JP7601394B2 - Htlv-i特異的ctl活性化剤 - Google Patents
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Description
まず、CD8陽性Tax特異的CTLと、かかるCTLとMHC-Iの一致する抗原提示細胞を用意した。次に、これら両細胞(CD8陽性Tax特異的CTL及び抗原提示細胞)とはMHC-Iが一致しないHTLV-1感染T細胞を培養した後、抗がん剤で処理した。前述の培養後抗がん剤で処理したHTLV-1感染T細胞(以下、「抗がん剤処理した培養感染T細胞」とも言う。)を、前述の抗原提示細胞と共培養し、さらにこれをホルマリン固定した後、前述のCTLと共培養したところ、IFN-γの産生が認められた。このことから、その共培養中に抗原提示細胞が「抗がん剤処理した培養感染T細胞」を取り込み、MHC-I上にHTLV-1由来のTax抗原を提示し、CTLがそのTax抗原を認識してIFN-γを産生したことが示された。また、「抗がん剤処理した培養感染T細胞」と、健常者の単球由来の未熟樹状細胞とを共培養したところ、その未熟樹状細胞からのCD86(CD8陽性CTLの応答を活性化するために必要であることが知られる副刺激分子の1種)の発現が大幅に増加した。これらのことから、「抗がん剤処理した培養感染T細胞」は、HTLV-I特異的CTL活性化剤として用い得ることが示された。
(1)ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞を含有する、前記対象に投与するための、HTLV-I特異的CTL活性化剤;や、
(2)末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を、1日以上培養して得られる末梢血単核細胞である、上記(1)に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤や;
(3)動物細胞培養用培地が、IL-2、IL-15又はその両方を含有する、上記(1)又は(2)に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤や;
(4)動物細胞培養用培地が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤や;
(5)HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した末梢血単核細胞である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤や;
(6)HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した後、CD3抗体、又は、CD3抗体及びCD28抗体の両抗体で活性化された末梢血単核細胞である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤や;
(7)HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後に、HTLV-1感染細胞に結合し得る抗体を接触させた末梢血単核細胞である、上記(1)~(6)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤;や、
(8)(a)ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程;
(b)前記工程(a)の培養で得られた末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後、末梢血単核細胞を採取する工程;及び、
(c)前記工程(b)で採取された末梢血単核細胞を薬学的に許容される担体と混合して製剤化する工程;
を有する、前記対象に投与するための、HTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法;や、
(9)動物細胞培養用培地が、IL-2、IL-15又はその両方を含有する、上記(8)に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法;や、
(10)動物細胞培養用培地が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含有する、上記(8)又は(9)に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法;や、
(11)工程(a)が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程である、上記(8)~(10)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法;や、
(12)工程(a)が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した後、CD3抗体、又は、CD3抗体及びCD28抗体の両抗体で活性化した末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程である、上記(8)~(11)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法;
