JP7490796B2 - 圧電素子 - Google Patents

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Description

本開示は、圧電積層体及び圧電素子に関する。
優れた圧電性及び強誘電性を有する材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、以下においてPZTという。)が知られている。PZTはその強誘電性を生かし、不揮発性メモリであるFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)メモリに使用されている。さらには近年、MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)技術との融合により、PZT膜を備えたMEMS圧電素子が実用化されつつある。PZT膜は、基板上に下部電極、圧電膜、上部電極とを備えた圧電素子における圧電膜として適用される。この圧電素子は、インクジェットヘッド(アクチュエータ)、マイクロミラーデバイス、角速度センサ、ジャイロセンサ、超音波素子(PMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)及び振動発電デバイスなど様々なデバイスへと展開されている。
圧電膜を備えた圧電素子は、駆動のために印加される電界によって圧電膜の圧電特性が劣化してしまうという問題がある。特開2006-86223号公報においては、電界によって生じる圧電特性の劣化を抑制するために電極と圧電膜との間に金属酸化物層を備えることが記載されている。特開2006-86223号公報においては、圧電特性の劣化は、圧電素子に水滴が付着した状態で、圧電素子に電界印加された場合、水分が電解されてイオンの形で圧電膜中に侵入して圧電層を構成する材料を還元し、酸素空孔を発生させるためであると記載されている。そして、圧電膜における酸素空孔を圧電膜に隣接して設けた金属酸化物層中の酸素によって補償することで、圧電特性の劣化を抑制している。
PZTのようなPbを含有するペロブスカイト型酸化物から構成される圧電膜においては、成膜中にPbが抜けやすいために、化学量論比よりも大きいPb組成比で成膜することが一般的である。そして、成膜された圧電膜においては、結晶粒界間に余剰Pb成分として、PbOあるいはPbOなどが存在する。Pbはイオン化傾向が高いために外界からの水分の浸入により容易にイオン化され、圧電デバイス駆動時の電界印加によって、イオンマイグレーションが生じやすい。PbのマイグレーションによるPbの電極層への拡散は圧電特性の劣化を引き起こす原因となり、また、絶縁破壊を生じさせる要因ともなる。このPbの電極層への拡散は、上部電極層及び下部電極層のいずれでも生じ得るが、外界により近く、水分が浸入しやすい上部電極層側で顕著に生じる問題である。
特開2006-86223号公報は金属酸化物層を備えることにより、圧電特性の劣化抑制を図っているが、PZT膜におけるPbのマイグレーション及びマイグレーションの抑制については何ら記載されていない。
本開示の技術は上記事情に鑑みてなされたものであり、圧電膜から上部電極層へのPbの拡散を抑制可能な圧電積層体及び圧電素子を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
基板上に、下部電極層と、Pbを含有するペロブスカイト型酸化物層を含む圧電膜と、Inを含有するアモルファス酸化物層とをこの順に備えた圧電積層体。
<2>
アモルファス酸化物層のキャリア密度が、1×1015~1×1022個/cmである、<1>に記載の圧電積層体。
<3>
アモルファス酸化物層が、Ga、Zn、Sn、Cu、Al、Sr、Zr、Ni及びRuのうちの少なくとも1つをさらに含む、<1>又は<2>に記載の圧電積層体。
<4>
<1>から<3>のいずれかに記載の圧電積層体と、
圧電積層体のアモルファス酸化物層上に備えられた上部電極層と、を備えた圧電素子。
本開示の圧電積層体及び圧電素子は、圧電膜から上部電極層へのPbの拡散を抑制可能である。
一実施形態の圧電素子の層構成を示す断面図である。 比較例1について、圧電膜上に形成されたTi層の膜厚方向におけるPb分布を示す図である。 実施例1について、圧電膜上に形成されたアモルファス酸化物層の膜厚方向におけるPb分布を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面においては、視認容易のため、各層の層厚及びそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の層厚及び比率を反映したものではない。
