JP7002599B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本願は、車両の制御装置に関するものである。
近年、省エネルギーおよび環境を考慮した車両として、エンジンおよびモータなど複数の駆動源から動力を得る車両、例えばハイブリッド車両の普及が進んでいる。ハイブリッド車両の走行モードとしては、エンジンを作動させずにモータの動力で走行する「EV(Electric Vehicle)モード」、エンジンを用いて発電しつつモータの動力で走行する「シリーズモード」、エンジンとモータの両方の動力で走行する「パラレルモード」などがあり、走行モードの切り換えは、車両の状況に応じて制御されている。
エンジンとモータの両方の動力で走行するパラレルモードにおいては、運転者が要求する車両の出力パワー(仕事率)、即ち車両のトルクを得るために、エンジンとモータのそれぞれにおいて負担させるトルク(トルクの分配)を決定し、要求トルクとして指示しなければならない。
その際、エンジンとモータの要求トルクを得るために投入しなければならない燃料および電力、即ち、入力の仕事率を鑑みてトルク分配を決定しないと、必要以上に燃料および電力を消費してしまう。即ち、効率が悪い状態で動作することとなり、燃費が悪化してしまう問題がある。
よって、エンジンおよびモータの効率を考慮して、それぞれの要求トルクを決定する制御が必要となる。
例えば、特許文献1には、エンジンの熱効率が最適値となる基準パワーよりも要求パワーが大きい場合、モータアシストパワーをパラメータとして車両の燃料消費量を算出し、この燃料消費量が最小値となる時のモータアシストパワーを探索し、探索された値を最適モータアシストパワーに設定し、エンジンとモータのトルクの分配を制御する技術が記載されている。
特開2018-134901号公報(第13~14頁、第15図)
特許文献1に記載された車両燃料消費量もしくは入力仕事率の最小値を探索する制御においては、運転者の車両要求パワーに対して最適となるトルク分配を演算し、エンジンおよびモータに要求している。
しかし、エンジンおよびモータにおいては、それら要求されたトルクを瞬時に発生することは困難であり、物理的な構造および運転状態に応じて動作遅れが生じる。
よって、その動作遅れが生じている間は、エンジンとモータのトルク分配は最適なものではなく、車両燃料消費量もしくは入力仕事率が最小値とならないケースがある。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、車両の要求トルクを得るための機器に動作遅れがあっても、燃費を向上させる車両の制御装置を提供することを目的とする。
本願に開示される車両の制御装置は、複数の駆動源が搭載された車両の制御装置であって、各駆動源および車両のトランスミッションに対して、動作を要求してから実動作が行われるまでの遅れを各別に推定する遅れ推定手段、要求された車両のトルクを得るために各駆動源に要求するトルクおよびトランスミッションに要求する変速比を演算し、実動作が行われたときの総入力の仕事率が、最小となる組み合わせにおける各値を、遅れ推定手段により推定された遅れを各別に加味して、求める要求値演算手段、この要求値演算手段により求めた各値を制御要求値として、各駆動源およびトランスミッションを制御する制御手段を備えたものである。



本願に開示される車両の制御装置によれば、車両の要求トルクを得るための機器に動作遅れがあっても、燃費を向上することができる。
実施の形態1および実施の形態2による車両の制御装置を含むシステム全体を示す構成図である。 実施の形態1による車両の制御装置の構成を示すブロック図である。 実施の形態1による車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1による車両の制御装置の動作を示すタイミングチャートである。 実施の形態2による車両の制御装置の構成を示すブロック図である。 実施の形態2による車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。 実施の形態2による車両の制御装置の動作を示すタイミングチャートである。 実施の形態1および実施の形態2による車両の制御装置のハードウェア構成を示す図である。
実施の形態1.
