JP7003152B2 - 固体電解質組成物、全固体二次電池用シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、並びに、全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
このような状況の下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質、正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性及び信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。更に、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車又は大型蓄電池等への応用が期待されている。
しかし、近年、全固体二次電池の開発が急速に進行し、全固体二次電池に求められる電池性能も高くなっており、界面抵抗の低減と結着性の向上とをより高い水準で両立することが望まれている。
<1>周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、平均粒径が1nm~10μmのバインダー粒子と、分散媒とを含有する固体電解質組成物であって、バインダー粒子が、SP値が10(cal1/2cm-3/2)以下であり、分子量が500以上である分散剤(A)と、ポリマー(B)とを含む、固体電解質組成物。
<2>ポリマー(B)を形成する構成成分の少なくとも1つが、SP値が10.5(cal1/2cm-3/2)以上である<1>に記載の固体電解質組成物。
<3>分散剤(A)の重量平均分子量が、1,000以上である<1>又は<2>に記載の固体電解質組成物。
<4>分散剤(A)の、バインダー粒子中の含有率が、0.1~80質量%である<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<5>ポリマー(B)のガラス転移温度が、30℃以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<6>分散剤(A)が、直鎖状の高分子分散剤である<1>~<5>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<官能基群>
酸性官能基、塩基性官能基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシシリル基、アリール基、ヘテロアリール基、及び、3環以上が縮環した炭化水素環基
<9>無機固体電解質が、硫化物系無機固体電解質である<1>~<8>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<10>さらに活物質を含有する<1>~<9>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<11>上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物で構成した層を有する全固体電池用シート。
<12>上記<10>に記載の固体電解質組成物で構成した活物質層を有する全固体電池用電極シート。
<13>正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも1つの層が、<1>~<10>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物で構成した層である全固体二次電池。
<14>上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を製膜する全固体二次電池用シートの製造方法。
<15>上記<14>に記載の製造方法を介して全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換又は無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。これは置換又は無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Zが挙げられる。
また、本明細書において、単に、YYY基と記載されている場合、YYY基は更に置換基を有していてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、平均粒径が1nm~10μmのバインダー粒子と、分散媒とを含有する。このバインダー粒子は、SP値が10(cal1/2cm-3/2)以下であり、分子量が500以上である分散剤(A)と、ポリマー(B)とを含んでいる。
本発明の固体電解質組成物は、スラリーとしたときにも、無機固体電解質、所望により併用される活物質及び導電助剤等の固体粒子をよく分散させることができ、しかも、固体粒子等の凝集若しくは沈殿等による層分離を効果的に抑制して均一な組成(分散状態)を維持することができる(高い分散安定性を示す。)。
本発明の固体電解質組成物中(例えばスラリー中)においては、バインダー粒子は分散剤(A)とポリマー(B)とを含んでいればよく(少なくとも、分散剤(A)とポリマー(B)とで形成されていればよく)、分散剤(A)又はポリマー(B)の一部がバインダー粒子に含まれずに(バインダー粒子を形成せずに)互いに独立して存在していてもよい。分散媒が存在しない場合、例えば本発明の固体電解質組成物で構成される層中においても同様である。
本発明において、ポリマーの主鎖とは、ポリマーの分子鎖のうち、ポリマーの種類(結合)を特徴付ける結合を含む分子鎖、通常最も長い分子鎖をいう。ポリマーの側鎖とは、ポリマーの主鎖から枝分かれしている分子鎖をいい、通常、ポリマーを形成する構成成分が有する重合性基以外の部分構造(鎖)に相当する。
バインダー粒子が分散剤(A)とポリマー(B)とを含む態様としては、例えば、分散剤(A)とポリマー(B)とが何ら相互作用することなく単に混合状態で含まれる態様、分散剤(A)とポリマー(B)とが共有結合以外の相互作用により結合、吸着(密着)若しくは親和した状態で含まれる態様、更には両態様が併存する態様が包含される。本発明においては、所定粒径のバインダー粒子が分散した分散液をポリマー(B)の重合(合成)と同時に調製できる点で、バインダー粒子は、少なくとも、分散剤(A)とポリマー(B)とを結合、吸着若しくは親和した状態で含んでいることが好ましい。分散剤(A)とポリマー(B)とが相互作用した形態は、特に制限されず、分散剤(A)の表面の一部又は全部にポリマー(B)が吸着又は囲繞(被覆)した形態が挙げられる。
バインダー粒子において、相互作用する分散剤(A)及びポリマー(B)の部位(部分構造)は、相互作用可能な部分構造であれば特に制限されない。また、1つのバインダー粒子において、相互作用する分散剤(A)及びポリマー(B)の割合(数)は、特に制限されず、適宜の割合に設定できる。
本発明の固体電解質組成物は、全固体二次電池用シート又は全固体二次電池の固体電解質層又は活物質層の成形材料として好ましく用いることができる。
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質を含有する。
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。本発明において、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができる観点から、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
La1Mb1Pc1Sd1Ae1 (1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1、b1、c1、d1及びe1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1~12:0~5:1:2~12:0~10を満たす。a1は1~9が好ましく、1.5~7.5がより好ましい。b1は0~3が好ましく、0~1がより好ましい。d1は2.5~10が好ましく、3.0~8.5がより好ましい。e1は0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10-6S/cm以上であることが好ましく、5×10-6S/cm以上であることがより好ましく、1×10-5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、1×10-1S/cm以下であることが実際的である。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4); リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON; LiPOD1(D1は、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
