JP6837343B2 - 合成桁の床版取替工法 - Google Patents

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Description

本発明は、合成桁からなる既設の橋梁から老朽化した床版を撤去して新たな床版に取り替えるための合成桁の床版取替工法に関するものである。
従来、一般道、高速道路等の橋梁の多くには、鋼桁とコンクリート床版を一体化した合成桁が用いられている。合成桁は、主桁の上フランジ上に設けた複数のずれ止めをコンクリート床版に埋め込むことにより主桁と床版とを結合したものである。
ところで、既設の橋梁において床版が老朽化した場合は、既設床版を主桁上から撤去して新たな床版を再構築する床版取替施工が行われる。この場合、長期間に亘る連続した交通遮断は好ましくないため、夜間等の交通量の少ない時間帯を利用して一部区間ずつ取替施工を行う場合がある。このような取替施工においては、夜間等に既設床版の一部区間を撤去した後、既設床版の撤去区間に新設床版を設置し、日中等に交通開放するようにしている。その際、主桁上に残存する既設床版と新設床版との間の隙間を覆工板によって塞ぐことにより車両の走行を可能にしている。
合成桁においては、床版に荷重が載荷されると、主桁の上フランジには圧縮応力が生じ、下フランジには引張応力が生ずるが、合成桁では主桁と床版が一体となった状態で橋軸方向の軸力が生ずるため、曲げ応力の中立軸は非合成桁よりも上フランジ寄りになる。従って、既設床版の一部区間を撤去して新設床版を設置しても、床版同士が隙間をおいて連続していない状態では非合成構造となる。即ち、主桁上に残存する既設床版と新設床版との間の隙間により床版間に軸力が伝達されないため、主桁のみに曲げ応力が生ずることになり、曲げ応力の中立軸が主桁の下フランジ側に移行する。これにより、上フランジ側の圧縮応力が増大し、交通開放中の荷重により応力超過となるおそれがある。
そこで、従来では、既設床版の端面と新設床版の端面との間の隙間に油圧ジャッキを用いた軸力伝達装置を配置し、軸力伝達装置によって各床版の端面に互いに離れる方向に押圧力を付与することにより、既設床版と新設床版との間で橋軸方向の軸力を伝達するようにしている(例えば、特許文献1または2参照)。これにより、主桁の上フランジ側に強制的に引張応力を発生させ、荷重載荷時の上フランジの圧縮応力を低減させることにより、応力超過を抑制するようにしている。
特開昭63−64565号公報 特開2005−282272号公報
ところで、既設床版と新設床版との間の隙間を塞ぐ覆工板は、車両走行時の荷重に耐え得る強度が必要である。しかしながら、覆工板にコンクリート板を用いる場合は、厚さ寸法が大きくなり、路面との間に大きな段差を生ずることになる。これにより、覆工板による段差を乗り越える際に走行車両に衝撃が発生するため、速度規制により徐行させて安全性を確保する必要があり、交通量の多いときは徐行による交通渋滞が発生するという問題点があった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、路面に段差を生ずることなく既設床版と新設床版との間の隙間を閉鎖することのできる合成桁の床版取替工法を提供することにある。
本発明は前記目的を達成するために、主桁上の既設床版の橋軸方向一部区間を撤去した後、既設床版の撤去区間に新設床版を設置し、主桁上に残存する既設床版と前記新設床版との端面間に配置した軸力伝達装置によって各床版の端面に橋軸方向への軸力を付与した後、各床版間の隙間を板状部材によって閉鎖することにより各床版間の通行を可能にする合成桁の床版取替工法において、前記板状部材に、橋軸方向に延びるPC鋼材が板状部材の厚さ方向中央よりも下方に配置された超高強度繊維補強コンクリートからなるプレストレストコンクリートを用いるとともに、前記既設床版の橋軸方向端部に舗装の存在しない非舗装部を形成し、舗装の厚さ以下の厚さ寸法に形成された前記板状部材をその上面が舗装の上面と同等の高さになるように既設床版の非舗装部と新設床版に亘って橋軸方向両端側を支持された状態で載置することにより、各床版間の隙間を板状部材によって閉鎖するようにしている。
