を実際の位置よりも上方に移動させた状態を示しているが、昇降機構525によりプレート部材524が下方へ移動されたとき、吸着パッド527が水平ステージ部31の上面310にごく近接した位置まで下降することができ、ステージ30にワークが載置された状態では該ワークの上面に当接する。各吸着パッド527には後述する負圧供給部704からの負圧が付与されて、ワークの上面が吸着保持される。
図3は初期剥離ユニットの構造および各部の位置関係を示す側面図である。まず図1および図3を参照しながら初期剥離ユニット33の構造を説明する。初期剥離ユニット33は、テーパーステージ部32の上方でX方向に延設された棒状の押圧部材331を有しており、押圧部材331は支持アーム332により支持されている。支持アーム332は鉛直方向に延設されるガイドレール333を介して柱部材334に昇降自在に取り付けられており、昇降機構335の作動により、支持アーム332が柱部材334に対して上下動する。柱部材334はメインフレーム11に取り付けられたベース部336により支持されるが、位置調整機構337によりベース部336上での柱部材334のY方向位置が所定の範囲内で調整可能となっている。
水平ステージ部31およびテーパーステージ部32により構成されるステージ30に対して、剥離対象物たるワークWKが載置される。前述したパターニング工程におけるワークは版とブランケットとがパターン形成材料の薄膜を介して密着した密着体である。一方、転写工程におけるワークは基板とブランケットとがパターニングされたパターンを介して密着した密着体である。以下では転写工程における基板SBとブランケットBLとの密着体をワークWKとした場合の剥離装置1の剥離動作について説明するが、版とブランケットとによる密着体をワークとする場合でも同様の方法によって剥離を行うことが可能である。
ワークWKにおいて、基板SBよりもブランケットBLの方が大きい平面サイズを有しているものとする。基板SBはブランケットBLの略中央部に密着される。ワークWKはブランケットBLを下、基板SBを上にしてステージ30に載置される。このとき、図3に示すように、ワークWKのうち基板SBの(−Y)側端部が水平ステージ部31とテーパーステージ部32との境界の稜線部Eの略上方、より詳しくは稜線部Eよりも僅かに(−Y)側にずれた位置となるように、ワークWKがステージ30に載置される。したがって、(−Y)方向において基板SBよりも外側のブランケットBLはテーパーステージ部32の上にせり出すように配置され、ブランケットBLの下面とテーパーステージ部32の上面320との間には隙間が生じる。ブランケットBLの下面とテーパーステージ部32の上面320とがなす角θはテーパーステージ部32のテーパー角と同じ数度(この実施形態では2度)程度である。
水平ステージ部31には吸着溝311,312が設けられており、ブランケットBLの下面を吸着保持する。このうち吸着溝311は基板SBの下部に当たるブランケットBLの下面を吸着する一方、吸着溝312は基板SBよりも外側のブランケットBLの下面を吸着する。吸着溝311,312は互いに独立して吸着をオン・オフすることができ、2種類の吸着溝311,312を共に使用して強力にブランケットBLを吸着することができる。一方、外側の吸着溝312のみを使用して吸着を行い、パターンが有効に形成されたブランケットBLの中央部については吸着を行わないようにすることで、吸着によるブランケットBLの撓みに起因するパターンの損傷を防止することができる。このように、中央部の吸着溝311と周縁部の吸着溝312とへの負圧供給を独立に制御することで、ブランケットBLの吸着保持の態様を目的に応じて切り換えることが可能となっている。
このようにしてステージ30に吸着保持されるワークWKの上方に、第1ないし第4吸着ユニット51〜54と、ローラユニット34の剥離ローラ340とが配置される。前述したように第2吸着ユニット52の下部には複数の吸着パッド527がX方向に並べて設けられている。より詳しくは、吸着パッド527は、例えばゴムやシリコン樹脂などの柔軟性および弾性を有する材料で一体的に形成された、下面がワークWKの上面(より具体的には基板SBの上面)に当接してこれを吸着する吸着部527aと、上下方向(Z方向)への伸縮性を有するべローズ部527bとを有している。他の吸着ユニット51,53および54に設けられた吸着パッドも同一構造であるが、以下ではこれらの各吸着ユニット51,53および54に設けられた吸着パッドにそれぞれ符号517、537および547を付すことにより互いを区別することとする。
第1吸着ユニット51は水平ステージ部31の(−Y)側端部の上方に設けられており、下降したときに基板SBの(−Y)側端部の上面を吸着する。一方、第4吸着ユニット54は、ステージ30に載置される基板SBの(+Y)側端部の上方に設けられ、下降したときに基板SBの(+Y)側端部の上面を吸着する。第2吸着ユニット52および第3吸着ユニット53はこれらの間に適宜分散配置され、例えば吸着パッド517〜547がY方向において略等間隔となるようにすることができる。これらの吸着ユニット51〜54の間では、上下方向への移動および吸着のオン・オフを互いに独立して実行可能となっている。
剥離ローラ340は上下方向に移動して基板SBに対し接近・離間移動するとともに、Y方向に移動することで基板SBに沿って水平移動する。剥離ローラ340が下降した状態では、基板SBの上面に当接して転動しながら水平移動する。最も(−Y)側に移動したときの剥離ローラ340の位置は、第1吸着ユニット51の吸着パッド517の(+Y)側直近位置である。このような近接位置への配置を可能とするために、第1吸着ユニット51については、図2に示す第2吸着ユニット52と同一構造のものが、図1に示すように他の第2ないし第4吸着ユニット52〜54とは反対向きにして支持フレーム50に取り付けられている。
