JP6670055B2 - ガラス被膜形成材及びこれを用いたガラス被覆製品 - Google Patents
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Description
本発明のガラス被膜形成材は、様々な方法で用いられるが、釉薬とともに使用する場合、すなわち含有率が100%未満の場合と、含有率を100%として、それ単独で使用する場合がある。また基材表面へのガラス被膜形成方法としては、基材表面に施釉する方法、施釉面のトップコート層として融着する方法、溶射する方法など様々な方法を採用することができる。これらの具体的な使用法の説明に先立ち、先ずガラス質消臭剤の組成について説明する。
上記した銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ホウケイ酸ガラスは、SiO2:46〜70モル%、B 2 O 3 :5〜20モル%、R 2 O:(R:アルカリ金属)10〜30モル%、R´O(R´:アルカリ土類金属):0〜10モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:4〜23モル%含有するガラスである。
SiO2は、ガラスの構造骨格を形成する主成分であり、その含有量は46〜70モル%、好ましくは、51〜63モル%、更に好ましくは53〜62モル%とする。46モル%未満の場合、ガラスの化学的耐久性が不十分となり、またガラスが失透しやすくなり好ましくない。更に、46モル%未満の場合、ガラスの耐水性が不十分となり、水分存在下(大気中の水分を含む)で銅イオンが溶出しやすくなる結果、触媒作用による消臭効果よりも、イオン溶出によって起こる硫化反応による消臭効果が強くなるため好ましくない。70モル%を超える場合、融点が上昇することにより、ガラスの溶融性が困難となる他、粘度上昇も起こるため好ましくない。
B2O3は、ガラスの溶解性、清澄性を向上させる成分であり、特定の組成においてはガラスの構造骨格を形成する成分ともなる。B2O3は、その含有量によって、ガラスの安定性を大きく左右するものであり、本願発明ではガラスの融剤としての意味合いが大きい。その含有量は、B2O3の揮発量を勘案して、5〜20モル%、好ましくは8〜17モル%、さらに好ましくは10〜17モル%とする。20モル%を超える場合、B2O3は溶融過程において揮発しやすく、組成制御が困難となるため好ましくない。
R2O(R=Li、Na、K)は、ガラスの構造骨格におけるSiとOの結合を切断して非架橋酸素を形成し、その結果、ガラスの粘性を低下させ、成形性や溶解性を向上させる成分であり、B2O3同様の融剤である。その含有量は、R2Oの一種もしくは二種以上を、多成分との含有比も考慮しつつ、合計10〜30モル%、好ましくは13〜22モル%、更に好ましくは13〜19モル%とする。30モル%を超える場合、ガラスの化学的耐久性が不十分となる。具体的には、ガラス剤と大気中の水分が反応してブルームと称される白化現象が引き起こされる。ブルームが発生することにより、悪臭ガスとの接触面積が減少するため望ましくない。
前記のように、B2O3とR2Oは、共に、融剤として使用される。B2O3とR2Oの合計含有量が、15〜50モル%、好ましくは21〜39モル%の範囲が、安全に消臭効果を示す領域となる。15モル%未満の場合、ガラスの溶融性が不十分となり、成形の際に失透が発生しやすくなるため好ましくない。50モル%を超えると、ガラスの耐水性が不十分となり、水分存在下(大気中の水分を含む)で銅イオンが溶出しやすくなる結果、触媒作用による消臭効果よりも、イオン溶出によって起こる硫化反応による消臭効果が強くなるため好ましくない。また、50モル%を超えると、溶融の際に分相を起こしやすく、それに伴いガラス剤の消臭効果が不十分となるため好ましくない。
R´O(R´=Mg、Ca、Sr、Ba)は、ガラスの化学的耐久性を向上させる成分である。その含有量は、R´O(R´=Mg、Ca、Sr、Ba)の一種もしくは二種以上を、合計0〜10モル%、好ましくは2〜7モル%、更に好ましくは3〜6モル%とする。10モル%を超えると溶融時の粘性が高くなるとともに、ガラスが失透しやすくなるため好ましくない。なおR´Oは発明の消臭剤において必須成分ではなく、その含有量は0モル%でもよいが、2モル%以上とすることが好ましい。
