以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を備える車両11の構成例を示す概略図である。図1に示すように、車両11には、前輪(第1駆動輪)20を駆動するモータジェネレータ(第1モータ)MG1が設けられている。このモータジェネレータMG1のロータ(第1ロータ)21には、第1動力伝達経路22を介して前輪20が連結されている。また、モータ動力を伝達する第1動力伝達経路22は、モータ出力軸23、フロントデファレンシャル機構24および前輪駆動軸25によって構成されている。さらに、ロータ21、第1動力伝達経路22および前輪20によって前輪回転系26が構成されている。なお、前輪回転系26とは、前輪20およびこれと共に回転する各回転要素からなる回転系である。
また、車両11には、後輪(駆動輪,第2駆動輪)30を駆動するモータジェネレータ(動力源,モータ,第2モータ)MG2が設けられている。このモータジェネレータMG2のロータ31(回転体,第2ロータ)31には、第2動力伝達経路32を介して後輪30が連結されている。また、モータ動力を伝達する第2動力伝達経路32は、モータ出力軸33、リヤデファレンシャル機構34および後輪駆動軸35によって構成されている。さらに、ロータ31、第2動力伝達経路32および後輪30によって後輪回転系(回転系)36が構成されている。なお、後輪回転系36とは、後輪30およびこれと共に回転する各回転要素からなる回転系である。
さらに、モータジェネレータMG1,MG2のステータ40,41には、電力変換機器であるインバータユニット42を介して、リチウムイオンバッテリ等のバッテリ43が接続されている。ステータ40,41の通電状態を制御するインバータユニット42には、ステータ40とバッテリ43とを接続するインバータ44が設けられるとともに、ステータ41とバッテリ43とを接続するインバータ45が設けられている。
[制御系]
車両用制御装置10には、モータジェネレータMG1,MG2のトルクや回転数を制御するため、マイコン等からなるメインコントローラ50およびモータコントローラ51が設けられている。メインコントローラ50には、駆動力設定部52、第1モータ制御部53および第2モータ制御部54が設けられている。メインコントローラ50の駆動力設定部52は、運転手のアクセル操作等に基づき車両11に対する要求駆動力Fvを設定し、この要求駆動力Fvを前輪20の要求駆動力(以下、前輪要求駆動力Fftと記載する。)と、後輪30の要求駆動力(以下、後輪要求駆動力Frrと記載する。)と、に分配する。なお、要求駆動力Fvの前後分配比率は、予め設定された固定分配比率であっても良く、走行状況に応じて変化する分配比率であっても良い。
メインコントローラ50の第1モータ制御部53は、前輪要求駆動力Fftに基づきモータジェネレータMG1の目標トルクTm1を設定し、この目標トルクTm1をモータコントローラ51に出力する。目標トルクTm1を受信したモータコントローラ51は、目標トルクTm1に対応する目標電流値等を設定し、目標電流値等に基づいてインバータ44を制御する。同様に、メインコントローラ50の第2モータ制御部54は、後輪要求駆動力Frrに基づきモータジェネレータMG2の目標トルクTm2を設定し、この目標トルクTm2をモータコントローラ51に出力する。目標トルクTm2を受信したモータコントローラ51は、目標トルクTm2に対応する目標電流値等を設定し、目標電流値等に基づいてインバータ45を制御する。
また、メインコントローラ50には、前輪スリップ判定部(スリップ判定部)55、前輪スリップ制御部(スリップ制御部)56、後輪スリップ判定部57および後輪スリップ制御部58が設けられている。後述するように、前輪スリップ判定部55は、前輪20のスリップ率に基づき、前輪20のスリップ制御(以下、前輪スリップ制御と記載する。)の実行条件Faが成立するか否かを判定する。そして、前輪スリップ制御の実行条件Faが成立した場合に、前輪スリップ制御部56は、前輪スリップ制御としてモータジェネレータMG1のトルク制御を実行し、前輪20を所定のスリップ率に保持しながら回転させる。
同様に、後輪スリップ判定部57は、後輪30のスリップ率に基づき、後輪30のスリップ制御(以下、後輪スリップ制御と記載する。)の実行条件Raが成立するか否かを判定する。そして、後輪スリップ制御の実行条件Raが成立した場合に、後輪スリップ制御部58は、後輪スリップ制御としてモータジェネレータMG2のトルク制御を実行し、後輪30を所定のスリップ率に保持しながら回転させる。なお、前輪スリップ制御部56からの制御信号は、第1モータ制御部53を介してモータコントローラ51に出力され、後輪スリップ制御部58からの制御信号は、第2モータ制御部54を介してモータコントローラ51に出力される。
メインコントローラ50に接続されるセンサとして、アクセルペダル60の踏み込み量(以下、アクセル開度Accと記載する。)を検出するアクセルセンサ61が設けられており、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出するブレーキセンサ63が設けられている。また、メインコントローラ50に接続されるセンサとして、前輪20の回転速度(以下、前輪速度Vftと記載する。)を検出する前輪回転センサ64が設けられており、後輪30の回転速度(以下、後輪速度Vrrと記載する。)を検出する後輪回転センサ65が設けられている。また、メインコントローラ50に接続されるセンサとして、モータジェネレータMG1のロータ21の回転速度を検出するロータ回転センサ66が設けられており、モータジェネレータMG2のロータ31の回転速度を検出するロータ回転センサ67等が設けられている。なお、メインコントローラ50とモータコントローラ51とは、CAN等の車載ネットワーク68を介して互いに通信自在に接続されている。
図2は要求駆動力Fvを示した駆動力マップの一例を示す図である。図2に示すように、駆動力マップには、アクセル開度Acc毎に要求駆動力Fvを示す特性線L1~L5が設定されている。つまり、アクセル開度Accが0%である場合には、特性線L1に沿って要求駆動力Fvが設定され、アクセル開度Accが25%である場合には、特性線L2に沿って要求駆動力Fvが設定される。同様に、アクセル開度Accが50%である場合には、特性線L3に沿って要求駆動力Fvが設定され、アクセル開度Accが75%である場合には、特性線L4に沿って要求駆動力Fvが設定され、アクセル開度Accが100%である場合には、特性線L5に沿って要求駆動力Fvが設定される。例えば、アクセル開度Accが「50%」であり、かつ車速が「Vx」である場合には、運転手から要求される要求駆動力Fvとして「Fx」が設定される。なお、図2に示される駆動力マップには、一例として5本の特性線L1~L5が設定されているが、これに限られることはなく、6本以上の特性線が設定された駆動力マップを使用しても良い。
