JP7364526B2 - 岸壁構造および岸壁構造の構築方法 - Google Patents

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Description

本発明は、岸壁構造および岸壁構造の構築方法に関する。
岸壁構造では、海底面よりも深くまで打設された鋼製の土留め壁が背面土圧に抵抗する。土留め壁を構成する鋼材としては、地中への打設が容易であることから鋼矢板や鋼管矢板が一般的に用いられている。水深が大きくなる場合には、鋼矢板や鋼管矢板のみでは背面土圧に対する抵抗力が不足するため、背面に設置したタイロッド構造や、前面に設置した桟橋構造により、壁体頭部の水平力を支持して、背面土圧に抵抗する構造としている。護岸法線より前面に桟橋を増設する場合に、経済的に急速施工可能な工法として、前面の桟橋をジャケット構造にする方式が採用されているが、土留め壁は直接ジャケットで連結されるわけではなく、土留め壁に作用する背面土圧は、海側に構築されるジャケット構造に水平力のみ伝達される。そのため、土留め壁と桟橋それぞれで鋼材が必要になり、鋼材量が増加する結果、経済性が低下する傾向にあった。
これに対して、特許文献1では、シート状の部材、例えば直線鋼矢板を用いて海側に凸なアーチ形状の土留め壁を構成する技術が提案されている。この場合、背面土圧は土留壁の水平方向の張力としてジャケット構造のレグまで伝達される。土留め壁の曲げ剛性ではなく張力を利用することによって、断面の増加や腹起し工の追加による鋼材量の増加を抑制しつつ、背面土圧に抵抗することが可能な鋼矢板壁を構築することができる。また、特許文献2では、ハット形鋼矢板と鋼管とを組み合わせて構成される鋼製壁が提案されている。特許文献3では、鋼矢板壁を鋼管またはH形鋼で補強する技術が提案されている。
特開2005-194867号公報 国際公開第2011/142367号 国際公開第2013/164885号
しかしながら、特許文献1に記載されたような鋼矢板壁の場合、土留壁から張力によって伝達される背面土圧にジャケット構造を含む支持構造のみで抵抗することになり、支持構造が負担する荷重が過大になる結果、支持構造の鋼材量が増大して経済的でないのに加えて、施工の難易度も高くなる。特許文献2および特許文献3の技術では鋼材量の増加を抑制しつつ剛性が向上した鋼製壁を構築することができるが、背面土圧に対する抵抗力が不足した場合にジャケット構造のような支持構造を設置する方法については記載されていない。それゆえ、既設の護岸に増深工事や耐震補強を計画する場合であっても、既設壁よりも海側に壁体構造およびジャケットなどの桟橋構造を新設し、新設構造のみで背面土圧などに抵抗する設計が行われていた。
そこで、本発明は、既設壁を活用して鋼材量の増加を抑制しつつ壁体の剛性を向上させるとともに支持構造が負担する荷重を軽減することが可能な、岸壁構造および岸壁構造の構築方法を提供することを目的とする。
[1]鋼矢板壁に地中部よりも上の部分で連結された複数の鋼管杭、および複数の鋼管杭に対して1つの割合で配置され、前記鋼矢板壁に地中部よりも上の部分で連結された第1の鋼管矢板を含み、鋼矢板壁の海側に鋼矢板壁の平面形状の凹凸に整合した間隔で配列される第1の鋼管列と、支持杭構造体の少なくとも一部として機能する第2の鋼管矢板を含む少なくとも1本の鋼管矢板が第1の鋼管矢板から鋼矢板壁の延長方向に交差する方向に配列された第2の鋼管列とを備える岸壁構造。
[2]支持杭構造体よりも海側に位置する控え杭構造体と、支持杭構造体を控え杭構造体に連結する連結部材とをさらに備える、[1]に記載の岸壁構造。
[3]支持杭構造体は、第2の鋼管矢板と、第2の鋼管矢板の頭部の外側に嵌合する第1のジャケットレグとを含み、控え杭構造体は、控え杭と、控え杭の頭部の外側に嵌合する第2のジャケットレグとを含み、連結部材は、第1のジャケットレグと第2のジャケットレグとの間に配置される第1の連結部材を含む、[2]に記載の岸壁構造。
