JP6779471B2 - 硬化触媒、硬化性樹脂組成物およびその硬化体 - Google Patents

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Description

クロスリファレンス
本出願は、2014年8月21日に日本国において出願された特願2014−168681の出願に基づき優先権を主張し、当該出願に記載された内容は、本明細書に援用する。また、本願において引用した特許、特許出願及び文献に記載された内容は、本明細書に援用する。
本発明は、硬化触媒、それを含んで成る硬化性樹脂組成物、および該樹脂組成物を硬化させた硬化体に関する。
従来から、硬化性樹脂組成物の一種であるポリオルガノシロキサン組成物は、硬化した際に優れた耐候性および耐久性を発揮するので、接着剤やシーリング材に用いられている。近年では、ポリオルガノシロキサン組成物の硬化物は、より高い強度を要求される傾向にある。この要求に応えるべく、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物中に無機あるいは有機化合物から成る充填材を混合させたものが知られている(特許文献1を参照)。
上記硬化性樹脂組成物には、触媒として、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機錫化合物が広く用いられている。近年、環境面および健康面の両面で負荷の小さな化合物への転換が強く要望されるようになり、アミン化合物やカルボン酸化合物(特許文献2を参照)、比較的安全性の高いビスマス化合物(特許文献3を参照)あるいはチタニウムアルコキシド系触媒、シラノール縮合触媒としてのグアニジン化合物(特許文献4を参照)等を使用することが提案されている。しかし、これらの触媒は、現用の有機錫化合物系の触媒を代替するには至っていない。
本出願人は、先に、有機錫化合物系の触媒に代替可能な新規触媒を探索してきた結果、チタニウムアルコキシドを必須成分とする触媒に着目し、これを2座配位のキレート化剤で安定化させ、そこに特定比率のグアニジン化合物を配合することにより、反応性シラノール基含有または反応性シリル基含有ポリマー等の反応性ケイ素を有する有機重合体から製造される樹脂およびポリウレタン樹脂などの硬化用触媒が得られることを見出した(特許文献5を参照)。
特開平9−118827号公報 特開平08−41358号公報 特開平05−39428号公報 国際公開WO2007/094272号公報 国際公開WO2013/153773号公報
しかし、本出願人が先に開発した触媒には、さらなる改良を求める要望がある。それは、色をより薄くしたいという要望である。チタニウムアルコキシドと2座配位のキレート化を含む触媒を用いると、合成樹脂を硬化させる際の硬化特性は優れるものの、硬化体に赤色若しくは黄色の着色が生じる。着色が問題にならない場所であれば良いが、着色を好まない場所には使用しにくいという問題がある。このため、硬化特性を下げることなく、無色もしくは着色していても薄い着色に留まるような触媒が要望されている。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、硬化特性に優れ、かつ合成樹脂の硬化体に着色させにくい硬化触媒、その硬化触媒を含んで成る硬化性樹脂組成物および該樹脂組成物を硬化させた硬化体を得ることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、チタニウム以外の金属のアルコキシドに着目し、その金属アルコキシドと、ヒドロキシカルボン酸エステルおよびマロン酸ジエステルの内の少なくともいずれか1つの配位子とを含む触媒をポリマーに添加することにより、硬化性に優れ、かつ無着色若しくは薄い着色の硬化体を得ることに成功した。
すなわち、本発明の一形態は、合成樹脂を硬化させる機能を持つ硬化触媒であって、(A)ジルコニウムアルコキシドと、(B)ヒドロキシカルボン酸エステルおよびマロン酸ジエステルの内の少なくともいずれか1つの配位子と、を含む硬化触媒である。
本発明の別の形態は、前記(A)ジルコニウムアルコキシドがジルコニウムプロポキシドおよびジルコニウムブトキシドの内の少なくともいずれか1つを含む硬化触媒である。
本発明のさらなる別の形態は、前記(B)配位子がクエン酸エステルを含む硬化触媒である。
本発明のさらなる別の形態は、前記(B)配位子がマロン酸ジエチルおよびマロン酸ジブチルの内の少なくとも1つを含む硬化触媒である。
本発明のさらなる別の形態は、(C)メチルトリエトキシシランをさらに含んで成る硬化触媒である。
本発明のさらなる別の形態は、また、硬化触媒100質量部に対してアルコール成分が30質量部以下の硬化触媒である。
また、本発明の一形態は、前記いずれかの硬化触媒と、(D)架橋性シリル基含有樹脂とを含んで成る硬化性樹脂組成物である。
本発明のさらなる別の形態は、さらに、硬化触媒が(D)架橋性シリル基含有樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下となる硬化性樹脂組成物である。
また、本発明の一形態は、前記硬化性樹脂組成物を硬化した硬化体である。
本発明によれば、硬化特性に優れ、かつ合成樹脂の硬化体に着色させにくい硬化触媒、その硬化触媒を含んで成る硬化性樹脂組成物および該樹脂組成物を硬化させた硬化体を得ることができる。
図1は、実験例1中の実験1,5,6において、各触媒を用いて硬化させた硬化体の吸光度の結果を示す。 図2は、実験例1中の実験1,2,3において、各触媒を用いて硬化させた硬化体の吸光度の結果を示す。 図3は、実験例1中の実験1,9,10において、各触媒を用いて硬化させた硬化体の吸光度の結果を示す。 図4は、実験例1中の実験4,7,8において、各触媒を用いて硬化させた硬化体の吸光度の結果を示す。 図5は、実験例1中の実験No.1〜3、5〜7、9及び10の各硬化体の外観を写真で示す。 図6は、表4中のZrnP−CAtE系触媒(実験No.17)とZrnP−CAtE系触媒(濃縮)(実験No.18)の赤外吸収スペクトルを例に示す。
次に、本発明の硬化触媒、硬化性樹脂組成物および硬化体の実施の形態について説明する。
I.硬化触媒
この実施の形態に係る硬化触媒は、合成樹脂を硬化させる機能を持つ硬化触媒であって、(A)ジルコニウムアルコキシドと、
(B)ヒドロキシカルボン酸エステルおよびマロン酸ジエステルの内の少なくともいずれか1つの配位子と、
を含む。
