JP7514944B2 - 無機固体電解質含有組成物、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の製造方法 - Google Patents
無機固体電解質含有組成物、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の製造方法 Download PDFInfo
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Description
全固体二次電池の構成層を形成する物質として、上述の無機固体電解質等を含有する全固体二次電池が提案されている。例えば、特許文献1には、全固体二次電池の構成層である正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも1層が、無機固体電解質を含有し、分散剤として、分子量180以上3,000未満であって、かつ、官能基群(I):酸性基、塩基性窒素原子を有する基、チオール基及びヒドロキシ基等から選択される少なくとも1種の官能基と、炭素数8以上のアルキル基または炭素数10以上のアリール基とを有する化合物を含有する全固体二次電池が記載されている。この特許文献1記載の分散剤は、電極活物質および無機固体電解質のいずれかの濃度が高い場合においてもその凝集を抑制し、均一な電極層および固体電解質層を形成することができると記載されている。
また、全固体二次電池ではないものの、正極、負極、セパレータおよび電解質を有する二次電池に用いられる二次電池用電極を製造する材料として、電極活物質と導電材(導電助剤)とイオン性界面活性剤からなる分散剤とを含むスラリー(組成物)が記載されている。この特許文献2記載のスラリーは、導電材の分散性を高めることができると記載されている。
近年の環境負荷の低減、更には製造コスト低減の観点から、構成層形成材料として、固形分濃度を例えば50質量%以上まで高めた高濃度組成物(濃厚スラリー)の使用が検討されている。しかし、組成物の固形分濃度を高めることにより、組成物の特性が大幅に悪化することが一般的である。そのため、高濃度組成物においても、固体粒子材(固体粒子ともいう。)の凝集等を抑制する分散特性に優れ、かつ、表面が平坦な塗膜を形成しやすい特性(表面性)ないし固体粒子間又は固体粒子と基材とを密着させる特性(密着性)といった塗工適性にも優れた構成層形成材料を実現することは容易ではなかった。特許文献1又は2記載の分散剤を用いたとしても分散性及び塗工適性を両立した組成物を十分に実現するのは容易ではなく、更なる検討の必要があった。
更に、電気自動車の高性能化、実用化等の研究開発が急速に進行し、全固体二次電池に求められる電池性能に対する要求が一層高くなっている。このような要求に応えるためには、構成層形成材料の成分、組成により高い特性を発揮させて構成層を形成することが重要である。
<1>
周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、分散剤と、分散媒とを含有し、この分散剤が下記(1)~(3)の規定を満たし、上記分散媒が沸点120℃以上の分散媒を含む、全固体二次電池用の無機固体電解質含有組成物。
(1)SP値が17.0~22.0MPa1/2である。
(2)分子量が10000以下である。
(3)上記分散媒中における、上記無機固体電解質に対する吸着率が2%以上である。
<2>
上記(3)の規定における吸着率が40%以上である、<1>に記載の無機固体電解質含有組成物。
<3>
上記分散媒のSP値と上記分散剤のSP値の差が3.0MPa1/2以下である、<1>又は<2>に記載の無機固体電解質含有組成物。
<4>
上記分散剤が、下記官能基群(a)から選択される官能基を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<官能基群(a)>
ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルファニル基、ヘテロ環基、アミド基、アリール基
<5>
ポリマーバインダーを含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<6>
活物質を含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<7>
導電助剤を含有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<8>
上記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物。
<9>
<1>~<8>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物で構成した層を有する全固体二次電池用シート。
<10>
正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
上記正極活物質層、上記負極活物質層及び上記固体電解質層の少なくとも1つの層が、<1>~<8>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物で形成した層を有する、全固体二次電池。
<11>
<1>~<8>のいずれか1つに記載の無機固体電解質含有組成物の膜を形成することを含む、全固体二次電池用シートの製造方法。
<12>
<11>に記載の製造方法により得られた全固体二次電池用シートを全固体二次電池に組み込むことを含む、全固体二次電池の製造方法。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、特段の断りのない限り、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリレートについても同様である。
本発明において、置換又は無置換を明記していない置換基、連結基等(以下、置換基等という。)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。よって、本発明において、単に、YYY基と記載されている場合であっても、このYYY基は、置換基を有しない態様に加えて、更に置換基を有する態様も包含する。例えば、「アルキル基」という場合、無置換アルキル基と置換アルキル基の両方を含む意味である。これは置換又は無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、例えば後述する置換基Zが挙げられる。
本発明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、本発明ないし本明細書において特段の断りのない限りは、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
本発明において、特定の符号で示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本発明において、特段の断りがない限り、ポリマーは、重合体を意味し、いわゆる高分子化合物と同義である。また、ポリマーバインダーは、ポリマーで構成されたバインダーを意味し、ポリマーそのもの、及びポリマーを含んで形成されたバインダーを包含する。ただし、本発明においては、ポリマーバインダーを構成するポリマーの質量平均分子量は10000超えである。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、分散剤と、分散媒とを含有する、全固体二次電池用の無機固体電解質含有組成物である。この無機固体電解質含有組成物が含有する分散剤は、SP値、分子量及び無機固体電解質に対する吸着率が、後記(1)~(3)の規定を満たし、分散媒は沸点120℃以上の分散媒を含む。
すなわち、本発明の無機固体電解質含有組成物は、上記無機固体電解質と上記分散剤と上記分散媒とを含有していればよく、その含有状態等は特に制限されない。ただし、無機固体電解質含有組成物中において、分散剤は無機固体電解質に上記(3)で規定する吸着率の範囲内で吸着していることが好ましい。
上記分散剤は、少なくとも無機固体電解質含有組成物で形成した層中において、無機固体電解質(更には、共存しうる、活物質、導電助剤)等の固体粒子同士(例えば、無機固体電解質同士、無機固体電解質と活物物質、活物質同士)を結着させる結着剤として、機能することが好ましい。更には、集電体と固体粒子とを結着させる結着剤として機能することも好ましい。無機固体電解質含有組成物中において、分散剤は固体粒子同士を結着させる機能を有していてもいなくてもよい。
上記分散剤は、無機固体電解質等の固体粒子に吸着又は固体粒子間に介在することにより、固体粒子を分散媒中に分散させる機能を有する。そのため、本発明の無機固体電解質含有組成物は、無機固体電解質が分散媒中に分散したスラリーである。これにより、無機固体電解質含有組成物の分散特性及び塗工適性を高めることができる。ここで、分散剤の固体粒子に対する吸着は、物理的吸着だけでなく、化学的吸着(化学結合形成による吸着、電子の授受による吸着等)も含む。また、上記分散剤は、分散媒中に(固体状態で)分散している場合、本発明の効果を損なわない範囲でその一部が分散媒に溶解していてもよい。
集電体上に形成される活物質層を本発明の無機固体電解質含有組成物で形成する態様においては、集電体と活物質層との強固な密着性をも実現することができ、サイクル特性の更なる向上を図ることができる。
すなわち、(1)SP値が17.0~22.0MPa1/2であって、(2)分子量が10000以下であって、かつ、(3)無機固体電解質に対して2%以上の吸着率を示す分散剤は、沸点が120℃以上の分散媒を含む無機固体電解質含有組成物中において、無機固体電解質の周囲に、一端が吸着し、他端に至る分子鎖が拡がった状態で満遍なく存在することができ、分散性を高めることができる。しかも、無機固体電解質含有組成物の調製直後だけでなく、経時後においても無機固体電解質の再凝集若しくは沈降等を抑えることができ高度な分散状態を安定して維持できると考えられる。
このような優れた分散特性を示す本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて構成層を形成すると、構成層の成膜時(例えば、無機固体電解質含有組成物の塗布時、更には乾燥時)においても、無機固体電解質の再凝集物若しくは沈降物等の発生を抑制できる。これにより、構成層中の無機固体電解質同士の接触状態のバラツキを抑えることができる。特に、無機固体電解質含有組成物が活物質等を含有する場合、活物質等の特定の粒子が構成層中で偏在にしにくくなると考えられる。そのため、充放電による空隙の発生又は拡大を抑制でき、全固体二次電池のサイクル特性の改善に資する。
これに加えて、本発明の無機固体電解質含有組成物は、無機固体電解質の粒子間の相互作用を効果的に発現でき、無機固体電解質含有組成物の成膜時には、上記分散特性の改善に作用し、製膜に好適な粘性(流動性)を発現させることができると考えられる。その結果、塗工した無機固体電解質含有組成物が適度に流動(レべリング)して、流動不足又は過剰な流動に起因する、起伏の激しい凹凸の発生を抑制でき(塗工面の表面性に優れ)、しかも固体粒子の界面接触状態が良好(高密着性)になって強固に密着する。そのため、本発明においては、無機固体電解質含有組成物の固形分濃度を従来よりも高く設定でき、上述の優れた分散特性及び塗工適性を実現できる。
このような無機固体電解質含有組成物を用いて構成層を形成すると、空隙発生等を抑制しながらも、固体粒子同士、更には固体粒子と基材(集電体)との密着性が強化され、しかも構成層表面の急峻な凸部への電流集中(固体粒子の劣化)を抑制できる。そのため、充放電を繰り返しても電池特性の大幅な低下を招くことなくサイクル特性に優れた全固体二次電池を実現できると考えられる。
対して、無機固体電解質含有組成物が沸点120℃以上の分散媒を含まない場合には、上記(1)~(3)の規定を満たす分散剤を用いたとしても分散剤を構成する化合物の分散鎖が分散媒中において十分に広がることができず、分散機能が低下してしまう。このため、無機固体電解質同士の凝集を抑制できず、十分な分散特性が得られず、特に、固形分濃度を例えば50質量%以上まで高めた高濃度組成物においては、分散機能の低下が顕著となる。また、沸点120℃以上の分散媒を含まない場合には、塗布後乾燥が急速に生じることにより無機固体電解質の凝集が促進されてしまい、表面性及び密着性(塗工適性)の点でも不十分である。
本発明においては、後記(1)~(3)の規定を満たす分散剤と、沸点120℃以上の分散媒を含む分散媒と無機固体電解質とを含有する組成物とすることにより、分散特性及び塗工適性を効果的に改善できるため、無機固体電解質含有組成物として固形分濃度を従来よりも高く設定した高濃度組成物を調製することができる。例えば、高濃度組成物の固形分濃度の下限値として、50質量%以上に設定することができる。上限値は、100質量%未満であり、例えば、90質量%以下とすることができ、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
本発明において、固形分(固形成分)とは、後述の分散媒以外の成分を指す。
無機固体電解質含有組成物の粘度は、例えば、無機固体電解質含有組成物の固形分濃度、固体粒子若しくは分散剤の種類若しくは含有量、分散媒の種類等、更には分散条件等の、変更若しくは調整により、適宜に設定できる。
(スラリー粘度の測定方法)
無機固体電解質含有組成物の粘度は下記方法により測定される値を採用する。
具体的には、E型粘度計(TV-35、東機産業社製)、標準コーンロータ(1”34’×R24)を用いて、25℃に調整したサンプルカップにサンプル(無機固体電解質含有組成物)1.1mLをアプライして、サンプルカップを本体にセットして、5分間温度が一定になるまで維持した後、測定レンジを「U」に設定して、せん断速度10/s(回転数2.5rpm)で回転開始後1分後に測定して得られた値を粘度とする。
以下、本発明の無機固体電解質含有組成物が含有する成分及び含有しうる成分について説明する。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、無機固体電解質(粒子状である場合、無機固体電解質粒子ともいう。)を含有する。
