JP7281920B2 - 油脂及び油性菓子の製造方法 - Google Patents
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Description
1.溶融させた油脂を粉砕機で処理してテンパリングする工程を含む、油脂のテンパリング方法。
2.前記粉砕機が、メディアミル、ディスクミル、ピンミル、ハンマーミル、及びリング媒介型粉砕機からなる群より選択される、前記1に記載の油脂のテンパリング方法。
3.前記粉砕機が、メディアミルである、前記2に記載の油脂のテンパリング方法。
4.前記油脂が、ココアバター、ココアバター置換品、ココアバター代替品、ココアバター等価物及びココアバター改良剤からなる群より選択される一種以上である、前記1~3のいずれかに記載の油脂のテンパリング方法。
5.前記油脂の粘度が1Pa・s以上になるように、前記油脂を前記粉砕機で処理する、前記1~4のいずれかに記載の油脂のテンパリング方法。
6.前記粉砕機に供給する、前記油脂の単位重量あたりの電力量を0.001kW・hr/kg~0.020kW・hr/kgの範囲に調整する、前記1~5のいずれかに記載の油脂のテンパリング方法。
7.前記1~6のいずれかに記載の油脂のテンパリング方法によって前記油脂をテンパリングして、テンパリングされた前記油脂を含むシーディング剤を製造する、シーディング剤の製造方法。
8.前記7に記載のシーディング剤の製造方法によって前記シーディング剤を製造し、製造された前記シーディング剤をチョコレート生地に添加してテンパリングする、チョコレートのテンパリング方法。
9.テンパリングされた前記チョコレート生地のテンパーインデックスが3.0以上になるように、前記油脂を粉砕機で処理してテンパリングする工程において、前記油脂を前記粉砕機で処理する、前記8に記載のチョコレートのテンパリング方法。
10.前記8又は9に記載のチョコレートのテンパリング方法によって前記チョコレート生地をテンパリングして、テンパリングされた前記チョコレート生地を含むチョコレートを製造する、チョコレートの製造方法。
本発明の一実施形態に係る油脂のテンパリング方法は、溶融させた油脂を粉砕機で処理してテンパリングする工程を含むことを特徴とする。以下に、本発明の意義について説明する。
本明細書において、油脂のテンパリングとは、油脂中に種結晶を生成することを意味し、好ましくはβ型の結晶を生成することである。β型の結晶は、チョコレートのブルーム抑制に寄与する。また、油脂のテンパリングによって、油脂中のγ、α、sub-α、pseudo-β’及びβ’型の結晶のうち少なくとも1つが低減することは、チョコレートのブルーム抑制の観点から好ましいことである。ここで、低減するとは、消失することも含む。消失は、例えば、実施例に記載のX線回折測定によって検出できなくなることを意味する。
本明細書において、粉砕機とは、一般に固体を粉砕する目的で用いられる装置である。例えば、撹拌羽根の作用のみによって撹拌を行うような通常の撹拌機は、固体を粉砕可能に構成されたものではないため、粉砕機に該当しない。
油脂の粘度が1Pa・s以上になるように、油脂を粉砕機で処理することが好ましい。油脂の粘度が1Pa・s以上であれば、油脂中にβ型の結晶が多量に生成していると推定され、良好にテンパリングされた状態であると判定できる。油脂の粘度は、例えば、1.5Pa・s以上、2.0Pa・s以上、2.5Pa・s以上、3.0Pa・s以上、3.5Pa・s以上、又は4.0Pa・s以上であってもよい。また、油脂の粘度が1Pa・s以上5Pa・s以下になるように、油脂を粉砕機で処理することが好ましい。油脂の粘度が5Pa・s以下であれば、これをシーディング剤としてチョコレートに添加する際の取り扱い性や、チョコレート中への分散性に優れる。
メディアミルは、容器内において、動力源に接続されていない粉砕媒体に運動を与えて固体を粉砕するように構成された粉砕機である。本実施形態では、粉砕媒体の運動によって、油脂に衝撃を与え、あるいは油脂を圧縮して、油脂中にβ型結晶を生成する。
本発明の一実施形態に係るシーディング剤の製造方法は、以上に説明した油脂のテンパリング方法によって油脂をテンパリングして、テンパリングされた油脂を含むシーディング剤を製造することを特徴とする。