また、上記硬化触媒は、さらに(C)メチルトリエトキシシランを含んで成るものでも良い。本明細書において、「含む」あるいは「含んでなる」状態は、単なる混合状態の他、一部が反応している状態も含むように広義に解釈される。以下、(A)ジルコニウムアルコキシド、(B)配位子、任意に添加可能な(C)メチルトリエトキシシラン、任意に添加可能な(C’)その他添加物、について詳述する。
(A)ジルコニウムアルコキシド
アルコールのヒドロキシ基の水素をジルコニウムで置換した化合物であって、ジルコニウムエトキシド,ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムイソブトキシドを好適に例示でき、その中でも、ジルコニウムn−プロポキシドおよびジルコニウムn−ブトキシドをより好適に例示できる。ジルコニウムアルコキシドの他に、ジルコニウムアルコキシド以外の金属アルコキシドを含んでも良いが、着色低減のためには、特に、チタニウムアルコキシドを含まない方が好ましい。
(B)配位子
本明細書でいう「配位子」とは、金属アルコキシドの金属に配位可能な化合物をいう。したがって、「配位子」は、実際に金属と配位するか否かは問わない。
(B1)ヒドロキシカルボン酸エステル
ヒドロキシカルボン酸エステルは、炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル反応による生成物の1種あるいは2種以上の混合物である。ヒロキシカルボン酸としては、乳酸、グリセリン酸等のモノカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸、クエン酸等のトリカルボン酸を例示できる。アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、ter−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族飽和アルコールを例示できる。
上記のヒドロキシカルボン酸と上記アルコールとのエステル反応により生成されるヒドロキシカルボン酸エステルとしては、例えば、リンゴ酸エステル、クエン酸エステル、乳酸エステル、酒石酸エステル、グリコールモノエステル、グリセリンモノエステル、グリセリンジエステル、リシノール酸エステルを挙げることができる。特に、クエン酸エステルが好ましく、クエン酸トリエチルおよびクエン酸トリブチルがより好ましい。
ヒドロキシカルボン酸エステルは、1モルの金属アルコキシドに対して、好ましくは0.2〜4.0モルの範囲で、より好ましくは0.2〜2.0モルの範囲で、硬化触媒中に含まれる。金属アルコキシドとしてジルコニウムアルコキシドを用いる場合、ヒドロキシカルボン酸エステルは、ジルコニウムアルコキシド1モルに対して0.2〜1.6モルの範囲で用いるのが好ましい。
(B2)マロン酸ジエステル
マロン酸ジエステルは、例えば、マロン酸ジアルキルエステルに代表されるマロン酸アルキルエステル、アルキルマロン酸ジアルキルエステルなどを含む。
マロン酸ジエステルの一例は、下記の構造式(化1)で表されるマロン酸エステルである。構造式中、RおよびRは、共に炭素数1以上のアルキル基、アリール基、アラルキル基、トリオルガノシロキシ基、アルケニル基若しくはシクロアルキル基などから選択され、互いに同一あるいは異なるものでも良い。上記マロン酸ジエステルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ベンジルメチルおよびマロン酸ジフェニルなどの1または2以上を好適に用いることができ、特に、マロン酸ジエチルおよびマロン酸ジブチルの内の少なくとも1つをより好適に用いることができる。
上記マロン酸ジエステルは、1モルの金属アルコキシドに対して、好ましくは0.2〜4.0モルの範囲で、より好ましくは0.2〜2.0モルの範囲で、硬化触媒中に含まれる。金属アルコキシドとしてジルコニウムアルコキシドを用いる場合、上記マロン酸ジエステルは、ジルコニウムアルコキシド1モルに対して0.2〜1.6モルの範囲で用いるのが好ましい。
マロン酸ジエステルの別の一例は、下記の構造式(化2)で表されるマロン酸エステルである。構造式中、R、RおよびRは、共に炭素数1以上のアルキル基、アリール基、アラルキル基、トリオルガノシロキシ基、アルケニル基若しくはシクロアルキル基などから選択され、互いに同一あるいは異なるものでも良い。上記マロン酸ジエステルとしては、例えば、メチルマロン酸ジメチル、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、フェニルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジブチル、ブチルマロン酸ジブチルなどの1または2以上を好適に用いることができ、特に、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチルおよびブチルマロン酸ジエチルの内の少なくとも1つをより好適に用いることができる。
上記マロン酸ジエステルは、1モルの金属アルコキシドに対して、好ましくは0.2〜4.0モルの範囲で、より好ましくは0.2〜2.0モルの範囲で、硬化触媒中に含まれる。金属アルコキシドとしてジルコニウムアルコキシドを用いる場合、上記マロン酸ジエステルは、ジルコニウムアルコキシド1モルに対して0.2〜1.6モルの範囲で用いるのが好ましい。
(C)メチルトリエトキシシラン
メチルトリエトキシシランは、触媒の硬化特性を向上するために、任意の添加剤として用いることができる。メチルトリエトキシシランは、金属アルコキシドと配位子との総質量に対して、0.1〜0.7の比率、さらには0.2〜0.5の比率で加えるのが好ましい。
(C’)その他添加物
(グアニジン化合物)
グアニジン化合物は、一般式: RN=C(NR (5個のRの内の任意の1個は有機基であり、残り4個のRは、それぞれ独立に、水素原子、飽和炭化水素基、−C(=NR)−NR (3個のRはそれぞれ独立に水素原子または有機基)、または、=C(−NR (4個のRはそれぞれ独立に水素原子または有機基)で、表される。
