実施形態.
図1は、本発明の実施形態に係る電磁流量計の構成を概略的に示すブロック図である。電磁流量計100は、導電性を有する流体の流量を測定するものである。図1に示すように、電磁流量計100は、検出器10と、変換器20と、を有している。検出器10は、測定管11と、励磁コイル12と、電極13aと、電極13bと、を有している。
測定管11は、パイプ状に形成され、流体を通過させるものである。電磁流量計100は、導電性を有する流体が測定管11内を流れるように配設される。励磁コイル12は、測定管11内に磁界を発生させ、測定管11内を流れる流体に磁界を印加するものである。励磁コイル12は、磁界の発生方向が、測定管11内を流れる流体の流れ方向に対して垂直となるように配置されている。
電極13a及び電極13bは、電極13aと電極13bとを結ぶ直線が、測定管11内を流れる流体の流れ方向、及び励磁コイル12が発生させる磁界の方向に対して直交するように測定管11内に配置され、一対の電極を構成している。電極13a及び電極13bは、励磁コイル12が発生させる磁界中を流体が流れることで発生する起電力を検出し、検出した起電力を示す起電力信号を変換器20へ出力するものである。
変換器20は、増幅処理回路30と、A/D変換器40と、制御部50と、励磁部80と、を有している。増幅処理回路30は、電極13a及び電極13bから出力される起電力信号を増幅させるものである。増幅処理回路30は、例えば、交流増幅回路と、サンプルホールド回路と、直流増幅回路と、を含んで構成することができる。交流増幅回路は、電極13aからの起電力信号と電極13bからの起電力信号との差を増幅するものである。サンプルホールド回路は、励磁電流Iexが正極性及び負極性のそれぞれのときの起電力信号の電圧を保持するものである。直流増幅回路は、励磁電流Iexが正極性のときの起電力信号の電圧と、励磁電流Iexが負極性のときの起電力信号の電圧との差を増幅するものである。A/D変換器40は、増幅処理回路30において増幅されたアナログの起電力信号をデジタルの起電力信号に変換し、変換した起電力信号を制御部50に出力するものである。
制御部50は、演算処理部60と、記憶部70と、を有している。演算処理部60は、励磁制御部61と、ダンピング処理部62と、判定処理部63と、流量演算処理部64と、出力処理部65と、を有している。
記憶部70には、演算処理部60の動作プログラムが格納されている。例えば、記憶部70には、初期状態においてダンピング処理部62が用いるダンピング時定数である初期時定数が記憶されている。また、記憶部70には、後述する入力信号及び出力信号に対応する流量値とダンピング時定数とが関連づけられた時定数情報が記憶されている。時定数情報では、流量値とダンピング時定数とが、流量値が大きくなるとダンピング時定数が小さくなるように関連づけられている。励磁制御部61は、励磁部80に対して励磁電流Iexの生成を指示するものである。
ダンピング処理部62は、A/D変換器40から出力される起電力信号にダンピング処理を施し、ダンピング処理後の起電力信号を流量演算処理部64へ出力するものである。ここで、ダンピング処理とは、一次遅れのデジタルフィルタに基づくフィルタ処理である。以降では、A/D変換器40から出力され、ダンピング処理部62に入力される起電力信号を「入力信号」ともいい、ダンピング処理部62がダンピング処理後に出力する起電力信号を「出力信号」ともいう。
すなわち、ダンピング処理部62は、検出器10において検出された起電力に基づく入力信号にダンピング処理を施して出力信号を生成するものである。より具体的に、ダンピング処理部62は、入力信号に対し、指定した時間遅れのデジタルフィルタの演算を実施することにより、起電力信号のふらつきを防止するものである。本実施形態において、ダンピング処理部62は、下記の式(1)に基づくダンピング処理を実行する。
式(1)において、KFは、一次遅れのデジタルフィルタにおける係数であり、「KF=TS/(TS+TK)」の関係がある。TSは、予め設定されたサンプリング時間であり、TKは、ダンピング時定数である。また、nは、サンプリングタイミングを示すものである。すなわち、Xnは、今回のタイミングでサンプリングした入力信号の値であり、Ynは、今回のタイミングで生成した出力信号の値であり、Yn−1は、Ynの1つ前のタイミングで生成した出力信号の値である。
判定処理部63は、サンプリング時間TSごとに入力信号と出力信号とを取得するものである。そして、判定処理部63は、入力信号の値が出力信号の値よりも小さい場合、出力信号の値をもとにダンピング時定数を求めるものである。また、判定処理部63は、入力信号の値が出力信号の値よりも大きい場合、入力信号の値をもとにダンピング時定数を求めるものである。
