JP6316253B2 - ポリシラン製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、モノマーとアルカリ金属とを反応させてポリシランを製造する方法に関し、特に、ポリシランが合成された反応液に残存する未反応のアルカリ金属を失活させる技術に関する。
ポリシランを製造する技術として特許文献1には、フェニルトリクロロシランとメチルトリクロロシランとフェニルメチルジクロロシランとを混合したモノマーの混合液を製造し、この混合液を、金属ナトリウムをキシレンに分散したキシレン溶液中に滴下することによりポリシランを製造する方法が示されている。これは、キシレン溶液を高速撹拌してアルカリ金属を分散させ、所謂ウルツ反応によってモノマーのハロゲン化物とアルカリ金属とをカップリングさせるものである。その結果、ハロゲンが分離したモノマーの珪素どうしが結合してポリシランが合成される。
特許文献1に記載のポリシラン製造方法では、モノマーに含まれるハロゲン原子の総モル数に対して0.95〜1.2倍のモル数の金属ナトリウムを用いてポリシランを合成した後、ポリシランが含まれる反応液に低級アルコールを滴下して加え、未反応の金属ナトリウムを失活させている。このとき、金属ナトリウムに対して低級アルコールの添加量を0.05〜0.3当量と少量に設定することで、アルコールによるポリシランの分解が抑制されることが開示されている。
特開2007‐106894号公報
従来のようにアルコールを金属ナトリウムの失活に用いるのは、酸化還元電位の高い金属ナトリウムがアルコールに溶解して、水素ガスを放出すると共に金属アルコキシドが生成されるからである。しかしながら、このアルコキシドは、時間の経過と共にポリシランのケイ素どうしの結合を切断して分解し、ポリシランの分子量を低下させるおそれがある。その結果、従来のようにアルコールの添加量を少量に設定した場合でも、算術平均分子量が数千程度のポリシランしか合成できない。しかも、反応液中の金属ナトリウム残存量が多い場合、アルコールが不足して金属ナトリウムを確実に失活させることができない。
例えば、ポリシランを用いた素材では、分子量が大きいほど高強度であるため、工業材料では、ある程度の分子量を超えるポリシランを必要とするものである。
そこで、未反応のアルカリ金属を確実に失活させつつ、ポリシランの分子量を高めることのできるポリシラン製造方法が望まれている。
本発明に係るポリシラン製造方法の特徴構成は、アルカリ金属を不活性溶媒に分散させた分散体を、モノマーを含む反応液に滴下し、ポリシランを合成する第一工程と、前記ポリシランが合成された前記反応液とアルコールに水を添加した失活液とを反応させ、前記アルカリ金属を失活させる第二工程とを備えている点にある。また、前記第一工程において、前記反応液の温度が前記アルカリ金属の融点未満である所定範囲内となるように、前記反応液の加熱および冷却を制御し、前記反応液の温度が前記所定範囲の上限値を超えたときに前記反応液を冷却しながら前記分散体の滴下インターバルを延長しても良い。また、前記第一工程において、前記反応液の温度を前記モノマーの沸点未満に設定し、前記分散体の滴下量が所定量となった後、前記反応液を前記モノマーの沸点以上に加熱し、蒸発した前記モノマーを冷却して凝縮した前記モノマーと前記分散体とを反応させても良い。
上述したように、反応液中に残存する未反応のアルカリ金属がアルコールに溶解して、金属アルコキシドが生成される。このとき、本構成では、アルカリ金属の失活液としてアルコールに水を添加しているので、金属アルコキシドが水で速やかに分解される。つまり、金属アルコキシドを、水によってアルコールとアルカリ金属の水酸化物とに分解することができる。よって、アルコキシドに起因するポリシランの分子量の低下を抑制することができる。
しかも、アルコールに水を添加するだけでポリシランの分解が抑制されるため、従来のようにアルカリ金属を失活させるために用いるアルコールを少量に設定する必要がない。このため、アルカリ金属の残存量に応じて十分なアルコールを添加することが可能となり、未反応のアルカリ金属を確実に失活させることができる。