グアニジン化合物としては、たとえば、1,1,2−トリメチルグアニジン、1,2,3−トリメチルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,1,2,2,3−ペンタメチルグアニジン、2−エチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1−ベンジルグアニジン、1,3−ジベンジルグアニジン、1−ベンジル−2,3−ジメチルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、1−(3−メチルフェニル)グアニジン、1−(4−メチルフェニル)グアニジン、1−(2−クロロフェニル)グアニジン、1−(4−クロロフェニル)グアニジン、1−(2,3−キシリル)グアニジン、1−(2,6−キシリル)グアニジン、1−(1−ナフチル)グアニジン、2−フェニル−1,3−ジシクロヘキシルグアニジン、1−フェニル−1−メチルグアニジン、1−(4−クロロフェニル)−3−(1−メチルエチル)グアニジン、1−(4−メチルフェニル)−3−オクチルグアニジン、1−(4−メトキシフェニル)グアニジン、1,1’−[4−(ドデシルオキシ)−m−フェニレン]ビスグアニジン、1−(4−ニトロフェニル)グアニジン、4−グアニジノ安息香酸、2−(フェニルイミノ)イミダゾリジン、2−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルアミノ)−2−イミダゾリン、N−(2−イミダゾリン−2−イル)−2,3−キシリジン、N−(2−イミダゾリン−2−イル)−1−ナフタレンアミン、1,1’−[メチレンビス(p−フェニレン)]ビスグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−n−プロピル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−イソプロピル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−n−ブチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、7−n−シクロヘキシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、2,3,5,6−テトラヒドロ−3−フェニル−1H−イミダゾ[1,2−a]イミダゾールなどのグアニジン化合物; 1−メチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−(2−エチルヘキシル)ビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド、1−(3−メチルフェニル)ビグアニド、1−(4−メチルフェニル)ビグアニド、1−(2−クロロフェニル)ビグアニド、1−(4−クロロフェニル)ビグアニド、1−(2,3−キシリル)ビグアニド、1−(2,6−キシリル)ビグアニド、1−(1−ナフチル)ビグアニド、1,3−ジフェニルビグアニド、1,5−ジフェニルビグアニド、1−フェニル−1−メチルビグアニド、1−(4−クロロフェニル)−5−(1−メチルエチル)ビグアニド、1−(4−メチルフェニル)−5−オクチルビグアニド、1−(4−メトキシフェニル)ビグアニド、1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−(1−メチルエチル)ビグアニド、1,1’−ヘキサメチレンビス[5−(4−クロロフェニル)ビグアニド]、2−グアニジノ−1H−ベンゾイミダゾール、1−(4−ニトロフェニル)ビグアニド、1−ベンジルビグアニド、1−(2−フェニルエチル)ビグアニド、3−(2−フェニルエチル)ビグアニド、N,N−ジアミジノアニリン、1,5−エチレンビグアニド、1−モルホリノビグアニド、3−モルホリノビグアニド、1−(4−クロロベンジルオキシ)ビグアニド、1−n−ブチル−N2−エチルビグアニド、1,1’−エチレンビスビグアニド、1−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]ビグアニド、1−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ビグアニド、N’,N’’−ジヘキシル−3,12−ジイミノ−2,4,11,13−テトラアザテトラデカンジアミジン、4−[3−(アミジノ)グアニジノ]ベンゼンスルホン酸、1,2−ジイソプロピル−3−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジン、5−[3−(2,4,5−トリクロロフェノキシ)プロポキシ]−1−イソプロピルビグアニドなどのビグアニド化合物; などを例示できる。これらのグアニジン化合物のうち、特に好ましいのは、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンおよび1−フェニルグアニジンである。
グアニジン化合物は、金属アルコキシドに対して、0.1〜5のモル比、さらには0.2〜3の比率で加えるのが好ましい。
II.硬化性樹脂組成物
この実施の形態に係る硬化性樹脂組成物は、硬化触媒と、(D)架橋性シリル基含有樹脂とを含んで成る。架橋性シリル基含有樹脂は、硬化性樹脂組成物の主剤である。硬化性樹脂組成物中において、架橋性シリル基含有樹脂と、硬化触媒およびその他添加剤とは単に混合している状態でも、一部反応している状態でも良く、完全に反応が終了して硬化状態になっていなければ良い。以下、(D)架橋性シリル基含有樹脂について詳述する。
(D)架橋性シリル基含有樹脂
架橋性シリル基含有樹脂とは、ケイ素原子と結合した加水分解性官能基を有するケイ素含有基あるいは縮合反応を起こし得るシラノール基を有する樹脂である。ここで、加水分解性基は、特に限定されないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、さらにはメトキシ基等のアルコキシ基が好ましい。架橋性シリル基含有樹脂は、代表的な例では、下記の一般式(それぞれ、「化3」、「化4」および「化5」)の内の少なくともいずれか1つの架橋性シリル基を主鎖若しくは側鎖の片末端あるいは両末端に有するポリマーである。
下記の一般式(「化3」、「化4」および「化5」)の官能基中のR、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていても良い水素、あるいは炭素数1以上のアルキル基、アリール基、アラルキル基、トリオルガノシロキシ基、アルケニル基若しくはシクロアルキル基である。上記一般式中のR、RおよびRの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基、メチレン基、エチレン基、シクロプロピル基を挙げられる。これら例示の基の内、メチル基が特に好ましい。また、XおよびYは、互いに同一であっても、異なっていても良く、水素、炭化水素基など、アルコキシ基以外の基である。