図1に示すように、判定処理部63は、流量判定部63aと、時定数決定部63bと、を有している。流量判定部63aは、サンプリング時間TSごとに、入力信号と出力信号とを取得して、入力信号の値と出力信号の値とを比較するものである。そして、流量判定部63aは、入力信号の値と出力信号の値との大小について判定し、判定に基づく情報を時定数決定部63bへ出力するものである。
図2は、図1のダンピング処理部への入力信号が立ち下がりの状態にある場合の判定処理に関する説明図である。図3は、図1のダンピング処理部への入力信号が立ち上がりの状態にある場合の判定処理に関する説明図である。図2及び図3を参照して、流量判定部63aが行う判定処理について具体的に説明する。ここで、立ち下がりの状態とは、流体の流量が減少しており、入力信号の値が小さくなる方向に変化している状態のことである。立ち上がりの状態とは、流体の流量が増加しており、入力信号の値が大きくなる方向に変化している状態のことである。説明の便宜上、図2では、入力信号Isが25%から0%に低下した場合を例示し、図3では、入力信号Isが0%から25%に上昇した場合を例示する。また、図2及び図3では、サンプリングタイミングとして、時刻t0と時刻t1とを例示している。
流量判定部63aは、サンプリング時間TSごとに、入力信号Isの値と出力信号Osの値とを比較するものである。図2における時刻t0では、入力信号Isの値と出力信号Osの値とが等しいため、流量判定部63aは、入力信号Isの値を流量値として時定数決定部63bへ出力するようになっている。一方、図2における時刻t1では、入力信号Isの値Finよりも出力信号Osの値Foutの方が大きくなっているため、立ち下がりの状態にあると判断することができる。よって、流量判定部63aは、時刻t1では、出力信号Osの値Foutを流量値として時定数決定部63bへ出力するようになっている。すなわち、流量判定部63aは、各サンプリングタイミングにおいて、入力信号の値よりも出力信号の値の方が大きい場合、出力信号の値を流量値として時定数決定部63bへ出力するようになっている。
図3における時刻t0では、入力信号Isの値と出力信号Osの値とが等しいため、流量判定部63aは、入力信号Isの値を流量値として時定数決定部63bへ出力するようになっている。一方、図3における時刻t1では、入力信号Isの値Finよりも出力信号Osの値Foutの方が小さくなっているため、立ち上がりの状態にあると判断することができる。よって、流量判定部63aは、時刻t1では、入力信号Isの値Finを流量値として時定数決定部63bへ出力するようになっている。すなわち、流量判定部63aは、各サンプリングタイミングにおいて、入力信号の値よりも出力信号の値の方が小さい場合、入力信号の値を流量値として時定数決定部63bへ出力するようになっている。
このように、本実施形態では、ダンピング処理の前後の信号値のうち、絶対値の大きい方がどちらであるかを判定することにより、立ち下がりの状態にあるか、立ち上がりの状態にあるかを判別する方式を採用している。もっとも、流量判定部63aは、入力信号Isの値と出力信号Osの値とが等しい場合に、出力信号Osの値を流量値として時定数決定部63bへ出力するようにしてもよい。
時定数決定部63bは、流量判定部63aから出力される流量値をもとに、ダンピング時定数を求め、求めたダンピング時定数をダンピング処理部62へ出力するものである。時定数決定部63bは、流量判定部63aから出力される流量値を、記憶部70内の時定数情報に照らすことにより、ダンピング時定数を求めるようになっている。
図4は、図1の時定数決定部がダンピング時定数を求める際に参照する時定数テーブルを例示した表である。ここでは、記憶部70に、時定数情報として、図4に例示する時定数テーブルが記憶されているものとする。図4では、ダンピング時定数が3段階に設定された時定数テーブルを例示している。なお、図4の流量値は、入力信号及び出力信号に対応しており、時定数テーブルでは、流量値とダンピング時定数とが、流量値が大きくなるとダンピング時定数が小さくなるように関連づけられている。
時定数決定部63bは、流量判定部63aから出力される流量値が5%以上である場合、ダンピング時定数を1sに決定するようになっている。ここで、流量値5%以上の範囲に対応するダンピング時定数を「基本時定数」ともいう。基本時定数は、前述した
初期時定数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、時定数決定部63bは、流量判定部63aから出力される流量値が1%以上5%未満である場合、ダンピング時定数を10sに決定するようになっている。さらに、時定数決定部63bは、流量判定部63aから出力される流量値が1%未満である場合、ダンピング時定数を20sに決定するようになっている。そして、時定数決定部63bは、決定したダンピング時定数をダンピング処理部62へ出力するようになっている。