に関する。
[1]ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞を含有する、前記対象に投与するための、HTLV-I特異的CTL活性化剤(又は、HTLV-I特異的CTL活性化用組成物);や、
[2](a)ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程;
(b)前記工程(a)の培養で得られた末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後、末梢血単核細胞を採取する工程;及び、
(c)前記工程(b)で採取された末梢血単核細胞を薬学的に許容される担体と混合して製剤化する工程;
を有する、前記対象に投与するための、HTLV-I特異的CTL活性化剤(又は、HTLV-I特異的CTL活性化剤又は活性化用組成物)の製造方法;
などの態様を含んでいる。なお、本明細書において、HTLV-I特異的CTL活性化剤は、HTLV-I特異的CTL活性化用組成物として用いることができる。
[3](a)ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程;
(b)前記工程(a)の培養で得られた末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後、末梢血単核細胞を採取する工程;及び、
(c)前記工程(b)で採取した末梢血単核細胞(又は、かかる末梢血単核細胞を含むHTLV-I特異的CTL活性化剤又は活性化用組成物)を前記対象に投与する工程;
を有する、前記対象におけるHTLV-1感染に起因する疾患の予防又は治療方法;や、
[4](a)ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程;
(b)前記工程(a)の培養で得られた末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後、末梢血単核細胞を採取する工程;及び、
(c)前記工程(b)で採取した末梢血単核細胞(又は、かかる末梢血単核細胞を含むHTLV-I特異的CTL活性化剤又は活性化用組成物)を前記対象に投与する工程;
を有する、前記対象における抗HTLV-1特異的CTLの活性化方法;や、
[5]HTLV-1感染に起因する疾患の予防又は治療における使用のための、「ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞」;や、
[6]HTLV-1感染に起因する疾患の予防又は治療剤(又は、予防又は治療用医薬組成物)の製造のための、「ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞」の使用;
などの態様も含んでいる。
本発明における「末梢血単核細胞」としては、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞(以下、「感染対象由来PBMC」とも表示する。)を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞(以下、「培養感染PBMC(cultured infected PBMC)」とも表示する。)を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞(以下、「抗がん剤処理した培養感染PBMC」とも表示する。)である限り特に制限されない。
本発明に用いる「動物細胞培養用培地」としては、末梢血単核細胞(好ましくは末梢血T細胞)の増殖に適している液体培地である限り特に制限されず、RPMI1640培地、RPMI培地、DMEM培地、IMEM培地、MEM培地などの動物細胞培養用基本培地を使用することができる。また、これらの動物細胞培養用基本培地の混合培地を用いることもできる。これらの動物細胞培養用基本培地は市販されているものを用いることができる。
感染対象由来PBMCの培養方法としては、該細胞を動物細胞培養用培地で培養する方法である限り特に制限されない。上記の動物細胞培養用培地を用いること以外は、PBMCの通常の培養条件(例えば温度条件、二酸化炭素濃度条件、培養期間等)を用いることができる。
培養感染PBMCでは、感染対象由来PBMCと比較して、HTLV-1抗原の発現が増加している。かかる培養感染PBMCをHTLV-I特異的CTL活性化剤としてHTLV-1感染者に投与した場合、その感染者が体液中に既に有しているHTLV-1中和抗体が働き、培養感染PBMCに基づく新たなHTLV-I感染は基本的に生じないと考えられる。さらに、本発明では培養感染PBMCを抗がん剤で処理することにより、培養感染PBMC自体をほとんど死滅させるため、新たなHTLV-I感染が生じる可能性はほとんどなく、あったとしても極めて限定的且つ一過性と考えられる。
本発明において、培養感染PBMCを抗がん剤で処理する方法としては、培養感染PBMCと抗がん剤を接触させる方法である限り特に制限されず、例えば、培養感染PBMCを含む溶液(例えば培地)中に抗がん剤を添加したのち、一定時間静置する方法を好ましく挙げることができる。
抗がん剤処理した培養感染PBMCは、さらに、HTLV-1感染細胞に結合し得る抗体を接触させなくてもよいが、抗原提示細胞による貪食作用が高まる場合があるため、さらに、HTLV-1感染細胞に結合し得る抗体を接触させることが好ましい。