[前輪スリップ制御および後輪スリップ制御(タイミングチャート)]
前輪スリップ制御および後輪スリップ制御の概要について説明する。図3は加速走行時における前輪スリップ制御および後輪スリップ制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。なお、図3のタイミングチャートには、前輪スリップ制御と後輪スリップ制御との双方がまとめて記載されている。また、図3においては、トルクや駆動力等の推移を明確にする観点から、線が互いに重なる場合であってもこれらの線を若干ずらして記載している。
以下の説明において、前輪20のスリップ率SLftは、前輪20のスリップ状態を示す値であり、以下の式(1)を用いて算出される値である。また、後輪30のスリップ率SLrrは、後輪30のスリップ状態を示す値であり、以下の式(2)を用いて算出される値である。また、式(1)および(2)において、「Vv」は車速つまり車両11の移動速度である。すなわち、前輪20や後輪30が空転せずに前輪速度Vftや後輪速度Vrrが車速Vvに一致する場合には、スリップ率SLft,SLrrが0%として算出される。一方、加速走行時に前輪20や後輪30が空転することにより、前輪速度Vftや後輪速度Vrrが車速Vvを上回る場合には、スリップ率SLft,SLrrが0%よりも正側(+側)に算出される。
SLft={(Vft-Vv)/Vv}×100 ・・・(1)
SLrr={(Vrr-Vv)/Vv}×100 ・・・(2)
以下、加速走行時の前輪スリップ制御および後輪スリップ制御について説明する。前輪スリップ制御や後輪スリップ制御とは、凍結路面等の低μ路で前輪20や後輪30が空転した場合に、モータジェネレータMG1,MG2のモータトルクを調整し、前輪20や後輪30を所定のスリップ率Sx1(例えば10%)に保持する制御である。このスリップ制御を実行することにより、前輪20や後輪30の過度な空転を回避することができるため、凍結路面等での走行安定性を高めることができる。このスリップ制御の実行条件として、例えば、スリップ率SLft,SLrrが所定の閾値SL1を上回ることが挙げられる。つまり、スリップ制御の実行条件が成立するか否かについては、前輪20や後輪30のスリップ率SLft,SLrrに基づき判定される。また、スリップ制御の停止条件として、例えば、スリップ率SLft,SLrrが所定の閾値SL2を下回ることが挙げられる。
図3に時刻t1で示すように、アクセルペダル60の踏み込みによってアクセル開度Accが増加すると、前輪要求駆動力Fftおよび後輪要求駆動力Frrが増加するとともに、モータジェネレータMG1,MG2の目標トルクTm1,Tm2が増加する。そして、目標トルクTm1,Tm2に追従するように、モータジェネレータMG1,MG2の力行トルクTm1’,Tm2’が増加し、前輪20や後輪30の実駆動力Fft’,Frr’が増加する。なお、力行トルクTm1’,Tm2’は、モータジェネレータMG1,MG2から力行側に出力されるモータトルク[Nm]であり、実駆動力Fft’,Frr’は、前輪20や後輪30から出力される駆動力[N]である。
続いて、時刻t2に示すように、前輪20や後輪30の実駆動力Fft’,Frr’が増加して路面反力を上回ると、前輪20や後輪30が空転することからスリップ率SLft,SLrrが増加し始める。そして、時刻t3に示すように、スリップ率SLft,SLrrが閾値SL1を上回ると、前輪20や後輪30の空転を抑制するため、目標トルクTm1,Tm2を低下させる前輪スリップ制御および後輪スリップ制御が実行される。
前輪スリップ制御および後輪スリップ制御においては、前輪20や後輪30のスリップ率SLft,SLrrが、所定のスリップ率である目標スリップ率Sx1(例えば10%)を維持するように、モータジェネレータMG1,MG2の目標トルクTm1,Tm2が制御される。つまり、スリップ率SLft,SLrrが目標スリップ率Sx1を上回る場合には、目標トルクTm1,Tm2が下げて設定される一方、スリップ率SLft,SLrrが目標スリップ率Sx1を下回る場合には、目標トルクTm1,Tm2が上げて設定される。これにより、前輪20や後輪30が空転する状況であっても、スリップ率SLft,SLrrを目標スリップ率Sx1に保持することができ、車両11の走行安定性を高めることができる。
すなわち、アクセルペダル60の踏み込みによって前輪要求駆動力Fftや後輪要求駆動力Frrが大きく設定され、破線Txで示すように、目標トルクTm1,Tm2が大きく設定され得る状況であっても、矢印αで示すように、目標トルクTm1,Tm2が下げて設定される。これにより、矢印βで示すように、前輪20や後輪30の実駆動力Fft’,Frr’を下げることができるため、前輪20や後輪30の過度な空転を回避することができ、低μ路における車両11の走行安定性を高めることができる。
[スリップ解消制御]
続いて、後輪30のスリップを解消するスリップ解消制御について説明する。前述したように、前輪スリップ制御や後輪スリップ制御を適切に実行するためには、スリップ率SLft,SLrrの算出に影響を与える車速Vvを高精度に検出することが必要である。この車速Vvとして、後述するように、前輪速度Vftおよび後輪速度Vrrのうち遅い回転速度を用いることが可能であるが、例えば、前輪20と後輪30との双方にスリップが生じた場合には、前輪速度Vftと後輪速度Vrrとの双方が車速Vvから乖離するため、車速Vvを精度良く検出することが困難である。そこで、車両用制御装置10は、前輪20と後輪30との双方にスリップが生じる場合に、車速Vvを精度良く検出する観点から、後輪30のスリップを解消するためのスリップ解消制御を実行する。このスリップ解消制御を実行するため、メインコントローラ50には、角加速度検出部70、トルク検出部71、目標角加速度設定部72、目標トルク設定部73および車速検出部74が設けられている。