初期剥離ユニット33は、テーパーステージ部32の上方に突き出されたブランケットBLの上方に押圧部材331が位置するように、そのY方向位置が調整されている。そして、支持アーム332が下降することにより、押圧部材331の下端が下降してブランケットBLの上面を押圧する。このとき押圧部材331がブランケットBLを傷つけることがないように、押圧部材331の先端は弾性部材により形成されている。
次に、ステージ30のより詳細な構成について説明する。この実施形態のステージ30には、ワークWKの剥離処理を行うために必要な上記した各構成の他に、剥離装置1へのワークWKの搬入および剥離後の2枚の板状体(版または基板とブランケット)の搬出をスムーズに行うための構成が設けられている。以下、それらの構成について説明する。
図4はステージのより詳細な構成を示す斜視図である。図4(a)に示すように、ステージ30の水平ステージ部31とテーパーステージ部32とは別体に形成されて分離可能となっている。テーパーステージ部32は後述する水平移動機構により水平ステージ部31に対して水平方向に接近・離間移動可能となっており、テーパーステージ部32が水平ステージ部31の側面に密着することで、水平ステージ部31とテーパーステージ部32とが一体的にステージ30として機能する。
水平ステージ部31の上面310には、上記した吸着溝311,312の他に、互いに形状の異なる3種類の開口313,314,315が設けられている。より具体的には、水平ステージ部31の上面310のうち吸着溝311と吸着溝312との間の平坦部分の複数箇所に、長円形状を有する複数の第1の開口313が分散配置される。また、水平ステージ部31の上面310の中央部の互いに離隔する4箇所に、略円形の第2の開口314が設けられている。第1の開口313および第2の開口314はいずれも、水平ステージ部31の上面310において吸着溝311,312とは接続していない。このために、第2の開口314の周囲では吸着溝311が分断されている。また、外側の吸着溝312とステージ外縁との間の複数箇所に、長円形状を有する複数の第3の開口315が分散配置されている。
さらに、水平ステージ部31のうちテーパーステージ部32とは反対側、つまり(+Y)側の端部に、ステージ上面310において第3の開口315と同程度の開口サイズを有する複数の切り欠き部316が設けられている。外側の吸着溝312は切り欠き部316を避けて設けられており、水平ステージ部31の上面310において吸着溝312と切り欠き部316とは接続されていない。
一方、テーパーステージ部32が設けられる側、つまり(−Y)側の水平ステージ部31の側面には、4組のメインリフタ36がX方向に並べて配置されている。これらのメインリフタ36の構造は互いに同一である。メインリフタ36のそれぞれは、水平ステージ部31の側面に沿うように薄板状に仕上げられたリフタピン361と、該リフタピン361を下方から支持するとともにこれを制御ユニット70(図10)からの駆動信号に応じて上下方向(Z方向)に昇降させる昇降機構365とを備えている。昇降機構365は水平ステージ部31の底面に固定されている。
図4(b)はリフタピン361の概略構造を示しており、同図に示すように、リフタピン361の上面361aは略平面に仕上げられている。その中央部には吸着パッド362が設けられており、吸着パッド362はリフタピン361の内部を貫通して設けられた負圧供給経路363に連通している。負圧供給経路363は制御バルブを介して後述する負圧供給部704(図10)に接続されている。次に説明するように、同様の構造を有するメインリフタ36がさらに第1の開口313のそれぞれに対応して設けられている。
図5は図6ないし図8のステージ断面図における断面の方向を示すステージ上面図である。また、図6はメインリフタの配置を示すステージ断面図である。より具体的には、図6は図5のA−A'切断面を示している。なお、図5においては、図を見やすくするために、吸着溝311,312を記載するのに代えて、これらが配置される領域にドットを付して示している。
図6(a)に示すように、テーパーステージ部32は、水平ステージ部31の側面から(−Y)方向に延設されたガイドレール321、ガイドレール321に対してY方向に摺動自在に係合するスライダ322、スライダ322をY方向に移動させる移動機構323を備える水平移動機構により支持されている。より具体的には、テーパーステージ部32はスライダ322に取り付けられており、移動機構323の作動によりY方向、つまり水平ステージ部31に対して接近・離間方向に水平移動する。
水平ステージ部31と接するテーパーステージ部32の(+Y)側側面はメインリフタ36のリフタピン361に対応して切り欠かれており、テーパーステージ部32が水平ステージ部31と結合されたときのリフタピン361との干渉が回避されている。
水平ステージ部31の上面310に穿設された複数の第1の開口313に対して、それぞれ1組ずつメインリフタ36が設けられている。すなわち、第1の開口313から水平ステージ部31の底面まで貫通する貫通孔の下端に昇降機構365が取り付けられ、リフタピン361が各開口313に挿通されている。図6(a)に現れない他の第1の開口313に対しても、同様にメインリフタ36が1組ずつ設けられている。
各メインリフタ36は制御ユニット70からの駆動信号に応じて同一の動作をする。すなわち、各リフタピン361は、図6(a)に示すようにその上端が水平ステージ部31の上面310よりも下方に後退した下部位置と、図6(b)に示すように上端が水平ステージ部31の上面310よりも上方に突出した上部位置とでそれぞれ位置決め可能となっており、制御ユニット70からの駆動信号に応じて上部位置と下部位置との間で一斉に昇降する。なお、リフタピン361の上部位置への位置決めは、図6(b)に示すように、テーパーステージ部32を水平ステージ部31から離間させた状態で行われ、水平ステージ部31の(−Y)側側面に取り付けられたメインリフタ36のリフタピン361は水平ステージ部31とテーパーステージ部32との間の隙間を通って昇降する。