これにより、既設床版と新設床版との間の隙間を閉鎖する板状部材の上面が舗装の上面と同等の高さになることから、板状部材によって各床版間に段差のない路面が形成され、板状部材を通過する走行車両に段差による衝撃を与えることがない。この場合、板状部材には超高強度繊維補強コンクリートからなるプレストレストコンクリートが用いられることから、板状部材にプレストレスが付与されことにより荷重載荷時の引張応力が抑制されるとともに、超高強度繊維補強コンクリートによってコンクリート自体の引張強度と靭性が高められる。また、板状部材では、橋軸方向に延びるPC鋼材が板状部材の厚さ方向中央よりも下方に配置されていることから、橋軸方向に延びるPC鋼材の圧縮応力が板状部材の上縁側よりも下縁側が大きくなるように発生する。
本発明によれば、既設床版と新設床版との間の隙間を閉鎖する板状部材を通過する走行車両に段差による衝撃を与えることがないので、安全に走行することができるとともに、段差のための徐行運転をする必要がなく、徐行による交通渋滞の発生を回避することができる。この場合、板状部材にプレストレスが付与されことにより荷重載荷時の引張応力が抑制されるとともに、超高強度繊維補強コンクリートによってコンクリート自体の引張強度と靭性が高められるので、板状部材を必要な強度を確保しつつ舗装の厚さよりも小さい厚さ寸法に形成することができ、厚さ寸法が小さくとも走行車両による垂直荷重や衝撃に対して十分な強度を得ることができる。また、板状部材では、橋軸方向に延びるPC鋼材の圧縮応力を板状部材の上縁側よりも下縁側が大きくなるように発生させることができるので、荷重載荷時に引張応力が生ずる板状部材の下縁側に対する強度を高めることができる。
本発明の一実施形態を示す床版取替工程を示す合成桁の平面図 床版取替工程を示す合成桁の平面図 合成桁のX−X線矢視方向断面図 床版取替工程を示す合成桁の要部拡大平面図 軸力伝達装置及び固定部材の分解斜視図 板状部材の平面図 板状部材の正面図 板状部材のY−Y線矢視方向断面図 板状部材の要部正面断面図 床版取替工程を示す合成桁の側面図 床版取替工程を示す合成桁の側面図 床版取替工程を示す合成桁の側面図 床版取替工程を示す合成桁の側面図 床版取替工程を示す合成桁の斜視図 床版取替工程を示す合成桁の斜視図 床版取替工程を示す合成桁の斜視図 床版取替工程を示す合成桁の斜視図 床版取替工程を示す合成桁の要部拡大側面図 床版取替工程を示す合成桁の要部拡大側面図 床版取替工程を示す合成桁の要部拡大側面図 床版取替工程を示す合成桁の要部拡大側面図 床版取替工程を示す合成桁の要部拡大側面図 板状部材の解析モデルを示す平面図 板状部材の解析モデルの物性値を示す図 板状部材の解析結果を示す図 板状部材の解析結果を示す図 板状部材の重量の比較結果を示す図 板状部材の重量の終局耐力の確認結果を示す図
図1乃至図28は本発明の一実施形態を示すもので、合成桁からなる既設の橋梁から老朽化した床版を撤去して新たな床版に取り替える床版取替工法を示すものである。
本実施形態の床版取替工法は、合成桁1において、主桁10上の既設床版20の橋軸方向一部区間を撤去した後、既設床版20の撤去区間に新設床版30を設置し、主桁10上に残存する既設床版20と新設床版30との端面間に設置した軸力伝達装置40によって各床版の端面に橋軸方向の押圧力を付与するとともに、各床版20,30間の隙間を複数の板状部材50によって塞ぐことにより各床版20,30間の通行を可能にする工法である。また、各板状部材50は複数の固定部材60によって床版20,30に固定されるようになっている。
主桁10は、ウエブ11の上端及び下端にそれぞれ上フランジ12及び下フランジ13を有する鋼桁からなり、互いに橋軸直角方向に間隔をおいて複数列(例えば3列)に配置されている。
既設床版20は、各主桁10の上フランジ12上に打設されたコンクリート床版からなり、その幅方向両側には壁高欄21が設けられている。また、既設床版20上にはアスファルトの舗装22が設けられている。
新設床版30は、例えば工場で製作されたプレキャスト製のコンクリート床版が用いられ、その幅方向両側には壁高欄31が設けられている。新設床版30は、各主桁10上に橋軸方向に複数枚整列させて載置するもので、新設床版30の橋軸方向端部に突出するPC鋼棒(図示せず)の端部を継ぎ手により接続することにより、床版同士が連結されるようになっている。また、新設床版30の下面には固定部材60を連結するための複数のインサート32が埋め込まれており、各インサート32は互いに橋軸直角方向に間隔をおいて配置されている。