[4]支持杭構造体は、第1の鋼管矢板の頭部の内側に嵌合する嵌合部材を含み、連結部材は、第1のジャケットレグと嵌合部材との間に配置される第2の連結部材を含む、[3]に記載の岸壁構造。
[5]第2の鋼管矢板の頭部では、隣接する鋼管矢板との間に継手が形成されず、継手が形成されない部分に前記第1のジャケットレグが外側から嵌合する、[3]または[4]に記載の岸壁構造。
[6]第1の鋼管矢板と第2の鋼管列に含まれる鋼管矢板との間、または第2の鋼管列に含まれる鋼管矢板同士の間で継手を嵌合させることによって囲まれる継手空間に鋼管矢板の周面からずれ止めが突出し、かつ継手空間に充填材が充填されている、[1]から[5]のいずれか1項に記載の岸壁構造。
[7]鋼矢板壁の海側に、複数の鋼管杭と、複数の鋼管杭に対して1つ配置される第1の鋼管矢板とを鋼矢板壁の平面形状の凹凸に整合した間隔で配列して第1の鋼管列を構築し、地中部よりも上の部分で鋼矢板壁と第1の鋼管列とを連結する工程と、第1の鋼管矢板に少なくとも1本の鋼管矢板を連結して第2の鋼管列を構築する工程と、第2の鋼管列に含まれる第2の鋼管矢板を支持杭構造体に組み込む工程とを含む、岸壁構造の構築方法。
[8]第2の鋼管矢板を支持杭構造体に組み込む工程は、第2の鋼管矢板の頭部の外側に第1のジャケットレグを嵌合させる工程を含み、第1のジャケットレグに連結部材を介して連結された第2のジャケットレグをガイドとして第1の鋼管矢板よりも海側に控え杭を打設する工程をさらに含む、[7]に記載の岸壁構造の構築方法。
[9]第1のジャケットレグ、第1のジャケットレグよりも海側に位置する第2のジャケットレグ、および第1のジャケットレグを第2のジャケットレグに連結する連結部材を据え付ける工程と、第2のジャケットレグをガイドとして控え杭を打設する工程とをさらに含み、第2の鋼管矢板を支持杭構造体に組み込む工程は、第1のジャケットレグをガイドとして第1の鋼管矢板を打設する工程を含む、[7]に記載の岸壁構造の構築方法。
上記の構成によれば、背面土圧に対して曲げ抵抗力を有する鋼矢板壁と、鋼矢板壁の延長方向に配列された第1の鋼管列と、鋼矢板壁に交差する方向に配列された第2の鋼管列とが壁体として一体的に挙動するため、背面土圧に対して所望の曲げ剛性をもった岸壁構造を容易に構築することができる。また、背面土圧によって土留壁に生じる回転モーメントに対して、第2の鋼管列が受ける鉛直方向の地盤反力によって抵抗することができる。従って、鋼材量の増加を抑制しつつ、支持構造が負担する荷重を軽減することができる。
本発明の一実施形態に係る岸壁構造の平面図である。 図1のII-II線に沿った断面図である。 図2に示した例の変形例を示す図である。 図1に示された岸壁構造で利用可能な継手の例を示す図である。 鋼管を離散的に配列した場合の断面性能と材料費との関係を、連続的に配列した場合(鋼管矢板壁)との比較で示すグラフである。 本発明の実施例と比較例との間で、有限要素法(FEM)によって総荷重に対する変位を算出した結果を示すグラフである。 本発明の実施例について、壁体に交差する方向に配列された鋼管列を構成する鋼管矢板の数を変化させた場合の壁体の荷重分担率をフレーム計算によって算出した結果を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は本発明の一実施形態に係る岸壁構造の平面図であり、図2は図1のII-II線に沿った断面図である。図示されるように、岸壁構造1は、鋼矢板壁2と、鋼矢板壁2の海側に配列された第1の鋼管列3と、第1の鋼管列3に含まれる鋼管矢板31(第1の鋼管矢板)から海側に向かって、すなわち鋼矢板壁2の延長方向に交差する方向に配列された第2の鋼管列4と、第2の鋼管列4の鋼矢板壁2とは反対側の端部に位置する鋼管矢板41(第2の鋼管矢板)および鋼管矢板41の頭部の外側に嵌合するジャケットレグ52を含む支持杭構造体5とを含む。
