JP6168065B2 - エステル系樹脂製医療機器の滅菌方法 - Google Patents
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Description
本発明は、エステル系樹脂により製造された医療機器(エステル系樹脂製医療機器)を、放射線照射により滅菌する方法に関する。
分子内にエステル結合を有するエステル系樹脂は、従来から、種々の医療機器に用いられている。エステル系樹脂は、医療機器に用いやすい諸物性を有しており、また、ガラス等に比較して成形性や加工性に優れ、軽量で比較的安価である。
医療機器の一例として血液処理器を挙げると、腎不全治療などにおける血液浄化療法においては、血液中の尿毒素、老廃物を除去する目的で、透析膜や限外濾過膜を分離材として用いた血液透析器、血液濾過器あるいは血液透析濾過器等のモジュール(血液処理器)が広く使用されている。このようなモジュールでは、透析膜や限外濾過膜には、セルロース系の天然素材または種々の合成高分子が用いられる。特に、中空糸型の膜を分離材として用いたモジュール(中空糸型血液処理器)は、体外循環血液量の低減、血中の物質除去効率の高さ、さらにモジュール生産時の生産性等の利点を有するため、透析器分野での重要度が高い。
中空糸型血液処理器は、使用前に完全な滅菌処理を施す必要があるため、種々の滅菌方法が用いられているが、中でも、放射線照射による滅菌方法は、中空糸型血液処理器を包装状態のまま処理できるとともに滅菌効果も優れているため、好ましい滅菌方法の一つとして採用されている。ただし、この滅菌方法では、中空糸型血液処理器を構成する一部の部材が、放射線の照射により劣化したり副生成物が生じたりする可能性がある。そこで、従来から、放射線照射による滅菌であっても、中空糸型血液処理器の劣化あるいは副生成物の発生の抑制等を図る技術が知られている。
例えば、特許文献1では、放射線照射による滅菌の効率を維持しつつ、有害な副生成物の生成の抑制を図るために、包装体内の雰囲気を酸素濃度が低減された状態に維持しながら、包装体に放射線滅菌を行う工程と、放射線滅菌後、包装体の滅菌状態を維持しながら、さらに脱酸素剤によって酸素濃度を低減する工程と、を含む滅菌方法を提案している。
また、特許文献2では、疎水性高分子と親水性高分子とを含む半透膜において、これら高分子の分解を抑制し、親水性高分子の溶出の抑制を図るために、半透膜の自重に対して100〜600%の水を抱液させ、透析器内を不活性ガス雰囲気とした後、ガンマ線照射を行う滅菌方法を提案している。
ここで、中空糸型血液処理器の中空糸としては、セルロースの誘導体であるアセチルセルロース製のものが知られている。アセチルセルロースは、セルロース分子中のヒドロキシ基(−OH)に酢酸がエステル結合しているエステル系樹脂である。このようなアセチルセルロース製の中空糸では、放射線の照射により、アセチルセルロースの一部が分解して酢酸が発生する。透過液はできる限り中性に近いことが好ましいが、酢酸の発生により、中空糸を透過した透過液のpHは酸性側に偏る(pHが低下する)おそれがある。また、アセチルセルロースの放射線照射による分解は、中空糸の劣化を招くことにもなる。
前述した特許文献1の滅菌方法では、放射線照射によるアセチルセルロースの劣化および酢酸の発生を有効に抑制できないおそれがある。また、前述した特許文献2の滅菌方法では、中空糸を多量の水で湿潤させる必要があるため、滅菌工程が煩雑化する。さらに、特許文献2には、セルロース誘導体の親水性高分子としてはカルボキシメチルセルロースが例示されている程度であって、好ましい高分子としてはポリビニルピロリドンが挙げられている。したがって、この滅菌方法で、アセチルセルロースからの酢酸の発生を有効に抑制できるか否かは明らかでない。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、アセチルセルロース製の中空糸を備える中空糸型血液処理器等のエステル系樹脂製の医療機器を放射線照射により滅菌する場合に、エステル系樹脂の劣化と分解による酢酸等(カルボン酸)の副生物の発生を有効に抑制することが可能な滅菌方法を提案することを目的とする。