更に、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
固体電解質層を形成する場合、固体電解質層の単位面積(cm2)当たりの無機固体電解質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1~100mg/cm2とすることができる。
ただし、固体電解質組成物が後述する活物質を含有する場合、無機固体電解質の目付量は、活物質と無機固体電解質との合計量が上記範囲であることが好ましい。
ただし、固体電解質組成物が後述する活物質を含有する場合、固体電解質組成物中の無機固体電解質の含有量は、活物質と無機固体電解質との合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
本明細書において、固形分(固形成分)とは、固体電解質組成物を、1mmHgの気圧下、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理したときに、揮発又は蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
本発明の固体電解質組成物は、平均粒径が1nm~10μmのバインダー粒子を含有する。固体電解質組成物に含有されるバインダー粒子は1種でも2種以上でもよい。固体電解質組成物が2種以上のバインダー粒子を含有する場合、そのうちの少なくとも1種が平均粒径1nm~10μmの特定のバインダー粒子であればよい。
バインダー粒子は、本発明の全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池(構成層)においては、固体粒子同士(例えば、無機固体電解質同士、無機固体電解質と活物物質、活物質同士)を強固に結着させ、更には固体粒子と集電体とも強固に結着させるバインダーとして、機能する。バインダー粒子は、更に、固体電解質組成物中においては、分散媒に固体粒子を高度にかつ高安定性で固体粒子を分散させる(分散剤若しくは乳化剤として機能する。)。
バインダー粒子を適宜の溶媒(固体電解質組成物の調製に用いる有機溶媒、例えば、ヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた体積平均粒子径を平均粒径とする。その他の詳細な条件等は必要によりJIS Z 8828:2013「粒子径解析-動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製して測定し、その平均値を採用する。
なお、全固体二次電池を用いる場合は、例えば、全固体二次電池を分解して活物質層又は固体電解質層を剥がした後、その材料について上記バインダー粒子の平均粒径の測定方法に準じてその測定を行い、予め測定していたバインダー粒子以外の粒子の平均粒径の測定値を排除することにより行うことができる。
バインダー粒子の水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましい。
また、このバインダー粒子は、晶析させて乾燥させてもよく、分散液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒=スズ、チタン、ビスマス)は少ない方が好ましい。重合時に少なくするか、晶析で触媒を除くことで、共重合体中の金属濃度を、100ppm(質量基準)以下とすることが好ましい。
本発明においては、ポリマー(B)の重合(合成)により、上記特定の平均粒径を有するバインダー粒子が分散した分散液を一挙に調製できる点で、分散剤(A)の存在下で、重合性化合物(ポリマー(B)を形成する構成成分を導く化合物等)を、重合若しくは縮合、好ましくは乳化重合する方法が好ましい。この方法においては、分散剤(A)が乳化剤として機能して、分散剤(A)とポリマー(B)とを含むバインダー粒子を、通常球状若しくは粒状の樹脂粒子として、形成できる。本発明に用いるバインダー粒子は、分散剤(A)、好ましくは高分子分散剤の存在下、有機溶媒中で、ポリマー(B)を形成する重合性化合物を乳化重合して得られたバインダー粒子が好ましい。
重合性化合物の重合条件若しくは縮合条件は、特に制限されず、通常適用される条件に設定できる。バインダー粒子の平均粒径、又はポリマー(B)の物性等は、重合性化合物、分散剤(A)等の種類、分散剤(A)の存在量、重合温度、滴下時間、滴下方法等によって、所定の範囲に適宜に設定できる。
ポリマー(B)の重合反応又は縮合反応に用いる溶媒は、特に制限されないが、有機溶媒がバインダー粒子の分散液をポリマー(B)の合成により調製できる点で好ましく、平均粒径又は分散性の点で炭化水素溶媒であることがより好ましい。また、用いる溶媒は、無機固体電解質又は活物質と反応しないこと、更にそれらを分解しない溶媒が好ましい。
用いることができる溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒(トルエン、ヘプタン、オクタン、キシレン)、エステル溶媒(酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エーテル溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジエトキシエタン)、ケトン溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、ニトリル溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル)、ハロゲン溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)等が挙げられる。
バインダー粒子を上記の範囲で用いることにより、一層効果的に固体電解質の固着性と界面抵抗の抑制性とを両立して実現することができる。
バインダー粒子を形成する分散剤(A)は、SP値が10(cal1/2cm-3/2)以下であり、分子量が500以上である。
このようなSP値及び分子量を有する分散剤(A)で形成されたバインダー粒子を含有すると、固体電解質組成物の分散性、とりわけ分散安定性が高く、シート又は構成層としたときに低抵抗と強固な結着性とを示し、優れた電池性能を発揮する。その理由の詳細なまだ明らかではないが、分散剤(A)はSP値(以下、単位を省略することがある。)が10以下であって、通常、疎水性(又は低極性)を示すことから、分散媒中で、分子鎖の広がりが大きくなり、分散媒中に安定的に分散させることができ、更に、ポリマー(B)が固体粒子に接触する際に、阻害することがないと考えられる。そのため、固体粒子の分散性、更には分散安定性を改善できる。その結果、固体粒子間の接触を強く保つことが可能となる一方で、必要以上に固体粒子表面を覆わないことが影響していると考えられる。また、固体電解質組成物に用いる分散媒(特に非水系分散媒)中で、分散剤(A)の存在下、後述するポリマー(B)を合成すると、この分散媒(分散媒の置換操作を経ることなく)にバインダー粒子だけでなく固体粒子も分散したラテックスの形態として固体電解質組成物を調製できる。本発明においては、これらに加えて、分散剤(A)の分子量が500以上であるため、分散媒中での分子鎖の広がり範囲が大きく、分散安定性に優れる。
このようなバインダー粒子を無機固体電解質と併用した固体電解質組成物でシート又は構成層を形成すると、固体粒子間の界面接触を阻害することなく、固体粒子同士を強固に結着させることができる。その結果、固体粒子間の界面抵抗の上昇が抑えられ、Liイオン及び電子が固体粒子間を速やかに伝導して、優れた電池性能(例えば高出力)を示す。この優れた電池性能は、シート又は構成層に曲げ応力が作用しても、固体粒子同士の強固な結着性が損なわれることがなく、維持される。
本発明において、SP値は、特に断らない限り、Hoy法によって求めた値(H.L.Hoy Journal of Painting,1970,Vol.42,76-118)とする。分散剤(A)が後述する高分子分散剤である場合、この分散剤(A)のSP値(高分子分散剤を形成するポリマーのSP値)は、高分子(ポリマー)を構成する各構成成分のSP値を、それぞれ、SP1、SP2・・・とし、各構成成分の質量分率を、それぞれ、W1、W2・・・・として、下記式で算出される値とする。
