JP6287713B2 - 熱間製管用の潤滑組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、潤滑組成物に関し、さらに詳しくは、熱間製管用の潤滑組成物に関する。
マンネスマン法により製造される継目無鋼管では、穿孔機による穿孔圧延の後、マンドレルミルによる延伸圧延が実施される。
マンドレルミルによる延伸圧延では、初めに、中空素管にマンドレルバーを挿入する。次に、マンドレルバーが挿入された中空素管に対して、延伸圧延を実施する。延伸圧延後、中空素管からマンドレルバーを引き抜く。
延伸圧延中、中空素管は圧延方向に延伸される。このとき、マンドレルミルのロール周速と、マンドレルバーの圧延方向への移動速度とは異なる。そのため、マンドレルバーの表面は、中空素管の内面に対して摺動し、摩擦が発生する。摩擦係数が過剰に大きくなれば、焼付きが発生したり、中空素管の内面に疵が発生したりする。摩擦係数が過剰に大きくなればさらに、中空素管の均一な変形が阻害される。したがって、延伸圧延中のマンドレルバーには、中空素管に対する潤滑性が求められる。
一方、延伸圧延終了後のマンドレルバーは、中空素管から引き抜かれる。この引き抜き動作をバーストリッピングという。バーストリッピング時にも摩擦係数が過剰に大きければ、マンドレルバーが引き抜きにくくなる。したがって、したがって、マンドレルバーには、延伸圧延時の潤滑性だけでなく、バーストリッピング時の潤滑性も求められる。
上述のようなマンドレルバーの潤滑性を高めるために、潤滑組成物が利用される。マンドレルバーに塗布される潤滑組成物は、次のとおり提案されている。
特許第2910592号(特許文献1)に開示された熱間加工用潤滑組成物は、平均粒径が40μm以下で、純度が81%以上の黒鉛を5〜35重量部、平均粒径が40μm以下の水分散型の高分子又は水溶性の高分子を5〜20重量部、純度が81%以上の硼酸を3〜15重量部、平均粒径が40μm以下、純度が81%以上のマイカを3〜35%重量部、及び、水を15〜86重量部含有する(特許文献1の段落[0015]及び[0016]参照)。上記潤滑組成物は、マンドレルミルによる延伸圧延時に生じる摩擦係数を低減し、工具と加工材との融着を効果的に防止できる、と特許文献1には記載されている(段落[0044]参照)。
特開平9−78080号公報(特許文献2)に開示された高温加工用潤滑剤組成物は、カリウム四珪素マイカ、ナトリウム四珪素マイカ、天然金マイカ、ベントナイト、モンモリロナイト、及び、バーミュキュライトからなる群から選択される1種又は2種以上の粒子状の酸化物系層状物質と、酸化硼素、硼酸、アルカリ金属硼酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び、融点が1000℃以下の珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の結合剤とを、1:4〜1:1の重量比で配合してなる(特許文献2の段落[0013]参照)。上記潤滑組成物は、黒鉛を含有しないため、圧延される鋼材に浸炭層が形成されず、引っ掻き疵が発生しない、と記載されている(段落[0039]参照)。
特許第2910592号 特開平9−78080号公報
しかしながら、特許文献1及び2では、延伸圧延時の潤滑性(摩擦係数)については記載されているものの、バーストリッピング時の潤滑性については言及されていない。特許文献1及び2の潤滑組成物では、バーストリッピング時の潤滑性が低い場合があり得る。
本発明の目的は、延伸圧延時及びバーストリッピング時において優れた潤滑性を示す、熱間製管用の潤滑組成物を提供することである。
本実施形態による熱間製管用の潤滑組成物は、マイカと、黒鉛と、硼酸と、水とを含有し、式(1)で定義されるF1が30〜80質量%であり、式(2)で定義されるF2が40〜60%である。
F1=[マイカ]/([マイカ]+[黒鉛]) (1)
F2=[硼酸]/([マイカ]+[黒鉛]+[硼酸]) (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の[マイカ]には、潤滑組成物中のマイカの含有量(質量%)が代入される。[黒鉛]には、潤滑組成物中の黒鉛の含有量(質量%)が代入される。[硼酸]には、潤滑組成物中の硼酸の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態による潤滑組成物は、延伸圧延時の潤滑性に優れ、かつ、バーストリッピング時における潤滑性にも優れる。