以下、本願の車両の制御装置の好適な実施の形態について、図を用いて説明する。
なお、複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、実動作の遅れを推定し、推定したトルクおよび変速比によって、総入力仕事率が最小となる要求トルクおよび要求変速比を探索し、各駆動源およびトランスミッションに要求する実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1による車両の制御装置を含むシステム全体を示す構成図である。
図1において、エンジン101は、第1駆動源である。モータ102は、第2駆動源である。エンジン101とモータ102は、エンジン101のクランクプーリ103、モータ102のプーリ104、およびベルト105により連結されている。
エンジン101とモータ102の動力は、トランスミッション106、ディファレンシャルギア107を介して、ドライブシャフト108に接続されたタイヤ109へと伝達される。
モータ102は、インバータを経由してバッテリに接続されており、エンジン101からの動力伝達もしくは車両減速時におけるドライブシャフト108からの動力伝達などで発電して、電力供給する一方、車両加速時に力行運転を行う。これにより、ドライブシャフト108に動力を伝える。
モータ制御用電子コントロールユニット110(以下、モータ用ECU(Electronic Control Unit)と称する。)は、マイクロプロセッサなどで構成されており、モータ102を適切な状態に制御している。
エンジン制御用電子コントロールユニット111(以下、エンジン用ECUと称する。)は、マイクロプロセッサなどで構成されており、エンジン101を適切な状態に制御している。
トランスミッション制御用電子コントロールユニット112(以下、トランスミッション用ECUと称する。)は、マイクロプロセッサなどで構成されており、トランスミッション106を適切な状態に制御している。
車両制御用電子コントロールユニット113(以下、車両用ECUと称する。)は、マイクロプロセッサなどで構成されており、車速センサ114、アクセルポジションセンサ115、ブレーキストロークセンサ116などのセンサ入力信号により、車両の運転状態および運転者の車両動作要求を判断し、車両を適切な状態に制御している。
なお、車両を適切な状態に制御するために、車両用ECU113には、後述する図2に示す、遅れ推定手段201、総入力仕事率最小探索手段202、総入力仕事率最小化制御手段203に関するプログラムあるいは固定値データが記憶されている。
また、後述するように、総入力仕事率最小化制御手段203における第1駆動源要求トルクであるエンジン要求トルクTe、第2駆動源要求トルクであるモータ要求トルクTm、トランスミッションの要求変速比Rtは、それぞれエンジン用ECU111、モータ用ECU110、およびトランスミッション用ECU112に送信されて、エンジン101、モータ102、およびトランスミッション106が適切に制御される。
図2は、実施の形態1による車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図2において、遅れ推定手段201は、エンジン101、モータ102、およびトランスミッション106の現在の動作状態(エンジン回転数Ne、モータ回転数Nm、トランスミッション入口回転数Nt)に応じて、動作要求を出してからの動作遅れを推定する。具体的な演算方法は、後述する図3を用いた制御の流れにおいて説明する。
総入力仕事率最小探索手段202(要求値演算手段)は、運転者が要求する車両のトルク(車両要求トルクTw)から、各駆動源における発生トルクの遅れ、およびトランスミッションの変速比動作遅れを考慮した最小の総入力仕事率となるような各駆動源の要求トルク、およびトランスミッションの要求変速比を勾配法による最適化問題のアルゴリズムを用いて演算する。具体的な演算方法は、後述する図3を用いた制御の流れにおいて説明する。
総入力仕事率最小化制御手段203(制御手段)は、総入力仕事率最小探索手段202で演算された各駆動源に対する要求トルク(モータ要求トルクTm、エンジン要求トルクTe)およびトランスミッションの要求変速比(要求変速比Rt)を、モータ用ECU110、エンジン用ECU111およびトランスミッション用ECU112に送信する。
なお、車両の制御装置を構成するこれらの各手段は、車両用ECU113に記憶されている。
次に、動作について説明する。
以下、実施の形態1による車両の制御装置において、複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、実動作の遅れを推定し、推定したトルクおよび変速比によって総入力仕事率が最小となる要求トルクおよび要求変速比を探索し、各駆動源およびトランスミッションに要求する動作について説明する。