アルカリ金属を含む溶液にモノマーを添加する場合、過剰なアルカリ金属中にモノマーが添加されるため、モノマーどうしの衝突確率が小さく、分子量の増大が十分進行しないうちに環状構造となり、分子の成長が停止するおそれがある。そこで、本構成では、モノマーを含む反応液の中にアルカリ金属の分散体を添加することとしている。その結果、添加したアルカリ金属量に応じたモノマーに対してのみケイ素とハロゲンとの結合が切断され、過剰なアルカリ金属が含まれないためにモノマーどうしの衝突確率が高くなり、複数のモノマーが鎖状に結合する反応が促進される。よって、ポリシランの分子量を高めることができる。しかも、アルカリ金属を過剰に添加しなくて良いので、アルカリ金属の失活に用いるアルコール量を節約でき、装置の大型化を招くことがない。
他の特徴構成は、前記第二工程において、前記失活液に対する前記水の割合が10.5重量パーセント以下に設定されている点にある。
過剰に水を添加した場合、未反応のモノマーと水とが反応してポリシロキサンが合成されるおそれがある。この場合、このポリシロキサンが不純物として混入してしまい、ポリシランの製造効率が低下する。そこで、本構成のように、水の添加量を所定割合(10.5重量パーセント)以下とすることで、アルコキシドの分解を促進しつつ、不純物の合成を阻止することができる。よって、未反応のアルカリ金属を確実に失活させつつ、分子量の大きいポリシランのみを製造することができる。
他の特徴構成は、前記第二工程において、前記失活液が蓄えられた失活槽の中に前記ポリシランを含む前記反応液を添加する点にある。
従来のようにポリシランを含む反応液の中に失活液を添加する場合、反応液中に残存する未反応のアルカリ金属の量が失活液に比べて多いので、急激に発熱するおそれがある。その結果、反応液を頻繁に冷却する等、反応液の温度を精密にコントロールする必要があり、煩雑である。本構成のように、アルコールと水とを含む失活液が蓄えられた失活槽の中に反応液を添加すれば、アルカリ金属が注入順位に従って徐々に失活されるので、急激な発熱反応を抑制することができ、アルカリ金属の失活方法が効率的なものとなる。
ポリシラン製造装置の全体図である。 ポリシラン製造装置の制御形態を示すフローチャートである。 滴下インターバルを示すタイミングチャートである。 別実施形態1を示すポリシラン製造装置の全体図である。 別実施形態2を示すポリシラン製造装置の全体図である。 実験データを一覧化した表である。
以下に、本発明に係るポリシラン製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、ポリシラン製造方法の一例としてポリシラン製造装置X(以下、「製造装置X」と言う。)を用いた方法を説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
〔基本構成〕
本実施形態におけるポリシラン製造方法は、アルカリ金属を不活性溶媒に分散させた分散体SDを、モノマーを含む反応液Mに添加し、ポリシランを合成する第一工程と、ポリシランが合成された反応液Mとアルコールおよび水を含む失活液Aとを反応させ、アルカリ金属を失活させる第二工程とを備えている。
ここで、アルカリ金属としては、ナトリウム(融点約98℃)、カリウム(融点約63℃)、リチウム(融点約180℃)やこれらの合金などが挙げられる。不活性溶媒としては、キシレン(沸点約140℃)、トルエン(沸点約111℃)等の芳香族系溶媒や、デカン(沸点約174℃)等の脂肪族系溶媒、またはそれらの混合溶媒などが挙げられる。なお、分散体SDとして付した符号のSDは、 Sodium Dispersionの略号であり、実施形態ではアルカリ金属としてナトリウムを用いるため分散体にSDの符号を付しているが、SDの符号がナトリウム以外のアルカリ金属を除外するものではない。
