JP7008249B2 - TiN基焼結体およびTiN基焼結体製切削工具 - Google Patents
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Description
これらの切削工具のうち、TiC基焼結体製切削工具は、耐摩耗性にすぐれるものの、他の切削工具に比して、靱性が著しく劣り、熱衝撃に弱く、また、欠損も発生しやすいことから、主として、高速仕上げ切削加工で使用されている。
また、TiCN基サーメット製切削工具は、鋼に対する親和性が低く、耐摩耗性、仕上げ面粗さに優れているが、その反面、靱性は十分ではない。
一方、WC基超硬合金製切削工具は、靱性にすぐれるものの、耐摩耗性が十分であるとはいえず、さらに、合金成分として、希少金属であるW、Coを使用していることから、低コスト化を図るためにはW使用量、Co使用量の低減が必要とされる。
そこで、すぐれた靱性と耐摩耗性を備える工具材料を提供すべく、従来からいくつかの提案がなされている。
そして、具体例を示す実施例1には、硬質相成分としてのTiN90重量%(この中の酸素含量は0.05%である)と、NiとMoとの(80:20)混合物10重量%とを、350mmHgの圧力下で、窒素中で約1450℃で焼結して得た焼結硬質合金は、約1500ビッカースの硬度(荷重3kg)及び80-90kg/mm2の曲げ破損強度を示すことが記載されている。
既述のとおり、WC基超硬合金はすぐれた靱性を備えるが、耐摩耗性が十分であるとはいえず、さらに、合金成分として、希少金属であるW、Coが使用されているため、高価な工具材料であり、低コスト化を図るためにはW使用量、Co使用量の低減が課題となる。
また、TiCN基サーメットは、すぐれた硬さ、耐摩耗性を備えるが、靱性が十分でないため、これを切削工具として用いた場合には、チッピング、欠損等を発生しやすく、これを原因として工具寿命が短命となるという問題点がある。
そこで、切削工具用の材料としては、すぐれた靱性と硬さを相兼ね備え、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する切削工具材料が望まれている。
そこで、本発明者は、TiN基焼結体の作製にあたり、結合相の組成の最適化を図るとともに、焼結条件を制御することにより、前記空隙や粗大欠陥の形成を抑制するとともに、Mo2C相をあたかも一部領域(ドメイン)において結合相の様に分散分布させ、Mo2C相ドメインにおいて硬さの向上を図り、また、所定含有量、含有割合のFeとNiからなる結合相領域においては靱性の向上を図ることにより、すぐれた靱性と硬さを相兼ね備えたTiN基焼結体を作製し得ることを見出したのである。
そして、靱性と硬さを相兼ね備えたこのTiN基焼結体を、例えば、炭素鋼、合金鋼等の連続切削、断続切削加工用の切削工具として用いたところ、従来のWC基超硬合金製切削工具とほぼ同等あるいはそれ以上にすぐれた耐異常損傷性を示すとともに、従来のTiCN基サーメット製切削工具とほぼ同等の耐摩耗性を備え、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮することを見出したのである。
「(1)TiN相を70~94面積%及びMo2C相を1~25面積%を含み、残部が結合相からなる焼結組織を有するTiN基焼結体であって、
(a)前記結合相の成分は、FeとNiからなり、FeとNiの合計面積割合は5~15面積%であり、かつ、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合は、15~35質量%であり、
(b)前記結合相中では、Mo2C相とFe-Ni合金相が互いに分離して存在し、かつ、Mo2C相は、平均直径が1~20μmのドメインとして分散分布していることを特徴とするTiN基焼結体。
(2) 前記(1)に記載のTiN基焼結体から構成されていることを特徴とするTiN基焼結体製切削工具。」
に特徴を有するものである。
TiN基焼結体に占めるTiN相の面積割合が70面積%未満では、焼結体の硬さが十分ではなく、その結果、TiN基焼結体製切削工具(以下、「TiN基切削工具」という)の耐摩耗性も低下する。一方、TiN基焼結体中のTiN相が94面積%を超えると、焼結組織に微細な空隙(ポア)が形成されやすくなるため、靱性が低下し、TiN基切削工具の耐チッピング性、耐欠損性低下の要因となる。
したがって、TiN基焼結体中のTiN相の面積割合は70~94面積%とする。
また、本発明では、図1に示されるように、TiN基焼結体の断面を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM))で観察し、得られた二次電子像内の領域(例えば、100×100μmの領域)における含有元素量を測定し、TiN相、Mo2C相及びFe-Ni相を特定し、各相が前記領域に占める面積比率を算出し、少なくとも、5領域以上の複数の領域で面積比率を算出し、これらの平均値を、各相の面積%とした。
なお、図1(d)として示されるように、TiN基焼結体中にはW成分の含有が検出されたが、このW成分は、焼結体の製造工程において、原料粉末の混合メディアとしてWC基超硬合金を使用したことに由来して混入した不純物成分である。
