(衝撃吸収材)
前記衝撃吸収材は、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有する中空粒子を型内成形することにより形成された成形体から構成されている。中空粒子は、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。外殻層は、中空粒子の外殻を構成しており、基材樹脂から構成された樹脂膜を有している。外殻層は、単一の樹脂膜から構成されていてもよい。また、外殻層内には樹脂膜によって区画された微小な気泡が存在していてもよい。なお、中空粒子のより詳細な構成については後述する。
衝撃吸収材は、例えば、自動車資材、建築資材、物流資材、緩衝材、寝具等に用いられる。衝撃吸収材は、例えば、フロアスペーサ、ティビアパッド、ドアパッド、バンパー等の自動車資材に好適である。特に、自動車資材における衝撃吸収材は、衝突時等に生じる大きな衝撃に対して、適切に衝撃を吸収し、乗員に生じる衝撃加速度を低減する必要がある。本発明の衝撃吸収材は、広い範囲のひずみ量においてエネルギー吸収効率に優れるため、車両用のフロアスペーサ、ティビアパッド、ドアパッド、バンパーとして、優れた適性を有し、特にフロアスペーサ、ティビアパッドとして好適である。
衝撃吸収材は、中空粒子から構成されているが、前述した作用効果を損なわない範囲であれば、中空粒子以外の粒子を含んでいてもよい。中空粒子以外の粒子としては、例えば、発泡粒子や、中空構造となっていない粒子等が挙げられる。衝撃吸収材中に中空粒子以外の粒子が含まれる場合、衝撃吸収材中における中空粒子以外の粒子の割合は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましい。衝撃吸収材中の中空粒子の割合を高めることにより、圧縮永久ひずみを容易に低下させることができる。また、衝撃吸収材中の中空粒子の割合を高めることにより、ひずみ量の増大に伴う圧縮荷重の上昇率を低くすることができる。その結果、ひずみ量が大きい場合においても衝撃吸収材のエネルギー吸収効率を向上させることができる。
なお、衝撃吸収材中の中空粒子以外の粒子の割合は、衝撃吸収材の任意の切断面における、粒子の総数に対する中空粒子以外の粒子の数の比率を百分率(単位:%)で表した値である。衝撃吸収材中の中空粒子以外の粒子の割合の算出方法は、具体的には、以下の通りである。まず、衝撃吸収材における成形体のスキン面、つまり、型内成形の際に成形型と接していた面の付近を除いた部分から切片を採取する位置を無作為に三箇所以上選択し、選択された位置において厚み2mm程度の切片を切り出す。スキャナー等により各切片の表面、つまり、衝撃吸収材の断面の写真を取得する。このようにして得られた各写真上に、100個以上の粒子が含まれるように測定領域を設定する。そして、これらの測定領域内における、粒子の総数に対する中空粒子以外の粒子の総数の比率を、衝撃吸収材中の中空粒子以外の粒子の割合とする。
[見掛け密度ρ]
衝撃吸収材の見掛け密度ρは、20kg/m3以上100kg/m3以下である。衝撃吸収材の見掛け密度ρを前記特定の範囲とすることにより、圧縮の初期段階において衝撃吸収材の変形に要する圧縮荷重を適度に高めることができる。その結果、ひずみ量が小さい場合における衝撃吸収材のエネルギー吸収効率を向上させることができる。かかる効果をより高める観点からは、衝撃吸収材の見掛け密度ρは、25kg/m3以上であることが好ましく、30kg/m3以上であることがより好ましい。また、衝撃吸収材の見掛け密度ρは、80kg/m3以下であることが好ましく、60kg/m3以下であることがより好ましく、50kg/m3以下であることがさらに好ましい。この場合には、衝撃吸収材をより容易に軽量化することができる。
衝撃吸収材の見掛け密度ρが低すぎる場合には、剛性等の機械的物性が衝撃吸収材に求められる範囲よりも低下するおそれがある。また、衝撃吸収材の見掛け密度ρが高すぎる場合には、衝撃吸収材の質量が過度に大きくなるおそれがある。また、この場合には、衝撃吸収材の変形に必要となる圧縮荷重の上昇率が、ひずみ量が大きくなるほど高くなりやすい。そのため、ひずみ量が大きい場合におけるエネルギー吸収効率の低下を招くおそれがある。
[中空粒子の平均粒子径D]
衝撃吸収材における中空粒子の平均粒子径Dは、2.0mm以上9.0mm以下である。中空粒子の平均粒子径Dを前記特定の範囲内とすることにより、融着部における樹脂膜の合計厚みを容易に厚くすることができる。そして、樹脂膜の合計厚みを厚くすることにより、ひずみ量の増大に伴う圧縮荷重の上昇率を低くすることができる。その結果、ひずみ量が小さい場合において変形に必要となる圧縮荷重と、ひずみ量が大きい場合において変形に必要となる圧縮荷重の差を小さくし、広いひずみ量の範囲において衝撃吸収材のエネルギー吸収効率を向上させることができる。かかる効果をより高める観点からは、中空粒子の平均粒子径Dは、3.0mm以上であることが好ましく、3.5mm以上であることがより好ましい。また、中空粒子の平均粒子径Dは8.0mm以下であることがより好ましく、6.0mm以下であることがさらに好ましい。この場合には、型内成形時における中空粒子の成形型への充填性をより高め、得られる衝撃吸収材の物性のばらつきをより低減することができる。
前述した中空粒子の平均粒子径Dの測定方法は、以下の通りである。まず、衝撃吸収材を厚み方向等に沿って切断し、衝撃吸収材の断面を露出させる。このようにして露出させた衝撃吸収材の断面写真を撮影し、得られた断面写真において、成形体の厚み方向等に沿った線分を、断面写真のいずれか一の端縁から反対側の端縁までにわたって無作為に5本以上引く。次に、線分の長さを測定するとともに、線分と交わる粒子の個数を数える。そして、線分の長さの合計を、線分と交わる粒子の個数の合計で除した値を中空粒子の平均粒子径Dとする。
[その他の粒子]
衝撃吸収材中には、前述した作用効果を損なわない範囲であれば、前記中空粒子以外の粒子が含まれていてもよい。他の粒子としては、例えば、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された気泡構造を有する発泡粒子等が挙げられる。
[融着部]
衝撃吸収材は、中空粒子の外殻層同士が互いに融着してなる融着部を有している。融着部は、中空粒子の外殻層と、当該中空粒子に隣接している中空粒子の外殻層とから構成されている。また、融着部の形状は、通常、平板状である。
・樹脂膜の合計厚みの平均値tr
融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trは、80μm以上400μm以下である。樹脂膜の合計厚みの平均値trを80μm以上とすることにより、圧縮の初期段階において衝撃吸収材の変形に必要な圧縮荷重を適度に高くすることができる。かかる効果をより確実に発現させる観点からは、樹脂膜の合計厚みの平均値trは85μm以上であることが好ましく、90μm以上であることがより好ましい。樹脂膜の合計厚みの平均値trが過度に小さい場合には、ひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率の低下を招くおそれがある。また、樹脂膜の合計厚みの平均値trが過度に小さい場合には、ひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率の低下に加えて、ひずみ量が小さい場合のエネルギー吸収効率の低下を招くおそれもある。
また、樹脂膜の合計厚みの平均値trを400μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下とすることにより、低い見掛け密度ρを確保しつつ、衝撃吸収材のエネルギー吸収効率をより向上させることができる。樹脂膜の合計厚みの平均値trが過度に大きい場合には、衝撃吸収材の見掛け密度ρが高くなり、衝撃吸収材の質量の増大を招くおそれがある。
樹脂膜の合計厚みの平均値trの算出方法は以下の通りである。まず、衝撃吸収材を適当な位置で切断し、切断面を露出させる。走査型電子顕微鏡を用い、切断面に現れた複数の融着部から、無作為に30箇所以上の観察対象の融着部を選択する。これらの融着部を適当な倍率(例えば、倍率200倍)で観察することにより、各融着部の拡大写真を取得する。
次いで、各拡大写真における融着部上に、融着部の厚み方向に延在する線分を、融着部の一方の表面から他方の表面までに亘って引く。
以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、融着部の厚み方向に延在する線分の長さを測定するとともに、各線分のうち、気泡と重なる部分の長さを算出する。次いで、個々の線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引き、これらの値を算術平均することにより、各融着部における樹脂膜の合計厚みを算出する。そして、観察対象となった30か所以上の融着部について前述した樹脂膜の合計厚みを算出し、これらの樹脂膜の合計厚みの算術平均値を、融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trとする。
・融着部の平均厚みtt
融着部の平均厚みttは、100μmを超え700μm以下であることが好ましい。融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trを前記特定の範囲内にするとともに、融着部の平均厚みttを前記特定の範囲内とすることにより、ひずみ量の増大に伴う圧縮荷重の上昇率をより確実に低減することができる。その結果、ひずみ量が大きい場合における衝撃吸収材のエネルギー吸収効率をより確実に向上させることができる。かかる効果をより高める観点からは、融着部の平均厚みttは、120μm以上であることがより好ましく、130μm以上であることがさらに好ましい。
また、融着部の平均厚みttは、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましく、300μm以上であることが特に好ましい。この場合には、衝撃吸収材の形状が複雑な場合であっても、外観に優れると共に、良好な物性を有する衝撃吸収材をより容易に得ることができる。
融着部の平均厚みttの算出方法は以下の通りである。まず、前述した樹脂膜の合計厚みの平均値ttの算出方法と同様に、衝撃吸収材の切断面から無作為に選択した30箇所以上の融着部のそれぞれを走査型電子顕微鏡で観察し、各融着部の拡大写真を取得する。
次いで、各拡大写真における融着部上に、融着部の厚み方向に延在する線分を、融着部の一方の表面から他方の表面までに亘って引く。
以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、融着部の厚み方向に延在する線分の長さを測定する。そして、これらの線分の長さの算術平均値を、当該拡大写真に写った融着部の厚みとする。このような操作を、観察対象となった30か所以上の融着部のそれぞれについて行い、得られた融着部の厚みの算術平均値を、融着部の平均厚みttとする。