モノマーは2つ以上のハロゲン原子が結合するシラン化合物が用いられ、例えば、ジクロロメチルフェニルシラン(沸点約205℃)、フェニルトリクロロシラン(沸点約200℃)、ジフェニルジクロロシラン(沸点約305℃)などのモノマーを用いることが可能である。このモノマーに不活性溶媒を混合して反応液Mが調製される。この不活性溶媒としては、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒や、デカン等の脂肪族系溶媒、またはそれらの混合溶媒などが挙げられる。なお、分散体SDに用いる不活性溶媒と反応液Mに用いる不活性溶媒とは、温度管理の容易化の観点から同一の不活性溶媒を用いることが好ましい。
本実施形態では、第一工程で反応せずに反応液Mの中に残存するアルカリ金属を失活させる第二工程において、アルコールと水とで構成される失活液Aを用いている。このとき用いられるアルコールとしては、イソプロピルアルコール、メタノールやエタノールなどの低級アルコールが好ましいが、高級アルコールでも良く特に限定されない。また、第二工程において、失活液Aに対する水の割合(水の添加量/水+アルコールの添加量)が30%以下に設定されている。この割合として、好ましくは1〜30%であり、より好ましくは、3〜10%である。
金属ナトリウム(アルカリ金属の一例)は、アルコールと反応して、下記(1)に示すように金属アルコキシドと水素ガスとが生成される。
(1)2R−OH+2Na → 2R−ONa+H2(Rは有機基)
このアルコキシドは、時間の経過と共にポリシランのケイ素どうしの結合を切断して分解し、ポリシランの分子量を低下させるおそれがある。
そこで、本実施形態では、失活液Aとして、アルコールに水を添加することで、下記(2)に示すように金属アルコキシドをアルコールとアルカリ金属の水酸化物とに速やかに分解させることとしている。これによって、ポリシランの分子量の低下を抑制することができる。
(2)R−ONa+H2O → R−OH+NaOH
〔製造装置〕
次に、ポリシラン製造方法に用いられる製造装置Xについて説明する。図1に示すように、製造装置Xは、反応槽1と、分散体導入部2と、撹拌機3と、ガス導入部4と、加熱部6と、冷却部7と、温度計測部8と、失活液導入部9と、反応槽1での反応を制御する制御ユニット20とを備えている。
反応槽1は、有底筒状に形成され、上部の開口を閉じる蓋体1aを備えることにより密封可能に構成されている。反応槽1にはハロシランをモノマーとして不活性溶媒に溶解して希釈された反応液Mが蓄えられる。
反応槽1は、内部に蓄えられた反応液Mに対して分散体導入部2から分散体SDを間欠的に滴下することによりポリシランの反応を実現する。この反応時には撹拌機3が反応液Mと分散体SDを混合し、加熱部6と冷却部7とが反応液Mを最適な温度に維持する。
また、制御ユニット20は、撹拌機3を制御すると共に、温度計測部8で計測される反応槽1の内部温度に基づいて加熱部6と冷却部7とを制御する。
分散体導入部2は、アルカリ金属としての金属ナトリウムの微粒子を、不活性溶媒としてのキシレン(沸点約140℃)に分散させた分散体SDを反応液Mに間欠的に滴下(添加の一例)するノズルであり、蓋体1aに支持されている。
分散体導入部2は、分散体タンク10に貯留された分散体SDが供給路11を介して供給されるものである。供給路11には、分散体導入部2から反応槽1に対する分散体SDの送り出しを制御するために、電気制御により開閉作動する電磁弁12を備えている。なお、分散体SDの反応槽1への供給として、供給路11にポンプを設置し、ポンプによる圧送方式としても良い。ポンプによる圧送においては、分散体SDを連続運転で定量供給としても良く、一定量供給および一定時間経過毎に運転停止・開始を繰り返す間欠運転で供給しても良い。また、分散体導入部2としては、定量滴下機能の付いたディスペンサを用いても良い。
撹拌機3は、蓋体1aに支持される撹拌モータの駆動力によりシャフト3aを回転させ、このシャフト3aの下端の撹拌羽根3bを回転させて撹拌を行う。ガス導入部4は、不活性ガスとしての窒素ガス(アルゴンガスでも良い)を反応槽1の内部に供給する供給口であり、蓋体1aに支持されている。このガス導入部4は、貯留する窒素タンク14からの窒素ガスがガス供給路15を介して供給されるように構成され、ガス供給路15には、手動により開閉する開閉弁16を備えている。なお、より確実に不活性ガス雰囲気下を維持することを目的として、蓋体1aに酸素濃度計を取り付けて反応槽1内部の気相部の酸素濃度を測定し、測定値が一定値以上となったら不活性ガスの供給量を増加させる等の措置を行っても良い。この措置は、開閉弁16を自動開閉弁で構成して、反応槽1内部の気体部の酸素濃度に応じて自動で開閉操作しても良い。また、ガス供給路15にガス供給量を測定する流量計を取り付けても良い。
