JP7628504B2 - 絶縁電線、コイル、及び電気・電子機器 - Google Patents

絶縁電線、コイル、及び電気・電子機器 Download PDF

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Description

本発明は絶縁電線、コイル、及び電気・電子機器に関する。
インバータ関連機器(高速スイッチング素子、インバータモーター、変圧器等の電気・電子機器用コイルなど)には、マグネットワイヤとして、導体の周囲に絶縁性樹脂の被覆層(絶縁皮膜)を形成した絶縁電線(エナメル線)が用いられている。
近年、ハイブリッドカーや電気自動車の普及に伴い、モーター効率の向上が求められ、高電圧におけるモーターの作動やインバータ制御が求められている。このような高電圧下で絶縁電線を使用すると、絶縁皮膜表面に部分放電(コロナ放電)が発生し、絶縁皮膜の劣化を誘発する。この部分放電を抑えるため、絶縁皮膜の構成材料として誘電率の低い樹脂が用いられている。
このように、絶縁電線には、高電圧下における高度な絶縁耐久性が要求される。
また、自動車用モーターなどの回転電機に対する小型化、高出力化の要求も高まっており、絶縁電線を小サイズのボビンに巻き回したり、巻き回しを高密度化したり、曲げ加工した絶縁電線をできるだけ多くステータスロット内などの限られたスペースに入れ込んだりすることが必要になっている。そのため、この絶縁電線には高度な絶縁耐久性ばかりでなく、高度な可撓性と優れた伸び特性が要求される。
本発明は、絶縁耐久性に優れ、更に、伸び特性と可撓性にも優れた絶縁電線、並びに、これを用いたコイル、及び電気・電子機器を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、絶縁皮膜の少なくとも1層を構成する樹脂材として、熱硬化性樹脂に加えて、当該熱硬化性樹脂よりも帯電列が下位(負側に帯電しやすい)の樹脂(帯電調整樹脂)を併用したものを用いることにより、熱硬化性樹脂が有する伸び特性と可撓性を実質的に損なわずに、絶縁耐久性を効果的に高めることができることを見出した。本発明はかかる知見に基づき更に検討を重ねて完成されるに至ったものである。
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕導体と、該導体を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、
前記絶縁皮膜を構成する絶縁層の少なくとも1層が、熱硬化性樹脂Aと、該熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む、絶縁電線。
〔2〕前記熱硬化性樹脂Aとしてポリイミド樹脂を含む、〔1〕に記載の絶縁電線。
〔3〕前記絶縁皮膜の少なくとも最外層において、前記熱硬化性樹脂Aが連続相を、前記樹脂Bが分散相を構成し、前記絶縁皮膜の最表面における前記樹脂Bの面積占有率が10%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の絶縁電線。
〔4〕前記熱硬化性樹脂Aと前記樹脂Bとが互いに非相溶性である、〔3〕に記載の絶縁電線。
〔5〕前記樹脂Bとして、粒径0.2~10μmの樹脂粒子を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の絶縁電線。
〔6〕前記樹脂Bとして、コアシェル粒子及び/又は中空粒子を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の絶縁電線。
〔7〕前記樹脂Bとして、フッ素樹脂、シリコーン樹脂及びポリプロピレン樹脂の少なくとも1種を含む、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の絶縁電線。
〔8〕前記絶縁皮膜の引張破断伸度が30%以上である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の絶縁電線。
〔9〕〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の絶縁電線を有するコイル。
〔10〕〔9〕に記載のコイルを有する電気・電子機器。
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、絶縁皮膜が「熱硬化性樹脂A」を含むとは、熱硬化性樹脂Aが硬化した状態で絶縁皮膜に含まれていることを意味する。
本発明の絶縁電線は、絶縁耐久性に優れ、また、伸び特性や可撓性にも優れる。
図1は、本発明の絶縁電線の一実施形態を示す概略断面図である。 図2は、本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略斜視図である。 図3は、本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略分解斜視図である。
[絶縁電線]
本発明の絶縁電線の一例を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の絶縁電線は、図面に示された形態に限定されるものではない。例えば、絶縁皮膜が複層構造である形態や、導体断面が正方形や円形、楕円形等であり、この導体を絶縁皮膜が被覆する形態も、本発明の絶縁電線として好ましい。
図1に断面図を示した絶縁電線1は、導体11と、導体11の外周面に形成された絶縁皮膜12とを有する。
<導体>
本発明に用いる導体としては、従来から絶縁電線で用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、銅線、アルミニウム線等の金属導体が挙げられる。
本発明で使用する導体の好ましい例として、図1は、導体を断面矩形(平角形状)の場合を示している。
平角形状の導体は、角部からの部分放電を抑制する点において、図1に示すように、4隅に面取り(曲率半径r)を設けた形状であることが好ましい。曲率半径rは、0.6mm以下が好ましく、0.2~0.4mmがより好ましい。