本発明に係るエステル系樹脂製医療機器の滅菌方法は、前記の課題を解決するために、エステル系樹脂製医療機器を、ガス不透過性材料製の包装材内に密封することにより、医療機器包装体を得て、当該医療機器包装体に対して、放射線を照射することにより、前記医療機器包装体内を滅菌する、エステル系樹脂製医療機器の滅菌方法であって、前記エステル系樹脂製医療機器内に少なくとも還元性ガスを封入した上で、前記放射線を照射する構成である。
前記構成によれば、還元性ガスを封入した上で放射線照射による滅菌処理を行うことで、医療機器を構成するエステル系樹脂の劣化が抑制され、エステル系樹脂の分解による副生物の発生を有効に抑制することができる。その結果、滅菌後のエステル系樹脂製医療機器の品質低下を回避することができる。
前記構成のエステル系樹脂製医療機器の滅菌方法においては、前記還元性ガスが水素ガスであってもよく、前記医療機器包装体内には、さらに脱酸素剤が封入されてもよく、前記医療機器内には、前記還元性ガスおよび不活性ガスの混合ガスが封入されてもよく、前記包装材が、ガス不透過性を備えたフィルムであり、前記不活性ガスが窒素ガスであってもよい。前記エステル系樹脂製医療機器の代表的な一例としては、アセチルセルロース製の中空糸を備える中空糸型血液処理器を挙げることができる。
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明では、以上の構成により、アセチルセルロース製の中空糸を備える中空糸型血液処理器等のエステル系樹脂製の医療機器を放射線照射により滅菌する場合に、エステル系樹脂の劣化と分解による酢酸等(カルボン酸)の副生物の発生を有効に抑制することができる、という効果を奏する。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明におけるエステル系樹脂製医療機器は、エステル系樹脂製であって、医療用に用いられる様々な機器を含む。代表的な一例としては血液処理器が挙げられるが、エステル系樹脂製医療機器これに限定されず、例えば、生体内に投与される薬液入りバッグ等も挙げることができる。本実施の形態では、エステル系樹脂製医療機器の代表例として血液処理器を例に挙げて、本発明を具体的に説明する。
一般に、血液処理器とは、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、血漿成分分画、血漿分離等に用いられる医療器具を指し、本発明における中空糸型血液処理器とは、各種合成樹脂等で作られた中空糸と呼ばれる糸を束ね中空糸束とし、その中空糸束を円筒状の容器の内部に収容した器具を指す。当該中空糸は、血液中の物質を選択的に透過する特性および、抗血栓性等の生体適合性に優れている必要がある。
これらの条件を満足させる中空糸の材質として、本発明では、エステル系樹脂であって、セルロース誘導体であるアセチルセルロースを用いている。ここでいう「アセチルセルロース」とは、代表的には、セルロースのグルコース単位に含まれる3つのヒドロキシ基を全てアセチル化した(ヒドロキシ基に酢酸をエステル結合させた)、トリアセチルセルロース(TAC)であればよいが、一部のアセチル基のエステル結合を加水分解してヒドロキシ基に戻した、ジアセチルセルロース等であってもよいし、これらアセチルセルロースを主成分として、他の樹脂等を副成分として含有する、アセチルセルロース組成物であってもよい。
また、本発明におけるエステル系樹脂は、アセチルセルロースに限定されず、分子中にヒドロキシ基を含み、かつ、このヒドロキシ基がカルボン酸等の酸とエステル結合(縮合)した構成、すなわち分子中にエステル結合を含む構成であれば、公知の他の樹脂も好適に用いることができる。本発明では後述するように放射線を照射して滅菌を行うが、この放射線の照射により、エステル結合部分が切断され、酢酸等(カルボン酸)の酸成分が副生物として放出(遊離)する可能性があれば、公知のあらゆるエステル系樹脂が、本発明における放射線の照射対象物に含まれる。
中空糸型血液処理器に用いられる中空糸の内径は、一般に、100μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、120〜250μmの範囲内であればより好ましい。また、中空糸の膜厚は10〜50μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内がより好ましい。