図4はスリップ解消制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、ステップS10では、前輪20と後輪30との双方にスリップが生じているか否かについて判定される。ステップS10において、前輪20と後輪30との双方がスリップしている場合、つまり前輪速度Vftと後輪速度Vrrとの双方が車速Vvから乖離する場合には、ステップS11に進み、後輪30のスリップを解消するスリップ解消制御が開始される。
ステップS11では、スリップ中の後輪30に連結されるモータジェネレータMG2のロータ31の角加速度ω'が検出され、続くステップS12では、スリップ中の後輪30に連結されるモータジェネレータMG2のロータ31の力行トルク(トルク)Tm2’が検出される。つまり、ステップS11では、メインコントローラ50の角加速度検出部70によって、モータジェネレータMG2の回転速度に基づき、ロータ31に発生する角加速度ω'が算出される。続くステップS12では、メインコントローラ50のトルク検出部71によって、ステータ41に供給される通電電流等に基づき、ロータ31に作用する力行トルクTm2’が算出される。
ここで、図5はモータジェネレータMG2の角加速度ω'と力行トルクTm2’との関係を示す線図である。図5に矢印A1で示すように、車両11が乾燥路面等の高μ路を走行する場合、つまり後輪30を空転させずに走行する場合には、特性線L1aに沿うように、力行トルクTm2’の増加に伴って角加速度ω'が緩やかに上昇する。また、矢印B1,C1,D1で示すように、車両11が凍結路面や圧雪路面等の低μ路を走行する場合、つまり力行トルクTm2’の大きさによって後輪30に空転が生じてしまう場合には、特性線L1b,L1c,L1dに沿うように、力行トルクTm2’が所定値を上回ると角加速度ω'が急速に上昇する。
つまり、低μ路のなかでも摩擦抵抗が小さい場合には、力行トルクTm2’が所定値T1を上回ると、後輪30が空転し始めて角加速度ω'が急速に上昇する。また、低μ路のなかでも摩擦抵抗が中程度である場合には、力行トルクTm2’が所定値T2を上回ると、後輪30が空転し始めて角加速度ω'が急速に上昇する。また、低μ路のなかでも摩擦抵抗が大きい場合には、力行トルクTm2’が所定値T3を上回ると、後輪30が空転し始めて角加速度ω'が急速に上昇する。なお、特性線L1b,L1c,L1dの傾きは、後輪30が空転することから路面の摩擦抵抗に影響され難く、ほぼ一定の傾きとなっている。また、図示する例では、3つの特性線L1b,L1c,L1dを示しているが、これに限られることはなく、路面の摩擦抵抗に応じて多数の特性線を示すことが可能である。
図4のフローチャートに示すように、ステップS13では、角加速度ω'および力行トルクTm2’に基づき、後輪30のスリップ状態を示す特性線が推定され、続くステップS14では、特性線に基づき、モータジェネレータMG2の目標角加速度Tω'が設定される。以下、目標角加速度設定部72による目標角加速度Tω'の設定手順について説明する。ここで、図6は、図5と同様の線図であり、モータジェネレータMG2の角加速度ω'と力行トルクTm2’との関係を示す線図である。
図6に示すように、角加速度ω'が「A1a」であり、力行トルクTm2’が「T1a」であった場合には、特性線L1bに沿って後輪30が空転していると考えられる。このため、後輪30のスリップを解消するためには、特性線L1aに達するまで角加速度ω'を下げる必要がある。つまり、目標角加速度Tω'を「A1b」に設定し、矢印X1で示すように、力行トルクTm2’を下げることにより、後輪30のスリップを解消することができる。また、例えば、角加速度ω'が「A2a」であり、力行トルクTm2’が「T2a」であった場合には、破線で示した特性線L1eに沿って後輪30が空転していると考えられる。この場合には、目標角加速度Tω'を「A2b」に設定し、矢印X2で示すように、力行トルクTm2’を下げることにより、後輪30のスリップを解消することができる。
このように、後輪30のスリップを解消するための目標角加速度Tω'が設定されると、目標トルク設定部73は以下の手順に沿って目標トルクTm2を算出する。つまり、図4のフローチャートに示すように、ステップS15に進み、以下の式(3)に基づき、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が算出される。つまり、後輪回転系36のイナーシャIに目標角加速度Tω'を乗算することにより、後輪30のスリップを解消するための目標トルクTm2が算出される。すなわち、前述した図6において、角加速度ω'が「A1a」であり、かつ力行トルクTm2’が「T1a」であった場合には、目標トルクTm2として「T1b」が算出され、角加速度ω'が「A2a」であり、かつ力行トルクTm2’が「T2a」であった場合には、目標トルクTm2として「T2b」が算出される。なお、後輪回転系36のイナーシャIとは、ロータ31、第2動力伝達経路32および後輪30からなる回転系のイナーシャであり、実験やシミュレーション等によって予め設定されるイナーシャである。
Tm2=I×Tω' ・・・(3)
図4のフローチャートに示すように、ステップS15において、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が算出されると、ステップS16に進み、目標トルクTm2に基づきモータジェネレータMG2が制御される。これにより、モータジェネレータMG2の力行トルクTm2’を下げて後輪30の空転を解消することができるため、後輪速度Vrrを車速Vvに一致させることができ、後輪速度Vrrをそのまま車速Vvとして設定することができる。これにより、前後輪20,23にスリップが発生し得る状況や、登坂路や降坂路を走行する状況であっても、車速Vvを精度良く検出することができるため、後述する前輪スリップ制御および後輪スリップ制御を適切に実行することができる。
[車速特定制御]
前述したように、スリップ解消制御が実行されるか否かに応じて、車速Vvの特定方法が相違している。以下、車速Vvを特定する車速特定制御について説明する。図7は車速特定制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、ステップS20では、スリップ解消制御が実行されているか否かが判定される。ステップS20において、スリップ解消制御が実行されていると判定された場合には、ステップS21に進み、後輪速度Vrrが車速Vvとして特定される。つまり、スリップ解消制御によって後輪30の空転が解消した状態であることから、後輪速度Vrrがそのまま車速Vvとして読み込まれている。すなわち、スリップ解消制御が実行された状態のもとで、メインコントローラ50の車速検出部74は車速Vvとして後輪速度Vrrを検出する。