導体の大きさは、特に限定されないが、平角導体の場合、矩形の断面形状において、幅(長辺)は1~5mmが好ましく、1.4~4.0mmがより好ましく、厚み(短辺)は0.4~3.0mmが好ましく、0.5~2.5mmがより好ましい。幅(長辺)と厚み(短辺)の長さの割合(厚み:幅)は、1:1~1:4が好ましい。一方、断面形状が円形の導体の場合、直径は0.3~3.0mmが好ましく、0.4~2.7mmがより好ましい。
<絶縁皮膜>
絶縁皮膜は、絶縁皮膜を構成する絶縁層の少なくとも1層が、熱硬化性樹脂Aと、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列(摩擦帯電列)が下位(負側)の樹脂B(帯電調整樹脂)とを含む。絶縁皮膜を構成する絶縁層とは、絶縁皮膜が図1に示すように1層の場合には、当該1層の絶縁皮膜を意味し、絶縁皮膜が複層構造の場合には、複層構造を構成する各層を意味する。
本発明において、例えば、絶縁皮膜を複数回の塗布、焼付けにより形成している場合であっても、互いに隣り合う絶縁層の構成材料が同じで、構成材料の含有比も同じである場合、互いに隣り合う絶縁層は合わせて1層とみなす。
本発明において、絶縁皮膜を構成する互いに隣り合う絶縁層の構成樹脂材料が異なる場合や、構成樹脂材料が同じでも構成樹脂材料の含有比が異なる場合、当該隣り合う2つの絶縁層は互いに異なる層とみなす。
また、絶縁皮膜を構成する互いに隣り合う絶縁層において一方の層に気泡を含有させたり、両層に気泡を含有させたりしていてもよく、熱硬化性樹脂A、樹脂Bのいずれか又は両者が気泡(中空部分)を含有していてもよく、いずれにしても、前記のように、熱硬化性樹脂Aに対し、樹脂B(帯電調整樹脂)が熱硬化性樹脂Aよりも帯電列(摩擦帯電列)が下位(負側)の関係にあれば良い。ここで、帯電列とは、2種類の物質をスライドして摩擦した時に、正極性または負極性のいずれに帯電しやすいかを示す序列であり、負側とは、熱硬化性樹脂Aのフィルムと後述の樹脂B(帯電調整樹脂)含有フィルムとを後述するようにスライドして摩擦した時、熱硬化性樹脂Aのフィルムの帯電が正で、樹脂B含有フィルムの帯電が負であることをいう。
絶縁皮膜の厚さ(絶縁皮膜が複層構造のときは複層構造全体の厚さ)は1~200μmに設定されていることが好ましく、5~100μmに設定されていることがより好ましく、10~50μmに設定されていることが更に好ましく、20~40μmに設定されていることが特に好ましい。
本発明の絶縁電線は、絶縁皮膜の厚さの20%以上が、熱硬化性樹脂Aと、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む絶縁層で構成されていることが好ましく、絶縁皮膜の厚さの40%以上(好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)が、熱硬化性樹脂Aと、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む絶縁層で構成されていることがより好ましい。
また、本発明の絶縁電線は、絶縁皮膜が複層構造の場合には、少なくとも最外層が、熱硬化性樹脂Aと、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む形態であることが好ましく、導体に接する絶縁層以外の層を熱硬化性樹脂Aと、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む形態とすることも好ましい。
また、本発明の絶縁電線の絶縁皮膜を構成する絶縁層のすべてを、熱硬化性樹脂Aと、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む形態とすることもできる。
熱硬化性樹脂Aと、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む絶縁層において、熱硬化性樹脂Aの含有量は40体積%以上が好ましく、50体積%以上がより好ましく、60体積%以上が更に好ましい。当該熱硬化性樹脂Aの含有量は通常は90体積%以下である。また、当該絶縁層における樹脂Bの含有量は10体積%以上が好ましく、15体積%以上がより好ましい。当該樹脂Bの含有量は通常は60体積%以下である。なお、熱硬化性樹脂A及び/又は樹脂Bに中空部分が存在する場合、上記体積%は中空部分を含めた体積%である。
絶縁皮膜に配合される熱硬化性樹脂Aは、絶縁電線の絶縁皮膜の構成材料として使用される熱硬化性樹脂を広く適用することができる。当該熱硬化性樹脂Aの具体例としては、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエステルイミド樹脂(PEsI)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂(PEst)、ポリベンゾイミダゾール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。このうち、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂の1種または2種以上を用いることが好ましく、このなかでも、イミド結合を有する熱硬化性樹脂がより好ましい。イミド結合を有する熱硬化性樹脂Aとしては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることが好ましい。
特にポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂の3つが、耐熱性が高くエナメル線の構成材料として優れている。熱硬化性樹脂Aとしてポリイミド樹脂を含むことがより好ましく、熱硬化性樹脂Aがポリイミド樹脂であることが更に好ましい。
上記樹脂Bは、上記熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位である。つまり、上記樹脂Bは熱硬化性樹脂Aとの間で摩擦帯電させたとき、熱硬化性樹脂Aよりも負(-)側に帯電する樹脂である。本発明において、熱硬化性樹脂Aと樹脂Bの帯電列の関係は、JIS C 61340-2-2:2013に準拠して決定される。