ここで、本明細書において、鋼管列は1または複数の鋼管杭または鋼管矢板によって構成される。鋼管矢板は、鋼管杭の周面に鋼管の長手方向に延びる継手を少なくとも1つ配置したものであり、隣接して配置された鋼管矢板同士は継手を係合させることによって互いに連結される。
第1の鋼管列3は、複数の鋼管杭32と鋼管矢板31(第1の鋼管矢板)とを含み、鋼管矢板31は複数の鋼管杭32に対して1つの割合で配置される。複数の鋼管杭32および鋼管矢板31は、鋼矢板壁2の平面形状の凹凸に整合した間隔で配列され、地中部よりも上の部分で連結部材33を用いて鋼矢板壁2に連結される。図示された例において、複数の鋼管杭32同士の間、および複数の鋼管杭32と鋼管矢板31との間は連結されていない。鋼管矢板31の継手311は、第2の鋼管列4の鋼管矢板との連結に用いられる。
第2の鋼管列4は、鋼管矢板41(第2の鋼管矢板)を含む少なくとも1本の鋼管矢板を含む。図示された例では、鋼管矢板41の他に2本の鋼管矢板42,43が含まれ、3本の鋼管矢板41,42,43によって第2の鋼管列4が構成される。第1の鋼管列3に最も近い鋼管矢板43は、継手431を第1の鋼管列3に含まれる鋼管矢板31の継手311に係合させることによって鋼管矢板31に連結される。同様にして、鋼管矢板42は鋼管矢板43に、鋼管矢板41は鋼管矢板42にそれぞれ連結される。このようにして、第2の鋼管列4は鋼管矢板31(第1の鋼管矢板)から鋼矢板壁2の延長方向に交差する方向に配列される。
なお、他の例では、第2の鋼管列4を構成する鋼管矢板の数が図示された例よりも少なくてもよい。例えば、鋼管矢板31(第1の鋼管矢板)と、支持杭構造体の一部として機能する鋼管矢板41(第2の鋼管矢板)とが直接的に連結されることによって鋼管矢板列が構成され、中間的な鋼管矢板が含まれなくてもよい。あるいは、第2の鋼管列4を構成する鋼管矢板の数が図示された例よりも多くてもよい。
本実施形態において、第2の鋼管列4の鋼矢板壁2とは反対側の端部に位置する鋼管矢板41(第2の鋼管矢板)は、ジャケットレグ52とともに支持杭構造体5の一部(支持杭51)として機能する。図示された例において、岸壁構造1は、支持杭構造体5よりも海側に位置する控え杭構造体6と、支持杭構造体5を控え杭構造体6に連結する連結部材である梁7とをさらに含む。控え杭構造体6は控え杭61および控え杭61の頭部の外側に嵌合するジャケットレグ62を含み、梁7はジャケットレグ52,62の間に配置される。
図3は、図2に示した例の変形例を示す図である。図3に示された例では、支持杭構造体5が、さらに、鋼管矢板31(第1の鋼管矢板)の頭部の内側に嵌合する嵌合部材53(スタビングとも呼ばれる)を含み、梁7は、ジャケットレグ52,62の間に配置される部分(第1の連結部材)と、ジャケットレグ52と嵌合部材53との間に配置される部分(第2の連結部材)とを含む。
ここで、図2に示されるように、支持杭構造体5において、ジャケットレグ52は鋼管矢板41(支持杭51)の頭部に嵌合する。鋼管矢板41は、隣接する鋼管矢板に例えば後述するような継手によって連結されるが、ジャケットレグ52が外側に嵌合する鋼管矢板41の頭部では、隣接する鋼管矢板との間に継手を形成しなくてもよい。鋼管矢板41と隣接する鋼管矢板との間に隙間を空け、継手が形成されない部分にジャケットレグ52を外側から嵌合させることによって、ジャケットレグ52の施工が容易になる。