本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤は、抗がん剤処理した培養感染PBMC(すなわち、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞)のみを含んでいてもよいし、他の成分(すなわち任意成分)をさらに含んでいてもよい。
本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤の投与量は、疾患の状態、個々の患者の年齢、体重等により適宜調節されるが、対象への1回の投与における薬剤中の「抗がん剤処理した培養感染PBMC」の個数として、例えば105~107個、好ましくは5×105~5×106個を挙げることができる。このような投与を数日間、数週間又は数か月に1回ずつ、合計2回以上(例えば2~10回)、反復投与することが好ましい。
本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤の投与方法としては、HTLV-I特異的CTL活性化効果が得られる限り特に制限されないが、例えば皮下投与、皮内投与、筋肉内投与などを挙げることができ、中でも、皮下投与を好ましく挙げることができる。
本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤の投与対象は、感染対象由来PBMCを採取した対象と同じであることが望ましい。この場合、HTLV-I特異的CTL活性化剤は、拒絶反応を起こさずに、投与対象のHTLV-I特異的CTLを活性化することができる。
本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤は、HTLV-1疾患の患者において、HTLV-I特異的CTLを活性化することができ、その結果、HTLV-1疾患に対して治療効果を有すると考えられる。かかる治療効果には、HTLV-1疾患の症状を改善する効果や、HTLV-1疾患(特にATL)が急性転化することを抑制する効果、化学療法後の再発を防止する効果などが含まれる。また、本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤は、HTLV-1疾患を発症していないものの、HTLV-Iに感染している対象において、HTLV-I特異的CTLを活性化することにより、HTLV-1疾患の発症抑制効果を有すると考えられる。
本発明において、「HTLV-I特異的CTL活性化」(HTLV-I特異的CTLを活性化すること)とは、HTLV-I特異的CTLのHTLV-1に対する細胞傷害活性を向上させることを意味し、例えば、本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤又は「抗がん剤処理した培養感染PBMC」を投与した対象の体内において、抗原提示細胞(好ましくは樹状細胞)のクロスプレゼンテーションが誘導され、次いで、細胞傷害活性を持たないナイーブCD8陽性T細胞からHTLV-I特異的CTLが誘導されるなどして、前記対象の体内におけるHTLV-I特異的CTLのHTLV-1に対する細胞傷害活性を向上させることが含まれる。
本発明のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法としては、
(a)ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程;
(b)前記工程(a)の培養で得られた末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後、末梢血単核細胞を採取する工程;及び、
(c)前記工程(b)で採取された末梢血単核細胞を薬学的に許容される担体と混合して製剤化する工程;
を有している限り特に制限されない。
HTLV-1感染者(ATL患者を含む)の末梢血中にはHTLV-1に感染した単核細胞が存在する。しかし、末梢血から分離した直後の感染単核細胞では、HTLV-1抗原は全く検出されない。HTLV-1感染末梢血単核細胞をワクチン抗原として使うためには、HTLV-1のTax抗原の発現が必要である。そこで、HTLV-1感染末梢血単核細胞を培養することにより、Tax抗原の発現がどのようになるかを調べるために以下の試験を行った。
2人の急性型ATL(aATL)患者からそれぞれ末梢血を採取した。ヒトリンパ球比重分離液であるFicoll-Paque(登録商標)を用いた密度勾配法により、前述の末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)をそれぞれ分離した。10u/mLとなるようにrhIL-2(「イムネース(Immunace)」(登録商標)、シオノギ製薬社製)を添加した10%FCS(ウシ胎仔血清)添加 RPMI 1640培地(以下、「IL-2添加培地」と言う。)に、前述のPBMCをそのまま5×105個/mL添加し、数日間~数週間、CO2インキュベーターで37℃にて培養を行った。
また、前述のPBMCをそのままIL-2添加培地に添加することに代えて、前述のPBMCからCD8陽性細胞を除去したPBMCをIL-2添加培地に添加して、数日間~数週間、CO2インキュベーターで37℃にて培養を行った。なお、PBMCからのCD8陽性細胞の除去には、CD8抗体を付着させたイムノビーズ(「Dynabeads」(登録商標)、ThermoFisher社製)を用いた。
