JP7437622B2 - 走行装置 - Google Patents

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Description

本発明は、走行装置に関する。
近年、様々な使用環境や用途において、従来の人手で行われていた作業の支援や人が対応できない環境での作業を行うための移動型のロボット(走行装置)が活用されている。このような走行装置において、劣悪な路面環境や限られたスペースでの走行にも対応できるように、走行機構には、高い機動性と信頼性が求められる。
また、移動型ロボットは、バッテリ、センサ、荷物等を積載させた状態で段差や階段を乗り越えらせるように補助的な機構を取り付けることで、段差乗り越え性能を向上させる技術が知られている。(例えば、特許文献1)
しかしながら、例えば、棒状の補助機構を用いた場合、棒が長いと走行装置本体を持ち上げる際に非常に大きなトルクが必要になり、棒を短くすると、持ち上げ動作に必要なトルクは小さくなる一方で、十分な乗り越え可能な段差高さを確保できない。そのため、従来の方法では、乗り越え可能な段差高さと段差乗り越えに必要なトルクの低減を両立させることが困難であるという課題があった。
上述した課題を解決すべく、請求項1に係る発明は、少なくとも二つの走行体と、前記少なくとも二つの走行体を支持する本体部と、前記本体部に接続された走行補助装置とを備えた走行装置であって、接地状態で回転駆動させることで、前記本体部に対して、前記走行体を持ち上げるための外力を伝達する補助機構を備え、前記補助機構は、インボリュート曲線形状の接地される領域と、前記インボリュート曲線形状の始点と終点を結んだ場合に地面と接しない形状の領域とを有し、接地状態での回転駆動時における前記補助機構の回転軸と接地点との垂直方向の最大距離と最小距離の差分は、前記回転軸と前記接地点との水平方向の距離の2倍よりも大きいことを特徴とする走行装置である。
本発明によれば、補助機構の形状を工夫することで、乗り越え可能な段差高さと段差乗り越えに必要なトルクの低減を両立させることができるという効果を奏する。
実施形態に係る走行補助装置が備えられた走行装置の外観の一例を示す図である。 走行補助装置を用いた走行装置の動作について説明するための図である。 (A)は、ピンジョイント方式の補助機構を用いた走行装置の挙動について説明するための図であり、(B)は、fixジョイント方式の補助機構を用いた走行装置の挙動について説明するための図である。 実施形態に係るラチェット方式の補助機構を用いた走行装置が段差を乗り越える際の挙動について説明するための図である。 実施形態に係る走行補助装置の外観の一例を示す図である。 補助機構の力学モデルについて説明するための図である。 挙動比較に用いる補助機構の形状について説明するための図である。 (A)(B)挙動比較に用いる補助機構の形状のパラメータを示す図である。 機構cを取り付けた走行装置の挙動を示す図である。 機構cを取り付けた走行装置の挙動を示す図である。 区間[0,T]における段差高さHによって正規化されたxおよびyの値の時間遷移を示す図である。 区間[0,T]における0.2T秒毎の走行装置の軌跡を機構ごとに示した図である。 段差高さHによって正規化されたxdの最大値を機構ごとに示した図である。 補助機構の接地点が回転軸よりも前方にある場合の走行装置の軌跡を示した図である。 (A)(B)実施形態に係るインボリュート曲線形状の補助機構の形状について説明するための図である。 従来の棒形状の補助機構の形状について説明するための図である。 従来の円弧形状の補助機構の形状について説明するための図である。 (A)(B)実施形態に係る補助機構の形状と段差乗り越え高さとの関係を説明するための図である。 (A)(B)実施形態に係る補助機構の形状の例を示す図である。 実施形態に係る補助機構の好適な形状の一例について説明するための図である。 実施形態に係る補助機構の好適な形状の一例について説明するための図である。 実施形態に係る走行補助装置が段差を乗り越える際の挙動について説明するための図である。 実施形態に係る走行補助装置の構成の別の例(その1)を示す図である。 実施形態に係る走行補助装置の構成の別の例(その2)を示す図である。 実施形態に係る走行補助装置の構成の別の例(その3)を示す図である。 図24に示した走行補助装置を備えた走行装置の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