前述した中空糸を用いて血液処理器としてモジュール化する方法は特に限定されないが、例えば、前記中空糸を一般には7,000〜12,000本を束ね中空糸束とし、血液処理器の円筒状の容器へ挿入し、両側端にポリウレタン等のポッティング剤を注入して両端をシールした後、余分なポッティング剤を中空糸束の両端と共に切断除去し、中空糸端面を開口させ、ヘッダーを取り付ける方法が挙げられる。
中空糸型血液処理器を構成する各種部材の具体的構成は特に限定されず、公知のものを好適に用いることができる。なお、中空糸以外の部材、例えば、円筒状の容器、ポッティング剤等については、放射線による劣化の生じ難いものを使用すればよい。円筒状の容器の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が挙げられ、ポッティング剤の材質としては、例えば、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられるが、特に限定されない。
本発明では、前記構成の中空糸型血液処理器を、ガス不透過性材料製の包装材で密封することで、医療機器包装体が得られるが、この医療機器包装体内には、少なくとも還元性ガスが封入されており、好ましくは脱酸素剤も封入されている。
中空糸型血液処理器を密封する包装材は、ガス不透過性材料で製造されていればよい。ガス不透過性材料は、酸素透過度が1cm3 /(m2 ・24h・atm)以下、水蒸気透過度が5g/(m2 ・24h・atm)であるフィルムまたはシートであれば特に限定されないが、本発明では、アルミニウム層を含む多層構造のラミネートフィルムまたはシート(多層構造フィルムまたは多層構造シート)が特に好適に用いられる。
ここでいうアルミニウム層とは、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着層であればよい。また、アルミニウム層は、100%のアルミニウムから構成されてもよいし、公知のアルミニウム合金で構成されてもよい。
アルミニウム層を含むラミネートフィルム(またはシート)としては、具体的には、例えば、ポリエステル層/アルミニウム層/ポリエチレン層の3層構造のもの、ポリエチレンテレフタレート層/アルミニウム層/ポリエチレン層の3層構造のもの、ポリエチレンテレフタレート層/ポリエチレン層/アルミニウム層/ポリエチレン層の4層構造のもの、ナイロン層/ポリエチレン層/アルミニウム層/ポリエチレン層の4層構造のもの等が挙げられるが、特に限定されない。なお、これら多層構造の各層は、外側から内側の順に記載している。
これら多層構造フィルム(または多層構造シート)は、中間層が、ガス不透過性に優れたアルミニウム層であり、外側および内側が樹脂層であるので、ガス不透過性とヒートシール性との両方の機能を実現することができる。
前記構成の包装材は、例えば袋状に構成されており、この袋状の包装材(袋状体)は、内部に中空糸型血液処理器等のエステル系樹脂製医療機器を収容し、かつ、還元性ガスを導入した状態で、開口部をシールすることで、医療機器包装体を得ることができる。袋状体のシール方法としては、ヒートシール法、インパルスシール法、溶断シール法、フレームシール法、超音波シール法、高周波シール法等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明においては、包装材で包装された医療機器(医療機器包装体内の医療機器)内には、少なくとも還元性ガスが封入されている。医療機器内に還元性ガスが存在した状態であれば、放射線が照射されてもアセチルセルロースの劣化および酢酸の発生を有効に抑制することができる。還元性ガスとしては、本発明では水素ガスが特に好ましく用いられるが、一酸化炭素、硫化水素、ホルムアルデヒド等の還元性ガスであってもよい。
また、本発明においては、医療機器内には、前記還元性ガスに加えて不活性ガスも封入することができる。言い換えれば、医療機器内には、還元性ガスおよび不活性ガスの混合ガスが封入されてもよい。医療機器内に還元性ガスまたは混合ガスを封入する方法は特に限定されず、ノズル方式、チャンバー方式等の公知の封入方法が好適に用いられる。
