A.第1実施形態:
A1.グロープラグの構成:
図1は、一実施形態としてのグロープラグを示す断面図である。グロープラグ10は、図示しない内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)の始動補助等のための熱源として機能する。図示されたラインAX1は、グロープラグ10の中心軸を示している。以下、中心軸AX1のことを「第1軸線AX1」とも呼び、中心軸AX1と平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。図中の第1方向D1と第2方向D2とは、第1軸線AX1と平行であり、第2方向D2は、第1方向D1と反対の方向である。後述するように、通電によって発熱するヒータ部材800は、グロープラグ10の第1方向D1側の端部を形成している。以下、このような第1方向D1側を「先端側」とも呼び、第2方向D2側を「後端側」とも呼ぶ。また、グロープラグ10の種々の部材の第1方向D1側の端を「先端」とも呼び、第2方向D2側の端を「後端」とも呼ぶ。
グロープラグ10は、主体金具20と、中軸30と、ヒータ部材800と、Oリング50と、絶縁部材60と、端子部材80と、を含んでいる。主体金具20は、中心軸AX1に沿って延びる貫通孔20xを有する筒状の部材である。また、主体金具20は、第2方向D2側の端部に形成された工具係合部28と、工具係合部28よりも第1方向D1側に設けられた雄ネジ部22と、雄ネジ部22よりも第1方向D1側の部分を形成する胴体部21と、を含んでいる。工具係合部28は、グロープラグ10の脱着時に、図示しない工具と係合する部分である。雄ネジ部22は、図示しない内燃機関の取付孔の雌ネジに螺合するためのネジ山を含んでいる。胴体部21の先端部は、内燃機関の取付孔の内面に密着して、取付孔をシールする。主体金具20は、導電性材料(例えば、炭素鋼等の金属)で形成されている。
主体金具20の貫通孔20xには、中軸30が収容されている。中軸30は、丸棒状の部材であり、導電材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。中軸30の後端部319は、主体金具20の第2方向D2側の開口OP2から第2方向D2に向かって突出している。
開口OP2の近傍において、中軸30の外面と、主体金具20の貫通孔20xの内面と、の間には、Oリング50が設けられている。Oリング50は、弾性材料(例えば、ゴム)で形成されている。さらに、主体金具20の開口OP2には、リング状の絶縁部材60が装着されている。絶縁部材60は、筒状部62と、筒状部62の第2方向D2側に設けられたフランジ部68と、を含んでいる。筒状部62は、中軸30の外面と、主体金具20の開口OP2の内面と、の間に挟まれている。絶縁部材60は、例えば、樹脂で形成されている。主体金具20は、これらの部材50、60を介して、中軸30を支持している。
主体金具20よりも後端側(具体的には、絶縁部材60の第2方向D2側)には、端子部材80が配置されている。端子部材80は、キャップ状の部材であり、導電材料(例えば、ニッケル等の金属)で形成されている。端子部材80と主体金具20との間には、絶縁部材60のフランジ部68が挟まれている。端子部材80には、中軸30の後端部319が挿入されている。端子部材80が加締められることによって、端子部材80が後端部319に固定されている。これにより、端子部材80は、後端部319に、電気的に接続される。
主体金具20の先端部(具体的には、第1方向D1側の開口OP1)には、ヒータ部材800が圧入されている。ヒータ部材800は、本実施形態では、いわゆるシースヒータであり、通電によって発熱する(以下「シースヒータ800」とも呼ぶ)。ヒータ部材800の第2方向D2側の一部は、貫通孔20xの開口OP1から、貫通孔20x内に、圧入されている。ヒータ部材800は、螺旋状の発熱コイル820と、螺旋状の後端コイル830と、絶縁粉末840と、リング状のパッキン850と、それらの部材820、830、840、850を収容するチューブ810と、を含む。チューブ810は、導電材料(例えば、日本のJIS規格で定められるNCF601や、ドイツのDIN規格で定められるDIN2.4633(アロイ602)などの、ニッケル合金)を筒状に形成した部材である。チューブ810は、中心軸AX1に沿って延びるように、配置されている。チューブ810の先端部(「先端部811」と呼ぶ)は、閉塞しており、チューブ810の後端部(「後端部819」と呼ぶ)は、開口を形成している。