融着部の平均厚みtt(単位:μm)に対する、融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値tr(単位:μm)の比tr/ttは0.3以上1以下であることが好ましい。融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trを前記特定の範囲内にするとともに、tr/ttの値を前記特定の範囲とすることにより、ひずみ量の増大に伴う圧縮荷重の上昇率をより確実に低減することができる。その結果、ひずみ量が大きい場合における衝撃吸収材のエネルギー吸収効率をより確実に向上させることができる。かかる効果を安定して発現させる観点からは、比tr/ttは0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
また、融着部の平均厚みttに対する、融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trの比tr/ttは0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。この場合にも、ひずみ量の増加に伴う圧縮荷重の上昇率をより低減することができ、ひずみ量が大きい場合における衝撃吸収材のエネルギー吸収効率をより向上させることができる。なお、融着部の平均厚みttに対する融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trの比tr/ttが0.9以下であることは、融着部に気泡が含まれることを意味しており、融着部が気泡を適度に含む構造を有することにより、ひずみ量の増加に対する圧縮荷重の増加の割合を緩やかにしやすくなると考えられる。
衝撃吸収材の見掛け密度ρ(単位:kg/m3)に対する融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値tr(単位:μm)の比tr/ρ(単位:μm/(kg/m3))は2.0以上8.0以下であることが好ましい。この場合には、衝撃吸収材の質量を容易に低減するとともに、ひずみ量が大きい場合における衝撃吸収材のエネルギー吸収効率を向上させることができる。
[圧縮応力]
衝撃吸収材のエネルギー吸収特性は、種々のひずみ量における圧縮応力の大きさに基づいて評価することができる。すなわち、あるひずみ量εaにおける衝撃吸収材のエネルギー吸収効率は、横軸を衝撃吸収材に加えたひずみ量とし、縦軸をひずみ量に対応する圧縮応力とした応力-ひずみ曲線において、圧縮開始からひずみ量εaまでの応力-ひずみ曲線の形状が矩形に近い形状であるほど高くなる。より具体的には、ひずみ量εaにおける圧縮応力σaと、ひずみ量εaよりも小さいひずみ量εbにおける圧縮応力σbとの差が小さいほど、応力-ひずみ曲線の形状が矩形に近くなり、ひずみ量εaにおける衝撃吸収材のエネルギー吸収効率が高いといえる。
かかる観点からは、衝撃吸収材の、23℃における50%変形圧縮応力σ50(単位:kPa)に対する23℃における75%変形圧縮応力σ75(単位:kPa)の比σ75/σ50が1.0以上2.0未満であることが好ましい。この場合には、ひずみ量が大きい場合におけるエネルギー吸収効率を向上させることができ、衝撃吸収材に大きな衝撃が加わった場合においても、被保護物を保護しつつ、衝撃のエネルギーを吸収することができる。
また、衝撃吸収材の、23℃における75%変形圧縮応力σ75(単位:kPa)に対する23℃における10%変形圧縮応力σ10(単位:kPa)の比σ10/σ75が0.30以上1.0以下であることが好ましい。この場合には、より広いひずみ量の範囲において衝撃吸収材のエネルギー吸収効率を向上させることができる。
同様の観点から、衝撃吸収材の、23℃における50%変形圧縮応力σ50(単位:kPa)に対する23℃における25%変形圧縮応力σ25(単位:kPa)の比σ25/σ50が0.50以上1.0以下であることが好ましい。
[圧縮永久ひずみ]
衝撃吸収材の圧縮永久ひずみは10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。かかる特性を有する衝撃吸収材は、圧縮荷重が繰り返し加わった場合においても永久ひずみが蓄積されにくく、圧縮前の形状に容易に復元することができる。それ故、圧縮永久ひずみが前記特定の範囲内である衝撃吸収材は、圧縮荷重が繰り返し加わった場合においても優れたエネルギー吸収特性をより長期間に亘って維持することができる。
(衝撃吸収材の製造方法)
前記衝撃吸収材は、例えば次のようにして製造される。まず、所望する衝撃吸収材の形状に対応したキャビティを有する成形型内に、前記中空粒子を充填する。この際、成形型内に充填される粒子群には、中空粒子に加え、中空粒子以外の粒子が含まれていてもよい。成形型内に充填される粒子群に中空粒子以外の粒子が含まれている場合、粒子群における中空粒子の割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。次いで、スチームなどの加熱媒体により成形型内の中空粒子を加熱する。中空粒子は、キャビティ内において加熱されることにより、膨張すると共に、相互に融着する。この際、中空粒子の外殻層と、当該中空粒子の隣の中空粒子の外殻層とが互いに融着することにより融着部が形成される。以上により、キャビティの形状に応じた形状を有し、中空粒子から構成される成形体が得られる。このようにして得られた成形体は、そのまま衝撃吸収材として使用されてもよい。また、必要に応じて成形体に切削加工等を施し、所望の形状に成形された成形体を衝撃吸収材として使用することもできる。
(中空粒子)
前記衝撃吸収材の製造に用いられる中空粒子は、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。本発明の中空粒子は、後述する有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させてなる中空粒子である。本発明の中空粒子は、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された気泡構造を有する発泡粒子とは異なる構造を有する。型内成形される前の中空粒子は球状であることが好ましい。
中空粒子の中空部は、前記外殻層よりも中空粒子の中心部側に位置している。中空部、つまり、外殻層によって囲まれた領域は、実質的に中空であればよい。ここで、「実質的に中空」とは、中空粒子をその中心部を通る断面で切断した後、透過型電子顕微鏡等を用いて切断面を20倍から1000倍の倍率で観察した場合に、外殻層の構造と中空部の構造とが明確に異なる状態をいう。
例えば、中空部は、外殻層によって中空粒子の外部から隔てられた単一の空間であってもよい。また、中空部には、基材樹脂から構成され、中空部を複数の空間に区画する空間壁が存在していてもよい。この場合、中空部には、中空部の空間壁や、中空部の空間壁と外殻層の内表面とによって区画された数個から数十個程度の空間が形成されていてもよい。所望する物性を発現しやすくする観点から、中空粒子を二等分した際の断面において、中空部が50個以下の空間に区画されていることが好ましく、30個以下の空間に区画されていることがより好ましく、10個以下の空間に区画されていることがさらに好ましく、5個以下の空間に区画されていることが特に好ましい。
前記中空粒子は、外殻層によって囲まれた領域が実質的に中空であれば、型内成形により、所望とする物性を有する成形体を得ることができ、圧縮永久ひずみが小さく、かつ、広いひずみ量の範囲においてエネルギー吸収効率に優れた衝撃吸収材を製造することができる。なお、前記中空粒子の中空部は、外殻層によって中空粒子の外部から隔てられた単一の空間であることが好ましい。また、型内成形後の成形体における中空粒子の構造や中空部については、成形体の製造に用いられる中空粒子の構造や中空部の説明が適宜参照される。
[平均粒子径]
型内成形される前の前記中空粒子の平均粒子径は2.0mm以上9.0mm以下であることが好ましい。前記特定の範囲の平均粒子径を備えた中空粒子を型内成形することにより、衝撃吸収材における中空粒子の平均粒子径を容易に前記特定の範囲内とすることができる。
型内成形前の中空粒子の平均粒子径は、中空粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値である。中空粒子の体積基準における粒度分布は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて取得することができる。
[嵩密度]
型内成形前の中空粒子の嵩密度は、20kg/m3以上100kg/m3以下であることが好ましい。前述する中空構造を有すると共に、前記特定の範囲の嵩密度を有する中空粒子は、軽量であると共に剛性及び復元性の両方に優れている。それ故、かかる嵩密度を有する中空粒子を型内成形することにより、軽量であり、圧縮永久ひずみが小さく、広いひずみ量の範囲においてエネルギー吸収効率に優れた衝撃吸収材を容易に得ることができる。中空粒子の剛性及び復元性を高める観点からは、型内成形前の中空粒子の嵩密度は22kg/m3以上であることがより好ましく、25kg/m3以上であることがさらに好ましい。
また、中空粒子の軽量性をより向上させる観点からは、型内成形前の中空粒子の嵩密度は80kg/m3以下であることがより好ましく、60kg/m3以下であることがさらに好ましく、50kg/m3以下であることが特に好ましい。
前述した中空粒子の嵩密度は、以下の方法により算出される値である。まず、測定対象として、任意の量の中空粒子を準備する。この測定対象を相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて10日放置することにより、測定対象の状態を調整する。この測定対象をメスシリンダー内に自然に堆積させた後、メスシリンダー底面に軽く衝撃を与えてメスシリンダー内の測定対象の充填高さを安定させる。そして、メスシリンダーの目盛が指す、測定対象の嵩体積(単位:L)を読み取る。メスシリンダーに入れた測定対象の質量(単位:g)を嵩体積で除した後、単位を換算する。以上により、中空粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を得ることができる。
[外殻層]
中空粒子の外殻層は、基材樹脂により構成されている樹脂膜と、樹脂膜によって区画された複数の気泡とを有している。外殻層は、例えば、中空部に面した中実の下層部と、中空粒子の最表面(つまり、外殻層の外表面)に露出した中実の上層部と、下層部と上層部との間に位置し、複数の気泡を備えた発泡層部とを含む多層構造を有していてもよい。なお、中実とは、樹脂中に実質的に気泡を有しない状態を意味する。