ステップS20において、スリップ解消制御が実行されていないと判定された場合には、ステップS22に進み、前輪速度Vftが後輪速度Vrrを下回るか否かが判定される。ステップS22において、前輪速度Vftが後輪速度Vrrを下回ると判定された場合には、低速側の前輪速度Vftが車速Vvに一致することが想定されるため、ステップS23に進み、前輪速度Vftが車速Vvとして特定される。一方、ステップS22において、前輪速度Vftが後輪速度Vrr以上であると判定された場合には、低速側の後輪速度Vrrが車速Vvに一致することが想定されるため、ステップS21に進み、後輪速度Vrrが車速Vvとして特定される。
[前輪スリップ制御および後輪スリップ制御(タイミングチャート)]
続いて、スリップ解消制御を踏まえたスリップ制御の実行状況について詳細に説明する。図8は前輪スリップ制御および後輪スリップ制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。なお、図8のタイミングチャートに示した例では、前後の駆動力分配比が50:50に設定されており、前輪要求駆動力Fftと後輪要求駆動力Frrとは互いに等しい値になっている。また、図8のタイミングチャートにおいては、トルク、駆動力および速度等の推移を明確にする観点から、線が互いに重なる場合であってもこれらの線を若干ずらして記載している。
また、図8において、前輪スリップ制御が「ON」である状況は、実行条件Faが成立して前輪スリップ制御が実行される状況であり、前輪スリップ制御が「OFF」である状況は、停止条件Fbが成立して前輪スリップ制御が停止される状況である。さらに、後輪スリップ制御が「ON」である状況は、実行条件Raが成立して後輪スリップ制御が実行される状況であり、後輪スリップ制御が「OFF」である状況は、停止条件Rbが成立して後輪スリップ制御が停止される状況である。
図8に時刻t1で示すように、アクセルペダル60が踏み込まれてアクセル開度Accが増加すると(符号a1)、前輪要求駆動力Fftおよび後輪要求駆動力Frrが増加するとともに(符号b1)、モータジェネレータMG1,MG2の目標トルクTm1,Tm2が増加する(符号c1)。これにより、前輪20の実駆動力Fft’は前輪要求駆動力Fftに沿うように推移し、後輪30の実駆動力Frr’は後輪要求駆動力Frrに沿うように推移する(符号b1)。なお、図8に示した破線αは、アクセル操作に連動する要求駆動力Fft,Frrを得るために必要なモータトルクを示している。
図8に時刻t2で示すように、車両11が凍結路面等の低μ路に進入すると、前輪20および後輪30が空転し始めることから、前輪速度Vftおよび後輪速度Vrrが車速Vvから離れて上昇し始める(符号d1)。続いて、時刻t3で示すように、前輪速度Vftおよび後輪速度Vrrが車速Vvから離れて更に上昇すると(符号d2)、スリップ率SLft,SLrrが所定の閾値SL1を上回ることから(符号e1)、前輪20の空転を抑制する前輪スリップ制御が実行され(符号f1)、後輪30の空転を抑制する後輪スリップ制御が実行される(符号g1)。このように、前輪スリップ制御および後輪スリップ制御が実行されると、モータジェネレータMG1,MG2の目標トルクTm1,Tm2が下げられ(符号c2)、前輪20および後輪30の実駆動力Fft’,Frr’が下げられる(符号b2)。
ここで、前輪20を駆動するモータジェネレータMG1については、前輪スリップ制御が実行されることから、前輪20のスリップ率SLftが目標スリップ率Sx1(例えば10%)を維持するように(符号e2)、モータジェネレータMG1の目標トルクTm1が制御される(符号c3)。これに対し、後輪30を駆動するモータジェネレータMG2については、前輪20と後輪30との双方が空転する状況であることから、前述したスリップ解消制御が実行される。つまり、後輪30の空転を解消するための目標トルクTx1が設定され、この目標トルクTx1に向けて目標トルクTm2が下げられる(符号c4)。これにより、図8に時刻t4で示すように、後輪30の空転を解消することができ(符号e3)、後輪速度Vrrを車速Vvに一致させることができる(符号d3)。
このように、スリップ解消制御によって後輪速度Vrrを車速Vvに一致させた場合には、メインコントローラ50によって後輪速度Vrrが車速Vvとして特定され、前輪スリップ制御を実行する際の車速Vvとして用いられる。これにより、精度良く検出された車速Vvを前輪スリップ制御に用いることができるため、前輪スリップ制御を適切に実行することができる。
また、スリップ解消制御によって後輪速度Vrrを車速Vvに一致させた後には、以下の式(4)に基づき、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が設定される。つまり、後輪30のグリップ状態が維持される目標トルクTm2を設定するため、モータジェネレータMG1の目標トルクTm1に対して所定係数k1(例えば0.9)を乗算することにより、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が算出される。なお、本実施形態においては、前輪20の目標スリップ率Sx1が「10%」であることから、後輪30のスリップ率SLrrを「0%」に向けて制御するため、所定係数k1として「0.9」が用いられている。
Tm2=Tm1×k1 ・・・(4)
これにより、後輪30のスリップ率SLrrが「0%」を維持するように、後輪30を駆動するモータジェネレータMG2を制御することができるため、精度良く車速Vvを検出し続けることができる。このように、車速Vvを精度良く検出し続けることができるため、前輪スリップ制御を適切に実行することができ、車両11の走行安定性を高めることができる。
[前輪スリップ制御(フローチャート)]