チューブ810の先端部811には、発熱コイル820の先端821が、電気的に接続されている。発熱コイル820の後端829には、後端コイル830の先端831が、電気的に接続されている。これらの接続は、例えば、溶接またはロウ付である。
本実施形態では、発熱コイル820は、タングステンで形成されている。また、後端コイル830は、鉄とクロムとアルミニウム(Fe−Cr−Al)の合金で形成されている。
チューブ810には、チューブ810の第2方向D2側の開口から、中軸30の先端321が挿入されている。中軸30の先端321は、後端コイル830の後端839に、電気的に接続されている。例えば、後端コイル830のコイル線が中軸30の先端321に巻き付けられた状態で、この巻き付けられた部分と中軸30とが溶接で接合される。後端コイル830の後端839は、溶接部837(溶接時に溶融した部分であり、後端コイル830の成分と中軸30の成分との少なくとも一方を含む部分)を介して、中軸30に接合されている。パッキン850は、電気的な絶縁材料(例えば、フッ素ゴム等のゴム)をリング状に形成した部材である。パッキン850は、チューブ810の後端部819と中軸30との間に配置されている。絶縁粉末840は、電気的な絶縁材料(例えば、酸化マグネシウム、アルミナなど)の粉末であり、チューブ810の内部に充填されている。パッキン850と絶縁粉末840とは、チューブ810と中軸30との間を、中心軸AX1を囲む全周に亘って、電気的に絶縁している。また、絶縁粉末840は、発熱コイル820と後端コイル830と中軸30とチューブ810との間の意図しない電気的短絡を、抑制している。
A2.発熱コイル820の構成:
図2は、発熱コイル820の説明図である。図2(A)は、第1軸線AX1に垂直な方向を向いて見たヒータ部材800の概略図である。図中には、発熱コイル820の外観と、後端コイル830のうちの先端831を含む一部分の外観と、溶接部823、824の外観と、チューブ810のうちの先端部811を含む一部分の断面(第1軸線AX1を含む平らな面による断面)と、が示されている。絶縁粉末840の図示は、省略されている。発熱コイル820の後端829と後端コイル830の先端831とは、溶接部823(溶接時に溶融した部分であり、発熱コイル820の成分と後端コイル830の成分との少なくとも一方を含む部分)を介して接合されている。発熱コイル820の先端821とチューブ810の先端部811とは、溶接部824(溶接時に溶融した部分であり、発熱コイル820の成分とチューブ810の成分との少なくとも一方を含む部分)を介して接合されている。
図中の第2軸線AX2は、発熱コイル820の軸線(すなわち、中心軸)である。発熱コイル820の螺旋形状は、この第2軸線AX2を中心に、形成されている。なお、図示するように、第2軸線AX2が、第1軸線AX1に一致していない場合がある。このような軸線のずれは、製造誤差などによって生じ得る。また、後述するように、このような軸線のずれが、意図的に設けられる場合がある。いずれの場合も、第2軸線AX2が第1軸線AX1に厳密には一致していない場合であっても、第2軸線AX2は、第1軸線AX1と、おおよそ同じである。例えば、第1軸線AX1に平行に先端側に向かう方向と、第2軸線AX2に平行に先端側に向かう方向と、のなす角度は、30度以下である。発熱コイル820は、第1軸線AX1の方向の先端側から後端側に向かって伸びている、といえる。
図2(B)は、発熱コイル820のX線透過画像である。このX線透過画像は、発熱コイル820を第2軸線AX2を含む平らな断面にて分割した一方側の部分の断面にX線を照射した場合に、発熱コイル820を透過したX線によって表される画像である。このようなX線透過画像は、断面にて分割された発熱コイル820の一方側の部分を、断面に平行な投影面上に、断面に垂直な方向に沿って投影した場合の投影図を表している。図2(B)には、図2(A)の発熱コイル820のうちの紙面の奥側の半分の部分が示されている。図中には、第2軸線AX2に沿って並ぶ互いに分離した複数のコイル部分線CLが示されている。