JP7194012B2 - Ni-Cu合金 - Google Patents

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本発明は、化学プラント等の用途に適したNi-Cu合金に関する。
Ni-Cu合金は、耐食性に優れている。Ni-Cu合金は特に、海水環境における耐食性に優れている。Ni-Cu合金はさらに、強度に優れている。この強度は、金属間化合物の析出に起因する。強度に優れたNi-Cu合金の一例が、特開2000-297336公報に開示されている。
Ni-Cu合金は、概して熱間加工性に劣る。Ni-Cu合金が熱間鍛造に供されると、加熱割れが頻繁に起こる。
特開平8-71679号公報には、所定量のMgが添加されたNi-Cu合金が開示されている。このMgは、合金の熱間加工性に寄与しうる。
特開2006-63395公報には、MgとCaとの合計量が所定範囲であるNi-Cu合金が開示されている。このMg及びCaは、合金の熱間加工性に寄与しうる。
特開2000-297336公報 特開平8-71679号公報 特開2006-63395公報
従来のNi-Cu合金には、熱間加工性に関し、さらなる改善の要請がある。また、Ni-Cu合金の冷間加工性に関しても、改善の要請がある。
本発明の目的は、強度、熱間加工性及び冷間加工性に優れたNi-Cu合金の提供にある。
本発明に係るNi-Cu合金は、
Cu:20.0質量%以上40.0質量%以下、
C:0.05質量%以上0.25質量%以下、
Si:2.0質量%以下、
Mn:1.5質量%以下、
Al:1.0質量%以上5.0質量%以下、
Ti:0.30質量%以上1.00質量%以下、
S:0.010質量%以下、
O:50ppm以下、
N:100ppm以下、
Mg:300ppm以下、
Ca:100ppm以下、
及び
B:50ppm以下
を含む。残部は、Ni及び不可避不純物である。平均結晶粒径とT断面積との比は、0.10/m以下である。
他の観点によれば、本発明に係るNi-Cu合金は、
Cu:20.0質量%以上40.0質量%以下、
C:0.05質量%以上0.25質量%以下、
Si:2.0質量%以下、
Mn:1.5質量%以下、
Al:1.0質量%以上5.0質量%以下、
Ti:0.30質量%以上1.00質量%以下、
S:0.010質量%以下、
O:50ppm以下、
N:100ppm以下、
Mg:300ppm以下、
Ca:100ppm以下、
B:50ppm以下
及び
Nb、V及びWからなる群から選択された1種又は2種以上:1.000質量%以下
を含む。残部は、Ni及び不可避不純物である。平均結晶粒径とT断面積との比は、0.10/m以下である。
本発明に係るNi-Cu合金は、強度、熱間加工性及び冷間加工性の全てにおいて優れる。
本発明に係るNi-Cu合金は、Ni、Cu及び添加元素を含んでいる。以下、各元素について詳説する。
[銅(Cu)]
Cuは、合金の強度、耐食性及び加工性に寄与する。この観点から、Cuの含有率は20.0質量%以上が好ましく、22.0質量%以上がより好ましく、27.0質量%以上が特に好ましい。過剰のCuは、合金の熱間加工性を阻害する。熱間加工性の観点から、Cuの含有率は40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましく、33.0質量%以下が特に好ましい。
[炭素(C)]
Cはマトリクスに固溶し、合金の強度を高める。強度の観点から、Cの含有率は0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が特に好ましい。Cが過剰であると、粗大な炭化物が析出する。この炭化物は、冷間加工時の割れを誘発する。冷間加工性の観点から、Cの含有率は0.25質量%以下が好ましく、0.20質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下が特に好ましい。
[ケイ素(Si)]
Siは、脱酸剤として機能する。Siはさらに、合金の硬度を高める。これらの観点から、Siの含有率は0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が特に好ましい。過剰のSiは、合金の靱性及び加工性を阻害する。靱性及び加工性の観点から、Siの含有率は2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
[マンガン(Mn)]
Mnは、脱酸剤として機能する。この観点から、Mnの含有率は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が特に好ましい。過剰のMnは、熱間加工時の合金の、異常な酸化を招く。熱間加工性の観点から、Mnの含有率は1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。