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンに解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。例えば、無機固体電解質としては、(i)硫化物系無機固体電解質、(ii)酸化物系無機固体電解質、(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質、及び、(iv)水素化物系無機固体電解質が挙げられ、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができる観点から、硫化物系無機固体電解質が好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
La1Mb1Pc1Sd1Ae1 (S1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1~e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1~12:0~5:1:2~12:0~10を満たす。a1は1~9が好ましく、1.5~7.5がより好ましい。b1は0~3が好ましく、0~1がより好ましい。d1は2.5~10が好ましく、3.0~8.5がより好ましい。e1は0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10-6S/cm以上であることが好ましく、5×10-6S/cm以上であることがより好ましく、1×10-5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、1×10-1S/cm以下であることが実際的である。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4); リン酸リチウムの酸素元素の一部を窒素元素で置換したLiPON; LiPOD1(D1は、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
更に、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
ハロゲン化物系無機固体電解質は、ハロゲン原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
ハロゲン化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiCl、LiBr、LiI、ADVANCED MATERIALS,2018,30,1803075に記載のLi3YBr6、Li3YCl6等の化合物が挙げられる。中でも、Li3YBr6、Li3YCl6を好ましい。
水素化物系無機固体電解質は、水素原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
水素化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiBH4、Li4(BH4)3I、3LiBH4-LiCl等が挙げられる。
無機固体電解質の粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散液試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要により日本産業規格(JIS) Z 8828:2013「粒子径解析-動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
固体電解質層を形成する場合、固体電解質層の単位面積(cm2)当たりの無機固体電解質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1~100mg/cm2とすることができる。
ただし、無機固体電解質含有組成物が後述する活物質を含有する場合、無機固体電解質の目付量は、活物質と無機固体電解質との合計量が上記範囲であることが好ましい。
ただし、無機固体電解質含有組成物が後述する活物質を含有する場合、上記の無機固体電解質含有組成物中の無機固体電解質の含有量は、活物質と無機固体電解質との合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、後記(1)~(3)の規定の全てを満たす分散剤を含有している。
上記分散剤は、後述する分散媒中に、無機固体電解質、活物質、導電助剤等の固形粒子(分散質)を分散し、分散状態を安定化できる化学物質(分散作用を示す化学物質)であればよい。本発明の無機固体電解質含有組成物中において無機固体電解質等の固体粒子と併用することにより、無機固体電解質含有組成物(スラリー)の分散特性と塗工適性とを改善できる。
なお、上記分散剤は、後記(1)~(3)の規定を全て満たす限り、ポリマー(重合体であればよく、オリゴマーを含む。)であってもよく、ポリマーでない化合物(重合体でないことを意味し、以下、低分子化合物とも称す。)であってもよい。本発明においては、低分子化合物であることが、無機固体電解質に均一に吸着することができ、無機固体電解質同士の凝集をより効果的に抑制し、無機固体電解質含有組成物の分散特性及び塗工適性をより高めることができる観点から好ましい。
本発明において、分散剤(分散作用を示す化学物質)のSP値は17.0~22.0MPa1/2である。これによって、無機固体電解質等の固体粒子の周囲に分子鎖が広がるようにして分散剤が存在した状態で固体粒子を分散させることができ、無機固体電解質含有組成物の分散特性及び塗工適性を高めることができる。固体粒子の周囲に分子鎖がより広がるようにして分散剤が存在した状態で固体粒子を分散させ、分散特性及び塗工適性をより向上させる観点から、分散剤のSP値は17.0~21.0MPa1/2が好ましく、18.0~20.0MPa1/2がより好ましい。分散剤と分散媒とのSP値の差(絶対値)は後述する。
SP値は、分散剤がポリマーである場合は以下(1)及び(2)の算出方法による値とし、分散剤が低分子化合物である場合、下記Hoy法により算出したSP値を単位MPa1/2に換算した値とする。
まず、ポリマーについて、SP値を特定する構成単位を決定する。
すなわち、本発明においては、ポリマーのSP値を算出するに際して、ポリマー(セグメント)が連鎖重合ポリマーである場合、原料化合物に由来する構成成分と同じ構成単位とするが、ポリマーがポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル等の逐次重合(重縮合、重付加若しくは付加縮合)ポリマーである場合、原料化合物に由来する構成成分と異なる単位とする。例えば、逐次重合ポリマーとしてポリウレタンを例に挙げると、SP値を特定する構成単位は次のように規定される。ポリイソシアネート化合物に由来する構成単位としては、ポリイソシアネート化合物に由来する構成成分に対して、1つの-NH-CO-基に-O-基を結合させ、かつ残りの-NH-CO-基を除去した単位(1つのウレタン結合を有する単位)とする。一方、ポリオール化合物に由来する構成単位としては、ポリオール化合物に由来する構成成分に対して、1つの-O-基に-CO-NH-基を結合させ、かつ残りの-O-基を除去した単位(1つのウレタン結合を有する単位)とする。なお、その他の逐次重合ポリマーの場合もポリウレタンと同様に構成単位を決定する。
上記のようにして決定した構成単位と求めたSP値を用いて、下記式から算出する。なお、上記文献に準拠して求めた、構成単位のSP値をSP値(MPa1/2)に換算(例えば、1cal1/2cm-3/2≒2.05J1/2cm-3/2≒2.05MPa1/2)して用いる。
SPp 2=(SP1 2×W1)+(SP2 2×W2)+・・・
式中、SP1、SP2・・・は構成単位のSP値を示し、W1、W2・・・は構成単位の質量分率を示す。
本発明において、構成単位の質量分率は、該当する構成単位に対応する構成成分(この構成分分を導く原料化合物)のポリマー中の質量分率とする。
ポリマーのSP値は、ポリマーの種類又は組成(構成成分の種類及び含有量)等によって、調整できる。
本発明において、分散剤の分子量は10000以下である。これによって、無機固体電解質等の固体粒子の周囲に分散剤が満遍なく存在した状態で固体粒子を分散媒中に分散させることができ、無機固体電解質含有組成物の分散特性及び塗工適性を高めることができる。また、本発明の無機固体電解質含有組成物で形成した層中において、無機固体電解質等の固体粒子同士等を結着させる結着剤として機能させる観点からは、分散剤の分子量は150以上であることが好ましい。
上記分散剤がポリマーである場合、分散剤の分子量とはポリマーの質量平均分子量を意味し、下記方法によって測定される。
上記分散剤の分子量としては、固体粒子の周囲に分散剤がより満遍なく存在した状態で固体粒子を分散媒中に分散させ、分散特性及び塗工適性をより向上させる観点から、150~8000が好ましく、180~6000がより好ましく、200~5000が更に好ましく、230~4000が特に好ましい。分散剤の分子量の上限値は、さらに、2000以下であることも好ましく、1000以下であることもより好ましく、500以下であることも更に好ましい。
本発明において、ポリマー、ポリマー鎖及びマクロモノマーの分子量については、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。その測定法としては、基本として、下記条件1又は条件2(優先)に設定した方法が挙げられる。ただし、ポリマー又はマクロモノマーの種類によっては適宜適切な溶離液を選定して用いればよい。
(条件1)
カラム:TOSOH TSKgel Super AWM-H(商品名、東ソー社製)を2本つなげる
キャリア:10mMLiBr/N-メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
(条件2)
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM-H、TOSOH TSKgel Super HZ4000、TOSOH TSKgel Super HZ2000(いずれも商品名、東ソー社製)をつないだカラムを用いる。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
本発明において、分散剤の吸着率(%)は、無機固体電解質含有組成物中に含有する無機固体電解質及び特定の分散媒を用いて測定した値であり、この分散媒中における、無機固体電解質に対して分散剤が吸着する程度を示す指標である。ここで、分散剤の無機固体電解質に対する吸着は、物理的吸着だけでなく、化学的吸着(化学結合形成による吸着、電子の授受による吸着等)も含む。
無機固体電解質含有組成物が複数種の無機固体電解質を含有する場合、無機固体電解質含有組成物中の無機固体電解質組成(種類及び含有量)と同じ組成を有する無機固体電解質に対する吸着率とする。無機固体電解質含有組成物が特定の分散媒を複数種含有する場合も同様に、無機固体電解質含有組成物中の特定の分散媒(種類及び含有量)と同じ組成を有する分散媒を用いて吸着率を測定する。また、分散剤を複数種用いる場合も、同様に、複数種の分散剤についての吸着率とする。
本発明において、分散剤の吸着率は実施例に記載の方法により算出される値とする。
本発明において、無機固体電解質に対する吸着率は、分散剤の特性(例えば、質量平均分子量)、分散剤が有する官能基の種類若しくは含有量、分散剤の形態(分散媒への溶解量)等により、適宜に設定できる。
無機固体電解質含有組成物が複数種の活物質を含有する場合、特定の分散媒を複数種含有する場合、更に分散剤を複数種用いる場合については、上述の、分散剤の、無機固体電解質に対する吸着率と同様である。本発明において、分散剤の活物質に対する吸着率は、実施例に記載の[分散剤の無機固体電解質に対する吸着率の測定]方法において、無機固体電解質に代えて活物質を用いること以外は同様にして算出される値とする。本発明において、活物質に対する吸着率は、無機固体電解質に対する吸着率と同様にして、適宜に設定できる。
2種以上の分散剤を含有する場合、少なくとも1種の分散剤がこの官能基を含むことが好ましく、すべての分散剤がこの官能基を含むことも好ましい態様の1つである。
分散剤がポリマーである場合、このポリマーの構成成分が下記官能基群(a)から選択される官能基を含むことが好ましい。官能基を有する構成成分は、分散剤の無機固体電解質に対する吸着率を向上させる機能を有し、ポリマーを形成するいずれの構成成分であってもよい。官能基は、ポリマーの主鎖に組み込まれてもよく、側鎖に組み込まれてもよい。側鎖に組み込まれる場合、官能基は、主鎖に直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、特に制限されないが、後述の官能基群(b)において記載する連結基が挙げられる。1の構成成分が有する官能基は1種でも2種以上でもよく、2種以上有する場合は、互いに結合していてもいなくてもよい。
<官能基群(a)>
ヒドロキシ基、アミノ基(-N(RA)2)、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルファニル基、アミド基(-CO-NR-)、ヘテロ環基、アリール基
官能基群(a)に含まれるアミノ基、スルホ基(-SO2(OH))、リン酸基(-OPO(OH)2)、ヘテロ環基、アリール基は、それぞれ、特に制限されないが、後述する置換基Zの対応する基と同義である。ただし、アミノ基におけるRAは水素原子又はアルキル基を示し、RAにおけるアルキル基の炭素数は、1~12がより好ましく、1~6が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。ホスホン酸基(-PO(OR)2)としては、特に制限されないが、例えば、炭素数0~20のホスホン酸基等が挙げられる。アミノ基等が環構造に含まれる場合、ヘテロ環に分類する。アリール基の炭素数は、6~13がより好ましく、6~10が更に好ましい。アミド基及びホスホン酸基におけるRは水素原子又はアルキル基を示し、Rにおけるアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~6が更に好ましい。
ただし、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基及びスルファニル基は、塩を形成していることはない。