図5は、図1の時定数決定部が入力信号のみ又は出力信号のみを用いてダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理の様子を例示した説明図である。図6は、図1の時定数決定部が流量判定部からの流量値を用いてダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理の様子を例示した説明図である。図5及び図6には、説明の便宜上、0%〜25%の矩形波を入力したときのローフローカット後の波形を示している。ここで、図5には、本実施形態の比較例におけるダンピング処理を示し、図6には、本実施形態におけるダンピング処理を示している。図4〜図6を参照して、本実施形態におけるダンピング処理について説明する。
図5(a)には、立ち下がりの状態及び立ち上がりの状態の双方で入力信号をもとにダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理後の出力信号Oinを示している。図5(b)には、立ち下がりの状態及び立ち上がりの状態の双方で出力信号をもとにダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理後の出力信号Ooutを示している。図5(a)では、立ち下がり開始直後のサンプリングタイミングとして時刻t2を例示し、立ち上がり開始直後のサンプリングタイミングとして時刻t3を例示している。図5(b)では、立ち下がり開始直後のサンプリングタイミング、及びそれ以降の任意のサンプリングタイミングとして、時刻t4、時刻t5、時刻t6を例示している。また、図5(b)では、立ち上がり開始直後のサンプリングタイミング、及びそれ以降の任意のサンプリングタイミングとして、時刻t7、時刻t8、時刻t9を例示している。なお、図5(a)及び図5(b)には、矩形波状の入力信号Isを破線で示している。後述する図6、図8、及び図9においても同様である。
ここで、時定数決定部63bが、図4の時定数テーブルを用いる場合を想定する。
図5(a)の場合、時定数決定部63bは、時刻t2における入力信号Isの値が0%であるため、立ち下がり開始直後におけるダンピング時定数を20sに決定する。また、時定数決定部63bは、時刻t3における入力信号Isの値が25%であるため、立ち上がり開始直後におけるダンピング時定数を1sに決定する。したがって、ダンピング処理部62によるダンピング処理後の出力信号Oinは、立ち上がりよりも立ち下がりに時間がかかっている。その結果、図5(a)の場合では、入力信号Isと出力信号Oinとの間の、立ち下がりにおける領域Dinと、立ち上がりにおける領域Uinとの間に大きな差が生じるため、精確な流量値を求めることができず、流量の積算精度が低下することになる。
図5(b)の場合、時定数決定部63bは、時刻t4における出力信号Ooutの値が5%を超えているため、立ち下がり開始直後におけるダンピング時定数を1sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t5における出力信号Ooutの値が1%以上5%未満であるため、ダンピング時定数を10sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t6における出力信号Ooutの値が1%未満であるため、ダンピング時定数を20sに決定する。また、時定数決定部63bは、時刻t7における出力信号Ooutの値が1%未満であるため、立ち上がり開始直後におけるダンピング時定数を20sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t8における出力信号Ooutの値が1%以上5%未満であるため、ダンピング時定数を10sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t9における出力信号Ooutの値が5%以上であるため、ダンピング時定数を1sに決定する。したがって、ダンピング処理部62によるダンピング処理後の出力信号Ooutは、立ち下がりよりも立ち上がりに時間がかかっている。その結果、図5(b)の場合では、入力信号Isと出力信号Ooutとの間の、立ち下がりにおける領域Doutと、立ち上がりにおける領域Uoutとの間に大きな差が生じるため、精確な流量値を求めることができず、流量の積算精度が低下することになる。
