JP6971184B2 - フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法、ならびに燃料電池用部材 - Google Patents
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更に、このような高温運転下の燃料電池においては、多量の水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素に加え、多量の水素や、炭化水素系燃料由来の硫化水素を微量含んだ雰囲気(以下、浸炭性/還元性/硫化性環境、という。)の下に曝されることとなる。このような雰囲気中に、例えば鋼材料が曝されると、材料表面の浸炭、硫化による腐食が進行する状況になり、動作環境としては過酷な状況となる。
更に、SOFCシステムやPEFCシステムの場合、燃料電池の運転温度が高温となるため、前記の酸化特性に加え、高温強度のさらなる向上も求められる。
[1]質量%にて、
Cr:12.0〜16.0%、
C:0.020%以下、
Si:2.50%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0030%以下、
Al:0.90%以上、2.50%以下、
N:0.030%以下、
Nb:0.001〜1.00%、
Ni:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
Sb:0〜0.5%、
W:0〜1.0%、
Co:0〜0.5%、
V:0〜0.5%、
Ti:0〜0.5%、
Zr:0〜0.5%、
La:0〜0.1%、
Y:0〜0.1%、
Hf:0〜0.1%、
REM:0〜0.1%
を含み、さらに、
B:0.0200%以下、
Sn:0.20%以下、
Ga:0.0200%以下、
Mg:0.0200%以下、
Ca:0.0100%以下
の1種または2種以上を含み、かつ下記式(1)を満たし、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
10(B+Ga)+Sn+Mg+Ca>0.020 ・・・(1)
なお、式(1)中の各元素記号は、鋼中の各元素の含有量(質量%)を示す。
[2]質量%にて、前記B:0.0002%以上であることを特徴とする上記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[3]質量%にて、結晶粒界のNb濃度が3.0〜10%の範囲であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[4]質量%にて、前記Sn:0.005%以上であり、結晶粒界のSn濃度が1.0〜5.0%であることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[5]質量%にて、前記Si:0.5%以上、前記Al:1%以上、前記Nb:0.15%以上であることを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[6]質量%にて、更に、Ni:0.10〜1.0%、Cu:0.10〜1.0%、Mo:0.10〜1.0%、Sb:0.01〜0.5%、W:0.10〜1.0%、Co:0.10〜0.5%、V:0.10〜0.5%、Ti:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.5%、La:0.001〜0.1%以下、Y:0.001〜0.1%、Hf:0.001〜0.1%、REM:0.001〜0.1%の1種または2種以上含有していることを特徴とする上記[1]〜[5]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[7]燃料改質器、熱交換器あるいは燃料電池部材に適用されることを特徴とする上記[1]〜[6]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[8]燃焼器、あるいはバーナーの部材に適用されることを特徴とする上記[1]〜[7]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[10]前記仕上げ焼鈍の後に、600〜700℃の温度範囲内で1分超、3時間以下保持する熱処理を施すことを特徴とする上記[9]に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
[11]前記仕上げ焼鈍において、700℃超に加熱し冷却する際、600〜700℃の温度域での保持時間を1分超とすることを特徴とする上記[9]に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
以下に本発明で得られた知見について説明する。
まず、成分の限定理由を以下に説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
Bは、粒界偏析することによって粒界すべりを遅延させるとともに、結晶粒内において転位密度の上昇に伴う内部応力を高め0.2%耐力を向上させることができる。Sn、Ga、Mg、Caは、表面近傍に濃化してAlの選択酸化を促進する作用がある。このような効果を得るために、B、Ga、Mg、Caそれぞれの含有量の下限は0.0002%以上、Snの下限は0.005%以上とすることが好ましい。一方、これら元素を過度に含有させることは、鋼の精錬コスト上昇を招くほか、製造性と鋼の耐食性を低下させる。このため、Caの含有量の上限は0.0100%以下、Snの上限は0.20%以下、B、Ga、Mgの上限はいずれも0.0200%以下とする。
10(B+Ga)+Sn+Mg+Ca>0.020% ・・・式(1)
なお、式(1)中の各元素記号は、鋼中の各元素の含有量(質量%)を示す。