加熱部6は、通電により発熱する電気ヒータで構成されている。冷却部7は、冷媒供給ユニット18から供給される冷媒により反応槽1の内部の冷却を行うように構成されている。なお、加熱部6は、熱交換器を有し熱媒体の循環により加熱を行うものでも良い。また、冷媒供給ユニット18は、反応槽1の外部で放熱した冷媒を冷却部7に循環させる単純な構成や、熱交換器を有して熱媒体の循環により冷却を行うものでも良い。
温度計測部8は、反応槽1の内部温度を電気的に計測する温度センサーとして機能するものであり、サーミスタ等が用いられている。
失活液導入部9は、アルコールと水とで構成される失活液Aが貯留された失活液タンク24から、失活液供給路19を介して失活液Aを反応液Mに間欠的に滴下するノズルであり、蓋体1aに支持されている。失活液供給路19には、手動または自動で開閉する開閉弁17を備えている。なお、反応槽1への供給として、失活液供給路19にポンプを設置し、ポンプによる圧送方式としても良い。ポンプによる圧送においては、失活液Aを連続運転で定量供給としても良く、一定量供給および一定時間経過毎に運転停止・開始を繰り返す間欠運転で供給しても良い。また、失活液導入部9としては、定量滴下機能の付いたディスペンサを用いても良い。
制御ユニット20は、温度計測部8の計測信号を取得する入力信号系を備えると共に、分散体導入部2と、撹拌機3と、加熱部6と、冷却部7とに制御信号を出力する出力信号系を備えている。
制御ユニット20は、所定のプログラムに従って制御を行うマイクロプロセッサやDSP(digital signal processor)等を有し、反応槽1の内部温度(反応液Mの温度)を制御する温度制御部21と、分散体SDの滴下のインターバル(添加間隔)を設定する滴下制御部22(投入制御部の一例)と、撹拌機3を制御する撹拌制御部23とを備えている。
温度制御部21と、滴下制御部22と、撹拌制御部23とはソフトウエアで構成されるものを想定しているが、例えば、ロジック回路のようにハードウエアで構成されるものでも良く、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより構成されるものでも良い。
温度制御部21は、温度計測部8の計測結果に基づいて反応槽1の内部温度を目標温度範囲内に維持するため加熱部6による加熱と冷却部7による冷却とを制御する。なお、目標温度範囲とは、設定温度±5℃以内であり、図3の例では85〜95℃の領域である。
滴下制御部22は、分散体SDを反応槽1の内部に対して所定のインターバルで滴下するように分散体導入部2の電磁弁12を制御する。また、撹拌制御部23は、撹拌を行う際に撹拌機3の撹拌モータで駆動される。
〔制御形態〕
製造装置Xでポリシランを製造する際の制御ユニット20の制御形態を図2のフローチャートに示している。つまり、ポリシランを製造する場合には、モノマーとしてジクロロメチルフェニルシランと、不活性溶媒としてのキシレンとを反応槽1に投入し、反応槽1の蓋体1aを閉塞し、ガス導入部4により反応槽1の内部に窒素ガスを封入する。
そして、温度制御部21により反応槽1の内部温度を目標温度に維持する制御を実行すると共に、撹拌制御部23により撹拌機3の撹拌羽根3bを毎分200回転程度の回転速度で回転させる撹拌により反応槽1に対して、モノマーが不活性溶媒に溶解した反応液Mを調製して蓄える(貯留する)反応液Mの調製工程が実行される(#101ステップ)。
#101ステップに示す反応液Mの調製工程では、温度制御部21が、反応槽1の内部温度を目標温度90℃に設定すると共に、低温側と高温側とに5℃の幅を設定することで85〜95℃の目標温度領域が設定される。このように目標温度領域が設定された後には、温度計測部8の計測結果をフィードバックする状態で加熱部6と冷却部7とを制御することによりモノマーを含む反応液Mの温度が目標温度領域に維持される。なお、この調製工程では、不活性溶媒にモノマーを予め溶解した反応液Mを投入するものでも良い。