1個のコイル部分線CLは、第2軸線AX2の周囲を周回するコイル線の略半周分の部分を示している。図中でハッチングが付された領域CSは、発熱コイル820のコイル線の断面をX線透過画像上に重ねて示したものである。X線透過画像上の断面CSは、X線透過画像の取得のために分割された発熱コイル820の断面を表す画像を、その断面におけるコイル線の断面がX線透過画像の対応するコイル部分線CLの端部に重なるように、X線透過画像に重ねることによって、特定される。各コイル部分線CLは、第2軸線AX2から見て一方側(図中の上側)の断面CSから他方側(図中の下側)の断面CSまで、第2軸線AX2に交差して延びている。このように、1個のコイル部分線CLは、互いに離れた2個の断面CSを接続する形態をなしている。
また、図2(A)に示すように、発熱コイル820の先端821を含む第1部分822では、チューブ810との接続のために、コイル径とコイルのピッチとが、第2軸線AX2に平行な方向の位置に応じて大きく変化し得る。同様に、発熱コイル820の後端829を含む第2部分828では、後端コイル830との接続のために、コイル径とコイルのピッチとが、第2軸線AX2に平行な方向の位置に応じて大きく変化し得る。このような両端部822、828を除いた残りの中間部分820mでは、コイル径とコイルのピッチとが、おおよそ一定である。本実施形態では、第1部分822として、発熱コイル820の先端821から3巻に相当する部分を採用する。3巻に相当する部分としては、第2軸線AX2からの距離(すなわち、コイル径)に拘わらずに、第2軸線AX2の周囲を3周する部分を採用すればよい。また、第2部分828として、発熱コイル820の後端829から3巻に相当する部分を採用する。図2(B)のX線透過画像においては、先端側の3個のコイル部分線CLが、第1部分822に相当し、後端側の3個のコイル部分線CLが、第2部分828に相当する。このように、X線透過画像では、複数のコイル部分線CLのうち、先端側の3個のコイル部分線CLと後端側の3個のコイル部分線CLとを除いた残りを、中間部分820mに相当するコイル部分線CLとして用いることができる。
図2(C)は、図2(B)のX線透過画像中の1個のコイル部分線CLの拡大図である。このコイル部分線CLは、中間部分820mに含まれるコイル部分線CLである。図中の第1断面CS1と第2断面CS2とは、1個のコイル部分線CLの両端に位置する2個の断面CSである。図中には、2本の仮想直線La、Lbが示されている。これらの仮想直線La、Lbは、第1断面CS1の輪郭と第2断面CS2の輪郭との両方に接触する直線であって、2個の断面CS1、CS2を間に挟む2本の直線である。
図示するように、コイル部分線CLは、これらの仮想直線La、Lbで挟まれる領域の外にはみ出るように湾曲している。このように、コイル部分線CLは、断面CS1、CS2を結ぶ直線と比べて、うねった部分(すなわち、仮想直線La、Lbで挟まれる領域の外にはみ出るように湾曲した部分)を含んでいる。このように、本実施形態では、発熱コイル820を形成するコイル線は、第1軸線AX1の回りを周回しつつ、さらに、うねっている。なお、本実施形態では、中間部分820mの複数のコイル部分線CLの全てが、うねった部分を含んでいる。
なお、うねった部分を含む発熱コイル820の上述した第2軸線AX2は、中間部分820mを用いて特定される。例えば、中間部分820mの内周側を貫通する仮の軸線に垂直な投影面上に、中間部分820mを仮の軸線に平行な方向に沿って投影する。投影面上では、中間部分820mは、リング状の領域によって表される。この投影された中間部分820mの面積が最小となるような仮の軸線の方向を、第2軸線AX2の方向として採用すればよい。そして、投影された中間部分820mを表すリング状の領域の重心位置を、第2軸線AX2の位置として採用すればよい。この重心位置は、リング状の領域内に質量が均一に分布していると仮定した場合の重心の位置である。このような重心位置は、リング状の領域の内周側の孔の中に位置する。