型内成形前の中空粒子における、樹脂膜の合計厚みの平均値は、30μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。このような中空粒子を型内成形することにより、圧縮の初期段階における変形に必要な圧縮荷重が適度に高く、ひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率が高い成形体をより容易に得ることができる。また、中空粒子における、樹脂膜の合計厚みの平均値は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、120μmであることがさらに好ましい。この場合には、見掛け密度が低く、エネルギー吸収効率に優れた成形体をより容易に得ることができる。
型内成形前の中空粒子における、外殻層の平均厚みは50μmを超え350μm以下であることが好ましい。また、型内成形前の中空粒子における、外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。外殻層の構造を、前述した平均厚み及び外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比によって特定される構造とすることにより、荷重に対する外殻層の耐久性を向上させることができる。これにより、繰り返し荷重に対する前記中空粒子の復元性を高めることができる。
中空粒子の復元性をより高める観点からは、型内成形前の中空粒子における、外殻層の平均厚みは60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。同様の観点から、型内成形前の中空粒子における、外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は0.50以上であることがより好ましく、0.55以上であることがさらに好ましい。
前述した外殻層の平均厚みは、以下の方法により算出される値である。まず、型内成形前の中空粒子を概ね2等分となるように分割し、外殻層の切断面を露出させる。走査型電子顕微鏡を用い、外殻層の切断面を概ね4等分したうちの一つの領域内において、無作為に3箇所以上の観察位置を設定する。これらの観察位置を適当な倍率(例えば、倍率1000倍)で観察することにより、各観察位置における外殻層の切断面の拡大写真を取得する。
得られた拡大写真における外殻層上に、外殻層の厚み方向(つまり、中空粒子の半径方向)に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに亘って引く。以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、合計30か所以上の位置における線分の長さを測定する。このようにして得られた線分の長さの算術平均値を、個々の中空粒子の外殻層の厚みとする。そして、無作為に選択された5個以上の中空粒子について前述した外殻層の厚みを算出し、これらの外殻層の厚みの算術平均値を外殻層の平均厚みとする。
型内成形前の中空粒子における外殻層の樹脂膜の合計厚みの平均値を算出するに当たっては、外殻層の平均厚みの算出方法と同様に、外殻層の切断面を概ね4等分したうちの1つの領域について、無作為に3か所以上の観察位置を設定し、各観察位置における外殻層の切断面の拡大写真を取得する。次いで、各拡大写真における外殻層上に、外殻層の厚み方向に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに亘って引く。
以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、外殻層の厚み方向に延在する線分の長さを測定するとともに、各線分のうち、気泡と重なる部分の長さを算出する。次いで、個々の線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引き、これらの値を算術平均することにより、各中空粒子の樹脂膜の合計厚みを算出する。そして、無作為に選択された5個以上の中空粒子について前述した樹脂膜の合計厚みを算出し、これらの樹脂膜の合計厚みの算術平均値を樹脂膜の合計厚みの平均値とする。
[基材樹脂]
前記中空粒子における樹脂膜の基材樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系単量体に由来するスチレン系成分とを含む複合樹脂である。複合樹脂は、後述するように、スチレン系樹脂を基材樹脂とする核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸重合してなる複合樹脂であることが好ましい。
複合樹脂中に含まれる(メタ)アクリル酸エステル成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル単量体に由来する成分や、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル単量体に由来する成分が挙げられる。複合樹脂中には、これらの(メタ)アクリル酸エステル成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
複合樹脂中には、(メタ)アクリル酸エステル成分として、メタクリル酸メチルに由来する成分が含まれていることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル成分中のメタクリル酸メチルに由来する成分の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂中に含まれるスチレン系成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸及びスチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン系単量体に由来する成分や、ポリスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体に由来する成分、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体等のスチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体に由来する成分等が挙げられる。複合樹脂中には、これらのスチレン系成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
複合樹脂中には、スチレン系成分として、スチレンに由来する成分が含まれていることが好ましい。この場合、スチレン系成分中のスチレンに由来する成分の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂には、(メタ)アクリル酸エステル成分及びスチレン系成分以外の他の成分が含まれていてもよい。かかる成分としては、例えば、水酸基を含有するビニル化合物、ニトリル基を含有するビニル化合物、有機酸ビニル化合物、オレフィン化合物、ジエン化合物、ハロゲン化ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、マレイミド化合物などの炭素-炭素二重結合を有するモノマーに由来する成分が挙げられる。
水酸基を含有するビニル化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。ニトリル基を含有するビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
有機酸ビニル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。オレフィン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン等が挙げられる。ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル化合物としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等が挙げられる。ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン等が挙げられる。マレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド等が挙げられる。
複合樹脂中には、これらの炭素-炭素二重結合を有するモノマーに由来する成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル成分及びスチレン系成分以外の他の成分は、(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分との合計100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂は、例えば、スチレン系樹脂を基材樹脂とする核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸重合させることにより得ることができる。複合樹脂の作製に用いることができるスチレン系樹脂としては、前述したスチレン系単量体の単独重合体や、スチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体等を用いることができる。
前記複合樹脂の重量平均分子量は、30×104以上50×104以下であることが好ましく、35×104以上45×104以下であることがより好ましい。この場合には、中空粒子の剛性や復元性をより高めることができる。なお、複合樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定されたポリスチレン換算分子量である。
前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比は、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=70:30~30:70であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=60:40~40:60であることがより好ましい。この場合には、前記特定の構造を有する中空粒子の収率をより高めることができる。
なお、(メタ)アクリル酸エステル成分及び/又はスチレン系成分を含む基材樹脂により構成された核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体及び/又はスチレン系単量体を含浸重合させることにより複合樹脂を製造する場合、前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比は、核粒子における各成分の質量と、含浸重合される各単量体の質量との関係等から求めることができる。