まず、図3のフローチャートを参照して、各動作について説明する。
なお、この動作は、車両用ECU113において、所定時間周期のメインルーチン内のサブルーチンとして実行される。
ステップS301において、現在、複数の駆動源による車両動作のモードであるかどうかを判定する。例えば、車両加速時にエンジン101を動作させるための燃料、およびモータ102を動作させるための電力(バッテリ充電状態)が、共に十分にある場合などに成立するものである。
ステップS301において、現在、複数の駆動源による車両動作のモードが成立していないと判定された場合は、本ルーチンの処理は不要とし、そのままサブルーチンを終了する。
また、ステップS301において、現在、複数の駆動源による車両動作のモードが成立していると判定された場合は、次のステップS302へ進む。
ステップS302では、各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対する実動作の遅れを推定する。
本実施の形態1において、各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対する実動作の遅れは、一次遅れの時定数を用いて表し、むだ時間(後述する)はない、もしくは非常に短いとして表している。
エンジントルクの時定数tce、モータトルクの時定数tcm、変速比の時定数tctは、例えばエンジン回転数Ne、モータ回転数Nm、トランスミッション入口回転数Ntに応じて、予めテーブルで設定されており、式(1)~式(3)のように演算される。
tce=table(Ne) ・・・(1)
tcm=table(Nm) ・・・(2)
tct=table(Nt) ・・・(3)
式(1)~式(3)では、実機計測、シミュレーション結果もしくは幾何学的な演算式によってテーブル値が設定されているが、テーブル値に限らず、マップ値あるいは近似式によって表すものでも良い。このステップS302が、遅れ推定手段201に相当する。ステップS302の次に、ステップS303に進む。
ステップS303では、車両要求トルクTwに対応して演算される探索パラメータに、ステップS302で演算された時定数の遅れを施した値を用いて、総入力仕事率最小探索手段202での総入力仕事率最小探索を実行する。
例えば、所定時間周期のメインルーチン内のサブルーチン毎において、探索パラメータのエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比に対し、エンジントルクの時定数tce、モータトルクの時定数tcm、変速比の時定数tctを用いて一次遅れを施し、エンジン推定トルクTep、モータ推定トルクTmp、推定変速比Rtpを演算する。
これらエンジン推定トルクTep、モータ推定トルクTmp、推定変速比Rtpから演算される総入力仕事率が、最小値となる組み合わせを探索し、最小値の条件成立もしくは所定探索回数となった際のエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtを出力する。なお、探索アルゴリズムは、最急降下法などの勾配法による最適化問題アルゴリズムを用いて演算する。
ステップS304では、ステップS303で出力されたエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtが、エンジン用ECU111、モータ用ECU110およびトランスミッション用ECU112に送信される。これが総入力仕事率最小化制御手段203に相当する。
ステップS304の終了後、サブルーチンを終了する。
次に、実施の形態1の複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、実動作の遅れを推定し、推定したトルクおよび変速比によって総入力仕事率が最小となる要求トルクおよび要求変速比を探索し、各駆動源およびトランスミッションに要求する実行例について、図4のタイミングチャートを用いて説明する。
なお、図4中、実線は、実施の形態1による制御を示し、破線は、従来の制御を示している。
図4の(ア)のタイミングから、運転者の加速要求によりアクセルが踏まれるのに応じて、車両要求トルクTwが増加している。その車両要求トルクTwとなるようなエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比の組み合わせの中から、総入力仕事率が最小となる組み合わせを探索した結果が、エンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtの挙動となる。