図3は、発熱コイル820の変形の説明図である。発熱コイル820は、通電による急速昇温時に、発熱コイル820の熱膨張によって変形し得る。図3(A)は、実施形態のX線透過画像のコイル部分線CLが変形する様子を示している。左部は変形前を示し、右部は変形後を示している。コイル部分線CLには、発熱コイル820の他の部分の熱膨張に起因して、コイル部分線CLを伸ばすような力Fが印加され得る。図2(C)で説明したように、実施形態では、コイル部分線CLがうねっている。従って、うねったコイル部分線CLが直線に近づくように変形することによって、コイル部分線CLは伸びることができる。
図3(B)は、参考例の発熱コイルの同じX線透過画像のコイル部分線CLrが変形する様子を示している。左部は変形前を示し、右部は変形後を示している。参考例の発熱コイルは、図2(C)で説明した実施形態のようにうねっておらず、X線透過画像のコイル部分線CLrは、断面CS1、CS2を結ぶ直線である。このように、参考例では、コイル部分線CLrが直線状であるので、力Fを受けたコイル部分線CLrは、伸びることができない。この結果、図3(B)の右部に示すように、コイル部分線CLr(すなわち、コイル線)に、クラックCRが発生する場合がある。特に、発熱コイルの材料が、タングステンのように硬度の高い金属を含む場合、コイル線の機械的強度が弱い場合が多い。このような場合、コイル部分線CLrが力Fに応じて柔軟に変形することができないので、クラックCRが生じ易い。図3(A)の実施形態では、コイル部分線CLのうねった部分が伸びることによって、そのようなクラックCRが生じることを抑制できる。
図4は、チューブ810の変形と発熱コイル820の変形との説明図である。図4には、図2(A)と同じヒータ部材800の概略図が示されている。急速昇温時には、発熱コイル820に加えて、チューブ810も熱膨張により変形し得る。例えば、図4中で点線で示すように、チューブ810は、図示しない主体金具20から見て、第1軸線AX1に略平行に、第1方向D1に向かって伸びる。ここで、チューブ810の熱膨張率が、発熱コイル820の熱膨張率よりも大きい場合には、伸びるチューブ810によって、発熱コイル820が、第1方向D1に引っ張られる。例えば、NCF601やDIN2.4633(アロイ602)などのニッケル合金の熱膨張率は、タングステンの熱膨張率よりも大きい。従って、チューブ810がそのようなニッケル合金で形成されている場合には、チューブ810の熱膨張によって、発熱コイル820が第1軸線AX1に沿って引っ張られる。
実施形態では、図3(A)等で説明したように、うねっているコイル部分線CLが伸びるように変形するができる。従って、発熱コイル820がチューブ810によって第1方向D1に引っ張られる場合に、螺旋状の発熱コイル820のピッチが拡がることに加えて、コイル線のうねった部分が伸びることができる。従って、発熱コイル820は、損傷を受けずに、伸びることができる。
図3(B)で説明した参考例では、コイル部分線CLrがうねっていないので、コイル部分線CLrは、実施形態のコイル部分線CLのように伸びることができない。従って、参考例の発熱コイルがチューブ810によって第1方向D1に引っ張られる場合に、螺旋状の発熱コイル820のピッチが拡がり得るものの、コイル部分線CLr(すなわち、コイル線)は、うねっていないので伸びることができない。従って、図3(B)で説明したようなクラックCRが生じ易い。図3(A)の実施形態では、コイル部分線CLのうねった部分が伸びることによって、そのようなクラックCRを抑制できる。
A3.製造方法:
上記の発熱コイル820を備えるグロープラグ10は、種々の方法で製造可能である。シースヒータ800を作成する場合、製造者は、例えば、金属板を筒状に加工することによってチューブ810を作成する。金属板からチューブ810を作成する方法としては、例えば、金属板を丸めてアーク溶接する方法、金属板を深絞りする方法などがある。また、製造者は、発熱コイル820と後端コイル830との溶接と、後端コイル830と中軸30との溶接と、を行って、発熱コイル820と後端コイル830と中軸30とを一体化する。製造者は、中軸30と一体化された後端コイル830および発熱コイル820を、チューブ810の内側に配置する。その後、製造者は、チューブ810の先端部811と発熱コイル820とを溶接する。例えば、チューブ810の外からのアーク溶接によって、チューブ810の先端部811と発熱コイル820の先端821とが接合される。その後、製造者は、チューブ810の内側に絶縁粉末840を充填する。これにより、仮の形状のシースヒータ800が作成される。
