JP6801876B2 - プランジャー潤滑剤組成物 - Google Patents

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本発明は、プランジャー潤滑剤組成物に関し、さらに詳しくは、ダイカスト鋳造等において、プランジャーチップ外周面と射出スリーブ内周面との間に塗布されるプランジャー潤滑剤組成物に関するものである。
従来、アルミニウム等の金属の溶融物を成形するダイカスト鋳造において、プランジャーチップ外周面と射出スリーブ内周面との摩擦を低減する目的で、潤滑剤組成物が用いられている。
ダイカスト鋳造には、高温に加熱された金属の溶融物(溶湯)が用いられるため、これに直接触れるプランジャーチップおよび射出スリーブも高温となる。このように高温条件下では、油状の基油成分のみからなる潤滑剤組成物では潤滑性が失われやすい。
一方で、ダイカスト鋳造では、プランジャーチップにより溶融金属を高速で押し出すため、プランジャーチップ外周面と射出スリーブ内周面との間の摩耗が大きくなる傾向がある。そのため、プランジャー潤滑剤組成物には高い潤滑性が要求される。
上記のような、高温、高速条件下での高い潤滑性を満足するため、基油に固体潤滑剤を配合して用いる場合が多い。固体潤滑剤の中でも、特に黒鉛を配合した黒鉛系潤滑剤は、耐熱性、潤滑性に優れるなどの観点から広く用いられている(特許文献1)。しかしながら、黒鉛系潤滑剤は、塗布時に射出部周辺を汚染し、作業環境を悪化させたり、鋳造品に混入し、製品を汚染したりする虞がある。これに対し、作業環境の改善等の目的から、雲母、タルク、カオリンなどの非黒色系固体潤滑剤の使用が試みられてきた(特許文献2)。
特開2013−006205号公報 特開2010−174204号公報
しかし、非黒色系固体潤滑剤を使用した潤滑剤組成物の多くは、黒鉛を含有する潤滑剤組成物に比べ、潤滑性に劣り、プランジャーチップのカジリや摩耗が増加する問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、作業環境の悪化や、製品の汚染を防止しつつ、高温、高速の条件において優れた潤滑性を有するプランジャー潤滑剤組成物を提供することにある。
本発明に係る潤滑剤組成物は、プランジャーチップ外周面と射出スリーブ内周面との間に塗布されるプランジャー潤滑剤組成物であって、(A)基油と、(B)バリウムまたはストロンチウムの硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩または塩化物から選ばれる1種または2種以上とを含有することを要旨とする。
前記(B)成分は、バリウムまたはストロンチウムの硫酸塩から選ばれる1種または2種であることが好ましく、硫酸バリウムであることがより好ましい。
潤滑剤組成物は、水を含まない油性潤滑剤であることが好ましい。
潤滑剤組成物は、黒鉛を含有しないことが好ましい。
前記硫酸バリウムを、1〜50質量%含有することが好ましい。
本発明に係る潤滑剤組成物によれば、非黒色系固体潤滑剤である(B)成分
を用いることから、作業環境の悪化や、製品の汚染を防止できるとともに、高温、高速の条件においても、優れた潤滑性を有し、プランジャーチップと射出スリーブとの摩擦を低減することができる。
本発明に係る潤滑剤組成物(以降「本組成物」ともいう。)について詳細に説明する。
本発明に係る潤滑剤組成物は、(A)基油を含有する。基油としては、特に限定されるものではなく、例えば、原油を蒸留して得られる留分を精製したパラフィン系、ナフテン系の精製鉱物油などに代表される鉱物油、化学的に合成されるパラフィン系、ナフテン系、オレフィン系等の炭化水素系合成油、エステル系合成油などに代表される合成油、ヤシ油、コーン油、グレープシードオイル、ココナッツオイル、綿実油、小麦胚芽油、大豆油、サフラワーオイル、オリーブオイル、ピーナッツオイル、菜種油、ヒマワリ油などに代表される植物油、牛脂、豚脂などに代表される動物油、その他の油脂などを挙げることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る潤滑剤組成物は、(B)バリウムまたはストロンチウムの硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩または塩化物から選ばれる1種または2種以上を含有する。(B)成分は、安全性の観点から、バリウムまたはストロンチウムの硫酸塩であることが好ましい。また、国内での供給のしやすさの観点からは、バリウムの硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩または塩化物であることが好ましい。以上より、(B)成分としては、硫酸バリウムが特に好ましい。
(B)成分は、平均粒子径が小さいものの方が潤滑性に優れる。平均粒子径としては、10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが特に好ましい。平均粒子径の下限としては、二次凝集を抑制するなどの観点から0.1μm以上であることが好ましい。