また、これらエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtに応じて、エンジン101、モータ102、トランスミッション106が動作した挙動が、エンジン実トルク、モータ実トルク、実変速比となっている。
図4における破線で表した従来の制御においては、車両要求トルクTwとなるようなエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比の組み合わせの中から、エンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比がそのまま実動作となった場合の総入力仕事率が最小となる組み合わせを探索した結果となっている。
このため、エンジン実トルク、モータ実トルク、実変速比の組み合わせは、要求時の組み合わせと異なり、総入力仕事率が最小となっていない。そのため、燃料消費量が比較的多くなる。
一方で、図4における実線で表した本実施の形態1の制御におけるエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtは、車両要求トルクTwとなるようなエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比の組み合わせの中から、推定したエンジン実トルク、モータ実トルク、実変速比が実動作となった場合の総入力仕事率が最小となる組み合わせを探索した結果となっている。このため、燃料消費量が少なくなっている。
よって、本実施の形態1における車両の制御装置の制御によって、燃費の向上が可能となる。
実施の形態1の車両の制御装置によれば、複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、実動作の遅れを推定し、推定したトルクおよび変速比によって、総入力仕事率が最小となる要求トルクおよび要求変速比を探索して、各駆動源およびトランスミッションに要求することにより、燃費を向上することができる。
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態1では、遅れ推定手段において、各駆動源および車両のトランスミッションに対して、動作を要求してからの実動作の遅れはあるものの、むだ時間はない、もしくは非常に短い場合について説明した。
実施の形態2は、むだ時間を有する場合についてのものである。
ここで、むだ時間とは、動作機器に対し、要求を出してから機器が動作し始めるまでの遅れ時間である。
実施の形態2では、複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、遅れなく動作した場合の総入力仕事率が最小となる動作点を探索する第1の総入力仕事率最小探索手段を実施する。
次いで、探索パラメータに対して、遅れ推定手段による時定数を施した推定値を用い、制御要求に対して遅れを鑑みた場合の総入力仕事率が最小となる動作点を探索する第2の総入力仕事率最小探索手段を実施する。
そして、むだ時間が含まれる駆動源およびトランスミッションに対しては、第1の総入力仕事率最小探索手段で求められる制御要求値を、むだ時間が含まれない駆動源およびトランスミッションに対しては、第2の総入力仕事率最小探索手段で求められる制御要求値を各駆動源およびトランスミッションに要求する。
なお、実施の形態2による車両の制御装置を含むシステム全体の構成は、実施の形態1の図1の構成と同様である。
ただし、図1の車両用ECU113には、後述する図5に示す遅れ推定手段401、むだ時間判定手段402、第1の総入力仕事率最小探索手段403、第2の総入力仕事率最小探索手段404、総入力仕事率最小化制御手段405に関するプログラムあるいは固定値データが記憶されている。
図5は、実施の形態2による車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図5において、遅れ推定手段401は、エンジン101、モータ102、およびトランスミッション106の現在の動作状態(エンジン回転数Ne、モータ回転数Nm、トランスミッション入口回転数Nt)に応じて、それらのむだ時間と動作遅れを推定する。
具体的な演算方法は、後述する図6を用いた制御の流れにおいて説明する。
むだ時間判定手段402は、個々の駆動源および車両のトランスミッションの動作に関し、それぞれに対して、むだ時間が、あらかじめ設定されたしきい値よりも短いか否かを判定する。具体的な演算方法は、後述する図6を用いた制御の流れにおいて説明する。
第1の総入力仕事率最小探索手段403(第1の要求値演算手段)は、各駆動源における発生トルク、およびトランスミッションの変速比動作に遅れ(むだ時間および時定数)がない場合の最小の総入力仕事率となるような各駆動源の要求トルク、およびトランスミッションの要求変速比を勾配法による最適化問題のアルゴリズムを用いて演算する。具体的な演算方法は、後述する図6を用いた制御の流れにおいて説明する。