分散剤がポリマーである場合、上記官能基を有するポリマー構成成分としては、例えば、カルボキシ基及びアリール基のうちの少なくとも一方を有する構成成分が好ましく挙げられ、スチレン由来の構成成分、及び、無水カルボン酸(好ましくは無水マレイン酸)由来の構成成分における環状酸無水物構造をメタノール、エタノール等のアルコールにより開環して得られる構成成分がより好ましく挙げられる。
分散剤がポリマーである場合、上記官能基を有するポリマー構成成分以外に有していてもよいその他の構成成分としては、炭素-炭素二重結合を有する化合物由来の構成成分が挙げられ、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエン等の炭化水素系化合物のいずれかに由来する構成成分が好ましく挙げられる。
分散剤が低分子化合物である場合、1個以上であることが好ましく、1個であることがより好ましい。なお、ヘテロ環基又はアリール基上に、上記官能基群(a)におけるヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルファニル基又はアミド基を、置換基として直接有する場合は、官能基の数を1個として計算するものとする。例えば、後述の例示化合物C-7においては、化合物中に、フェニル基上にヒドロキシ基を直接有するため、上記官能基の数は1個となる。
上記分散剤がポリマーである場合、上記官能基を有する構成成分の、ポリマー中の含有量は、分散剤の無機固体電解質に対する吸着率を2%以上とすることができれば特に制限されない。
ポリマー中における上記官能基を有する構成成分の含有量は、固体粒子の結着性の点で、0.01~80モル%であることが好ましく、0.01~70モル%であることがより好ましく、0.1~50モル%であることが更に好ましく、0.3~50モル%であることが特に好ましい。含有量の下限値は、5モル%以上又は20モル%以上とすることもできる。
分散剤を2種以上含有する場合、すべての分散剤がそれぞれ、上記の分子中の官能基の数又は官能基を有するポリマー構成成分の含有量を満たしていることが好ましい。
上記(1)~(3)において、RXはアルキル基を示し、RYは無置換のアリール基を示し、A1~A3は上述の官能基群(a)から選択される官能基を示す。
(上記(1)の化合物)
RXとしてのアルキル基は、無置換であってもよく置換基を有していてもよい。RXとしてのアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルケニル基及びハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。RXとしてのアルキル基の炭素数(有していてもよい置換基を含む総炭素数)は、1~20が好ましく、1~16がより好ましく、3~16がさらに好ましく、8~16が特に好ましい。
A1としての上述の官能基群(a)から選択される官能基は、アミノ基(-N(RA)2)、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、アミド基(-CO-NR-)又はアリール基が好ましく、アミノ基、カルボキシ基、アミド基又はアリール基が好ましい。アミノ基におけるRA及びアミド基におけるRは、上述の官能基群(a)におけるRA及びRと同義であり、なかでも、アルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましい。
また、A1がアリール基である場合、このアリール基は無置換であってもよく置換基を有していてもよく、無置換又は置換のフェニル基であることが好ましい。A1としてのアリール基が有していてもよい置換基としては、上述の官能基群(a)から選択される官能基が好ましく、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基又はスルファニル基がより好ましく、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基又はスルファニル基が更に好ましい。
A1は、分散特性及び塗工適性をより向上させる観点から、アリール基であることが好ましく、上述の官能基群(a)から選択される官能基を置換基として有するアリール基であることがより好ましい。
(上記(2)の化合物)
RYとしての無置換のアリール基は、フェニル基であることが好ましい。
A2は上述の官能基群(a)から選択される官能基であり、上記A2に係る記載を適用することができる。
(上記(3)の化合物)
A3としての上述の官能基群(a)から選択される官能基は、カルボキシ基が好ましい。
本発明において、分散剤が分散媒に溶解しているとは、無機固体電解質含有組成物の分散媒に分散剤が溶解していることを意味し、例えば、溶解度測定において溶解度が10質量%以上であることをいう。溶解度の測定方法は下記の通りである。
すなわち、測定対象とする分散剤をガラス瓶内に規定量秤量し、そこへ無機固体電解質含有組成物が含有する分散媒と同種の分散媒100gを添加し、25℃の温度下、ミックスローター上において80rpmの回転速度で24時間攪拌する。こうして得られた24時間攪拌後の混合液の透過率を以下条件により測定する。この試験(透過率測定)を分散剤溶解量(上記規定量)を変更して行い、透過率が99.8%となる上限濃度X(質量%)を分散剤の上記分散媒に対する溶解度とする。
<透過率測定条件>
動的光散乱(DLS)測定
装置:大塚電子製DLS測定装置 DLS-8000
レーザ波長、出力:488nm/100mW
サンプルセル:NMR管
分散剤を2種以上含有する場合、各分散剤の含有量は、上記(合計)含有量を満たす範囲で適宜に設定される。
ポリマーの水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましい。また、このポリマーは、ポリマーを晶析させて乾燥させてもよく、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。
ポリマーは、非晶質であることが好ましい。本発明において、ポリマーが「非晶質」であるとは、典型的には、ガラス転移温度で測定したときに結晶融解に起因する吸熱ピークが見られないことをいう。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、上記分散剤に加えて、ポリマーバインダーを含有していることが、分散特性及び塗工適性をより向上させる観点から好ましい。分散剤とポリマーバインダーを併用することにより、分散剤による分散特性及び塗工適性の向上効果とポリマーバインダーによる塗工適性(密着性)の向上効果との相乗効果を実現することができると考えられる。
本発明の無機固体電解質含有組成物がポリマーバインダーを含有する場合、無機固体電解質含有組成物中において、分子量(質量平均分子量)が10000以下である上記分散剤は、質量平均分子量が10000超えであるポリマーバインダーに比べて無機固体電解質又は活物質の周囲に優先的に存在することができ、吸着すると考えられる。すなわち、組成物中に分散剤とポリマーバインダーとが共存する場合にも、前述の通り、上述の(1)~(3)を満たす分散剤が分散特性及び塗工適性の向上に寄与していると考えられる。一方、ポリマーバインダーは、無機固体電解質又は活物質の周囲に優先的に存在、吸着した分散剤の、更に周囲に存在し、分散性をより高めることにより、分散特性及び塗工適性をより向上させると考えられる。
ポリマーバインダーとしては、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、後記のフッ素系共重合体又はアクリロニトリル重合体からなるポリマーバインダーが好ましく挙げられる。
無機固体電解質含有組成物が複数種の無機固体電解質を含有する場合、無機固体電解質含有組成物中の無機固体電解質組成(種類及び含有量)と同じ組成を有する無機固体電解質に対する吸着率とする。無機固体電解質含有組成物が分散媒を複数種含有する場合も同様に、無機固体電解質含有組成物中の分散媒(種類及び含有量)と同じ組成を有する分散媒を用いて吸着率を測定する。また、バインダーを複数種用いる場合も、同様に、複数種のバインダーについての吸着率とする。
本発明において、バインダーの吸着率は実施例に記載の[分散剤の無機固体電解質に対する吸着率の測定]方法において、分散剤に代えてバインダーを用いること以外は同様にして算出される値とする。
本発明において、無機固体電解質に対する吸着率は、バインダーを形成するポリマーの特性(例えば、構成成分の含有量、質量平均分子量)、ポリマーが有する官能基の種類若しくは含有量、バインダーの形態(分散媒への溶解量)等により、適宜に設定できる。
無機固体電解質含有組成物が複数種の活物質を含有する場合、分散媒を複数種含有する場合、更にバインダーを複数種用いる場合については、上述の、バインダーの、無機固体電解質に対する吸着率と同様である。本発明において、バインダーの活物質に対する吸着率は実施例に記載の[分散剤の無機固体電解質に対する吸着率の測定]方法において、分散剤に代えてバインダーを用い、無機固体電解質に代えて活物質を用いること以外は同様にして算出される値とする。本発明において、活物質に対する吸着率は、無機固体電解質に対する吸着率と同様にして、適宜に設定できる。
フッ素系共重合体としては、フッ化ビニリデン(VDF)構成成分とヘキサフルオロプロピレン(HFP)構成成分とを有する共重合体が好ましく挙げられ、VDF及びHFPと共重合可能な重合性化合物由来の構成成分(他の構成成分ということもある。)を更に有する共重合体を包含する。このような他の構成成分を有しうる点で、便宜上「フッ素系共重合体」と称する。
VDF及びHFPと共重合可能な重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素-炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物が挙げられる。より詳細には、フッ素原子を含む重合性化合物(フッ素含有重合性化合物)、フッ素原子を含まない重合性化合物、後述する官能基群(b)から選択される官能基を有する重合性化合物等が挙げられる。
フッ素系共重合体は、フッ素含有重合性化合物由来の構成成分を有する態様と有さない態様との両態様を包含するが、フッ化ビニリデン(VDF)構成成分とヘキサフルオロプロピレン(HFP)構成成分とを有し、フッ素含有重合性化合物由来の構成成分を有さない態様が好ましい。
フッ素系共重合体を形成してもよいフッ素含有重合性化合物由来の構成成分は、VDF構成成分及びHFP構成成分以外のフッ素含有重合性化合物に由来する構成成分であればよく、特に制限されない。この構成成分を導くフッ素含有重合性化合物は、例えば、炭素-炭素不飽和結合に直接結合し、又は間接的(例えば後述する連結基を介して)に結合するフッ素原子を有する化合物をいう。フッ素含有重合性化合物としては、特に制限されないが、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、モノフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のフッ素化ビニル化合物、トリフルオロメチルビニルエーテル、ペンタフルオロエチルビニルエーテル等のペルフルオロアルキルエーテル化合物等が挙げられる。
また、フッ素含有重合性化合物は、炭素-炭素不飽和結合に直接又は間接的(例えば後述する連結基を介して)に結合する重合鎖を有する重合性化合物(マクロモノマー)を包含する。例えば、上記フッ素含有重合性化合物の少なくとも1つの水素原子を重合鎖で置換した化合物が挙げられる。重合鎖としては、特に制限されず、通常のポリマー成分を適用することができる。例えば、(メタ)アクリル樹脂の鎖、ポリビニル樹脂の鎖、ポリシロキサン鎖、ポリアルキレンエーテル鎖、炭化水素鎖等が挙げられる。重合鎖を有する重合性化合物由来の構成成分を有するフッ素系共重合体の一例を以下に示す。下記共重合体において各構成成分の右下の数字は共重合体中の構成成分の含有量(モル%)を示す。
このようなフッ素系共重合体は、適宜に合成してもよく市販品を用いることもできる。
ポリマーバインダーを構成するフッ素系共重合体は、1種でもよく2種以上であってもよい。
また、フッ素系共重合体において、HFP量に対するVDF量の割合(VDF量/HFP量)は、特に制限されないが、分散特性及び塗工適性の改善、更には集電体密着性の強化の点で、0.5~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
共重合可能な重合性化合物の中でも、フッ素含有重合性化合物若しくはフッ素原子を含まない重合性化合物に由来する構成成分の含有量は、それぞれ、ポリマーバインダーの吸着率若しくは引張破壊ひずみ、固体粒子の結着力等を考慮して、優れた分散特性及び塗工適性を損なわない範囲に、適宜に設定される。フッ素含有重合性化合物に由来する構成成分の含有量は、例えば、フッ素系共重合体を構成する全構成成分中、0~45モル%であることが好ましく、2~40モル%であることがより好ましい。フッ素原子を含まない重合性化合物に由来する構成成分の含有量は、例えば、フッ素系共重合体を構成する全構成成分中、0~30モル%であることが好ましく、1~25モル%であることがより好ましい。
フッ素系共重合体が官能基群(b)から選択される官能基を有する重合性化合物に由来する構成成分(官能基を有する構成成分)を有する場合、その含有量は、ポリマーバインダーの吸着率若しくは引張破壊ひずみ、固体粒子の結着力等を考慮して適宜に決定される。例えば、優れた分散特性及び塗工適性を維持しつつも、固体粒子の結着力、更には集電体との密着性を更に強固なものとすることができる点で、フッ素系共重合体を構成する全構成成分中、0.01~10モル%であることが好ましく、0.01~5モル%であることがより好ましく、0.02~2モル%であることが更に好ましい。
上記官能基は、フッ素系共重合体を形成するいずれの構成成分が有していてもよいが、VDF構成成分、HFP構成成分、及びフッ素原子を含まない重合性化合物由来の構成成分以外の構成成分を有することが好ましい。官能基は、ポリマーの主鎖に組み込まれてもよく、側鎖に組み込まれてもよい。
本発明において、ポリマーの主鎖とは、ポリマーを構成する、それ以外のすべての分子鎖が、主鎖に対して枝分れ鎖若しくはペンダントとみなしうる線状分子鎖をいう。枝分れ鎖若しくはペンダント鎖とみなす分子鎖の質量平均分子量にもよるが、典型的には、ポリマーを構成する分子鎖のうち最長鎖が主鎖となる。ただし、ポリマー末端が有する末端基は主鎖に含まない。また、ポリマーの側鎖とは、主鎖以外の分子鎖をいい、短分子鎖及び長分子鎖を含む。
ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基(-PO(OR)2)、スルファニル基、エーテル結合(-O-)、イミノ基(=NR、-NR-)、エステル結合(-CO-O-)、アミド結合(-CO-NR-)、ウレタン結合(-NR-CO-O-)、ウレア結合(-NR-CO-NR-)、ヘテロ環基、アリール基、無水カルボン酸基、イソシアナート基(-NCO)、アルコキシシリル基
官能基群(b)に含まれるアミノ基、スルホ基、リン酸基、ヘテロ環基、アリール基、アルコキシシリル基は、それぞれ、特に制限されないが、後述する置換基Zの対応する基と同義である。ただし、アミノ基の炭素数は、0~12がより好ましく、0~6が更に好ましく、0~2が特に好ましい。ホスホン酸基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数0~20のホスホン酸基等が挙げられる。ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルファニル基は塩を形成していてもよい。各結合中のRは、水素原子又は置換基を示し、水素原子が好ましい。置換基としては特に制限されず、後述する置換基Zから選択され、アルキル基が好ましい。
無水カルボン酸基の一例として、下記式(2a)で表される基又は式(2b)で表される構成成分が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。各式中、*は結合位置を示す。
官能基をポリマー鎖中に組み込む方法としては、特に制限されず、例えば、官能基群(b)から選択される官能基を有する重合性化合物を共重合可能な重合性化合物として用いる方法、上記官能基を有する(生じる)重合開始剤若しくは連鎖移動剤を用いる方法、高分子反応を利用する方法等が挙げられる。
炭素-炭素不飽和結合としては、特に制限されず、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
炭素-炭素不飽和結合と上記官能基とを連結する連結基は、特に制限されないが、例えば、アルキレン基(炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニレン基(炭素数は2~6が好ましく、2~3がより好ましい)、アリーレン基(炭素数は6~24が好ましく、6~10がより好ましい)、酸素原子、硫黄原子、イミノ基(-NRN-)、カルボニル基、リン酸連結基(-O-P(OH)(O)-O-)、ホスホン酸連結基(-P(OH)(O)-O-)、又はこれらの組み合わせに係る基等が挙げられる。アルキレン基と酸素原子とを組み合わせてポリアルキレンオキシ鎖を形成することもできる。連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子及びイミノ基のうちの少なくとも2種を組み合わせてなる基が好ましく、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、酸素原子及びイミノ基のうちの少なくとも2種を組み合わせてなる基がより好ましく、-CO-O-基又は-CO-N(RN)-基(RNは水素原子、炭素数1~6のアルキル基若しくは炭素数6~10のアリール基を示す。)を含む基が更に好ましく、-CO-O-基又は-CO-N(RN)-基とアルキレン基又はポリアルキレンオキシ鎖とを組み合わせてなる基が特に好ましい。上記連結基は官能基群(b)から選択される官能基以外の基を有していてもよい。連結基を構成する原子の数及び連結原子数は後述する通りである。ただし、連結基を構成するポリアルキレンオキシ鎖については、上記の限りではない。上記官能基以外の基としては、後記置換基Zが挙げられ、例えば、アルキル基又はハロゲン原子等が挙げられる。
本発明において、連結基を構成する原子の数は、1~36であることが好ましく、1~24であることがより好ましく、1~12であることが更に好ましく、1~6であることが特に好ましい。連結基の連結原子数は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。下限としては、1以上である。上記連結原子数とは所定の構造部間を結ぶ最少の原子数をいう。例えば、-CH2-C(=O)-O-の場合、連結基を構成する原子の数は6となるが、連結原子数は3となる。
1の構成成分が有する官能基は1種でも2種以上でもよく、2種以上有する場合は、互いに結合していてもいなくてもよい。
官能基を有する重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
アルキル基(好ましくは炭素数1~20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ペンチル、ヘプチル、1-エチルペンチル、ベンジル、2-エトキシエチル、1-カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル等、本発明においてアルキル基というときには通常シクロアルキル基を含む意味であるが、ここでは別記する。)、アリール基(好ましくは炭素数6~26のアリール基、例えば、フェニル、1-ナフチル、4-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、3-メチルフェニル等)、アラルキル基(好ましくは炭素数7~23のアラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2~20のヘテロ環基で、より好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5又は6員環のヘテロ環基である。ヘテロ環基には芳香族ヘテロ環基及び脂肪族ヘテロ環基を含む。例えば、テトラヒドロピラン環基、テトラヒドロフラン環基、2-ピリジル、4-ピリジル、2-イミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、2-チアゾリル、2-オキサゾリル、ピロリドン基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、3-メチルフェノキシ、4-メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(上記ヘテロ環基に-O-基が結合した基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2-エチルヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6~26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、3-メチルフェノキシカルボニル、4-メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0~20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ(-NH2)、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N-エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20のスルファモイル基、例えば、N,N-ジメチルスルファモイル、N-フェニルスルファモイル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数1~20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ヘキサデカノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル等)、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数1~20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、オクタノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素数7~23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20のカルバモイル基、例えば、N,N-ジメチルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1~20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ等)、ヘテロ環チオ基(上記ヘテロ環基に-S-基が結合した基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数1~20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素数6~42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~20のアルコキシシリル基、例えば、モノメトキシシリル、ジメトキシシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アリールオキシシリル基(好ましくは炭素数6~42のアリールオキシシリル基、例えば、トリフェニルオキシシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素数0~20のリン酸基、例えば、-OP(=O)(RP)2)、ホスホニル基(好ましくは炭素数0~20のホスホニル基、例えば、-P(=O)(RP)2)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数0~20のホスフィニル基、例えば、-P(RP)2)、スルホ基(スルホン酸基)、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。RPは、水素原子又は置換基(好ましくは置換基Zから選択される基)である。
また、これらの置換基Zで挙げた各基は、上記置換基Zが更に置換していてもよい。
上記アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アルキニル基及びアルキニレン基等は、環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよい。
アクリロニトリル重合体としては、構成成分として、アクリロニトリル構成成分を含む限り、単独重合体及び共重合体のいずれであってもよい。アクリロニトリル共重合体である場合、共重合体中におけるアクリロニトリル構成成分の含有量は20~80モル%であることが好ましく、30~75モル%がより好ましく、40~70モル%が更に好ましい。アクリロニトリル構成成分は、メタクリロニトリル構成成分であってもよく、これらの混合成分であってもよい。
アクリロニトリル構成成分との共重合成分としては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物等の(メタ)アクリル酸系化合物、ビニルアルコール、ビニルアセタール、酢酸ビニル、ビニルエステル及びビニルエーテル等のビニル系化合物、スチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエン等の炭化水素系化合物が挙げられる。
これらのなかでも、アクリロニトリル単独重合体が好ましい。
ポリマーバインダーは、特に制限されないが、アルミニウム箔に対する剥離強度が0.1N/mm以上であることが好ましい。これにより、強固な集電体密着性を活物質層に付与することができ、全固体二次電池のサイクル特性の更なる向上に貢献する。集電体密着性及びサイクル特性の更なる改善の点で、フッ素系共重合体の剥離強度は、0.2N/mm以上であることがより好ましく、0.3N/mm以上であることが更に好ましい。上限は、特に限定されないが、例えば、10N/mm以下であることが実際的であり、2.0N/mm以下であることが好ましい。本発明において、剥離強度は、ポリマーバインダーを構成するポリマーの組成を変更すること、ポリマーバインダーの物性を変更すること等によって、適宜に設定できる。
剥離強度は、アルミニウム箔(商品名:A1N30、宝泉社製)上に、ポリマーバインダーを有機溶媒(酪酸ブチル)に溶解させた溶液(固形分濃度:10質量%)を滴下した後に乾燥(温度:100℃、時間:180分)して、厚さ50μmの乾燥膜(幅:10mm、長さ:50mm)を作製して、これを試験片として用いて、測定する。測定方法及び条件は、引っ張り試験機(ZTS-50N、イマダ社製)を用いて、得られた乾燥膜をアルミニウム箔の塗布面に対して角度90°の方向に30mm/sの速度で引き剥がした際の引き剥がし力を測定して、その平均値を剥離強度(単位:N/mm)とする。
ポリマーバインダーを構成するポリマーは、非晶質であることが好ましい。本発明において、ポリマーが「非晶質」であるとは、典型的には、ガラス転移温度で測定したときに結晶融解に起因する吸熱ピークが見られないことをいう。
ポリマーバインダーの平均粒子径は、上記無機固体電解質の平均粒子径と同様にして測定できる。
なお、全固体二次電池の構成層におけるポリマーバインダーの平均粒子径は、例えば、電池を分解してポリマーバインダーを含有する構成層を剥がした後、その構成層について測定を行い、予め測定していたポリマーバインダー以外の粒子の粒子径の測定値を排除することにより、測定することができる。
ポリマーバインダーの平均粒子径は、例えば、分散媒の種類、ポリマー中の構成成分の含有量等により、調整できる。
本発明において、引張破壊ひずみは、フッ素系共重合体の分子量を変更すること等によって、適宜に設定できる。
HFP量が30~40モル%であり、官能基として無水カルボン酸基(好ましくは無水マレイン酸基)の少量(上記含有量)を導入した、引張破壊ひずみが2500~3500%であるフッ素系共重合体であって、ポリマーバインダーの無機固体電解質に対する吸着率を、0%を越え5%未満となるフッ素系共重合体。