[添加剤]
前記中空粒子には、前述した作用効果を損なわない範囲で気泡調整剤、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。中空粒子中の添加剤の含有量は、例えば、中空粒子の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
(樹脂粒子)
前記中空粒子は、以下の構成を有する樹脂粒子を発泡させることにより得られる。すなわち、樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系単量体に由来するスチレン系成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含んでおり、
前記樹脂粒子の平均粒子径が1mm以上5mm以下であり、
前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比が、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=70:30~30:70であり、
全反射測定法により取得された前記樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトルにおける、下記式(1)で表される表面吸光度比Sの値が0.70以上である。
S=Asacryl/Asstyrene ・・・(1)
ただし、前記式(1)におけるAsstyreneは波数650cm-1以上750cm-1以下の範囲における吸光度の最大値であり、Asacrylは波数1680cm-1以上1780cm-1以下の範囲における吸光度の最大値である。
樹脂粒子における基材樹脂は、前述した中空粒子における基材樹脂と同様である。
有機物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の、大気圧での沸点が90℃以下の揮発性有機化合物を用いることができる。これらの揮発性有機化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種以上の揮発性有機化合物が併用されていてもよい。
樹脂粒子中の有機物理発泡剤の含有量は、3質量%以上8質量%以下であることが好ましく、4質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。この場合には、所望とする構造を有する中空粒子の収率をより高めることができる。
全反射測定法により取得された樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトルにおける、前記式(1)で表される表面吸光度比Sの値は0.70以上である。前記式(1)における吸光度の最大値Asstyreneは、スチレン系成分に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来するピークの強度である。また、前記式(1)における吸光度の最大値Asacrylは、(メタ)アクリル酸エステル成分に含まれるカルボニル基のC=O伸縮振動に由来するピークの強度である。
従って、前記式(1)で表される表面吸光度比Sの値は、樹脂粒子の表面に存在するスチレン系成分と(メタ)アクリル酸エステル成分との比率と関連している。表面吸光度比Sの値が前記特定の範囲内である樹脂粒子の表面には、(メタ)アクリル酸エステル成分が豊富に存在している。かかる樹脂粒子を発泡させることにより、所望の構造及び特性を備えた中空粒子を容易に得ることができる。良好な中空構造を有する中空粒子をより確実に得ることができる観点から、前記式(1)で表される表面吸光度比Sの値の上限は、概ね3.0であることが好ましく、2.0であることがより好ましく、1.5であることがさらに好ましい。表面吸光度比Sの値が低すぎる場合には、樹脂粒子を発泡させた際に、所望する外殻層の構造を備えた中空粒子を得ることが難しくなるおそれがある。
前述した表面吸光度比Sの算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、入射角が45度であるダイヤモンドプリズムを樹脂粒子に170kg/cm2の圧力で押し付け、未補正の赤外吸収スペクトルを取得する。得られた赤外吸収スペクトルの吸光度を、各波数における赤外光のもぐり込み深さが波数1000cm-1の赤外光のもぐり込み深さと一致するように、スペクトル全体にわたって補正する。このようにして得られた補正後の赤外吸収スペクトルに基づいて吸光度の最大値Asstyrene及びAsacrylを決定する。そして、Asacrylの値をAsstyreneの値で除した値を表面吸光度比Sとする。
また、前記式(1)で表される表面吸光度比Sと、全反射測定法により取得された樹脂粒子の内部の赤外吸収スペクトルにおける、下記式(2)で表される内部吸光度比Iとの比S/Iは、0.3以上3以下であることが好ましい。
I=Aiacryl/Aistyrene ・・・(2)
ただし、前記式(2)におけるAistyreneは波数650cm-1以上750cm-1以下の範囲における吸光度の最大値であり、Aiacrylは波数1680cm-1以上1780cm-1以下の範囲における吸光度の最大値である。
前記式(2)における吸光度の最大値Aistyreneは、式(1)における吸光度の最大値Asstyreneと同様に、スチレン系成分に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来するピークの強度である。また、前記式(2)における吸光度の最大値Aiacrylは、式(1)における吸光度の最大値Asacrylと同様に、(メタ)アクリル酸エステル成分に含まれるカルボニル基のC=O伸縮振動に由来するピークの強度である。
従って、前記式(2)で表される内部吸光度比Iの値は、樹脂粒子の内部に存在するスチレン系成分と(メタ)アクリル酸エステル成分との比率と関連している。そして、内部吸光度比Iに対する表面吸光度比Sの比S/Iは、樹脂粒子の内部におけるスチレン系成分の濃度と樹脂粒子の表面におけるスチレン系成分の濃度との比率と関連している。
表面吸光度比Sが前記特定の範囲内であり、かつ、内部吸光度比Iに対する表面吸光度比Sの比S/Iが前記特定の範囲内である樹脂粒子によれば、所望の構造及び特性を備えた中空粒子の収率をより高めることができる。同様の観点から、内部吸光度比Iに対する表面吸光度比Sの比S/Iの下限は、0.4であることが好ましく、0.5であることがより好ましく、0.6であることがさらに好ましい。また、比S/Iの上限は、2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
前述した内部吸光度比Iの算出方法は、樹脂粒子を概ね2等分となるように分割し、次いで分割によって得られた二つの半球状粒子のうち、一方の半球状粒子における、分割によって露出した分割面にダイヤモンドプリズムを当接させる以外は、表面吸光度比Sの算出方法と同様である。
(中空粒子の製造方法)
前記中空粒子の製造方法としては、例えば、前記複合樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を準備した後、前記樹脂粒子を発泡させる方法を採用することができる。
樹脂粒子の製造方法としては、例えば、スチレン系樹脂を基材樹脂とするスチレン系樹脂核粒子(以下、適宜「核粒子」という。)に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸させ、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを重合させるとともに、物理発泡剤を含浸させる方法を採用することができる。
より具体的には、樹脂粒子の製造方法は、核粒子を水性媒体中に分散させる分散工程と、
前記水性媒体中に分散した前記核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸させ、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを重合させて樹脂粒子を得る改質工程と、
改質工程を行う前、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも1回以上のタイミングで、前記核粒子または前記樹脂粒子中に有機物理発泡剤を含浸させる含浸工程と、を有していてもよい。分散工程、改質工程及び含浸工程は、単一の密閉容器内で連続して行ってもよいし、別々の容器を用いて行ってもよい。以下、各工程について詳説する。
[分散工程]
分散工程においては、核粒子を水性媒体中に分散させて懸濁液を作製する。水性媒体としては、例えば、脱イオン水等を使用することができる。水性媒体中には、核粒子に加え、必要に応じて、懸濁剤や界面活性剤等を添加することができる。
分散工程に用いる核粒子の基材樹脂はスチレン系樹脂であることが好ましい。スチレン系樹脂としては、前述したスチレン系単量体の単独重合体や、スチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体等を用いることができる。より具体的には、スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体や、スチレン系単量体に由来する成分を50モル%以上含む共重合体などを使用することができる。また、核粒子には、前述した作用効果を損なわない範囲で、気泡調整剤、顔料、スリップ剤、帯電防止剤、及び難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。
なお、核粒子には、例えば(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合体であるアクリル系樹脂等のスチレン系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。中空粒子の構造をより確実に所望する構造とする観点からは、核粒子におけるスチレン系樹脂以外の他の樹脂の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
核粒子の作製方法は特に限定されることはない。例えば、核粒子の作製方法としては、ストランドカット方式、アンダーウォーターカット方式、ホットカット方式等を採用することができる。また、核粒子は、例えば、水性媒体中でスチレン系単量体等を重合させる懸濁重合法によって作製されていてもよい。
核粒子の平均粒子径は、0.6mm以上2.0mm以下であることが好ましく、0.7mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。この場合には、改質工程における重合安定性が高められ、複合樹脂の重量平均分子量を高めやすい。また、平均粒子径が前記特定の範囲内である核粒子を用いて改質工程や含浸工程を行うことにより、樹脂粒子の平均粒子径及び樹脂粒子における前記表面吸光度比S等を前記特定の範囲に容易に調整することができ、最終的に得られる中空粒子の構造をより確実に所望の構造とすることができる。