SP=(SP1 2×W1+SP2 2×W2+・・・)0.5
- 分子量の測定 -
本発明において、高分子分散剤及びポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって計測された、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。測定法としては、基本として下記条件1又は条件2(優先)の方法により測定した値とする。ただし、高分子分散剤種又はポリマー種によっては適宜適切な溶離液を選定して用いればよい。ここで、分散剤(A)が高分子分散剤であるとは、重量平均分子量が、1,000以上の分散剤のことを指す。
(条件1)
カラム:TOSOH TSKgel Super AWM-Hを2本つなげる
キャリア:10mMLiBr/N-メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
(条件2)優先
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM-H、TOSOH TSKgel Super HZ4000、TOSOH TSKgel Super HZ2000をつないだカラムを用いる
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
RD1として採りうるハロゲン原子としては、特に制限されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。RD1として採りうるアルキル基及びアルコキシ基としては、それぞれ、特に制限されず、例えば、炭素原子数1~20が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい。RD1として採りうるアリール基としては、特に制限されず、例えば、炭素数6~26が好ましく、6~10がより好ましい。
RD2として採りうるアルキル基としては、特に制限されず、例えば、直鎖状、分枝状又は環状のいずれでもよく、直鎖状又は分枝状が好ましい。直鎖状又は分枝状のアルキル基は、炭素数が1~30であることが好ましく、1~18であることがより好ましく、1~12であることが更に好ましい。直鎖状又は分枝状のアルキル基は、分散剤(A)のSP値を上記範囲に調整する点からは、所謂長鎖アルキル基であることが好ましく、この場合、炭素数の下限は、2が好ましく、3がより好ましく、4が更に好ましい。環状のアルキル基(シクロアルキル基)は、炭素数が3~30であることが好ましく、5~20であることがより好ましい。
RD2として採りうるアルコキシ基としては、特に制限されない。このアルコキシ基が有するアルキル基はRD2として採りうる上記アルキル基と同義であり、好ましいものも同じである。
RD2として採りうるアリール基としては、特に制限されず、RD1として採りうるアリール基と同義であり、好ましいものも同じである。
置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、中でもフッ素原子が好ましい。
式(D-1)中、*は他の構成成分との結合部、すなわち、式(D-1)で表される構成成分を高分子分散剤に組み込むための結合部を示す。
下記式(D-1)で表される構成成分を少なくとも1種含む(メタ)アクリル樹脂からなる高分子分散剤において、(メタ)アクリル樹脂は、主鎖が(メタ)アクリル化合物を含む単量体の付加重合体をいう。この(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成成分(繰返単位)を少なくとも1種有含む樹脂が好ましく、この構成成分として、LD1が-CO-O-基である、上記式(D-1)で表される構成成分を少なくとも1種含む樹脂がより好ましい。
上記(メタ)アクリル化合物を含む単量体は(メタ)アクリル化合物と共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸アミドから選ばれる化合物が好ましい。他の単量体としては、特に制限されず、α,β-不飽和ニトリル化合物、ビニル重合性基を有する化合物、例えば、環状オレフィン化合物、ジエン化合物、スチレン化合物、ビニルエーテル化合物、カルボン酸ビニルエステル化合物、不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。
本発明においては、(メタ)アクリル化合物と他の単量体との組み合わせは、特に制限されないが、炭素数4以上の長鎖アルキルの(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸、α,β-不飽和ニトリル化合物等の極性単量体との組み合わせが、ポリマー(B)等に対する親和性及び分散性の点で、好ましい。
上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを形成するアルキル基は、水酸基を有していないこと以外は上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同じである。(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
例えば、上記式(D-1)で表される構成成分の、高分子分散剤(分散剤形成ポリマー)中の含有率は、例えば、分散性の点で、10~100質量%であることが好ましく、20~100質量%であることがより好ましく、30~100質量%であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂からなる高分子分散剤である場合、(メタ)アクリル化合物に由来する構成成分の、高分子分散剤(分散剤形成ポリマー)中の含有量は、特に制限されず、適宜に決定される。この含有率は、例えば、分散性の点で、10~100質量%であることが好ましく、30~100質量%であることがより好ましく、50~100質量%であることが更に好ましい。ここで、(メタ)アクリル化合物に由来する構成成分は、式(D-1)で表される構成成分のうち(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成成分と、(メタ)アクリル酸に由来する構成成分をいう。
式(D-1)で表される構成成分の中でも、LD1が-CO-O-基である、式(D-1)で表される構成成分((メタ)アクリル酸エステル由来の構成成分)の、高分子分散剤(分散剤形成ポリマー)中の含有率は、好ましくは、式(D-1)で表される構成成分の上記含有率の範囲内にあり、分散性の点で、10~100質量%であることがより好ましく、20~100質量%であることが更に好ましく、30~100質量%であることが特に好ましい。
更に、式(D-1)で表される構成成分の中でも、LD1が-CO-O-基であり、かつRD2が長鎖アルキル基である、式(D-1)で表される構成成分の、高分子分散剤(分散剤形成ポリマー)中の含有率は、好ましくは、式(D-1)で表される構成成分の上記含有率の範囲内にあり、分散性の点で、10~100質量%であることがより好ましく、20~100質量%であることが更に好ましく、30~100質量%であることが特に好ましい。
上記他の単量体に由来する構成成分の、高分子分散剤(分散剤形成ポリマー)中の総含有率は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成成分等の含有量等に応じて、適宜に決定される。例えば、分散性や粒径制御の点で、0.1~80質量%であることが好ましく、0.5~60質量%であることがより好ましく、1~50質量%であることが更に好ましい。高分子分散剤が他の構成成分を複数含有する場合、他の構成成分の総含有率が上記範囲内となるのであれば、他の構成成分それぞれの含有量は適宜に決定される。
本発明において、構成成分の含有率は、構成成分を導く化合物の分子量に換算して算出した含有率をいう。
バインダー粒子を形成するポリマー(B)は、有機ポリマーであればよく、単独重合体、ブロック共重合体、交互共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよく、またグラフト共重合体でもよい。本発明においては、ポリマーは、単独重合体、ブロック共重合体、交互共重合体又はランダム共重合体のいずれかが好ましい。