ポリマーバインダーの、無機固体電解質含有組成物中の含有量は、特に制限されないが、分散特性及び塗工適性を改善し、更に結着性も示す点で、固形分100質量%において、0.1~10.0質量%であることが好ましく、0.2~5.0質量%であることがより好ましく、0.3~4.0質量%であることが更に好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、上述のポリマーバインダー以外に、組成物中の分散媒に不溶で、粒子状のポリマーバインダー(粒子状バインダー)を含有することも好ましい。この粒子状バインダーの形状は、特に制限されず、偏平状、無定形等であってもよいが、球状若しくは顆粒状が好ましい。粒子状バインダーの平均粒子径は1~1000nmであることが好ましく、10~800nmであることがより好ましく、20~500nmであることが更に好ましく、40~300nmであることが特に好ましい。平均粒子径は上記無機固体電解質の平均粒子径と同様にして測定できる。
この粒子状バインダーは、無機固体電解質に対する吸着率が60%以上であるバインダーが好ましい。吸着率は、ポリマーバインダーと同様にして測定できる。
無機固体電解質含有組成物が粒子状バインダーを含有すると、ポリマーバインダーによる分散特性と塗工適性の改善効果を損なうことなく、界面抵抗の上昇を抑えつつも固体粒子の結着性を強化することができる。その結果、全固体二次電池について、サイクル特性を更に高めることができ、好ましくは更なる低抵抗化を実現することができる。
粒子状バインダーとしては、全固体二次電池に製造に用いられる各種の粒子状バインダーを特に制限されることなく用いることができる。例えば、下記の逐次重合ポリマー又は連鎖重合ポリマーからなる粒子状バインダーが挙げられる。また、特開2015-088486号公報、国際公開第2018/020827号等に記載のバインダーも挙げられる。
逐次重合ポリマーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。連鎖重合ポリマーとしては、特に制限されないが、例えば、フッ素系ポリマー(フッ素系共重合体)、炭化水素系ポリマー、ビニル系ポリマー、(メタ)アクリルポリマー等の連鎖重合ポリマーが挙げられる。
本発明の無機固体電解質含有組成物に含有される分散媒は、使用環境において液状を示す有機化合物であって、組成物中に含有される無機固体電解質等の固形粒子を分散させる分散媒であればよく、例えば、各種有機溶媒が挙げられ、具体的には、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物、アミン化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル化合物等が挙げられる。ただし、本発明の無機固体電解質含有組成物に含有される分散媒は、沸点が120℃以上の分散媒を含む。本発明において沸点とは、分散媒の常圧(1気圧)における沸点を意味する。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、本発明の効果が奏される範囲内で、上記沸点を満たさない分散媒を含有していてもよい。例えば、本発明の無機固体電解質含有組成物は、分散媒中における上記の沸点が120℃以上である分散媒の割合を、70質量%以上とすることができ、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。上限値に特に制限はなく、全ての分散媒を沸点が120℃以上である分散媒とすることもできる。
上記沸点を満たさない分散媒の沸点は、特に制限されないが、90℃以上であることが好ましい。沸点の上限は、上記の沸点が120℃以上である分散媒との関係で適宜決定され、沸点が120℃以上である分散媒の沸点未満の温度とすることができる。
本発明において、分散剤及び分散媒のうち、無機固体電解質等の固体粒子の分散剤として機能しないものを分散媒とする。したがって、無機固体電解質含有組成物が2種以上の分散媒を含有する場合、分散媒の中でも、無機固体電解質含有組成物を調製した際に分散剤として機能しうるものは、分散媒ではなく分散剤に分類する。無機固体電解質含有組成物を調製した際に分散剤として機能するか否かは、一義的ではなく、分散剤との組み合わせにより決定される。
典型的には、無機固体電解質含有組成物において、無機固体電解質、活物質、導電助剤を除き、含有量の最も多い化合物が分散媒となる。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン(DIBK)、イソブチルプロピルケトン、sec-ブチルプロピルケトン、ペンチルプロピルケトン、ブチルプロピルケトンなどが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
脂肪族化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン、パラフィン、ガソリン、ナフサ、ケロシン、灯油、軽油等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ペンタン酸ブチル、ペンタン酸ペンチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸イソブチル、ピバル酸プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸ブチル、ピバル酸イソブチルなどが挙げられる。
分散媒のSP値は、上述のHoy法により算出したSP値を単位MPa1/2に換算した値とする。無機固体電解質含有組成物が2種以上の分散媒を含有する場合、分散媒のSP値は、分散媒全体としてのSP値を意味し、各分散媒のSP値と質量分率との積の総和とする。具体的には、構成成分のSP値に代えて各分散媒のSP値を用いること以外は上述のポリマーのSP値の算出方法と同様にして算出する。
分散媒のSP値(単位を省略する)を以下に、具体的な化合物名の後ろの括弧内に示す。
MIBK(18.4)、ジイソプロピルエーテル(16.8)、ジブチルエーテル(17.9)、ジイソプロピルケトン(17.9)、DIBK(17.9)、酪酸ブチル(18.6)、酢酸ブチル(18.9)、トルエン(18.5)、エチルシクロヘキサン(17.1)、シクロオクタン(18.8)、イソブチルエチルエーテル(15.3)、N-メチルピロリドン(NMP、SP値:25.4)
本発明において、無機固体電解質含有組成物中の、分散媒の含有量は、特に制限されず、上記固形分濃度を満たす範囲に設定される。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有することもできる。活物質としては、以下に説明するが、正極活物質及び負極活物質が挙げられる
本発明において、活物質(正極活物質又は負極活物質)を含有する無機固体電解質含有組成物を電極組成物(正極組成物又は負極組成物)ということがある。
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく電池を分解して、遷移金属酸化物、又は、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P及びBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100モル%)に対して0~30モル%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3~2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、Li2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1~100mg/cm2とすることができる。
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金形成可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、炭素質材料、金属複合酸化物又はリチウム単体が信頼性の点から好ましく用いられる。全固体二次電池の大容量化が可能となる点では、リチウムと合金化可能な負極活物質が好ましい。
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素質材料(ハードカーボンともいう。)と黒鉛系炭素質材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62-22066号公報、特開平2-6856号公報、同3-45473号公報に記載される面間隔又は密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5-90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6-4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
炭素質材料としては、ハードカーボン又は黒鉛が好ましく用いられ、黒鉛がより好ましく用いられる。
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵及び/又は放出できる炭素質材料、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金化可能な負極活物質が好適に挙げられる。
負極活物質、例えば金属酸化物は、チタン元素を含有すること(チタン酸化物)も好ましく挙げられる。具体的には、Li4Ti5O12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(ケイ素元素含有活物質を含有するSi負極、スズ元素を有する活物質を含有するSn負極等)は、炭素負極(黒鉛及びアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
ケイ素元素含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、ランタン等を含むケイ素含有合金(例えば、LaSi2、VSi2、La-Si、Gd-Si、Ni-Si)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi2/Si)、他にも、SnSiO3、SnSiS3等のケイ素元素及びスズ元素を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、全固体二次電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な負極活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
スズ元素を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO2、SnS、SnS2、更には上記ケイ素元素及びスズ元素を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、Li2SnO2を挙げることもできる。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1~100mg/cm2とすることができる。
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li2B4O7、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、B2O3等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、導電助剤を含有していることが好ましい。例えば、負極活物質としてのケイ素原子含有活物質は導電助剤と併用されることが好ましい。
導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を用いてもよい。
本発明において、活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際に周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン(好ましくはLiイオン)の挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
本発明の無機固体電解質含有組成物が導電助剤を含有する場合、含有される導電助剤は、1種でも2種以上でもよい。
無機固体電解質含有組成物が導電助剤を含む場合、無機固体電解質含有組成物中の導電助剤の含有量は、固形分100質量%中、0越え10質量%以下が好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、リチウム塩(支持電解質)を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、特開2015-088486の段落0082~0085記載のリチウム塩が好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物がリチウム塩を含む場合、リチウム塩の含有量は、無機固体電解質100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、上記各成分以外の他の成分として、適宜に、イオン液体、増粘剤、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。イオン液体は、イオン伝導度をより向上させるため含有されるものであり、公知のものを特に制限されることなく用いることができる。また、上述の分散剤、ポリマーバインダーを構成するポリマー以外のポリマー、通常用いられる結着剤等を含有していてもよい。
本発明の無機固体電解質含有組成物は、常法により調製することができる。具体的には、無機固体電解質、分散剤及び分散媒、好ましくは、ポリマーバインダー、導電助剤、更には適宜に、リチウム塩、任意の他の成分を、例えば通常用いる各種の混合機で混合することにより、混合物として、好ましくはスラリーとして、調製することができる。電極組成物の場合は更に活物質を混合する。
混合方法は、特に制限されず、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサー、ブレードミキサー、ロールミル、ニーダー、ディスクミル、自公転式ミキサー、狭ギャップ式分散機等の公知の混合機を用いて行うことができる。
混合条件も、特に制限されない。例えば、自公転ミキサー等の回転数を200~3000rpmとすることがでる。混合雰囲気としては、大気下、乾燥空気下(露点-20℃以下)及び不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)等のいずれでもよい。無機固体電解質は水分と反応しやすいため、混合は、乾燥空気下又は不活性ガス中で行うことが好ましい。