第2の総入力仕事率最小探索手段404(第2の要求値演算手段)は、運転者が要求する車両のトルク(車両要求トルクTw)から、各駆動源における発生トルクの遅れ(時定数のみ)、およびトランスミッションの変速比動作遅れ(時定数のみ)を考慮した最小の総入力仕事率となるような各駆動源の要求トルク、およびトランスミッションの要求変速比を勾配法による最適化問題のアルゴリズムを用いて演算する。具体的な演算方法は、後述する図6を用いた制御の流れにおいて説明する。
総入力仕事率最小化制御手段405は、むだ時間の有無に応じて、第1の総入力仕事率最小探索手段403または第2の総入力仕事率最小探索手段404で演算された各駆動源に対する要求トルク(モータ要求トルクTm、エンジン要求トルクTe)およびトランスミッションの要求変速比(要求変速比Rt)を、モータ用ECU110、エンジン用ECU111およびトランスミッション用ECU112に送信する。
次に、動作について説明する。
以下、実施の形態2の車両の制御装置における動作について説明する。
実施の形態2の車両の制御装置において、複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、遅れなく動作した場合の総入力仕事率が最小となる動作点を探索する第1の総入力仕事率最小探索手段を実施する。
また、探索パラメータに対して遅れ推定手段による時定数を施した推定値を用い、制御要求に対して遅れを鑑みた場合の総入力仕事率が最小となる動作点を探索する第2の総入力仕事率最小探索手段を実施する。
そして、むだ時間が含まれる駆動源およびトランスミッションに対しては、第1の総入力仕事率最小探索手段で求められる制御要求値を、むだ時間が含まれない駆動源およびトランスミッションに対しては、第2の総入力仕事率最小探索手段で求められる制御要求値を、各駆動源およびトランスミッションに要求する。
以下、この動作について説明する。
まず、図6のフローチャートを参照して、車両の制御装置における各動作を説明する。なお、この動作は、車両用ECU113において、所定時間周期のメインルーチン内のサブルーチンとして実行される。
ステップS501において、現在、複数の駆動源による車両動作のモードであるか否かを判定する。例えば、車両加速時にエンジン101を動作させるための燃料、およびモータ102を動作させるための電力(バッテリ充電状態)が共に十分にある場合などに成立するものである。
ステップS501において、現在、複数の駆動源による車両動作のモードが成立していないと判定された場合は、本ルーチンの処理は不要とし、そのままサブルーチンを終了する。
また、ステップS501において、現在、複数の駆動源による車両動作のモードが成立していると判定された場合は、次のステップS502へ進む。
ステップS502では、各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対する実動作の遅れを推定する。
本実施の形態2において、各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対する実動作の遅れは、一次遅れの時定数とむだ時間を用いて表している。
エンジントルクの時定数tce、モータトルクの時定数tcm、変速比の時定数tctは、例えば、エンジン回転数Ne、モータ回転数Nm、トランスミッション入口回転数Ntに応じて、予めテーブルで設定されており、式(4)~式(6)のように演算される。
tce=table(Ne) ・・・(4)
tcm=table(Nm) ・・・(5)
tct=table(Nt) ・・・(6)
また、エンジントルクのむだ時間Le、モータトルクのむだ時間Lm、変速比のむだ時間Ltは、例えば、エンジン回転数Ne、モータ回転数Nm、トランスミッション入口回転数Ntに応じて、予めテーブルで設定されており、式(7)~式(9)のように演算される。
Le=table(Ne) ・・・(7)
Lm=table(Nm) ・・・(8)
Lt=table(Nt) ・・・(9)
ここで、むだ時間とは、動作機器に対し、要求を出してから機器が動作し始めるまでの遅れ時間である。例えば、エンジンに対するトルク要求後、エンジンのスロットルバルブが変化することで、エンジンの吸気管に流入する空気量が変化し、その変化した空気量がエンジンの燃焼室内に流入し、燃焼によってトルクが発生するまで、ある程度の時間を要する。よって、エンジン要求トルクが変化してからむだ時間の間は、エンジンは、変化した要求トルクに応じたトルクが発生せず、変化前の要求トルクに応じたトルクが発生することとなる。