前述した前輪スリップ制御の実行手順をフローチャートに沿って説明する。図9は前輪スリップ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、ステップS30では、前輪20のスリップ率SLftが算出され、続くステップS31では、前輪20のスリップ率SLft等に基づき、前輪スリップ制御の実行条件Faが成立するか否かが判定される。ステップS31において、実行条件Faが成立すると判定された場合には、ステップS32に進み、前輪スリップ制御が実行される。ステップS32においては、前輪20のスリップ率SLftが目標スリップ率Sx1(例えば10%)を維持するように、モータジェネレータMG1の目標トルクTm1が制御される。
続いて、ステップS33では、前輪20のスリップ率SLftが算出され、続くステップS34では、前輪20のスリップ率SLft等に基づき、前輪スリップ制御の停止条件Fbが成立するか否かが判定される。ステップS34において、停止条件Fbが成立すると判定された場合には、ステップS35に進み、前輪スリップ制御が停止される。このステップS35においては、前輪要求駆動力Fftに基づき、モータジェネレータMG1の目標トルクTm1が制御される。
[後輪スリップ制御(フローチャート)]
前述した後輪スリップ制御の実行手順をフローチャートに沿って説明する。図10および図11は後輪スリップ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。図10および図11のフローチャートにおいては、符号Aの箇所で互いに接続されており、符号Bの箇所で互いに接続されている。
図10に示すように、ステップS40では、後輪30のスリップ率SLrrが算出され、続くステップS41では、後輪30のスリップ率SLrr等に基づき、後輪スリップ制御の実行条件Raが成立するか否かが判定される。ステップS41において、実行条件Raが成立すると判定された場合には、ステップS42に進み、スリップ解消制御が実行されているか否かが判定される。ステップS42において、スリップ解消制御が実行されていると判定された場合、つまり後輪30のスリップ解消によって後輪速度Vrrが車速Vvとして特定される場合には、ステップS43に進み、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が設定される。ステップS43では、前述した式(4)を用いることにより、モータジェネレータMG1の目標トルクTm1に所定係数k1(例えば0.9)を乗算し、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が算出される。
続いて、ステップS44では、前輪20のスリップ率SLftが算出され、続くステップS45では、前輪20のスリップ率SLft等に基づき、前輪スリップ制御の停止条件Fbが成立するか否かが判定される。つまり、スリップ解消制御によって後輪30のスリップ率SLrrは「0%」になることから、前輪スリップ制御の停止条件Fbを用いて通常制御への復帰が判定されている。ステップS45において、停止条件Fbが成立すると判定された場合には、ステップS46に進み、後輪スリップ制御が停止される。このステップS46においては、後輪要求駆動力Frrに基づき、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が制御される。
一方、ステップS42において、スリップ解消制御が実行されていないと判定された場合には、ステップS47に進み、後輪スリップ制御が実行される。ステップS47においては、後輪30のスリップ率SLrrが目標スリップ率Sx1(例えば10%)を維持するように、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が制御される。次いで、ステップS48では、後輪30のスリップ率SLrrが算出され、続くステップS49では、後輪30のスリップ率SLrr等に基づき、後輪スリップ制御の停止条件Rbが成立するか否かが判定される。ステップS49において、停止条件Rbが成立すると判定された場合には、ステップS50に進み、後輪スリップ制御が停止される。このステップS50においては、後輪要求駆動力Frrに基づき、モータジェネレータMG2の目標トルクTm2が制御される。
[他の実施形態]
前述の説明では、図4のフローチャートを用いて減速走行時のスリップ解消制御について説明したが、これに限られることはなく、減速走行時にスリップ解消制御を実行しても良い。つまり、後輪30がスリップする状態としては、モータジェネレータMG2の力行トルクによって後輪30が加速方向にスリップする状態だけでなく、モータジェネレータMG2の回生トルクによって後輪30が減速方向にスリップする状態がある。すなわち、後輪30がスリップする状態としては、アクセルペダル60の踏み込みによって車両走行中に後輪30が空転する状態だけでなく、アクセルペダル60の踏み込み解除によって車両走行中に後輪30がロックする状態がある。
以下の説明では、車両減速時の各種制御であることから、モータトルクが力行側(+側)とは逆向きの回生側(-側)に現れる。このため、前述した目標トルクTm1,Tm2および力行トルクTm1’,Tm2’を、目標回生トルクTm1,Tm2および回生トルクTm1’,Tm2’として記載する。なお、目標回生トルクTm1,Tm2や回生トルクTm1’,Tm2’が大きいことは、目標トルクTm1,Tm2や力行トルクTm1’,Tm2’が負側に大きいことを意味している。
また、車両減速時の各種制御であることから、前述した前輪要求駆動力Fft、後輪要求駆動力Frrおよび実駆動力Fft’,Frr’は、駆動側(+側)とは逆向きの制動側(-側)に出力される。このため、前輪要求駆動力Fftを前輪要求駆動力Fftとして記載し、後輪要求駆動力Frrを後輪要求制動力Frrとして記載し、実駆動力Fft’,Frr’を実制動力Fft’,Frr’として記載する。なお、前輪要求制動力Fft、後輪要求制動力Frrおよび実制動力Fft’,Frr’が大きいことは、前輪要求駆動力Fft、後輪要求駆動力Frrおよび実駆動力Fft’,Frr’が負側に大きいことを意味している。
[減速走行時のスリップ制御(タイミングチャート)]