本発明の全固体二次電池用シートは、全固体二次電池の構成層を形成しうるシート状成形体であって、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう。)、電極、又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。本発明において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートという。
本発明において、全固体二次電池用シートを構成する各層は、単層構造であっても複層構造であってもよい。
本発明の全固体二次電池用固体電解質シートは、固体電解質層を有するシートであればよく、固体電解質層が基材上に形成されているシートでも、基材を有さず、固体電解質層から形成されているシートであってもよい。全固体二次電池用固体電解質シートは、固体電解質層の他に他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、保護層(剥離シート)、集電体、コート層等が挙げられる。
本発明の全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、基材上に、本発明の無機固体電解質含有組成物で構成した層、通常固体電解質層と、保護層とをこの順で有するシートが挙げられる。全固体二次電池用固体電解質シートを構成する各層の層厚は、後述する全固体二次電池において説明する各層の層厚と同じである。
構成層中の各成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の無機固体電解質含有組成物の固形分中における各成分の含有量と同義である。ただし、無機固体電解質含有組成物中の分散剤は、層又は電池を作製する過程において少なくとも一部が揮発若しくは蒸発する場合がある。この場合、構成層中の分散剤を除く各成分の含有量が、本発明の無機固体電解質含有組成物の分散媒及び分散剤を除く成分中における各成分の含有量と同義であることが好ましい。
本発明の全固体二次電池用電極シート(単に「電極シート」ともいう。)は、活物質層を有する電極シートであればよく、活物質層が基材(集電体)上に形成されているシートでも、基材を有さず、活物質層から形成されているシートであってもよい。この電極シートは、通常、基材(集電体)及び活物質層を有するシートであるが、基材(集電体)、活物質層及び固体電解質層をこの順に有する態様、並びに、基材(集電体)、活物質層、固体電解質層及び活物質層をこの順に有する態様も含まれる。
電極シートが有する固体電解質層及び活物質層の少なくとも1つは本発明の無機固体電解質含有組成物で形成される。本発明の無機固体電解質含有組成物で形成された固体電解質層又は活物質層中の各成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の無機固体電解質含有組成物(電極組成物)の固形分中における各成分の含有量と同義である。本発明の電極シートを構成する各層の層厚は、後述する全固体二次電池において説明する各層の層厚と同じである。本発明の電極シートは上述の他の層を有してもよい。
なお、固体電解質層又は活物質層が本発明の無機固体電解質含有組成物で形成されない場合、通常の構成層形成材料で形成される。
本発明の全固体二次電池用シートの製造方法は、特に制限されず、本発明の無機固体電解質含有組成物を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。例えば、好ましくは基材若しくは集電体上(他の層を介していてもよい。)に、製膜(塗布乾燥)して無機固体電解質含有組成物からなる層(塗布乾燥層)を形成する方法が挙げられる。これにより、基材若しくは集電体と塗布乾燥層とを有する全固体二次電池用シートを作製することができる。特に、本発明の無機固体電解質含有組成物を集電体上で製膜して全固体二次電池用シートを作製すると、集電体と活物質層との密着を強固にできる。ここで、塗布乾燥層とは、本発明の無機固体電解質含有組成物を塗布し、分散媒を乾燥させることにより形成される層(すなわち、本発明の無機固体電解質含有組成物を用いてなり、本発明の無機固体電解質含有組成物から分散媒を除去した組成からなる層)をいう。活物質層及び塗布乾燥層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば分散媒が残存していてもよく、残存量としては、例えば、各層中、3質量%以下とすることができる。
本発明の全固体二次電池用シートの製造方法において、塗布、乾燥等の各工程については、下記全固体二次電池の製造方法において説明する。
また、本発明の全固体二次電池用シートの製造方法においては、基材、保護層(特に剥離シート)等を剥離することもできる。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置された固体電解質層とを有する。本発明の全固体二次電池は、正極活物質層及び負極活物質層の間に固体電解質層を有するものであれば、それ以外の構成は特に限定されず、例えば全固体二次電池に関する公知の構成を採用できる。好ましい全固体二次電池において、正極活物質層は固体電解質層と反対側の表面に正極集電体が積層されて正極を構成し、負極活物質層は固体電解質層と反対側の表面に負極集電体が積層されて負極を構成している。本発明において、全固体二次電池を構成する各構成層(集電体等を含む。)は単層構造であっても複層構造であってもよい。
負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に制限されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10~1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。
なお、活物質層又は固体電解質層が本発明の無機固体電解質含有組成物で形成されない場合、公知の材料を用いることができる。
正極集電体及び負極集電体は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に制限されないが、1~500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層若しくは部材等を適宜介在若しくは配設してもよい。
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金又は、ステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
全固体二次電池10においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のいずれも本発明の無機固体電解質含有組成物で形成されている。この全固体二次電池10は優れた電池性能を示す。正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する無機固体電解質及び分散剤は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
正極集電体5及び負極集電体1は、それぞれ、上記した通りである。
また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
全固体二次電池は、常法によって、製造できる。具体的には、全固体二次電池は、本発明の無機固体電解質含有組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。以下、詳述する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極組成物)として、正極活物質を含有する無機固体電解質含有組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための無機固体電解質含有組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、負極用材料(負極組成物)として、負極活物質を含有する無機固体電解質含有組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。これを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることもできる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、無機固体電解質含有組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。更に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
更に、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート又は全固体二次電池用負極シート、及び全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。次いで、全固体二次電池用正極シート又は全固体二次電池用負極シートと全固体二次電池用固体電解質シートとを、正極活物質層又は負極活物質層と固体電解質層とを接触させた状態に、重ねて、加圧する。こうして、全固体二次電池用正極シート又は全固体二次電池用負極シートに固体電解質層を転写する。その後、全固体二次電池用固体電解質シートの基材を剥離した固体電解質層と全固体二次電池用負極シート又は全固体二次電池用正極シートとを(固体電解質層に負極活物質層又は正極活物質層を接触させた状態に)重ねて加圧する。こうして、全固体二次電池を製造することができる。この方法における加圧方法及び加圧条件等は、特に制限されず、後述する加圧工程において説明する方法及び加圧条件等を適用できる。
上記の製造方法においては、正極組成物、無機固体電解質含有組成物及び負極組成物のいずれか1つに本発明の無機固体電解質含有組成物を用いればよく、いずれの組成物に本発明の無機固体電解質含有組成物を用いることもできる。
本発明の無機固体電解質含有組成物以外の組成物で固体電解質層又は活物質層を形成する場合、その材料としては、通常用いられる組成物等が挙げられる。また、全固体二次電池の製造時に負極活物質層を形成せずに、後述する初期化若しくは使用時の充電で負極集電体に蓄積した、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンを電子と結合させて、金属として負極集電体等の上に析出させることにより、負極活物質層を形成することもできる。
無機固体電解質含有組成物の塗布方法は特に制限されず、適宜に選択できる。例えば、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート塗布、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布等の湿式塗布法が挙げられる。
このとき、無機固体電解質含有組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理(加熱処理)を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は、分散媒を除去できる限り特に限定されず、分散媒の沸点等に応じて適宜に設定される。例えば、乾燥温度の下限は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を除去し、固体状態(塗布乾燥層)にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な塗工適性(密着性)と、非加圧でも良好なイオン伝導度を得ることができる。
上記のようにして本発明の無機固体電解質含有組成物を塗布乾燥すると、接触状態のバラツキを抑えて固体粒子を結着させることができ、しかも表面が平坦な塗布乾燥層を形成することができる。
また、塗布した無機固体電解質含有組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては特に制限されず、一般的には30~300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。なお、分散剤又はポリマーバインダーを構成するポリマーのガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。ただし、一般的にはこのポリマーの融点を越えない温度である。
加圧は塗布溶媒又は分散媒を予め乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布してもよいし、塗布乾燥プレスを同時及び/又は逐次行ってもよい。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積又は膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は特に制限されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を解放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に制限はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源などが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
引張破壊ひずみ及び質量平均分子量は、上述の方法により測定した値である。
下記化学式に示すポリマーバインダーを以下のようにして合成した。
フッ素系共重合体B-1を合成して、このフッ素系共重合体からなるバインダー溶液B-1(濃度10質量%)を調製した。
具体的には、オートクレーブにイオン交換水200質量部、フッ化ビニリデン126質量部、ヘキサフルオロプロピレン74質量部を加え、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート1質量部を加え、30℃で24時間撹拌した。重合完了後、沈殿物をろ過し、100℃で10時間乾燥することでポリマー(バインダー)B-1を得た。得られたポリマーはランダム共重合体であり、その質量平均分子量は70,000、引張破壊ひずみは3000%であった。得られたポリマーB-1を表に示す分散媒(酪酸ブチル又はヘプタン)に溶解して、バインダー溶液B-1を得た。