軸力伝達装置40は、既設床版20と新設床版30の橋軸方向端面にそれぞれ取り付けられる一対の反力台41と、各反力台41間に配置される複数の油圧ジャッキ42とからなり、各油圧ジャッキ42は橋軸直角方向に等間隔で配置される。反力台41は橋軸直角方向に延びるH鋼からなり、橋軸方向に互いに間隔をおいて設けられた一対のフランジ41aの間に複数の補強板41bが互いに橋軸直角方向に間隔をおいて設けられている。各反力台41はそれぞれ既設床版20と新設床版30の橋軸方向端面に支圧板43を介してボルト44により固定されるようになっている。油圧ジャッキ42は、円柱状のジャッキ本体42aと、ジャッキ本体42aの軸方向一端側から突出する押圧ロッド42bとからなり、ジャッキ本体42aは既設床版20側の反力台41に当接し、押圧ロッド42bは新設床版30側の反力台41に当接するようになっている。また、各反力台41には、各油圧ジャッキ42の下方にそれぞれ位置する複数のジャッキ台45が設けられている。各ジャッキ台45は反力台41の下端からジャッキ本体42aの下方に延びる板状の部材からなり、一方の反力台41のジャッキ台45と他方の反力台41のジャッキ台45の先端側が互いに上下方向に重なり合うようになっている。
各板状部材50は、長方形状の板状に形成され、各床版20,30の間に橋軸直角方向に並べて配置される。各板状部材50には、超高強度繊維補強コンクリートからなるプレストレストコンクリートが用いられる。超高強度繊維補強コンクリートは、セメントに鋼繊維、ステンレス繊維または有機繊維等からなる補強用繊維を混入するとともに、シリカフューム等の反応性微粉末を使用することにより、水和反応によって化学的に緻密化された硬化体を形成するものである。これにより、通常のコンクリートよりも格段に高い圧縮強度及び耐久性を有するともに、補強用繊維によって高い引張強度と高い靭性が得られる。
また、板状部材50は、図6に示すように板状部材50の長辺方向及び短辺方向にそれぞれ複数本ずつ等間隔で配列されたPC鋼材51を有し、PC鋼材51にプレストレスを付与した状態でコンクリート型枠により成形される。PC鋼材51には、鉄筋等の補強用鋼材と比較して高い引張強度を有する緊張材が用いられる。板状部材50の長辺方向(橋軸直角方向)に配列されるPC鋼材51は、板状部材50の短辺方向(橋軸方向)に配列されるPC鋼材51の下側に配置されている。この場合、図9に示すように板状部材50の長辺方向(橋軸直角方向)に延びるPC鋼材51は板状部材50の厚さ方向(上下方向)中央に配置され、板状部材50の短辺方向(橋軸方向)に延びるPC鋼材51から板状部材50の上面までの高さ寸法H1 は板状部材50の下面までの高さ寸法H2 よりも大きくなっている。即ち、板状部材50では、短辺方向に延びるPC鋼材51が板状部材50の厚さ方向(上下方向)中央よりも下方に配置されている。この場合、板状部材50の厚さHを70mmとすると、H1 を45mm、H2 を25mmとするのが好ましい。
更に、板状部材50の四隅には切り欠き部50aが設けられている。各切り欠き部50aには板状部材50同士を接続するための継ぎ手52が設けられ、継ぎ手52は一端から延びる棒状部材52aを板状部材50のコンクリート内に埋設されることにより板状部材50に固定されている。板状部材50の下面には固定部材60を連結するための複数のインサート53が埋め込まれており、各インサート53は板状部材50の短辺方向略中央側に長辺方向に等間隔で二列に配列されている。また、板状部材50の上面には滑り止め加工が施されている。この滑り止め加工は、例えば板状部材50を型枠で成形する際、硬化前のコンクリートの表面をブラシ等で粗面状に形成したり、或いは板状部材50の上面側を成形する型で多数の凹凸を形成することにより施される。
各固定部材60は断面L字状の鋼材によって形成され、既設床版20及び新設床版30の下面側に配置されるとともに、複数の連結部材61によって板状部材50の下面側に連結されるようになっている。固定部材60は既設床版20の下面側と新設床版30の下面側に亘る長さを有し、長手方向中央側には連結部材61を挿通する孔60aが長手方向に間隔おいて二箇所に設けられている。また、固定部材60は新設床版30のインサート32に螺合するボルト62によって新設床版30の下面側に連結されるようになっており、固定部材60の長手方向一端側にはボルト62を挿通する孔60bが設けられている。連結部材61は、少なくとも両端側にネジ部を有する棒状の部材からなり、その上端側は固定部材60のインサート53に螺合するようになっている。また、連結部材61の下端側は、固定部材60の孔60aを挿通するとともに、下方からナット63が螺合するようになっている。