Al2O3は、ガラスの化学的耐久性を向上させ、結晶構造安定性に影響を与える成分である。また、Al2O3は、ガラスの分相を抑制しガラス剤の均質性を高める働きをする。粘性を上げること、添加によってガラス中の銅イオンの酸化還元状態に影響を与える可能性があることから、その含有量は、6モル%以下、好ましくは5.5モル%以下、最も好ましくは4.5モル%以下とする。
CuOは、触媒として機能して、硫黄系悪臭物質の分解反応を促進し、硫黄系悪臭物質の消臭効果を奏するものである。その含有量は、4〜23モル%、好ましくは5.5〜13モル%、さらに好ましくは7〜13モル%とする。23モル%を超えると未溶解物が残留しやすくなる他、急冷の際や加工時に金属銅が析出しやすくなるため好ましくない。金属銅の析出に伴いガラスに変色を生じるため、ガラスの変色が問題となる用途には適さない。また、金属銅として析出した場合、被毒が進行してしまう。これに対し、CuOをガラス成分として含ませれば被毒が進行し難く、触媒機能を長期間に亘って安定して発揮することができる。
上記成分以外にも、微量成分として、ZnO、SrO、BaO、TiO2、ZrO2、Nb2O5、P2O5、Cs2O、Rb2O、TeO2、BeO、GeO2、Bi2O3、La2O3、Y2O3、WO3、MoO3、またはFe2O3等も含めることができる。さらに、F、Cl、SO3、Sb2O3、SnO2、あるいはCe等を清澄剤として添加してもよい。さらに着色剤として、CoO、Fe2O3、MnO2、Cr2O3、NiO、CeO2、TiO2、Er2O3,Bi2O3、Nd2O3などを添加することもできる。
また本発明ではガラス質消臭剤として、銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ケイ酸塩ガラスを用いることもできる。このガラスは、SiO2:50〜70モル%、R2O:10〜33モル%、R´O:0〜15モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:4〜23モル%含有するガラスである。
第1の実施形態では、本発明のガラス被膜形成材を釉薬中に含有させて使用する。釉薬は周知のとおり、800〜850℃程度の低温で溶融する低融点ガラスを粉末にしたフリットを主成分とし、これに粘土と少量の添加材と適量の水とを加えてスリップ状にしたものである。基材は陶磁器としてもホーロー用鋼板のような金属であってもよい。
以下に本発明の実施例を示す。
これらのサンプルを用い、消臭効果の確認試験を行った。試験はテドラーバッグにサンプルと悪臭成分とを封入し、室温で経過時間に伴う悪臭濃度を測定した。硫化水素、メチルメルカプタンはガスクロマトグラフで、酢酸、イソ吉草酸はガス検知管で測定した。なお比較のために、表3に示す組成の溶解性ガラス1〜4を製造し、上記のプレス成形体と同様にサンプルを作製した。ブランクである実験例15、18は銅成分を含有しない組成番号8を使用したものである。その結果、表4に示すように、ブランク以外は、いずれの悪臭に対しても消臭効果があることが確認された。また硫化水素とメチルメルカプタンを用い、悪臭成分濃度の経時的変化を測定した。その結果、表5に示すように、溶解性ガラスは何れも消臭限界に達したのに対し、各実験例のものは消臭総量が大きいことが確認された。溶解性ガラスは、反応限界で消臭限界が決定するため、比表面積の影響が大きいが、銅成分を含有させたガラス質消臭剤は、触媒作用を示すため、比表面積が小さくとも消臭総量が発揮されるためである。しかし、ガラスは組成によって連続的に変化し、その効果も触媒反応から溶解性ガラスの吸着反応まで連続的に変化する。実験例19は、耐久性が低下した組成のため、溶解性ガラス同様の吸着反応が強くなり、消臭限界に達したことが確認された。