具体的には、熱硬化性樹脂Aを縦100mm、横100mm、厚さ0.05mmの平面が正方形の形状に成形したフィルムAと、熱硬化性樹脂A50質量部に対して樹脂Bを50質量部添加して混合したものを用いて、縦100mm、横100mm、厚さ0.05mmの平面が正方形の形状に成形したフィルムBとを、温度25℃、相対湿度50%の条件で、大気中で互いに四角を揃えて重ね合わせる。両フィルムの接触状態を保ったまま、フィルムBを、フィルムAの縦方向に沿って50mm/秒の速度で50mmの距離をスライドさせ、次いで元の位置まで同速度でスライドさせる。これを1往復として5往復繰り返し、両フィルムを摩擦帯電させる。その後、フィルムBの表面電位を電位測定器で速やかに測定する。
測定されたフィルムAの表面電位が正の値で、フィルムBの表面電位値(V)が絶対値0.1V以上の負の値(-0.1V以下)であれば、樹脂Bの帯電列が熱硬化性樹脂Aよりも下位であると判断される。上記の摩擦帯電後に測定されるフィルムBの表面電位値(V)は-5V以下が好ましく、-10V以下がより好ましく、-20V以下であることも好ましい。上記の摩擦帯電後に測定されるフィルムBの表面電位値(V)は、通常は-200V以上であり、-150V以上であることも好ましい。
熱硬化性樹脂Aと樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、熱硬化性樹脂Aがポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びポリエステルイミド樹脂から選ばれる場合、樹脂Bとしては、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選ばれるものとすることができる。また、熱硬化性樹脂Aがポリイミド樹脂である場合には、樹脂Bとしてポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリ塩化ビニル樹脂から選ばれるものを適用することができ、ポリプロピレン樹脂を適用することが好ましい。
なかでも、熱硬化性樹脂Aと樹脂Bとして、下記(a)~(i)の組み合わせを採用することが好ましい。
(熱硬化性樹脂A) (樹脂B)
(a) ポリイミド樹脂 シリコーン樹脂
(b) ポリイミド樹脂 フッ素樹脂
(c) ポリアミドイミド樹脂 シリコーン樹脂
(d) ポリアミドイミド樹脂 フッ素樹脂
(e) ポリエステルイミド樹脂 シリコーン樹脂
(f) ポリエステルイミド樹脂 フッ素樹脂
(g) ポリイミド樹脂 ポリエチレン樹脂
(h) ポリイミド樹脂 ポリプロピレン樹脂
(i) ポリイミド樹脂 ポリ塩化ビニル樹脂
本発明において、樹脂Bとして好適なシリコーン樹脂は、ポリシロキサン構造を有する化合物である。ポリシロキサン構造は、シロキサン結合を構成するOとSiとの電気陰性度の差が比較的大きく、摩擦時に正に帯電したSiが摩擦相手から電子を引っ張り、シリコーン樹脂全体として負に帯電するものと考えられる。
フッ素樹脂も同様に、電気陰性度の大きなFにより電子が引っ張られて正に帯電したフッ素樹脂中の原子が、摩擦相手から電子を引っ張り、フッ素樹脂全体あるいは全体として負に帯電するものと考えられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)等を挙げることができる。
また、ポリ塩化ビニル樹脂も、電気陰性度の大きなClに起因して、上記と同様にポリ塩化ビニル樹脂全体として負に帯電するものと考えられる。
本発明において、熱硬化性樹脂Aは1種の熱硬化性樹脂でもよく、2種以上の熱硬化性樹脂でもよい。樹脂Bとしても、1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂Aが2種以上の熱硬化性樹脂からなる場合、当該2種以上の熱硬化性樹脂は互いに相溶性であることが好ましい。また、樹脂Bが2種以上の樹脂からなる場合も、当該2種以上の樹脂は互いに相溶性であることが好ましい。「互いに相溶性である」とは、混合(ブレンド)した際に、相分離が生じないこと(海島構造が形成されないこと)を意味する。
熱硬化性樹脂Aと樹脂Bとは、互いに非相溶性であることが好ましい。「互いに非相溶性である」とは、混合(ブレンド)した際に、相分離していること(海島構造が形成されること)を意味する。この場合、熱硬化性樹脂Aが連続相を構成し、樹脂Bが分散相を構成することが好ましい。また、樹脂Bは樹脂粒子(中空粒子、コアシェル粒子の形態を含む)として配合することもできる。コアシェル粒子はコアシェル構造を有する粒子であれば、特定のものに限定されない。コアシェル粒子として、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチルをコアとし、ポリメチルシルセスキオキサンをシェルとするものが挙げられる。樹脂Bを樹脂粒子として存在させる場合、分散させた樹脂粒子の粒径は0.1~20μmが好ましく、0.2~10μmがより好ましく、0.5~10μmが更に好ましく、1.0~8.0μmが特に好ましい。この粒径は平均粒子径であり、製造メーカーないし販売メーカーが公表している。メーカー公表の粒径が不明の場合には、上記粒径は体積基準のメディアン径(d50)とする。このように、熱硬化性樹脂Aに樹脂Bを分散させた状態も、本発明では、熱硬化性樹脂Aが連続相を構成し、樹脂Bが分散相を構成した形態としてみる。
本発明の絶縁電線の好ましい一実施形態では、絶縁皮膜の少なくとも最外層(絶縁皮膜が1層構造の場合は当該絶縁皮膜)において、前記熱硬化性樹脂Aが連続相を、前記樹脂Bが分散相を構成する。
かかる形態において、絶縁皮膜の最表面(絶縁皮膜最外層表面)における前記樹脂Bの面積占有率(絶縁皮膜の最表面を平面状にしたときの面積に占める、当該最表面を構成する樹脂Bの面積の割合)は10%以上であることが好ましい。これにより絶縁電線の課電寿命を長くでき、耐久性が向上する。この理由はまだ定かではないが、樹脂Bの面積占有率を10%以上とすることにより、絶縁皮膜表面をより負側に帯電させることができ、印加される正弦波交流電圧が印加されたとき、負側の電圧を事実上低下させることができること、その結果、正弦波交流電圧の負側の電圧を、絶縁皮膜にダメージを与える破壊電圧よりも小さくでき、絶縁皮膜に印加される破壊電圧が正側に絞られて破壊電圧の印加頻度が低減することに起因すると考えられる。また、交流電圧下で絶縁皮膜最外層表面に帯電した電荷が絶縁皮膜に接する空気層の電界に作用(緩和)し、その結果、部分放電が抑制されることで課電寿命が長くなると推定される。