次に、本実施形態の床版取替工法について説明する。ここでは、例えば夜間に交通規制をして施工を行い、昼間に交通開放する取替工事において、図10に示すように既に一部区間の既設床版20が新設床版30に取り替えられている状態から説明する。
まず、交通規制により一般車両Aの通行を遮断した後、図11に示すように主桁10上の既設床版20の橋軸方向一部区間を撤去する。その際、既に設置されている新設床版30と既設床版20との間の軸力伝達装置40と板状部材50を取り外した後、既設床版20を橋軸直角方向に切断し、クレーン車Bで吊り上げて撤去する。次に、図12に示すように既設床版20の撤去区間に新設床版30を設置する。その際、複数枚の新設床版30をクレーン車Bで主桁10上に橋軸方向に順次載置し、各新設床版30同士を連結する。この後、図13に示すように主桁10上に残存する既設床版20と新設床版30との端面間に軸力伝達装置40を設置し、軸力伝達装置40によって各床版の端面に橋軸方向の押圧力を付与するとともに、各床版20,30間の隙間を板状部材50によって塞いた後、交通開放して一般車両Aの通行を可能にする。
ここで、既設床版20と新設床版30との間に軸力伝達装置40を設置する工程と、各床版20,30間の隙間を板状部材50によって閉鎖する工程について以下に説明する。
まず、図18に示すように主桁10上の既設床版20の舗装22を床版端部から橋軸方向に長さLだけ除去し、図14及び図19に示すように既設床版20の端部に舗装22の存在しない非舗装部23を形成する。
次に、既設床版20の非舗装部23上と未舗装の新設床版30の上面にそれぞれ緩衝部材70を載置する。緩衝部材70は床版20,30のほぼ全幅に亘って延びるシート状のゴムからなる。
続いて、新設床版30のインサート32にボルト62を螺合することにより、各固定部材60を新設床版30の下面側に連結する。これにより、各固定部材60が既設床版20の下面と新設床版30の下面に亘るように取り付けられる。
次に、図15に示すように既設床版20の端面と新設床版30の端面との間に軸力伝達装置40を設置する。即ち、図19に示すように既設床版20の端面と新設床版30の端面にそれぞれ軸力伝達装置40の反力台41を取り付けるとともに、図20に示すように既設床版20側の反力台41と新設床版30側の反力台41との間に油圧ジャッキ42を配置する。続いて、油圧ジャッキ42を駆動して各反力台41に互いに離れる方向への押圧力を加えることにより、既設床版20の端面と新設床版30の端面に橋軸方向の軸力を付与する。
次に、図21に示すように板状部材50を既設床版20と新設床版30に亘るように上方から載置する。その際、板状部材50の橋軸方向一端側は既設床版20の非舗装部23上に一方の緩衝部材70を介して載置され、板状部材50の橋軸方向他端側は未舗装の新設床版30の上面に他方の緩衝部材70を介して載置される。この場合、板状部材50の厚さHは舗装22の厚さtよりも緩衝部材70の厚さ分だけ小さく形成されており(例えばH=70mm,t=80mm)、各床版20,30上に板状部材50が載置されると、板状部材50の上面と舗装22の上面が同等の高さになる。尚、緩衝部材70は、板状部材50の荷重により圧縮される分だけ無負荷状態での厚さ寸法が圧縮状態での厚さ寸法が大きくなるように形成されている。
板状部材50は、図16に示すように橋軸直角方向に並べて配置されるとともに、ジョイント52によって互いに橋軸直角方向に連結される。そして、板状部材50のインサート53に固定部材61の上端側を螺合するとともに、連結部材61の下端側を固定部材60の孔60aに挿通し、連結部材61の下端側に下方からナット63を螺合することにより、図17及び図22に示すように板状部材50が既設床版20及び新設床版30に固定され、板状部材50によって既設床版20と新設床版30との間の隙間が閉塞される。また、既設床版20の壁高欄21と新設床版30の壁高欄31との間の隙間は仮設防護柵80によって覆われる。
そして、新設床版30上に既設床版20の舗装22と同等の厚さの舗装33を形成することにより、既設床版20と新設床版30との間に段差のない路面が形成される。