●実施形態●
●走行補助装置
図1は、実施形態に係る走行補助装置が備えられた走行装置の外観の一例を示す図である。走行装置5は、走行体50a,50bおよび本体部55によって構成される走行装置本体、並びに走行装置本体の走行を補助する走行補助装置1によって構成される。
走行体50a,50bは、走行装置5の移動手段となるユニットである。図1に示されている走行体50a,50bは、三角形の形状を有するが、走行体の形状はこれに限られず、円形または楕円形の車輪であってもよい。なお、走行体の数は、二つに限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。本体部55は、走行体50a,50bを走行可能な状態で支持する支持体である。
走行補助装置1は、補助機構10a,10b、および接続部15によって構成される。
補助機構10a,10bは、接地状態で回転駆動させることで、走行装置5に対して上方への外力を伝達する部材である。接続部15は、走行補助装置1を、本体部55に接続するための部材である。走行補助装置1は、走行装置5の走行を補助する。走行補助装置1の構成の詳細は後述する。
ここで、図2乃至図4を用いて、走行補助装置を備える走行装置の動作について説明する。なお、図2乃至図4では、説明の簡略化するため、走行体に走行補助装置が接続部を介して接続させている様子を示すが、接続部の他端には補助機構が備えられているものとする。
図2に示されているように、走行体の回転軸に対して接続部が接続されているものとする。この状態で補助機構に下方向からの外力が与えられる場合、走行補助装置の接続条件(拘束条件)の違いよる走行装置の挙動の変化について説明する。
まず、図3(A)は、ピンジョイント方式の走行補助装置を用いた走行装置の挙動について説明するための図である。図3(A)に示されている走行装置は、接続部(走行補助装置)が走行体に対して回転可能に接続されている(ピンジョイント方式)。図3(A)に示されているように、ピンジョイント方式の場合、走行補助装置に外力が加わっても、走行補助装置のみが回転する。この場合、走行体は、持ち上がらずに、段差を乗り越えることができない。
次に、図3(B)は、fixジョイント方式の走行補助装置を用いた走行装置の挙動について説明するための図である。図3(B)に示されている走行装置は、接続部(走行補助装置)が走行体に対して固定されて接続されている(fixジョイント方式)。図3(B)に示されているように、fixジョイント方式の場合、走行体を持ち上げることができるが、段差の壁面に走行体が引っ掛かり、段差を乗り越えることができない。
図4は、実施形態に係るラチェット方式の走行補助装置を用いた走行装置が段差を乗り越える際の挙動について説明するための図である。図4に示されている走行装置は、接続部(走行補助装置)が走行体に対して一方向のみ回転可能に接続されたラチェットジョイント方式(ラチェット方式)である。ラチェットとは、動作方向を一方向に制限するために用いられる機構である。図4の左図に示されているように、ラチェットジョイント方式の場合、走行補助装置は、走行体の自重によって、地面に対して水平を保ちながら重心を持ち上げる。さらに、図4の右図に示されているように、走行体は、段差の壁面に接するようになった後、段差の角を回転中心として回転し壁面を登ることが可能であるため、段差を乗り越えることができる。
このように、走行体の段差乗り越え性能は、走行補助装置の接続条件の差異による挙動の変化によって変化することができる。そのため、走行装置5は、走行補助装置1をラチェットジョイント方式(ラチェット方式)で接続させる。そして、走行装置5は、補助機構10a,10bを回転駆動させて走行装置5に一方向の駆動力を伝達されることで、段差乗り越え性能を向上させることができる。
●走行補助装置
○外観図○
次に、図5乃至図23を用いて、走行補助装置の構成について説明する。図5は、実施形態に係る走行補助装置の外観の一例を示す図である。走行補助装置1は、上述にように、補助機構10a,10bおよび接続部15によって構成される。接続部15は、補助機構10a,10bを回転駆動させるためのアクチュエータ17を備える。走行補助装置1は、接続部15によって走行装置5の本体部55に接続されることによって、走行装置5の走行を補助する。