減速走行時のスリップ制御について説明する。図12は減速走行時における前輪スリップ制御および後輪スリップ制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。図12のタイミングチャートには、前輪スリップ制御と後輪スリップ制御との双方がまとめて記載されている。また、図12においては、トルクや駆動力等の推移を明確にする観点から、線が互いに重なる場合であってもこれらの線を若干ずらして記載している。なお、前輪20のスリップ率SLftとは、前述した式(1)を用いて算出される値であり、後輪30のスリップ率SLrrとは、前述の式(2)を用いて算出される値である。すなわち、前輪20や後輪30がロックせずに前輪速度Vftや後輪速度Vrrが車速Vvに一致する場合には、スリップ率SLft,SLrrが0%として算出される。一方、減速走行時に前輪20や後輪30がロックすることにより、前輪速度Vftや後輪速度Vrrが車速Vvを下回る場合には、スリップ率SLft,SLrrが0%よりも負側(-側)に算出される。
減速走行時の前輪スリップ制御や後輪スリップ制御とは、凍結路面等の低μ路で前輪20や後輪30がロックした場合に、モータジェネレータMG1,MG2のモータトルクを調整し、前輪20や後輪30を所定のスリップ率Sx2(例えば-10%)に保持する制御である。このスリップ制御を実行することにより、前輪20や後輪30の過度なロックを回避することができるため、凍結路面等での走行安定性を高めることができる。このスリップ制御の実行条件として、例えば、スリップ率SLft,SLrrの絶対値が所定の閾値SL3を上回ることが挙げられる。つまり、スリップ制御の実行条件が成立するか否かについては、前輪20や後輪30のスリップ率SLft,SLrrに基づき判定される。また、スリップ制御の停止条件として、例えば、スリップ率SLft,SLrrの絶対値が所定の閾値SL4を下回ることが挙げられる。
図12に時刻t1で示すように、アクセルペダル60の踏み込み解除によってアクセル開度Accが減少すると、前輪要求制動力Fftおよび後輪要求制動力Frrが増加するとともに、モータジェネレータMG1,MG2の目標回生トルクTm1,Tm2が増加する。そして、目標回生トルクTm1,Tm2に追従するように、モータジェネレータMG1,MG2の回生トルクTm1’,Tm2’が増加し、前輪20や後輪30の実制動力Fft’,Frr’が増加する。
続いて、時刻t2に示すように、前輪20や後輪30の実制動力Fft’,Frr’が増加して路面反力を超えると、前輪20や後輪30がロックすることからスリップ率SLft,SLrrの絶対値が増加し始める。そして、時刻t3に示すように、スリップ率SLft,SLrrの絶対値が閾値SL3を上回ると、前輪20や後輪30のロックを抑制するため、目標回生トルクTm1,Tm2を低下させる前輪スリップ制御および後輪スリップ制御が実行される。
前輪スリップ制御および後輪スリップ制御においては、前輪20や後輪30のスリップ率SLft,SLrrが、所定のスリップ率である目標スリップ率Sx2(例えば-10%)を維持するように、モータジェネレータMG1,MG2の目標回生トルクTm1,Tm2が制御される。つまり、スリップ率SLft,SLrrが目標スリップ率Sx2を上回る場合には、目標回生トルクTm1,Tm2が下げて設定される一方、スリップ率SLft,SLrrが目標スリップ率Sx2を下回る場合には、目標回生トルクTm1,Tm2が上げて設定される。これにより、前輪20や後輪30がロックする状況であっても、スリップ率SLft,SLrrを目標スリップ率Sx2に保持することができ、車両11の走行安定性を高めることができる。
すなわち、アクセルペダル60の踏み込み解除によって前輪要求制動力Fftや後輪要求制動力Frrが大きく設定され、破線Txで示すように、目標回生トルクTm1,Tm2が大きく設定され得る状況であっても、矢印αで示すように、目標回生トルクTm1,Tm2が下げて設定される。これにより、矢印βで示すように、前輪20や後輪30の実制動力Fft’,Frr’を下げることができるため、前輪20や後輪30の過度なロックを回避することができ、低μ路における車両11の走行安定性を高めることができる。
[減速走行時のスリップ解消制御(フローチャート)]
図13はスリップ解消制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。図13に示すように、ステップS60では、前輪20と後輪30との双方にスリップが生じているか否かについて判定される。ステップS60において、前輪20と後輪30との双方がスリップしている場合、つまり前輪速度Vftと後輪速度Vrrとの双方が車速Vvから乖離する場合には、ステップS61に進み、後輪30のスリップを解消するスリップ解消制御が開始される。
ステップS61では、スリップ中の後輪30に連結されるモータジェネレータMG2のロータ31の角加速度ω'が検出され、続くステップS62では、スリップ中の後輪30に連結されるモータジェネレータMG2のロータ31の回生トルク(トルク)Tm2’が検出される。つまり、ステップS61では、メインコントローラ50の角加速度検出部70によって、モータジェネレータMG2の回転速度に基づき、ロータに発生する角加速度ω'が算出される。続くステップS62では、メインコントローラ50のトルク検出部71によって、ステータに供給される通電電流等に基づき、ロータに作用する回生トルクTm2’が算出される。
ここで、図14はモータジェネレータMG2の角加速度ω'と回生トルクTm2’との関係を示す線図である。図14に矢印A2で示すように、車両11が乾燥路面等の高μ路を走行する場合、つまり後輪30をロックさせずに走行する場合には、特性線L2aに沿うように、回生トルクTm2’の増加に伴って角加速度ω'が緩やかに上昇する。また、矢印B2,C2,D2で示すように、車両11が凍結路面や圧雪路面等の低μ路を走行する場合、つまり回生トルクTm2’の大きさによって後輪30にロックが生じてしまう場合には、特性線L2b,L2c,L2dに沿うように、回生トルクTm2’が所定値を上回ると角加速度ω'が急速に上昇する。
つまり、低μ路のなかでも摩擦抵抗が小さい場合には、回生トルクTm2’が所定値T4を上回ると、後輪30がロックし始めて角加速度ω'が急速に上昇する。また、低μ路のなかでも摩擦抵抗が中程度である場合には、回生トルクTm2’が所定値T5を上回ると、後輪30がロックし始めて角加速度ω'が急速に上昇する。また、低μ路のなかでも摩擦抵抗が大きい場合には、回生トルクTm2’が所定値T6を上回ると、後輪30がロックし始めて角加速度ω'が急速に上昇する。なお、特性線L2b,L2c,L2dの傾きは、後輪30がロックすることから路面の摩擦抵抗に影響され難く、ほぼ一定の傾きとなっている。また、図示する例では、3つの特性線L2b,L2c,L2dを示しているが、これに限られることはなく、路面の摩擦抵抗に応じて多数の特性線を示すことが可能である。