図4は、図1に示された岸壁構造で利用可能な継手の例を示す図である。図示された例において、2つの鋼管矢板40の間の継手401は、一方の鋼管矢板の周面から突出する1対の雌側継手部材401Aと、他方の鋼管矢板の周面から突出する1対の雄側継手部材401Bとを含む。鋼管矢板同士で継手401を嵌合させることによって囲まれる継手空間、すなわち雌側継手部材401A、雄側継手部材401Bおよびそれぞれの鋼管矢板40の周面によって囲まれる空間には、充填材402が充填される。具体的には、雌側継手部材401Aおよび雄側継手部材401Bは、例えば山形鋼で形成される。充填材402には、モルタル、セメント、またはコンクリートなどを用いることができる。このような継手によって、鋼管矢板同士の間で水平方向の圧縮荷重およびせん断荷重を伝達することができる。
さらに、本実施形態では、継手401がずれ止め403A,403Bを有する。ずれ止め403A,403Bは、1対の雌側継手部材401Aの間、または1対の雄側継手部材401Bの間で鋼管矢板の周面から上記の継手空間に突出し、充填材402に定着することによって、鋼管矢板同士の間で鉛直方向のせん断荷重がより確実に伝達されるようにする。ずれ止め403A,403Bを配置することによって、2つの鋼管矢板40の間で鉛直方向のせん断による位置ずれが生じるのをより確実に防止し、第1の鋼管列3および第2の鋼管列4を一体的な壁体として挙動させることができる。なお、ずれ止め403A,403Bは、例えば図示されたように水平方向に延びるリブであってもよいし、点状に突出するビードのようなものであってもよい。
上記のような継手401は、第2の鋼管列4を構成する鋼管矢板同士の間に限らず、第1の鋼管列3の鋼管矢板31と第2の鋼管列4の鋼管矢板との間に配置されてもよい。また、図示していないが、第1の鋼管列3を構成する鋼管杭および鋼管矢板と、第2の鋼管列4を構成する鋼管矢板とのそれぞれの頭部をコーピングによって固定することによって壁体Wの一体性を高めてもよい。
次に、本実施形態に係る岸壁構造の構築方法の例について概略的に説明する。まず、鋼矢板壁2の海側に、複数の鋼管杭32と鋼管矢板31(第1の鋼管矢板)とを鋼矢板壁2の平面形状の凹凸に整合した間隔で配列して第1の鋼管列3を構築する。次に、第1の鋼管列3に含まれる鋼管矢板31に少なくとも1本の鋼管矢板を連結して第2の鋼管列4を構築する。図1に示された例では、鋼管矢板31に鋼管矢板43、鋼管矢板42および鋼管矢板41を順次連結することによって第2の鋼管列4が構築される。例えば、第1の鋼管列3のすべての鋼管杭32および鋼管矢板31の打設後に第2の鋼管列4の鋼管矢板が打設されてもよいし、鋼管矢板31の打設後に、鋼管杭32および他の鋼管矢板31の打設と並行または前後して第2の鋼管列4の鋼管矢板が打設されてもよい。また、第2の鋼管列4の鋼管矢板は必ずしも第1の鋼管列3に近い側から順次打設されなくてもよく、例えば支持杭構造体の一部として機能する鋼管矢板41(第2の鋼管矢板)を先に打設し、鋼管矢板41と第1の鋼管列3の鋼管矢板31(第1の鋼管矢板)との間をつなぐように第2の鋼管列4の他の鋼管矢板の位置を調整しながら打設してもよい。
鋼管矢板41(支持杭51)の打設後に、ジャケットレグ52、梁7およびジャケットレグ62を含むジャケット構造体を鋼管矢板41に据え付け、さらにジャケットレグ62をガイドとして控え杭61を打設する。なお、他の例として、仮杭などを用いてジャケット構造体(ジャケットレグ52、梁7およびジャケットレグ62)を先行して据え付け、ジャケットレグ52,62をガイドとして鋼管矢板41および控え杭61をそれぞれ打設してもよい。上記のいずれかの工程によって、第2の鋼管列4の鋼矢板壁2とは反対側の端部に位置する鋼管矢板41が支持杭51として支持杭構造体5に組み込まれる。ジャケット構造体の上方には、岸壁のエプロン部分を構成する上部工(図示せず)が設置されてもよい。既存の鋼矢板壁2の補強工事として上記の工程が実施され、鋼矢板壁2に加えて第1の鋼管列3および第2の鋼管列4とを含む岸壁構造が構築されてもよいし、鋼矢板壁2を構築する工程が上記の工程の前に実施されてもよい。