アクリルニトリルホモポリマーB-2を合成して、このアクリロニトリルホモポリマーからなるバインダーB-2溶液(濃度10質量%)を調製した。
具体的には、100mLメスフラスコに、アクリロニトリル(東京化成工業社製)30.0g及び重合開始剤V-601(商品名、富士フイルム和光純薬社製)0.36gを加え、酪酸ブチル36gに溶解してモノマー溶液を調製した。300mL3つ口フラスコに酪酸ブチル18gを加え80℃で撹拌したところへ、上記モノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃に昇温し、2時間撹拌してポリマーB-2を合成し、ポリマーB-2からなるバインダー溶液B-2(濃度10質量%)を得た。質量平均分子量は68,000であった。
また、ポリマーB-1の無機固体電解質に対する吸着率は、分散媒が酪酸ブチルである場合は0%であり、ポリマーB-2の無機固体電解質に対する吸着率は、分散媒が酪酸ブチルである場合は18%であった。
なお、ポリマーバインダーの無機固体電解質に対する吸着率は、後述の[分散剤の無機固体電解質に対する吸着率の測定]において、分散剤に代えてバインダーを用いた以外は同様にして測定した。
[合成例A]
硫化物系無機固体電解質は、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231-235、及び、A.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872-873の非特許文献を参考にして合成した。
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点-70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(Li2S、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g及び五硫化二リン(P2S5、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。Li2S及びP2S5の混合比は、モル比でLi2S:P2S5=75:25とした。
次いで、ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP-7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃で、回転数510rpmで36時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li-P-S系ガラス、以下、LPSと表記することがある。)6.20gを得た。Li-P-S系ガラスの粒子径は4μmであった。
[合成例2-1:分散剤C-2(C-2a、C-2b)の合成]
100mLメスフラスコに、スチレン(東京化成工業社製)5.4g、アクリル酸ドデシル(東京化成工業社製)28.0g、無水マレイン酸(東京化成工業社製)0.5g及び重合開始剤V-601(商品名、富士フイルム和光純薬社製)を加え、酪酸ブチル36gに溶解してモノマー溶液を調製した。300mL3つ口フラスコに酪酸ブチル18gを加え80℃で撹拌したところへ、上記モノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃に昇温し、2時間撹拌して分散剤C-2(C-2a、C-2b)を合成した。
なお、重合開始剤V-601の添加量は、分散剤C-2aの合成においては3.6g、分散剤C-2bの合成においては5.0gとした。
ポリマーバインダーの合成例1-2(アクリロニトリルホモポリマーの合成)において、重合開始剤V-601の量を3.6gに変更した以外は合成例1-2と同様にして、分散剤C-3を合成した。
ポリマーバインダーの合成例1-2(アクリロニトリルホモポリマーの合成)において、モノマー成分をアクリロニトリル10.1g及びスチレン19.9g、重合開始剤V-601の量を3.6gに変更した以外は合成例1-2と同様にして、分散剤C-11を合成した。
<無機固体電解質含有組成物(スラリー)の調製>
自公転ミキサー(ARE-310、シンキー社製)用の容器に、上記合成例Aで合成したLPSを2.8g、上記で調製したバインダー溶液を0.08g(固形分質量)、分散剤を0.03g及び、組成物中における分散媒の含有量が50質量%となるように表に示す分散媒を投入した。その後に、この容器をシンキー社製の自公転ミキサーARE-310(商品名)にセットした。25℃、回転数2000rpmの条件で5分間混合して、無機固体電解質含有組成物(スラリー)S-1~S-21をそれぞれ調製した。
各成分の組成物中の含有量は、分散媒を除く成分の合計含有量100質量%中、LPS96質量%、バインダー3質量%及び分散剤1質量%であった。なお、組成物S-12は、LPSに代えてLLZ(Li7La3Zr2O12、豊島製作所社製)2.8gを用いて調製した。また、組成物S-1は、分散剤を使用しないこと以外は同様にして、組成物S-15は、バインダーを使用しないこと以外は同様にして調製した。組成物S-15において、分散媒を除く成分の合計含有量100質量%中、LPS98.9質量%及び分散剤1.1質量%であった。
自公転ミキサー(ARE-310、シンキー社製)用の容器に、上記合成例Aで合成したLPS2.8g、バインダー溶液を0.16g(固形分質量)、分散剤を0.16g、および、正極組成物中における分散媒の含有量が50質量%となるようにして表に示す分散媒を投入した。その後に、この容器をシンキー社製自公転ミキサーARE-310(商品名)にセットし、温度25℃、回転数2000rpmで2分間混合した。その後、この容器に、正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC、アルドリッチ社製)を13.2g、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)を0.32g投入し、自公転ミキサーARE-310にセットし、25℃、回転数2000rpm、2分間混合し、正極組成物(スラリー)P-1~P-18をそれぞれ調製した。
各成分の組成物中の含有量は、分散媒を除く成分の合計含有量100質量%中、LPS17質量%、NMC79質量%、バインダー1質量%、AB2質量%及び分散剤1質量%であった。なお、組成物P-10は、LPSに代えてLLZ(Li7La3Zr2O12、豊島製作所社製)2.8gを用いて調製した。また、組成物P-1は、分散剤を使用しないこと以外は同様にして、組成物P-13は、バインダーを使用しないこと以外は同様にして調製した。組成物P-13において、分散媒を除く成分の合計含有量100質量%中、LPS17質量%、NMC80質量%、AB2質量%及び分散剤1質量%であった。
自公転ミキサー(ARE-310、シンキー社製)用の容器に、上記合成例Aで合成したLPS2.8g、バインダー溶液0.08g(固形分質量)、分散剤を0.08g及び組成物中における分散媒の含有量が50質量%となるように表に示す分散媒を投入した。その後に、この容器をシンキー社製自公転ミキサーARE-310(商品名)にセットし、25℃、回転数2000rpmで2分間混合した。その後、負極活物質としてケイ素(Si、Aldrich社製)3.53g、導電助剤としてVGCF(商品名、カーボンナノチューブ、昭和電工社製)0.27gを投入し、同様に自公転ミキサーARE-310(商品名)にセットして、25℃、回転数2000rpmで2分間混合して、負極組成物(スラリー)N-1~N-8をそれぞれ調整した。
各成分の組成物中の含有量は、分散媒を除く成分の合計含有量100質量%中、LPS41質量%、Si52質量%、バインダー1質量%、VGCF4質量%及び分散剤1質量%であった。なお、組成物N-5~N-8は、ケイ素に代えて黒鉛(Gr、宝泉社製)3.53gを用いて調製した。
なお、No.S-4、S-7~S-15、S-18、S-19、S-21、P-6~P-13、P-15~P-18、N-3、N-4、N-7及びN-8が本発明の無機固体電解質含有組成物であり、No.S-1~S-3、S-5、S-6、S-16、S-17、S-20、P-1~P-5、P-14、N-1、N-2、N-5及びN-6が比較のための無機固体電解質含有組成物である。
表1に示す各無機固体電解質含有組成物の調製に用いた、無機固体電解質、分散剤及び分散媒を用いて、吸着率を測定した。
すなわち、上記で作製した分散剤を分散媒に溶解させた濃度1質量%の分散剤溶液を調製した。この分散剤溶液中の分散剤と無機固体電解質との質量比が42:1となる割合で、分散剤溶液と無機固体電解質とを15mLのバイアル瓶に入れ、ミックスローターにより、室温(25℃)下、回転数80rpmで1時間撹拌した後に静置した。固液分離して得た上澄液を孔径1μmのフィルターでろ過し、得られたろ液全量を乾固して、ろ液中に残存している分散剤の質量(無機固体電解質に吸着しなかった分散剤の質量)WAを測定した。この質量WAと、測定に用いた分散剤溶液中に含まれる分散剤の質量WBから下記式により、分散剤の無機固体電解質に対する吸着率を算出した。
分散剤の吸着率は、上記測定を2回行って得られた吸着率の平均値とする。
吸着率(%)=[(WB-WA)/WB]×100
なお、成膜した固体電解質層から取り出した無機固体電解質及び分散剤、無機固体電解質含有組成物の調製に使用した分散媒を用いて、吸着率を測定したところ同様の値が得られた。
LPS:合成例Aで合成したLPS
LLZ:Li7La3Zr2O12
NMC:LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2
Si:ケイ素
Gr:黒鉛
バインダーB-1及びB-2:上記合成例で合成したポリマーバインダーB-1及びB-2
分散剤C-1~C-13及びC-21:下記分散剤C-1~C-13及びC-21。ただし、C-2(C-2a、C-2b)、C-3及びC-11は、上記合成例で合成した分散剤を意味する。また、これらの分散剤の組成物を構成する分散媒に対する溶解度を、前述に記載の透過率の測定により求めたところ、いずれも10質量%以上であった。
分散媒の沸点は、それぞれ、酪酸ブチルが164℃、ヘプタンが98℃
上記で得られた各無機固体電解質含有組成物S-1~S-21を調製し1時間後、厚み20μmのアルミニウム箔上に、ベーカー式アプリケーター(商品名:SA-201、テスター産業社製)を用いて塗布し、110℃で2時間加熱して、無機固体電解質含有組成物を乾燥(分散媒を除去)させた。その後、ヒートプレス機を用いて、25℃で10MPaの圧力で10秒間、乾燥させた無機固体電解質含有組成物を加圧して、全固体二次電池用固体電解質シートS-1~S-21をそれぞれ作製した。固体電解質層の膜厚は50μmであった。
上記で得られた各正極組成物P-1~P-18を調製し1時間後、厚み20μmのアルミニウム箔上にベーカー式アプリケーター(商品名:SA-201)を用いて塗布し、110℃で1時間加熱して、正極組成物を乾燥(分散媒を除去)した。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた正極組成物を25℃で加圧(10MPa、1分)して、膜厚100μmの正極活物質層を有する全固体二次電池用正極シートP-1~P-18をそれぞれ作製した。
上記で得られた各負極組成物N-1~N-8を調製し1時間後、厚み20μmの銅箔上に、ベーカー式アプリケーター(商品名:SA-201)を用いて塗布し、110℃で1時間加熱し、その後、真空乾燥機AVO-200NS(商品名、アズワン社製)にて110℃2時間乾燥加熱して、負極組成物を乾燥(分散媒を除去)させた。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた負極組成物を25℃で加圧(10MPa、1分)して、膜厚70μmの負極活物質層を有する全固体二次電池用負極シートN-1~N-8をそれぞれ作製した。
<評価1:分散特性(分散性)>
下記分散性試験においては、上記各シートの製造方法において基材上に塗布する際の組成物をサンプリングして、行った。
サンプリングした各組成物(スラリー)を粒度測定器(グラインドメーター)232/III型(商品名、アズワン社製)の溝に垂らし、スクレーパーで掻き取った後に現れた線の位置を目盛りで読み取った値を凝集サイズXとした。一方、粘度を300cPに調整した組成物の凝集サイズX0を、上記凝集サイズXと同様にして、測定した。得られた凝集サイズX及びX0を用いて、凝集サイズ比[X/X0]を算出した。
なお、粘度300cPの組成物は、サンプリングした各組成物(スラリー)に対して、分散媒以外の成分の配合比をそのままにしながら、分散媒の量を調節することにより調製した。粘度は、前述の通り、E型粘度計を用いて測定した値である。
この凝集サイズ比[X/X0]が下記評価基準のいずれに含まれるかにより、組成物の分散性として固体粒子の凝集しやすさを評価した。
本試験において、凝集サイズ比[X/X0]が小さいほど、固体粒子が凝集ないし沈降しにくく、分散性に優れることを示し、評価基準「F」以上が合格レベルである。
- 評価基準 -
A: X/X0<1.1
B: 1.1≦X/X0<1.2
C: 1.2≦X/X0<1.3
D: 1.3≦X/X0<1.4
E: 1.4≦X/X0<1.5
F: 1.5≦X/X0<1.6
G: 1.6≦X/X0
下記分散安定性試験においては、上記各シートの製造方法において基材上に塗布する際の組成物をサンプリングして、行った。
サンプリングした各組成物(スラリー)を直径10mm、高さ4cmのガラス試験管に高さ4cmまで投入し、25℃で24時間静置した。静置前後の組成物の上部30%(高さ)分の固形分減少率を下記式から算出した。この固形分減少率が下記評価基準のいずれに含まれるかにより、組成物の分散安定性(保存安定性)として経時による固体粒子の沈降のしやすさ(沈降性)を評価した。本試験において、上記固形分減少率が小さいほど、分散安定性に優れることを示し、評価基準「F」以上が合格レベルである。
固形分減少率(%)=[(静置前の上部30%の固形分濃度-静置後の上部30%の固形分濃度)/静置前の上部30%の固形分濃度]×100
- 評価基準 -
A: 固形分減少率< 1%
B: 1%≦固形分減少率< 3%
C: 3%≦固形分減少率< 5%
D: 5%≦固形分減少率< 7%
E: 7%≦固形分減少率< 9%