架橋性シリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基を挙げられる。これらの内、高い活性を持つトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
架橋性シリル基含有樹脂としては、シリル基含有ポリエーテル、シリル基含有ポリエステル、シリル基含有有機ポリシロキサン系重合体、シリル基含有ビニル系重合体、シリル基含有ポリエステル変性ビニル系重合体、シリル基含有ジアリルフタレート系重合体、シリル基含有ジアリールフタレート系重合体、シリル基含有ポリイソブチレン、シリル基含有エチレン・α−オレフィン系共重合体、およびこれらの混合物等が挙げられる。例えば、架橋性シリル基含有樹脂がシリル基含有ポリエーテルである場合には、主鎖のポリエーテルとして、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキシド、テトラヒドロフランなどを原料として、カチオン重合、アニオン重合の方法を用いて製造されるものを好適に例示できる。例えば、架橋性シリル基含有樹脂がシリル基含有ポリエステルである場合には、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸などのカルボン酸、その無水物、そのエステルまたはハロゲン化物と、化学量論的に過剰のエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのポリオールとを反応させることにより調製されるポリエステルポリオール類、またはラクトン類の開環重合により得られるラクトンポリオール類などのポリエステルを主鎖として有するものを好適に例示できる。例えば、架橋性シリル基含有樹脂がシリル基含有有機ポリシロキサン系重合体である場合には、シロキサン結合(Si−O−Si結合)でつながる主鎖を持つものを好適に例示できる。
架橋性シリル基含有樹脂の市場入手容易な例としては、カネカ株式会社製の「カネカサイリルEST280」(架橋性シリル基含有ポリエーテル系重合体であって、変性シリコーン樹脂に属する)および「カネカMSポリマー S303」 (シリル末端変性ポリエーテル)、信越シリコーン株式会社製の、「X−21−5841」(シリル基変性ポリジメチルシロキサン)、東亜合成株式会社製の「ARUFON」(アルコキシシリル基含有アクリル系ポリマー)を挙げることができる。
架橋性シリル基含有樹脂のMw(重量平均分子量)は、特に限定されるものではないが、例えば、500〜100,000、好ましくは2,000〜50,000である。
硬化性樹脂組成物中の架橋性シリル基含有樹脂と硬化触媒との質量比は、特に限定されないが、例えば、架橋性シリル基含有樹脂の質量をX、硬化触媒の質量をYとすると、例えば、X:Y=100〜3.3:1(硬化触媒は、架橋性シリル基含有樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下)であり、好ましくは、X:Y=80〜5:1(硬化触媒は、架橋性シリル基含有樹脂100質量部に対して1.3質量部以上20質量部以下)であり、さらに好ましくは、X:Y=50〜6.6:1(硬化触媒は、架橋性シリル基含有樹脂100質量部に対して2質量部以上15.2質量部以下)である。
硬化触媒中のアルコール成分は、好ましくは、硬化触媒100質量部中で30質量部以下、より好ましくは27質量部以下、さらにより好ましくは15質量部以下、もっと好ましくは12質量部以下である。
(E)その他添加材
(E’1)カップリング剤
この実施の形態に係る硬化性樹脂組成物には、カップリング剤を添加しても良い。カップリング剤は、硬化性樹脂組成物と無機基材(接着あるいはシーリングする対象)との密着性を向上するのに有効である。カップリング剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤; グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤; メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤; メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤; ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物を例示できる。
カップリング剤の添加量は、架橋性シリル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜2質量部である。
(E’2)充填剤
任意に添加可能な充填剤としては、シリカ、酸化チタニウム、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウムなどがあり、粒子状、板状あるいは繊維状の充填剤を例示することができる。特に、粒子径が小さく、かつ硬化性樹脂組成物との相性の良いシリカが好ましい。充填剤の含有量は、充填剤も含めた硬化性樹脂組成物の全質量に対して2〜99質量%である。
(E’3)光安定化剤
この実施の形態に係る硬化性樹脂組成物には、光安定化剤を添加しても良い。光安定化剤は、樹脂の耐候性の向上あるいは熱的安定性を付与するのに有効である。光安定化剤としては、特に制約なく用いることができ、特にヒンダードアミン系のものを好適に用いることができる。ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネート、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物などを例示できる。
光安定化剤の添加量は、架橋性シリル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜7質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜3質量部である。
(E’4)紫外線吸収剤