チューブ810に絶縁粉末840を充填し、そして、チューブ810の後端側にパッキン850を嵌め込んだ後、製造者は、チャックおよび回転ダイスを備えるスウェージング装置を用いて、シースヒータ800に対してスウェージング加工を施すことによって、シースヒータ800の径を調整する。スウェージング加工では、製造者は、シースヒータ800に固定された中軸30をチャックに把持した後、チャックを移動させることによってシースヒータ800を中心軸AX1に沿って移動させながら、回転ダイスによってチューブ810の周囲に打撃を加える。これによって、シースヒータ800の径は、所定の径に調整される。これにより、シースヒータ800が完成する。
製造者は、完成したシースヒータ800を用いて、グロープラグ10を組み立てる。具体的には、製造者は、中軸30が固定されたシースヒータ800を、主体金具20の貫通孔20xに圧入することによって固定する。そして、製造者は、主体金具20の後端側の開口OP2に、Oリング50と絶縁部材60とを嵌め込む。そして、製造者は、端子部材80を加締めることによって、端子部材80を中軸30の後端部319に固定する。以上により、グロープラグ10が完成する。
なお、図2(B)、図2(C)で説明したうねった部分を含む発熱コイル820の製造方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、シースヒータ800の上記のスウェージング加工において、発熱コイル820、820aの第2軸線AX2を、意図的に、チューブ810の中心軸AX1からずらしてもよい。すなわち、発熱コイル820を、チューブ810内における第2軸線AX2が中心軸AX1から外れるような位置に、配置する方法を採用してもよい。チューブ810に打撃が加えられると、絶縁粉末840を通じて、発熱コイル820にも力が加えられる。これにより、発熱コイル820も変形する。ここで、発熱コイル820の第2軸線AX2がチューブ810の中心軸AX1から外れている場合には、発熱コイル820とチューブ810の内周面との間の間隙の距離が、均一ではない。チューブ810の外表面のうち、間隙が小さい部分に打撃が加えられる場合には、発熱コイル820のうち打撃位置に近い部分に、強い力が印加される。チューブ810の外表面のうち、間隙が大きい部分に打撃が加えられる場合には、発熱コイル820のうち打撃位置に近い部分に、弱いい力が印加される。このように、発熱コイル820に印加される力の強さは、均一ではなく、発熱コイル820上の位置に応じて異なっている。従って、発熱コイル820は、いびつな形に変形する。この結果、図2(B)、図2(C)で説明したうねった部分を含む発熱コイル820が形成される。
なお、第2軸線AX2が第1軸線AX1から外れた位置に発熱コイルを配置する方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、図2(A)の実施形態では、発熱コイル820の後端829と後端コイル830の先端831との溶接位置を調整することによって、第2軸線AX2を第1軸線AX1から外すことができる。また、図5の実施形態では、発熱コイル820aの後端829aと中軸30との溶接位置を調整することによって、第2軸線AX2を第1軸線AX1から外すことができる。
また、第2軸線AX2が第1軸線AX1に一致しているか否かに関わらずに、チューブ810の外表面上に不均一に配置された複数の打撃位置に、打撃を加えることとしてもよい。これによれば、発熱コイル820は、不均一に配置された複数の位置で力を受けるので、いびつな形に変形する。この結果、図2(B)、図2(C)で説明したうねった部分を含む発熱コイル820が形成される。
また、シースヒータ800のスウェージング加工を用いる方法に代えて、他の方法を採用してもよい。例えば、予めうねっているように波状に加工された線材を螺旋状に巻くことによって、うねった部分を含む発熱コイル820を形成してもよい。
なお、グロープラグ10の製造方法としては、上述した方法に代えて、他の方法を採用してもよい。