特に還元性ガスが水素ガスであれば、水素ガスの濃度を低下させて可燃性あるいは爆発性を低くすることができるため好ましい。不活性ガスの具体的な種類は特に限定されず、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素(炭酸ガス)等が挙げられる。これらの中でも、低コストであること等から窒素ガスが好適に用いられる。
なお、混合ガスにおける還元性ガスの濃度は特に限定されないが、還元性ガスが水素ガスであれば、少なくとも5体積%以下であればよく、好ましくは2%前後(1〜3%の範囲内)であればよい。還元性ガスの濃度がこの範囲内であれば、医療機器内における混合ガスの可燃性等を有効に低減することができる。
本発明では、包装材で包装された医療機器内に、少なくとも還元性ガスが封入されていれば、アセチルセルロース等のエステル系樹脂の劣化、および、酢酸等(カルボン酸)の副生物の発生を有効に抑制できるが、さらに医療機器内には脱酸素剤が封入されていることが好ましい。医療機器の内部にはわずかに酸素が含まれている可能性があるので、脱酸素剤を封入することで内部の酸素が選択的に除去することができる。そのため、内部の酸素分子が、放射線照射により酸素ラジカルとなる可能性を大幅に低減することができる。その結果、酸素ラジカルに起因するエステル系樹脂の劣化および副生物の発生も有効に抑制することができる。また、放射線の照射前後において、酸素の存在によるエステル系樹脂製医療機器の酸化による劣化も有効に抑制することができる。
本発明で用いられる脱酸素剤は特に限定されないが、具体的には、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜二チオン酸塩、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ピロガロール、没食子酸、ロンガリット、アスコルビン酸および/またはその塩、ソルボース、グルコース、リグニン、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール、第一鉄塩、鉄粉等の金属粉等を挙げることができる。これら脱酸素剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
また、脱酸素剤が金属粉主体であれば、必要に応じて、公知の金属ハロゲン化合物等の酸化触媒を添加してもよい。また、脱酸素剤には、前記の酸化触媒以外に、脱臭剤、消臭剤、その他の機能性フィラーが含まれてもよい。また、脱酸素剤の形状も特に限定されず、例えば、粉状、粒状、塊状、シート状等の何れであってもよく、脱酸素剤となる物質を熱可塑性樹脂中に分散させてシート状またはフィルム状に成形したものであってもよい。
本発明においては、前記構成の医療機器包装体に対して、放射線を照射することにより、その内部を滅菌する。
本発明で滅菌に用いられる放射線とは、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、電子線、陽子線、中性子線等の電磁波または粒子線を指す。これらの放射線の中でも、滅菌効率および取り扱いやすさ等から、ガンマ線が好適に用いられる。
医療機器包装体に照射される放射線量は、滅菌が可能である範囲内であればよいが、一般的には、10〜50kGyの範囲内であればよく、10〜30kGyの範囲内であれば好ましい。照射線量が少なすぎると、十分な滅菌効果が得られない可能性があり、逆に照射線量が多すぎると、線量が強すぎるためにエステル系樹脂製の部材(例えば中空糸)またはエステル系樹脂製医療機器の他の部材が過剰に劣化したり分解したりするおそれがある。
医療機器包装体に対する放射線の照射は、少なくとも、エステル系樹脂製医療機器および還元性ガスが密封された状態で行われればよく、他の条件は特に限定されない。なお、医療機器内にさらに脱酸素剤を封入する場合には、一般に、密封した後に2日(48時間)以上経過してから放射線を照射することが好ましい。これは、脱酸素剤の種類あるいは袋状体の大きさ等の条件にもよるが、通常、袋状体の内部に脱酸素剤を密封してから48時間以上経過させれば、内部の酸素濃度は無視できるほど小さくすることができるから(通常、約0.1体積%以下)である。