上記の知見(c)および(d)でも述べたように、本実施形態においては、NbとBが結晶粒界において共偏析することによって高温強度の向上を図ることができる。また、Snも同様に、粒界へ偏析することによって、粒界すべりを抑制し高温強度の向上を図ることができる。これらの観点から、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼において、Nbの結晶粒界における濃度(粒界濃度)は、3.0%以上とすることが好ましい。Snを含有する場合には、Snの粒界濃度は1.0%以上とすることが好ましい。一方、NbとSnの過度な粒界偏析は結晶粒界が破壊起点となって製造性を阻害することに加え、高温強度の低下をもたらす場合もある。そのため、Nbの粒界濃度は10.0%以下であることが好ましく、Snの粒界濃度は5.0%以下であることが好ましい。
なお、結晶粒界におけるNb濃度とSn濃度の調整は、仕上げ焼鈍後さらに、所定の条件下で熱処理を行うことで可能である。詳細については後述する。
まず、酸化皮膜以外の母相の任意箇所から、ノッチ付き試験片(0.8t×4w×20L(mm))を採取する。次に、ノッチ付き試験片を、真空中(真空度:10−6MPa)において液体窒素で冷却したのちに、その場でノッチ部から試験片を破断して破面をを露出させる。露出させた破面における結晶粒界についてAES分析を行い、0〜1000eVのエネルギー範囲でオージェ電子スペクトルを測定し、検出される元素を同定(定性分析)する。さらに、得られたピーク強度比を用いて(相対感度係数法)、検出元素を定量(定量分析)する。以上の方法によって、結晶粒界に偏析した元素(Nb、Sn)の濃度を求めることができる。
なお、本実施形態における「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であり、不可避的に混入する成分も含む。
次に、上述してきた本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の製造方法であるが、熱間加工、冷間加工及び各熱処理(焼鈍)を組み合わせることで製造でき、必要に応じて、適宜、酸洗やデスケーリングを行ってよい。製造方法の一例として、製鋼−熱間圧延−焼鈍−冷間圧延−焼鈍(仕上げ焼鈍)の各工程を有する製法を採用でき、熱間圧延後の熱処理は700℃超とすることが好ましい。
例えば、熱間圧延後の熱処理を700℃超で行い、デスケ−リングの後に冷間圧延し、続いて700℃超の仕上げ焼鈍とデスケ−リングを施して冷延焼鈍板としてもよい。また、冷間圧延の圧延率は特に規定するものでないが、30〜80%の範囲内が好ましい。
さらに、フェライト系ステンレス鋼をガス配管の用途に適用する場合は、鋼板から製造した溶接菅も含まれるが、配管は、溶接菅に限定するものでなく,熱間加工により製造した継ぎ目無し菅でもよい。
またさらに、本実施形態によれば、成分組成の適正化を図ることで、σ相析出や475℃脆性を抑制可能とする優れた組織安定性をも享受することが可能となる。
そのため、都市ガス、メタン、天然ガス、プロパン、灯油、ガソリン等の炭化水素系燃料を水素に改質する際に使用される燃料改質器、熱交換器などの燃料電池部材に好適であり、特に、運転温度が高温となる固体酸化物型燃料電池(SOFC)や固体高分子型燃料電池(PEFC)の高温部材に好適である。さらに、燃料電池の周辺部材、例えばバーナーや当該バーナーを格納する燃焼器等、改質ガスに接しかつ高温の環境下で使用される部材全般において好適に用いることができる。
なお、下記にて示す表中の下線は、本発明の範囲から外れているものを示す。
冷間圧延後、900〜1000℃で仕上げ焼鈍を行った。なお一部の鋼板(鋼B、E、F及びI)に対しては、仕上げ焼鈍後、さらに表2に示す条件にて熱処理(仕上げ焼鈍後熱処理)を施した。
得られた冷延鋼板(No.1〜19)について、粒界濃度の測定、ならびに各種特性について評価した。
結晶粒系におけるNb濃度、Sn濃度は、オージェ電子分光法によって測定した。
まず冷延鋼板から、ノッチ付き試験片(0.8t×4w×20L(mm))を採取した。次に、ノッチ付き試験片を、真空中(真空度:10−6MPa)において液体窒素で冷却したのちに、破断面が大気に暴露されないようその場でノッチ部を破断し結晶粒界を露出させた。露出させた結晶粒界についてAES分析を行い、0〜1000eVのエネルギー範囲でオージェ電子スペクトルを測定し、Nb元素および、Sn元素を同定(定性分析)した。さらに、得られたピーク強度比を用いて(相対感度係数法)、Nb量、Sn量を定量分析し、結晶粒界に偏析したNb濃度、Sn濃度(ともに質量%)を求めた。表2に求めたNb濃度、Sn濃度を示すが、表中の「<3.0」、「<1.0」は、検出値が3.0%未満、1.0%未満であったことを意味する。
まず冷延鋼板から幅20mm、長さ25mmの酸化試験片を切り出し酸化試験に供した。酸化試験の雰囲気は、都市ガスを燃料とした改質ガスを想定し、28体積%H2O−10%体積%CO−8体積%CO2−0.01%H2S−bal.H2の雰囲気とした。当該雰囲気において、酸化試験片を650℃に加熱し、1000時間保持した後に室温まで冷却し、酸化増量ΔW(mg/cm2)を測定した。
耐酸化性の評価は以下の通りとした。
◎:重量増加ΔWが0.2mg/cm2未満。
〇:重量増加ΔWが0.2〜0.3mg/cm2。
×:重量増加ΔWが0.3mg/cm2超。
なお、耐酸化性は「◎」および「〇」の場合を合格とした。
冷延鋼板から、圧延方向を長手方向とする板状の高温引張試験片(板厚:0.8mm、平行部幅:10.5mm、平行部長さ:35mm)を作製し、750℃、および800℃それぞれにて、ひずみ速度は、0.2%耐力まで0.3%/min、以降3mm/minとして高温引張試験を行い、各温度における0.2%耐力(750℃耐力、800℃耐力)を測定した(JIS G 0567に準拠)。