図1は、模擬延伸圧延試験で得られた、F1と、摩擦係数μ1との関係を示す図である。 図2は、模擬延伸圧延試験の模式図である。 図3は、模擬バーストリッピング試験で得られた、F1と、摩擦係数μ2との関係を示す図である。 図4は、模擬バーストリッピング試験の模式図である。 図5は、F2と、摩擦係数μ2との関係を示す図である。 図6は、F2と、摩擦係数μ1との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。
[潤滑組成物]
本実施形態の潤滑組成物は、熱間製管に利用され、特に、マンドレルバーを備えたマンドレルミルを用いた延伸圧延に利用される。潤滑組成物は、延伸圧延前のマンドレルバーの表面に塗布される。潤滑組成物は、マイカと、黒鉛と、硼酸と、水とを含有する。
[マイカ]
延伸圧延開始時、中空素管の温度は1100〜1250℃程度の高温である。このような高温の中空素管にマンドレルバーが挿入され、延伸圧延が開始される。そのため、このような高温域での延伸圧延中において、優れた潤滑性が求められる。
マイカは、上記高温域で実施される延伸圧延時において、後述の硼酸と反応して潤滑被膜を形成する。マンドレルバーの表面に潤滑被膜が形成されることにより、延伸圧延におけるマンドレルバーの摩擦係数を低減し、潤滑性を高める。
マイカとは、Al、K、Mg、Na、Fe等を含有するケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカは天然のマイカ(天然雲母)でも、人工のマイカでもよい。マイカはたとえば、カリウム四珪素マイカ{KMg2.5(Si410)F2}、ナトリウム四珪素マイカ{NaMg2・5(Si410)F2}、天然金マイカ{KMg3(AlSi310)(OH)2}等である。潤滑組成物は、2種以上のマイカを含有してもよい。
潤滑組成物中のマイカ含有量の好ましい下限は4.5質量%であり、さらに好ましくは6質量%である。潤滑組成物中のマイカ含有量の好ましい上限は12質量%であり、さらに好ましくは9質量%である。
[黒鉛]
上述のとおり、延伸圧延における中空素管温度は高温(1100〜1250℃程度)であるため、マンドレルバーには高温域での潤滑性が求められる。一方、延伸圧延後のバーストリッピング開始時の中空素管温度は低く、500〜650℃程度である。バーストリッピング時にもマンドレルバーには潤滑性が求められる。つまり、潤滑組成物は、1100〜1250℃程度といった高温域での潤滑性と、500〜650℃程度の低温域での潤滑性とが求められる。
黒鉛は、低温域での潤滑性を高め、バーストリッピング時にマンドレルバーを中空素管から引抜きやすくする。黒鉛は、天然黒鉛であってもよいし、合成黒鉛であってもよい。黒鉛の好ましい平均粒径は100μm以下である。潤滑組成物は、2種以上の黒鉛を含有してもよい。
潤滑組成物中の黒鉛含有量の好ましい下限は3質量%であり、さらに好ましくは6質量%である。潤滑組成物中の黒鉛含有量の好ましい上限は10.5質量%であり、さらに好ましくは9質量%である。
[硼酸]
本明細書において、硼酸は、硼酸及び/又は硼酸化合物を意味する。硼酸は、延伸圧延時において、マイカと反応して潤滑被膜を形成し、延伸圧延時の潤滑性を高める。硼酸化合物はたとえば、アルカリ金属硼酸塩、酸化硼素、硼素を含有する無機系化合物である。アルカリ金属硼酸塩はたとえば、硼酸カリウム、硼酸ナトリウム、硼酸リチウム等である。硼素を含有する無機系化合物はたとえば、硼酸アミン類である。潤滑組成物は、2種以上の硼酸を含有してもよい。
潤滑組成物中の硼酸含有量の好ましい下限は10質量%である。潤滑組成物中の硼酸含有量の好ましい上限は22質量%である。
[水]
水は、マイカ、黒鉛、及び硼酸塩と混合され、スラリーを形成する。潤滑組成物が水を含有することにより、潤滑組成物はスラリーになる。そのため、延伸圧延前のマンドレルバーの表面に潤滑組成物を均一に塗布しやすい。
潤滑組成物中の水含有量の好ましい下限は63質量%であり、さらに好ましくは66質量%である。潤滑組成物中の水含有量の好ましい上限は75質量%であり、さらに好ましくは73質量%である。
[F1及びF2について]
本実施形態の潤滑組成物はさらに、式(1)で定義されるF1が30〜80質量%であり、式(2)で定義されるF2が40〜60質量%である。