特に、目標温度領域として設定される85〜95℃の領域は、金属ナトリウムの融点未満であるため、ナトリウムが融解しない状態で安定した反応が可能となる。
ガス導入部4で反応槽1の内部に窒素ガスを封入する処理としては、制御ユニット20の制御により実現するように構成することも考えられるが、開閉弁16を手動で開放して窒素ガスを封入する処理形態が簡便であり、処理系を低廉に構成できる。
次に、温度計測部8で計測される温度が、目標温度領域にあることが判定された場合には、滴下制御部22が分散体SDを滴下する滴下工程が実行される(#102、#103ステップ)。なお、この滴下工程では撹拌機3の撹拌羽根3bの回転速度が毎分300回転程度まで増速される。
#103ステップの滴下工程は、図3に示す如く、予め設定された滴下インターバルTで分散体SDの滴下を行うことにより、モノマーと金属ナトリウムとを重合してポリシランが合成される。この重合反応は発熱反応であるが、滴下直後には、すぐには温度が上昇せず、滴下タイミングPを基点にして少し遅れて反応槽1の反応液Mの温度(内部温度)が上昇する。
反応槽1の内部温度を目標温度領域に維持するため、温度計測部8で計測し、温度制御が実行される(#104、#105ステップ)。この温度制御は、温度計測部8で計測される温度が95℃以上である場合には、冷却部7により冷却を実行すると共に、滴下インターバルTを延長する制御を実行する。
また、温度計測部8で計測される温度が95℃未満であるが、90℃以上である場合には、滴下直後での温度上昇の勾配を取得し、勾配が設定勾配を超える場合には、勾配に対応する設定時間だけ冷却部7による冷却を実行し、滴下インターバルTを延長する制御を実行する。この設定時間は、温度上昇の勾配(角度)に対応した係数を、所定時間に乗ずる演算を行う処理形態や、温度上昇の勾配(角度)と設定時間とを対応させたテーブルを参照する形態などが考えられる。つまり、温度上昇(温度上昇の勾配)から推定される入熱量を取り除く冷却が行われる。滴下インターバルTを延長する制御は、温度上昇の勾配が緩傾斜となる角度に戻ることにより、予め設定された滴下インターバルTに戻される。なお、滴下インターバルTの延長制御を省略して冷却制御のみを実行しても良く、特に限定されない。
一方、温度計測部8で計測される温度が85℃未満である場合には、加熱部6の作動による加熱を行う。複数回に亘って分散体SDを滴下した場合のように、滴下した際に反応液Mに含まれるモノマーの量が低下している状況ではすぐには反応が開始されず、温度上昇が殆どない状況に陥る。従って、反応槽1の内部温度が85℃未満である場合には、積極的に加熱部6を作動させて加熱を行うことで、モノマーと金属ナトリウムとの重合反応を促進させる。
また、温度計測部8で計測される温度が85℃以上であるが、90℃未満である場合には、滴下後の温度の上昇幅を求め、この上昇幅が設定値未満である場合には、上昇幅に対応した時間(上昇幅に反比例した時間)だけ加熱部6を作動させ、上昇幅が設定値以上である場合には、設定時間だけ加熱部6を作動させる。この設定時間は、温度の上昇幅に対応した係数を、所定時間に乗ずる演算を行う処理形態や、温度の上昇幅と設定時間とを対応させたテーブルを参照する形態などが考えられる。
このように温度制御を行いつつ、分散体SDの滴下を設定時間継続する。そして、分散体SDの滴下を停止した後も所定時間だけ撹拌を継続し、予め定めた反応時間が経過した場合には反応処理を終了させる(#106ステップ)。
次いで、失活液タンク24に蓄えられた失活液Aを、失活液供給路19,失活液導入部9を介して反応液Mに滴下し、未反応の金属ナトリウムを失活させる(#107ステップ)。その際に用いられる失活液Aは、上述したようにイソプロピルアルコールなどのアルコールに水を添加したものである。