「一実施形態の圧電素子」
図1は、一実施形態の圧電積層体5を備えた圧電素子1の層構成示す断面模式図である。図1に示すように、圧電素子1は、圧電積層体5と上部電極層18と備える。圧電積層体5は、基板11と、基板11上に積層された、下部電極層12、圧電膜15及びアモルファス酸化物層16を備える。すなわち、圧電素子1は、圧電積層体5のアモルファス酸化物層16上に上部電極層18が形成された構成である。
圧電膜15は、Pbを含有するペロブスカイト型酸化物を含む。圧電膜15は、基本的にはPb含有ペロブスカイト型酸化物からなる。但し、圧電膜15はPb含有ペロブスカイト型酸化物の他に不可避不純物を含んでいてもよい。ペロブスカイト型酸化物は、一般にABOで表される。PbはAサイト元素であり、Aサイトの主成分として含まれていることが好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは50mol%以上を占める成分であることを意味する。すなわち、「PbをAサイトの主成分として含有する」とは、Aサイト元素中、50mol%以上の成分がPbであることを意味する。Pbを含有するペロブスカイト型酸化物におけるPb以外のAサイト中の他の元素及びBサイトの元素は特に限定されない。
圧電膜15を構成するPbを含有するペロブスカイト型酸化物としては、例えば、下記一般式(1)で示されるペロブスカイト型酸化物が好ましい。
(Pba1αa2)(Zrb1Tib2βb3)O (1)
式中、Pb及びαはAサイト元素であり、αはPb以外の少なくとも1種の元素である。Zr,Ti及びβはBサイト元素である。a1≧0.5、b1>0、b2>0、b3≧0、であり、(a1+a2):(b1+b2+b3):c=1:1:3が標準であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲内で標準値からずれてもよい。
なお、a2≦0.55であることが好ましい。
また、1.3≧a1≧0.5、1.0≧b1>0、1.0≧b2>0、0.2≧b3≧0であることが好ましく、1.2≧a1≧0.9、0.6≧b1>0.3、0.6≧b2>0.3、0.15≧b3≧0.05であることがより好ましい。
Pbを含有するペロブスカイト型酸化物において、Pb以外のAサイト元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、カドミウム(Cd)、及びビスマス(Bi)などが挙げられる。αはこれらのうちの1つもしくは2以上の組み合わせである。
また、Ti、Zr以外のBサイト元素としては、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、及びアンチモン(Sb)などが挙げられる。βはこれらのうちの1つもしくは2以上の組み合わせである。
圧電膜15の膜厚は特に制限なく、通常200nm以上であり、例えば0.2μm~5μmである。圧電膜15の膜厚は1μm以上であることが好ましい。
基板11としては特に制限なく、シリコン、ガラス、ステンレス鋼、イットリウム安定化ジルコニア、アルミナ、サファイヤ、及びシリコンカーバイド等の基板が挙げられる。基板11としては、シリコン基板の表面にSiO酸化膜が形成された積層基板を用いてもよい。
下部電極層12は、圧電膜15に電圧を加えるための電極である。下部電極層12の主成分としては特に制限なく、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)及び銀(Ag)等の金属または金属酸化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、ITO(Indium Tin Oxide)、LaNiO、及びSRO(SrRuO)等などを用いてもよい。下部電極層12と基板11との間には各種密着層やシード層を含んでいてもよい。
上部電極層18は、上記下部電極層12と対をなし、圧電膜15に電圧を加えるための電極である。上部電極層18の主成分としては特に制限なく、下部電極層12で例示した金属材料の他、クロム(Cr)、亜鉛(Zr)及びタングステン(W)等、並びにこれらの組合せが挙げられる。上部電極層18としては、特には、酸化時にN型半導体特性を示す金属層であることが好ましく、Ti、Zn、Cu、およびWの1種を含むことが好ましい。Inを含有するアモルファス酸化物層はN型キャリアを有するため、酸化時にN型半導体特性を示す金属層が上部電極層であれば、アモルファス酸化物層16と上部電極層18との間でPNジャンクションを生じさせないため好ましい。