絶縁皮膜の最表面における前記樹脂Bの面積占有率は、12%以上が好ましく、14%以上とすることがより好ましい。また、当該面積占有率は、通常は50%以下であり、40%以下であることが好ましく、35%以下とすることがより好ましい。
上記面積占有率は、下記の通り決定することができる。
絶縁電線から導体を取り除き、得られたチューブ状の絶縁皮膜を平板状に切り広げ、絶縁皮膜最表面(絶縁皮膜において導体に接していた面と反対側の面)を上にしてSEM-EDXで元素分析を実施し、画像分析ソフトを用いて樹脂Bの面積占有率を算出する。
なお、絶縁皮膜の最表面に多少の凹凸がある場合でも、SEM-EDXで元素分析により、絶縁皮膜最表面全体に占める樹脂Bの面積占有率を決定することができる。すなわち、本発明において面積占有率とは、平面視における面積占有率である。
本発明の絶縁皮膜の破断伸度は30%以上であることが好ましい。当該破断伸度が30%以上であると、絶縁電線の可撓性が向上し、絶縁電線が引っ張られても絶縁皮膜に亀裂等が発生しにくくなる。この破断伸度は、絶縁電線から導体を取り除いてチューブ状の絶縁皮膜を調製し、チューブ状のまま、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張試験機を用いてチャック間距離を30mmとし、10mm/分で長軸方向に引張試験を行ったときの破断伸度である。なお、破断伸度30%以上とは、絶縁皮膜を引っ張っていないときの長さを100%として、130%以上まで伸ばしたときに破断することを意味する。
本発明の絶縁皮膜には、気泡化核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤、エラストマー等の各種添加剤を配合してもよい。
[絶縁電線の製造方法]
本発明の絶縁電線は、上述のように、絶縁皮膜の少なくとも最外層を、熱硬化性樹脂Aと、該熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂Bとを含む構成とすること以外は、常法に準じて製造することができる。
例えば、絶縁皮膜の構成材料である熱硬化性樹脂A及び樹脂Bを有機溶媒に溶解ないし分散させ、必要に応じて各種添加剤を配合してワニスを調製し、このワニスを導体周囲に、又は導体周囲に形成された絶縁層の周囲に塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成することにより得ることができる。この焼付けによりワニス中の溶媒は揮発して除去される。上記有機溶媒として、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、N,N-ジメチルエチレンウレア、N,N-ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素等の尿素系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-カプロラクトン等のラクトン系溶媒、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム系溶媒、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒、スルホラン等のスルホン系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
具体的な焼付け条件は、その使用される炉の形状等により変わるから一義的に記述できないが、およそ10mの自然対流式の竪型炉であれば、例えば、炉内温度400~650℃にて通過時間を10~90秒とする条件が挙げられる。
[コイル及び電気・電子機器]
本発明の絶縁電線は、コイルとして、各種電気・電子機器など、電気特性(耐電圧性)と耐熱性を必要とする分野に利用可能である。例えば、本発明の絶縁電線はモーターやトランス等に用いられ、高性能の電気・電子機器を構成できる。特にハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)の駆動モーター用の巻線として好適に用いられる。このように、本発明によれば、本発明の絶縁電線をコイルとして用いた、電気・電子機器、例えばHV及びEVの駆動モーターを提供できる。
本発明のコイルは、各種電気・電子機器に適した形態を有していればよく、本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したもの、本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるもの等が挙げられる。
本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したコイルとしては、特に限定されず、長尺の絶縁電線を螺旋状に巻き回したものが挙げられる。このようなコイルにおいて、絶縁電線の巻線数等は特に限定されない。通常、絶縁電線を巻き回す際には鉄芯等が用いられる。
本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるものとして、回転電機等のステータに用いられるコイルが挙げられる。このようなコイルは、例えば、図3に示されるように、本発明の絶縁電線を所定の長さに切断してU字形状等に曲げ加工して複数の電線セグメント34を作製し、各電線セグメント34のU字形状等の2つの開放端部(末端)34aを互い違いに接続して、作製されたコイル33(図2参照)が挙げられる。
このコイルを用いてなる電気・電子機器としては、特に限定されない。このような電気・電子機器の好ましい一態様として、トランスが挙げられる。また、例えば、図2に示されるステータ30を備えた回転電機(特にHV及びEVの駆動モーター)が挙げられる。この回転電機は、ステータ30を備えていること以外は、従来の回転電機と同様の構成とすることができる。