このように、本実施形態の床版取替工法によれば、既設床版20の橋軸方向端部に舗装の存在しない非舗装部23を形成し、舗装22の厚さ以下の厚さ寸法に形成された板状部材50をその上面が舗装22の上面と同等の高さになるように既設床版20の非舗装部23と新設床版30に亘って載置することにより、各床版20,30間の隙間を板状部材50によって閉鎖するようにしたので、各床版間20,30に段差のない路面を形成することができる。これにより、板状部材50を通過する走行車両に段差による衝撃を与えることがないので、安全に走行することができるとともに、段差のための徐行運転をする必要がなく、徐行による交通渋滞の発生を回避することができる。
この場合、板状部材50に超高強度繊維補強コンクリートからなるプレストレストコンクリートを用いるようにしたので、必要な強度を確保しつつ板状部材50を舗装22の厚さよりも小さい厚さ寸法に形成することができる。即ち、板状部材50は既設床版20と新設床版30によって両端側を支持された両端支持梁構造となるため、走行車両の荷重により板状部材50の支間中央の下縁側に引張応力が集中するが、板状部材50はPC鋼材51によってプレストレスが付与されているので、荷重載荷時の引張応力が抑制されるとともに、超高強度繊維補強コンクリートによってコンクリート自体の引張強度と靭性が高い構造となる。従って、板状部材50は、プレストレス構造からなるだけでなく、超高強度繊維補強コンクリートが用いられることにより、厚さ寸法が小さくとも走行車両による垂直荷重や衝撃に対して十分な強度を得ることができる。
更に、板状部材50の長辺方向に配列されるPC鋼材51が板状部材50の厚さ方向(上下方向)中央よりも下方に配置されているので、板状部材50の長辺方向に配列されるPC鋼材51の圧縮応力を板状部材50の上縁側よりも下縁側が大きくなるように発生させることができ、荷重載荷時に引張応力が生ずる板状部材50の下縁側に対する強度を高めることができる。
また、各床版20,30の下面側に板状部材50を各床版20,30に固定するための固定部材60を配置し、固定部材60と板状部材50とを締結部材61によって上下方向から締結することにより板状部材50を各床版20,30に固定するようにしたので、走行車両からの衝撃等によって板状部材50が上方に浮き上がることがなく、段差のない路面を確実に保つことができる。
更に、各床版20,30間の隙間を橋軸直角方向に並べた複数の板状部材50によって閉鎖するようにしたので、施工現場ごとに床版の幅に応じた枚数の板状部材50を用いて各床版間の隙間を閉鎖することができ、汎用性を高めることができる。
この場合、各板状部材50を互いに継ぎ手52によって橋軸直角方向に連結するようにしたので、各板状部材50が個々に橋軸直角方向に位置ずれを生ずることがなく、走行車両からの衝撃等による各板状部材50間の隙間の発生を防止することができる。
また、板状部材50の上面には滑り止め加工が施されているので、走行車両のスリップを効果的に防止することができ、安全性の向上を図ることができる。
更に、板状部材50を既設床版20の非舗装部23と新設床版30の上面に緩衝部材70を介して載置するようにしたので、走行車両からの振動や衝撃を緩衝部材70によって吸収することができる。これにより、板状部材50への衝撃荷重を軽減することができるとともに、車両通過時の騒音の発生も抑制することができる。
尚、前記実施形態では、板状部材50と各床版20,30との間に緩衝部材70が介在することから、板状部材50を舗装22の厚さよりも小さい厚さ寸法に形成したものを示したが、板状部材50を舗装22の厚さと同等の厚さ寸法に形成し、緩衝部材70を用いずに板状部材50を各床版20,30に直接載置するようにしてもよい。
また、本発明の床版取替工法に用いる板状部材について、以下の実施例1及び比較例1,2に対して強度解析を行うことにより、実施例1の板状部材が本発明の床版取替工法に用いるための強度を有することを確認した。
本発明の実施例1には超高強度繊維補強コンクリートからなるプレストレストコンクリート(以下、UFCPC板という。)、比較例1には通常のコンクリートからなるプレストレストコンクリート(以下、PC板という。)、比較例2には鋼板を用いた。この場合、図23に示すように、本試験に用いる板状部材Mは、縦(短辺)の寸法が1150mm、横(長辺)の寸法が2000mmに形成され、短辺の両端からそれぞれ100mmの位置を支点Rとして、中央の200mm×500mmの範囲の載荷位置Pに荷重が載荷される。この場合、各支点Rは、支間長が950mmで、前記実施形態の緩衝部材70の位置に対応しており、長辺の両端からそれぞれ100mmの位置に亘るように長辺方向に延びている。また、板状部材Mの厚さHは、実施例1及び比較例1が70mm、比較例2が30mmまたは36mmである。尚、板状部材Mの物性値は図24に示す。