[アルミニウム(Al)]
Alは、脱酸剤として機能する。Alはさらに、Niと反応する。この反応により、金属間化合物が析出する。この金属間化合物は、強度に寄与する。この金属間化合物はさらに、結晶粒の微細化にも寄与する。これらの観点から、Alの含有率は1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が特に好ましい。熱間加工性の観点から、Alの含有率は5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下が特に好ましい。金属間化合物の一例は、Ni(Al,Ti)である。
[チタン(Ti)]
Tiは、Niと反応する。この反応により、金属間化合物が析出する。この金属間化合物は、強度に寄与する。この金属間化合物はさらに、結晶粒の微細化にも寄与する。これらの観点から、Tiの含有率は0.30質量%以上が好ましく、0.35質量%以上がより好ましく、0.40質量%以上が特に好ましい。過剰のTiは、加工性を阻害する。過剰のTiを含む合金は、高価である。加工性及びコストの観点から、Tiの含有率は1.00質量%以下が好ましく、0.80質量%以下がより好ましく、0.65質量%以下が特に好ましい。金属間化合物の一例は、Ni(Al,Ti)である。
[硫黄(S)]
Ni-Cu合金が、不純物以外のSを含まないことが好ましい。不純物としてのSの含有率は、0.001質量%以上である。熱間加工性の観点から、Sの含有率は0.010質量%以下が好ましく、0.008質量%以下がより好ましく、0.005質量%以下が特に好ましい。
[酸素(O)]
Ni-Cu合金が、不純物以外のOを含まないことが好ましい。不純物としてのOの含有率(質量基準)は、1ppm以上である。熱間加工性及び冷間加工性の観点から、Oの含有率は50ppm以下が好ましく、45ppm以下がより好ましく、40ppm以下が特に好ましい。
[窒素(N)]
Nは、他の元素と反応して窒化物を形成する。この窒化物は、結晶粒の粗大化を抑制する。この窒化物は、合金の靱性に寄与する。これらの観点から、Nの含有率(質量基準)は5ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、15ppm以上が特に好ましい。Nが過剰であると、粗大な窒化物が生成する。粗大な窒化物はNi-Cu合金の靱性を阻害し、従って冷間加工性を阻害する。冷間加工性の観点から、Nの含有率は100ppm以下が好ましく、90ppm以下がより好ましく、80ppm以下が特に好ましい。
[マグネシウム(Mg)]
Mgは、脱酸能力及び脱硫能力に優れる。Mgは、Sと化合物を形成する。この化合物を含むNi-Cu合金では、マトリックス中のS量が小さい。この合金では、Sの粒界への偏析が抑制される。この合金は、熱間加工性に優れる。この観点から、Mgの含有率(質量基準)は50ppm以上が好ましく、70ppm以上がより好ましく、100ppm以上が特に好ましい。Mgが過剰であると、MgとNiとの化合物が多量に形成される。この化合物は低融点であり、Ni-Cu合金の熱間加工性を阻害する。熱間加工性の観点から、Mgの含有率は300ppm以下が好ましく、270ppm以下がより好ましく、250ppm以下が特に好ましい。
[カルシウム(Ca)]
Caは、脱酸能力及び脱硫能力に優れる。Caは、Sと化合物を形成する。この化合物を含むNi-Cu合金では、マトリックス中のS量が小さい。この合金では、Sの粒界への偏析が抑制される。この合金は、熱間加工性に優れる。この観点から、Caの含有率(質量基準)は2ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましく、10ppm以上が特に好ましい。Caが過剰であると、CaとNiとの化合物が多量に形成される。この化合物は低融点であり、Ni-Cu合金の熱間加工性を阻害する。熱間加工性の観点から、Caの含有率は100ppm以下が好ましく、90ppm以下がより好ましく、80ppm以下が特に好ましい。
[ホウ素(B)]
Bは、粒界に偏析する。Bにより、有害元素の粒界偏析が阻止され、粒界が強化される。Bはさらに、粒界炭化物を微細化する。Bを含むNi-Cu合金は、熱間加工性に優れる。この観点から、Bの含有率(質量基準)は5ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、12ppm以上が特に好ましい。Bは、Ni-Cu合金の融点を降下させる。過剰のBを含むNi-Cu合金は、熱間加工性に劣る。熱間加工性の観点から、Bの含有率は50ppm以下が好ましく、40ppm以下がより好ましく、30ppm以下が特に好ましい。