ステータ30は、電線セグメント34が本発明の絶縁電線で形成されていること以外は従来のステータと同様の構成とすることができる。すなわち、ステータ30は、ステータコア31と、例えば図3に示されるように本発明の絶縁電線からなる電線セグメント34がステータコア31のスロット32に組み込まれ、開放端部34aが電気的に接続されてなるコイル33とを有している。このコイル33は、隣接する融着層同士、あるいは融着層とスロット32とが固着されて固定化された状態となっている。ここで、電線セグメント34は、スロット32に1本で組み込まれてもよいが、好ましくは図3に示されるように2本1組として組み込まれる。このステータ30は、上記のように曲げ加工した電線セグメント34を、その2つの末端である開放端部34aを互い違いに接続してなるコイル33が、ステータコア31のスロット32に収納されている。このとき、電線セグメント34の開放端部34aを接続してからスロット32に収納してもよく、また、絶縁セグメント34をスロット32に収納した後に、電線セグメント34の開放端部34aを折り曲げ加工して接続してもよい。
本発明を実施例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。
[実施例1]
<導体>
導体として、断面円形(断面の外径1mm)の銅線を用いた。
<絶縁塗料>
ポリイミド(PI)樹脂ワニス(商品名:Uイミド、ユニチカ社製、PI樹脂成分25質量%のNMP溶液)に、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂(商品名:KMP590、信越化学工業社製、粒径2.0μmのシリコーン樹脂粒子)を添加して3時間攪拌した。こうして、熱硬化性樹脂AとしてPI樹脂、樹脂Bとしてシリコーン樹脂を含有する絶縁塗料1を得た。
<電位測定>
PI樹脂フィルムと、PI樹脂50質量部に対して上記シリコーン樹脂50質量部を添加して混合したものを用いて成形したシリコーン樹脂含有PI樹脂フィルムとを作製し(いずれのフィルムも縦100mm、横100mm、厚さ0.05mmの平面が正方形の形状とした。)、上述した方法で両フィルムを摩擦帯電させ、シリコーン樹脂含有PI樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、シリコーン樹脂含有PI樹脂フィルムの表面電位は-30Vであり、シリコーン樹脂の帯電列は、表面電位が正の値であったPI樹脂の帯電列よりも下位であることが確認された。
<絶縁電線>
前記PI樹脂ワニスを導体上に塗布し、炉温520℃で焼付して4μm厚の絶縁層(ポリイミド樹脂層)を形成した。この絶縁層上に前記絶縁塗料1を塗布し、炉温520℃で焼付することを複数回繰り返すことで所定の膜厚の皮膜を形成し、実施例1の絶縁電線を得た。絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表1に示した。絶縁塗料1から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にシリコーン樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例2]
ポリアミドイミド(PAI)樹脂ワニス(商品名:HI-406、日立化成社製、樹脂成分32質量%のNMP溶液)に、PAI樹脂成分75体積%に対して25体積%のシリコーン樹脂(商品名:KMP590、信越化学工業社製、粒径2.0μmのシリコーン樹脂粒子)を添加して3時間攪拌した。こうして、熱硬化性樹脂AとしてPAI樹脂、樹脂Bとしてシリコーン樹脂を含有する絶縁塗料2を得た。
実施例1において、絶縁塗料1に代えて絶縁塗料2を用いた以外、実施例1と同様にして実施例2の絶縁電線を得た。絶縁塗料2から形成された層は、PAI樹脂(連続相)中にシリコーン樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
また、実施例1と同様にして、PAI樹脂フィルムとシリコーン樹脂含有PAI樹脂フィルムを作製し、上述した方法で両フィルムを摩擦帯電させ、シリコーン樹脂含有PAI樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、シリコーン樹脂含有PAI樹脂フィルムの表面電位は-45Vであり、シリコーン樹脂の帯電列は、表面電位が正の値であったPAI樹脂の帯電列よりも下位であることが確認された。
[実施例3]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分75体積%に対して25体積%のフッ素樹脂(商品名:ポリミストF5A、solvay社製、粒径4.0μmのPTFE粒子)を使用して絶縁塗料3を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料3を用いた以外、実施例1と同様にして実施例3の絶縁電線を得た。絶縁塗料3から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にフッ素樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
また、実施例1と同様にして、PI樹脂フィルムとフッ素樹脂含有PI樹脂フィルムを作製し、上述される方法で両フィルムを摩擦帯電させ、フッ素樹脂含有フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、フッ素樹脂含有PI樹脂フィルムの表面電位は-90Vであり、フッ素樹脂の帯電列は、表面電位が正の値であったPI樹脂の帯電列よりも下位であることが確認された。
[実施例4]
実施例2において、絶縁塗料2の樹脂Bとして、PAI樹脂成分75体積%に対して25体積%のシリコーン樹脂に代えて、PAI樹脂成分75体積%に対して25体積%のフッ素樹脂(商品名:ポリミストF5A、solvay社製、粒径4.0μmのPTFE粒子)を使用して絶縁塗料4を調製し、絶縁塗料2に代えてこの絶縁塗料4を用いた以外、実施例2と同様にして実施例4の絶縁電線を得た。絶縁塗料4から形成された層は、PAI樹脂(連続相)中にフッ素樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