そして、本発明のTiN基焼結体においては、製造工程等から不可避的に混入する不可避不純物成分については、本発明の目的を損なわない範囲内(即ち、TiN基焼結体の硬さと靱性を低下せしめない範囲内)において、微量の含有(混入)が許容される。
TiN基焼結体中のMo2C相の面積割合が1面積%未満では、TiN相と結合相間でのぬれ性が不足し、焼結組織に空隙を生じるため、靱性が低下し、一方、Mo2C相の面積割合が25面積%を超えると、Fe3Mo3C相等の複炭化物、Fe3Mo3N相等の複窒化物を生じやすくなり、これが靱性低下の要因となることから、TiN基焼結体中のMo2C相の面積割合は1~25面積%とする。
ここで、Mo2C相ドメインの平均直径が1μm未満では、Mo2C相が粒子として存在するため、TiN粒子間を埋め、硬さを向上させる効果を十分に発揮できず、一方、平均直径が20μmを超えると、焼結組織の均一性が保つことができず、Mo2C相ドメインとFe-Ni合金相からなる結合相領域の間に生じる界面応力が大きくなるため、ドメイン界面破断を生じやすくなる。
したがって、Mo2C相ドメインの平均直径は1~20μmの範囲とする。
なお、Mo2C相ドメインの平均直径は、前述した各層の面積比率を測定する場合と同様に、図1に示されるように、TiN基焼結体の断面を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM))で観察し、得られた二次電子像内の領域(例えば、20×50μmの領域)において、Moの存在する箇所(図1(g)参照)とCの存在する箇所(図1(h)参照)を特定し、MoとCが重複して存在し、かつFeおよびNiの含有量が5at%以下である箇所をMo2C相ドメインと特定し、結合相中に分散分布するMo2C相ドメイン内で最長長さを有する線分を長軸とし、長軸と直交する線分の内最長長さを有するものを短軸とし、その平均を該Mo2C相ドメインの直径とし、さらに、少なくとも、5領域以上の複数の領域で測定したMo2C相ドメインの直径を平均し、この平均値を、Mo2C相ドメインの平均直径(μm)とした。
TiN基焼結体に占める結合相の面積割合が、5面積%未満であると、結合相量が少ないためにTiN基焼結体の靱性が低下し、一方、結合相の面積割合が15面積%を超えると、硬質相成分であるTiN相の量が相対的に減少するため、硬度が低下し、その結果、TiN基切削工具の耐摩耗性も低下する。
したがって、TiN基焼結体に占める結合相の面積割合は5~15面積%とする。
TiN基焼結体の靱性及び硬さを一段と高めることができる。
これは、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合(=Ni/(Fe+Ni)×100)が15質量%未満の場合には、NiはFe中に固溶するが、結合相を固溶強化するほどの効果は発揮されないため結合相の硬さが不足し、また、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合(=Ni/(Fe+Ni)×100)が35質量%を超える場合には、金属間化合物FeNi3を生じやすくなるため、結合相の靱性が低下するという理由による。
本発明のTiN基焼結体を作製するに際して、前記の各相の成分組成等を得るためには、まず、その原料粉末として、TiN:55~92質量%、Mo2C:1~40質量%、Fe:5~18質量%、Ni:1~5質量%であり、かつ、NiとFeの合量に対するNiの質量%(=Ni×100/(Fe+Ni))が15~35質量%という関係を満たす成分及び組成の原料粉末を用いることが好適である。
そして、前記条件を満足する原料粉末を、例えば、WC基超硬合金を混合メディアとするボールミルで混合し、該混合粉末をプレス成形して圧粉成形体を作製する。
ついで、前記圧粉成形体を、水素濃度1~3%、窒素濃度97~99%の混合ガスをフローしながら(窒素希釈水素雰囲気)、1350~1450℃の温度範囲で30分~120分焼結し、その後、窒素希釈水素雰囲気中にて1200℃まで1℃/分の速度で徐冷し、更に室温まで自然冷却することによって、すぐれた靱性と硬さを相兼ね備える本発明のTiN基焼結体を作製することができる。
なお、圧粉成形体を、窒素希釈水素雰囲気にて焼結するのは、TiN粉末と結合相の大半の成分であるFeとの濡れ性を高めると同時に焼結性を高めるためである。
また、この後、所定形状に機械加工することによって、チッピング、欠損等の耐異常損傷性及び耐摩耗性にすぐれ、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮するTiN基焼結体製切削工具を作製することができる。
次いで、この圧粉成形体11~18を、表2および表5に示す条件で焼結した後、室温まで冷却することで、表6に示す比較例の焼結体(以下、「比較例焼結体」という)11~18を作製した。
原料粉末として、いずれも0.5~1μmの平均粒径を有するWC粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、WC:90質量%、Co:10質量%の割合で配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度1400℃、保持時間1時間の条件で焼結し、WC基超硬合金焼結体(以下、単に「超硬合金」という)を形成した。