ただし、密封した後から放射線照射までの時間が長すぎると、医療機器包装体内で雑菌が繁殖するおそれがあるので、遅くとも、密封した後から好ましくは10日以内、より好ましくは7日以内、さらに好ましくは5日以内に放射線を照射すればよい。
本発明を実施例、比較例、および参考例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正および改変を行うことができる。なお、以下の実施例、比較例、および参考例における透析膜の溶出物試験は、次に示すようにして行った。
(透析膜の溶出物試験および評価)
透析型人工腎臓装置承認基準(薬発第494号)の「3.透析膜の溶出物試験」にしたがって、次のような手順で溶出物試験を行い、溶出物についての評価を行った。
透析型人工腎臓装置承認基準(薬発第494号)の「3.透析膜の溶出物試験」にしたがって、次のような手順で溶出物試験を行い、溶出物についての評価を行った。
まず、清浄な環境下で、医療機器包装体内から中空糸型血液処理器を取り出し、超音波カッターにて本体ケースを切断し、本体ケースから中空糸を取り出した。取り出した中空糸は、ミクロトームにて2cm長に切断した上で、重量1.5gとなる分だけ測り取って、中空糸試料とした。
次に、蒸留水150mLを入れた三角フラスコに、前記中空糸試料を加え、恒温水槽を用いて70℃で1時間加温した。加温を終了して冷却した後、三角フラスコ内から試料液体を採取し、蒸留水を添加して150mLとし、これを試験液とした。なお、pH測定および紫外吸収スペクトル測定の比較のために、蒸留水のみを使用して同様の手順で取得した空試験液(ブランク)も調製した。
得られた試験液の評価については、外観、あわだち、pH、および紫外吸収スペクトル(UV220nm)を規格通りに評価または測定した。なお、pHについては、ブランクのpHから各試験液のpHを差し引いたΔpHを算出して評価した。また、外観は、試験液がほとんど無色透明で、肉眼で異物を認めないときに「○」と評価し、それ以外を「×」と評価した。また、あわだちは、規格通りの評価により、3分以内にあわがほとんど消失した場合を「○」と評価し、それ以外を「×」と評価した。また、試験液のpHは(株)堀場製作所製pHメーター(製品名:F−24)を用いて測定し、試験液の紫外吸収スペクトルは(株)日立製作所製の分光光度計(製品名:U−3000)を用いて測定した。
さらに、重金属の溶出(銅、亜鉛、鉛、六価クロム、カドミウムの溶出)も規格通り評価したが、亜鉛または銅の溶出については、試験液を前処理せずに、(株)パーキンエルマー製のICP発光分光分析装置(製品名:OPTIMA8300)にて測定した。重金属の溶出量が基準値以下の場合は「○」と評価し、それ以外を「×」と評価した。このときの検量線は、和光純薬工業株式会社製の原子吸光用標準液を超純水で希釈して調製した。
(実施例1)
ガス不透過性材料製の包装材として、外側からポリエチレンテレフタレートフィルム/アルミニウム箔または蒸着膜/ポリエチレンフィルムの3層構造を有するラミネートフィルム(凸版印刷(株)製)の袋状体を用い、中空糸型血液処理器としては、ニプロ(株)製のトリアセテートホローファイバーダイアライザー(モデルNo.FB−150G)を用い、脱酸素剤として、アイリスファイン・プロダクツ(株)製の鉄粉系脱酸素剤である商品名:サンソカット(登録商標)を用いた。
ガス不透過性材料製の包装材として、外側からポリエチレンテレフタレートフィルム/アルミニウム箔または蒸着膜/ポリエチレンフィルムの3層構造を有するラミネートフィルム(凸版印刷(株)製)の袋状体を用い、中空糸型血液処理器としては、ニプロ(株)製のトリアセテートホローファイバーダイアライザー(モデルNo.FB−150G)を用い、脱酸素剤として、アイリスファイン・プロダクツ(株)製の鉄粉系脱酸素剤である商品名:サンソカット(登録商標)を用いた。