図7は図5のB−B’切断面を示すステージ断面図であり、サブリフタの配置を示す図である。なお、テーパーステージ部32および水平移動機構については図示を省略している。水平ステージ部31の上面310の中央部に設けられた4箇所の第2の開口314のそれぞれには、サブリフタ37が取り付けられている。より詳しくは、サブリフタ37は、第2の開口314から水平ステージ部31の底面まで貫通する貫通孔に挿通されたリフタピン371と、ステージ底面に取り付けられてリフタピン371を上下方向、つまりZ方向に昇降させる昇降機構375とを備えている。リフタピン371は上端が略円板状となっており、制御ユニット70からの駆動信号に応じて、図7(a)に示すようにその上端が水平ステージ部31の上面310よりも下方に後退した下部位置と、図7(c)に示すように上端が水平ステージ部31の上面310よりも上方に突出した上部位置との間で昇降する。
複数のメインリフタ36は制御ユニット70からの駆動信号に応じて一斉に同じ動作をする一方、複数のサブリフタ37も制御ユニット70からの駆動信号に応じて一斉に同じ動作をする。ただし、メインリフタ36とサブリフタ37との間では互いに独立して動作する。したがってこの実施形態では、図7(a)に示すようにメインリフタ36のリフタピン361とサブリフタ37のリフタピン371とが共に下部位置にある状態、図7(b)に示すようにメインリフタ36のリフタピン361のみが上部位置にある状態、および、図7(c)に示すようにメインリフタ36のリフタピン361とサブリフタ37のリフタピン371とが共に上部位置にある状態の3つの状態を切り換えることができる。
図8は図5のC−C'切断面を示すステージ断面図であり、エッジリフタの配置を示す図である。なお、テーパーステージ部32および水平移動機構については図示を省略している。エッジリフタ38は、第3の開口315から水平ステージ部31の底面まで貫通する貫通孔にそれぞれ挿通されて一方端がステージ上面310まで延びる複数の揺動アーム381と、揺動アーム381の中央部を揺動自在に支持する支持フレーム382と、各揺動アーム381の他方端に連結された駆動ロッド383と、駆動ロッド383をY方向に往復移動させる移動機構384とを備えている。
移動機構384の作動により駆動ロッド383がY方向に移動することで、各揺動アーム381が一斉に揺動し、図8(a)に示すように各揺動アーム381の上端381aがステージ上面310から僅かに下方へ後退した状態と、図8(b)に示すように各揺動アーム381の上端381aがステージ上面310から僅かに上方へ突出した状態とを切り換えることができる。水平ステージ部31の(+Y)側端部に設けられた切り欠き部316にも、同様の機構からなるエッジリフタが設けられる。ただしこの場合の揺動アーム381はX方向に配列される。
上記のように水平ステージ部31の上面310には、吸着溝311,312や各種機構を昇降させるための開口313〜315等、ステージ上面310から下方へ窪んだ凹部が設けられる。しかしながら、ワークWKを当接させて平面姿勢に保持するという本来の機能からは、ステージ上面310はできるだけ平坦であることが望ましい。すなわち、ステージ上面310のうち、格子状の吸着溝311,312により囲まれた矩形領域のそれぞれ、開口313〜315の周囲の平面部、および吸着溝312よりも外側の平面部の各々が高い平面度を有するとともに、それらが単一の平面上にあることが望ましい。また、吸着溝および各開口についても、その開口寸法はできるだけ小さいものであることが好ましい。このため、この実施形態では、図4(b)に示すように薄型に仕上げられたリフタピン361を用いている。
上記の点から、水平ステージ部31については延性を有さない材料により構成されることが望ましい。例えば石板または石英板等に吸着溝等の開口を刻設し平面研磨した(あるいはその逆順の)ものを好適に適用することができる。例えばステンレス鋼のような金属材料では、たとえ平面研磨したとしても開口の周囲の微細な凹凸が除去しきれず、このような凹凸が剥離の良好さを損ねる原因となり得る。
図9はステージとこれに載置されるワークとの位置関係を示す図である。基板SBとブランケットBLとが密着してなるワークWKにおいては、ブランケットBLが基板SBより大きな平面サイズを有している。このため、基板SBではその全面がブランケットBLに対向しているのに対して、ブランケットBLはその中央部分が基板SBと対向しているが、周縁部は基板SBと対向しない余白部分となっている。基板SBの表面領域のうち周縁部を除く中央部分に、パターンが有効に転写されてデバイスとして機能する有効領域ARが設定される。したがって、この剥離装置1の目的は、ブランケットBLから基板SBの有効領域ARに転写されたパターンを損傷させることなく、基板SBとブランケットBLとを剥離させることである。
基板SBの有効領域ARの全体が水平ステージ部31の上面310に位置するように、ワークWKはステージ30に載置される。一方、有効領域ARよりも外側において、基板SBの(−Y)側端部は水平ステージ部31とテーパーステージ部32との境界の稜線部Eよりも僅かに(−Y)側に突出した位置に位置決めされる。
図においてドットを付した領域R1は吸着溝311によりブランケットBLが吸着される領域を示している。吸着溝311により吸着される領域R1は有効領域AR全体をカバーする。また、領域R2は吸着溝312によりブランケットBLが吸着される領域を示している。吸着溝312は有効領域ARよりも外側でブランケットBLを吸着する。したがって、例えば吸着溝312のみによってブランケットBLを吸着する態様では、有効領域AR内のパターンが吸着の影響を受けることが回避される。図9に示した他の領域R3ないしR8については、後の動作説明の際に説明する。