この実施の形態に係る硬化性樹脂組成物には、紫外線吸収剤を添加しても良い。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する機能をもち、樹脂の耐候性の向上あるいは熱的安定性を付与するのに有効である。紫外線吸収剤としては、特に制約なく用いることができ、例えば、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、トリアジン系のものを好適に用いることができる。これらの内、特に、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を好適に用いることができる。
ベンゾトリアゾール系としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−アミルルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2ーメチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}を例示できる。サリチル酸系としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートを例示できる。ベンゾフェノン系としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾフェノン)メタンを例示できる。シアノアクリレート系としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートを例示できる。トリアジン系としては、2−{4’,6’−ビス(2”,4”−ジメチルフェニル)−1’,3’,5’−トリアジン−2’−イル}−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4’,6’−ジフェニル−1’,3’,5’−トリアジン−2’−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールを例示できる。
紫外線吸収剤の添加量は、架橋性シリル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部、さらに好ましくは0.5〜2質量部である。
(E’5)可塑剤
この実施の形態に係る硬化性樹脂組成物には、可塑剤を添加しても良い。可塑剤とは材料に柔軟性を与え、配合物の混合分散を助けるものである。可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニルなどのフタル酸エステル系、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニルなどのアジピン酸エステル系、トリメリット酸エステルやピロメリット酸エステルクエン酸エステルなどがある。可塑剤の添加量は、架橋性シリル基含有樹脂(A)100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部である。
硬化性樹脂組成物の製造方法
硬化性樹脂組成物は、基本的に、架橋性シリル基含有樹脂と、硬化触媒とを混合して得られる。硬化触媒の必須成分である金属アルコキシドと配位子の他に、メチルトリエトキシシラン、グアニジン化合物、カップリング剤、充填剤、光安定化剤および紫外線吸収剤の内の少なくとも1種をさらに添加する場合には、それを架橋性シリル基含有樹脂に予め混合してから、金属アルコキシドと配位子とを添加するのが好ましい。架橋性シリル基含有樹脂の架橋が進行する前に、メチルトリエトキシシラン、グアニジン化合物、カップリング剤、充填剤、光安定化剤および紫外線吸収剤の内の少なくとも1種を混合しておく方が、より均一な混合が可能だからである。混合の環境は、不活性ガス雰囲気下であるのが好ましい。また、架橋性シリル基含有樹脂への硬化触媒の混合前に、硬化触媒中のアルコール成分を低減するアルコール成分低減ステップを行うのが好ましい。アルコール成分低減ステップは、加熱、減圧、あるいはそれらの組み合わせを行うことにより実施可能である。アルコール量は、アルコール低減ステップ前後における硬化触媒の赤外吸収スペクトルを測定し、OHのピーク面積の比を利用して求めるのが好ましいが、その算出方法は赤外吸収ピークの面積比以外を利用するものでも良い。
III.硬化体
この実施の形態に係る硬化体は、硬化性樹脂組成物を空気または水分と接触せしめることにより得ることができる。硬化性樹脂組成物の硬化条件は、特に限定されないが、例えば、15〜45℃、好ましくは20〜30℃の温度、30〜70%RH、好ましくは40〜60%RHの湿度の環境下で静置することにより得ることができる。
硬化体の色は、無色透明、薄い黄色、薄い橙色、薄い白色などであり。チタニウムアルコキシドを含む硬化触媒を用いて得られる硬化体の色(黄色、黄橙色)や有機錫系の硬化触媒を用いて得られる硬化体の色(白濁)よりも薄くなる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
I 使用材料
(A)架橋性シリル基含有樹脂
メトキシシリル末端PPGポリマー(株式会社カネカ製、製品名: MSポリマーS303)
(B)触媒
1.金属アルコキシド
1)ジルコニウム−n−プロポキシド(ZrnP、 東京化成工業株式会社製)
2)ジルコニウム−n−ブトキシド(ZrnB、 関東化学株式会社製)
3)チタニウムテトライソプロポキシド(TTiP、関東化学株式会社製)・・・比較材
4)チタニウムテトラエトキシド(TTE、Merck Schuchardt OHG製)・・・比較材
2.配位子
1)クエン酸トリエチル(CAtE、東京化成工業株式会社製)
2)クエン酸トリブチル(CAtB、東京化成工業株式会社製)
3)アセト酢酸エチル(EAcAc、関東化学株式会社製)
4)マロン酸ジエチル(MdE、ナカライテスク株式会社製)
5)アセチルアセトン(AcAc、関東化学株式会社製)・・・比較材
3.シラン化合物
1)メチルトリエトキシシラン(MTES、信越化学工業株式会社製)
2)メチルトリメトキシシラン(MTMS、信越シリコーン株式会社製)・・・比較材
4.錫系触媒(比較材)
1)ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL、東京化成工業株式会社製)
2)ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)(DBTbis(AcAc)、株式会社日東化成製、製品名: ネオスタンU−220H)