以上のように、本実施形態では、図2(B)で説明したX線透過画像において、発熱コイル820の中間部分820mを表す複数のコイル部分線CLが、うねった部分を含んでいる(図2(C))。従って、図3(A)、図4等で説明したように、発熱コイル820が変形する場合に、うねった部分が伸びる。熱膨張によって発熱コイル820が変形したとしても、発熱コイル820が損傷を受けることを抑制できる。また、熱膨張するチューブ810に発熱コイル820が引っ張られて、発熱コイル820が伸びたとしても、発熱コイル820が損傷を受けることを抑制できる。
また、うねった部分が発熱コイル820の損傷を抑制しているので、発熱コイル820の材料として、タングステンという硬度の高い材料を採用できる。タングステンの融点は、およそ摂氏3400度であり、他の金属と比べて高いので、高い温度まで発熱コイルを昇温できる。従って、シースヒータの高い規定温度(すなわち、昇温後の温度)を実現することができる。
また、図1で説明したように、チューブ810内には、絶縁粉末840が配置され、絶縁粉末840は、チューブ810と発熱コイル820との間を満たしている。従って、発熱コイル820とチューブ810との間に隙間があいている場合と比べて、発熱コイル820とチューブ810との間で熱が伝達しやすい。これにより、昇温後のシースヒータ800の規定温度(チューブ810の温度と同じ)に対して発熱コイル820の温度が過剰に高くなることを抑制できる。この結果、熱による発熱コイル820の損傷を抑制できる。また、発熱コイル820の熱膨張が抑制されるので、変形による発熱コイル820の損傷を抑制できる。
また、図2(B)には、最大間隔Dgと最小線幅Dcとが示されている。最大間隔Dgは、図2(B)のX線透過画像において、中間部分820mを表す複数のコイル部分線CLのうちの隣り合う2個のコイル部分線CLの間の第2軸線AX2の方向の間隔の最大値である。最小線幅Dcは、中間部分820mを表す複数のコイル部分線CLの第2軸線AX2の方向の線幅の最小値である。本実施形態では、Dg<Dcである。すなわち、複数のコイル部分線CLの間の隙間は、コイル部分線CLの線幅よりも小さい。このように、発熱コイル820のコイル部分線CL(すなわち、コイル線)が密に配置されているので、発熱コイル820における温度分布のバラツキを抑制できる。従って、発熱コイル820の一部分の温度が局所的に過剰に高くなることを抑制できるので、発熱コイル820が局所的な熱や局所的な変形によって損傷を受けることを抑制できる。なお、本実施形態では、Dg<Dcとしたが、Dg≧Dcであってもよい。
図2(D)は、コイル部分線CLのうねりの大きさの説明図である。図中には、図2(C)と同じ1個のコイル部分線CLが示されている。以下、この1個のコイル部分線CLを、対象コイル部分線CLとも呼ぶ。図中の第1重心Gc1は、第1断面CS1の重心である。この第1重心Gc1は、第1断面CS1内に質量が均一に分布していると仮定した場合の重心の位置である。第2重心Gc2は、第2断面CS2の重心である。仮想線分Lgcは、これらの重心Gc1、Gc2を結ぶ仮想的な線分である。X線透過画像における重心Gc1、Gc2は、例えば、X線透過画像のコイル部分線CLの端部における部分輪郭線PL1、PL2(図2(D))を用いて特定できる。部分輪郭線PL1、PL2は、コイル部分線CLの輪郭線のうちコイル部分線CLの端部に対応する部分である。このような部分輪郭線PL1、PL2は、断面CS1、CS2の輪郭線の一部分に対応する。そこで、この部分輪郭線PL1、PL2の円弧を延長し、円形状にすることで断面CS1、CS2を特定することができる。ここで、コイル線の断面形状は、例えばコイル線を切断することによって、容易に特定でき、通常は、コイル線の外径と同じ直径を有する円形状である。このことからも上述の方法を採用することで、得られた円形状が断面CS1、CS2に相応する。そして、得られた第1断面CS1の重心位置(例えば円形状の中心の位置)が、第1重心Gc1に対応する。第2断面CS2と第2重心Gc2とについても、同様に、特定される。このように、X線透過画像において、コイル部分線CLのうちの断面CS1、CS2に対応する部分と残りの部分との境界が明確ではない場合であっても、重心Gc1、Gc2を容易に特定できる。また、X線透過画像の取得のために分割された発熱コイル820の断面を表す画像を、X線透過画像上に重ねることによって、重心Gc1、Gc2を特定してもよい。この場合も、X線透過画像に対する発熱コイル820の断面を表す画像の位置を、コイル線の断面の輪郭線がX線透過画像の部分輪郭線PL1、PL2に重なる位置に決定すればよい。