大気雰囲気下で、前記袋状体内に、前記ダイアライザー1個と前記脱酸素剤1個を収容し、真空ポンプにより袋状体内の大気を脱気した。その後、ノズル方式により、水素ガス2体積%/窒素ガス98体積%の混合ガスボンベ(大陽日酸(株)製)から袋状体内に混合ガスを充填した。この混合ガスの充填操作を5回繰り返すことで、袋状体内に十分に混合ガスを充填した。その後、袋状体の開口部をヒートシーラーによりシールすることにより、袋状体を密封し、本発明の医療機器包装体のサンプルを作製した。なお、このサンプルは合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
得られたサンプルは、密封した後、室温で48時間以上静置した。その後、15kGyのガンマ線をサンプルに照射することにより、滅菌処理を行った(滅菌処理は(株)コーガアイソトープにて実施)。滅菌後のサンプルについて、前述した通りに透析膜の溶出物試験および評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例2)
袋状体内に脱酸素剤を封入しなかった以外は、前記実施例1と同様にして、医療機器包装体のサンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
袋状体内に脱酸素剤を封入しなかった以外は、前記実施例1と同様にして、医療機器包装体のサンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
これらサンプルについても、前記実施例1と同様にして放射線照射による滅菌処理を行った後に、透析膜の溶出物試験および評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例1)
袋状体内の脱気および混合ガスの充填を行わなかった以外は、前記実施例と同様にして、医療機器包装体の比較サンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
袋状体内の脱気および混合ガスの充填を行わなかった以外は、前記実施例と同様にして、医療機器包装体の比較サンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
これら比較サンプルについても、前記実施例1と同様にして放射線照射による滅菌処理を行った後に、透析膜の溶出物試験および評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例2)
中空糸型血液処理器として、ニプロ(株)製のポリエーテルスルホンダイアライザーであるポリネフロン(登録商標)PES−Sα(モデルNo.PES−11Sα)を用いたこと、脱酸素剤として、三菱ガス化学(株)製の鉄粉系脱酸素剤である商品名:エージレス(登録商標)を用いたこと、並びに、混合ガスとして、水素ガス5体積%/窒素ガス95体積%を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、医療機器包装体の比較サンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
これら比較サンプルについても、前記実施例1と同様にして放射線照射による滅菌処理を行った後に、透析膜の溶出物試験(ΔpHおよび紫外吸収スペクトル(UV220nm)の測定のみ)を行った。その結果を表2に示す。
(比較例3)
袋状体内に脱酸素剤を封入しなかった以外は、前記比較例2と同様にして(つまり、中空糸型血液処理器として、前記ポリネフロン(登録商標)PES−Sαを用いたこと、並びに、混合ガスとして、水素ガス5体積%/窒素ガス95体積%を用いたこと以外は、前記実施例2と同様にして)、医療機器包装体の比較サンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
袋状体内に脱酸素剤を封入しなかった以外は、前記比較例2と同様にして(つまり、中空糸型血液処理器として、前記ポリネフロン(登録商標)PES−Sαを用いたこと、並びに、混合ガスとして、水素ガス5体積%/窒素ガス95体積%を用いたこと以外は、前記実施例2と同様にして)、医療機器包装体の比較サンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
これら比較サンプルについても、前記実施例1と同様にして放射線照射による滅菌処理を行った後に、透析膜の溶出物試験(ΔpHおよび紫外吸収スペクトル(UV220nm)の測定のみ)を行った。その結果を表2に示す。