○シミュレーション○
○力学モデル
続いて、図6乃至図22を用いて、走行補助装置1が有する補助機構10a,10bの形状について説明する。まず、図6乃至図14を用いて、補助機構10a,10bの形状を検討するために、補助機構の形状の差異による走行装置の挙動についてのシミュレーションを行った内容について説明する。
図6は、補助機構の力学モデルについて説明するための図である。図6に示されているように、補助機構は、点Oに回転軸を持ち、一部に任意の曲線を持つ幾何形状である場合について検討する。xy平面上に存在する図6に示す幾何形状の曲線部分は、媒介変数をtとした場合,以下(式1)のように表すことができる。
(式1)で表すことができる幾何形状の曲線部分は、xy平面上で[0,θlim,c]を満たす任意の角度θだけ回転した場合、地面に接地し続けるものとする。このとき、θ回転した上で地面に接地する時の回転軸と接地点の水平距離をx、回転軸と接地点の垂直距離をyと置くと、(式1)は、以下(式2)のように表すことができる。
また、曲線部分が地面に接するためは、(式2)が、以下(式3)を満たす必要がある。そして、(式3)に(式2)を代入すると、以下(式4)のように表される。これにより、(式2)は、以下(式5a)および(式5b)にように書き換えられる。
このように、(式5a)および(式5b)を用いて任意のxまたはyを置くことで、角度θに対してそれらを満たす幾何形状を作成することができる。
○シミュレーション方法
続いて、図7および図8を用いて、異なる形状の補助機構を用いた走行装置の挙動についてのシミュレーション方法について説明する。図7は、挙動比較に用いる補助機構の形状について説明するための図である。
図7に示されているように、本実施形態において、四つの形状の補助機構を用いて挙動比較を行った。機構aは、棒形状であり、機構bは、円弧形状であり、機構c1およびc2は、インボリュート曲線形状である。図7に示されているこれらの機構は、Jordan閉曲線の定義を満たすため、地面と接する区間の始点と終点を、回転軸と直線で結ばれている。また、図7に示されている各機構の黒点は、補助機構の回転軸を示し、白点は、地面との接触点を示す。
機構a、機構bおよび機構cは、形状による性能を比較するため、「θ=0°のときy=0」、「θの角度領域が0°~90°」および「θ=90°のときy=H」の三つの条件を満たすようにパラメータl,r,aを決定した。また、機構c1は、(式2)に対して、x=a,y=aθを代入すると、以下の(式6a)および(式6b)となり、インボリュート曲線の媒介変数表示に一致する。インボリュート曲線とは、その法線が常に一つの定円に接するような平面曲線である。
また,機構cは、機構a,bと異なり、yに周期関数を持たないため,基本周期による可動域の制限を受けない。そこで、インボリュート曲線形状に関しては、機構a、機構bと比較するために可動域を、区間[0,π/2]にした機構cと、可動域を地面に干渉しない範囲の最大にした機構cを用意し、それぞれシミュレーションを行った。機構cは、地面との干渉を起こさないθの最大値をθlimとすると、(式2)にy=aθを代入した以下(式7)の、0の次に大きい解がθlimとなる。θlimは、ニュートン法を用いて求めると、θlim≒4.49となる。このとき,「y(θlim)=aθlim=H」を満たすように、aを決定する。これらの四つの形状に関して、変数l,r,a,aは、段差高さHを用いて、図8(A)のように求められる。
次に、機構a、機構b、機構cおよび機構cの形状の補助機構における走行装置の軌跡に関して説明する。まず、補助機構は、地点Bを回転軸として、以下(式8)を満たすような等角速度の入力が与えられる。一方で,補助機構の地面とのなす角θは、(式2)より、走行装置本体と補助機構とのなす角度θのみで決まるのでなく、走行装置本体と地面とのなす角θの影響を受ける。θの軌跡は、走行装置本体のアクチュエータによる駆動力および壁面の摩擦の状況の影響を受けるため一意に決めることができない。そのため、本シミュレーションにおいて、補助機構の形状の評価を行うため、走行装置本体の軌跡に関して以下に示す状況を設定し、走行装置全体の軌跡を求めた。このとき、θの初期角度をα、最終的な角度をβとしたとき、角速度をωとしてシミュレーション時間Tは、以下(式9)のように表すことができる。