これに対し、本実施形態における時定数決定部63bは、上述したように、流量判定部63aからの流量値をもとにダンピング時定数を求めるように構成されている。図6には、立ち下がりの状態で出力信号を用い、立ち上がりの状態で入力信号を用いてダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理後の出力信号Osを示している。図6では、複数のサンプリングタイミングを、図5(a)の立ち上がりと、図5(b)の立ち下がりとに対応づけて例示している。
ここで、時定数決定部63bが、図4の時定数テーブルを用いる場合を想定する。
時定数決定部63bは、時刻t4における出力信号Osの値が5%を超えているため、立ち下がり開始直後におけるダンピング時定数を1sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t5における出力信号Ooutの値が1%以上5%未満であるため、ダンピング時定数を10sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t6における出力信号Ooutの値が1%未満であるため、ダンピング時定数を20sに決定する。また、時定数決定部63bは、時刻t3における入力信号Isの値が25%であるため、立ち上がりにおけるダンピング時定数を1sに決定する。したがって、ダンピング処理部62によるダンピング処理後の出力信号Osは、立ち下がりの時間と立ち上がりの時間とが同程度になっている。その結果、入力信号Isと出力信号Osとの間の、立ち下がりにおける領域Doutと、立ち上がりにおける領域Uinとの間の差を小さくすることができるため、精確な流量値を求めることができ、流量の積算精度の向上を図ることができる。
流量演算処理部64は、ダンピング処理部62からの出力信号をもとに、測定管11内を流れている現在の流体の流量を求め、求めた流量の情報を出力処理部65へ出力するものである。流量演算処理部64は、測定管11内を流れる流体の熱量を演算する機能を有していてもよい。出力処理部65は、流量演算処理部64が求めた流量の情報を外部の機器等へ出力するものである。ここで、変換器20が、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)からなる表示部、又は7セグメント式の表示部などを有する場合、出力処理部65は、流量演算処理部64が求めた流量の情報を表示部に表示させるものであってよい。
励磁部80は、励磁制御部61からの指示に応じて、極性が交互に変化する励磁周波数fexの励磁電流Iexを励磁コイル12に供給するものである。すなわち、本実施形態では、図1に示すように、矩形波励磁方式を採用している。
演算処理部60は、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等の演算装置と、こうした演算装置と協働して上記の各種機能を実現させる動作プログラムとによって構成することができる。記憶部70は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、又はHDD(Hard Disk Drive)等により構成することができる。
図7は、図1の電磁流量計の動作を示すフローチャートである。図7を参照して、制御部50の処理内容を説明する。
ダンピング処理部62は、増幅処理回路30及びA/D変換器40を介して、検出器10からの起電力信号を入力信号として取得する。次いで、ダンピング処理部62は、初期時定数を用いて、入力信号に対し、式(1)に基づくダンピング処理を施し、出力信号を生成する。その際、ダンピング処理部62は、式(1)において最初「Yn=Yn−1=Xn」とすることによりダンピング処理を開始する。そして、ダンピング処理部62は、生成した出力信号を流量演算処理部64へ出力する(ステップS101)。
流量判定部63aは、ダンピング処理部62に入力される入力信号と、ダンピング処理部62から出力される出力信号とを取得する(ステップS102)。次いで、流量判定部63aは、入力信号の値と出力信号の値との大小を比較し、入力信号の値が出力信号の値よりも小さいか否かを判定する(ステップS103)。
流量判定部63aは、入力信号の値が出力信号の値よりも小さければ(ステップS103/Yes)、立ち下がりの状態にあると判断することができるため、出力信号の値を流量値として時定数決定部63bへ出力する(ステップS104)。一方、流量判定部63aは、入力信号の値が出力信号の値以上であれば(ステップS103/No)、入力信号の値を流量値として時定数決定部63bへ出力する。これは、入力信号の値が出力信号の値よりも大きければ、立ち上がりの状態にあると判断することができるからである。また、入力信号の値と出力信号の値とが等しい場合は、どちらの値を送信してもよいため、本実施の形態では、流量判定部63aが、入力信号の値を時定数決定部63bへ出力するようになっている(ステップS105)。