F: 9%≦固形分減少率<11%
G: 11%≦固形分減少率
各組成物の塗工適性として、得られた各シートの固体電解質層表面又は活物質層表面の最大高さ粗さRzを測定して、評価した。
具体的には、各シートの固体電解質層表面又は活物質層表面の最大高さ粗さRzを、日本産業規格(JIS) B 0601:2013に従って以下の測定装置及び条件にて、測定した。
最大高さ粗さRzが下記評価基準のいずれに含まれるかにより、組成物の塗工適性として表面が平坦で表面性の良い構成層の形成しやすさ(表面性)を評価した。本試験において、上記最大高さ粗さRzが小さいほど、塗工適性(表面性)に優れることを示し、評価基準「F」以上が合格レベルである。
- 測定装置及び条件 -
測定装置:3次元微細形状測定器(型式ET-4000A、小坂研究所製)
解析機器:3次元表面粗さ解析システム(型式TDA-31)
触針:先端半径0.5μm、ダイヤモンド製
針圧:1μN
測定長さ:5.0mm
測定速度:0.02mm/s
測定間隔:0.62μm
カットオフ:なし
フィルタ方式:ガウシアン空間型
レベリング:あり(二次曲線)
- 評価基準 -
A: Rz<1.0μm
B: 1.0μm≦Rz<2.0μm
C: 2.0μm≦Rz<4.0μm
D: 4.0μm≦Rz<6.0μm
E: 6.0μm≦Rz<8.0μm
F: 8.0μm≦Rz<10μm
G: 10μm≦Rz
各組成物の塗工適性として、得られた各シートの固体電解質層若しくは活物質層における固体粒子の密着性、及び活物質層と集電体との密着性を、評価した。
作製した各シートを幅3cm×長さ14cmの長方形に切り出した。円筒形マンドレル試験機(商品コード056、マンドレル直径10mm、Allgood社製)を用いて、切り出したシート試験片の長さ方向の一端部を上記試験機に固定し、シート試験片の中央部分に円筒形マンドレルが当たるように配置し、シート試験片の長さ方向の他端部を長さ方向に沿って5Nの力で引っ張りながら、マンドレルの周面に沿って(マンドレルを軸にして)180°屈曲させた。なお、シート試験片は、その固体電解質層又は活物質層をマンドレルとは逆側(基材又は集電体をマンドレル側)に、幅方向をマンドレルの軸線と平行に、セットした。試験は、マンドレルの直径を32mmから徐々に小さくして行った。
評価は、マンドレルに巻き付けた状態及び巻き付けを解除してシート状に復元した状態において、固体電解質層又は活物質層に固体粒子の結着崩壊による欠陥(ひび、割れ、欠け等)の発生、活物質層については更に活物質層と集電体との剥離が確認できなかった最小直径を測定して、この最小直径が下記評価基準のいずれに該当するかで、行った。
本試験において、上記最小直径が小さいほど、固体電解質層若しくは活物質層を構成する固体粒子の結着力が強固であり、また活物質層と集電体との密着力が強固であることを示し、評価基準「F」以上が合格レベルである。
- 評価基準 -
A: 最小直径<5mm
B: 5mm≦最小直径<6mm
C: 6mm≦最小直径<8mm
D: 8mm≦最小直径<10mm
E: 10mm≦最小直径<14mm
F: 14mm≦最小直径<25mm
G: 25mm≦最小直径
上記の各組成物(スラリー)の調製において、分散媒の配合量を変えて、組成物中における固形分濃度が76質量%である組成物を調製した。調製した固形分濃度76質量%の組成物を、机の上に置いた容器(直径5.0cm、高さ7.0cmの自公転ミキサー(商品名:ARE-310、シンキー社製)用の円柱型容器)の中に高さ1.0cm程度まで入れた後、この状態から60度傾けて、自重で垂れる程度の流動性を有するかを確認した。自重で垂れず、流動性を有さない場合、分散媒である酪酸ブチルを組成物の固形分濃度が1質量%小さくなるように添加し、上記の自公転ミキサーにて2000rpmで1分間分散した後、上記の固形分濃度76質量%の組成物と同様にして、流動性を有するかを再び確認した。固形分濃度が1質量%ずつ小さくなるようにしてこの操作を繰り返し、流動性を有する最大の固形分濃度をスラリー化上限濃度とし、調製可能な濃厚スラリーの最大濃度を評価した。スラリー化上限濃度を超える濃度まで固形分濃度を高めた場合には、塗工工程に用いることがそもそも難しくなる。そのため、スラリー化上限濃度は、塗工工程に用いることができる組成物の固形分上限濃度の指標となり、高いことが好ましい。
下記表中において、スラリー化上限濃度の単位は質量%である。
全固体二次電池用正極シート、全固体二次電池用固体電解質シート及び全固体二次電池用負極シートを表3に示す構成層の組み合わせで用いて、全固体二次電池を製造した。
全固体二次電池用正極シートP-1、P-4又はP-8を直径10mmの円盤状に打ち抜き、内径10mmのPET製の円筒に入れた。円筒内の正極活物質層側に全固体二次電池用固体電解質シートS-1、S-5又はS-10を直径10mmの円盤状に打ち抜いて円筒内に入れ、円筒の両端開口から10mmのSUS棒を挿入した。全固体二次電池用正極シートの集電体側と、全固体二次電池用固体電解質シートのアルミニウム箔側とをSUS棒により、350MPaの圧力を加えて加圧した。全固体二次電池用固体電解質シート側のSUS棒を一旦外して全固体二次電池用固体電解質シートのアルミニウム箔を静かに剥離し、その後、負極シートN-1、N-2又はN-4を直径10mmの円盤状に打ち抜き、円筒内の全固体二次電池用固体電解質シートの固体電解質層上に挿入した。外していたSUS棒を円筒内に再度挿入し、50MPaの圧力をかけた状態で固定した。このようにして、アルミニウム箔(厚さ20μm)-正極活物質層(厚さ90μm)-固体電解質層(厚さ45μm)-負極活物質層(厚さ65μm)の構成を有する全固体二次電池No.C-1~C-9を得た。
なお、No.C-1~C-4及びC-6~C-8が本発明の全固体二次電池であり、No.C-5及びC-9が比較のための全固体二次電池である。
製造した各全固体二次電池について、放電容量維持率を充放電評価装置TOSCAT-3000(商品名、東洋システム社製)により測定した。
具体的には、各全固体二次電池を、それぞれ、25℃の環境下で、電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が3.6Vに達するまで充電した。その後、電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が2.5Vに達するまで放電した。この充電1回と放電1回とを初期化充放電1サイクルとして、同じ条件で初期化充放電を3サイクル繰り返して、初期化した。その後、上記初期化充放電サイクルと同じ条件で、充放電を1000サイクル繰り返して行い、充放電1サイクル目の放電容量と1000サイクル目の放電容量を、充放電評価装置:TOSCAT-3000(商品名)により、測定した。下記式により放電容量維持率を求め、この放電容量維持率を下記評価基準にあてはめて、全固体二次電池のサイクル特性を評価した。本試験において、評価基準が高いほど、電池性能(サイクル特性)に優れ、充放電を複数回繰り返しても(長期の使用においても)初期の電池性能を維持できる。本試験において、評価基準「F」以上が合格レベルである。
なお、本発明の全固体二次電池の初期放電容量は、いずれも、全固体二次電池として機能するのに十分な値を示した。
放電容量維持率(%)=(1000サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
- 評価基準 -
A: 90%≦放電容量維持率
B: 85%≦放電容量維持率<90%
C: 80%≦放電容量維持率<85%
D: 75%≦放電容量維持率<80%
E: 70%≦放電容量維持率<75%
F: 60%≦放電容量維持率<70%
G: 放電容量維持率<60%
比較の無機固体電解質含有組成物No.S-1及びP-1は、本発明で規定する分散剤を含有せず、比較の無機固体電解質含有組成物No.S-5、S-6、P-4及びP-5は、本発明で規定する範囲のSP値を有する分散剤を含有せず、比較の無機固体電解質含有組成物No.S-3、P-3、N-2及びN-6は、本発明で規定する範囲の分子量を有する分散剤を含有しない。これらの組成物は、いずれも、分散特性及び塗工適性に劣っていた。また、比較の無機固体電解質含有組成物No.S-2、S-16、P-2、P-14、N-1及びN-5は、本発明で規定する範囲の吸着率を有する分散剤を含有しない。これらの組成物は、いずれも、分散特性(安定性)及び塗工適性(密着性)に劣っていた。また、比較の無機固体電解質含有組成物No.S-17は、本発明で規定する範囲のSP値及び吸着率を満たす分散剤を含有せず、比較の無機固体電解質含有組成物No.S-20は、本発明で規定する範囲の沸点を示す分散媒を含有しない。これらの組成物は、いずれも、分散特性及び塗工適性に劣っていた。
また、これら比較の無機固体電解質含有組成物を用いて各層を構成した比較の全固体二次電池No.C-5及びC-9は、十分なサイクル特性を示さなかった。
これに対して、本発明の無機固体電解質含有組成物No.S-4、S-7~S-15、S-18、S-19、S-21、P-6~P-13、P-15~P-18、N-3、N-4、N-7及びN-8は、本発明で規定するSP値、分子量及び吸着率の範囲のいずれをも満たす分散剤と、本発明で規定する範囲の沸点を示す分散媒を含有する。これらの組成物は、分散特性(分散性及び安定性)及び塗工適性(表面性及び密着性)を高い水準で兼ね備えている。この無機固体電解質含有組成物を全固体二次電池の構成層のいずれか1層の形成に用いることにより、No.C-1~C-4及びC-6~C-8に示すように、優れたサイクル特性を示す全固体二次電池を製造できることが分かった。
また、負極組成物においては、上記で示す他、上記の無機固体電解質含有組成物ないし正極組成物で使用する分散剤を用いた場合には、無機固体電解質含有組成物ないし正極組成物と同様の効果が得られた。
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
Claims (13)
- 正極活物質として遷移金属酸化物を含有する正極活物質層と、無機固体電解質として硫化物系無機固体電解質及び酸化物系無機固体電解質の少なくとも1種を含有する固体電解質層と、負極活物質として炭素質材料及びケイ素元素含有負極活物質の少なくとも1種を含有する負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池用の無機固体電解質含有組成物であって、
周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、分散剤と、分散媒とを含有し、
該無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質及び酸化物系無機固体電解質の少なくとも1種を含み、
前記分散剤が、RX-A1及びRY-A2のいずれかで表される化合物、及び、下記官能基群(a1)から選択される官能基を有する構成成分を含むポリマーから選択され、かつ下記(1)~(3)の規定を満たす少なくとも1種を含み、
前記分散媒が、エステル化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、芳香族化合物及び脂肪族化合物から選択され、かつ沸点が120℃以上である少なくとも1種を含む、無機固体電解質含有組成物。
(1)SP値が17.0~22.0MPa1/2である。
(2)分子量が10000以下である。
(3)前記分散媒中における、前記無機固体電解質に対する吸着率が2%以上である。
前記RXはアルキル基を示し、RYは無置換のアリール基を示し、A1及びA2は下記官能基群(a1)から選択される官能基を示す。
<官能基群(a1)>
ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、アミド基、アリール基 - 前記(3)の規定における吸着率が40%以上である、請求項1に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記分散媒のSP値と前記分散剤のSP値の差が3.0MPa1/2以下である、請求項1又は2に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記ポリマーが連鎖重合ポリマーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記ポリマー中における前記構成成分の含有量が5~70モル%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- ポリマーバインダーを含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 正極活物質として遷移金属酸化物、又は、負極活物質として炭素質材料及びケイ素元素含有負極活物質の少なくとも1種を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 導電助剤を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 前記無機固体電解質含有組成物中に含まれる前記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である、請求項1~8のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物で形成した層を有する全固体二次電池用シート。
- 正極活物質として遷移金属酸化物を含有する正極活物質層と、無機固体電解質として硫化物系無機固体電解質及び酸化物系無機固体電解質の少なくとも1種を含有する固体電解質層と、負極活物質として炭素質材料及びケイ素元素含有負極活物質の少なくとも1種を含有する負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記固体電解質層の少なくとも1つの層が、請求項1~9のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物で形成した層を有する、全固体二次電池。 - 請求項1~9のいずれか1項に記載の無機固体電解質含有組成物の層を形成することを含む、全固体二次電池用シートの製造方法。
- 請求項12に記載の製造方法により得られた全固体二次電池用シートを全固体二次電池に組み込むことを含む、全固体二次電池の製造方法。
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