硫酸バリウムおよび硫酸ストロンチウムには、天然の重晶石または天青石を粉砕したものと、化学的に合成したものとがあるが、いずれを用いてもよい。炭酸塩、硝酸塩および塩化物は、通常、化学的に合成したものである場合が多い。また、(B)成分は、分散性向上等の目的から、表面処理を施したものであってもよい。
(B)成分の含有量は、組成物全量に対して1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは5〜30質量%である。1質量%以上であると、潤滑性に優れる。一方、30質量%以上加えても、さらなる潤滑性の向上が見込まれず、また、塗布性に優れるなどの性状の観点から30質量%以下とすることが好ましい。
(B)成分は白色の固体潤滑剤である。非黒色系固体潤滑剤としては他に、タルク、雲母、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられるが、(B)成分は、他の非黒色潤滑剤に比べ、高温での潤滑性に優れることから、プランジャー潤滑剤組成物として好適である。
本発明に係る潤滑剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、(B)成分以外の固体潤滑剤を含んでもよい。黒鉛、二硫化モリブデンなどの黒色の固体潤滑剤を過度に加えると作業環境の悪化や、製品を汚染する虞がある。黒色の固体潤滑剤の含有量は、汚染の許容範囲等に応じて適宜決定すればよいが、組成物全量に対して概ね3質量%以下であることが好ましい。
本発明に係る潤滑剤組成物は、水を含まない油性潤滑剤として用いてもよいし、水を含む水性潤滑剤として用いてもよい。長期的な保管や潤滑性に優れるなどの観点から、油性潤滑剤として用いられることが好ましい。水を含まない油性潤滑剤とは、製造過程で意図的に水を添加しないという意味であり、製造中又は保管中に不可避的に混入する微量の水分を含む場合もある。
水性潤滑剤とすると、非危険物となり、製品の汚れや発火、発煙の度合も抑えられ、現場の作業環境に優れる。水性潤滑剤とする場合、水の含有量は、特に限定されるものではないが、組成物全量に対して、90質量%以下であることが好ましい。この際、本組成物は、エマルション型、ソリュブル型、ソリューション型のいずれの形態をとってもよい。
本発明に係る潤滑剤組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、分散剤、界面活性剤、粘度指数調整剤、防腐剤、染料、香料、消泡剤、極圧添加剤、摩耗防止剤、酸化防止剤などが挙げられる。
実使用に際し、上記の添加剤として、分散剤または界面活性剤を加えることが好ましい。分散剤または界面活性剤の添加は任意であるが、これらを加えると、固体潤滑剤等の成分の分離、沈降を抑制でき、保存安定性に優れる。
本発明に係る潤滑剤組成物は、耐熱性と潤滑性に優れることから、プランジャー潤滑剤組成物として好適に用いることができる。ダイカスト鋳造等のプランジャーチップおよび射出スリーブは、高温かつ高速で用いられる。本組成物は、このような過酷な条件下で用いられるプランジャー用の潤滑剤として効果的である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
(潤滑剤組成物の作成)
(実施例1)
68質量%の基油1(JXTGエネルギー社製 スーパーオイルN460(パラフィン系鉱物油))および20質量%のサラダ油(日清オイリオグループ社製 大豆サラダ油S)に、分散剤として1質量%のプロピレンカルボナート(キシダ化学社製)および1質量%の有機ベントナイト(ホージュン社製 エスベンN−400)を加えて撹拌した。そこに、10質量%の硫酸バリウム1を少量ずつ加えて撹拌し、潤滑剤組成物を得た。
(実施例2〜9、比較例1〜13)
硫酸バリウム1に替えて、表1、2に記載の固体潤滑剤を用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(実施例10)
基油1を58質量%、硫酸バリウムを20質量%としたこと以外は、実施例1と同様である。
(実施例11)
基油1を48質量%、硫酸バリウムを30質量%としたこと以外は、実施例1と同様である。
(実施例12)
70質量%の水、10質量%の基油2(JXTGエネルギー社製 スーパーオイルN46(パラフィン系鉱物油))、10質量%のサラダ油(日清オイリオグループ社製 大豆サラダ油S)、5質量%の界面活性剤を混ぜ、乳化させた後、5質量%の硫酸バリウム1を少量ずつ加えて撹拌し、潤滑剤組成物を得た。
(比較例14〜16)
硫酸バリウム1に替えて、表2に記載の固体潤滑剤を用いたこと以外は、実施例12と同様である。
(平面摺動試験)
3.3mg/mの潤滑剤組成物を試験片(炭素工具鋼 30×500×1.8mm)に塗布し、ダイス(SKD−61 R=2.5 幅20mm)を用い、面圧8.3MPa、摺動速度400mm/sec以上、摺動距離150mmの条件下、常温および500℃以上の高温条件で平面摺動試験を行い、摩擦係数を測定した。
(固体潤滑剤)
・硫酸バリウム1:竹原化学工業社製 W−1(簸性硫酸バリウム) 粒子径:2.0μm