具体的なシミュレーション条件は以下の通りである。初期状態において走行装置が地面に対して水平な状態で壁面に接地している状態とし、走行装置本体が常に地面に対して水平に保たれながら上昇するような軌跡を考える。このとき、θは常に0なので,θの値はθのみで決定される。また、α=0である。図8(B)は、シミュレーションに用いた走行装置および周辺環境のプロパティを示す。なお、本シミュレーションでは補助機構の形状の比較のため,走行装置の形状に関して簡略化を行い、車輪半径をR=0とした。
○シミュレーション結果
続いて、図9乃至図14を用いて、上記で示した機構において段差乗り越えシミュレーションを行った結果について説明する。図9は、機構cを取り付けた走行装置の挙動を示す図であり、図10は、機構cを取り付けた走行装置の挙動を示した図である。図9および図10において、補助機構の回転軸(Axis of rotation)を黒丸で示し、補助機構と地面との接触点(contact point)を白丸で示す。図9および図10に示されているように、機構cおよび機構cは、時間遷移とともに回転動作をするが、回転軸と接触点のX軸方向の位置が変化していないことがわかる。
図11は、区間[0,T]における段差高さHによって正規化されたxおよびyの値の時間遷移を示す図である。また、図12は、区間[0,T]における0.2T秒毎の走行装置の軌跡を機構ごとに示した図である。棒形状の機構aは、初期姿勢において補助機構の回転軸と補助機構の地面との接地点との水平距離xが最も大きく,時刻Tでx=0となるまで単調減少している。円弧形状の機構bは、T=0およびその近傍において、補助機構の回転軸と地面の水平距離が小さいが,徐々にxが大きくなっていき、時刻T秒において最もxが大きくなる。インボリュート曲線形状の機構cおよび機構cは、初期姿勢から時刻Tまで常にxが一定である。これは、補助機構と地面との摩擦力を考慮しなかった場合,必要なトルクが一定であることを示している。また、機構cおよび機構cは、dy/dθが常に一定なので、走行装置との組み合わせたときの制御性がよい。
また、図12に示されているように、乗り越え可能な段差の高さが20cmである場合、棒形状の機構aおよび円弧形状の機構bの回転軸と接触点の水平方向の最大距離は、20cmとなる。一方で、インボリュート曲線形状の機構cおよびcの回転軸と接触点の水平方向の最大距離は、20cmよりも小さくなる。特に、機構cの回転軸と接触点の水平方向の最大距離は、約4.2cmとなり、機構cは、機構aおよび機構bと比較して約1/5(略20%)の最大トルクで段差乗り越えが可能となる。
また、図13は、段差高さHによって正規化されたxの最大値を機構ごとに示した図である。図13に示されているように、機構cは、機構aおよび機構bと比較して、xの最大値が2/π(≒0.64)倍である。さらに、機構cの可動域を増やした機構である機構cのxの最大値は、機構cの約1/2.89(≒0.35)倍であるので、機構aおよび機構bのxの最大値と比較した場合、2/2.89π(≒0.22)倍となる。これは、同じ負荷に対して必要なトルクが少ないことを意味する.機構cおよび機構cは、段差乗り越えだけでなく階段昇降動作を考えた場合、走行装置の後方部に必要なクリアランスが少ないため、階段昇降においても有効である。一方で、機構cは、可動域が広い分、同じ角速度の場合、Tの値が大きくなる。
このように、本シミュレーションにおいて、走行装置の段差踏破を補助する1自由度の補助機構の形状に関して、回転軸と接触点との垂直距離または水平距離のパラメータを基に、幾何形状の作成方法を検討した。また,段差乗り越えのための補助機構の形状としてインボリュート曲線を用いた形状を含む複数の幾何形状において、走行装置における段差乗り越え動作のシミュレーションを行った。その結果、機構cおよび機構cのようなインボリュート曲線を用いた形状は、従来用いられたような棒形状および円弧形状と比較して、少ない最大トルクで段差乗り越えが可能であることが分かった。
また、本シミュレーションにおいて、補助機構の地面との接触点(contact point)が補助機構の回転軸(Axis of rotation)よりも後方に位置する例を説明したが、図14に示されているように、接触点が回転軸よりも前方に位置する補助機構であっても、同様の結果を得ることができる。