岸壁や桟橋などの港湾構造物で鋼管杭や鋼管矢板を打設する場合、バイブロハンマ工法が用いられることが多い。バイブロハンマ工法は、鋼材に振動を与えて地盤に打ち込む工法である。バイブロハンマ工法では、施工時における鋼管の損傷を防止するため、鋼管径に対してある程度の板厚を確保する必要がある。例えばバイブロハンマ工法技術研究会では、板厚tと鋼管径Dの比について鋼管杭ではt/D≧1.0%以上、鋼管矢板ではt/D≧1.4%以上とする基準値を規定している。なお、鋼管矢板の基準値の方が大きいのは、継手が打設時の抵抗になる可能性があるためである。
その一方で、鋼管を含む壁体の断面二次モーメントや断面係数などの断面性能は、板厚を大きくするよりも鋼管径を大きくすることによって効果的に向上させることができる。鋼管矢板を継手で連結して壁体を構成する場合は、壁体の延長方向について鋼管矢板同士が継手を介して連続して配置されるという制約があるのに加えて、上記のように鋼管径に対して板厚をより大きくする必要がある。これに対して、本実施形態のように壁体の延長方向に配列された鋼管の間を連結せず、第2の鋼管列に連結される鋼管矢板31を除いて第1の鋼管列を鋼管杭32で構成する場合、鋼管杭の径を大きくしても板厚は同じ径の鋼管矢板よりも小さくすることができ、また鋼管杭同士を連続して配置しなくてもよいため、鋼材量に対して断面性能を効率的に向上させることができる。
本実施形態では、鋼矢板壁に土留め機能を持たせつつ、鋼管杭に必要な耐力を持たせるという考えから、鋼矢板壁2の平面形状の凹凸に整合した間隔で鋼管矢板31および鋼管杭32を配列して第1の鋼管列3を構成する。例えば、400mm幅のU形鋼矢板の場合、凹凸のピッチは800mmになるので、それに整合させて、1200mm径の鋼管矢板31および鋼管杭32を1600mmピッチで配置すると、図1のようになる。図1の例において、鋼管矢板31および鋼管杭32は鋼矢板壁2の平面形状の凹部に対応する位置に配置されており、平面形状の凸部に位置する鋼矢板のウェブ部分と連結部材33、具体的には鋼板で連結されている。鋼管矢板31および鋼管杭32の径をU形鋼矢板の幅400mm幅の2倍以上の800mm以上とすることによって、上記のような配置が可能になる。
図5は、鋼管を離散的に配列した場合の断面性能と材料費との関係を、連続的に配列した場合(鋼管矢板壁)との比較で示すグラフである。図5のグラフでは、上記の例のように400mm幅のU形鋼矢板で構成された鋼矢板壁に1600mmピッチで鋼管を配列した場合と、鋼管矢板壁との単位幅あたりの断面2次モーメントおよび長さ1mあたりの材料費との関係が示されている。それぞれの例について、断面2次モーメントは鋼管の剛性のみを考慮して算出した。また、材料費は、各部材の寸法および建設物価に基づいて算出した。鋼管矢板の継手は、JIS A5530に規定されたP-P型とした。また、それぞれの例について、複数の鋼管径を設定し、板厚はバイブロハンマ工法で施工することを前提として鋼管杭はt/D≧1.0%、鋼管矢板はt/D≧1.4%を満たす最小値とした。
例えば、1000mm径、板厚14mmの鋼管を用いた鋼管矢板壁(鋼管のピッチは鋼管径+継手長さ)の場合、単位幅あたりの断面2次モーメントは4.22×10(cm)になる。これに対して、本実施形態のように鋼管を離散的に配列した場合、同等の断面2次モーメントを有する壁体を構築するためには1200mm径、板厚12mmの鋼管を1600mmピッチで配列すればよい。結果として、同等の断面2次モーメントで材料費を鋼管矢板の場合に比べて4割程度削減することができる。これは他の鋼管径の例でも同様であり、上記のように例えば既存の鋼矢板壁を利用して鋼管を離散的に配置することによって、鋼管矢板壁に比べて少ない材料費で所定の断面性能を満たす壁体を構築することができる。