図13のフローチャートに示すように、ステップS63では、角加速度ω'および回生トルクTm2’に基づき、後輪30のスリップ状態を示す特性線が推定され、続くステップS64では、特性線に基づき、モータジェネレータMG2の目標角加速度Tω'が設定される。以下、目標角加速度設定部72による目標角加速度Tω'の設定手順について説明する。ここで、図15は、図14と同様の線図であり、モータジェネレータMG2の角加速度ω'と回生トルクTm2’との関係を示す線図である。
図15に示すように、角加速度ω'が「A3a」であり、回生トルクTm2’が「T3a」であった場合には、特性線L2bに沿って後輪30がロックしていると考えられる。このため、後輪30のスリップを解消するためには、特性線L2aに達するまで負側の角加速度ω'を下げる必要がある。つまり、目標角加速度Tω'を「A3b」に設定し、矢印X1で示すように、回生トルクTm2’を下げることにより、後輪30のスリップを解消することができる。また、例えば、角加速度ω'が「A4a」であり、回生トルクTm2’が「T4a」であった場合には、破線で示した特性線L2eに沿って後輪30がロックしていると考えられる。この場合には、目標角加速度Tω'を「A2b」に設定し、矢印X2で示すように、回生トルクTm2’を下げることにより、後輪30のスリップを解消することができる。
このように、後輪30のスリップを解消するための目標角加速度Tω'が設定されると、目標トルク設定部73は以下の手順に沿って目標回生トルク(目標トルク)Tm2を算出する。つまり、図13のフローチャートに示すように、ステップS65に進み、前述の式(3)に基づき、モータジェネレータMG2の目標回生トルクTm2が算出される。つまり、後輪回転系36のイナーシャIに目標角加速度Tω'を乗算することにより、後輪30のスリップを解消するための目標回生トルクTm2が算出される。すなわち、前述した図15において、角加速度ω'が「A3a」であり、かつ回生トルクTm2’が「T3a」であった場合には、目標回生トルクTm2として「T3b」が算出され、角加速度ω'が「A4a」であり、かつ回生トルクTm2’が「T4a」であった場合には、目標回生トルクTm2として「T4b」が算出される。
図13のフローチャートに示すように、ステップS65において、モータジェネレータMG2の目標回生トルクTm2が算出されると、ステップS66に進み、目標回生トルクTm2に基づきモータジェネレータMG2が制御される。これにより、モータジェネレータMG2の回生トルクTm2’を下げて後輪30のロックを解消することができるため、後輪速度Vrrを車速Vvに一致させることができ、後輪速度Vrrをそのまま車速Vvとして設定することができる。これにより、車速Vvを精度良く検出することができるため、後述する前輪スリップ制御および後輪スリップ制御を適切に実行することができる。
[減速走行時の前輪スリップ制御および後輪スリップ制御(タイミングチャート)]
続いて、スリップ解消制御を踏まえたスリップ制御の実行状況について詳細に説明する。図16は前輪スリップ制御および後輪スリップ制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。なお、図16のタイミングチャートに示した例では、前後の制動力分配比が50:50に設定されており、前輪要求制動力Fftと後輪要求制動力Frrとは互いに等しい値になっている。また、図16のタイミングチャートにおいては、トルク、制動力および速度等の推移を明確にする観点から、線が互いに重なる場合であってもこれらの線を若干ずらして記載している。
図16に時刻t1で示すように、アクセルペダル60の踏み込みが解除されてアクセル開度Accが減少すると(符号a1)、前輪要求制動力Fftおよび後輪要求制動力Frrが増加するとともに(符号b1)、モータジェネレータMG1,MG2の目標回生トルクTm1,Tm2が増加する(符号c1)。これにより、前輪20の実制動力Fft’は前輪要求制動力Fftに沿うように推移し、後輪30の実制動力Frr’は後輪要求制動力Frrに沿うように推移する(符号b1)。なお、図16に示した破線αは、アクセル操作に連動する要求制動力Fft,Frrを得るために必要なモータトルクを示している。
図16に時刻t2で示すように、車両11が凍結路面等の低μ路に進入すると、前輪20および後輪30がロックし始めることから、前輪速度Vftおよび後輪速度Vrrが車速Vvから離れて低下し始める(符号d1)。続いて、時刻t3で示すように、前輪速度Vftおよび後輪速度Vrrが車速Vvから離れて更に低下すると(符号d2)、スリップ率SLft,SLrrの絶対値が所定の閾値SL3を上回ることから(符号e1)、前輪20のロックを抑制する前輪スリップ制御が実行され(符号f1)、後輪30のロックを抑制する後輪スリップ制御が実行される(符号g1)。このように、前輪スリップ制御および後輪スリップ制御が実行されると、モータジェネレータMG1,MG2の目標回生トルクTm1,Tm2が下げられ(符号c2)、前輪20および後輪30の実制動力Fft’,Frr’が下げられる(符号b2)。
ここで、前輪20を駆動するモータジェネレータMG1については、前輪スリップ制御が実行されることから、前輪20のスリップ率SLftが目標スリップ率Sx2(例えば-10%)を維持するように(符号e2)、モータジェネレータMG1の目標回生トルクTm1が制御される(符号c3)。これに対し、後輪30を駆動するモータジェネレータMG2については、前輪20と後輪30との双方がロックする状況であることから、前述したスリップ解消制御が実行される。つまり、後輪30のロックを解消するための目標回生トルクTx2が設定され、この目標回生トルクTx2に向けて目標回生トルクTm2が下げられる(符号c4)。これにより、図16に時刻t4で示すように、後輪30のロックを解消することができ(符号e3)、後輪速度Vrrを車速Vvに一致させることができる(符号d3)。
このように、スリップ解消制御によって後輪速度Vrrを車速Vvに一致させた場合には、メインコントローラ50によって後輪速度Vrrが車速Vvとして特定され、前輪スリップ制御を実行する際の車速Vvとして用いられる。これにより、精度良く検出された車速Vvを前輪スリップ制御に用いることができるため、前輪スリップ制御を適切に実行することができる。