上記(1)の方法でaATL患者由来のPBMCを3日間培養した後、そのPBMCについてフローサイトメトリーを行い、PBMCの細胞内のTaxタンパク質を検出した。フローサイトメトリーによるTaxタンパク質の検出方法は以下のとおりである。
上記(1)の方法でaATL患者由来のPBMCを1日間培養した後、そのPBMCについて、上記(3)に記載の方法でフローサイトメトリーを行い、PBMCの細胞内のTaxタンパク質を検出した。その結果を図2の左パネルに示す。
上記(2)と同様の方法で慢性ATL患者由来のPBMCからCD8陽性細胞を除去した後、CD3抗体及びCD28抗体を付着させたイムノビーズ(Dynabeads, ThermoFisher社製)を培地にPBMCと同数加えてPBMCを刺激した後、かかるPBMCを上記(1)の方法で24日間培養した。かかるPBMCについて、上記(3)に記載の方法でフローサイトメトリーを行い、PBMCの細胞内のTaxタンパク質を検出した。その結果を図3に示す。
これまでに、本発明者らは、ATL患者のPBMCを、30u/mLのIL-2(rhIL-2;Peprotec社製)又は10ng/mLのIL-15(rhIL-15;Peprotec社製)存在下で長期培養することにより、Taxタンパク質を発現したT細胞株を樹立した(J Virol 79:10088-10092や、PLoS Pathog. 2017 Sep 14;13(9):e1006597.)。本発明者らが樹立したそのような細胞株のうち、ILT-A株とILT-B株を用意した。ILT-A株は急性ATL患者のPBMC由来のIL-15依存性細胞株であり、ILT-B株は慢性ATL患者のPBMC由来のIL-2依存性細胞株である。抗がん作用が知られているヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤が、ILT-A細胞やILT-B細胞を培養した際のTaxタンパク質の発現にどのような影響を与えるか確認を試みた。
一般に、CD8+CTLの応答を活性化させるためには、抗原を貪食した抗原提示細胞が活性化し、副刺激分子(CD86等)の発現やIL-12等のサイトカイン産生を行うと共に、抗原ペプチドをMHCクラスII分子だけでなくMHCクラスI分子にも提示すること(すなわち、「抗原のクロスプレゼンテーション」)が必要である。そこで、本発明者らは、クロスプレゼンテーションが生じているかのin vitroでの評価系について検討し、かかる評価系を構築した(図5)。この評価系では、CD8陽性Tax特異的CTL(Tc-M1)とMHC-Iの一致する抗原提示細胞(THP1)を用いる。そして、そのCTLやその抗原提示細胞とは、MHCの一致しないHTLV-1感染T細胞(ILT-A又はILT-B)を、マイトマイシンC(MMC)(抗がん剤の1種)で処理したものを、前述のCTL及び抗原提示細胞と共培養する。かかる共培養中に、抗原提示細胞がHTLV-1感染T細胞を取り込み、HTLV-1由来のTax抗原をMHC-I上に提示(クロスプレゼンテーション)した場合には、CD8陽性Tax特異的CTLが提示されたTax抗原を認識し、培養液中にIFN-γを産生する。培養液の上清中のIFN-γ濃度の高さで、プレゼンテーションによりCTLが活性化した程度を評価することができる。この評価系によるクロスプレゼンテーションの評価は、具体的に以下の方法で行った。
CD8陽性Tax特異的CTL(Tc-M1)は、MMC処理したILT-A細胞とのみ共培養しても、ほとんど活性化しない。また、CD8陽性Tax特異的CTL(Tc-M1)は、THP1細胞(抗原提示細胞)とのみ共培養しても、ほとんど活性化しない。しかし、CD8陽性Tax特異的CTL(Tc-M1)は、「ILT-A細胞とTHP1細胞を共培養した細胞」と共培養すると活性化する(IFN-γを産生する)。これらのことから、MMC処理したHTLV-1感染T細胞(例えばMMC処理したILT-A細胞)を、抗原提示細胞(例えばTHP1細胞)と共培養すると、抗原提示細胞はHTLV-1感染T細胞を取り込み、HTLV-1由来のTax抗原をMHC-I上に提示していると考えられた。すなわち、抗原提示細胞は、Tax抗原をクロスプレゼンテーションしていると考えられた。
なお、図6の「ILT-Formalin+THP1」の結果から分かるように、「ホルマリン固定したHTLV-1感染T細胞と抗原提示細胞を共培養した細胞」と、CTLとを共培養しても、CTLはほとんど活性化しなかった。
前述の試験2において、CD8陽性Tax特異的CTL(Tc-M1)は、「ILT-A細胞とTHP1細胞を共培養した細胞」と共培養すると活性化する(IFN-γを産生する)ことが示された。試験2におけるこの現象が、HTLV-1感染細胞であるILT-A細胞から抗原提示細胞へHTLV-1が新たに感染し、その新たな感染細胞から生じるHTLV-1抗原の結果ではないことを確認するために、HTLV-1の新たな感染をHTLV-1中和抗体又は逆転写酵素阻害剤で阻害した上で、試験2のクロスプレゼンテーションの評価試験を行った。具体的には以下のような実験を行い、HTLV-1感染細胞によるTax抗原のクロスプレゼンテーション惹起効率に対して、HTLV-1中和抗体や逆転写酵素阻害剤がどのような影響を与えるかを調べた。