式(4)~式(9)では、実機計測、シミュレーション結果もしくは幾何学的な演算式によって、テーブル値が設定されているが、テーブル値に限らず、マップ値または近似式によって表すものでも良い。このステップS502が、遅れ推定手段401に相当する。
ステップS502の次に、ステップS503に進む。
ステップS503では、エンジントルクのむだ時間Le、モータトルクのむだ時間Lm、変速比のむだ時間Ltの最大値が、あらかじめ設定された所定時間Lz(しきい値)よりも短いか否かを判定する。
所定時間Lzは、例えば、第1の総入力仕事率最小探索手段403および第2の総入力仕事率最小探索手段404の演算周期と同じ時間が設定されている。
エンジントルクのむだ時間Le、モータトルクのむだ時間Lm、変速比のむだ時間Ltの最大値が、あらかじめ設定してある所定時間Lzよりも短い場合には、すべての探索パラメータにむだ時間が実質ないものとして、第1の総入力仕事率最小探索手段403を実施せずに、ステップS505に進み、第2の総入力仕事率最小探索手段404を実施する。
むだ時間の最大値が、あらかじめ設定してある所定時間Lz以上である場合には、ステップS504に進み、第1の総入力仕事率最小探索手段403を実施する。このステップS503が、むだ時間判定手段402に相当する。
ステップS504では、例えば、所定時間周期のメインルーチン内のサブルーチン毎において、制御要求に対して遅れなく動作した場合の総入力仕事率が最小となる動作点を探索する。すなわち、従来の制御のように、動作遅れを考慮しない探索パラメータをそのまま用いて、総入力仕事率最小探索をする。
この探索においては、最小値の条件成立もしくは所定探索回数となった際のエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比として、第1のエンジン要求トルクTe1、第1のモータ要求トルクTm1、第1の要求変速比Rt1を出力する。
ここで、探索アルゴリズムは、最急降下法などの勾配法による最適化問題アルゴリズムを用いて演算する。
ステップS505では、探索パラメータに、ステップS502で演算された時定数の遅れを施した値を用いて、第2の総入力仕事率最小探索手段404での総入力仕事率最小探索を実行する。
例えば、所定時間周期のメインルーチン内のサブルーチン毎において、探索パラメータのエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比に対し、エンジントルクの時定数tce、モータトルクの時定数tcm、変速比の時定数tctと、エンジントルクのむだ時間Le、モータトルクのむだ時間Lm、変速比のむだ時間Ltを用いて一次遅れを施し、エンジン推定トルクTep、モータ推定トルクTmp、推定変速比Rtpを演算する。
それらエンジン推定トルクTep、モータ推定トルクTmp、推定変速比Rtpから演算される総入力仕事率が最小値となる組み合わせを探索する。
但し、むだ時間が存在する探索パラメータに関しては、探索パラメータとして機能させず、前回の演算周期におけるエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtの値に対して時定数による一次遅れを施した推定値で固定する。これは、むだ時間が存在する各駆動源のトルク発生またはトランスミッションの変速比動作に関して、どのような要求値が演算されようとも、その要求値に対する影響がこの1演算周期においては出ない。そのため、動作遅れを考慮した最小の総入力仕事率の探索において、むだ時間がない他の探索パラメータに対して誤った解を導き出さないようにするためである。
この探索においては、最小値の条件成立もしくは所定探索回数となった際のモータ要求トルク、エンジン要求トルク、要求変速比として、第2のエンジン要求トルクTe2、第2のモータ要求トルクTm2、第2の要求変速比Rt2を出力する。
探索アルゴリズムは、最急降下法などの勾配法による最適化問題アルゴリズムを用いて演算する。
ステップS506では、第1のエンジン要求トルクTe1と第2のエンジン要求トルクTe2、第1のモータ要求トルクTm1と第2のモータ要求トルクTm2、第1の要求変速比Rt1と第2の要求変速比Rt2のどちらを最終的なエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtとするかを決定し、エンジン用ECU111、モータ用ECU110およびトランスミッション用ECU112に送信する。
基本的に、むだ時間がある探索パラメータの要求値に対しては、第1の要求値を、むだ時間がない探索パラメータの要求値に対しては、第2の要求値を、最終的な要求値とする。
但し、第1の要求値と第2の要求値が混在した値において、検算された車両要求トルクが車両要求トルクTwと等しくない場合には、整合性を保つために、全て第2の要求値を最終的な要求値とする。