図10はこの剥離装置の電気的構成を示すブロック図である。装置各部は制御ユニット70により制御される。制御ユニット70は、装置全体の動作を司るCPU701と、各部に設けられたモータ類を制御するモータ制御部702と、各部に設けられたバルブ類を制御するバルブ制御部703と、各部に供給する負圧を発生する負圧供給部704と、ユーザからの操作入力を受け付けたり装置の状態をユーザに報知するためのユーザインタフェース(UI)部705とを備えている。なお、工場用力など外部から供給される負圧を利用可能である場合には制御ユニット70が負圧供給部を備えていなくてもよい。
モータ制御部702は、ステージブロック3に設けられたモータ353、昇降機構335,344,365,375および移動機構323,384、上部吸着ブロック5の各吸着ユニット51〜54にそれぞれ設けられた昇降機構525などのモータ群を駆動制御する。なお、ここでは各可動部の駆動源として代表的にモータを記載しているが、これに限定されるものではなく、その用途に応じて例えばエアシリンダ、ソレノイド、圧電素子などの各種アクチュエータを駆動源として用いてもよい。
バルブ制御部703は、負圧供給部704から水平ステージ部31に設けられた吸着溝311,312およびリフタピン361に設けられた吸着パッド362につながる配管経路上に設けられてこれらの吸着溝および吸着パッドに対し所定の負圧を個別に供給するためのバルブ群V3、負圧供給部704から各吸着パッド517〜547につながる配管経路上に設けられて各吸着パッド517〜547に所定の負圧を供給するためのバルブ群V5などを制御する。
次に、上記のように構成された剥離装置1による剥離動作について、図11ないし図15を参照しながら説明する。図11は剥離処理を示すフローチャートである。また、図12ないし図15は処理中の各段階における各部の位置関係を示す図であり、処理の進行状況を模式的に表したものである。この剥離処理は、CPU701が予め記憶された処理プログラムを実行して各部を制御することによりなされる。
まず、オペレータまたは外部の搬送ロボット等によってワークWKがステージ30上の上記位置にロードされる(ステップS101)。図12は外部から搬入されたワークWKがステージ30に載置されるまでの状態を模式的に示している。図12(a)はワークWKの搬入前のステージ30の状態を示しており、このときメインリフタ36のリフタピン361、サブリフタ37のリフタピン371および揺動アーム381の上端はいずれもステージ上面310よりも下方に退避した位置にある。
この状態で、図12(b)に示すように、ワークWKが、オペレータにより操作されまたは搬送ロボットに設けられたワーク用ハンドWHにより下面を支持された状態で搬入される。そして、メインリフタ36のリフタピン361が上昇してその上端がステージ上面310よりも突出する上部位置まで移動し、ワークWKの下面、より具体的にはブランケットBLの下面に当接する。このとき、図6(b)に示したように、テーパーステージ部32は水平ステージ部31から離間されており、それらの隙間からリフタピン361が突出する。なお、ワークWKの搬入に先立って、またはこれと並行してリフタピン361を上昇させてもよい。
ワーク用ハンドWHおよびリフタピン361は、ブランケットBLの下面領域のうち、上面側で基板SBとブランケットBLとが重なり合い、かつ有効なパターン等が形成された有効領域ARよりも外側の当接可能領域TR内でブランケットBL下面に当接する。すなわち、ワークWKの支持はこの当接可能領域TR内でブランケットBL下面に支持部材(リフタピン361およびワーク用ハンドWH)を当接させることにより行い、有効領域AR内や、当接可能領域TRよりも外側の基板SBと重ならない領域に支持部材を当接させることはしない。このようにする理由は以下の通りである。
外部から平板状のワークWKを搬入し平坦なステージ30に載置する過程においては、一時的にはワークWKを局所的に支持した状態で受け渡しを行う必要がある。このとき、その支持箇所においては基板SBとブランケットBLとの間に担持されたパターン等に局所的な押圧力が加わる。このような不均一な押圧力による応力集中がパターン等を損壊させるおそれがあるため、有効なパターン等が形成された有効領域ARについては支持部材の当接を避けることが望ましい。
一方、当接可能領域TRよりも外側での支持では、支持箇所の上部に基板SBが存在しないため、ワークWK全体の重さをブランケットBLの剛性により支持しなければならないことになる。特に基板SBの大型化に伴ってワークWKの質量が大きくなっている場合、ブランケットBLがこのような荷重に耐えられず破損してしまうおそれがある。また、破損に至らないまでも、荷重によりブランケットBLが撓むことで基板SBとの間で偶発的な剥離が生じてしまうことがある。
この実施形態では、有効領域ARよりも外側で基板SBとブランケットBLとが密着した領域を当接可能領域TRとして、該当接可能領域TR内のブランケットBL下面に支持部材(ワーク用ハンドWHおよびリフタピン361)を当接させることで、上記のような問題を未然に回避している。この領域を支持することで、基板SBの剛性とブランケットBLの剛性とでワークWKの重さを支えることができ、有効領域AR内のパターン等のダメージも防止することができる。
図9に示した領域R6は、リフタピン361の上面361aが当接するブランケットBLの下面領域を示している。同図に示すように、有効領域ARの周囲を取り囲むように分散配置された複数箇所でブランケットBLに当接しワークWKを支持することで、ワークWKを確実に支持することができる。また各リフタピン上面361aを平坦に仕上げておくことで、当接箇所においてブランケットBLに加わる圧力を分散させることができる。なお、有効領域ARの周囲で断続する領域R6でリフタピン361を当接させるのは、リフタピン361の間を通してワーク用ハンドWHの進入を可能とするためである。