高温強度の評価は、750℃耐力が120MPa超、かつ800℃耐力が40MPa超の場合を合格(「〇」)として評価し、いずか一方でも満たさない場合は不合格(「×」)として評価した。なお、750℃耐力が150MPa超、かつ800℃耐力が60MPa超の場合は高温強度が特に優れているものとして評価した(表2中で「◎」表記)。
冷延鋼板から、板面と垂直な断面上の中心(板厚中心部:t/2付近)を観察できるよう試料を2つ採取して、一方は、500℃×1000時間の熱処理(500℃熱処理)、もう一方は650℃×1000時間の熱処理(600℃熱処理)を行った。これら熱処理の雰囲気はともに大気中とした。次に、熱処理後の各試料を樹脂に埋め研磨した後、500℃熱処理後のビッカース硬さHv500℃、650℃熱処理後のビッカース硬さHv650℃それぞれをJIS Z 2244に準拠して荷重9.8Nで測定し、熱処理前に予め測定しておいた熱処理前ビッカース硬さからの硬さ上昇量ΔHv500℃、ΔHv650℃を算出した。
組織安定性(σ脆性/475℃脆性)の評価は、ΔHv500℃、ΔHv650℃ともに20未満のものを合格(「〇」)として評価し、いずか一方でも20以上であった場合は熱処理後の硬さ上昇が大きく組織が不安定であるとして不合格(「×」)とした。
No.1〜13は、本発明で規定する成分を満たし、すべての特性の評価は「○」あるいは「◎」となったものである。中でも、No.3、7、9、13は、本発明の好適な粒界濃度を満たしている場合であり、顕著な高温強度の向上効果を発現し、その評価は「◎」となった。また、No.2、3、8、9、11は、本発明の好適な成分組成(特に、Cr、Si、Al)を満たしている場合であり、顕著な耐酸化性の向上効果を発現し、その評価は「◎」となった。
Claims (12)
- 質量%にて、
Cr:12.0〜16.0%、
C:0.020%以下、
Si:2.50%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0030%以下、
Al:0.90%以上、2.50%以下、
N:0.030%以下、
Nb:0.001〜1.00%、
Ni:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
Sb:0〜0.5%、
W:0〜1.0%、
Co:0〜0.5%、
V:0〜0.5%、
Ti:0〜0.5%、
Zr:0〜0.5%、
La:0〜0.1%、
Y:0〜0.1%、
Hf:0〜0.1%、
REM:0〜0.1%
を含み、さらに、
B:0.0200%以下、
Sn:0.20%以下、
Ga:0.0200%以下、
Mg:0.0200%以下、
Ca:0.0100%以下
の1種または2種以上を含み、かつ下記式(1)を満たし、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
10(B+Ga)+Sn+Mg+Ca>0.020 ・・・(1)
なお、式(1)中の各元素記号は、鋼中の各元素の含有量(質量%)を示す。
- 質量%にて、前記B:0.0002%以上であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 質量%にて、結晶粒界のNb濃度が3.0〜10%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 質量%にて、前記Sn:0.005%以上であり、結晶粒界のSn濃度が1.0〜5.0%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 質量%にて、前記Si:0.5%以上、前記Al:1%以上、前記Nb:0.15%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 質量%にて、更に、Ni:0.10〜1.0%、Cu:0.10〜1.0%、Mo:0.10〜1.0%、Sb:0.01〜0.5%、W:0.10〜1.0%、Co:0.10〜0.5%、V:0.10〜0.5%、Ti:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.5%、La:0.001〜0.1%以下、Y:0.001〜0.1%、Hf:0.001〜0.1%、REM:0.001〜0.1%の1種または2種以上含有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 燃料改質器、熱交換器あるいは燃料電池部材に適用されることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 燃焼器、あるいはバーナーの部材に適用されることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 請求項1、2、5、または6のいずれか一項に記載の組成を有するステンレス鋼材を熱間加工した後、700℃超で熱処理し、次いで冷間加工を行い、700℃超の仕上げ焼鈍を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 前記仕上げ焼鈍の後に、600〜700℃の温度範囲内で1分超、3時間以下保持する熱処理を施すことを特徴とする請求項9に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 前記仕上げ焼鈍において、700℃超に加熱し冷却する際、600〜700℃の温度域での保持時間を1分超とすることを特徴とする請求項9に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼を用いた燃料電池用部材。
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