ポリマー(B)のSP値は、特に制限されないが、分散剤(A)の存在下で重合することにより、バインダー粒子の分散液を調製することができる点、また、固体電解質組成物の分散性、シート又は全固体二次電池における抵抗及び結着性の点で、10以上であり、10.2以上が好ましく、10.3以上がより好ましく、10.4以上が更に好ましい。一方、SP値の上限は、特に制限されないが、実際には、18以下であり、17以下が好ましく、16以下がより好ましい。また、分散剤(A)とポリマー(B)とのSP値の差は、特に制限されないが、例えば、分散性、抵抗及び結着性の点で、0.05以上が好ましく、0.1~6がより好ましく、0.5~4が更に好ましい。ポリマー(B)のSP値を上記範囲に設定するためには、例えば、ポリマー(B)を形成する構成成分の種類若しくは含有量を適宜に設定する方法等が挙げられる。
ポリイミドは、少なくとも主鎖にイミド結合を有するポリマーであって、例えば、テトラカルボン酸とジアミン化合物との重縮合体(通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを付加反応させてポリアミック酸を形成した後、閉環することで得られる。)が挙げられる。
ポリウレアは、少なくとも主鎖にウレア結合を有するポリマーであって、例えば、ジイソシアネート化合物とジアミン化合物との付加縮合体が挙げられる。
ウレタン樹脂は、少なくとも主鎖にウレタン結合を有するポリマーであって、例えば、ジイソシアネート化合物とジオール化合物との重付加体が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂は、高分子分散剤としての(メタ)アクリル樹脂と同義であるが、好ましくは、後述するSP値が10.5以上の構成成分を有する樹脂である。
上記各ポリマーを形成する重合性化合物は、上記重合反応しうる官能基を分子中に1つ又は少なくとも2つ有するものであれば特に制限されず、従来公知の化合物を適宜に選択して用いることができる。重合反応しうる官能基の数は、重合反応の種類に応じて決定される。例えば、連鎖重合である場合、官能基は少なくとも1つでよい。
測定室内の雰囲気:窒素ガス(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:-100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
なお、全固体二次電池を用いる場合は、例えば、全固体二次電池を分解して活物質層又は固体電解質層を水に入れてその材料を分散させた後、ろ過を行い、更に通常の方法で遠心分離してポリマー(B)を沈殿させて分散剤(A)と分離する。こうして得られたポリマー(B)の乾燥試料を用いて、上記の測定法でガラス転移温度を測定することにより行うことができる。
この構成成分のSP値は、電池特性の点で、11以上が好ましく、11.5以上がより好ましく、12以上が更に好ましい。一方、上限は特に制限されず、適宜に設定される。例えば、20以下が好ましく、17以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
構成成分のSP値を10.5以上に設定するためには、例えば、水酸基等の置換基を導入するなど、極性の高い官能基を導入する方法等が挙げられる。
SP値を10.5以上の構成成分を導く化合物としては、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸(ポリオキシアルキレンエステル)、N-モノ若しくはジ(アルキル)(メタ)アクリル酸アミド、N-(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリル酸アミド、α,β-不飽和ニトリル化合物、ジオール化合物、ジアミン化合物、ジフェニルメタンジイソシアネート等、更には後述する実施例で用いた化合物等が挙げられる。
このような共重合性化合物としては、特許文献1の段落<0031>~<0035>に記載の「ビニル系モノマー」及び同段落<0036>~<0042>に記載の「アクリル系モノマー」(ただし、上記構成成分に相当するものを除く。)が挙げられる。
<官能基群>
酸性官能基、塩基性官能基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシシリル基、アリール基、ヘテロアリール基、及び、3環以上が縮環した炭化水素環基
塩基性官能基としては、特に制限されず、例えば、アミノ基、ピリジル基、イミノ基及びアミジンが挙げられる。
アルコキシシリル基としては、特に制限されず、炭素数1~6のアルコキシシリル基が好ましく、例えば、メトキシシリル、エトキシシリル、t-ブトキシシリル及びシクロヘキシルシリルが挙げられる。
アリール基としては、特に制限されず、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル及びナフチルが挙げられる。アリール基の環は単環若しくは2つの環が縮合した環が好ましい。
ヘテロアリール基としては、特に制限されず、4~10員のヘテロ環を有するものが好ましく、このヘテロ環を構成する炭素数は3~9が好ましい。ヘテロ環を構成するヘテロ原子は、例えば、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子が挙げられる。ヘテロ環の具体例として、例えば、チオフェン、フラン、ピロール及びイミダゾールが挙げられる。
3環以上が縮環した炭化水素環基は、少なくとも1つの芳香族炭化水素環を含む3環以上縮環した環基、又は、飽和脂肪族炭化水素環若しくは不飽和脂肪族炭化水素環が3環以上縮環した環基が好ましい。縮環する環数は特に制限されないが、3~8環が好ましく、3~5環がより好ましい。
3環以上が縮環した炭化水素環基としては、上記の中でも、コレステロール環構造を有する化合物からなる環基又はピレニル基がより好ましい。
官能基が相互作用する場合、官能基の化学構造は変化しても変化しなくてもよい。例えば、上記π-π相互作用等においては、通常、官能基は変化せず、そのままの構造を維持する。一方、共有結合等による相互作用においては、通常、カルボン酸基等の活性水素が離脱したアニオンとなって(官能基が変化して)無機固体電解質と結合する。
負極活物質及び導電助剤に対しては、アリール基、ヘテロアリール基、3環以上が縮環した脂肪族炭化水素環基が好適に吸着する。中でも、3環以上が縮環した炭化水素環基が特に好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、分散媒(分散媒体)を含有する。
分散媒は、上記の各成分を分散させるものであればよく、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物、アミン化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル化合物等の各溶媒が挙げられ、その分散媒の具体例としては下記のものが挙げられる。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸ブチル、ペンタン酸ブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒としては、上記芳香族化合物、脂肪族化合物等が挙げられる。
上記分散媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物には、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質をさらに含有してもよい。活物質としては、以下に説明するが、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物(好ましくは遷移金属酸化物)、又は、負極活物質である金属酸化物若しくはSn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質又は負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極層用組成物(正極層用組成物又は負極層用組成物)ということがある。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び/又は放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、又は、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P及びBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0~30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3~2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、Li2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1~100mg/cm2とすることができる。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び/又は放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体又はリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、Al、In等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1~100mg/cm2とすることができる。