(比較例4)
袋状体内の脱気および混合ガスの充填を行わず、通常滅菌処理を行った以外は、前記比較例2と同様にして(つまり、中空糸型血液処理器として、前記ポリネフロン(登録商標)PES−Sαを用いたこと以外は、前記比較例1と同様にして)、医療機器包装体の比較サンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
袋状体内の脱気および混合ガスの充填を行わず、通常滅菌処理を行った以外は、前記比較例2と同様にして(つまり、中空糸型血液処理器として、前記ポリネフロン(登録商標)PES−Sαを用いたこと以外は、前記比較例1と同様にして)、医療機器包装体の比較サンプルを合計3個作製した(サンプルx1,x2およびx3)。
これら比較サンプルについても、前記実施例1と同様にして放射線照射による滅菌処理を行った後に、透析膜の溶出物試験(ΔpHおよび紫外吸収スペクトル(UV220nm)の測定のみ)を行った。その結果を表2に示す。
(参考例)
比較例4と同様に合計3個の比較サンプルを作製し(サンプルx1,x2およびx3)、滅菌処理を行わずに、透析膜の溶出物試験(ΔpHおよび紫外吸収スペクトル(UV220nm)の測定のみ)を行った。その結果を表2に示す。
比較例4と同様に合計3個の比較サンプルを作製し(サンプルx1,x2およびx3)、滅菌処理を行わずに、透析膜の溶出物試験(ΔpHおよび紫外吸収スペクトル(UV220nm)の測定のみ)を行った。その結果を表2に示す。
(実施例、比較例、および参考例の対比)
表1に示すように、実施例1、2および比較例1のいずれのサンプルも、外観、あわだち、および重金属の溶出については「×」がなかったが、ΔpHについては、実施例1、2よりも比較例1の方が大きな値となり(平均値では、実施例1が1.01、実施例2が1.02、比較例1が1.35)、紫外吸収スペクトルについては、実施例1、2よりも比較例の方が高い値となった(平均値では、実施例1が0.023、実施例2が0.026、比較例が0.030)。
つまり、実施例1、2および比較例1では、いずれも透析膜からは承認基準で規制される成分の溶出は生じていないが、比較例1では、放射線照射によりアセチルセルロースが分解して酢酸が発生したためpHが低下し、また、酢酸が試験液に溶出したため紫外吸収スペクトルの値が上昇したものと判断される。一方、実施例1、2では、還元性ガスである水素ガスを封入することで、放射線照射によるアセチルセルロースの分解が抑制されたため、酢酸の発生に起因するpHの低下、あるいは紫外吸収スペクトルの上昇が見られなかったものと判断される。
また、実施例1および実施例2の結果では、結果に顕著な違いが生じていないことから、還元性ガスの封入により、放射線照射に伴うアセチルセルロースの分解を有効に抑制できたものと判断される。なお、ΔpHも紫外吸収スペクトルも、脱酸素剤を封入した実施例1の方が、脱酸素剤を封入した実施例2よりも低い値となっていることから、本発明においては、少なくとも還元性ガスを封入すればエステル系樹脂の分解を有効に抑制できること、脱酸素剤を封入すればより一層分解を抑制可能であることが分かる。
ここで、表1に示す実施例1および2、並びに比較例1は、前記の通り、エステル系樹脂製の中空糸を備えている中空糸型血液処理器を用いた例である。これに対して、表2に示す比較例2〜4および参考例は、いずれも、エステル系樹脂製の中空糸を備えていない中空糸型血液処理器を用いた例である。比較例2〜4のうち、比較例2が実施例1に対応し、比較例3が実施例2に対応し、比較例4が比較例1に対応する。また、参考例は滅菌していない例であるため、比較例2〜4の結果を評価するための基準となる。
比較例2〜4のΔpHに関しては、表2に示すように、比較例2〜4のいずれのΔpHも参考例より大きな値となっているが、比較例3のΔpHに比べて比較例2および4のΔpHが同程度で大きな値を示している(平均値では、参考例が0.06、比較例2が0.50、比較例3が0.34、比較例4が0.54)。これに対して、実施例1および2では、ΔpHはほぼ同程度の値を示しており、比較例1よりも小さな値となっている。