また、スリップ解消制御によって後輪速度Vrrを車速Vvに一致させた後には、前述の式(4)に基づき、モータジェネレータMG2の目標回生トルクTm2が設定される。つまり、後輪30のグリップ状態が維持される目標回生トルクTm2を設定するため、モータジェネレータMG1の目標回生トルクTm1に対して所定係数k1(例えば0.9)を乗算することにより、モータジェネレータMG2の目標回生トルクTm2が算出される。なお、本実施形態においては、前輪20の目標スリップ率Sx2が「-10%」であることから、後輪30のスリップ率SLrrを「0%」に向けて制御するため、所定係数k1として「0.9」が用いられている。
これにより、後輪30のスリップ率SLrrが「0%」を維持するように、後輪30を駆動するモータジェネレータMG2を制御することができるため、精度良く車速Vvを検出し続けることができる。このように、車速Vvを精度良く検出し続けることができるため、前輪スリップ制御を適切に実行することができ、車両11の走行安定性を高めることができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、車両用制御装置10が適用される車両11として、エンジンを備えていない電気自動車を例示しているが、これに限られることはなく、動力源としてエンジンを備えたハイブリッド車両であっても良く、動力源としてエンジンのみを備えた車両であっても良い。また、前述の説明では、前輪スリップ制御、後輪スリップ制御およびスリップ解消制御を実行しているが、これに限られることはなく、前輪スリップ制御や後輪スリップ制御を実行せずにスリップ解消制御を実行しても良い。つまり、スリップ制御を実行せずにスリップ解消制御を実行した場合であっても、車速Vvを精度良く検出することが可能である。また、車両用制御装置10が適用される車両としては、前述した全輪駆動車両に限られることはなく、前輪駆動車両や後輪駆動車両であっても良い。
前述の説明では、前後一方の第1駆動輪を前輪20とし、前後他方の第2駆動輪を後輪30とすることにより、スリップ解除制御においては、モータジェネレータMG2を制御して後輪30のスリップを解消させているが、これに限られることはない。つまり、前輪20に対してスリップ解除制御を実行することにより、モータジェネレータMG1を制御して前輪20のスリップを解消させても良い。これにより、前輪速度Vftを車速Vvに一致させることができ、前輪速度Vftをそのまま車速Vvとして用いることができる。この場合には、前輪20がスリップした状態のもとで、ロータ21の角加速度ω'およびトルクTm1’が検出され、これら角加速度ω'およびトルクTm1’に基づき前輪20のスリップを解消する目標角加速度Tω'が設定される。そして、前輪回転系26のイナーシャIに目標角加速度Tω'を乗じて目標トルクTm1が算出され、この目標トルクTm1に基づきモータジェネレータMG1が制御される。このように、前輪20に対してスリップ解除制御を実行する場合には、後輪30が第1駆動輪として機能し、モータジェネレータMG2が第1モータとして機能し、前輪20が駆動輪や第2駆動輪として機能し、モータジェネレータMG1が動力源、モータあるいは第2モータとして機能する。
また、モータジェネレータMG2のロータ31に発生する角加速度を算出する際には、ロータ回転センサ67によって検出されるロータ31の回転速度を用いて算出することが可能であるが、これに限られることはなく、例えば、後輪回転系36の回転速度である後輪速度Vrrを用いてロータ31に発生する角加速度を算出しても良い。同様に、モータジェネレータMG1のロータ21に発生する角加速度を算出する際には、ロータ回転センサ66によって検出されるロータ21の回転速度を用いて算出することが可能であるが、これに限られることはなく、例えば、前輪回転系26の回転速度である前輪速度Vftを用いてロータ21に発生する角加速度を算出しても良い。
図示する車両11は、1つのモータジェネレータMG1によって2つの前輪20を駆動し、1つのモータジェネレータMG2によって2つの後輪30を駆動しているが、これに限られることはない。例えば、4つのモータジェネレータを搭載することにより、1つのモータジェネレータによって1つの車輪を駆動しても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ50を、前輪スリップ判定部55、前輪スリップ制御部56、後輪スリップ判定部57、後輪スリップ制御部58、角加速度検出部70、トルク検出部71、目標角加速度設定部72、目標トルク設定部73および車速検出部74として機能させているが、これに限られることはない。例えば、他のコントローラや複数のコントローラを用いて、前輪スリップ判定部55、前輪スリップ制御部56、後輪スリップ判定部57、後輪スリップ制御部58、角加速度検出部70、トルク検出部71、目標角加速度設定部72、目標トルク設定部73および車速検出部74を構成しても良い。
前述の説明では、スリップ率SLft,SLrrに基づきスリップ制御を実行しているが、これに限られることはない。例えば、前輪20のスリップ状態を示す数値として、車速Vvと前輪速度Vftとの回転速度差を用いても良く、後輪30のスリップ状態を示す数値として、車速Vvと後輪速度Vrrとの回転速度差を用いても良い。また、前述の説明では、前輪スリップ制御と後輪スリップ制御との双方において、スリップ率SLft,SLrrを共通の目標スリップ率Sx1,Sx2に制御しているが、これに限られることはなく、前輪スリップ制御で用いる目標スリップ率と後輪スリップ制御で用いる目標スリップ率とを互いに相違させても良い。
前述の説明では、スリップ制御の実行条件として、スリップ率SLft,SLrrの絶対値が所定の閾値SL1,SL3を上回ることを例示し、スリップ制御の停止条件として、スリップ率SLft,SLrrの絶対値が所定の閾値SL2,SL4を下回ることを例示しているが、これに限られることはない。例えば、加速走行時におけるスリップ制御の実行条件として、アクセル開度Accが所定の閾値を上回り、かつスリップ率SLft,SLrrが所定の閾値SL1を上回ることを採用しても良い。また、加速走行時におけるスリップ制御の停止条件として、アクセル開度Accが所定の閾値を下回ることや、スリップ率SLft,SLrrが所定の閾値SL2を下回ることを採用しても良い。また、スリップ解除制御が行われていない場合には、車両11加速度等から車速Vvを算出しても良く、GPS(Global Positioning System)の位置信号から車速Vvを算出しても良い。