核粒子の平均粒子径は、核粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値であり、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて測定することができる。
分散工程において使用される懸濁剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン及びベントナイト等の無機物の微粒子からなる無機懸濁剤や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機懸濁剤が挙げられる。これらの懸濁剤は、単独で使用されていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。懸濁剤は、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト及びピロリン酸マグネシウムのうち1種または2種以上であることが好ましい。
懸濁剤の添加量は、水性媒体100質量部に対して固形分量で0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。懸濁剤の添加量を0.05質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上とすることにより、後の改質工程において(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体を添加した際に、水性媒体中に核粒子やモノマー等が懸濁した状態がより維持されやすくなる。また、懸濁剤の添加量を10質量部以下、より好ましくは5質量部以下とすることにより、最終的に得られる中空粒子の粒子径分布を狭くすることができる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウムやアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテルやポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ココナットアミンアセテートやステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライドやステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタインやステアリルベタイン等のアルキルベタイン、及び、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いられていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であることが好ましく、炭素数8以上20以下のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩であることがより好ましく、炭素数8以上20以下のアルキルスルホン酸ナトリウムであることがさらに好ましい。これらの界面活性剤を用いることにより、後の改質工程において(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体を添加した際に、水性媒体中に核粒子やモノマー等が懸濁した状態がより維持されやすくなる。
懸濁液には、必要に応じて、例えば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類からなる電解質を添加することができる。
[改質工程]
改質工程においては、懸濁液中に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを添加し、核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸させるとともに、これらのモノマーを重合させる。これにより、スチレン系成分と、(メタ)アクリル酸エステル成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂粒子が得られる。
改質工程において添加される(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加量とスチレン系単量体の添加量との合計は、例えば、核粒子100質量部に対して200質量部以上700質量部以下とすることが好ましく、250質量部以上600質量部以下とすることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加量とスチレン系単量体の添加量との比率は、所望する複合樹脂の組成に応じて適宜設定すればよい。良好な中空粒子を得やすくする観点からは、(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加量とスチレン系単量体の添加量との比率は、質量比において、(メタ)アクリル酸エステル単量体:スチレン系単量体=50:50~85:15であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体:スチレン系単量体=60:40~75:25であることがより好ましい。
改質工程においては、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを重合させるために、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、スチレン系単量体の懸濁重合に適用可能な重合開始剤であれば、特に限定されることはない。重合開始剤としては、例えば、ビニルモノマーに可溶であり、10時間半減期温度が50℃以上120℃以下である重合開始剤を用いることができる。かかる重合開始剤としては、例えば、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、及びラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で使用されていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
重合開始剤は、例えば、溶剤やモノマーに溶解させた状態で水性媒体に添加し、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体と共に核粒子に含浸させてもよい。この場合、溶剤としては、例えばエチルベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素、ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素等が用いられる。重合開始剤の添加量は、改質工程において添加する(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体との合計100質量部に対して0.01質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
改質工程においては、必要に応じて、気泡調整剤、可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、染料等を添加することができる。気泡調整剤は、例えば、モノマー及び/または溶剤に溶解または分散させた状態で水性媒体中に添加される。気泡調整剤としては、例えば、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、タルク、シリカ、ポリエチレンワックス、メチレンビスステアリン酸、メタクリル酸メチル系共重合体、及びシリコーンなどが挙げられる。脂肪酸モノアミドとしては、例えばオレイン酸アミド、及びステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪酸ビスアミドとしては、例えばエチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤及び染料は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び/またはスチレン系単量体に溶解または分散させた状態で水性媒体中に添加することができる。可塑剤としては、例えば、グリセリントリステアレート、グリセリントリオクトエート、グリセリントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ブチルステアレート等の脂肪酸エステルや、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化モノグリセライド、硬化牛脂及び硬化ひまし油等の油脂類、シクロヘキサン及び流動パラフィン等の有機化合物等が挙げられる。油溶性重合禁止剤としては、例えば、パラ-t-ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン等が挙げられる。
改質工程における加熱温度や(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体の添加に要する時間は、核粒子のスチレン系樹脂の化学構造や(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体の化学構造、重合開始剤の特性、所望する複合樹脂の重合度などに応じて適宜設定すればよい。
改質工程後に得られる複合樹脂粒子は、樹脂粒子の表層部に(メタ)アクリル酸エステル成分を多く含む一方、樹脂粒子の内部にスチレン系成分を多く含む構造を有していることが好ましい。発泡工程において、(メタ)アクリル酸エステル成分とスチレン系成分とが前述したように分布した樹脂粒子を発泡させることにより、樹脂粒子の内部での発泡を促進させるとともに、樹脂粒子の表層部での発泡の進行を抑制し、外殻層と、中空部とを有する中空粒子の収率をより高めることができる。
[含浸工程]