図中の2本の仮想直線L1、L2は、仮想線分Lgcに平行、かつ、対象コイル部分線CLの輪郭に接する直線であり、対象コイル部分線CLの全体を挟む直線である。間隔dLは、これらの2本の仮想直線L1、L2の間の間隔であり、2本の仮想直線L1、L2に垂直な方向の仮想直線L1、L2間の距離である。つまり、この間隔dLが大きい場合に、対象コイル部分線CLのうねりが大きいということができる。
大きな間隔dLを有するコイル部分線CL、すなわち、大きいうねりを有するコイル部分線CLは、隣のコイル部分線CLに接触しやすい。このような意図しない短絡を抑制するためには、間隔dLが小さいことが好ましい。本実施形態では、中間部分820mを表す複数のコイル部分線CLの各間隔dL(すなわち、最大の間隔dL)は、図2(B)で説明した最小線幅Dcの2倍以下である。これにより、意図しない短絡を抑制できる。なお、本実施形態では、最大の間隔dLが最小線幅Dcの2倍以下としたが、中間部分820mには、間隔dLが最小線幅Dcの2倍を超える部分が設けられていてもよい。
また、発熱コイル820の損傷を抑制するためには、コイル部分線CLのうねり、すなわち、間隔dLが大きいことが好ましい。本実施形態では、中間部分820mを表す複数のコイル部分線CLの各間隔dL(すなわち、最小の間隔dL)は、最小線幅Dcの1.1倍以上である。これにより、うねった部分が伸びることによって、発熱コイル820の損傷を抑制できる。なお、本実施形態では、最小の間隔dLが最小線幅Dcの1.1倍以上としていたが、中間部分820mにおける最小の間隔dLが最小線幅Dcの1.1倍未満であってもよい。
B.第2実施形態:
図5は、グロープラグの別の実施形態を示す断面図である。図中では、グロープラグ10aのうちのシースヒータ800aを含む一部分のみが示されている。図1の実施形態との差異は、後端コイル830が省略され、この代わりに、タングステンで形成され延長された発熱コイル820aが設けられている点だけである。第2実施形態のグロープラグ10aの他の部分の構成は、第1実施形態のグロープラグ10の対応する部分の構成と同じである(同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
チューブ810の先端部811には、発熱コイル820aの先端821aが、接合されている。中軸30の先端321には、発熱コイル820aの後端829aが、接合されている。これらの接合は、例えば、溶接である。本実施形態では、発熱コイル820aの先端821aとチューブ810の先端部811とは、溶接部824a(溶接時に溶融した部分であり、発熱コイル820aの成分とチューブ810の成分との少なくとも一方を含む部分)を介して接合されている。また、発熱コイル820aの後端829aに関しては、発熱コイル820aのコイル線が中軸30の先端321に巻き付けられた状態で、この巻き付けられた部分と中軸30とが溶接で接合されている。発熱コイル820aの後端829aは、溶接部827a(溶接時に溶融した部分であり、発熱コイル820aの成分と中軸30の成分との少なくとも一方を含む部分)を介して、中軸30に接合されている。
図中の中間部分820amは、発熱コイル820aのうち、先端821aから3巻に相当する部分822aと、後端829aから3巻に相当する部分828aと、を除いた残りの部分である。図示を省略するが、第2実施形態においても、発熱コイル820aの図2(B)と同じ方法で得られるX線透過画像において、発熱コイル820aの中間部分820amを表す複数のコイル部分線のそれぞれが、うねった部分を含んでいる。従って、図3(A)、図4の第1実施形態と同様に、発熱コイル820aが変形する場合に、うねった部分が伸びることによって、発熱コイル820aが損傷を受けることを抑制できる。
また、図5に示すように、チューブ810内には、絶縁粉末840が配置され、絶縁粉末840は、チューブ810と発熱コイル820aとの間を満たしている。従って、第1実施形態と同様に、発熱コイル820aとチューブ810との間で熱が伝達しやすい。これにより、昇温後のシースヒータ800の規定温度に対して発熱コイル820aの温度が過剰に高くなることを抑制できる。この結果、熱による発熱コイル820aの損傷を抑制できる。また、発熱コイル820aの熱膨張が抑制されるので、変形による発熱コイル820aの損傷を抑制できる。