F1=[マイカ]/([マイカ]+[黒鉛]) (1)
F2=[硼酸]/([マイカ]+[黒鉛]+[硼酸]) (2)
[マイカ]には、潤滑組成物中のマイカの含有量(質量%)が代入される。[黒鉛]には、潤滑組成物中の黒鉛の含有量(質量%)が代入される。[硼酸]には、潤滑組成物中の硼酸含有量(質量%)が代入される。つまり、潤滑組成物に含有される「硼酸」が、狭義の硼酸である場合(つまり、原料として硼酸そのものが使用された場合)、硼酸の含有量が代入される。潤滑組成物の原料として「硼酸化合物」が使用された場合、F2中の[硼酸]には、硼酸化合物の含有量が代入される。
F1が30〜80質量%であり、F2が40〜60質量%であることで、潤滑組成物は、延伸圧延時及びバーストリッピング時に、優れた潤滑性を示す。以下、この点について説明する。
[F1について]
[F1の下限について]
図1は、F1と、延伸圧延時の摩擦係数μ1との関係を示す。図1は次に示す模擬延伸圧延試験により得られた。
後述の実施例に示す、F1が異なる複数の潤滑組成物を準備した。各潤滑組成物のF2はいずれも52質量%であった。各潤滑組成物に対して、図2に示す模擬延伸圧延試験を実施した。
図2を参照して、模擬延伸圧延試験装置10は、ロール11と、板状の工具材14とを備えた。中空素管を想定した鋼板12を準備した。鋼板12の化学組成は、JIS G4304(2012)に規定されたSUS304に相当した。工具材14の化学組成は、JIS G4404(2006)に規定されたSKD61に相当した。
工具材14の上面に、潤滑組成物13を塗布した。塗布された潤滑組成物13の平均膜厚は50μmであった。潤滑組成物13が塗布された工具材14の上面に、窒素雰囲気で1100℃に加熱された鋼板12を載せた。さらに、ロール11を鋼板12に荷重P1で押し付けて、30%の圧下率で圧延を実施した。
実際の延伸圧延時では、マンドレルミルのロール周速V1と、マンドレルバーの圧延方向への移動速度V2が異なる。周速V1と速度V2との差により中空素管とマンドレルバーとの間に摩擦が生じる。
そこで、模擬延伸圧延試験では、ロール11の周速V1を78.5mm/sとし、工具材14の圧延方向への移動速度V2を40mm/sとした。V2/V1は0.51であった。なお、圧延前、工具材14に対してスケール処理を実施して、工具材14の表面にスケールを形成した。圧延中の工具材14の温度は400℃であった。
上記条件で鋼板12を圧延し、各潤滑組成物を用いた場合の延伸圧延中の摩擦係数μ1を次の式で求めた。
摩擦係数μ1=工具材14に掛かる摩擦力F/ロール11を鋼板12に押し付ける荷重P1
実際の延伸圧延では、潤滑組成物が一度塗布されたマンドレルバーを、複数回の延伸圧延に利用する。そこで、本試験では、潤滑組成物ごとに、潤滑組成物を塗布後の工具材14に対して、模擬延伸圧延試験を2回実施し、1回目(1パス目)及び2回目(2パス目)の摩擦係数μ1をそれぞれ求めた。得られた試験結果に基づいて、図1を作成した。
図1中の「◆」は1パス目の摩擦係数μ1を示す。「◇」は2パス目の摩擦係数μ1を示す。実際の延伸圧延では、複数パス延伸圧延を行った後でも優れた潤滑性が得られる方が好ましい。そこで、本試験では、2パス目の摩擦係数μ1で潤滑性を評価した。
図1を参照して、F1が30質量%未満の場合、摩擦係数μ1が大きく、0.11を超える。したがってこの場合、実際の延伸圧延における潤滑性は低く、焼付きが発生しやすくなる。F1が30質量%以上の場合、摩擦係数μ1は0.11以下と小さい。そのため、潤滑組成物は延伸圧延中において優れた潤滑性を示し、焼付きの発生を抑制できる。したがって、F1の下限は30質量%である。
[F1の上限について]
図3は、F1とバーストリッピング開始時における摩擦係数μ2との関係を示す図である。図3は次に示す模擬バーストリッピング試験により得られた。
上述の模擬延伸圧延試験と同じ複数の潤滑組成物を準備した。各潤滑組成物のF2はいずれも52質量%であった。各潤滑組成物に対して、図4に示す模擬バーストリッピング試験を実施した。
図4を参照して、模擬バーストリッピング試験装置20は、マンドレルバーを模したリング状の工具材21と、加熱コイル23とを備えた。加熱コイル23を、中空素管を模擬した円柱状の鋼材22の周りに配置した。