ここで、「下部」及び「上部」は鉛直方向における上下を意味するものではなく、圧電膜15を挟んで基板11側に配置される電極を下部電極層12、圧電膜15に関して基板11と反対の側に配置される電極を上部電極層18と称しているに過ぎない。下部電極層12及び上部電極層18は単層に限らず、複数層からなる積層構造であってもよい。
下部電極層12と上部電極層18の層厚は特に制限なく、50nm~300nm程度であることが好ましく、100nm~300nmがより好ましい。
アモルファス酸化物層16はInを含有する。ここで、Inを含有するとは、アモルファス酸化物層中に含まれる金属元素のうち3at%以上Inを含んでいることをいう。Inの含有量は、3at%以上であれば制限はないが、アモルファス酸化物層中に含まれる金属元素中においてInの含有率は5at%以上90at%以下であることが好ましく、30at%以上がより好ましい。アモルファス酸化物とはアモルファスな構造を有する酸化物であることを意味する。アモルファスとは、結晶のような長周期構造を持たない状態を意味し、X線回折パターンにおいてピークを示さず、ブロードなハローパターンを示す。
Pbを含有するペロブスカイト型酸化物層においては、ペロブスカイト構造の粒子間となる粒界に酸化鉛(PbOあるいはPbO)が存在している。酸化鉛は外気から水分が浸入した場合にイオン化しやすく、Pbイオンのマイグレーションが生じ易い。PbイオンのマイグレーションによるPbの電極層への拡散は、圧電性の低下を生じさせ、絶縁破壊を生じさせる可能性がある。特に外気からの水分の影響が大きい上部電極層側でこの問題は顕著である。本実施形態の圧電素子1においては、圧電膜15と上部電極層18との間にInを含有するアモルファス酸化物層16を備えているので、圧電膜15におけるPbイオンのマイグレーションに伴う上部電極層18側へのPb拡散を抑制することができる。すなわち、アモルファス酸化物層16はPb拡散抑制層として機能する。従来技術では金属酸化物層を備えることが記載されているが、アモルファスであることは記載されていない。多結晶体の金属酸化物層である場合、結晶粒界がPbイオンのパスとなり、Pbイオンの金属酸化物層へのマイグレーションを抑制することができず、上部電極層18へのPb拡散を十分に抑制することができない。一方、本実施形態においては、アモルファス酸化物層16は、粒界が形成されていないため、Pbイオンが通過するパスの形成が抑制されている。したがって、Pbイオンのマイグレーションを抑制することができる。また、仮に、Pbイオンがアモルファス酸化物層16に侵入してきた場合であっても、アモルファス酸化物層16が酸化物層であるから、Pbイオンを酸化して酸化鉛にすることによって、イオンマイグレーションを抑制する効果がある。なお、Inの酸化物は導電性が高く、安価であることから、アモルファス酸化物層16を安価に得ることができる。
アモルファス酸化物層16のキャリア密度は、1×1015~1×1022個/cmであることが好ましい。キャリア密度がこの範囲であれば、圧電膜15の導電率と上部電極層18の導電率の間の導電率となり、絶縁性の酸化物層を備えた場合に生じる圧電性の低下を抑制することができる。アモルファス酸化物層16のキャリア密度は、1×1018個/cm以上であることがより好ましく、1×1021個/cm以上であることがさらに好ましい。また、アモルファス酸化物層16のキャリア密度が十分高い場合、例えば、1×1021個/cm以上などである場合、アモルファス酸化物層16を上部電極層18と共に電極層として機能させることができる。また、アモルファス酸化物層16のキャリ密度が十分高い場合、上部電極層18を備えることなく、アモルファス酸化物層16が上部電極層を兼ねるものとすることも可能である。すなわち、図1に示す圧電積層体5自体を圧電素子として機能させることができる。