図12(b)に戻って、こうしてリフタピン361をブランケットBL下面に当接させた後、ワーク用ハンドWHについては装置外へ退避させる。これにより、図12(c)に示すように、ワークWKはリフタピン361に受け渡され、リフタピン361の下面からの当接によって支持された状態となる。このとき、リフタピン361の上面に設けられた吸着パッド362に負圧を供給してブランケットBL下面を吸着保持することで、ワークWKの位置ずれや落下を防止することができる。この場合も、有効領域ARよりも外側を吸着することでパターン等へのダメージは回避される。
この状態からリフタピン361が下降し下部位置に移動するとともに吸着パッド362による吸着を解除することで、図12(d)に示すように、リフタピン361はブランケットBL下面から離間しワークWKはステージ30の上面310に受け渡される。そして、テーパーステージ部32が水平ステージ部31側に移動して、図6(a)に示すように水平ステージ部31と一体化される。
図11に戻って、こうしてワークWKがステージ30に載置されると装置各部が所定の初期状態に設定される(ステップS102)。初期状態では、ワークWKが吸着溝311,312の一方または両方によって吸着保持され、初期剥離ユニット33の押圧部材331、ローラユニット34の剥離ローラ340、第1ないし第4吸着ユニット51〜54の吸着パッド517〜547はいずれもワークWKから離間している。また剥離ローラ340はその可動範囲において最も(−Y)側に寄った位置にある。
この状態から、第1吸着ユニット51および剥離ローラ340を下降させて、それぞれワークWKの上面に当接させる(ステップS103)。このとき、図13(a)に示すように、第1吸着ユニット51の吸着パッド517が基板SBの(−Y)側端部の上面を吸着し、剥離ローラ340はその(+Y)側隣接位置で基板SBの上面に当接する。図13(a)において押圧部材331の近傍に付した下向き矢印は、図に示される状態から、続く工程では押圧部材331が当該矢印方向に移動することを意味している。以下の図においても同様である。
図9に示される領域R3はこの時に第1吸着ユニット51により基板SBが吸着される領域を示し、領域R4は剥離ローラ340が基板SBに当接する領域を示す。図9に示すように、第1吸着ユニット51は基板SBの(−Y)側端部を吸着保持する一方、剥離ローラ340は第1吸着ユニット51による吸着領域R3の(+Y)側に隣接する領域R4で基板SBに当接する。剥離ローラ340が当接する当接領域R4は、有効領域ARよりも外側、つまり有効領域ARから(−Y)側に寄った位置とされる。したがって、有効領域ARの内部は第1吸着ユニット51による吸着、剥離ローラ340による押圧のいずれをも受けていない。
図11に戻って、次に初期剥離ユニット33を作動させ、押圧部材331を下降させてブランケットBL端部を押圧する(ステップS104)。ブランケットBLの端部はテーパーステージ部32の上方に突出しており、その下面とテーパーステージ部32の上面320との間には隙間がある。したがって、図13(b)に示すように、押圧部材331がブランケットBLの端部を下方へ押圧することにより、ブランケットBLの端部がテーパーステージ部32のテーパー面に沿って下方へ屈曲する。その結果、第1吸着ユニット51により吸着保持される基板SBの端部とブランケットBLとの間が離間し剥離が開始される。押圧部材331はX方向に延びる棒状に形成され、しかもそのX方向長さがブランケットBLよりも長く設定されている。したがって、図9に示すように、押圧部材331がブランケットBLに当接する当接領域R5は、ブランケットBLの(−X)側端部から(+X)側端部まで直線状に延びる。こうすることで、ブランケットBLを柱面状に屈曲させることができ、基板SBとブランケットBLとが既に剥離した剥離領域と、まだ剥離していない未剥離領域との境界線(以下、「剥離境界線」という)を直線状にすることができる。
この状態から、第1吸着ユニット51の上昇を開始するとともに、これと同期させて剥離ローラ340を(+Y)方向に向けて移動させる(ステップS105)。具体的には、第1吸着ユニット51の上昇により(+Y)方向に移動する剥離境界線が剥離ローラ340の直下に到達するタイミングで、剥離ローラ340の移動を開始する。これにより図9に示す当接領域R4は(+Y)方向に移動してゆく。この後、第1吸着ユニット51は上方、つまり(+Z)方向に、また剥離ローラ340は(+Y)方向に、それぞれ一定速度で移動する。
図13(c)に示すように、基板SBの端部を保持する第1吸着ユニット51が上昇することで基板SBが引き上げられてブランケットBLとの剥離が(+Y)方向に向かって進行するが、剥離ローラ340を当接させているため、剥離ローラ340による当接領域R4(図9)を超えて剥離が進行することはない。剥離ローラ340を基板SBに当接させながら一定速度で(+Y)方向に移動させることで、剥離の進行速度を一定に維持することができる。すなわち、剥離境界線がローラ延設方向つまりX方向に沿った一直線となり、しかも一定速度で(+Y)方向に進行する。これにより、剥離の進行速度の変動による応力集中に起因するパターンの損傷を確実に防止することができる。
続いて、以下の処理のための内部的な制御パラメータNの値を2に設定する(ステップS106)。そして、剥離ローラ340が第N吸着位置を通過するのを待つ(ステップS107)。第N吸着位置は、基板SB上面のうち第N吸着ユニット(N=1〜4)の直下位置であり、当該第N吸着ユニットによる吸着を受ける位置である。
ここではN=2であるので、剥離ローラ340が第2吸着位置、つまり第2吸着ユニット52の直下位置を通過するまで待つ。剥離ローラ340が第2吸着位置を通過すると(ステップS107においてYES)、第2吸着ユニット52の下降を開始し、第2吸着ユニット52の吸着パッド527により基板SBを捕捉する(ステップS108)。