次いで、時定数決定部63bは、流量判定部63aから出力された流量値を、時定数情報に照らすことにより、ダンピング時定数を求める(ステップS106)。そして、時定数決定部63bは、求めたダンピング時定数をダンピング処理部62へ出力する(ステップS107)。ダンピング処理部62は、時定数決定部63bから取得したダンピング時定数を用いて、入力信号に対し、式(1)に基づくダンピング処理を施し、出力信号を生成する。そして、ダンピング処理部62は、生成した出力信号を流量演算処理部64へ出力する(ステップS108)。制御部50は、ステップS102〜S108の一連の処理を、サンプリング時間TSごとに繰り返し実行する。
ここで、上記の説明では、時定数決定部63bが、求めたダンピング時定数をダンピング処理部62へ出力する場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、時定数決定部63bは、求めたダンピング時定数を記憶部70に記憶させるようにしてもよい。そして、ダンピング処理部62は、時定数決定部63bがサンプリングタイミングごとに記憶部70に記憶させたダンピング時定数を読み出してダンピング処理を行うようにしてもよい。
以上のように、本実施形態における電磁流量計100は、起電力に基づく入力信号とダンピング処理後の出力信号との大小関係をもとにダンピング時定数を求める。そのため、流体の流量の増減に対応づけて、立ち下がりの時間と立ち上がりの時間とのバランスを調整することができるため、流量の積算値の誤差を抑制し、流量の積算精度の向上を図ることができる。
ところで、ダンピング処理部62に入力される信号の波形は一定ではなく、実際には、ダンピング処理部62にどんな波形の信号が入力されるか分からない。この点、本実施形態では、ダンピング処理後の出力信号は入力信号よりも遅延することに着目し、ダンピング処理の前後の信号値のうち、絶対値の大きい方がどちらであるかを判定する方式を採用している。すなわち、電磁流量計100は、入力信号が立ち下がりの状態にあれば「入力信号の値<出力信号の値」となり、入力信号が立ち上がりの状態にあれば「入力信号の値>出力信号の値」となることを利用して、立ち下がりの状態にあるか、立ち上がりの状態にあるかを判別するようになっている。そのため、電磁流量計100によれば、立ち下がりに出力信号を用い、立ち上がりに入力信号を用いるという処理を自動的に行うことができるため、精度のよい流量測定を実現することができる。
また、記憶部70には、流量値の範囲とダンピング時定数とが段階的に関連づけられた時定数テーブルが記憶されている。そして、判定処理部63は、入力信号の値又は出力信号の値を時定数テーブルに照らしてダンピング時定数を求めるようになっている。そのため、流量値の閾値(図4の例では1%及び5%)を基準としたダンピング時定数の切替処理を精度よく行うことができる。すなわち、電磁流量計100によれば、図6の例のように、立ち下がりの状態と立ち下がりの状態との双方において、基本時定数を用いたダンピング処理を行うことができるため、流量の積算値の誤差を小さくすることができる。
さらに、本実施形態の電磁流量計100は、ダンピング時定数が変化したときに初期化を行わないことから、流量値が閾値を跨いで変化し、ダンピング時定数が切り替わったときでも、出力信号が円滑に変化するため、流体の流量を精度よく測定することができる。
ここで、時定数情報は、図4のようなテーブル情報に限らず、流量とダンピング時定数とが、流量が大きくなるとダンピング時定数が小さくなるように関連づけられたグラフ等の情報であってもよい。この場合、時定数情報は、流量がある値を超えると、ダンピング時定数が一定となるように構成するとよい。このようにしても、本実施形態の電磁流量計100は、ダンピング時定数が変化したときに初期化を行わないことから、ダンピング時定数の切り替わりの際に、出力信号が急激に変化する飛びが発生しないため、流体の流量を精度よく測定することができる。
<変形例>
図8は、本発明の実施形態の変形例に係る電磁流量計の時定数決定部が、入力信号のみ又は出力信号のみを用いてダンピング時定数を求め、ダンピングの入出力バッファを初期化した場合のダンピング処理の様子を例示した説明図である。図9は、本発明の実施形態の変形例に係る電磁流量計の時定数決定部が流量判定部からの流量値を用いてダンピング時定数を求め、ダンピングの入出力バッファを初期化した場合のダンピング処理の様子を例示した説明図である。本変形例の電磁流量計は、ダンピング時定数が変化したときに初期化を行う点に特徴があるが、図1の例と同様に構成されているため、同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