HTLV-1感染者の血中には高濃度のHTLV-1中和抗体が含まれており、HTLV-1抗原を発現した細胞に結合することが予想される。抗CCR4抗体であるモガムリズマブ(商品名ポテリジオ(登録商標);協和発酵キリン社製)も同様にHTLV-1感染細胞に結合する。HTLV-1感染細胞に結合するこれらの抗体による影響を調べるために以下の実験を行った。
ILT-A細胞をIL-15添加培地で2日間培養後(前述)、50μg/mLのMMC(協和発酵キリン社製)(抗がん剤の1種)で37℃、30分間処理した後、洗浄することによって、「MMC処理したILT-A細胞(MMC処理ILT-A細胞)」を得た。
「MMC処理ILT-A細胞」とTHP1細胞を共培養する際の、そのILT-A細胞とTHP1細胞の細胞数の比率を、1:1又は0.5:1又は0.25:1として、上記の「(1)HTLV-1中和抗体による影響」と同様の方法でIFN-γ濃度を測定した。その際、ALT患者の血漿として、ATL-1の血漿を用いた。
逆転写酵素阻害剤として、ジドブジン(Zidovudine:AZT)(商品名レトロビル(登録商標)、グラクソスミスクライン社製)を用いた。20μMのAZTを含む培地中で、抗原提示細胞であるTHP1細胞を37℃で1時間、前培養した。一方、ILT-A細胞をIL-15添加培地で2日間培養後、50μg/mLのMMC(協和発酵キリン社製)(抗がん剤の1種)で37℃、30分間処理した後、洗浄することによって、「MMC処理したILT-A細胞(MMC処理ILT-A細胞)」を得た。前述の前培養を行ったTHP1細胞の培地中に、MMC処理ILT-A細胞を添加して37℃で16時間共培養した。なお、共培養の際の培地中のAZT濃度は10μMであった。かかる共培養で得られた全細胞を1重量%ホルマリン水溶液で室温にて15分間固定した後、洗浄した細胞を、HLA-A2拘束性CD8陽性Tax特異的CTL(Tc-M1)と16時間共培養した。共培養して得られた培養液の上清を回収し、かかる上清中のIFN-γ濃度をELISA(BD OptiEIA(登録商標))で測定した。そしてそのIFN-γ濃度を、CTL活性の指標とした。
樹状細胞等の抗原提示細胞がT細胞を活性化させるためには、CD83、CD86等の副刺激シグナルを表出することが必要とされている(例えば、Leukemia & lymphoma 38:247-263)。そこで、MMC処理ILT-C細胞(ATL患者PBMCを長期培養したHTLV-1感染細胞株)が、抗原提示細胞上の副刺激分子の発現を増強するかを調べるために、以下の実験を行った。
抗原提示細胞としては、抗原を取り込む能力を未だ保持している未熟樹状細胞を用いた。この未熟樹状細胞は、10%FCS添加 RPMI1640培地をプラスチックプレートに入れ、その培地中で健常人のPBMCを2時間培養した後、プラスチックプレートに接着した単球細胞にrhGM-CSF(Miltenyi Biotec社製)(培地中の最終濃度1000u/mL)及びrhIL-4(Miltenyi Biotec社製)(培地中の最終濃度500u/mL)を添加し、5日間培養して得られた未熟樹状細胞(以下、「健常人未熟樹状細胞」とも表示する。)である。
ILT-C22細胞(HLA-A2陽性)をIL-2添加培地で2日間培養後、50μg/mLのMMC(協和発酵キリン社製)(抗がん剤の1種)で37℃、30分間処理した後、洗浄することによって、「MMC処理したILT-C細胞(MMC処理ILT-C細胞)」を得た。次に、前述の健常人未熟樹状細胞(HLA-A2陰性)とMMC処理ILT-C株とを、10%FCS添加 RPMI1640培地で24時間共培養した後、FITC標識HLA-A2抗体(「BD 551285」;ベクトン・ディッキンソン社製)と、PerCP/Cy5.5標識抗ヒトCD83抗体(「305320」;Biolegend社製)又はPerCP/Cy5.5標識抗ヒトCD86抗体(「BD 561129」;ベクトン・ディッキンソン社製)とを用いて氷上で30分間染色し、洗浄後、フローサイトメーターMACSQuant(登録商標)(Miltenyi Biotec社製)を用いたフローサイトメトリーでHLA-A2陰性樹状細胞分画のCD83及びCD86の発現強度を測定した。また、MMC処理ILT-C株を用いないこと以外は同じ方法(すなわち、MMC処理ILT-C株と共培養しない健常人未熟樹状細胞を用いた方法)で、CD83及びCD86の発現強度を測定した。なお、HLA-A2発現の有無により、樹状細胞とILT-C細胞を区別した。
抗原提示細胞からIL-12が産生されることは、抗原提示の際に免疫環境をTh1型に傾け、CTLを誘導する上で重要であるとされている(Therapeutic immunology 1:187-196.)。そこで、抗原提示細胞を、MMC処理したILT-A細胞又はILT-B細胞と共培養することにより、抗原提示細胞におけるIL-12産生にどのような影響が生じるかを調べるために、以下の実験を行った。
IL-15またはIL-2を含む10%FCS(ウシ胎仔血清)添加 RPMI 1640培地に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を添加して、0.5μMのSAHAを含むSAHA含有培地を調製した。また、10%FCS(ウシ胎仔血清)添加 RPMI 1640培地に、ジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して、0.001重量%のDMSOを含むDMSO含有培地(コントロール培地)を調製した。