加えて、本実施形態では、地盤Gからの背面土圧を受ける鋼矢板壁2の海側に第1の鋼管列3を配列し、さらに第1の鋼管列3の鋼管矢板31から海側に向かって第2の鋼管列4を配列することによって、鋼矢板壁2、第1の鋼管列3および第2の鋼管列4を地盤Gに対してU字形の壁体W(鎖線で囲んで示す)として一体的に挙動させることができる。壁体Wの断面二次モーメントは、例えば鋼矢板壁2に並行する第1の鋼管列3のみを構築した場合に比べて大きく、また第2の鋼管列4を構成する鋼管矢板の数によって容易に調整できるため、背面土圧に対して所望の曲げ剛性をもった岸壁構造1を容易に構築することができる。また、背面土圧によって鋼矢板壁2に生じる回転モーメントに対して、第2の鋼管列4が受ける鉛直方向の地盤反力によって抵抗することができる。従って、鋼材量の増加を抑制しつつ、支持構造が負担する荷重を軽減することができる。
さらに、本実施形態では、第2の鋼管列4の鋼管矢板が土留壁を構成しないため、第2の鋼管列4を構成する鋼管矢板同士の間、および第2の鋼管列4の鋼管矢板と第1の鋼管列3の鋼管矢板31との間を必ずしも深さ方向の全長にわたって継手で連結する必要がない。従って、上述のように第2の鋼管列4の端部に位置する鋼管矢板41と隣接する鋼管矢板との間で上方の部分には継手を形成せず、鋼管矢板41の周囲に隙間を空けておくことによってジャケットレグ52の施工を容易にすることができる。
上記のような本発明の一実施形態は、既設の護岸に対し、増深工事や耐震補強を計画する場合に適用することができる。従来は、このような場合において、既設壁よりも海側に壁体構造を新設し、既設壁と新設壁の間を埋め立てることで対応している。増深による土圧の増加や地震荷重を外力として考慮するため、新設壁は既設壁よりも高い曲げ剛性を有する必要がある。その結果、壁体構造を構成する鋼材の断面を拡大する必要があり高コスト化する。更に埋め立て工事も発生するため、総工費が高くなる傾向があった。
これに対して、既設の護岸として構築された鋼矢板壁の増深工事や耐震補強のために本実施形態を適用した場合、既設壁に隣接する位置に壁体の延長方向について離散的に鋼管杭および鋼管矢板を配列することによって不足している剛性が補われる。曲げ剛性の高い壁構造として鋼管矢板壁を構築することも考えられるが、鋼管矢板壁の場合はそれ自体に壁としての機能が求められるため、鋼管矢板を離散的にではなく連続的に配置する必要がある。本実施形態の場合、既設の鋼矢板壁が土圧を受ける面として既に存在し、不足する剛性分について鋼管杭および鋼管矢板を配置すればよいため、合理的に曲げ剛性を補うことができる。また、海側に新設の壁を設ける工程が省略されるため、埋め立て作業が不要であり、埋め立て費用を抑制することもできる。
また、既設壁の補強として壁体の延長方向に交差する方向に鋼管列を連結しようとする場合、既設壁そのものに現場で継手を取り付けることは困難であるが、本実施形態のように既設壁とは別に鋼管列を構築する場合、鋼管列を構成する鋼管杭の一部を継手が取り付けられた鋼管矢板とすることによって、容易に壁体の延長方向に交差する方向の鋼管列を連結することができる。この鋼管列とジャケットとを連結させることによって、U字形の壁体Wによる荷重分担を増やし、ジャケットで分担する荷重を減らすことによってより経済的な桟橋構造の構築が可能になる。
図6は、上記で説明した本発明の一実施形態のように壁体の延長方向に配列された第1の鋼管列およびそれに交差する方向に配列された第2の鋼管列を含む岸壁構造(実施例)と、壁体の延長方向に配列された鋼管列のみを含む岸壁構造(比較例)との間で、有限要素法(FEM)によって総荷重に対する変位を算出した結果を示すグラフである。以下で説明する実施例および比較例では、壁体形状の比較のため、いずれも直径1100mm、管厚12mmの鋼管矢板を継手で連結することによって壁体を構築した。実施例では、鋼管矢板9本を互いに連結して幅10mの壁体を構築し(第1の鋼管列)、両端の鋼管矢板にそれぞれ、壁体の延長方向に直交する方向に配列される3本の鋼管矢板を連結した(第2の鋼管列)。第2の鋼管列の端部に位置する鋼管矢板は、ジャケットレグおよび梁を介して控え杭構造体に連結される。一方、比較例では、鋼管矢板9本を互いに連結して幅10mの壁体を構築し、壁体の延長方向に直交する方向の鋼管列は配置せずに、壁体の両端の鋼管矢板をジャケットレグおよび梁を介して控え杭構造体に連結した。実施例、比較例とも、壁体および鋼管列を構成する鋼管矢板の頭部にはコーピングが施工され、鋼管矢板の間で鉛直方向の位置ずれは起きないものとした。