図13(d)に示すように、剥離ローラ340が既に通過していることから、第2吸着ユニット52の直下位置では基板SBはブランケットBLから剥離して上方へ浮き上がった状態となっている。伸縮性を有する弾性部材で構成された吸着パッド527に負圧を付与しながら基板SBに近付けてゆくことで、吸着パッド527の下面が基板SBの上面に当接した時点で基板SBを捕捉し吸着することができる。吸着パッド527を所定位置まで下降させた後、引き上げられてくる基板SBを待機する態様であってもよい。いずれにおいても、吸着パッドに柔軟性を持たせることで、吸着の失敗を防止することができる。
基板SBの吸着を開始した後、第2吸着ユニット52の移動を上昇に転じる(ステップS109)。これにより、図14(a)に示すように、剥離の進行速度は依然として剥離ローラ340により制御されつつ、剥離のための基板SBの引き上げの主体は第1吸着ユニット51から第2吸着ユニット52に引き継がれる。また剥離後の基板SBは、第1吸着ユニット51のみによる保持から第1吸着ユニット51と第2吸着ユニット52とによる保持に切り替わり、保持箇所が増加することになる。なお、各吸着ユニット51〜54が上昇する際、剥離後の基板SBの姿勢が略平面となるように、各吸着ユニット51〜54間のZ方向における相対位置が維持される。
続いて制御パラメータNの値に1が加えられて(ステップS111)、処理はパラメータNが4となるまでステップS107に戻るループ処理となる。したがって次のループでは、剥離ローラ340が第3吸着ユニット53直下の第3吸着位置を通過した時点で第3吸着ユニット53の下降が開始され、図14(b)に示すように、剥離のための基板SBの引き上げの主体が第2吸着ユニット52から第3吸着ユニット53に移行する。さらに次のループでは剥離ローラ340が第4吸着位置を通過した後に第4吸着ユニット54が下降し、基板SBを引き上げる。ステップS110におけるNの上限値を変更することで、吸着ユニットの数が上記と異なる場合にも対応可能である。
こうして第4吸着ユニット54によって基板SBが引き上げられることで、図14(c)に示すように、基板SBの全体がブランケットBLから引き離される。そこで、第4吸着ユニット54を上昇させた後(ステップS110においてYES)、剥離ローラ340をステージ30よりも(+Y)側まで移動させてその移動を停止させる(ステップS112)。そして、図14(d)に示すように、各吸着ユニット51〜54を全て同じ高さまで上昇させた後に停止させる(ステップS113)。また、初期剥離ユニット33の押圧部材331をブランケットBLから離間させ、ブランケットBLの上面より上方かつブランケットBLの(−Y)側端部よりも(−Y)側の退避位置まで移動させる(ステップS114)。その後、吸着溝によるブランケットBLの吸着保持を解除し、分離された基板SBおよびブランケットBLを装置外へ搬出することで(ステップS115)、剥離処理が完了する。
各吸着ユニット51〜54の高さを同じとするのは、剥離後の基板SBとブランケットBLとを平行に保持することで、外部ロボットまたはオペレータにより挿入される払い出し用ハンドのアクセスと、それへのブランケットBLおよび基板SBの受け渡しとを容易にするためである。
図15は基板SBおよびブランケットBLが剥離されてから搬出されるまでの過程を模式的に示している。剥離直後では、図15(a)に示すように、基板SBがその上面を各吸着ユニット51〜54により吸着されて略水平姿勢に保持され、ブランケットBLがステージ30に載置された状態である。
基板SBについては、ワーク用ハンドWHにより搬出することができる。すなわち、図15(b)に示すように、基板SBとブランケットBLとの間にワーク用ハンドWHを再び進入させて基板SBの下面端部に当接させ、吸着ユニット51等による吸着を解除することで、基板SBが吸着ユニット51等からワーク用ハンドWHに受け渡される。このときも、ワーク用ハンドWHは有効領域ARの外側で基板SBと当接するので、転写されたパターン等へのダメージは生じない。
次に、ブランケットBLの搬出について説明する。ブランケットBLは下面の大部分がステージ30に当接した状態である。この状態からエッジリフタ38を作動させて、図15(c)に示すように、揺動アーム381によりブランケットBLの端部を僅かに上方へ変位させる。図9に示される領域R7は、このときにエッジリフタ38の揺動アーム381の上端が当接するブランケットBLの下面領域を示している。このように、揺動アーム381はステージ30上のブランケットBLの周縁部に近い領域でブランケットBL下面に当接する。
そのため、ブランケットBLの周縁部が上方へ反り上がるように変位し、ブランケットBL下面とステージ上面310との間に僅かな隙間ができる。ブランケットBLの撓みおよびブランケットBLの中央部が大気圧により押圧されていることから、ブランケットBL全体が持ち上がることにはならない。この動作の目的は、ブランケットBL下面とステージ上面310との間に隙間を作って外気を導入することで、両者の密着度を低下させて次の持ち上げ動作をスムーズにすることである。
続いて、メインリフタ36およびサブリフタ37を作動させて、リフタピン361,371を上昇させる。図15(d)に示すように、これによりブランケットBLが持ち上げられてステージ上面310から離間する。このときブランケットBLがステージ上面310に密着していると、大気圧に抗してブランケットBLをステージ上面310から離間させるのに大きな力が必要となる。そのためリフタピンとの当接箇所において局所的にブランケットBLの撓みが大きくなることがあり得るが、予めブランケットBLとステージ上面310との間に隙間を作っておくことで、より小さな力でブランケットBL全体を持ち上げることができ、ブランケットBLの撓みも軽減される。
リフタピン361,371の上端部をほぼ同じ高さに位置決めすることで、ブランケットBLをステージ上面310から離間した水平姿勢に保持することができる。このときメインリフタ36のリフタピン361とともにサブリフタ37のリフタピン371を併用してブランケットBLを支持するのは以下の理由による。