工具材21の化学組成は、JIS G4404(2006)に規定されたSKD61に相当した。工具材21の直径は60mmであり、肉厚は20mmであり、高さ(長さ)は30mmであった。鋼材22の化学組成は、JIS G4304(2012)に規定されたSUS304に相当した。鋼材22の直径は50mmであり、高さ(長さ)は60mmであった。
工具材21の下端面に、潤滑組成物24を塗布して乾燥した。乾燥後の潤滑組成物の膜厚は250〜300μmであった。
加熱コイル23により、鋼材22を1200℃に加熱した。加熱後、鋼材22の上端面に、潤滑組成物24が形成された工具材21の下端面を、荷重P2=800kgfで押し付け、そのまま10秒保持した。その後、工具材21を鋼材22に荷重P2で押し付けたまま、鋼材22を軸周りに100rpmで1分間回転させた。回転中、鋼材22の温度を1200℃に保持した(第1工程)。
回転終了後、加熱を停止し、鋼材22が600℃になるまで放冷した。鋼材22が600℃になった後、工具材21を鋼材22に荷重P2=800kgfで押し付けたまま、鋼材22を軸周りに100rpmで再び1分間回転させた(第2工程)。
上記試験において、第1工程は「延伸圧延工程」を、第2工程は延伸圧延後の「バーストリッピング工程」を模擬したものである。第2工程中、工具材21に掛かる押し付け荷重P2と、鋼材22に掛かるトルクTとを測定した。バーストリッピングの場合、バーストリッピング開始時(つまり摺動開始直後)が最も摩擦係数が高くなる。そこで、第2工程開始時(摺動開始直後)の荷重P2及びトルクTを測定し、次の式に基づいて、第2工程開始時の摩擦係数μ2を求めた。
摩擦係数μ2=(T/d)/P
ここで、dはトルクアーム長さである。上記方法で求めた摩擦係数μ2は、バーストリッピング開始時の摩擦係数に相当する。上記試験で得られた摩擦係数μ2に基づいて、図3を作成した。
図3を参照して、摩擦係数μ2が0.5以下であれば、バーストリッピングにおいて、マンドレルバーを容易に引き抜くことができる。図3を参照して、F1が80質量%を超えると、摩擦係数μ2が0.5を超える。マイカに対する黒鉛の割合が少なくなるため、バーストリッピングが実施される低温域での潤滑性が低下したと考えられる。図3より、F1が80質量%以下であれば、バーストリッピング時においても優れた潤滑性を示す。
以上より、F1が30〜80質量%であれば、潤滑組成物は、延伸圧延時において優れた潤滑性を示し、マンドレルバーを複数回の延伸圧延に利用しても、焼付きを抑制できる。さらに、バーストリッピング時においても優れた潤滑性を示す。
F1の好ましい下限は40質量%である。F1の好ましい上限は60質量%である。
[F2について]
図5は、F2とバーストリッピング開始時における摩擦係数μ2との関係を示す図である。図5は次の試験方法により得られた。
後述の実施例に示す、F2が異なる複数の潤滑組成物を準備した。各潤滑組成物のF1はいずれも33質量%であった。各潤滑組成物に対して、上述の模擬バーストリッピング試験を実施して、摩擦係数μ2を得た。得られた摩擦係数μ2に基づいて、図5を作成した。
図5を参照して、F2がいずれの値であっても、摩擦係数μ2は0.5以下である。つまり、バーストリッピング時の潤滑性は、潤滑組成物中の硼酸含有量の割合には依存しない。
一方、延伸圧延時の潤滑性(摩擦係数μ1)は、潤滑組成物中の硼酸含有量の割合に依存する。図6は、F2と延伸圧延時における摩擦係数μ1との関係を示す図である。図6は、次の方法により得られた。図5の場合と同様に、F2が異なる複数の潤滑組成物を準備した。各潤滑組成物のF1はいずれも33質量%であった。各潤滑組成物に対して、上述の模擬延伸圧延試験を実施し、摩擦係数μ1を得た。得られた摩擦係数μ1に基づいて、図6を作成した。
図6中の「◆」は、1パス目の摩擦係数を示し、「◇」は、2パス目の摩擦係数を示す。図6を参照して、2パス目の摩擦係数μ1は、F2の増大とともに顕著に低下し、F2が40質量%以上となると、0.11以下になった。一方、F2がさらに増大すると、摩擦係数μ1は上昇し、60質量%を超えると、0.11を超えた。つまり、図6では、F2と摩擦係数μ1との関係は、F2=50質量%近傍に変曲点を有する下に凸のグラフとなった。