○補助機構の形状○
次に、図15乃至図21を用いて、上記のシミュレーション結果を踏まえて作成される補助機構10a,10bの形状について説明する。なお、補助機構10a,10bは、同一の形状を有するため、以下の説明においては、補助機構10として説明する。
図15は、インボリュート曲線形状の補助機構について説明するための図であり、図16は、従来の棒形状の補助機構の形状について説明するための図であり、図17は、従来の円弧形状の補助機構の形状について説明するための図である。ここで、図15乃至図17において、左図は、補助機構の形状を示し、中央図は、補助機構を回転駆動させた際のxdとydの挙動を示し、右図は、回転駆動させた補助機構の軌跡を示す。
ここで、段差乗り越えのために有利な形状は、小さいトルクで回転軸をより高く持ち上げることが可能な形状である。小さいトルクで回転軸をより高く持ち上げることを可能にするため、補助機構が回転軸を回転中心として回転して地面を押し上げながら上昇する際の、回転軸と接地点の垂直距離の最大値に対する地面から一番近い点から持ち上げ可能な最大高さに至るまでの距離の比率が大きくなるような補助機構の形状を採用する。この比率(εshape)は、以下(式10)のように表される。yd_maxは、回転軸と接触点との垂直距離(y)の最大値であり、yd_minは、回転軸と接触点の垂直距離(y)の最小値である。また、xd_maxは、回転軸と接触点の水平距離(x)の最大値である。すなわち、εshapeは、補助機構における駆動トルクあたりの乗り越え可能な段差の高さの比率となる。
図15(A)に示されているインボリュート曲線形状である機構cの補助機構の場合、εshape=1.86となり、図15(B)に示されているインボリュート曲線形状である機構cの補助機構は、εshape=4.60となる。
一方で、図16に示されている棒形状の補助機構において、yの最大値とxの最大値が棒の長さlであり、yの最小値が0であるため、εshape=1となる。また、図17(A)に示されている円弧形状の補助機構は、εshape=√2であり、図17(B)に示されている円弧形状の補助機構は、εshape=2である。
また、図15(A)および図15(B)の右図に示されているように、機構cおよび機構cの地面との接地点は、走行装置5に対する補助機構の角度の変化に応じて変化する。この場合、機構cおよび機構cの回転軸と接地点との水平方向の距離は、常に乗り越え可能な段差の高さ(最大押し上げ可能な高さ)の略20%である。また、機構cおよび機構cの回転軸と接地点との水平方向の距離は、回転軸と接地点との垂直方向の最大距離(yd_max)の25%以下である。
このように、走行補助装置1は、少なくとも一部にインボリュート曲線形状を有する補助機構を採用することで、段差乗り越え性能を向上させることができる。また、補助機構10は、回転軸と接触点との垂直距離の最大距離長さと最小長さの差分を、回転軸と接触点の水平方向の距離の2倍よりも大きくなる形状にすることによって、最大トルクの値を低減させることができる。さらに、走行補助装置1は、インボリュート曲線形状を有することで、常に回転軸と接触点との水平距離が最大押し上げ可能な高さ以下になるため、乗り越え可能な段差高さと段差乗り越えに必要なトルクの低減を両立させることができる。
図18は、実施形態に係る補助機構の形状と段差乗り越え高さとの関係を説明するための図である。なお、図18の説明では、インボリュート曲線形状を有する補助機構10の一例として補助機構10Aを用いる。図18(A)に示されているように、補助機構10Aにおいて、曲線の始点と終点を結ぶ直線が、初期姿勢において壁面と平行になるように、θlimを設定する。この場合、x=a、y=aθ+hとなる。補助機構10Aの乗り越え可能な段差の最大高さは、h=0の場合、l=l=a√(1+θlim )と表される。また、h≠0の場合、補助機構10Aの乗り越え可能な段差の最大高さは、l=√(x +y )=√(a+(aθlim +h)となる。
このように、補助機構10Aを用いて乗り越え可能な段差の高さは、補助機構10Aの回転軸と接地点との垂直距離lとなる。すなわち、補助機構10Aは、補助機構10Aの回転軸と接地点との垂直方向の最大距離を、乗り越え可能な段差の高さよりも長くすることによって、所望の段差を乗り越えることができる。