[残部]
このNi-Cu合金の残部は、Ni及び不可避的不純物である。合金の強度、耐食性及び加工性の観点から、Niの含有率は50質量%以上80質量%以下が好ましく、60質量%以上70質量%以下が好ましい。
[ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、タングステン(W)]
Ni-Cu合金が、Nb、V及びWからなる群から選択された1種又は2種以上を含有してもよい。Nb、V及びWのそれぞれは、Cと結合して炭化物を形成する。この炭化物は、結晶粒の微細化、及びNi-Cu合金の強度に寄与しうる。この観点から、Nb、V及びWの合計含有率は0.020質量%以上が好ましく、0.200質量%以上がより好ましく、0.400質量%以上が特に好ましい。Nb、V及びWが過剰であると、粗大な炭化物が生じる。この炭化物は、冷間加工時の割れを誘発する。冷間加工性の観点から、Nb、V及びWの合計含有率は2.000質量%以下が好ましく、1.500質量%以下がより好ましく、1.000質量%以下が特に好ましい。
Ni-Cu合金における、平均結晶粒径dとT断面積sとの比(d/s)は、0.10/m以下が好ましい。比(d/s)が0.10/m以下であるNi-Cu合金では、加工時の割れが生じにくい。このNi-Cu合金は、熱間加工性及び冷間加工性に優れる。この観点から、比(d/s)は0.09/m以下がより好ましく、0.08/m以下が特に好ましい。
平均結晶粒径dは、線分法にて算出される。T断面積sは、長手方向に対して垂直な断面の面積である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
原料を真空誘電溶解炉にて溶融し、この原料からインゴットを得た。このインゴットに熱間鍛造を施した。この熱間鍛造のときのインゴットの温度は、1100℃から1200℃であった。この熱間鍛造により、その材質が実施例1に係るNi-Cu合金であり、直径が20mmである丸棒を得た。この丸棒の組成が、下記の表1に示されている。
[実施例2-24及び比較例25-45]
組成を下記の表1-3に示されるように調製した他は実施例1と同様にして、丸棒を得た。
[引張り試験]
前述の丸棒を、595℃から480℃まで炉冷した。この炉冷の冷却速度は、10℃/hrから15℃/hrであった。さらにこの丸棒を、480℃から空冷した。この空冷は、時効処理に相当する。この丸棒から、試験片(JIS 14A)を切り出した。この試験片の平行部の径は、6mmであった。この試験片を、常温での引張り試験に供し、引張強さを測定した。引張強さが1000N/mm以上である合金の格付けを「A」とし、引張強さが1000N/mm未満である合金の格付けを「B」とした。この結果が、下記の表1-3に示されている。
[熱間加工性]
前述の引張り試験における格付けがAである丸棒から、試験片を切り出した。この試験片では、直径は8mmであり、長さは100mmであった。この試験片を、グリーブル試験機による引張り試験に供し、1100℃における絞り率を測定した。絞り率が70%以上である合金の格付けを「A」とし、絞り率が70%未満である合金の格付けを「B」とした。この結果が、下記の表1-3に示されている。
[冷間加工性]
前述の熱間加工性試験における格付けがAである丸棒を、冷間据え込み試験に供した。この試験での加工率は、70%であった。加工後の合金の表面を、目視で観察した。疵及び割れがない合金の格付けを「A」とし、疵又は割れがある合金の格付けを「B」とした。この結果が、下記の表1-3に示されている。
Figure 0007194012000001
Figure 0007194012000002
Figure 0007194012000003
表1及び2に示される通り、各実施例の合金は、強度、熱間加工性及び冷間加工性の全てに優れる。
比較例25の合金では、比(d/s)が大きい。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例26の合金では、Cの含有率が少ない。従ってこの合金は、強度に劣る。
比較例27の合金では、C量の含有率が多い。この合金では、粗大炭化物が形成される。従ってこの合金は、冷間加工性に劣る。
比較例28の合金では、Siの含有率が多い。従ってこの合金は、冷間加工性に劣る。