また、実施例1と同様にして、PAI樹脂フィルムとフッ素樹脂含有PAI樹脂フィルムを作製し、上述される方法で両フィルムを摩擦帯電させ、フッ素樹脂含有PAI樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、フッ素樹脂含有PAI樹脂フィルムの表面電位は-95Vであり、フッ素樹脂の帯電列は、表面電位が正の値であったPAI樹脂の帯電列よりも下位であることが確認された。
[実施例5]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分65体積%に対して35体積%のシリコーン樹脂(商品名:KMP590、信越化学工業社製、粒径2.0μmのシリコーン樹脂粒子)を使用して絶縁塗料5を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料3を用いた以外、実施例1と同様にして実施例5の絶縁電線を得た。絶縁塗料5から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にシリコーン樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例6]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分92体積%に対して8体積%のシリコーン樹脂(商品名:KNP590、信越化学工業社製、粒径2μmのシリコーン樹脂粒子)を使用して絶縁塗料6を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料6を用いた以外、実施例1と同様にして実施例6の絶縁電線を得た。絶縁塗料6から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にシリコーン樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例7]
ポリエステルイミド樹脂ワニス(商品名:ネオヒート8600A、ポリエステルイミド樹脂成分30質量%、東特塗料社製)に、ポリエステルイミド樹脂成分70体積%に対して30体積%のフッ素樹脂(商品名:ポリミストF5A、solvay社製、粒径4μmのPTFE粒子)を添加して3時間攪拌した。こうして、熱硬化性樹脂Aとしてポリエステルイミド樹脂、樹脂Bとしてフッ素樹脂を含有する絶縁塗料7を得た。
実施例1において、絶縁塗料1に代えて絶縁塗料7を用いた以外、実施例1と同様にして実施例7の絶縁電線を得た。絶縁塗料7から形成された層は、ポリエステルイミド樹脂(連続相)中にフッ素樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
実施例1と同様にして、ポリエステルイミド樹脂フィルムと、フッ素樹脂含有ポリエステルイミド樹脂フィルムを作製し、上述した方法で両フィルムを摩擦帯電させ、フッ素樹脂含有ポリエステルイミド樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、フッ素樹脂含有ポリエステルイミド樹脂フィルムの表面電位は-105Vであり、フッ素樹脂の帯電列は、表面電位が正の値であったポリエステルイミド樹脂の帯電列よりも下位であることが確認された。
[実施例8]
実施例1において、絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表2に示すとおりに変更したこと以外、実施例1と同様にして実施例8の絶縁電線を得た。絶縁塗料1から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にシリコーン樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例9]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分75体積%に対して25体積%のシリコーン樹脂(商品名:KMP590、信越化学工業社製、粒径2.0μmのシリコーン樹脂粒子)を使用して絶縁塗料9を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料9を用い、絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表2に示すとおりに変更したこと以外、実施例1と同様にして実施例9の絶縁電線を得た。絶縁塗料9から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にシリコーン樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例10]
実施例1において、絶縁塗料1に代えて絶縁塗料3を用い、絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表2に示すとおりに変更したこと以外、実施例1と同様にして実施例10の絶縁電線を得た。絶縁塗料3から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にフッ素樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例11]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分70体積%に対して30体積%のフッ素樹脂(商品名:ポリミストF5A、solvay社製、粒径4μmのPTFE粒子)を使用して絶縁塗料11を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料11を用い、絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表2に示すとおりに変更したこと以外、実施例1と同様にして実施例11の絶縁電線を得た。絶縁塗料11から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にフッ素樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例12]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%の、架橋ポリメタクリル酸メチルをコアとし、ポリメチルシルセスキオキサンをシェルとするコアシェル粒子(商品名:Silcrusta MK03、日興リカ社製、粒径3μm)を使用して絶縁塗料12を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料12を用い、絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表2に示すとおりに変更したこと以外、実施例1と同様にして実施例12の絶縁電線を得た。絶縁塗料12から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にコアシェル粒子(分散相)が分散してなる構造を有していた。