さらに、図19を用いて、本実施形態に係る補助機構10の異なる形状について説明する。図19(A)に示されている補助機構10Bは、インボリュート曲線の始点と終点が直線ではなく、曲線で結ばれているような形状である。補助機構10は、補助機構10Bのような少なくとも一部の領域にインボリュート曲線を有する形状であれば、段差乗り越え時に有利な形状となる。
また、図19(B)に示されている補助機構10Cは、曲線の始点と終点を結ぶ領域が、地面と接しない形状である。図20(A)に示されているように、曲線の始点と終点を結ぶ領域が地面と接する場合、補助機構の回転軸となるシャフトを導入するため、初期姿勢で高さのオフセットが発生してしまう。そのため、補助機構の可動域の角度は、0°~約250°までの範囲となり、可動域が狭くなってしまう。
一方で、図20(B)に示されているように、補助機構10Cの形状では、初期姿勢での高さのオフセットをなくすることで、どの角度でも曲線部分と地面が接するため、可動域を0°~360°に広げることができる。また、図20(C)に示されているように、補助機構10Cに示されているような補助機構10Cは、x=aとすると、2πaの段差高さまで、エネルギーロスなしで乗り越えることができる。
また、図21に示されている補助機構10Cのεshapeは、εshape=6.36となる。このように、走行補助装置1は、曲線の始点と終点を結ぶ領域が地面と接さない形状を有する補助機構10Cを採用することで、可動域を広げることができるため、段差乗り越えに必要となる最大トルクを低減させることができる。
○走行補助装置の動作○
次に、図19(B)に示されている形状の補助機構10Cを用いて、段差乗り越えを行う様子を説明する。図22は、Step1~Step6において、補助機構Cを備えた走行補助装置1が階段を上っている様子を概略的に示す。走行補助装置1は、アクチュエータ17を駆動させて補助機構10Cを回転駆動させることで、段差を乗り越えることができる。また、補助機構10Cは、常に曲線部分が地面と接触する形状にすることで、例えば、段差のエッジ部分における滑りの発生を防止することができる。
●走行補助装置の別の例
次に、図5に示されている走行補助装置1の構成の別の例を説明する。図23に示されている走行補助装置1は、三つの補助機構10a,10b,10cを有している。三つの補助機構10a,10b,10cは、それぞれ接続部15によって接続され、アクチュエータ17が駆動することによって回転駆動する。
また、図24に示されている走行補助装置1は、四つの補助機構10a,10b,10c,10dを有している。補助機構10a,10bは、接続部15aによって接続され、アクチュエータ17aを駆動させることによって回転駆動する。補助機構10c,10dは、接続部15bによって接続され、アクチュエータ17bを駆動させることによって回転駆動する。このように、走行補助装置1に備えられる補助機構10の数は、二つに限られず、路面の状況、走行装置5の重量もしくは走行性、路面の状況、または使用用途等によって、使い分けることができる。
さらに、曲線部分を有する補助機構は、上述のように、車輪、棒、反映の形状と比較して地面への押し付け動作を伴う回転軸の持ち上げ動作に必要となるトルクが少ないという利点があるが、図25(A)~(C)に示されているような部材13を取り付けることで、走行性を高めることができる。部材13は、車輪または車輪に準ずるものであり、補助機構10(例えば、補助機構10C)に対して一つまたは複数取り付けられている。このような部材13を補助機構10に取り付けることで、走行補助装置1は、回転軸の位置の水平方向の変化に伴う位置エネルギーの損失を少なくすることができるため、平地での走行性を高めることができる。また、走行補助装置1は、補助機構10に部材13を取り付けることで、走行時のより細かい位置制御を行うことができる。このように、走行補助装置1は、曲線部分を有する補助機構10に対して部材13と取り付けることによって、様々な走行環境における走行性を向上させることができる。
●走行装置の具体例
図26を用いて、本実施形態に係る走行補助装置1を備えた走行装置の具体例を説明する。図26に示されている走行装置5は、履帯式の走行体50と、本体部55を備えた走行装置本体に、四つの補助機構10(10a,10b,10c,10d、10b,10dは不図示)を有する走行補助装置1が備えられている。