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li2B4O7、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、B2O3等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、活物質の電子導電性を向上させる等のために用いられる導電助剤を適宜必要に応じて含有してもよい。導電助剤としては、一般的な導電助剤を用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を用いてもよい。またこれらの内1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物が導電助剤を含む場合、固体電解質組成物中の導電助剤の含有量は、0~10質量%が好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩(支持電解質)を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、特開2015-088486の段落0082~0085記載のリチウム塩が好ましい。
本発明の固体電解質組成物がリチウム塩を含む場合、リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、固体粒子の分散剤(乳化剤)としても機能するバインダー粒子を含有しているため、バインダー粒子以外の分散剤を含有していなくてもよいが、必要であれば分散剤(A)以外の分散剤を含有してもよい。無機固体電解質等の凝集を抑制し、均一な活物質層及び固体電解質層を形成することができる。分散剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。一般的には粒子吸着と立体反発及び/又は静電反発を意図した化合物が好適に使用される。
本発明の固体電解質組成物は、上記各成分以外の他の成分として、所望により、イオン液体、増粘剤、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。
イオン液体は、イオン伝導度をより向上させるため含有されるものであり、公知のものを特に制限されることなく用いることができる。
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質、バインダー粒子(その分散液)、必要により分散媒又は他の成分を、例えば、各種の混合機を用いて、混合することにより、好ましくはスラリーとして、調製することができる。
混合方法は特に制限されず、一括して混合してもよく、順次混合してもよい。
混合機としては特に制限されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサー、ブレードミキサー、ロールミル、ニーダー及びディスクミルが挙げられる。混合条件は特に制限されず、例えば、混合温度は10~60℃、混合時間は5分~5時間、回転数は10~700rpm(rotation per minute)に設定される。混合機としてボールミルを用いる場合、上記混合温度において、回転数は150~700rpm、混合時間は5分~24時間に設定することが好ましい。なお、各成分の配合量は、上記含有量となるように設定されることが好ましい。
混合する環境は特に制限されないが、乾燥空気下又は不活性ガス下等が挙げられる。
本発明の全固体二次電池用シートは、全固体二次電池の構成層を形成しうるシート状成形体であって、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう。)、電極、又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。本発明において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートということがある。
本発明の全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、基材上に、固体電解質層と、必要により保護層とをこの順で有するシートが挙げられる。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、後述する集電体で説明する材料、有機材料、無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック等が挙げられる。
本発明の全固体二次電池用シートの製造方法は、特に制限されず、本発明の固体電解質組成物を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。例えば、必要により基材若しくは集電体上(他の層を介していてもよい。)に、製膜(塗布乾燥)して固体電解質組成物からなる層(塗布乾燥層)を形成する方法が挙げられる。これにより、必要により基材若しくは集電体と、塗布乾燥層とを有する全固体二次電池用シートを作製することができる。ここで、塗布乾燥層とは、本発明の固体電解質組成物を塗布し、分散媒を乾燥させることにより形成される層(すなわち、本発明の固体電解質組成物を用いてなり、本発明の固体電解質組成物から分散媒を除去した組成からなる層)をいう。
本発明の全固体二次電池用シートの製造方法において、塗布、乾燥等の各工程については、下記全固体二次電池の製造方法において説明する。
また、本発明の全固体二次電池用シートの製造方法においては、基材、保護層(特に剥離シート)等を剥離することもできる。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置された固体電解質層とを有する。正極活物質層は、必要により正極集電体上に形成され、正極を構成する。負極活物質層は、必要により負極集電体上に形成され、負極を構成する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、本発明の固体電解質組成物で形成されることが好ましく、中でも、全ての層が本発明の固体電解質組成物で形成されることがより好ましい。本発明の固体電解質組成物で形成された活物質層又は固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、本発明の固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。なお、活物質層又は固体電解質層が本発明の固体電解質組成物で形成されない場合、公知の材料を用いることができる。
負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に制限されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10~1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、固体電解質層とは反対側に集電体を備えていてもよい。
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金又は、ステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