剥離後のブランケットBLは、基板SBとの密着が解除されているため、ワークWKとして基板SBと密着した状態に比べると中央部が撓みやすくなっている。このため、リフタピン361による当接可能領域TRでの支持のみではブランケットBLの中央部が撓んでステージ30から持ち上がらない場合がある。ブランケットBLをステージ30から確実に離間させ、また水平姿勢を維持して搬出を容易とするために、ブランケットBLの中央部をサブリフタ37のリフタピン371により支持することが有効である。図9における領域R8は、このときにリフタピン371が当接するブランケットBLの下面領域を示している。この領域R8は有効領域AR内にあるが、この時点では有効領域AR内のパターン等は既に基板SBに転写されており、有効領域ARの下面に当接してブランケットBLを支持することは何ら問題とならない。
なお、版からブランケットBLへのパターニングを行うパターニング工程では、版から剥離されたブランケットBLには基板へ転写すべきパターン等が担持されている。この場合においても、パターン等を挟んでブランケットBLに密着していた版が取り除かれているため、ブランケットBL下面へのリフタピン371の当接によりパターン等に押圧力が作用することはない。むしろブランケットBLの撓みを小さくすることがパターン等へのダメージを抑える上で有効であり、このためにできるだけ多くの箇所でブランケットBLを支持することが好ましい。
こうしてブランケットBLを持ち上げた状態でブランケット用ハンドBHをブランケットBL下面とステージ上面310との隙間に進入させ、リフタピン361,372からブランケットBLを受け取って搬出する。ブランケット用ハンドBHについてはワーク用ハンドWHと兼用としてもよいが、サブリフタ371による支持を併用したのと同じ理由から、ワーク搬入時よりも多くの箇所でブランケットBLを支持して搬出する構造であることが好ましい。
以上のように、この実施形態では、剥離の進行方向(ここではY方向)に直交するX方向に延設された剥離ローラ340を基板SBに当接させ、剥離ローラ340を剥離の進行方向に一定速度で移動させながら基板SBを引き上げることにより、剥離の進行速度を一定に保って基板SBとブランケットBLとの間を良好に剥離させることができる。このとき、本実施形態の剥離処理では、次のような利点が得られる。
図16は本実施形態における剥離処理の利点を説明するための図である。本実施形態では、基板SBを引き上げる主体を順次剥離進行方向の下流側にある吸着ユニットに移行させてゆく。このため、剥離の初期から最終段階まで、剥離ローラ340の直下における基板SBの曲率はある一定の範囲内で推移する。そのため、図16(a)に示すように、既に剥離した部分の基板SBとブランケットBLとがなす角αも一定範囲内に収まる。このため、剥離した部分と未剥離の部分との境界、すなわち剥離ローラ340直下の剥離境界線において基板SBとブランケットBLとを引き離す力(剥離力)も概ね一定である。したがってパターンを損傷することなく良好に剥離を進行させることができる。
これに対して、基板SBの一端部のみを保持して引き上げる比較例を考えると、図16に示すように、基板SBの剛性や質量にもよるが、剥離が進むにつれて自重による基板SBの撓み量が大きくなり、基板SBの引き上げが撓みにより吸収されて剥離の進行が鈍る。すなわち、剥離境界線近傍における基板SBとブランケットBLとがなす角βが次第に小さくなり、両者の間に生じる剥離力が小さくなって剥離の進行が遅くなる。
より甚だしい場合には、吸着ユニットによる吸着力が基板SBの質量を支えきれなくなって基板SBが落下したり、基板SBが曲げに耐えられずに割れたり折れ曲がってしまうなどの問題が生じる。また、基板SB全体をブランケットBLから引き離すために必要な基板SBの引き上げ量が大きくなり、これを可能にするための装置構成の大型化を招くことにもなる。特に基板SBの大型化が進むと基板SBの質量が大きくなるため、これらの問題はさらに顕著となる。
一方、この実施形態では、剥離の進行に伴って基板SBの保持箇所を順次増加させることで基板SBの保持を確実にするとともに、剥離後の基板SBの姿勢を容易に維持することが可能となる。そして、上記のように安定した剥離力を与えつつ剥離を進行させることができるので、パターンの損傷も防止される。また基板SBのサイズに応じて吸着ユニットを配置することにより、基板SBの大型化にも柔軟に対応することが可能である。
また、この実施形態では、図9に示すように、剥離の初期段階で基板SBの引き上げを担う第1吸着ユニット51により基板SBが吸着される領域R3は、有効なパターンが形成された有効領域ARよりも外側である。基板SBが局所的に吸着されることによりその部分で基板SBが部分的にブランケットBLから剥離し、これによりパターンが変形したり損傷するなどの影響が生じる可能性があるが、有効領域外を吸着することで、このような問題は回避される。また、剥離境界線が剥離ローラ340の直下位置に到達するまでは剥離速度が不安定となるが、同様に初期段階における剥離ローラ340の当接領域R4を有効領域外とすることで、剥離速度の変動に起因するパターンの損傷も防止される。
一方、剥離の進行中に新たに基板SBを吸着する第2ないし第4吸着ユニット52〜54は、ブランケットBLから既に剥離した領域において基板SBと当接するため、この場合の吸着によって基板SBに転写されたパターンを傷めることはない。
また、ブランケットBLを平面状のステージ30により保持しながら剥離を行うことで、部分的に吸着機構を当接させて剥離を行う従来技術に比べて有効領域AR内のブランケットBLの局所的な変形がなく、このような変形に起因するパターン等へのダメージも防止される。