実施例、比較例とも、陸側の地盤面は鋼管矢板の上端に一致し、陸側の地盤面を基準にした支持杭および控え杭の根入れ深さは46.3m、鋼管矢板の根入れ深さは32.5mとした。鋼管矢板の上端から海底までの距離は16.9mとした。ジャケットレグが取り付けられる鋼管矢板および控え杭の下端は鉛直方向の変位を生じないピン支点とし、壁体の地中部分に作用する海側からの受働土圧を設定した。また、支持杭構造体のジャケットレグの長さは5.4mとした。以上のような条件下で、壁体に作用する陸側からの主働土圧の総荷重と控え杭構造体の上端(桟橋肩部)に生じる変位との関係が、図6のグラフに示されている。グラフに示されるように、FEMによる計算の結果、壁体の延長方向に配列された第1の鋼管列およびそれに交差する方向に配列された第2の鋼管列を含む岸壁構造(実施例)では、壁体の延長方向に配列された鋼管列のみを含む岸壁構造(比較例)に比べて、同じ総荷重に対する変位が約17%抑制されることがわかった。
次に、本発明の実施形態で鋼管を離散的に配置することによる壁体の曲げ剛性向上の効果について検証する。表1に、例1(連続配置)および例2(離散配置)のそれぞれの場合の断面あたりの鋼重と単位幅あたりの曲げ剛性EIとの比を示す。壁体の延長方向に沿って約10mの区間に、例1では1100mm径、板厚12mmの鋼管を連続配置(ピッチ=鋼管径)し、例2では1200mm径、板厚12mmの鋼管を離散配置(ピッチ>鋼管径)した。曲げ剛性EIおよび鋼重比は、例1(連続配置)を1とする比で表されている。表1に示されるように、鋼管を離散的に配置することによって、単位幅あたりの曲げ剛性が同等の場合、鋼重を80%程度に抑えることができる。上記で図5を参照して説明した通り、鋼管径を拡大する程、同一の曲げ剛性EIを得るために必要な鋼重が削減されるため、鋼管径に対してピッチをより大きくすることが理論上は可能である。ただし、壁体としての剛性の均一性を保つため、鋼管のピッチを拡大したことによって飛ばされる、すなわち壁体の延長方向について鋼管と重複しなくなる鋼矢板壁の区間の長さは、鋼矢板1枚分までとすることが望ましい。
Figure 0007364526000001
図7は、上記で説明した本発明の一実施形態に係る岸壁構造について、壁体に交差する方向に配列された第2の鋼管列を構成する鋼管矢板の数Nを変化させた場合に、壁体の延長方向に配列された第1の鋼管列と合わせた構造体の荷重分担率を算出した結果を示すグラフである。第1の鋼管列について十分な根入れ深さが確保されていれば、グラフに示されるように第2の鋼管列を構成する鋼管矢板の本数Nが多くなるほど荷重分担率は上昇する。第1の鋼管列と第2の鋼管列とを含む壁体の荷重分担率が上昇することによって、支持杭構造体および控え杭構造体が負担する荷重がより小さくなり、例えば支持杭の根入れ深さを浅くしたり、梁を含めた部材の鋼材量を小さくしたりすることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1…岸壁構造、2…鋼矢板壁、3…第1の鋼管列、31…鋼管矢板、311…継手、32…鋼管杭、33…連結部材、4…第2の鋼管列、40,41,42,43…鋼管矢板、401…継手、401A…雌側継手部材、401B…雄側継手部材、402…充填材、403A…ずれ止め、403B…ずれ止め、431…継手、5…支持杭構造体、51…支持杭、52…ジャケットレグ、53…嵌合部材、6…杭構造体、61…杭、62…ジャケットレグ、7…梁、G…地盤、W…壁体。