全固体二次電池10においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のいずれも本発明の固体電解質組成物で形成されている。この全固体二次電池10は電気抵抗が小さく、優れた電池性能を示す。正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する無機固体電解質及びバインダー粒子は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に制限されないが、1~500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
全固体二次電池は、常法によって、製造できる。具体的には、全固体二次電池は、本発明の固体電解質組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。これにより、電気抵抗が小さく、優れた電池性能を示す全固体二次電池を製造できる。以下、詳述する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極層用組成物)として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、負極用材料(負極層用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。更に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
上記の製造方法においては、正極層用組成物、固体電解質組成物及び負極層用組成物のいずれか1つに本発明の固体電解質組成物を用いればよく、いずれも、本発明の固体電解質組成物を用いることが好ましい。
固体電解質組成物の塗布方法は特に制限されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布が挙げられる。
このとき、固体電解質組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に制限されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を除去し、固体状態(塗布乾燥層)にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性と、非加圧でも良好なイオン伝導度を得ることができる。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては特に制限されず、一般的には30~300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。一方、無機固体電解質とバインダー粒子が共存する場合、バインダー粒子を形成する上記重合体のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。ただし、一般的には上記重合体の融点を越えない温度である。
加圧は塗布溶媒又は分散媒を予め乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布してもよいし、塗布乾燥プレスを同時及び/又は逐次行ってもよい。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積又は膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は特に制限されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に制限はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
実施例1では、全固体二次電池用シートを作製して、その性能を評価した。その結果を表1~表4に示す。
<分散剤(A)の合成>
(分散剤A-1の合成)
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコにオクタン420質量部を加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に80℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(ラウリルメタクリレート(和光純薬工業社製)144質量部、メチルメタクリレート(和光純薬工業社製)36質量部、ラジカル重合開始剤V-601(商品名、和光純薬工業社製)を9質量部混合した液)を2時間かけて滴下し、引き続き80℃で2時間攪拌を継続した。その後、ラジカル重合開始剤V-601を更に1.2質量部添加し、95℃で2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、オクタンを除去して、高分子分散剤として分散剤A-1を合成した。
上記分散剤A-1の合成において、用いた単量体の種類とその比率(質量比)を下記表1に示す「単量体組成」に変更したこと以外は、分散剤A-1の合成と同様にして、高分子分散剤として分散剤A-2~A-10、CA-1及びCA-2をそれぞれ調製した。
得られた分散剤の重量平均分子量は、上記方法(条件2)により、測定した。
<SP値の計算方法>
得られた分散剤のSP値(cal1/2cm-3/2)は、上記方法に基づいて算出した。
LMA:ラウリルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AN:アクリロニトリル
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
St:スチレン
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
CA-3:ポリオキシエチレンラウリルエーテル
CA-4:ステアリン酸
LMA、EHA、SMA及びBAが炭素数4以上の長鎖アルキルを有する(メタ)アクリル化合物に相当する。
(ポリマーB-1の合成(バインダー粒子分散液P-1の調製))
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコにオクタンを420質量部、及び、上記で合成した分散剤A-1を18質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に80℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(アクリル酸2-ヒドロキシエチル(和光純薬工業社製)36質量部と、メチルメタクリレート(和光純薬工業社製)117質量部と、メタクリル酸(和光純薬工業社製)9質量部と、ラジカル重合開始剤V-601(商品名、和光純薬工業社製)7.2質量部とを混合した液)を2時間かけて滴下し、引き続き80℃で2時間攪拌を継続した。その後、ラジカル重合開始剤V-601を更に1.2質量部添加し、95℃で2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した。こうして、分散剤A-1の存在下でポリマーB-1を合成して、バインダー粒子分散液P-1を得た。
上記ポリマーB-1の合成(バインダー粒子分散液P-1の調製)において、分散剤(A)の種類とその使用量(含有率)、重合性化合物の種類とその比率(含有率)、更に分散媒の種類を下記表2に示すように変更したこと以外は、ポリマーB-1の合成(バインダー粒子分散液P-1の調製)と同様にして、ポリマーB-2~B-13及びCB-1~CB-5をそれぞれ合成して、バインダー粒子分散液P-2~P-13及びCP-1~CP-5をそれぞれ調製した。
得られたバインダー粒子が、分散剤(A)とポリマー(B)とを、互いに共有結合せずに、含んでいることを以下のように確認した。すなわち、分散液の状態で、遠心分離機において、回転数30000rpmで3時間遠心分離して、上澄み液と沈降物とに分離した。こうして得られた上澄み液に分散剤(A)が分離し、沈降物にポリマー(B)が分離したことを、質量比及び各磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)により確認、測定した。その結果、バインダー粒子分散液P-1~P-13及びCP-1~CP-5におけるバインダー粒子は、いずれも、分散剤(A)がポリマー(B)に共有結合により結合することなく含んでいることが分かった。
バインダー粒子の平均粒径の測定は、以下の手順で行った。上記にて調製したバインダー粒子分散液の乾燥試料を適宜の溶媒(固体電解質組成物の調製に用いる分散媒。バインダー粒子P-1の場合はオクタン)を用いて1質量%の分散液を調製した。この分散液試料に1kHzの超音波を10分間照射した後に、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(商品名、HORIBA社製)を用いて、樹脂粒子の体積平均粒径を測定した。