また、この実施形態では、外部から搬入されるワークWKをメインリフタ36のリフタピン361により受け取ってステージ30に載置する。このとき、リフタピン361は、基板SB(または版)とブランケットBLとがパターン等を介して密着したワークWKの下面のうち、基板SBとブランケットBLとが重なり、かつ有効なパターン等が形成された有効領域ARよりも外側の領域を当接可能領域TRとして、該当接領域TR内においてワークWKの下面に当接する。このように基板SBとブランケットBLとが重なった剛性の高い領域を保持することでワークWKを確実に支持することができ、また有効領域AR内のパターン等が押圧されることによるダメージも防止される。
特に、当接可能領域TR内で複数箇所に分散させてリフタピン361を当接させることで、ブランケットBLに加わる圧力を分散させて支持することができるとともに、リフタピン361の間から搬送用のハンドを進退させることが容易となっている。そのため、ワークWKの搬入およびステージ30への載置をスムーズに行うことができる。
また、ステージ30の中央部にサブリフタ37を配置し、剥離後のブランケットBLをメインリフタ36とともに支持することで、剥離後のブランケットBLの撓みを抑えて水平姿勢に保持し、外部への搬出を容易にすることができる。また、ブランケットBLをステージ30から離間させるのに先立って、エッジリフタ38によりブランケットBLの端部を上方へ変位させてステージ上面310との間に隙間を作ることで、リフタピン361,371によるブランケットBLの持ち上げをスムーズに行うことができる。
また、ステージ30の一部にテーパーを設けて剥離の開始を制御する構成においては、ステージ30の水平面とテーパー面との境界に当たる稜線部Eの近傍にリフタピンを挿通するための開口を設けることができない。このようにすると開口のエッジ部周辺において偶発的な剥離が発生し、剥離開始線を制御することができなくなるからである。そこで、この実施形態では、水平ステージ部31とテーパーステージ部32とを分離可能な構成とし、両者を離間させた時の隙間からリフタピンを突出させるとともに、ワークWKの載置後は水平ステージ部31とテーパーステージ部32とを接触させてステージ30を構成する。これにより、テーパー面側に位置する当接可能領域TRについてもリフタピンにより支持することが可能となる。
以上説明したように、この実施形態においては、剥離対象物たるワークWKのうちブランケットBLが本発明の「第1板状体」に相当する一方、基板SBが本発明の「第2板状体」に相当している。また、ブランケットBLの両主面のうち基板SBと密着する上面が「一方面」に相当し、下面が「他方面」に相当している。
また、上記実施形態では、ステージ30が本発明の「保持ステージ」として機能しており、水平ステージ部31の上面310が本発明の「保持面」に相当する。また、吸着ユニット51〜54が本発明の「剥離手段」として機能している。また、リフタピン361が本発明の「支持部材」として機能する一方、昇降機構365が本発明の「昇降手段」として機能している。また上記実施形態では、リフタピン371が本発明の「補助支持部材」として機能し、揺動アーム381が本発明の「空隙形成部材」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態ではステージ30に格子状の吸着溝311,312を設けてブランケットBLを吸着保持しているが、吸着溝の形状はこれに限定されない。例えば環状の吸着溝を設けてもよく、また負圧が供給される吸着孔を適宜配置してブランケットを吸着してもよい。
また、上記実施形態の装置1は、ワークWKの有効領域AR内でその下面に当接可能なサブリフタ37のリフタピン371を有しているが、ワーク搬入時にはこれを当接させないことにより、有効領域AR内のパターン等へのダメージを抑えている。しかしながら、パターン材料やその配置によってはリフタピン371の当接による影響を受けないものもある。このような場合、必要に応じて、ワーク搬入時にもサブリフタ37を併用するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、剥離後の基板SBの姿勢を平面に近い状態に維持するように各吸着ユニット51〜54の上昇が制御されて基板SBに加わるストレスが低減されているが、基板SBの引き上げの態様はこれに限定されない。例えば、剥離後の基板が略水平となるように各吸着ユニットを一定高さで停止させたり、あるいは基板が所定の曲率を持って湾曲するような姿勢に保持するようにしてもよい。これらは各吸着ユニットの上昇の態様を制御することによって自由に設定可能である。
また、上記実施形態では4つの吸着ユニットを基板SB上部に配置して順次基板SBを吸着しているが、吸着ユニットの数はこれに限定されるものではなく任意である。基板が大型であれば吸着ユニットを多く、小型であれば少なくすればよい。
また、上記実施形態では真空吸着によって基板およびブランケットを保持しているが、保持の態様はこれに限定されない。例えば静電的または磁気的な吸着力により吸着保持するものであってもよい。特に基板の有効領域外を保持する第1吸着ユニット51については、吸着によらず、基板周縁部を機械的に把持することにより保持してもよい。
また、上記実施形態の剥離装置1は、基板SBに剥離ローラ340を当接させて剥離境界線の進行を管理しながら基板SBを引き上げることでブランケットBLとの間で剥離を行うが、剥離処理の方式についてはこれに限定されない。すなわち、他の剥離方式により剥離を行う装置であっても、版または基板とブランケットのような2枚の板状体からなる密着体を搬入し、また剥離後の板状体をそれぞれ搬出するための構成として、本発明を適用することが可能である。
また、上記実施形態ではテーパーステージ部32にブランケットBLを突き出させて保持し、押圧部材331によりブランケットBLを屈曲させて剥離のきっかけを作っているが、このようにすることは必須の要件ではなく、例えば第1吸着ユニットの引き上げのみで剥離を開始させるようにしてもよい。この場合、ステージにテーパーを設ける必要はなくなる。