5.シランカップリング剤(比較材)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(他の触媒と併用。東京化成工業株式会社製)
(C)添加剤
1−フェニルグアニジン(PhG、日本カーバイド工業株式会社製)
II 評価方法
(A)皮張り時間
1)初期皮張り時間
皮張り時間は、指触乾燥時間を意味する。実際にはステンレス製のスパチュラを用い、表面に張った硬化皮膜がスパチュラに転着しなくなるまでの時間を皮張り時間とする。
具体的な手法は次のとおりである。軟膏容器(UG軟膏壺 馬野化学容器株式会社製)にアルコキシリル基末端を持つ変性ポリオルガノシロキサンと触媒をそれぞれ所定量ずつ投入し、密閉した後、自転公転ミキサー(あわとり練太郎 株式会社シンキー製)を用いて1分間の撹拌と1分間の脱泡処理を行い、液状の硬化性組成物を得た。これを密閉したまま室温(約23℃)にて30分間静置した後、23℃湿度50%の環境下で開放し硬化を開始させ、表面にステンレス製のスパチュラを接触させることで皮が張るまでの時間を計測した。
2)皮張り時間遅延率
上記(A)と同様に作製した試料を室温(23℃)に静置した後シリンジ(サンエイテック製 SH11CPP−B)に移し、密閉した状態で50℃の環境下にて7日間静置した。室温に戻した後、試料を取り出し、室温(23℃)湿度50%の環境下にて皮張り時間を計測した。保存前の初期皮張り時間に対する割合を皮張り時間遅延率として算出した。遅延率>1の場合には、保存により皮張り時間が長くなり、品質が低下したことを意味する。
(B)色
上記(A)と同様に作製し得られた液状の硬化性組成物を密閉したまま室温(約23℃)にて30分間静置した後、23℃湿度50%の環境下で7日間開放し硬化させ、硬化体の色を目視と紫外可視分光光度計(UV―160A 株式会社島津製作所製)を用いて評価した。紫外分光光度計での測定波長は350nm〜800nmとし、吸光度を測定する。得られた吸光度を試料の厚みで除算した値を評価値とし、この値が大きいほど着色や濁りがあると言える。
(C)増粘率
上記(A)と同様に作製した液状の硬化性組成物の粘度を測定し、(A)2)と同様の静置保存を行い得られた組成物の粘度も測定し、保存前に対する保存後の粘度の割合を増粘率として算出した。増粘率>1の場合には、保存により粘りが増し、品質が低下したことを意味する。
III 実験例
(A)実験例1
1.作製条件
(実験1)ZrnP−CAtE系触媒
ZrnPの70%プロパノール溶液を用意し、そこに、モル比にてZrnP:CAtE=1:1になるようにCAtEを加えてZrnP−CAtE系触媒を作製した。次に、所定容器に、0.118g(ポリマー1モルに対して金属アルコキシドが0.73モルとなる量。以下、実験8まで同じ。)のZrnP−CAtE系触媒と、5gのMSポリマーS303とをII(A)の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、初期皮張り時間(分)、色、吸光度(400nmにおける)、皮張時間の遅延率および増粘率を評価した。
(実験2)ZrnB−CAtB系触媒
ZrnBの90%ブタノール溶液を用意し、そこに、モル比にてZrnB:CAtB=1:1になるようにCAtBを加えてZrnB−CAtB系触媒を作製した。次に、0.125gのZrnB−CAtB系触媒と、5gのMSポリマーS303とを(実験1)と同様の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験3)ZrnB−MdE系触媒
ZrnBの90%ブタノール溶液を用意し、そこに、モル比にてZrnB:MdE=1:1になるようにMdEを加えてZrnB−MdE系触媒を作製した。次に、0.093gのZrnB−MdE系触媒と、5gのMSポリマーS303とを(実験1)と同様の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験4)(ZrnB−2EAcAc)+PhG系触媒
ZrnBの90%ブタノール溶液を用意し、そこに、モル比にてZrnB:EAcAc=1:2になるようにEAcAcを加えてZrnB−2EAcAc系触媒を作製した。次に、モル比にてZrnB:EAcAc:PhGが1:2:1となるようPhGを加え、(ZrnB−2EAcAc)+PhG系触媒とした。所定容器に0.130gの(ZrnB−2EAcAc)+PhG系触媒と、5gのMSポリマーS303とを実験(1)と同様に混合して、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験5)TTE―CAtB系触媒(比較触媒)
TTEに、モル比にてTTE:CAtB=1:1になるようにCAtBを加えてTTE−CAtB触媒を作製した。次に、所定の容器に0.093gのTTE―CAtB系触媒と、5gのMSポリマーS303とを(実験1)と同様の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験6)チタンキレート系触媒(比較触媒)
TTiPにモル比にてTTiP:EAcAc=1:2になるようにEAcAcを加えてチタンキレート(TTiP−2EAcAc)系触媒を作製した。次に、5gのMSポリマーS303と0.086gのチタンキレート系触媒とを(実験1)と同様の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験7)ZrnB−2EAcAc系触媒(比較触媒)
ZrnBの90%ブタノール溶液を用意し、そこに、モル比にてZrnB:EAcAc=1:2になるようにEAcAcを加えてZrnB−2EAcAc系触媒を作製した。次に、0.109gのZrnB−2EAcAc系触媒と、5gのMSポリマーS303とを(実験1)と同様の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験8)ZrnB(比較触媒)
ZrnBの90%ブタノール溶液0.068gと、MSポリマーS303の5gを(実験1)と同様の方法で混合し、液所の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験9)DBTDL+3−アミノプロピルトリメトキシシラン(比較触媒)
0.1gのDBTDLと、0.1gの3−アミノプロピルトリメトキシシランと、5gのMSポリマーS303とを(実験1)と同様の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