含浸工程においては、改質工程を行う前、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも1回以上のタイミングで核粒子または複合樹脂粒子に前述した有機物理発泡剤を含浸させることにより、樹脂粒子を得る。すなわち、含浸工程は、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体を含浸させる前の核粒子に対して行ってもよいし、改質工程において(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とが重合している途中の複合樹脂粒子や、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体との重合が完了した後の複合樹脂粒子に対して行ってもよい。また、これらのタイミングのうち、2回以上のタイミングで核粒子または複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させてもよい。有機物理発泡剤を複合樹脂粒子の内部まで十分に含浸させ、中空粒子の構造を所望の構造としやすくする観点からは、含浸工程は、少なくとも改質工程の前に行うことが好ましい。同様の観点から、含浸工程は、改質工程の前に行うとともに、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも一方のタイミングで行うことがより好ましい。含浸工程を複数回行う場合、各含浸工程において使用する有機物理発泡剤は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
核粒子や複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させるに当たっては、例えば、これらの粒子が収容されている密閉容器内に有機物理発泡剤を供給して密閉容器内の圧力を上昇させればよい。この状態を保持することにより、核粒子や複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させることができる。
核粒子や複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させている間、必要に応じて、密閉容器内を加熱してもよい。密閉容器内を加熱することにより、核粒子または複合樹脂粒子への有機物理発泡剤の含浸をより促進させることができる。なお、有機物理発泡剤を含浸する際の温度と時間は、含浸工程のタイミングに応じて適宜設定すればよい。例えば、改質工程の前に行う含浸工程においては、概ね40℃以上90℃以下の温度を0.5時間以上3時間以下保持することにより有機物理発泡剤を核粒子に含浸させることが好ましい。改質工程の途中及び/又は改質工程の完了後に行う含浸工程においては、概ね80℃以上120℃以下の温度を3時間以上5時間以下保持することにより有機物理発泡剤を核粒子や複合樹脂粒子に含浸させることが好ましい。
含浸工程における有機物理発泡剤の配合量は、例えば、複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、3質量部以上9質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上8質量部以下であることがさらに好ましい。
前述したように含浸工程を行うことにより、有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を得ることができる。含浸工程を行った後、必要に応じて、得られた樹脂粒子を脱水乾燥させてもよい。脱水乾燥の方法は特に限定されることはないが、例えば、気流乾燥機を用いて、樹脂粒子に熱風を吹き付けることにより樹脂粒子を脱水乾燥させる方法を採用することができる。樹脂粒子を脱水乾燥させることにより、樹脂粒子に含まれる水分量を低減することができると共に、樹脂粒子の発泡性を維持しつつ、樹脂粒子の表層部に含まれる余剰の有機物理発泡剤を逸散させやすくなる。これにより、見掛け密度の低い中空粒子であっても、中空粒子に良好な外殻層が形成されやすくなる。気流乾燥機を用いる場合には、例えば、熱風温度を30℃以上60℃以下の範囲内から、乾燥時間を0.5時間以上4時間以下の範囲内から適宜設定することができる。
樹脂粒子の平均粒子径は、1.0mm以上5.0mm以下である。樹脂粒子が前記特定の範囲の平均粒子径を有すると共に、前記特定の範囲の表面吸光度比Sを有することにより、最終的に得られる中空粒子の構造をより確実に所望の構造とすることができる。前記特定の構造を有する中空粒子の収率をより高める観点からは、樹脂粒子の平均粒子径は、1.1mm以上4.0mm以下であることが好ましく、1.2mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。
樹脂粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値であり、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて測定することができる。
見掛け密度の低い中空粒子であっても、中空粒子に良好な外殻層を形成しやすくなる観点から、樹脂粒子の水分量は0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上0.4質量%以下であることがさらに好ましい。また、含浸工程を行った後、必要に応じて、樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆する被覆工程を実施してもよい。
被覆工程において用いられる表面被覆剤としては、例えばジンクステアレート、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油などが挙げられる。また、被覆工程における表面被覆剤として、帯電防止剤などを使用することもできる。表面被覆剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上2質量部以下であることが好ましい。
有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させることにより、中空粒子を得ることができる。樹脂粒子を発泡させる方法としては、例えば、加熱媒体により樹脂粒子を加熱する方法を採用することができる。具体的には、有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子が供給された予備発泡機にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、樹脂粒子を発泡させることができる。
有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させるに当たっては、一段階で樹脂粒子を発泡させてもよいし、複数の段階に分けて樹脂粒子を発泡させてもよい。後者の場合、例えば、樹脂粒子を発泡させて目的の見掛け密度よりも大きな見掛け密度の一段中空粒子を作製し、一段中空粒子をさらに発泡させることにより、所望の見掛け密度の中空粒子とすればよい。
前記衝撃吸収材及びその製造方法の具体的な態様について説明する。なお、本発明に係る衝撃吸収材の具体的な態様は、以下に説明する実施例1~実施例4の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
(実施例1)
本例の衝撃吸収材1は、図1に示すように、外殻層21と、外殻層21によって取り囲まれた中空部22とを有する中空粒子2を型内成形することにより作製されている。中空粒子2の外殻層21は、(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする樹脂膜211を有している。また、衝撃吸収材1は、図1及び図2に示すように、中空粒子2の外殻層21同士が互いに融着してなる融着部11を有している。衝撃吸収材1の見掛け密度、衝撃吸収材1における中空粒子2の平均粒子径及び融着部11における樹脂膜211の合計厚みの平均値は、それぞれ、表1に示す通りである。
本例の衝撃吸収材1を作製するに当たっては、まず、懸濁重合法によりスチレン系樹脂を含む核粒子を作製し、次いでこの核粒子を用いて有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を発泡させることにより、中空粒子を得た。このようにして得られた中空粒子を型内成形することにより、衝撃吸収材1を得ることができる。以下、衝撃吸収材1の作製方法を詳説する。
[核粒子の作製]
まず、攪拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブに、脱イオン水765g、懸濁剤0.84g及び界面活性剤3.2gを投入した。なお、懸濁剤としては第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)を使用し、界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)を使用した。
次いで、オートクレーブの内容物を攪拌しつつ、オートクレーブ内に重合開始剤、可塑剤及びスチレン848gを投入した。重合開始剤としては、2.2gのt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) O」)と、0.44gのt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) E」)とを併用した。また、可塑剤としては、12.7gのシクロヘキサンと6.2gの硬化牛脂とを併用した。可塑剤は、スチレンに溶解させた状態でオートクレーブ内に投入した。
オートクレーブの内容物を室温下で30分間攪拌した後、オートクレーブ内の温度を1時間半かけて90℃まで上昇させた。オートクレーブ内の温度が90℃に到達した後、さらにオートクレーブ内を加熱し、5時間半かけて100℃までオートクレーブ内の温度を上昇させた。オートクレーブ内の温度が100℃に到達した後、さらにオートクレーブ内を加熱し、1時間半かけて110℃までオートクレーブ内の温度を上昇させた。この温度を2時間保持した後、オートクレーブ内を4時間かけて30℃まで冷却した。以上の操作により、ポリスチレンを基材樹脂とする核粒子を作製した。
冷却が完了した後、オートクレーブ内の核粒子を取り出し、硝酸を用いて核粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを除去した。遠心分離機を用いて核粒子の脱水及び洗浄を行った後、気流乾燥機を用いて核粒子の表面に付着した水分を除去した。以上により得られた核粒子の平均粒子径は、表1に示す通りであった。核粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)を用いて取得した、体積基準の粒度分布における累積63%径(つまり、d63)の値である。
[有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子の作製]
攪拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブ内に、脱イオン水965g及びピロリン酸ナトリウム6.0gを投入した。次いで、オートクレーブ内に、粉末状の硝酸マグネシウム6水和物12.9gを投入し、オートクレーブの内容物を40℃で30分間攪拌した。これにより、オートクレーブの内容物を懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムのスラリーとした。