履帯式の走行体50は、金属またはゴム製のベルトを用いた履帯(クローラ)式の走行体である。走行体50は、主に、履帯に対して走行体50を回転させるための駆動力を伝達する駆動輪と、走行体50に回転自在に取り付けられてた二つの転輪とを備える。駆動輪の内部には、駆動輪に回転力を伝達するインホイールモータが備えられている。走行体50は、インホイールモータが駆動輪に伝達した駆動力(回転力)を、履帯を介して、転輪に伝達する。
履帯式の走行体は、自動車のようなタイヤで走行する走行体と比較して接地面積が広く、例えば、足場の悪い環境においても、安定した走行を行うことができる。また、タイヤで走行する走行体は、回転動作を行う際に旋回スペースを必要とするのに対して、履帯式の走行体を備えた走行装置は、いわゆる超信地旋回を行うことができるため、限られたスペースでも回転動作をスムーズに行うことができる。
また、走行装置5は、二つの走行体50が本体部55を挟んで略平行になるように、すなわち走行装置5が走行可能な状態で設置される。なお、走行体の数は、二つに限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。例えば、走行装置5は、三つの履帯式走行体を平行に三列に整列させる等、走行装置5が走行可能な状態で設置されてもよい。また、例えば、走行装置5は、四つの履帯式走行体を自動車のタイヤのように前後左右に配列させてもよい。
上述した走行装置5は、使用用途に応じた機能を実現するための装置または部材を本体部55に取り付けることによって、様々な利用シーンで使用することができる。走行装置5は、例えば、旋回性の高さを活かして、通路の狭い工場または倉庫等の拠点において物品の運搬等の軽作業を行う作業用ロボットとして使用される。このような作業用ロボットの場合、走行装置5には、例えば、運搬用の荷台や軽作業用の可動アームが取り付けられる。
また、走行装置5は、例えば、災害現場でのレスキュー用途もしくは復興支援用途、農業用途、または建設現場等でも使用される。このような用途において、例えば、瓦礫やごみが散乱して路面が荒れた環境において、走行装置5は、履帯式走行体10の走行安定性等の特性を活かして、走行中の不具合の発生リスクを低減させることができる。
さらに、走行装置5は、撮影装置や表示装置を備えることで、走行装置5の拠点内のユーザと遠隔地にいるユーザとの双方向のコミュニケーション(遠隔通信)を実現するテレプレゼンスロボットとしても使用される。テレプレゼンスロボットを使用することで、拠点内の装置の管理もしくは保守作業等、または拠点内に位置する人の位置もしくは動線の確認等を遠隔で行うことができる。さらに、走行装置5は、遠隔地にいるユーザからの遠隔操作に応じて走行する構成であってもよい。
なお、図26に示さている履帯式の走行体50を有する走行装置5に備えられている走行補助装置1は、図5に示されているような二つの補助機構10(10a,10b)を有する形状であってもよい。また、走行補助装置1は、本体部55のみを備える走行装置本体に接続される構成であってもよい。この場合、走行補助装置1に備えられた補助機構10は、走行装置5の走行体の機能を担う。
●まとめ●
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る走行補助装置1は、接地状態で回転駆動させることで、走行装置5に対して上方への外力を伝達する補助機構10を備え、接地状態での回転駆動時における補助機構10の回転軸と接地点との垂直方向の最大距離(yd_max)と最小距離(yd_min)の差分は、回転軸と接地点との水平方向の距離(xd_max)の2倍よりも大きい。これにより、走行補助装置1は、段差乗り越えに要する最大トルクの値を低減させることができるので、乗り越え可能な段差高さと段差乗り越えに必要なトルクの低減を両立させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る走行補助装置1において、回転軸と接地点との垂直方向の最大距離(yd_max)は、走行補助装置1が乗り越え可能な段差の高さよりも長い。また、回転軸と前記接地点との水平方向の距離(x)は、走行補助装置1が乗り越え可能な物体の高さの略20%である。