アモルファス酸化物層16は、In以外に、Ga、Zn、Sn、Cu、Al、Sr、Zr、Ni及びRuのうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。In以外の金属を加えることで、アモルファス酸化物層のキャリア密度を調整することが可能である。アモルファス酸化物層としてはITO、IGZO(InGaZnO4)が好ましく、ITOが特に好ましい。ITOは、液晶ディスプレイの分野で透明電極層として用いられている材料である。ターゲット及び成膜技術が確立されており、膜形成は容易であり、ターゲットも比較的安価であるため、Pbのマイグレーションを抑制可能な圧電積層体を安価に作製することができる。
上記実施形態の圧電素子1、あるいは圧電積層体5は、超音波デバイス、ミラーデバイス、センサー及びメモリなどに適用可能である。
以下、本開示の実施例及び比較例について説明する。まず、比較例、実施例の圧電素子の作製方法について説明する。
(作製方法)
基板として、両面に100nm厚の熱酸化膜付きの6インチSiウエハを用いた。基板上にスパッタにより、下部電極として20nm厚さのTiWと、100nm厚さのIrとを順次積層形成した。さらに、上記のようにして形成したTiW層とIr層とを積層してなる下部電極上に、圧電膜として、NbドープPZT膜をRF(Radio Frequency)スパッタで厚さ2μm成膜した。基板温度を550℃とし、スパッタガスはArに対してO流量比を3%とした。RF電力を1kWとした。
上記のようにしてSiウエハ上に下部電極及び圧電膜を形成した積層基板について、Malvern Panalytical社製のX線回折装置にてX線回折による回折パターンを取得して、ペロブスカイト結晶になっていることを確認した。
その後、ウエハを1インチ(25mm)角にダイシング加工した。以下の比較例及び実施例にはそれぞれ、ダイシング加工により得られた1インチ角の積層基板を用いた。
上記で得た1インチ角の積層基板上に100nm厚みのPb拡散抑制層をスパッタにて形成し、さらに上部電極層として100nm厚みのAu層をスパッタにて形成して圧電素子を得た。比較例1、2及び実施例1から9のPb拡散抑制層は、それぞれ表1に示す材料及び成膜温度で形成した。比較例1においてPb拡散抑制層を金属とし、比較例2においてPb拡散抑制層はInを含む多結晶の金属酸化物とし、実施例1から9においてPb拡散抑制層はInを含む金属酸化物とした。比較例1、2及び実施例1及び4~9において、ITO中のInとSnとの組成比はIn:Sn≒9:1とした。実施例2のIZO(In,Zn,Oから構成される物質)中のInとZnとの組成比はIn:Zn≒9:1とした。実施例3のIGZO(In,Ga,Zn,Oから構成される物質)中のInとGaとZnとの組成比はIn:Ga:Zn≒1:1:1とした。また、実施例4のIGZO中のInとGaとZnとの組成比はIn:Ga:Zn=1:2:1とした。なお、実施例5から9についてはPb拡散抑制層を共スパッタにより形成した。実施例5から9におけるITOに対するCu、Al、SrRuO、Ni、あるいはZrOの割合が9:1となるようには、成膜レートを9:1に制御した。Pb拡散抑制層及び上部電極層の形成時には、直径400μmの円形開口を有するメタルマスクを用い、Pb拡散抑制層及び上部電極層を直径400μmの円形状に形成した。
なお、メタルマスクには直径400μmの円形開口とは別途に7mm角の開口が設けられており、積層基板上には7mm角のXRD測定用にPb拡散抑制層及び上部電極層の積層部を形成した。XRD測定により、Pb拡散抑制層の結晶性を評価して、比較例1、2は多結晶であり、実施例1から9はアモルファスであることを確認した。
(キャリア密度の算出用サンプル)
Pb拡散制御層のキャリア密度の算出用のサンプルは以下のようにして作製した。
1cm角、1mm厚の合成石英基板に各例のPb拡散抑制層を、各例と同一条件で成膜し、AC(Alternating current)ホール測定用電極として、20nmのTi層及び100nmのAu層を順に積層した。ACホール測定用電極は、メタルマスクを用いて、基板の四隅に1mm角サイズで成膜形成した。このようにして形成されたキャリア密度算出用サンプルを用いて、各例におけるPb拡散抑制層のキャリア密度を算出した。各例のPb拡散抑制層についてのキャリア密度は表1に示す通りであった。
上記のようにして作製した実施例および比較例の圧電素子について、以下の通り評価を行った。
<圧電性の経時変化>
比較例1、2及び実施例1~9について、初期誘電率を計測した。なお、誘電率の測定には、アジレント社製インピーダンスアナライザを用いた。
初期誘電率を計測した後に30Vp-pの振幅、1kHzの周波数の交流電圧を印加し、一定の駆動時間駆動させた後に、再度、誘電率(駆動後誘電率)を計測した。駆動時間は72時間、駆動雰囲気は25.2℃、湿度55%環境下とした。