本変形例のダンピング処理部62は、判定処理部63が求めたダンピング時定数が、前回のサンプリングタイミングで判定処理部63が求めたダンピング時定数から変化している場合に、初期化を行うように構成されている。本変形例において、ダンピング処理部62は、ダンピング時定数が変更されたとき、式(1)において「Yn=Yn−1=Xn」とすることにより初期化を行い、ダンピング処理を実行するようになっている。
図8及び図9には、説明の便宜上、0%〜25%の矩形波を入力したときのローフローカット後の波形を示している。ここで、図8には、本変形例の比較例におけるダンピング処理を示し、図9には、本変形例におけるダンピング処理を示している。図4と図8及び図9とを参照して、本変形例におけるダンピング処理について説明する。
図8(a)には、立ち下がりの状態及び立ち上がりの状態の双方で入力信号をもとにダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理後の出力信号Oinを示している。図8(b)には、立ち下がりの状態及び立ち上がりの状態の双方で出力信号をもとにダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理後の出力信号Ooutを示している。図8(a)では、立ち下がり開始直後のサンプリングタイミングとして時刻t2を例示し、立ち上がり開始直後のサンプリングタイミングとして時刻t3を例示している。図8(b)では、立ち下がり開始直後のサンプリングタイミング、及びそれ以降の任意のサンプリングタイミングとして、時刻t4、時刻t5、時刻t6を例示している。また、図8(b)では、立ち上がり開始直後のサンプリングタイミング、及びそれ以降の任意のサンプリングタイミングとして、時刻t7、時刻t8、時刻t9を例示している。
ここで、時定数決定部63bが、図4の時定数テーブルを用いる場合を想定する。
図8(a)の場合、時定数決定部63bは、時刻t2における入力信号Isの値が0%であるため、立ち下がり開始直後におけるダンピング時定数を20sに決定する。本変形例のダンピング処理部62は、ダンピング時定数が変更されたときに初期化を行うため、図8(a)に示すように、ダンピング時定数の切り替わりの際に飛びが発生し、出力信号Oinが急激に低下する。
また、時定数決定部63bは、時刻t3における入力信号Isの値が25%であるため、立ち上がりにおけるダンピング時定数を1sに決定する。本変形例のダンピング処理部62は、ダンピング時定数が変更されたときに初期化を行うため、図8(a)に示すように、ダンピング時定数の切り替わりの際に飛びが発生している。
したがって、ダンピング処理部62によるダンピング処理後の出力信号Oinは、立ち上がりよりも立ち下がりの方が早くなっている。その結果、図8(a)の場合では、入力信号Isと出力信号Oinとの間の、立ち下がりにおける領域Dinと、立ち上がりにおける領域Uinとの間に大きな差が生じるため、精確な流量値を求めることができず、流量の積算精度が低下することになる。
図8(b)の場合、時定数決定部63bは、時刻t4における出力信号Ooutの値5%を超えているため、立ち下がり開始直後におけるダンピング時定数を1sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t5における出力信号Ooutの値が1%以上5%未満であるため、ダンピング時定数を10sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t6における出力信号Ooutの値が1%未満であるため、ダンピング時定数を20sに決定する。本変形例のダンピング処理部62は、ダンピング時定数が変更されたときに初期化を行うため、ダンピング時定数の切り替わりの際に、図5(b)の場合よりも、出力信号Ooutの変化が大きくなっている。
また、時定数決定部63bは、時刻t7における出力信号Ooutの値が1%未満であるため、立ち上がり開始直後におけるダンピング時定数を20sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t8における出力信号Ooutの値が1%以上5%未満であるため、ダンピング時定数を10sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t9における出力信号Ooutの値が5%以上であるため、ダンピング時定数を1sに決定する。本変形例のダンピング処理部62は、ダンピング時定数が変更されたときに初期化を行うため、図5(b)の場合よりも、出力信号Ooutの変化が大きくなっている。特に、ダンピング時定数を20sに決定したときに、出力信号Ooutが急激に変化している。