比較例29の合金では、Mnの含有率が多い。この合金が再加熱されると、異常酸化が生じる。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例30の合金では、Sの含有率が多い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例31の合金では、Cuの含有率が少ない。従ってこの合金は、強度に劣る。
比較例32の合金では、Cuの含有率が多い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例33の合金では、Alの含有率が少ない。この合金の結晶粒は、粗大である。従ってこの合金は、強度に劣る。
比較例34の合金では、Alの含有率が多い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例35の合金では、Tiの含有率が少ない。この合金の結晶粒は、粗大である。従ってこの合金は、強度に劣る。
比較例36の合金では、Tiの含有率が多い。従ってこの合金は、冷間加工性に劣る。
比較例37の合金では、Mgの含有率が多い。この合金では、MgとNiとの化合物が形成される。この化合物の融点は、低い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例38の合金では、Caの含有率が多い。この合金では、CaとNiとの化合物が形成される。この化合物の融点は、低い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例39の合金では、Bの含有率が多い。この合金の融点は、低い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例40の合金では、Oの含有率が多い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例41の合金では、Nの含有率が多い。この合金では、粗大な窒化物が形成される。従ってこの合金は、冷間加工性に劣る。
比較例42の合金では、Cuの含有率が少ない。従ってこの合金は、強度に劣る。
比較例43の合金では、Mgの含有率が多い。この合金では、MgとNiとの化合物が形成される。この化合物の融点は、低い。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
比較例44の合金では、Nbの含有率が多い。この合金では、粗大炭化物が形成される。従ってこの合金は、冷間加工性に劣る。
比較例45の合金では、平均結晶粒径dとT断面積sの比(d/s)が大きい。従ってこの合金は、熱間加工性に劣る。
以上の評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るNi-Cu合金は、化学プラントに適している。このNi-Cu合金は、化学プラント以外の種々の用途にも、適している。

Claims (2)

  1. その材質がNi-Cu合金である丸棒であって、
    上記Ni-Cu合金が、
    Cu:20.0質量%以上40.0質量%以下、
    C:0.05質量%以上0.25質量%以下、
    Si:2.0質量%以下、
    Mn:1.5質量%以下、
    Al:1.0質量%以上5.0質量%以下、
    Ti:0.30質量%以上1.00質量%以下、
    S:0.010質量%以下、
    O:50ppm以下、
    N:100ppm以下、
    Mg:300ppm以下、
    Ca:100ppm以下、
    及び
    B:50ppm以下
    を含み、残部がNi及び不可避不純物であり、
    上記丸棒の、平均結晶粒径と長手方向に対して垂直な断面の面積との比が0.10/m以下である、丸棒
  2. その材質がNi-Cu合金である丸棒であって、
    上記Ni-Cu合金が、
    Cu:20.0質量%以上40.0質量%以下、
    C:0.05質量%以上0.25質量%以下、
    Si:2.0質量%以下、
    Mn:1.5質量%以下、
    Al:1.0質量%以上5.0質量%以下、
    Ti:0.30質量%以上1.00質量%以下、
    S:0.010質量%以下、
    O:50ppm以下、
    N:100ppm以下、
    Mg:300ppm以下、
    Ca:100ppm以下、
    B:50ppm以下
    及び
    Nb、V及びWからなる群から選択された1種又は2種以上:1.000質量%以下
    を含み、残部がNi及び不可避不純物であり、
    上記丸棒の、平均結晶粒径と長手方向に対して垂直な断面の面積との比が0.10/m以下である、丸棒
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