次いで、金属ナトリウムを失活させた反応液Mを別の容器に移し替え、水を添加して、ポリシランや不活性溶媒で構成される第一液体群と、水、アルコールや例えば塩化ナトリウム、金属アルコキシドや水酸化ナトリウムといったアルカリ金属が含まれる分子で構成される第二液体群とを液液分離する。次いで、抽出した第一液体群を減圧蒸留し、得られる蒸留残留物にテトラヒドロフランまたはクロロホルムを加えて溶解し、溶解液にヘキサンやアセトンを加えてポリシランを析出させ、濾過する。このように合成されたポリシランは、炭化ケイ素材料の前駆体や、光・電子機能材料などに用いられる。なお、ポリシランを抽出する場合に、ポリシランをテトラヒドロフランなどの有機溶媒に溶解させても良い。
〔本実施形態の作用・効果〕
アルカリ金属の失活液Aとしてアルコールに水を添加しているので、金属アルコキシドが水で速やかに分解される。つまり、金属アルコキシドを、水によってアルコールとアルカリ金属の水酸化物とに分解することができる。よって、アルコキシドに起因するポリシランの分子量の低下を抑制することができる。
しかも、アルコールに水を添加するだけでポリシランの分解が抑制されるため、アルカリ金属の残存量に応じて十分なアルコールを添加することが可能となる。よって、未反応のアルカリ金属を確実に失活させることができる。
一方、アルコキシドの分解に使用される必要量以上に水を添加した場合、未反応のモノマーと水とが反応してポリシロキサンが合成されるおそれがある。この場合、このポリシロキサンが不純物として混入してしまい、ポリシランの製造効率が低下する。そこで、本実施形態のように、水の添加量を所定割合(30パーセント)以下とすることで、アルコキシドの分解を促進しつつ、不純物の合成を阻止することができる。よって、未反応のアルカリ金属を確実に失活させつつ、分子量の大きいポリシランのみを製造することができる。
また、本実施形態では、モノマーを含む反応液Mの中にアルカリ金属の分散体SDを添加することとしている。この製造方法では、添加したアルカリ金属量に応じたモノマーに対してのみケイ素とハロゲンとの結合が切断され、過剰なアルカリ金属が含まれないためにモノマーどうしの衝突確率が高くなり、複数のモノマーが鎖状に結合する反応が促進される。よって、ポリシランの分子量を高めることができる。しかも、アルカリ金属を過剰に添加しなくて良いので、アルカリ金属の失活に用いるアルコール量を節約でき、製造装置Xの大型化を招くことがない。
さらに、分散体SDが滴下された後の温度上昇の勾配に基づいて反応槽1を冷却する制御を行うことにより、内部温度が目標温度領域を超える以前に適切な冷却を行い、反応温度を適正に維持することも可能となる。また、反応槽1の内部温度が上昇した場合に、分散体SDを滴下のインターバルを延長することにより、反応温度の過剰な上昇を良好に抑制できる。このような温度制御により、反応槽1の内部温度が反応に適した温度に維持されるため、分子量の大きいポリシランの製造を促進し製造効率を高く維持することが可能となる。
特に、内部温度の上昇が殆どない場合には、最適な加熱を行うことで積極的に反応を行わせ、反応槽1の内部における金属ナトリウム粒子の残留量を低減し、適正な反応状態を維持することが可能となる。
上述した実施形態以外に以下のように構成しても良い。なお、別実施形態では、実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している。
〔別実施形態1〕
上述した実施形態では、図1に示すように、アルカリ金属を失活させる第二工程において、反応液Mが蓄えられた反応槽1に失活液Aを添加したが、図4に示すように、失活液Aが蓄えられた失活槽24aの中にポリシランを含む反応液Mを添加しても良い。
この場合、ポリシランの合成が終了したとき、開閉弁17aを手動または自動で開放して、製造装置Xに蓄えられた反応液Mを、ポンプ31によって汲み上げ、失活液供給路19a,失活液導入部9aを介して失活槽24aに滴下する。なお、この第二工程は、開閉弁16を手動で開放して、窒素タンク14aからガス供給路15a,ガス導入部4aを介して失活槽24aの内部に窒素ガスを封入しながら実行することが好ましい。この第二工程において、失活槽24aを温度制御しながら実行するのが好ましいが、室温で実行しても構わない。また、開閉弁16やポンプ31を用いずに、反応液Mを失活槽24aに移し替えても良く、特に限定されない。