以上の結果から、次の事項が考えられる。F2が低すぎる場合、潤滑組成物中の硼酸含有量が低すぎる。この場合、延伸圧延時にマイカと硼酸とが十分に反応できないため、反応により生成される潤滑被膜の量が不十分である。そのため、摩擦係数μ1が高くなり、延伸圧延中の潤滑性が低くなる。一方、F2が高すぎる場合、潤滑組成物中の硼酸含有量が高すぎる。この場合、潤滑被膜は生成されるものの、硼酸が多すぎるため、潤滑組成物の粘度が低い。そのため、潤滑組成物がマンドレルバーに保持されにくく、マンドレルバーから脱落、離脱しやすい。その結果、摩擦係数μ1が高くなり、延伸圧延中の潤滑性が低下する。
F2が40〜60質量%である場合、潤滑被膜が十分に生成し、潤滑組成物の粘度も過剰に低くならない。そのため、延伸圧延時の摩擦係数μ1が低く、優れた潤滑性を示す。
[その他]
本実施形態の潤滑組成物は、マイカと、黒鉛と、硼酸と、水とともに、他の化合物を含有してもよい。潤滑組成物はたとえば、周知の分散剤を含有してもよい。潤滑組成物はまた、粘着剤を含有してもよい。粘着剤を含有すれば、マンドレルバーの表面との粘着力が高まる。粘着剤はたとえば、有機バインダであり、たとえば、アルカリ系樹脂である。
[潤滑組成物の使用方法]
上述の潤滑組成物の使用方法の一例を説明する。初めに、潤滑組成物を準備する。潤滑組成物をマンドレルバーの表面に塗布する。塗布方法は特に限定されない。たとえば、スプレーにより潤滑組成物を塗布する。塗布後、潤滑組成物を乾燥する。乾燥後のマンドレルバーを、延伸圧延に利用する。
以上の工程により、潤滑組成物を、マンドレルバーを用いた延伸圧延に利用することができる。
表1に示す成分を有する試験番号1〜18の潤滑組成物を準備した。
Figure 0006287713
試験番号1〜18の潤滑組成物に対して、上述の模擬延伸圧延試験を実施した。模擬延伸圧延試験では、マンドレルバーを1パス目及び2パス目と連続して使用することを想定し、2回連続して試験を実施した。各回(1パス目、2パス目)ごとに摩擦係数μ1を求めた。さらに、試験番号1〜18の潤滑組成物に対して、上述の模擬バーストリッピング試験を実施した。
[試験結果]
表1に試験結果を示す。表1を参照して、試験番号1〜7の潤滑組成物の成分は適切であり、F1及びF2ともに適切であった。その結果、試験番号1〜7の摩擦係数μ2はいずれも0.5以下であり、バーストリッピング時における優れた潤滑性を示した。さらに、試験番号1〜7の2パス目の摩擦係数μ1はいずれも0.11以下であり、延伸圧延時における優れた潤滑性を示した。
一方、試験番号8のF1は低すぎた。そのため、2パス目の摩擦係数μ1は0.11を超え、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号9及び試験番号10のF2は低すぎた。そのため、2パス目の摩擦係数μ1は0.11を超え、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号11の及び試験番号12のF2は高すぎた。そのため、2パス目の摩擦係数μ1は0.11を超え、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号13及び試験番号14のF1は低すぎた。そのため、2パス目の摩擦係数μ1は0.11を超え、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
試験番号15〜17のF1は高すぎた。そのため、摩擦係数μ2が0.5を超え、バーストリッピング時における潤滑性が低かった。
試験番号18のF1及びF2はいずれも低すぎた。そのため、2パス目の摩擦係数μ1は0.11を超え、延伸圧延時における潤滑性が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (1)

  1. 熱間製管用の潤滑組成物であって、
    マイカと、
    黒鉛と、
    硼酸と、
    水とを含有し、
    式(1)で定義されるF1が30〜80質量%であり、式(2)で定義されるF2が40〜56質量%である、潤滑組成物。
    F1=[マイカ]/([マイカ]+[黒鉛]) (1)
    F2=[硼酸]/([マイカ]+[黒鉛]+[硼酸]) (2)
    ここで、式(1)及び/又は式(2)中の[マイカ]には、前記潤滑組成物中の前記マイカの質量%での含有量が代入される。[黒鉛]には、前記潤滑組成物中の前記黒鉛の質量%での含有量が代入される。[硼酸]には、前記潤滑組成物中の前記硼酸の質量%での含有量が代入される。
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