(実験10)DBTbis(AcAc)+3−アミノプロピルトリメトキシシラン(比較触媒)
0.068gのDBTbis(AcAc)と、0.1gの3−アミノプロピルトリメトキシシランと、5gのMSポリマーS303とを(実験1)と同様の方法で混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験1と同評価を行った。
2.評価結果
表1に、各触媒を用いて硬化させた硬化体の評価結果を示す。図1〜4に、各触媒を用いて硬化させた硬化体の吸光度の結果を示す。また、図5に、実験No.1〜3、5〜7、9及び10の各硬化体の外観を写真で示す。
表1および図1〜5から、以下のことがわかった。チタニウム触媒系(実験No.5および6)および錫触媒系(実験No.9および10)を用いた場合には、硬化体の着色が濃い結果となった。しかし、ジルコニウム触媒系(実験No.1〜3、7および8)を用いた場合には、無色若しくは薄い着色の硬化体が得られ、かつ吸光度も低かった。しかし、実験No.7は皮張り時間が150分と極めて長いため、また実験No.8は皮張り時間の遅延率が30以上と極めて大きいため、いずれの特性も実験No.1〜3のそれには及ばなかった。また、ジルコニウムアルコキシドにクエン酸トリエチルまたはクエン酸トリブチル、マロン酸ジエチルを加えた触媒系(実験No.1、2および3)を用いた場合には、ジルコニウムアルコキシドにアセト酢酸エチルを加えた触媒系(実験No.7)に比べて皮張り時間が短く、触媒能に優れていた。また、実験No.7にPhGを加えた触媒系(実験No.4)は、皮張り時間が長く、実験No.1〜3に比し350nmの波長の吸光度が高く、薄黄色の着色が見られた。また、図1から明らかなように、チタニウム触媒系(実験No.5および6)を用いた場合は、400〜450nmの波長の光吸収が大きく、黄色に着色することが数値からも分かる。さらに、図3から、錫触媒系(実験No.9および10)を用いると可視光範囲である400〜800nm全てにおいて吸光度が高くなっている。試料は白濁しており、光散乱が強く起こっていることが分かる。これらの結果から、硬化後に無色若しくは無色に近く、吸光度が低く、皮張り時間が短く、皮張り時間の遅延率が低く、増粘率も1.2以下と低い実験No.1〜3は、実験No.4〜10に比べて優れた性能を有しているものと評価できる。
(B)実験例2
1.作製条件
(実験11)ZrnP−CAtE系触媒
実験1と同様に調製したZrnP−CAtE系触媒0.3gに対して、MSポリマーS303の5gを混合撹拌し、液状の硬化性組成物を得た。当該組成物を所定容器に移して密閉した状態で50℃の環境下にて7日間静置した後、室温にて皮張り時間と粘度を測定し、静置前後の変化を算出した。
(実験12)ZrnB−CAtB系触媒
実験2と同様に調製したZrnB−CAtB系触媒0.3gに対して、MSポリマーS303の5gを混合撹拌し、液状の硬化性組成物を得た。当該組成物を所定容器に移して密閉した状態で50℃の環境下にて7日間静置した後、室温にて皮張り時間と粘度を測定し、静置前後の変化を算出した。
(実験13)ZrnB系触媒
ZrnBの90%ブタノール溶液0.3gと、MSポリマーS303の5gを混合撹拌し、液状の硬化性組成物を得た。当該組成物を所定容器に移して密閉した状態で50℃の環境下にて7日間静置した後、室温にて皮張り時間と粘度を測定し、静置前後の変化を算出した。
2.評価結果
表2に示すとおり、配位子の無いZrnB系触媒(実験No.13)では、初期の皮張り時間が短いものの、遅延率が大きくなる。これに対して、配位子の有る触媒系(実験No.11および12)では、遅延率が小さく、配位子による触媒の保存安定性への優位な効果が明らかとなった。
(C)実験例3
1.作製条件
(実験14)ZrnB−CAtB系触媒+MTES
実験2と同様に調製したZrnB−CAtB系触媒を用意した。次に、0.1gのMTESと、5gのMSポリマーS303とを混合し、そこに、0.3gのZrnB−CAtB系触媒を加えて撹拌を行い、液状の硬化性組成物を得た。その後の処理及び評価は、実験例2と同様である。
(実験15)ZrnP−CAtE系触媒+MTES
実験1と同様に調製したZrnP−CAtE系触媒を用意した。次に、0.1gのMTESと、5gのMSポリマーS303とを混合し、そこに0.3gのZrnP−CAtE系触媒を加えて撹拌を行い、液状の硬化性組成物を得た。その後の処理及び評価は、実験例2と同様である。
(実験16)ZrnP−CAtE系触媒+MTMS(比較触媒)
MTESをMTMSに変えた以外、ZrnP−CAtE系触媒+MTESと同様の処理および評価を行った。
2.評価結果
表3に、各触媒を用いて硬化させた硬化体を、シラン化合物無添加の実験例2で得られた硬化体と比較して示す。
表3から明らかなように、メチルトリエトキシシランを加えた触媒系(実験No.14および15)では、メチルトリメトキシシランを加えた触媒系(実験No.16)に比べて、皮張り時間が短く、触媒能に優れていた。ただし、メチルトリエトキシシランの添加による皮張り時間の短縮は認められなかった。一方、増粘率を低下させる点では、メチルトリエトキシシランの添加効果が認められた。
(D)実験例4
1.作製条件
(実験17)ZrnP−CAtE系触媒
実験1で用意したZrnP−CAtE系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して6質量部となるように混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、初期皮張り時間(分)、皮張り時間の遅延率および増粘率を評価した。皮張り時間の遅延率および増粘率は、共に、50℃にて7日間静置後に評価した値である。
(実験18)ZrnP−CAtE系触媒(濃縮)
実験1で用意したZrnP−CAtE系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して6質量部用意し、加熱しながら乾燥窒素フロー雰囲気下にてアルコール成分の一部を揮発させてから、MSポリマーS303(100質量)に混合し、液状の硬化性組成物を得た。その後、実験17と同評価を行った。
(実験19)ZrnB−CAtB系触媒
実験17のZrnP−CAtE系触媒を実験2で用意したZrnB−CAtB系触媒に変更した以外を、実験17と同条件にて液状の硬化性組成物を得て、実験17と同評価を行った。
(実験20)ZrnB−CAtB系触媒(濃縮)