次に、オートクレーブ内に界面活性剤、核粒子200g及び重合開始剤を投入した。なお、界面活性剤としては、ラウリルスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液を使用し、界面活性剤の添加量は、ラウリルスルホン酸ナトリウムとして0.04gとした。また、重合開始剤としては、2.4gのベンゾイルパーオキサイド(日油製「ナイパー(登録商標)BW」)を使用した。
オートクレーブ内を窒素で置換した後、オートクレーブ内に有機物理発泡剤18gを10分かけて添加した。なお、有機物理発泡剤としては、ノルマルブタン約70質量%とイソブタン約30質量%との混合物を使用した。
有機物理発泡剤の添加後、オートクレーブ内の温度を40℃で1時間保持した。次いで、オートクレーブ内の温度を1時間かけて80℃まで上昇させた。この温度を保持した状態で、オートクレーブ内を450rpmの攪拌速度で攪拌しつつ、スチレン200gとメタクリル酸メチル400gと重合開始剤との混合物を6時間かけてオートクレーブ内に添加した。なお、重合開始剤としては、1.2gのt-ブチルパーオキシベンゾエート1.2g(日油株式会社製「パーブチル Z」)を使用した。
スチレン及びメタクリル酸メチルを添加してから30分後に、有機物理発泡剤としてのペンタン80gを30分かけてオートクレーブ内に添加した。また、スチレン及びメタクリル酸メチルを添加してから30分後にオートクレーブ内の温度を1.5時間かけて110℃まで上昇させ、この温度を4時間保持した。その後、オートクレーブ内を約6時間かけて35℃まで冷却した。以上の操作により、スチレンに由来する成分及びメタクリル酸メチルに由来する成分を含む複合樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含む樹脂粒子を作製した。
冷却が完了した後、オートクレーブ内の樹脂粒子を取り出し、硝酸を用いて樹脂粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを除去した。遠心分離機を用いて樹脂粒子の脱水及び洗浄を行った後、気流乾燥機を用いて樹脂粒子の表面に付着した水分を除去した。以上により得られた樹脂粒子の平均粒子径、複合樹脂の重量平均分子量、樹脂粒子中の水分量及び樹脂粒子中の有機物理発泡剤の含有量は表1に示す通りであった。なお、樹脂粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)を用いて取得した、体積基準の粒度分布における累積63%径(つまり、d63)の値である。
本例においては、以上により得られた樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した。具体的には、樹脂粒子100質量部に対して、0.11質量部のステアリン酸亜鉛、0.053質量部のグリセリンモノステアレート、0.004質量部のタルク及び0.065質量部の帯電防止剤(第一工業製薬株式会社製「レジスタット(登録商標)PE132」の混合物を添加することにより、これらを含む表面被覆剤で樹脂粒子の表面を被覆した。
また、樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した後、さらに、気流乾燥機を用い、樹脂粒子を40℃の温度で1時間加熱して余剰の水分及び有機物理発泡剤を除去する乾燥処理を行った。
[中空粒子の作製]
前述の方法により得られた樹脂粒子を、容積30Lの常圧バッチ発泡機に投入し、発泡機内にスチームを供給した。なお、スチームの温度は120℃とし、加熱時間は90秒とした。これにより、樹脂粒子を発泡させ、表1に示す嵩密度を有する中空粒子を得た。
[衝撃吸収材の作製]
型物成形機(株式会社多保精密製「DSM-0705VS」)を用いて、中空粒子の型内成形を行った。まず、上記のようにして得られた中空粒子を温度23℃の恒温室内で1日間熟成させた。次いで、成形機に備えられた300mm×75mm×25mmの直方体状の成形キャビティを有する成形型内に中空粒子を充填した。この成形型内にゲージ圧で0.07MPa(G)のスチームを導入して中空粒子を加熱することにより型内成形を行った。得られた成形体を温度40℃の乾燥庫内で1日間乾燥させた後、さらに温度23℃の恒温室内で1日間養生させた。このようにして、見掛け密度25kg/m3の成形体からなる衝撃吸収材を得た。なお、前述した方法により、衝撃吸収材中の中空粒子以外の粒子の割合を測定したところ、本例においては、衝撃吸収材中に中空粒子以外の粒子は含まれていなかった。
(実施例2)
実施例2の衝撃吸収材の製造方法は、有機物理発泡剤を含む樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した後、発泡させる前に、気流乾燥機による乾燥を行わない点、及び、中空粒子の嵩密度が表1に示す値となるように発泡条件を変更した点以外は、実施例1の衝撃吸収材の製造方法と同様である。
(実施例3)
実施例3の衝撃吸収材の製造方法は、中空粒子の嵩密度が表1に示す値となるように発泡条件を変更した点以外は、実施例1の衝撃吸収材の製造方法と同様である。
(実施例4及び比較例1-比較例2)
実施例4及び比較例1-2の衝撃吸収材の製造方法は、核粒子及び樹脂粒子の平均粒子径が表1に示す値となるように重合条件を変更した点、有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した後、発泡させる前に、気流乾燥機による乾燥を行わない点、及び、中空粒子の嵩密度が表1に示す値となるように発泡条件を変更した点以外は、実施例1の衝撃吸収材の製造方法と同様である。
(参考例)
参考例の衝撃吸収材は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより作製されている。参考例の衝撃吸収材の作製に用いたポリスチレン系樹脂発泡粒子は、表1に示す平均粒子径を有するポリスチレン系樹脂粒子を発泡させることにより作製されている。また、参考例の衝撃吸収材の作製に用いたポリスチレン系樹脂発泡粒子の嵩密度は、表1に示す通りである。参考例の衝撃吸収材は、このようなポリスチレン系樹脂発泡粒子を、実施例1と同様の条件で型内成形することにより作製されている。
次に、以上により得られた樹脂粒子、中空粒子及び衝撃吸収材の諸特性の評価方法を以下に説明する。
[樹脂粒子の表面吸光度比S及び内部吸光度比I]
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社製「FT/IR-460plus」)及び全反射吸収測定装置(日本分光株式会社製「ATR PRO450-S」)を用い、前述した方法により樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトル及び内部の赤外吸収スペクトルを取得した。そして、これらの赤外吸収スペクトルに基づき、表面吸光度比S、内部吸光度比I及び内部吸光度比Iに対する表面吸光度比Sの比S/Iを算出した。実施例、比較例及び参考例の樹脂粒子におけるこれらの値は、表1に示す通りであった。
[基材樹脂の重量平均分子量]
ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により中空粒子のクロマトグラムを取得し、得られたクロマトグラムから算出した重量平均分子量を基材樹脂の重量平均分子量とした。
具体的には、クロマトグラムの取得には東ソー(株)製のHLC-8320GPC EcoSECを使用した。測定試料としての樹脂粒子をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて濃度0.1wt%の試料溶液を調製した後、TSKguardcolumn SuperH-H×1本、TSK-GEL SuperHM-H×2本を直列に接続したカラムを用い、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、THF流量:0.6ml/分という分離条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定試料を分子サイズの違いによって分離し、クロマトグラムを得た。そして、標準ポリスチレンを用いて作成した較正曲線によって、クロマトグラムにおける保持時間を分子量に換算し、微分分子量分布曲線を得た。この微分分子量分布曲線から基材樹脂の重量平均分子量を算出した。表1の「基材樹脂の重量平均分子量」欄に、実施例及び比較例における複合樹脂の重量平均分子量と、参考例におけるスチレン系樹脂の重量平均分子量とを示す。
[樹脂粒子中の水分量]
加熱水分気化装置を用いて約0.3gの樹脂粒子を温度160℃まで加熱することにより、樹脂粒子中の水分を気化させた。この気化させた水分を加熱水分気化装置に接続されたカールフィッシャー水分測定装置(平沼産業株式会社製「AQ-6」)へ導くことで、樹脂粒子中の水分量を測定した。
[樹脂粒子中の有機物理発泡剤の含有量]
小数点以下4桁まで正確に秤量した約1gの樹脂粒子を温度120℃に設定した熱風乾燥機内で4時間乾燥させた。乾燥後の樹脂粒子を室温まで冷却した後、乾燥後の樹脂粒子の質量を小数点以下4桁まで正確に測定した。加熱前後の質量変化から下記式に基づいて総揮発分量を求めた。
総揮発分(単位:質量%)={加熱前質量(単位:g)-加熱後質量(単位:g)}÷加熱前質量(単位:g)×100
そして、総揮発分から水分量(単位:質量%)を差し引いた値を、樹脂粒子中の有機物理発泡剤の含有量とした。
[中空粒子の構造]
中空粒子を概ね二等分に分割した後、電子顕微鏡を用いて中空粒子の切断面を観察した。一例として、実施例1における中空粒子2の切断面を図3及び図4に示す。図3及び図4に示すように、実施例1の中空粒子2は、樹脂膜211を備えた外殻層21と、外殻層21によって取り囲まれた中空部22とを有している。
中空粒子2の中空部22は、例えば図3に示すように、外殻層21によって中空粒子2の外部空間から隔てられた単一の空間である。なお、図3に示した中空粒子2の中空部22は単一の空間から構成されているが、中空部22は、空間壁によって数個~数十個の空間に区画されていることもあり得る。図4に示すように、中空粒子2の外殻層21には、樹脂膜211によって区画された複数の気泡212が形成されている。
実施例2~実施例4及び比較例1~比較例2における中空粒子も、実施例1の中空粒子と同様に、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。
一方、図5に示すように、参考例における発泡粒子8においては、粒子の内部全体にわたって気泡が比較的均一に形成されており、中空部が存在していない。
[中空粒子及び発泡粒子の嵩密度]