これにより、走行補助装置1は、常に回転軸と接触点との水平距離が最大押し上げ可能な高さよりも低くなるため、乗り越え可能な段差高さと段差乗り越えに必要なトルクの低減を両立させることができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る走行補助装置1において、補助機構10は、少なくとも一部がインボリュート曲線形状を有する。また、補助機構10(例えば、補助機構10C)は、インボリュート曲線形状の始点と終点を結ぶ領域が地面と接しない形状である。このように、走行補助装置1は、曲線の始点と終点を結ぶ領域が地面と接さない形状を有する補助機構10を採用することで、可動域を広げることができるため、段差乗り越えに必要となる最大トルクを低減させることができる。また、走行補助装置1は、補助機構10を常に曲線部分が地面と接触する形状にすることで、例えば、段差のエッジ部分における滑りの発生を防止することができる。
また、本発明の一実施形態に係る走行装置5は、走行補助装置1と、本体部55と、を備える。また、走行補助装置1は、ラチェット方式によって走行装置5に接続され、補助機構10を回転駆動させることで走行装置5を一方向の駆動力を伝達する。これにより、走行装置5は、走行補助装置1をラチェットジョイント方式(ラチェット方式)で接続させて、補助機構10の回転駆動により走行装置5に一方向の駆動力を伝達されることで、段差乗り越え性能を向上させることができる。
●補足●
これまで本発明の一実施形態に係る走行補助装置および走行装置について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態の追加、変更または削除等、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
1 走行補助装置
5 走行装置
10(10a,10b,10c,10d) 補助機構
15 接続部
17 アクチュエータ
50a,50b 走行体
55 本体部
特開2014-19210号公報

Claims (7)

  1. 少なくとも二つの走行体と、前記少なくとも二つの走行体を支持する本体部と、前記本体部に接続された走行補助装置とを備えた走行装置であって、
    接地状態で回転駆動させることで、前記本体部に対して、前記走行体を持ち上げるための外力を伝達する補助機構を備え、
    前記補助機構は、インボリュート曲線形状の接地される領域と、前記インボリュート曲線形状の始点と終点を結んだ場合に地面と接しない形状の領域とを有し、
    接地状態での回転駆動時における前記補助機構の回転軸と接地点との垂直方向の最大距離と最小距離の差分は、前記回転軸と前記接地点との水平方向の距離の2倍よりも大きいことを特徴とする走行装置
  2. 前記回転軸と前記接地点との垂直方向の最大距離は、当該走行補助装置が乗り越え可能な段差の高さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の走行装置
  3. 前記回転軸と前記接地点との水平方向の距離は、当該走行補助装置が乗り越え可能な段差の高さの略20%であることを特徴とする請求項2に記載の走行装置
  4. 前記回転軸と前記接地点との水平方向の距離は、前記回転軸と前記接地点との垂直方向の最大距離の25%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の走行装置
  5. 前記補助機構は、接地状態での回転駆動時において、前記接地点の位置が変化することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の走行装置
  6. 前記補助機構は、接地状態での回転駆動時において、前記回転軸と前記接地点の水平方向の距離が一定であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の走行装置。
  7. 記走行補助装置は、ラチェット方式によって前記本体部に接続され、
    前記補助機構を回転駆動させることで前記本体部を一方向の駆動力を伝達する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の走行装置。
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