最終的な要求値となったエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtが、エンジン用ECU111、モータ用ECU110およびトランスミッション用ECU112に送信される。これが総入力仕事率最小化制御手段405に相当する。ステップS506の終了後、サブルーチンを終了する。
次に、以上説明した実施の形態2の複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、各駆動源およびトランスミッションに、要求値を要求する実行例について、図7のタイミングチャートを用いて説明する。
探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、実動作の遅れを推定し、個々の駆動源および車両のトランスミッションに対して動作を要求してからの実動作の遅れと、実動作の前にむだ時間が混在する場合には、遅れを考慮しない総入力仕事率が最小となる要求値を、むだ時間が混在しない場合には、遅れを考慮した総入力仕事率が最小となる要求値を、各駆動源およびトランスミッションに要求する実行例である。
なお、図7中、実線は、実施の形態2による制御を示し、破線は、従来の制御を示している。
図7の(イ)のタイミングから、運転者の加速要求により、アクセルが踏まれるのに応じて、車両要求トルクTwが増加している。その車両要求トルクTwとなるような、エンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比の組み合わせの中から、総入力仕事率が最小となる組み合わせを探索した結果が、エンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtの挙動となる。
また、これらエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtに応じて、エンジン、モータ、トランスミッションが動作した挙動が、エンジン実トルク、モータ実トルク、実変速比となっている。
図7における破線で表した従来の制御においては、車両要求トルクTwとなるようなエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比の組み合わせの中から、エンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比がそのまま実動作となった場合の総入力仕事率が最小となる組み合わせを探索した結果となっている。
このため、エンジン実トルク、モータ実トルク、実変速比の組み合わせは、要求時の組み合わせと異なり、総入力仕事率が最小となっていない。そのため、燃料消費量が比較的多くなる。
一方で、図7において実線で表した本実施の形態2の制御におけるエンジン要求トルクTe、モータ要求トルクTm、要求変速比Rtは、車両要求トルクTwとなるようなエンジン要求トルク、モータ要求トルク、要求変速比の組み合わせの中から、推定したエンジン実トルク、モータ実トルク、実変速比が実動作となった場合の総入力仕事率が最小となる組み合わせを探索した結果となっているため、燃料消費量が少なくなっている。
因みに、図7の(イ)から(ウ)までのタイミングにおいては、エンジントルクは、むだ時間があり、モータトルクとトランスミッションには、むだ時間がないため、第1の総入力仕事率最小探索手段403の結果と、第2の総入力仕事率最小探索手段404の結果が混合するパターンであるが、車両要求トルクTwの整合性を保つために、すべて第2の入力仕事率最小探索手段の結果の要求値となっている。
よって、(イ)から(ウ)までのタイミングに関して、本実施の形態2の制御により、燃費の向上が可能となる。
次に、図7の(ウ)からのタイミングの挙動について説明する。
(ウ)からのタイミングでは、車速がさらに増加していき、エンジン、モータ、トランスミッションの回転数が高くなる領域となっているため、各動作のむだ時間が非常に短い時間となっている。そのため、探索パラメータにむだ時間が実質ないものとして、第2の総入力仕事率最小探索手段404のみを実施している。
これにより、本実施の形態2の制御により、燃費を向上が可能であると同時に、演算の負荷も低減が可能である。
実施の形態2の車両の制御装置では、複数の駆動源による車両動作の条件が成立中に、探索パラメータとなる各駆動源の要求トルクおよびトランスミッションの要求変速比に対して、遅れなく動作した場合の総入力仕事率が最小となる動作点を探索する第1の総入力仕事率最小探索手段を実施する。
また、探索パラメータに対して遅れ推定手段による時定数を施した推定値を用い、制御要求に対して遅れを鑑みた場合の総入力仕事率が最小となる動作点を探索する第2の総入力仕事率最小探索手段を実施する。