表1に初期誘電率(駆動前誘電率)、駆動後誘電率及び初期誘電率に対する駆動後誘電率の比率を示す。
表1に示す通り、比較例1、2は、駆動後の誘電率が駆動前の誘電率の7割程度まで低下したのに対し、実施例1~9は駆動前と駆動後で誘電率がほとんど変化しなかった。すなわち、実施例1~9の圧電素子においては、圧電性の低下が抑制されている結果が得られた。比較例1、2については、駆動前後で圧電積層体内においてPbイオンのマイグレーションによって生じる膜組成等に変化が生じたためであると考えられる。
<界面Pb拡散距離>
比較例1、2及び実施例1~9についてSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析を行った。Arイオンを照射しAu層側から切削しながら分析を行った。一例として、図2及び図3に、比較例1及び実施例1の圧電素子について、SIMSデータから得られた、Ti層もしくはアモルファス酸化物層の膜厚方向におけるPb分布を示す。比較例1におけるTi層、実施例1におけるアモルファス酸化物層はそれぞれPb拡散抑制層として圧電膜の上層に形成された層である。
図2において、横軸は圧電積層体の厚み方向の位置であり、0が圧電膜とPb拡散防止層の比較例として設けられたTi層との界面である。図2に示すように、比較例1では圧電膜とTi層との界面位置で高いPb強度を示し、70nm以降はPb強度がほぼ一定となる。このPb強度が一定となるPb強度約20はバックグラウンドであり、Pbがほとんどない状態を示す(図3においても同様)。図2から、圧電膜側からTi層中へのPb拡散距離は70nmと求められる。
図3において、図2と同様に、横軸は圧電積層体の厚み方向の位置であり、0が圧電膜とPb拡散防止層(ここではアモルファス酸化物層)との界面である。図3に示すように、実施例1では圧電膜とTi層との界面位置でも、比較例1と比べるとPb強度は十分に小さく、1.4nm位置でほぼ一定となる。すなわち、図3から、圧電膜側からPb拡散防止層内部へのPb拡散距離は1.4nmと求められる。
比較例2、実施例2~9についてもそれぞれSIMSデータから図2、図3と同様のグラフを得てPb拡散距離を求めた。各例についての圧電膜とPb拡散防止層と界面からPb拡散防止層側へのPbの拡散距離を表1に示す。
表1に示す通り、比較例1については圧電膜との界面からTi層中70nmにわたってPb元素の拡散が確認され(図2参照)、比較例2については圧電膜との界面から多結晶ITO層中60nmにわたってPb元素の拡散が確認された。実施例1~9について、拡散距離が約1~2.5nm程度であり、これは分析精度誤差内と考えられ、Pb拡散はほぼ生じていないとみなすことができる。

比較例1、2のPb拡散抑制層として形成したTi層及びITO層は、共に多結晶であるため、結晶粒界が存在し、この結晶粒界をPbイオンが移動してPbの拡散が生じたと考えられる。また、比較例1、2については、駆動時間をさらに長くした場合、Pb拡散距離はさらに長くなり、上部電極に至る可能性がある。実施例1~9のPb拡散抑制層はいずれもアモルファスであるため、結晶粒界が存在せず、移動パスがないことからPbの拡散が抑制されたと考えられる。また、Pb拡散抑制層が酸化物である場合には、Pb拡散抑制層から供給される酸素によりPbイオンがPbOになり電界の影響が及ばなくなるために、イオンマイグレーションが抑制され、Pbの拡散を抑制することができたと考えられる。
2020年9月30日に出願された日本国特許出願2020-166407の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (2)

  1. 基板上に、下部電極層と、Pbを含有するペロブスカイト型酸化物層を含む圧電膜と、Inを含有するアモルファス酸化物層とをこの順に備え、かつ、前記アモルファス酸化物層のキャリア密度が、1×1015~1×1022個/cmである圧電積層体と、
    前記圧電積層体の前記アモルファス酸化物層上に備えられた上部電極層と、を備えた圧電素子
  2. 前記アモルファス酸化物層が、Ga、Zn、Sn、Cu、Al、Sr、Zr、Ni及びRuのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の圧電素子
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