1.5gの中空粒子または発泡粒子を相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて10日放置し、状態を調整した。容積200mLのメスシリンダーを用意し、メスシリンダー内に状態調整後の粒子を入れ、自然に堆積させた。その後、メスシリンダー底面に軽く衝撃を与え、メスシリンダー内の粒子の充填高さを安定させた。そして、メスシリンダーの目盛が指す、粒子の嵩体積(単位:L)を読み取った。メスシリンダーに入れた粒子の質量を嵩体積で除し、単位換算することにより、中空粒子または発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を算出した。実施例及び比較例の中空粒子または発泡粒子の嵩密度は、表1に示した通りであった。
[型内成形前の中空粒子における外殻層の平均厚み]
型内成形前の中空粒子における外殻層の平均厚みの算出方法は、前述した通りである。実施例及び比較例の中空粒子における外殻層の平均厚みは、表1に示した通りであった。
なお、外殻層の厚みの測定においては、外殻層の内表面付近等に、外殻層の厚み方向における長さが100μm以上となる巨大な気泡が存在している場合がある。本例においては、このような気泡は中空部として取り扱った。具体的には、外殻層の内表面付近等に前述した巨大な気泡が存在している場合、中空粒子の外表面から、前述した気泡に到達するまでの前記線分の長さを、外殻層の厚みとした。
また、参考例の発泡粒子は、切断面の全体にわたって均一な気泡が形成されているため、外殻層の厚みを測定することができない。そのため、参考例の「外殻層の平均厚み」欄には記号「-」を記載した。参考例の発泡粒子における、最表面に存在する樹脂膜の厚みは約2μmである。
[型内成形前の中空粒子の外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値]
型内成形前の中空粒子の外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値の算出方法は、前述した通りである。実施例及び比較例の中空粒子における樹脂膜の合計厚みの平均値は、表1に示した通りであった。また、表1の「樹脂膜/外殻層」欄には、樹脂膜の合計厚みの平均値を外殻層の平均厚みで除した値を記載した。
[衝撃吸収材の見掛け密度ρ]
衝撃吸収材の質量(単位:kg)を、外形寸法に基づいて算出された体積(単位:m3)で除した値を、衝撃吸収材の見掛け密度ρ(単位:kg/m3)とした。実施例、比較例及び参考例の衝撃吸収材の見掛け密度ρは、表2に示す通りであった。
[衝撃吸収材における中空粒子または発泡粒子の平均粒子径D]
衝撃吸収材を、その長手方向の中央において、衝撃吸収材の厚み方向に沿って切断し、切断面を露出させた。次に、成形体の切断面の写真を撮影し、得られた写真上に、衝撃吸収材の厚み方向に沿った線分を、写真の一の端縁から反対側の端縁までにわたって無作為に5本引いた。次に、線分と交わる粒子の個数を数えた。そして、各線分の長さの合計を、各線分と交わる粒子の個数の合計で除することで、衝撃吸収材における中空粒子または発泡粒子の平均粒子径D(単位:mm)を算出した。実施例及び比較例の衝撃吸収材における中空粒子の平均粒子径D、及び、参考例の衝撃吸収材における発泡粒子の平均粒子径Dは、表2に示す通りであった。なお、実施例及び比較例の衝撃吸収材中には、中空粒子以外の粒子は含まれていなかった。
[融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値tr]
衝撃吸収材を、その長手方向の中央で切断し、切断面を露出させた。走査型電子顕微鏡を用い、切断面に現れた複数の融着部から30箇所の観察対象となる融着部を無作為に選択した。観察対象の各融着部を倍率200倍で観察することにより、各融着部の拡大写真を取得した。次いで、各拡大写真における融着部上に、融着部の厚み方向に延在する線分を、融着部の一方の表面から他方の表面までに亘って引いた。
以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所の位置において行い、融着部の厚み方向に延在する線分の長さを測定するとともに、各線分のうち、気泡と重なる部分の長さを算出した。次いで、個々の線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引き、これらの値を算術平均することにより、各融着部における樹脂膜の合計厚みを算出した。そして、無作為に選択された30箇所の融着部について前述した樹脂膜の合計厚みを算出し、これらの樹脂膜の合計厚みの算術平均値を求め、これを融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値tr(単位:μm)とした。実施例及び比較例の衝撃吸収材の融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trは、表2に示す通りであった。
[融着部の平均厚みtt]
前述した融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trの測定において測定された、融着部の厚み方向に延在する線分の長さを算術平均することにより、切断面に露出した融着部の平均厚みtt(単位:μm)を算出した。実施例及び比較例の衝撃吸収材における融着部の平均厚みttは、表2に示す通りであった。
[圧縮特性]
衝撃吸収材の中心部から、縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を採取した。JIS K7220:2006に規定された方法に基づいて試験片の圧縮試験を行い、応力-ひずみ曲線を取得した。なお、圧縮試験は23℃の実験室において行った。
応力-ひずみ曲線に基づいて算出された、実施例、比較例及び参考例における10%変形圧縮応力σ10(単位:kPa)、25%変形圧縮応力σ25(単位:kPa)、50%変形圧縮応力σ50(単位:kPa)及び75%変形圧縮応力σ75(単位:kPa)は、表2に示す通りであった。また、表2の「σ25/σ50」欄には50%変形圧縮応力σ50に対する25%変形圧縮応力σ25の比を百分率で表した値を、「σ75/σ50」欄には50%変形圧縮応力σ50に対する75%変形圧縮応力σ75の比を百分率で表した値を、「σ10/σ75」欄には75%変形圧縮応力σ75に対する10%変形圧縮応力σ10の比を百分率で表した値をそれぞれ示した。
[エネルギー吸収特性]
あるひずみ量ε1(単位:%)におけるエネルギー吸収効率(単位:%)は、前述した方法により取得した応力-ひずみ曲線に基づいて以下の方法により算出される値である。まず、図6に示すように、応力-ひずみ曲線上における、ひずみ量が0%である点P0からひずみ量がε1である点P1までの部分L1と、横軸と、点P1を通り、縦軸に平行な直線L2とで囲まれた領域の面積S1を算出する。これとは別に、応力-ひずみ曲線上における、点P1を通り横軸に平行な直線L3と、点P1を通り縦軸に平行な直線L2と、縦軸と、横軸とで囲まれた矩形領域の面積S0を算出する。そして、面積S0に対する面積S1の比S1/S0を百分率で表した値をひずみ量ε1におけるエネルギー吸収効率(単位:%)とする。
表2に、実施例、比較例及び参考例における、ひずみ量25%でのエネルギー吸収効率、ひずみ量50%でのエネルギー吸収効率及びひずみ量75%でのエネルギー吸収効率を示す。
また、圧縮試験により測定された応力-ひずみ曲線におけるひずみ量0%からひずみ量50%までの部分と、応力-ひずみ曲線上におけるひずみ量50%の点を通り、縦軸に平行な直線と、横軸とで囲まれた面積を算出し、この値を、ひずみ量50%までのエネルギー吸収量とした。そして、このエネルギー吸収量を試験に用いた衝撃吸収材の体積で除することにより体積あたりのエネルギー吸収量を算出した。また、体積当たりのエネルギー吸収量を、試験に用いた衝撃吸収材の見掛け密度で除することにより、質量当たりのエネルギー吸収量を算出した。これらの値は、表2に示す通りであった。
なお、前述した質量当たりのエネルギー吸収量は、5J/g以上であることが好ましく、6J/gであることがより好ましい。この場合には、良好なエネルギー吸収性能を確保しつつ、衝撃吸収材の部品重量をより軽くすることができる。また、上記質量当たりのエネルギー吸収量は、10J/g以下であることが好ましく、8J/g以下であることがより好ましい。この場合には、衝撃吸収材が硬くなりすぎず、適度に衝撃を吸収できると共に、自動車資材として用いた際に、衝突時の乗員の安全性を確保しやすくなる。
[圧縮永久ひずみ]
衝撃吸収材の中心部から、縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を採取した。JIS K7220:2006に規定された方法に基づいて試験片の圧縮試験を行い、試験片に25%のひずみを付与した後、圧縮荷重を除荷した。荷重が完全に除荷された後、試験片に残留したひずみの大きさを圧縮永久ひずみ(単位:%)とした。実施例、比較例及び参考例における圧縮永久ひずみの値は、表2に示した通りであった。
表1及び表2に示すように、実施例1~実施例4の衝撃吸収材は、前記特定の複合樹脂を基材樹脂とする中空粒子から構成されている。また、これらの衝撃吸収材の見掛け密度ρ、中空粒子の平均粒子径D及び融着部における樹脂膜の合計厚みの平均値trは、いずれも前記特定の範囲内にある。そのため、これらの衝撃吸収材は、表2に示したように、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体(参考例)に比べて小さい圧縮永久ひずみを有している。
また、実施例1~実施例4の衝撃吸収材は上記特定の構造を有するため、圧縮荷重の増加に伴う、成形体を構成する中空粒子の過度な座屈が抑制される。そのため、衝撃吸収材に付与されたひずみ量が大きい場合においても、変形に必要な荷重の増加が緩やかとなる。そのため、実施例1~実施例4の衝撃吸収材は、参考例の衝撃吸収材に比べてひずみ量が大きい場合におけるエネルギー吸収効率に優れている。
比較例1の衝撃吸収材における融着部の樹脂膜の合計厚みの平均値trは、前記特定の範囲よりも小さい。そのため、比較例1の衝撃吸収材は、実施例1~実施例4の衝撃吸収材に比べて変形しやすく、ひずみ量が大きい場合及びひずみ量が小さい場合のいずれにおいてもエネルギー吸収効率に劣っている。
比較例2の衝撃吸収材における融着部の樹脂膜の合計厚みの平均値trは、比較例1よりは大きいものの、前記特定の範囲よりも小さい。そのため、比較例2の衝撃吸収材は、圧縮荷重の増加に伴い、成形体を構成する中空粒子が座屈しやすく、衝撃吸収材に付与されたひずみ量が高くなると、ひずみ量に対する変形に必要な荷重の増加の割合が大きくなる。その結果、比較例2の衝撃吸収材は、実施例1~実施例4の衝撃吸収材に比べてひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率に劣っている。