本発明の一実施形態に係るチョコレートのテンパリング方法は、以上に説明したシーディング剤の製造方法によってシーディング剤を製造し、製造されたシーディング剤をチョコレート生地に添加してテンパリングすることを特徴とする。
本明細書において、チョコレートのテンパリングとは、チョコレート生地中にβ型の結晶を生成することを意味する。チョコレート生地中において、シーディング剤として添加された油脂中の種結晶であるβ型結晶は、結晶核として作用して、チョコレート生地中の油脂を安定なβ型とする。
本発明の一実施形態に係るチョコレートの製造方法は、以上に説明したチョコレートのテンパリング方法によってチョコレート生地をテンパリングして、テンパリングされたチョコレート生地を含むチョコレートを製造することを特徴とする。以下に、図1を参照して詳しく説明する。
溶融させた油脂(ココアバター)1.0kgを粉砕機(日本コークス社製ボールミル(メディアミル)、容量5.4L)に投入し、下記の処理条件で5~20分間処理することにより油脂のテンパリングを行い、下記の評価方法によって評価した。
ボール径(粉砕媒体の長径):3.2mm
アジテーター回転速度:100回転/分
ジャケット調温水温度:23℃
ボール充填量:19kg
ボール材質:SUS304
(1)X線回折測定
X線回折装置(リガク社製「RINT-UltimaIII」)での測定によって、油脂の結晶型を確認した。粉砕機で所定の時間処理した油脂を採取し、専用のガラス製のサンプル容器に入れ、摺り切りを1回行った後、測定に供した。測定設備及び測定条件は以下の通りである。
測定フォルダ:標準
検出器:シンチレーションカウンタ
光学系:平行ビーム光学系
発散縦制限スリット:10mm
ソーラースリット:5°
選択スリット:長尺スリット
開始角度:5.0000°
終了角度:40.0000°
サンプリング幅:0.0200°
スキャンスピード:1.0000°/min
電圧:40kV
電流:40mA
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
粉砕機で所定の時間処理した油脂の粘度を測定した。粘度は、B型粘度計にて、NO.6のコーンを使用し、30℃、20rpmの条件で測定した。
下記組成のチョコレート生地を加熱により融解して、溶融した状態を維持したまま30℃まで冷却した。次いで、粉砕機で所定の時間処理した油脂(シーディング剤)を、チョコレート生地に、チョコレート生地100質量部に対して0.5質量部の割合で添加し、よく混ぜた後に、専用のチャンバー(5ml)に入れ、ゾーリッヒ社製テンパーメーターを用いてテンパーインデックスを測定した。尚、テンパーメーターによって測定可能なテンパーインデックスの下限は1.0であり、それに満たない場合は、以下の表中に「測定不可」と表す。
カカオマス:20質量%
砂糖:40質量%
全粉乳:20質量%
ココアバター:19.5質量%
レシチン:0.5質量%
上記「(3)テンパーインデックス測定」と同様にしてシーディング剤をチョコレート生地に混合した後、型に充填し、13℃で30分冷却して固化した。次いで、固化したチョコレートをデモールドし、20℃で一週間保存した。その後、一部のチョコレートについては、15℃から25℃への昇温及び25℃から15℃への降温からなるサイクルを4サイクル/日で実施しながら、4日間保存した(計16サイクル)。他の一部のチョコレートについては、20℃から30℃への昇温及び30℃から20℃への降温からなるサイクルを4サイクル/日で実施しながら、4日間保存した(計16サイクル)。保存後の各チョコレートについて、表面のブルーム状態を目視で観察し、下記評価基準で評価した。
-:ブルーム無し
+:ブルームがわずかに観察される
++:ブルームが顕著に観察される
X線回折の結果より、粉砕機による処理によって油脂中に速やかにβ型の結晶が生成し、油脂を効率的にテンパリングできることがわかった。また、粉砕機による処理時間を適宜設定することで、良好なテンパーインデックスを達成でき、ブルームを好適に防止できることがわかった。
粉砕機における粉砕媒体の有無がテンパリングに与える影響を検討した。