上記の方法で、WC:84面積%、Co:16面積%の成分組成からなるWC基超硬合金焼結体21(以下、「参考例焼結体21」という)を作製した。
原料粉末として、いずれも0.5~3μmの平均粒径を有するTiCN粉末、Mo2C粉末、Co粉末およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、TiCN:75質量%、Mo2C:10質量%、Co:7.5質量%、Ni:7.5質量%の割合で配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、200MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度1450℃、保持時間1時間の条件で焼結し、TiCN基サーメット焼結体(以下、単に「サーメット」という)を形成した。
上記の方法で、TiMoCN:90面積%、Co+Ni:10面積%の成分組成からなるTiCN基サーメット焼結体22(以下、「参考例焼結体22」という)を作製した。
なお、Mo2C相については、結合相中に分散分布するMo2C相ドメインの長軸と短軸を測定し、その平均を該Mo2C相ドメインの直径とし、ついで、5箇所の測定領域で測定したMo2C相ドメインの直径を平均し、この平均値を、Mo2C相ドメインの平均直径(μm)とした。
また、Fe-Ni合金相については、該相におけるNiの含有量とFeの含有量を、オージェ電子分光装置を用い、Fe-Ni合金相上で10点の測定を行い、得られた算出値を平均した値からFeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合(=Ni×100/(Fe+Ni))を質量%として求めた。
表3、表6に、これらの値を示す。
また、各焼結体の靱性の指標として、ビッカース硬さ測定時に形成された圧痕長(圧痕の最大対角線長さ)を測定するとともに、圧痕から伸長した形成された亀裂長(最大の亀裂長)を測定し、新原らの式(「Evaluation of KIc of brittle solids by the indentation method with low crack-to-indent ratios」K.Niihara、R. Morena and D.P.H. Hasselman,. J Mater Sci Lett、1、13 (1982)参照)より破壊靱性値(MPa・m0.5)を求め、5箇所で求めたこの値を平均して、各焼結体の破壊靱性値として求めた。
なお、各焼結体は、平均ビッカース硬さ(HV)が大きいほど、高硬度を有し、また、破壊靱性値が大きいほど靱性が高いことを示すといえる。
表3、表6に、これらの値を示す。
表3、表6によれば、本発明焼結体1~8の硬さは、参考例焼結体22(TiCN基サーメット焼結体)の硬さにほぼ匹敵し、また、靱性は、参考例焼結体21(WC基超硬合金焼結体)の靱性にほぼ匹敵することがわかる。
切削条件:
被削材:JIS・SCM440のブロック材、
切削速度:160 m/min、
切り込み:1.0 mm、
送り:0.36 mm/rev、
切削時間:12 分、
表7に、切削試験の結果を示す。
しかし、比較例工具11~18、参考例工具22は、靱性が十分でないため、チッピング、欠損等の異常損傷の発生により、工具寿命が短命であった。
Claims (2)
- TiN相を70~94面積%及びMo2C相を1~25面積%を含み、残部が結合相からなる焼結組織を有するTiN基焼結体であって、
(a)前記結合相の成分は、FeとNiからなり、FeとNiの合計面積割合は5~15面積%であり、かつ、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合は、15~35質量%であり、
(b)前記結合相中では、Mo2C相とFe-Ni合金相が互いに分離して存在し、かつ、Mo2C相は、平均直径が1~20μmのドメインとして分散分布していることを特徴とするTiN基焼結体。 - 請求項1に記載のTiN基焼結体から構成されていることを特徴とするTiN基焼結体製切削工具。
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| CN108637338A (zh) | 2018-05-21 | 2018-10-12 | 浙江普菲特切削工具有限公司 | 一种强韧化金属陶瓷材料及由其制成的立铣刀 |
Non-Patent Citations (1)
| Title |
|---|
| 鈴木寿ら,Ti(C,N)-Mo2C-Niサーメットの機械的性質と切削性能,粉体および粉末冶金,日本,社団法人粉体粉末冶金協会,1986年02月25日,Vol.33, No.1,p.43-47 |
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|---|---|
| JP2019218589A (ja) | 2019-12-26 |
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