したがって、ダンピング処理部62によるダンピング処理後の出力信号Ooutは、立ち下がりよりも立ち上がりに時間がかかっている。その結果、図8(b)の場合では、入力信号Isと出力信号Ooutとの間の、立ち下がりにおける領域Doutと、立ち上がりにおける領域Uoutとの間に大きな差が生じるため、精確な流量値を求めることができず、流量の積算精度が低下することになる。
これに対し、本変形例における時定数決定部63bは、上述したように、流量判定部63aからの流量値をもとにダンピング時定数を求めるように構成されている。図9には、立ち下がりの状態で出力信号を用い、立ち上がりの状態で入力信号を用いてダンピング時定数を求めた場合のダンピング処理後の出力信号Osを示している。図9では、複数のサンプリングタイミングを、図8(a)の立ち上がりと、図8(b)の立ち下がりとに対応づけて例示している。
ここで、時定数決定部63bが、図4の時定数テーブルを用いる場合を想定する。
時定数決定部63bは、時刻t4における出力信号Osの値が5%を超えているため、立ち下がりにおけるダンピング時定数を1sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t5における出力信号Ooutの値が1%以上5%未満であるため、ダンピング時定数を10sに決定する。時定数決定部63bは、時刻t6における出力信号Ooutの値が1%未満であるため、ダンピング時定数を20sに決定する。また、時定数決定部63bは、時刻t3における入力信号Isの値が25%であるため、立ち上がりにおけるダンピング時定数を1sに決定する。したがって、ダンピング処理部62によるダンピング処理後の出力信号Osは、立ち下がりの時間と立ち上がりの時間とが同程度になっている。その結果、入力信号Isと出力信号Osとの間の、立ち下がりにおける領域Doutと、立ち上がりにおける領域Uinとの間の差を小さくすることができるため、精確な流量値を求めることができ、流量の積算精度の向上を図ることができる。ただし、本変形例のダンピング処理部62は、ダンピング時定数が変更されたときに初期化を行うため、図9に示すように、ダンピング時定数の切り替わりの際に飛びが発生している。
(まとめ)
ここで、図5、図6、図8、及び図9を参照して、本実施形態における電磁流量計100について考察する。図5と図6との比較、及び図8と図9との比較によると、ダンピング時定数の切り替わりの際、初期化を行う場合でも、初期化を行わない場合でも、本願の方式、すなわち、立ち下がりに出力信号を用い、立ち上がりに入力信号を用いる方式の方が、流量値の誤差が少ないといえる。さらに、図5と図9との比較、及び図6と図8との比較を交えると、初期化を行うか否かにかかわらず、本願の方式の方が、入力信号のみ又は出力信号のみを用いてダンピング時定数を求める方式よりも、流量値の誤差が少ないことがわかる。
ここで、図6と図9とを比較すると、ダンピング時定数の切り替わりの際に飛びが発生する変形例の方が、流量値の誤差が大きくなっている。したがって、立ち下がりに出力信号を用い、立ち上がりに入力信号を用いることによりダンピング時定数を求め、ダンピング時定数の切り替わりの際に初期化を行わない処理が最も好ましいといえる。
上述した実施形態は、電磁流量計における好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、図4の時定数テーブルでは、流量の閾値として1%及び5%を採用しているが、これに限らず、時定数テーブルにおける流量の閾値は、任意に設定変更することができる。また、図4の時定数テーブルでは、ダンピング時定数として、1sと10sと20sとを例示したが、これに限らず、時定数テーブルにおけるダンピング時定数は、任意に設定変更することができる。例えば、流量5%以上に対応するダンピング時定数は2sであってもよい。さらに、図4では、ダンピング時定数が3段階に設定された時定数テーブルを例示したが、これに限らず、時定数テーブルは、ダンピング時定数が2段階に設定されたものであってもよく、4段階以上に設定されたものであってもよい。
ここで、変換器20は、ユーザの操作を受け付ける操作部を有するようにしてもよい。もしくは、制御部50が、外部の機器との連携によりユーザの操作を受け付ける機能を有していてもよい。そして、ユーザが、操作部又は外部の機器を介して、流量の閾値及びダンピング時定数を設定し変更できるようにしてもよい。