Claims (9)

  1. 鋼矢板壁に地中部よりも上の部分で連結された複数の鋼管杭、および前記複数の鋼管杭に対して1つの割合で配置され、前記鋼矢板壁に地中部よりも上の部分で連結された第1の鋼管矢板を含み、前記鋼矢板壁の海側に前記鋼矢板壁の平面形状の凹凸に整合した間隔で互いに離間して配列される第1の鋼管列と、
    支持杭構造体の少なくとも一部として機能する第2の鋼管矢板を含む少なくとも1本の鋼管矢板が前記第1の鋼管矢板から前記鋼矢板壁の延長方向に交差する方向に配列された第2の鋼管列と
    を備える岸壁構造。
  2. 前記支持杭構造体よりも海側に位置する控え杭構造体と、前記支持杭構造体を前記控え杭構造体に連結する連結部材とをさらに備える、請求項1に記載の岸壁構造。
  3. 前記支持杭構造体は、前記第2の鋼管矢板と、前記第2の鋼管矢板の頭部の外側に嵌合する第1のジャケットレグとを含み、
    前記控え杭構造体は、控え杭と、前記控え杭の頭部の外側に嵌合する第2のジャケットレグとを含み、
    前記連結部材は、前記第1のジャケットレグと前記第2のジャケットレグとの間に配置される第1の連結部材を含む、請求項2に記載の岸壁構造。
  4. 前記支持杭構造体は、前記第1の鋼管矢板の頭部の内側に嵌合する嵌合部材を含み、
    前記連結部材は、前記第1のジャケットレグと前記嵌合部材との間に配置される第2の連結部材を含む、請求項3に記載の岸壁構造。
  5. 前記第2の鋼管矢板の頭部では、隣接する鋼管矢板との間に継手が形成されず、前記継手が形成されない部分に前記第1のジャケットレグが外側から嵌合する、請求項3または請求項4に記載の岸壁構造。
  6. 前記第1の鋼管矢板と前記第2の鋼管列に含まれる鋼管矢板との間、または前記第2の鋼管列に含まれる鋼管矢板同士の間で継手を嵌合させることによって囲まれる継手空間に鋼管矢板の周面からずれ止めが突出し、かつ前記継手空間に充填材が充填されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の岸壁構造。
  7. 鋼矢板壁の海側に、複数の鋼管杭と、前記複数の鋼管杭に対して1つ配置される第1の鋼管矢板とを前記鋼矢板壁の平面形状の凹凸に整合した間隔で互いに離間して配列して第1の鋼管列を構築し、地中部よりも上の部分で前記鋼矢板壁と前記第1の鋼管列とを連結する工程と、
    前記第1の鋼管矢板に少なくとも1本の鋼管矢板を連結して第2の鋼管列を構築する工程と、
    前記第2の鋼管列に含まれる第2の鋼管矢板を支持杭構造体に組み込む工程と
    を含む、岸壁構造の構築方法。
  8. 前記第2の鋼管矢板を支持杭構造体に組み込む工程は、前記第2の鋼管矢板の頭部の外側に第1のジャケットレグを嵌合させる工程を含み、
    前記第1のジャケットレグに連結部材を介して連結された第2のジャケットレグをガイドとして前記第1の鋼管矢板よりも海側に控え杭を打設する工程をさらに含む、請求項7に記載の岸壁構造の構築方法。
  9. 第1のジャケットレグ、前記第1のジャケットレグよりも海側に位置する第2のジャケットレグ、および前記第1のジャケットレグを前記第2のジャケットレグに連結する連結部材を据え付ける工程と、
    前記第2のジャケットレグをガイドとして控え杭を打設する工程と
    をさらに含み、
    前記第2の鋼管矢板を支持杭構造体に組み込む工程は、前記第1のジャケットレグをガイドとして前記第1の鋼管矢板を打設する工程を含む、請求項7に記載の岸壁構造の構築方法。
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