実施例1と同様の粉砕機の容器内に、粉砕媒体の充填を省略した状態(この状態では、粉砕機ではなく、実質的に撹拌機である。)で、ココアバター1.0kgを入れた。調温水の通水を省略し、350rpmで10分間処理を行い、処理前後でのココアバターの温度差を確認した。この温度差と比熱を元に、ココアバターに加えられた機械的作用(応力)に由来するココアバターの発熱量(以下、単に「ココアバターの発熱量」という。)を計算したところ、2.7kcal/hであった。
次に、容器内のココアバターを全量排出して清掃した後、容器内に再度同量のココアバターを入れ、ウォータージャケットに20℃の調温水を通水しながら、350rpmで90分間処理した。処理中、10分おきにココアバターをサンプリングし、サンプリングしたココアバターを実施例1と同様の条件でチョコレート生地に混ぜてテンパリングを行い、テンパーインデックスを測定した。テンパーインデックスは実施例1と同様の方法で測定した。
対照区と同様の粉砕機の容器内に、粉砕媒体であるボール(直径2mm)3.8kgを充填し、ココアバター1.0kgを入れた。調温水の通水を省略し、50、80、100、120又は150rpmの回転数で10分間処理を行い、処理前後でのココアバターの温度差を確認した。この温度差と比熱を元に、ココアバターの発熱量を計算した。その結果、回転数100rpmのときの発熱量が、2.7kcal/hであり、上述した対照区での処理時と同等であることを確認した。
次に、容器内のココアバター及びボールを全量排出して清掃した後、容器内に再度同量のココアバター及びボールを入れ、ウォータージャケットに20℃の調温水を通水しながら、100rpmで90分間処理した。処理中、10分おきにココアバターをサンプリングし、サンプリングしたココアバターを実施例1と同様の条件でチョコレート生地に混ぜてテンパリングを行い、テンパーインデックスを測定した。テンパーインデックスは実施例1と同様の方法で測定した。
試験区では、少なくとも50分間の処理を施したココアバターによって、テンパーインデックス3.0以上を達成することが確認された。また、X線回折の結果より、このココアバター中には、β型の結晶が生成していることが確認された。これに対して、対照区では、ココアバターの発熱量が試験区と同等であるにもかかわらず、90分間の処理を施しても、テンパーインデックス3.0以上を達成できなかった。以上のことから、撹拌機(対照区)との対比で、粉砕機、特にメディアミル(試験区)が、油脂のテンパリングに有効であり、省エネルギーも実現できることがわかった。
粉砕機における粉砕媒体の充填量がテンパリングに与える影響を検討した。
表2より、粉砕媒体を用いない場合(対照区)との対比で、粉砕媒体を用いる場合(試験区)は、β型の結晶が生成し易く、かつβ’型の結晶が低減し、消失し易くなることがわかった。また、粉砕媒体の充填量が多いほど、β型の結晶が生成し易く、また、良好なテンパーインデックスが示され易いことがわかった。
粉砕機における回転数がテンパリングに与える影響を検討した。
表3より、回転数が低い(100rpm)ほど良好なテンパリングが可能になることがわかった。
粉砕機と撹拌機とについてテンパリングに与える影響を検討した。
粉砕機(メディアミル)を備える連続処理装置を用意した。この連続処理装置は、投入されたココアバターを粉砕機で処理し、テンパリングされた油脂を連続的に製造するように構成されている。この連続処理装置を用い、処理能力を5kg/hr、粉砕機のアジテーター回転数100rpm、ボール充填量19kg(ボール径3.2mm)、調温水23℃の条件で、ココアバターのテンパリングを行い、出口部からサンプルを採取した。
ビューラー社製「シードマスター」を用い、処理能力を12kg/hr、ブレード回転数700rpm、1ゾーン冷却15℃、リヒートゾーン23℃の条件で、ココアバターのテンパリングを行い、出口部からサンプルを採取した。
(1)粒度の測定
試験区及び対照区のそれぞれで採取したサンプルについて、マイクロメーターを用いてサンプルに含まれる粒子の最大粒径の測定を実施した。サンプル採取及び最大粒径測定のセットを3回行い、最大粒径の平均値を粒度とした。