また、コントロールとして、前述のMMC処理ILT細胞(すなわち、MMC処理したILT-A細胞又はILT-B細胞)を、健常人未熟樹状細胞(DC)と共にではなく、37℃で20時間培養した。かかる培養後の培地の上清を分取し、上清中のIL-12濃度(pg/mL)をELISA(BD OptiEIA(登録商標))で測定した。これらの結果を図11の「Medium」にそれぞれ示す。
図11における共培養後の各細胞を1重量%ホルマリンで15分間処理した後、洗浄した細胞を、HLA-A2拘束性CD8陽性Tax特異的CTL(Tc-M1)と16時間共培養した。共培養して得られた培養液の上清を回収し、かかる上清中のIFN-γ濃度(pg/mL)をELISA(BD OptiEIA(登録商標))で測定した。これらの結果を図13に示す。
Claims (12)
- ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞を含有する、前記対象に投与するための、HTLV-I特異的細胞傷害性T細胞(CTL)活性化剤。
- 末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を、1日以上培養して得られる末梢血単核細胞である、請求項1に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤。
- 動物細胞培養用培地が、IL-2、IL-15又はその両方を含有する、請求項1又は2に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤。
- 動物細胞培養用培地が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含有する、請求項1~3のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤。
- HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した末梢血単核細胞である、請求項1~4のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤。
- HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した後、CD3抗体、又は、CD3抗体及びCD28抗体の両抗体で活性化された末梢血単核細胞である、請求項1~5のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤。
- HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理して得られる末梢血単核細胞が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養して得られる末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後に、HTLV-1感染細胞に結合し得る抗体を接触させた末梢血単核細胞である、請求項1~6のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤。
- (a)ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した対象から採取された末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程;
(b)前記工程(a)の培養で得られた末梢血単核細胞を抗がん剤で処理した後、末梢血単核細胞を採取する工程;及び、
(c)前記工程(b)で採取された末梢血単核細胞を薬学的に許容される担体と混合して製剤化する工程;
を有する、前記対象に投与するための、HTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法。 - 動物細胞培養用培地が、IL-2、IL-15又はその両方を含有する、請求項8に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法。
- 動物細胞培養用培地が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含有する、請求項8又は9に記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法。
- 工程(a)が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程である、請求項8~10のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法。
- 工程(a)が、HTLV-1に感染した対象から採取された末梢血単核細胞からCD8陽性細胞を除去した後、CD3抗体、又は、CD3抗体及びCD28抗体の両抗体で活性化した末梢血単核細胞を動物細胞培養用培地で培養する工程である、請求項8~11のいずれかに記載のHTLV-I特異的CTL活性化剤の製造方法。
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