D50=4.2μmまで粉砕した表1の組成番号5からなるガラス1gとメチルメルカプタンを5Lのテドラーバッグに封入し、室温で、経過時間に伴う袋内のメチルメルカプタン、ジメチルジスルフィドをガスクロマトグラフで測定した。またブランクとして、ガラス質消臭剤を封入しない同一容量の袋を用い、同様の操作を行った。なお、事前にガスクロマトグラフ質量分析計にて、袋内に存在するガス成分がこの二成分であることを確認していた。その結果、図4に示すように、本発明のガラス質消臭剤がメチルメルカプタンを分解し、ジメチルジスルフィドを生成する作用を示すことを確認した。ガラス質消臭剤の基本特性は、フィルム等に練りこんでも、当然保持される。
D50=5.0μmまで粉砕した表2の組成番号5、8、表3の溶解性ガラス1からなるガラス200mgに対し、pH=7.4の0.1mоl・L−1のリン酸緩衝溶液200μLを添加した。そこに9.2mоl・L−1のDMPO(LABOTEC.製、LM−2110)10μLを添加し、シェイクした。DMPO添加時点から10秒後、1分後、5分後にシェイクをやめ、溶液のみをヘマトクリット管で採取し、ESR(日本電子株式会社製、FR−30、Xバンド)測定を実施した。また、ガラスを除いたものをブランクとした。全て、室温、蛍光灯下で実施した。当手法は、ラジカル測定の一般的手法であるスピントラップ法に該当し、DMPOがラジカルを補足するとスピンアダクトが生成する。この生成物(DMPO−OH)をESRで検出した。なお、検出値の単位は、基準物質Mn2+に対するピーク面積値比率(エリアシングル/エリアマンガン、S/M)である。その結果を表6に示す。組成番号5のガラスはDMPO−OHの生成が確認されたのに対し、組成番号8、溶解性ガラス1はブランクと同様にバックグラウンドの値を示しただけであった。本発明のガラス質消臭剤がラジカルを発生する可能性が高いことが確認された。このため本発明によれば、発生したラジカルが水を分解してヒドロキシルラジカルを発生することとなり、水分の存在下でさらに消臭効果が助長されると考えられる。
D50=4.2μmまで粉砕した表2の組成番号5からなるガラス0.1gとCuO試薬(平均粒径4μm)0.1gのそれぞれを1Lのテドラーバッグに封入し、室温で、経過時間に伴う袋内のメチルメルカプタン濃度をガスクロマトグラフで測定した。メチルメルカプタンの初期濃度は55ppmとし、繰返し10回まで実施した。また、ブランクとしてガラスなしで同様の操作を行った。その結果、表7に示すように、CuO試薬は、繰返しに伴い消臭効果が低減している。これは、一般的に知られるCuOの触媒劣化(硫黄吸着)である。それに対し、ガラスは消臭効果を維持しており、持続性が高いことが確認された。このメカニズム解明は課題が残るが、ガラス化することで触媒劣化が抑制されることが確認された。このときのガラス表面をXPS(アルバックファイ(株)製、PHI 5000 VersaProbe)で解析したところ、表8に示すように、確かに消臭後に硫黄の吸着がないことが確認された。
2 ガラス被膜
3 銅成分
4 釉薬層
5 溶射されたガラス被膜層
Claims (4)
- ガラス質消臭剤を含有させたガラス被膜形成材であって、
このガラス質消臭剤は、SiO2:46〜70モル%、B 2 O 3 :5〜20モル%、R 2 O:(R:アルカリ金属)10〜30モル%、R´O(R´:アルカリ土類金属):0〜10モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:4〜23モル%を含有するアルカリ−アルカリ土類−ホウケイ酸ガラス、またはSiO2:50〜70モル%、R2O:10〜33モル%、R´O:0〜15モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:4〜23モル%を含有するアルカリ−アルカリ土類−ケイ酸塩ガラスからなり、
これらのガラスは何れもP2O5を含まない非水溶性のガラスであり、
ガラス中に保持された一価又は二価の銅イオンの触媒作用により、悪臭成分を分解する機能を有することを特徴とするガラス被膜形成材。 - 釉薬中に、ガラス質消臭剤を含有させたことを特徴とする請求項1に記載のガラス被膜形成材。
- ガラス質消臭剤の含有率を100%としたことを特徴とする請求項1に記載のガラス被膜形成材。
- 基材の表面に、請求項1〜3の何れかに記載のガラス被膜形成材によるガラス被膜が形成されていることを特徴とするガラス被覆製品。
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