また、比較例2〜4の紫外吸収スペクトルに関しては、表2に示すように、ΔpHとは異なり、比較例2および4の紫外吸収スペクトルが、参考例の紫外吸収スペクトルより低い値となっており、比較例3の紫外吸収スペクトルのみが参考例の紫外吸収スペクトルよりも高い値となっている(平均値では、参考例が0.133、比較例2が0.074、比較例3が0.231、比較例4が0.076)。これに対して、実施例1および2では、紫外吸収スペクトルはほぼ同程度の値を示しており、比較例1よりも低い値となっている。
このように、比較例2〜4のΔpHも紫外吸収スペクトルも、実施例1、2および比較例1のΔpHおよび紫外吸収スペクトルとは異なる挙動を示している。そのため、エステル系樹脂製の中空糸を備えていない中空糸型血液処理器に対して本発明を適用させても、有効な結果が得られないことが分かる。なお、実施例1および2と比較例2および3では、用いた混合ガスの混合比が異なるものの、いずれも前述した実用上の範囲内(水素ガスであれば5体積%以下)に入っている。それゆえ、混合ガスの混合比の違いは、これら実施例および比較例の結果の違いに実体的に影響していない。
このように、本発明によれば、還元性ガスを封入した上で放射線照射による滅菌処理を行うことで、中空糸を構成するアセチルセルロース等のエステル系樹脂の劣化が抑制され、エステル系樹脂の分解による酢酸等(カルボン酸)の副生物の発生を有効に抑制することができる。その結果、分解によって放出された酢酸等(カルボン酸)が、医療機器内部に収容される薬剤または使用時に用いられる薬剤、もしくは血液に意図しない影響を与えてしまうことを防止することができる。また、滅菌後の中空糸型血液処理器等の医療機器の品質低下を回避することも可能である。
すなわち、主鎖にエステル結合が関与している樹脂においては、分解によって生じた酸が触媒として作用してエステルが加水分解し、エステル結合が切れ、分子量が低下し、強度が落ちてしまうといった問題が起こりにくく、このため、使用に際し加わる応力による故障等の不具合が起こる可能性を少なくすることができる。また、側鎖にエステル結合が関与している樹脂においては、分解により表面電化あるいは立体構造が変化し、血液または薬剤との間で意図しない相互作用が働くことを防止する。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明は、アセチルセルロース製の中空糸を備える中空糸型血液処理器等のように、放射線照射により劣化または分解のおそれがあるエステル系樹脂製の部材を含むエステル系樹脂製医療機器の滅菌および製造の分野に広く好適に用いることができる。
Claims (6)
- エステル系樹脂製医療機器を、ガス不透過性材料製の包装材内に密封することにより、医療機器包装体を得て、当該医療機器包装体に対して、放射線を照射することにより、前記医療機器包装体内を滅菌する、エステル系樹脂製医療機器の滅菌方法であって、
前記エステル系樹脂製医療機器内に少なくとも還元性ガスを封入した上で、前記放射線を照射することを特徴とする、
エステル系樹脂製医療機器の滅菌方法。 - 前記還元性ガスが水素ガスであることを特徴とする、
請求項1に記載のエステル系樹脂製医療機器の滅菌方法。 - 前記医療機器包装体内には、さらに脱酸素剤が封入されていることを特徴とする、
請求項1に記載のエステル系樹脂製医療機器の滅菌方法。 - 前記医療機器包装体内には、前記還元性ガスおよび不活性ガスの混合ガスが封入されていることを特徴とする、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエステル系樹脂製医療機器の滅菌方法。 - 前記包装材が、ガス不透過性を備えたフィルムであり、
前記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする、
請求項4に記載のエステル系樹脂製医療機器の滅菌方法。 - 前記エステル系樹脂製医療機器が、アセチルセルロース製の中空糸を備える中空糸型血液処理器であることを特徴とする、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエステル系樹脂製医療機器の滅菌方法。
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