本強度解析では、前記板状部材Mを解析モデルとして、FEM(有限要素法)構造解析により以下の解析を行った。
まず、板状部材Mの載荷位置Pに荷重100kNを載荷した場合の応力を実施例1及び比較例1,2について解析した。
解析の結果、図25に示すように、実施例1及び比較例2については、上縁応力度及び下縁応力度が何れも許容応力度を超えておらず、必要強度を有することが確認された。一方、比較例1は上縁応力度及び下縁応力度が何れも許容応力度を超えており、必要強度を有しない結果となった。また、最大変位は、実施例1が比較例1,2よりも小さかった。
次に、衝撃荷重を考慮し、板状部材Mの載荷位置Pに荷重140kNを載荷した場合の応力を実施例1及び比較例2について解析した。尚、PC板の比較例1は、荷重100kNの解析において必要強度を有していなかったため、荷重140kNの解析対象からは除外した。
解析の結果、図26に示すように、実施例1及び比較例2については、上縁応力度及び下縁応力度の何れも許容応力度を超えておらず、必要強度を有していることが確認された。また、最大変位は、実施例1が比較例2よりも小さかった。
ここで、実施例1及び比較例2の重量を比較したところ、図27に示すように、板状部材Mの一枚当たりの重量は実施例1が402.2kg、比較例2が650.1であり、実施例1は比較例2の約2/3の重量であった。
以上より、UFCPC板の実施例1は、一般的な舗装の厚さ80mmよりも小さい厚さ70mmに形成しても必要強度を有し、比較例1のように厚さ70mmでは必要強度が不足するPC板に対し、強度において優れているという結果が得られた。また、UFCPC板の実施例1は、鋼板の比較例2に対し、軽量且つたわみが少ない点で優れているという結果が得られた。
さらに実施例1については、載荷位置Pに200kNを載荷した場合の終局耐力の確認をおこなった。その結果、図28に示すように、200kNに対しても発生曲げモーメントが破壊抵抗曲げモーメント以下であることを確認した。
1…合成桁、10…主桁、20…既設床版、22…舗装、23…非舗装部、30…新設床版、33…舗装、40…軸力伝達装置、50…板状部材、60…固定部材、70…緩衝部材。

Claims (6)

  1. 主桁上の既設床版の橋軸方向一部区間を撤去した後、既設床版の撤去区間に新設床版を設置し、主桁上に残存する既設床版と前記新設床版との端面間に配置した軸力伝達装置によって各床版の端面に橋軸方向への軸力を付与した後、各床版間の隙間を板状部材によって閉鎖することにより各床版間の通行を可能にする合成桁の床版取替工法において、
    前記板状部材に、橋軸方向に延びるPC鋼材が板状部材の厚さ方向中央よりも下方に配置された超高強度繊維補強コンクリートからなるプレストレストコンクリートを用いるとともに、
    前記既設床版の橋軸方向端部に舗装の存在しない非舗装部を形成し、
    舗装の厚さ以下の厚さ寸法に形成された前記板状部材をその上面が舗装の上面と同等の高さになるように既設床版の非舗装部と新設床版に亘って橋軸方向両端側を支持された状態で載置することにより、各床版間の隙間を板状部材によって閉鎖する
    ことを特徴とする合成桁の床版取替工法。
  2. 前記床版の下面側に板状部材を床版に固定するための固定部材を配置し、固定部材と板状部材とを締結部材によって上下方向から締結することにより板状部材を床版に固定する
    ことを特徴とする請求項1記載の合成桁の床版取替工法。
  3. 前記各床版間の隙間を橋軸直角方向に並べた複数の板状部材によって閉鎖する
    ことを特徴とする請求項1または2記載の合成桁の床版取替工法。
  4. 前記各板状部材を互いに橋軸直角方向に連結する
    ことを特徴とする請求項3記載の合成桁の床版取替工法。
  5. 前記板状部材の上面には滑り止め加工が施されている
    ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の合成桁の床版取替工法。
  6. 前記板状部材を既設床版の非舗装部と新設床版の上面に緩衝部材を介して載置する
    ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の合成桁の床版取替工法。
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