そして、むだ時間が含まれる駆動源およびトランスミッションに対しては、第1の総入力仕事率最小探索手段で求められる制御要求値を、むだ時間が含まれない駆動源およびトランスミッションに対しては、第2の総入力仕事率最小探索手段で求められる制御要求値を、各駆動源およびトランスミッションに要求する。
実施の形態2によれば、これにより、燃費を向上することができる。
さらに、本実施の形態2の制御により、燃費を向上が可能であると同時に、演算の負荷も低減が可能である。
すべての探索パラメータのむだ時間が非常に短い時間の場合、探索パラメータにむだ時間が実質ないものとして、第1の総入力仕事率最小探索手段をスキップし、第2の総入力仕事率最小探索手段のみを実施しているため、燃費を向上することができると同時に、演算の負荷も低減することができる。
なお、車両の制御装置1000は、ハードウェアの一例を図8に示すように、プロセッサ1001と記憶装置1002から構成される。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ1001は、記憶装置1002から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ1001にプログラムが入力される。また、プロセッサ1001は、演算結果等のデータを記憶装置1002の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
101 エンジン、102 モータ、103 クランクプーリ、104 プーリ、
105 ベルト、106 トランスミッション、107 ディファレンシャルギア、
108 ドライブシャフト、109 タイヤ、110 モータ用ECU、
111 エンジン用ECU、112 トランスミッション用ECU、
113 車両用ECU、114 車速センサ、115 アクセルポジションセンサ、
116 ブレーキストロークセンサ、201 遅れ推定手段、
202 総入力仕事率最小探索手段、203 総入力仕事率最小化制御手段、
401 遅れ推定手段、402 むだ時間判定手段、
403 第1の総入力仕事率最小探索手段、
404 第2の総入力仕事率最小探索手段、405 総入力仕事率最小化制御手段、
1000 車両の制御装置、1001 プロセッサ、1002 記憶装置

Claims (2)

  1. 複数の駆動源が搭載された車両の制御装置であって、
    上記各駆動源および上記車両のトランスミッションに対して、動作を要求してから実動作が行われるまでの遅れを各別に推定する遅れ推定手段、
    要求された上記車両のトルクを得るために上記各駆動源に要求するトルクおよび上記トランスミッションに要求する変速比を演算し、上記実動作が行われたときの総入力の仕事率が、最小となる組み合わせにおける各値を、上記遅れ推定手段により推定された遅れを各別に加味して、求める要求値演算手段、
    この要求値演算手段により求めた上記各値を制御要求値として、上記各駆動源および上記トランスミッションを制御する制御手段を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 複数の駆動源が搭載された車両の制御装置であって、
    上記各駆動源および上記車両のトランスミッションに対して、動作を要求してから実動作が行われるまでの遅れを各別に推定する遅れ推定手段、
    要求された上記車両のトルクを得るために上記各駆動源に要求するトルクおよび上記トランスミッションに要求する変速比を演算し、上記実動作が行われたときの総入力の仕事率が、最小となる組み合わせにおける各値を求める第1の要求値演算手段、
    要求された上記車両のトルクを得るために上記各駆動源に要求するトルクおよび上記トランスミッションに要求する変速比を演算し、上記実動作が行われたときの総入力の仕事率が、最小となる組み合わせにおける各値を、上記遅れ推定手段により推定された遅れを各別に加味して、求める第2の要求値演算手段、
    上記第1の要求値演算手段および上記第2の要求値演算手段により求めた上記各値から選択し、制御要求値として、上記各駆動源および上記トランスミッションを制御する制御手段を備え、
    上記遅れ推定手段により推定された遅れは、上記各駆動源または上記トランスミッションが、上記制御手段からの制御要求を受けてから実動作するまでのむだ時間を当該遅れ中に含み、
    上記制御手段は、上記遅れ推定手段により各別に推定された遅れに含まれる上記むだ時間の最大値が予め設定されたしきい値以上の場合は上記第1の要求値演算手段により求めた該当する値を、上記むだ時間の最大値が上記しきい値より短い場合は上記第2の要求値演算手段により求めた該当する値を、制御要求値とすることを特徴とする車両の制御装置。
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