また、本実施形態においても、図2(B)で説明した最大間隔Dgが最小線幅Dc未満である。このように、発熱コイル820aのコイル部分線(すなわち、コイル線)が密に配置されているので、発熱コイル820における温度分布のバラツキを抑制できる。従って、発熱コイル820の一部分の温度が局所的に過剰に高くなることを抑制できるので、発熱コイル820が局所的な熱や局所的な変形によって損傷を受けることを抑制できる。
なお、本実施形態においても、図2(D)で説明したように、X線透過画像の中間部分820amを表す複数のコイル部分線の最大の間隔dLは、最小線幅Dcの2倍以下であることが好ましい。また、最小の間隔dLは、最小線幅Dcの1.1倍以上であることが好ましい。
C.変形例:
(1)発熱コイル(例えば、図1の発熱コイル820、図5の発熱コイル820a)の材料としては、タングステンに限らず、タングステンを主成分として含む種々の材料を採用可能である。ここで、「主成分」は、含有率(単位は、重量パーセント)が最も高い成分を意味している。タングステンの融点は、およそ摂氏3400度であり、他の金属と比べて高い。従って、タングステンを主成分として含む材料を用いれば、他の材料を用いる場合と比べて、高い温度まで発熱コイルを昇温できる。この結果、昇温後のシースヒータの高い規定温度を実現することができる。なお、タングステンを主成分として含む材料としては、例えば、純タングステンや、タングステンとニッケルと銅との合金や、タングステンとニッケルと鉄との合金を採用してもよい。いずれの場合も、高い規定温度を実現するためには、タングステンの含有率は、50wt%以上であることが好ましく、90wt%以上であることが特に好ましく、99wt%以上であることが最も好ましい。
(2)発熱コイルのうねった部分は、図2(B)で説明したX線透過画像において中間部分(例えば、図2(B)の中間部分820m、図5の中間部分820am)を表す複数のコイル部分線のうちの一部のコイル部分線のみに設けられていてもよい。一般的には、X線透過画像において中間部分を表す複数のコイル部分線のうちの少なくとも1個がうねった部分を含むことが好ましい。この構成によれば、うねった部分が伸びることによって、発熱コイルが損傷を受けることを抑制できる。
なお、コイル線の適切な伸びを実現するためには、図2(C)で説明した1個のコイル部分線CLが、一方の仮想直線La側と他方の仮想直線Lb側との両方にはみ出るように湾曲していることが好ましい。ただし、1個のコイル部分線CLが、一方の仮想直線La側と他方の仮想直線Lb側とのうちの一方側のみにはみ出ていてもよい。
(3)チューブ810の材料は、NCF601とDIN2.4633(アロイ602)とは異なる他のニッケル合金であってもよく、ニッケル合金とは異なる金属(例えば、ステンレス鋼)であってもよい。いずれの場合も、チューブ810の熱膨張率が、発熱コイルの熱膨張率よりも小さくてもよい。
(4)グロープラグの構成としては、上述した構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、コイル820a、830は、中軸30の先端321に巻き付けずに、中軸30の先端321に接合されてもよい(例えば、溶接、または、ロウ付)。また、中軸30の後端部319の外周面には、雄ねじが形成され、端子部材80には、雌ねじが形成され、端子部材80を中軸30の後端部319にねじ込むことによって、中軸30に端子部材80が固定されてもよい。ここで、端子部材80としては、キャップ状の部材に代えて、ナットを採用してもよい。
(5)上述のグロープラグは、内燃機関の始動補助のために利用されるグロープラグに限らず、種々のグロープラグに適用可能である。例えば、排気ガスを昇温するための排気ガスヒータ装置や、触媒やディーゼル粒子フィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)を再活性化するためのバーナーシステムや、冷却水を昇温するためのウォータヒータ装置等の種々の装置に利用されるグロープラグに、上記実施形態のグロープラグを適用可能である。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。