また、実施例1と同様にして、PI樹脂フィルムと、コアシェル粒子含有PI樹脂フィルムを作製し、上述した方法で両フィルムを摩擦帯電させ、コアシェル粒子含有PI樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、コアシェル粒子含有PI樹脂フィルムの表面電位は-25Vであり、コアシェル粒子の帯電列は、表面電位が正の値であったPI樹脂の帯電列よりも下位であることが確認された。
[実施例13]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分75体積%に対して25体積%の、架橋ポリメタクリル酸メチルをコアとし、ポリメチルシルセスキオキサンをシェルとするコアシェル粒子(商品名:Silcrusta MK03、日興リカ社製、粒径3μm)を使用して絶縁塗料13を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料13を用い、絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表2に示すとおりに変更したこと以外、実施例1と同様にして実施例13の絶縁電線を得た。絶縁塗料13から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にコアシェル粒子(分散相)が分散してなる構造を有していた。
[実施例14]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のポリプロピレン樹脂(商品名:PPW-5J、セイシン企業社製、粒径5μmのポリプロピレン(PP)粒子)を使用して絶縁塗料14を調製し、絶縁塗料1に代えてこの絶縁塗料14を用い、絶縁皮膜全体の厚さ(上記4μm厚の絶縁層を含む厚さ)を下記表2に示すとおりに変更したこと以外、実施例1と同様にして実施例14の絶縁電線を得た。絶縁塗料14から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にポリプロピレン粒子(分散相)が分散してなる構造を有していた。
また、実施例1と同様にして、PI樹脂フィルムと、ポリプロピレン樹脂含有PI樹脂フィルムを作製し、上述される方法で両フィルムを摩擦帯電させ、ポリプロピレン樹脂含有PI樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、ポリプロピレン含有PI樹脂フィルムの表面電位は-10Vであり、ポリプロピレンの帯電列は、表面電位が正の値であったPI樹脂の帯電列よりも下位であることが確認された。
[比較例1]
前記PI樹脂ワニスを導体上に塗布し、炉温520℃で焼付することを複数回繰り返すことで27μm厚の絶縁皮膜を形成し、比較例1の絶縁電線を得た。
[比較例2]
前記PAI樹脂ワニスを導体上に塗布し、炉温520℃で焼付することを複数回繰り返すことで27μm厚の絶縁皮膜を形成し、比較例2の絶縁電線を得た。
[比較例3]
実施例1において、絶縁塗料1の樹脂Bとして、PI樹脂成分80体積%に対して20体積%のシリコーン樹脂に代えて、PI樹脂成分82体積%に対して18体積%のアクリル樹脂(商品名:MX-150、綜研化学社製、粒径1.5μmのアクリル樹脂粒子)を使用して比較絶縁塗料3を調製し、絶縁塗料1に代えてこの比較絶縁塗料3を用いた以外、実施例1と同様にして比較例3の絶縁電線を得た。比較絶縁塗料3から形成された層は、PI樹脂(連続相)中にアクリル樹脂(分散相)が分散してなる構造を有していた。
また、実施例1と同様にして、PI樹脂フィルムとアクリル樹脂含有PI樹脂フィルムを作製し、上述した方法で両フィルムを摩擦帯電させ、アクリル樹脂含有PI樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、アクリル樹脂含有PI樹脂フィルムの表面電位は+20Vであり、アクリル樹脂の帯電列はPI樹脂の帯電列よりも上位であることが確認された。
[比較例4]
実施例2において、絶縁塗料2の樹脂Bとして、PAI樹脂成分75体積%に対して25体積%のシリコーン樹脂に代えて、PAI樹脂成分86体積%に対して14体積%の金属酸化物(商品名:HT0210、東邦チタニウム社製、粒径2.1μmの二酸化チタン粒子)を使用して比較絶縁塗料4を調製し、絶縁塗料2に代えてこの比較絶縁塗料4を用いた以外、実施例2と同様にして絶縁電線を得た。比較絶縁塗料4から形成された層は、PAI樹脂(連続相)中に二酸化チタン(分散相)が分散してなる構造を有していた。また、実施例1と同様にして、PAI樹脂フィルムと、二酸化チタン含有PAI樹脂フィルムを作製し、上述される方法で両フィルムを摩擦帯電させ、二酸化チタン含有PAI樹脂フィルムの表面電位を電位測定器(春日電機社製KSD-300)で速やかに測定したところ、二酸化チタン含有PAI樹脂フィルムの表面電位は+50Vであり、二酸化チタンの帯電列はPAI樹脂の帯電列よりも上位であることが確認された。
[比較例5]
前記PI樹脂ワニスを導体上に塗布し、炉温520℃で焼付することを複数回繰り返すことで80μm厚の絶縁皮膜を形成し、比較例5の絶縁電線を得た。
[比較例6]
前記PI樹脂ワニスを導体上に塗布し、炉温520℃で焼付することを複数回繰り返すことで200μm厚の絶縁皮膜を形成し、比較例6の絶縁電線を得た。
各絶縁電線について各種物性を測定した。これらの物性の測定方法は以下のとおりである。