バインダー粒子を形成するポリマー(B)の重量平均分子量は、上記方法(条件2)により、測定した。
<ガラス転移点(Tg)の測定方法>
バインダー粒子を形成するポリマー(B)のガラス転移点(Tg)を、上記方法により、測定した。
ポリマー(B)及び重合性化合物のSP値(cal1/2cm-3/2)は、上記方法に基づいて、算出した。
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AN:アクリロニトリル
GMA:グリシジルメタクリレート
AA:アクリル酸
MEEA:メトキシエチルアクリレート
DMAA:ジメチルアクリルアミド
HMAA:ヒドロキシメチルアクリルアミド
MMI:メチルマレイミド
LMA:ラウリルメタクリレートβ-CEA:β-カルボキシエチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
St:スチレン
DVB:ジビニルベンゼン
硫化物系無機固体電解質は、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231-235、及び、A.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872-873の非特許文献を参考にして合成した。
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点-70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(Li2S、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g及び五硫化二リン(P2S5、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。Li2S及びP2S5の混合比は、モル比でLi2S:P2S5=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP-7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li/P/Sガラス、以下、LPSと表記することがある。)6.20gを得た。
(固体電解質組成物S-1の調製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLPS9.5g、分散媒としてオクタン12.3gを投入した。その後、バインダー粒子分散液P-1を固形分相当で0.5g投入し、遊星ボールミルP-7(商品名、フリッチュ社製)にセットした。温度25℃、回転数300rpmで2時間混合を続け、固体電解質組成物S-1を調製した。
上記固体電解質組成物S-1の調製において、固体電解質、バインダー粒子分散液及び分散媒の種類及び配合量(含有率)を下記表3に示すように変更したこと以外は、固体電解質組成物S-1の調製と同様にして、固体電解質組成物S-2~S-14及びT-1~T-5をそれぞれ調製した。
本発明の各固体電解質組成物中のバインダー粒子について、上記のようにして確認したところ、分散剤(A)とポリマー(B)とを互いに共有結合せずに含んでいることが分かった。
LPS:上記で合成した硫化物系無機固体電解質
LLZ:酸化物系無機固体電解質Li7La3Zr2O12(豊島製作所製)
(全固体二次電池用正極シートC-1の作製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で調製した固体電解質組成物S-1を固形分相当で1.9g、分散媒総量としてオクタン12.3gを投入した。更に、そこへ、正極活物質としてNMC(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)8.0g、アセチレンブラック0.1gを投入し、遊星ボールミルP-7にセットし、温度25℃、回転数200rpmで30分間混合を続けた。こうして、正極用組成物(スラリー)C-1Cを調製した。
上記で調製した正極用組成物C-1Cを、集電体として厚み20μmのアルミニウム箔に、ベーカー式アプリケーター(商品名:SA-201、テスター産業社製)により塗布し、80℃で1時間加熱後、更に110℃で1時間加熱して、正極用組成物C-1Cを乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた正極層用組成物C-1Cを加熱(120℃)しながら加圧し(20MPa、1分間)、正極活物質層(層厚は表5に示す。)/アルミニウム箔の積層構造を有する全固体二次電池用正極シートC-1を作製した。
上記全固体二次電池用正極シートC-1の作製において、固体電解質組成物、活物質、導電助剤及び分散媒の種類及び配合量(含有率)を下記表4に示すように変更したこと以外は、全固体二次電池用正極シートC-1の作製と同様にして、全固体二次電池用正極シートC-2~C-14及びCC-1~CC-5をそれぞれ調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で調製した固体電解質組成物S-1を固形分相当で5.0g、分散媒としてオクタン12.3gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP-7(商品名、フリッチュ社製)にセットし、温度25℃で、回転数300rpmで2時間攪拌した。その後、表4に示す負極活物質として黒鉛5.0gを投入し、再びこの容器を遊星ボールミルP-7にセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続けた。このようにして、負極層用組成物(スラリー)A-1Cを得た。
上記で得られた負極層用組成物A-1Cを、厚み10μmのステンレス箔上に、上記ベーカー式アプリケーターにより塗布し、80℃2時間加熱して、負極層用組成物A-1Cを乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた負極層用組成物A-1Cを加熱(120℃)しながら加圧(600MPa、1分間)し、負極活物質層(層厚は表5に示す。)/ステンレス箔の積層構造を有する全固体二次電池用負極シートA-1を作製した。
上記全固体二次電池用負極シートA-1の作製において、固体電解質組成物、活物質、導電助剤及び分散媒の種類及び配合量(含有率)を下記表4に示すように変更したこと以外は、全固体二次電池用負極シートA-1の作製と同様にして、全固体二次電池用正極シートA-2~A-4、CA-1及びCA-2をそれぞれ調製した。
本発明の各シート中のバインダー粒子について、上記のようにして確認したところ、分散剤(A)とポリマー(B)とを互いに共有結合せずに含んでいることが分かった。
上述のようにして調製した各組成物の一部を、遊星ボールミルP-7から分けとり、直径10mmの透明なガラス管に、高さ3cmまで充填した。これを25℃の環境下で1時間静置した。その後、組成物の相分離状態及び相分離の程度を、以下の評価基準で判定した。本試験において、評価基準「C」以上が合格レベルである。
-評価基準-
A:組成物(スラリー)が層分離しない
B:分層発生した箇所(上澄層)が液面より3mm未満である場合
C:分層発生した箇所が液面より3mmを越え、10mm未満である場合
D:分層発生した箇所が液面より10mmを越え、20mm未満である場合
E:分層発生した箇所が液面より20mm以上である場合
全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートの結着性試験として、各シートの柔軟性、すなわちマンドレル試験機を用いた耐屈曲性試験(JIS K 5600-5-1に準拠)により、評価した。具体的には、各シートから、幅50mm、長さ100mmの短冊状の試験片を切り出した。この試験片の活物質層面をマンドレルとは逆側(集電体をマンドレル側)に、かつ試験片の幅方向がマンドレルの軸に平行となるようにセットし、マンドレルの外周面に沿って180°屈曲(1回)させた後、活物質層にヒビ及び割れが生じているか否かを観察した。この屈曲試験は、まず、直径32mmのマンドレルを用いて行い、ヒビ及び割れのいずれも発生していない場合、マンドレルの直径(単位mm)を、25、20、16、12、10、8、6、5、4、3、2と徐々に小さくしていき、最初にヒビ及び/又は割れが発生したマンドレルの直径を記録した。このヒビ及び割れが最初に発生直径(欠陥発生径)が下記評価基準のいずれに含まれるかにより、結着性を評価した。本発明において、欠陥発生径が小さいほど固体粒子の結着性が強固であることを示し、評価基準「C」以上が合格レベルである。