〔別実施形態1の作用・効果〕
別実施形態1のように、アルコールと水とで構成される失活液Aが蓄えられた失活槽24aの中に反応液Mを添加すれば、アルカリ金属が注入順位に従って徐々に失活されるので、急激な発熱反応を抑制することができる。よって、失活槽24aの温度制御が容易なものとなり、ポリシランの製造を効率化できる。
〔別実施形態2〕
図5に示すように、図1に示す製造装置Xに、反応槽1に接続され、モノマーの蒸発ガスを冷却して反応槽1に還流させるガス冷却器5を備えていても良い。この構成の場合、ポリシランの合成に用いるモノマーとして、ジメチルジクロロシラン(沸点約70℃)、メチルジクロロシラン(沸点約41℃)、メチルトリクロロシラン(沸点約66℃)、テトラクロロシラン(沸点約58℃)などの低沸点モノマーが用いることが可能となる。つまり、反応熱によって反応液Mの温度が上昇し、モノマーの沸点以上になったとき、未反応のモノマーが蒸発するが、ガス冷却器5によって蒸発ガスを冷却し、凝縮したモノマーを反応槽1に還流させると共に、不活性ガスを外部に排出することとしている。
別実施形態2におけるポリシラン製造方法では、第一工程において、反応液Mの温度をモノマーの沸点未満に設定し、分散体SDの添加量が所定量となった後、反応液Mをモノマーの沸点以上に加熱する温度制御を実行するのが好ましい。また、反応液Mの加熱処理は、ガス冷却器5の入圧力とガス冷却器5から排出されるガスの出圧力との差圧Psが所定値以下であるときに実行しても良い。なお、反応液Mの加熱処理は、運転開始から所定時間経過したときに実行しても良いし、反応槽1の内部圧力が所定値以下であるときに実行しても良く、特に限定されない。
〔別実施形態2の作用・効果〕
別実施形態2では、反応液M(モノマーの混合液)の温度を目標温度±5℃の範囲に制御するのではなく、加熱を行わず、常温またはモノマーの沸点未満の所定温度で分散体SDの滴下を開始し、分散体SDの添加量が所定量となった後に反応液Mをモノマーの沸点以上に加熱して反応を促進させる構成であるので、制御方法が簡便である。また、反応初期において反応液Mの温度をモノマーの沸点未満に設定しておけば、モノマーが蒸発し難い。このため、反応液中のモノマーが高濃度で維持され、反応初期におけるモノマーどうしの衝突確率を高めることができる。その結果、ハロゲンが分離したモノマーの周りには、別のモノマーや重合を開始した低分子ポリマーが多く存在するので、互いに衝突を繰り返して高分子量のポリシランが合成され易い。
〔実施例〕
上述したポリシラン製造方法を以下の1.〜5.のように実施した。
1.反応槽1にモノマー(10.22グラム)と、キシレン(39.89グラム)とを加えて90℃に維持し、撹拌機3を200rpmで回転して溶解を行うことでモノマーとキシレンとが混合する反応液Mを調製した。
2.モノマーにはジクロロメチルフェニルシランを用いた。
3.撹拌機3による300rpmの撹拌下で、反応液M(モノマーの混合液)の温度を90℃±5℃の範囲で管理しながら、分散体SDを43分に亘って滴下(添加)した。滴下した分散体SDの総量は11.65グラムである。滴下終了後、更に4時間撹拌した。
4.撹拌終了後、別実施形態1に示すように、イソプロピルアルコールと水とで構成される失活液Aを投入した失活槽24aに反応液Mを滴下し、金属ナトリウムを失活させた。このときの温度条件は室温であり、撹拌をしなかった。なお、実施例では、反応液Mの一部を取り出して、失活槽24aに滴下する方法を採用した。
5.失活後の反応液Mを、水を用いて液液抽出し、減圧蒸留を行い、蒸留残留物にテトラヒドロフランを加えて溶解し、溶解液にヘキサンを加えてポリマーの結晶を析出させ濾取した。
図6には、〔実施例〕の4.において、失活液Aに対する水の割合を、10.5%、30%と変化させたものを本実施例1〜2として記載している。また、比較例として、失活液Aにイソプロピルアルコールのみを用いた比較例1と、失活液Aに対する水の割合を50%に設定した比較例2を記載している。なお、本実施例2は参考例である。