実験18のZrnP−CAtE系触媒を実験2で用意したZrnB−CAtB系触媒に変更した以外を、実験18と同条件にて液状の硬化性組成物を得て、実験17と同評価を行った。
(実験21)ZrnB−2EAcAc系触媒
実験7で用意したZrnB−2EAcAc系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して6質量部となるように混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、実験17と同評価を行った。
(実験22)ZrnB−2EAcAc系触媒(濃縮1)
実験7で用意したZrnB−2EAcAc系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して6質量部用意し、加熱しながら乾燥窒素フロー雰囲気下にてアルコール成分の一部を揮発させてから、MSポリマーS303(100質量)に混合し、液状の硬化性組成物を得た。その後、実験17と同評価を行った。
(実験23)ZrnB−2EAcAc系触媒(濃縮2)
実験22において、長時間の加熱によってアルコール成分の揮発を促進させ、MSポリマーS303(100質量部)に混合し、液状の硬化性組成物を得た。その後、実験17と同評価を行った。
2.評価結果
表4に、各触媒を用いて硬化させた硬化体の評価結果を示す。また、図6に、赤外吸収スペクトルのOHのピーク面積からアルコール成分を算出する方法を示す。図6は、表4中のZrnP−CAtE系触媒(実験No.17)とZrnP−CAtE系触媒(濃縮)(実験No.18)の赤外吸収スペクトルを例に示す。図6中の下方のスペクトルは、上方のスペクトルの一部を拡大したものである。
表4中のアルコール量(%)は、濃縮前のアルコール量(既知)と、濃縮前後のOHピーク面積の比とから算出された値である。いずれの触媒系でも、アルコール成分を揮発させると、皮張り時間が短く、かつ増粘率が低下する傾向が見られた。しかし、実験No.18および20は、それぞれ濃縮前のサンプル(実験No.17および19)に比べて大幅に皮張り時間が短くなるのに対して(最大50%減少)、実験No.22および23は、濃縮前のサンプル(実験No.21)に比べて皮張り時間の減少率は小さかった(最大でも22%減少)。これらの結果から、ジルコニウムアルコキシド−ヒドロキシカルボン酸エステル系触媒は、アルコール成分を少なくすることによって皮張り時間の大幅な減少を期待できる。
(E)実験例5
1.作製条件
(実験24)ZrnB−CAtB系触媒
実験2で用意したZrnB−CAtB系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して15質量部となるように混合し、液状の硬化性組成物を得たのち、初期皮張り時間(分)、保存後の皮張り時間(分)、色、吸光度(400nmにおける)皮張り時間の遅延率および増粘率を評価した。
(実験25)ZrnB−CAtB系触媒
実験2で用意したZrnB−CAtB系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して30質量部となるように混合した以外の条件を実験24と同条件にて液状の硬化性組成物を得て、実験24と同評価を行った。
(実験26)ZrnB系触媒
実験8で用意したZrnB系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して15質量部となるように混合した以外の条件を実験24と同条件にて液状の硬化性組成物を得て、実験24と同評価を行った。
(実験27)ZrnB系触媒
実験8で用意したZrnB系触媒をMSポリマーS303(100質量部)に対して30質量部となるように混合した以外の条件を実験24と同条件にて液状の硬化性組成物を得て、実験24と同評価を行った。
2.評価結果
表5に、各触媒を用いて硬化させた硬化体の評価結果を示す。なお、実験2,8,12,13についても実験24と同評価を行い、表5中に示す。
表5から明らかなように、ZrnB−CAtB系触媒を用いた4種のサンプルは、いずれも無色であり、皮張り時間も短かった。触媒量がポリマー100質量部に対して20質量部までは、保存後の皮張り時間が1時間以内であることから、触媒量が30質量部の場合と比べて、より優れた性能を発揮できることがわかった。一方、ZrnB系触媒は、4種とも保存後の皮張り時間が1時間以上であり、保存後の皮張り時間が1時間である実験13では、ZrnB−CAtB系触媒の実験25よりも皮張り時間遅延率が大きいため、総合的に劣ると考えられる。
本発明は、例えば、接着剤、シール材等に利用可能である。

Claims (8)

  1. 合成樹脂を硬化させる機能を持つ硬化触媒であって、
    (A)ジルコニウムアルコキシドと、
    (B)クエン酸エステルおよびマロン酸ジエステルの内の少なくともいずれか1つの配位子と、
    (C)メチルトリエトキシシランをさらに含む硬化触媒。
  2. 前記(A)ジルコニウムアルコキシドがジルコニウムプロポキシドおよびジルコニウムブトキシドの内の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化触媒。
  3. 前記(B)配位子がクエン酸エステルを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬化触媒。
  4. 前記(B)配位子がマロン酸ジエチルおよびマロン酸ジブチルの内の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の硬化触媒。
  5. 前記硬化触媒100質量部に対してアルコール成分が30質量部以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の硬化触媒。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の硬化触媒と、(D)架橋性シリル基含有樹脂とを含んで成る硬化性樹脂組成物。
  7. 前記硬化触媒が前記(D)架橋性シリル基含有樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項6または請求項7に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化体。
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