[部分放電開始電圧(PDIV)]
2本の絶縁電線をツイスト状に撚り合わせた試験片を作製し、各々の導体間に正弦波50Hzの交流電圧を印加して、連続的に昇圧させながら放電電荷量が10pCのときの電圧(実効値)を常温(20℃)で部分放電試験機(菊水電子工業製、KPD2050)を用いて測定し、下記評価基準に当てはめ評価した。
-部分放電開始電圧の評価基準-
〇:600Vrms以上
×:600Vrms未満
[課電寿命]
2本の絶縁電線を撚り合わせ、各々の導体間に、上記で測定したPDIV値にその10%を加算した交流電圧(正弦波10kHz)を印加して、絶縁破壊するまでの時間を常温(20℃)で測定し、下記評価基準に当てはめ評価した。「PDIV値にその10%を加算した交流電圧」とは、例えば、測定されたPDIV値が600Vrmsであれば、660Vrmsとなる。
-課電寿命の評価基準-
◎:3000分以上
○:2000分以上3000分未満
×:2000分未満
[引張破断伸度]
絶縁電線から導体を取り除いて内径1.0mmのチューブ状の絶縁皮膜とし、チューブ状のまま、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張試験機を用いてチャック間距離30mm、10mm/minで長軸方向に引張試験を行い、破断したときの伸度を測定し、下記評価基準に当てはめ評価した。
◎:30%以上
〇:15%以上30%未満
×:15%未満
[可撓性]
絶縁電線を10%伸長(元の長さを100%として110%まで伸長)した後、絶縁電線自身の周囲に、線と線が接触するよう緊密に10回巻き付けたときの皮膜の亀裂の有無を目視にて調べ、下記評価基準に当てはめ評価した。
○:亀裂なし
×:亀裂あり
[絶縁皮膜の最表面における前記樹脂Bの面積占有率]
絶縁電線から導体を取り除き、得られたチューブ状の絶縁皮膜を平板状に切り広げた状態で最表面を上にし、この上面について、SEM(商品名:SU8020、日立ハイテクノロジーズ社製)-EDX(商品名:X-Max、堀場製作所製)で元素分析を実施した。シリコーン樹脂の検出にはケイ素原子、フッ素樹脂の検出にはフッ素原子、コアシェル粒子の検出にはケイ素原子、金属酸化物(二酸化チタン)の検出にはチタン原子について検出した。8ekV、5000倍にて得られた画像を画像解析ソフト(商品名:WinROOF、三谷商事社製)を用いて解析し、樹脂Bの面積占有率を算出した。
ポリプロピレン、アクリル樹脂については、ポリプロピレン、アクリル樹脂が持たずポリイミド樹脂が持つ窒素原子を検出し、画像全体の面積から窒素原子の面積を差し引くことで、ポリプロピレン、アクリル樹脂の占有面積を算出した。
また、熱硬化性樹脂Aと樹脂Bの帯電列の関係は、上述の通りに決定した。表面電位を測定する電位測定器として、デジタル低電位測定器(春日電機社製KSD-300)を用いた。
結果を下記表1~3に示す。
Figure 0007628504000001
Figure 0007628504000002
Figure 0007628504000003
上記表に示されるように、絶縁層に、熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位の樹脂を含まない絶縁皮膜を備える絶縁電線は、課電寿命が短かった(比較例1~3、5及び6)。
また、絶縁層に絶縁性の金属酸化物(二酸化チタン)を含む絶縁皮膜を備える絶縁電線は、課電寿命が長く絶縁耐久性に優れる一方で、絶縁皮膜の柔軟性(伸び、可撓性)に劣る結果となった(比較例4)。
これに対し、本発明の規定を満たす絶縁皮膜を備えた絶縁電線は、いずれも絶縁皮膜が十分な伸び特性と可撓性を示し、また、これらの絶縁皮膜を備える絶縁電線のPDIVは高く、課電寿命も長かった(実施例1~14)。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2019年11月25日に日本国で特許出願された特願2019-212158に基づく優先権を主張するものであり、これらはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1 絶縁電線
11 導体
12 絶縁皮膜
30 ステータ
31 ステータコア
32 スロット
33 コイル
34 電線セグメント
34a 開放端部

Claims (10)

  1. 導体と、該導体を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、
    前記絶縁皮膜を構成する絶縁層の少なくとも1層が、連続相を構成する熱硬化性樹脂Aと、該熱硬化性樹脂Aよりも帯電列が下位でかつ分散相を構成する樹脂Bとを含む、絶縁電線。
  2. 前記熱硬化性樹脂Aとしてポリイミド樹脂を含む、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記絶縁皮膜の少なくとも最外層において、前記熱硬性樹脂Aが連続相を、前記樹脂Bが分散相を構成し、前記絶縁皮膜の最表面における前記樹脂Bの面積占有率が10%以上50%以下である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 前記熱硬化性樹脂Aと前記樹脂Bとが互いに非相溶性である、請求項3に記載の絶縁電線。
  5. 前記樹脂Bとして、粒径0.2~10μmの樹脂粒子を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  6. 前記樹脂Bとして、コアシェル粒子及び/又は中空粒子を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  7. 前記樹脂Bとして、フッ素樹脂、シリコーン樹脂及びポリプロピレン樹脂の少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  8. 前記絶縁皮膜の引張破断伸度が30%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の絶縁電線を有するコイル。
  10. 請求項9に記載のコイルを有する電気・電子機器。
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