・硫酸バリウム2:竹原化学工業社製 W−6(簸性硫酸バリウム) 粒子径:6.0μm
・硫酸バリウム3:堺化学工業社製 B−34(表面処理沈降性硫酸バリウム) 粒子径:0.3μm
・硫酸バリウム4:堺化学工業社製 沈降性硫酸バリウム110(沈降性硫酸バリウム) 粒子径:0.6μm
・硫酸バリウム5:堺化学工業社製 BMH−40(沈降性硫酸バリウム) 粒子径:5.0μm
・炭酸バリウム:堺化学工業社製 BW−E1 粒子径:1.5μm
・硝酸バリウム:米山薬品工業社製
・塩化バリウム:米山薬品工業社製 塩化バリウム(無水)
・硫酸ストロンチウム:和光純薬工業社製
・タルク1:日本タルク社製 MS−KY 粒子径:25.0μm
・タルク2:日本タルク社製 SIMGON 粒子径:8.0μm
・タルク3:日本タルク社製 SG−200 粒子径:3.2μm
・雲母1:レプコ社製 MK−100(合成雲母) 粒子径:4.0μm
・雲母2:レプコ社製 M−XF(白雲母) 粒子径:3.8μm
・雲母3:レプコ社製 S−XF(金雲母) 粒子径:3.0μm
・雲母4:三信鉱工社製 セリサイトFSN(絹雲母) 粒子径:4.0μm
・炭酸カルシウム1:白石工業社製 vigot15 粒子径:0.15μm
・炭酸カルシウム2:白石工業社製 ホワイトンSSB青 粒子径:1.5μm
・水酸化カルシウム:近藤石灰工業社製 超特号消石灰 粒子径:9.0μm
・硫酸カルシウム:和光純薬工業社製 硫酸カルシウム・二水和物
・硫酸マグネシウム:和光純薬工業社製 硫酸マグネシウム(無水)
・ステアリン酸バリウム:川村化成工業社製
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表1〜3より、加工油等に用いられる一般的な固体潤滑剤を用いた場合、常温での摩擦係数には大きな差異はない。しかし、高温の摩擦係数では、(B)成分の固体潤滑剤を含有しない比較例1〜16は、(B)成分を含有する実施例に劣る結果となった。本実施例においては、高速での潤滑性能を確認するため、摺動速度400mm/sec以上の条件で平面摺動試験を行った。低速で同様の試験を行うと、(B)成分の固体潤滑剤を含有しない比較例1〜16であっても、本実施例のような摩擦係数の差異は見られない。
一方、(B)成分を含有する実施例によれば、いずれも高温条件下で良好な潤滑性が得られる。特に硫酸バリウムは、潤滑性に優れ、粉砕品である簸性硫酸バリウム(実施例1、2)であっても、合成品である沈降性硫酸バリウム(実施例3〜5)であっても良好な潤滑性が得られる。また、表面処理を施したもの(実施例3)であっても用いることができる。(B)成分としては、硫酸塩(実施例1)、炭酸塩(実施例6)、硝酸塩(実施例7)、塩化物(実施例8)のいずれでも良好な潤滑性が得られる。特に硫酸塩、炭酸塩は潤滑性に優れる。また、ストロンチウムの塩(実施例9)であってもバリウムの塩と同様の効果が得られる。これに対して、ステアリン酸バリウム(比較例13)のような有機酸の塩では、高温での潤滑性が優れない。これは無機塩に比べ耐熱性が劣り、高温条件下で固体潤滑剤として機能しなかったためと推察される。実施例1〜2、および3〜5より、(B)成分としては、平均粒子径が小さい方が潤滑性に優れる傾向がみられる。
表3より、(B)成分を含有する本発明にかかる潤滑剤組成物は、水を含む水性潤滑剤としても用いることができる。水性潤滑剤とすると非危険物となり、製品の汚れや発火、発煙の度合も抑えられ、現場の作業環境に優れる。一方、実施例1〜11のように油性潤滑剤として用いると、長期的な保管や潤滑性に優れる。
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (6)

  1. (A)基油と、(B)バリウムまたはストロンチウムの硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩または塩化物から選ばれる1種または2種以上とを含有することを特徴とするプランジャー潤滑剤組成物。
  2. 前記(B)成分が、バリウムまたはストロンチウムの硫酸塩から選ばれる1種または2種であることを特徴とする請求項1に記載のプランジャー潤滑剤組成物。
  3. 前記(B)成分が、硫酸バリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載のプランジャー潤滑剤組成物。
  4. 組成物中に水を含まない油性潤滑剤であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプランジャー潤滑剤組成物。
  5. 黒鉛を含有しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプランジャー潤滑剤組成物。
  6. 前記(B)成分を、1〜50質量%含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプランジャー潤滑剤組成物。
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