A:5mm以下
B:6mm又は8mm
C:10mm
D:12mm又は16mm
E:20mm又は25mm
F:32mm
LCO:LiCoO2(アルドリッチ社製)
NMC:LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(アルドリッチ社製)
Si:ケイ素粉末
AB:アセチレンブラック(デンカブラック(商品名)、デンカ社製)
VGCF:気相成長炭素繊維(昭和電工社製)
これに対して、本発明で規定するバインダー粒子を含有する固体電解質組成物(電極層用組成物)は、いずれも高い分散安定性を示し、これらの固体電解質組成物(電極層用組成物)を用いた、全固体二次電池用正極シートC-1~C-14及び全固体二次電池用負極シートA-1~A-4は固体粒子が強固に結着されている。
実施例2では、図1に示す層構成を有する、図2に示す全固体二次電池を作製して、その電池性能を評価した。その結果を表5に示す。
実施例1で作製した全固体二次電池用負極シートA-1を、実施例1の上記<全固体二次電池用電極シートの結着性試験>と同様にして、直径10mmのマンドレルを用いた屈曲試験を3回行った後に、負極活物質層の上に、実施例1で調製した固体電解質組成物S-1を、上記ベーカー式アプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、更に110℃で6時間加熱し、固体電解質組成物S-1を乾燥させた。負極活物質層上に固体電解質層(塗布乾燥層)を形成した負極シートA-1を、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧(30MPa、1分間)し、固体電解質層/負極活物質層/ステンレス箔の積層構造を有する負極シートを作製した。
この負極シートを直径15mmの円板状に切り出した。他方、上記で作製した全固体二次電池用正極シートC-1を上記<全固体二次電池用電極シートの結着性試験>と同様にして直径10mmのマンドレルを用いた屈曲試験を3回行った後に、直径13mmの円板状に切り出した。全固体二次電池用正極シートC-1の正極活物質層と、負極シートA-1に形成した固体電解質層とが向かい合うように配置(積層)した後に、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧(40MPa、1分間)し、アルミ箔/正極活物質層/固体電解質層/負極活物質層/ステンレス箔の積層構造を有する全固体二次電池用積層体を作製した。
次いで、このようにして作製した全固体二次電池用積層体12をスペーサーとワッシャー(図2において図示せず)を組み込んだステンレス製の2032型コインケース11に入れ、2032型コインケース11をかしめることで、図2に符号13で示す全固体二次電池101を製造した。
上記全固体二次電池101の製造において、全固体二次電池用正極シート(正極活物質層)、固体電解質組成物及び全固体二次電池用負極シート(負極活物質層)を下記表5に示すように変更したこと以外は、全固体二次電池101の製造と同様にして、全固体二次電池102~115及びc01~c05をそれぞれ製造した。
(抵抗試験)
上記で製造した全固体二次電池の電池電圧を、充放電評価装置「TOSCAT-3000」(商品名、東洋システム社製)により測定した。全固体二次電池を電池電圧が4.2Vになるまで電流値0.2mAで充電した後、電池電圧が3.0Vになるまで電流値2.0mAで放電した。放電開始10秒後の電池電圧を読み取り、読み取った電池電圧が下記評価基準のいずれに含まれるかにより、抵抗を評価した。電池電圧が高いほど低抵抗であることを示す。評価基準を以下に示す。本試験において、評価基準が「C」以上が合格レベルである。
-評価基準-
A:4.1V以上
B:4.0V以上、4.1V未満
C:3.8V以上、4.0V未満
D:3.6V以上、3.8V未満
E:3.6V未満
上記で製造した全固体二次電池の放電容量を、充放電評価装置「TOSCAT-3000」(商品名、東洋システム社製)により、測定した。全固体二次電池を電池電圧が4.2Vになるまで電流値0.2mAで充電した後、電池電圧が3.0Vになるまで電流値0.2mAで放電した。この充放電を1サイクルとして充放電を繰り返し行った。この充放電サイクルにおいて、3サイクル目の放電容量を求めた。この放電容量を、正極活物質層の表面積が100cm2当たりに換算し、全固体二次電池の放電容量とした。全固体二次電池の放電容量は110mAh以上が合格レベルである。
これに対して、本発明で規定するバインダー粒子を含有する固体電解質組成物で構成した層を電極層及び固体電解質層の少なくとも1層に適用した全固体二次電池101~115は、いずれも、電極シートに曲げ応力を作用させた後であっても、抵抗が小さく、しかも放電容量が大きいものである。このように、本発明の全固体二次電池は、固体粒子が強固に結着されており、曲げ応力によって全固体二次電池の構成層にヒビ及び割れが生じないため、曲げ応力が作用しても優れた電池性能を維持できる。
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 コインケース
12 全固体二次電池用積層体
13 イオン伝導度測定用セル(コイン電池)
Claims (15)
- 周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、平均粒径が1nm~10μmのバインダー粒子と、分散媒とを含有する固体電解質組成物であって、
前記バインダー粒子が、SP値が10(cal1/2cm-3/2)以下であり、分子量が500以上である分散剤(A)と、ポリマー(B)とを含む、固体電解質組成物。 - 前記ポリマー(B)を形成する構成成分の少なくとも1種が、SP値が10.5(cal1/2cm-3/2)以上である請求項1に記載の固体電解質組成物。
- 前記分散剤(A)の質量平均分子量が、1,000以上である請求項1又は2に記載の固体電解質組成物。
- 前記分散剤(A)の、バインダー粒子中の含有率が、0.1~80質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記ポリマー(B)のガラス転移温度が、30℃以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記分散剤(A)が、直鎖状の高分子分散剤である請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記ポリマー(B)が、酸性官能基、塩基性官能基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシシリル基、アリール基、ヘテロアリール基、及び、3環以上が縮環した炭化水素環基から選ばれる官能基を少なくとも1つ有する請求項1~7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記無機固体電解質が、硫化物系無機固体電解質である請求項1~8のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- さらに活物質を含有する請求項1~9のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を用いて形成された層を有する全固体電池用シート。
- 請求項10に記載の固体電解質組成物を用いて形成された活物質層を有する全固体電池用電極シート。
- 正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
前記正極活物質層、前記固体電解質層及び前記負極活物質層の少なくとも1つの層が、請求項1~10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を用いて形成された層である全固体二次電池。 - 請求項1~10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を製膜する全固体二次電池用シートの製造方法。
- 請求項14に記載の製造方法を介して全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
Applications Claiming Priority (3)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
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