試験区及び対照区のそれぞれで採取したサンプルについて、BH型粘度計(東機産業社製)を用いて、温度30℃、速度20rpm、ローターNo.6で粘度を測定した。
試験区及び対照区のそれぞれにおいて、サンプル採取時の各種条件を記録し、運転時動力(上述したサンプル採取時の粉砕機又は撹拌機の動力)及び無負荷時動力(ウォータージャケットによる冷却を省略し、ココアバターが液状で充満している状態での粉砕機又は撹拌機の動力)を測定し、粉砕機に供給する、油脂の単位重量あたりの電力量を、下記式により算出した。
油脂の単位重量あたりの電力量[kW・hr/kg]=(運転時動力[kW]-無負荷時動力[kW])/処理能力[kg/hr]
表4より、粉砕機を用いた試験区では、撹拌機を用いた対照区に比べて、テンパリングされた油脂の粒度が低くなることがわかった。また、試験区では、対照区に比べて、テンパリングされた油脂の粘度が顕著に低くなることもわかった。さらに、動力原単位で比較したところ、試験区では、対照区に比べて、約半分のエネルギーでテンパリング可能であることがわかった。以上のことより、粉砕機を用いた処理は、撹拌機を用いた処理よりもテンパリングの効率が良く、かつ、テンパリングされた油脂中の結晶のサイズが細かく粘度が低いため、シーディング剤として品質的に良好であることがわかった。また、試験区では、油脂の粘度が低いため、シーディング剤としての取り扱い性、チョコレート生地への分散性にも優れることがわかった。
実施例1において、長径(ボール径)が3.2mmの粉砕媒体(ボール)に代えて、長径(ボール径)が5.0mmの粉砕媒体(ボール)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粉砕機によって20分間又は30分間処理することにより油脂のテンパリングを行い、実施例1と同様の評価方法によって評価した。結果を表5に示す。
表5より、長径が5.0mmの粉砕媒体を用いた場合、β型の結晶を生成することが可能であるが、長径が3.2mmの粉砕媒体を用いた実施例1(表1)に比べて、所定のテンパーインデックスを達成するために、より長い処理時間を要することがわかった。また、これらの結果より、長径が5.0mmを超える粉砕媒体を用いた場合は、さらに長い処理時間を要することが推定される。
Claims (9)
- 溶融させた油脂を粉砕機で処理してテンパリングする工程を含む、油脂のテンパリング方法であって、
前記油脂が、ココアバター、ココアバター置換品、ココアバター代替品、ココアバター等価物及びココアバター改良剤からなる群より選択される一種以上である、
油脂のテンパリング方法。 - 前記粉砕機が、メディアミル、ディスクミル、ピンミル、ハンマーミル、及びリング媒介型粉砕機からなる群より選択される、請求項1に記載の油脂のテンパリング方法。
- 前記粉砕機が、メディアミルである、請求項2に記載の油脂のテンパリング方法。
- 前記油脂の粘度が1Pa・s以上になるように、前記油脂を前記粉砕機で処理する、請求項1~3のいずれかに記載の油脂のテンパリング方法。
- 前記粉砕機に供給する、前記油脂の単位重量あたりの電力量を0.001kW・hr/kg~0.020kW・hr/kgの範囲に調整する、請求項1~4のいずれかに記載の油脂のテンパリング方法。
- 請求項1~5のいずれかに記載の油脂のテンパリング方法によって前記油脂をテンパリングして、テンパリングされた前記油脂を含むシーディング剤を製造する、シーディング剤の製造方法。
- 請求項6に記載のシーディング剤の製造方法によって前記シーディング剤を製造し、製造された前記シーディング剤をチョコレート生地に添加してテンパリングする、チョコレートのテンパリング方法。
- テンパリングされた前記チョコレート生地のテンパーインデックスが3.0以上になるように、前記油脂を粉砕機で処理してテンパリングする工程において、前記油脂を前記粉砕機で処理する、請求項7に記載のチョコレートのテンパリング方法。
- 請求項7又は8に記載のチョコレートのテンパリング方法によって前記チョコレート生地をテンパリングして、テンパリングされた前記チョコレート生地を含むチョコレートを製造する、チョコレートの製造方法。
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