図6に示す実験データから明らかなように、失活液Aとしてアルコールに水を所定割合以下で添加した本実施例1では、失活液Aとしてアルコールのみを用いた比較例1に比べて、加重平均分子量Mwの値と算術平均分子量Mnの値との何れもが勝っている。また、失活液Aとしてアルコールに水を30%添加した本実施例2では、比較例1に比べて、算術平均分子量Mnの値が低いが、加重平均分子量Mwの値が勝っている。これらから、失活液Aのアルコールに水を30%以下で添加すれば、水がアルコキシドを分解し、アルコキシドに起因するポリシランの分子量低下が抑制されることが理解できる。
一方、アルコキシドの分解に使用される必要量以上に水を添加した場合、未反応のモノマーと水とが反応してポリシロキサンが合成されるおそれがある。この場合、このポリシロキサンが不純物として混入してしまい、ポリシランの製造効率が低下する。例えば、比較例2に示すように、アルコールに水を50%添加した場合、加重平均分子量Mwの値と算術平均分子量Mnの値との何れもが低下している。これは、分子量の小さいポリシロキサンが合成された結果、平均分子量を低下させたと推測される。このことから、失活液Aのアルコールに水を所定値(本実施例では30%)以下に設定することが好ましい。
〔その他の実施形態〕
上述した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
(a)上述した実施形態では、アルカリ金属の分散体SDを、モノマーを含む反応液Mに添加したが、モノマーを、アルカリ金属の分散体SDを含む反応液Mに添加しても良い。この場合でも、第二工程において、ポリシランが合成された反応液Mとアルコールおよび水を含む失活液Aとを反応させてアルカリ金属を失活させることで、ポリシランの分子量の低下を抑制することができる。なお、モノマーを分散体SDの反応液Mに添加する場合、モノマーを単独で添加しても良いし、不活性溶媒を混合したモノマーを添加しても良い。
(b)上述した実施形態において、反応槽1の内部の目標温度範囲として、90℃±5℃以内に制御したが、50℃±5℃以内に制御するなど90℃以外の目標温度に設定しても良い。この場合でも、ポリシランの分子量を高めることができる。
(c)反応槽1の内部の目標温度と、その温度で生成されるポリシランの分子量との関係を予めデータとして取得しておき、目標とする分子量のポリシランの生成時には、データに基づいて目標温度を設定しても良い。この方法では、目標温度を設定するだけで、ポリシランの分子量を容易にコントロールすることができる。
本発明は、モノマーとアルカリ金属とを反応させてポリシランを製造する方法に利用可能である。
24a 失活槽
A 失活液
M 反応液
SD 分散体

Claims (4)

  1. アルカリ金属を不活性溶媒に分散させた分散体を、モノマーを含む反応液に滴下し、ポリシランを合成する第一工程と、
    前記ポリシランが合成された前記反応液とアルコールに水を添加した失活液とを反応させ、前記アルカリ金属を失活させる第二工程とを備え、
    前記第二工程において、前記失活液に対する前記水の割合が10.5重量パーセント以下に設定されているポリシラン製造方法。
  2. 記第二工程において、前記失活液が蓄えられた失活槽の中に前記ポリシランを含む前記反応液を添加する請求項1に記載のポリシラン製造方法。
  3. 記第一工程において、前記反応液の温度が前記アルカリ金属の融点未満である所定範囲内となるように前記反応液の加熱および冷却を制御し、前記反応液の温度が前記所定範囲の上限値を超えたときに前記反応液を冷却しながら前記分散体の滴下インターバルを延長する請求項1又は2に記載のポリシラン製造方法。
  4. 記第一工程において、前記反応液の温度を前記モノマーの沸点未満に設定し、前記分散体の滴下量が所定量となった後、前記反応液を前記モノマーの沸点以上に加熱し、蒸発した前記モノマーを冷却して凝縮した前記モノマーと前記分散体とを反応させる請求項1又は2に記載のポリシラン製造方法。
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